JP2006199762A - 樹脂成形体の表面物性改良剤組成物、これを含有する熱可塑性樹脂組成物、その樹脂成形体及び自動車内装表皮材 - Google Patents

樹脂成形体の表面物性改良剤組成物、これを含有する熱可塑性樹脂組成物、その樹脂成形体及び自動車内装表皮材 Download PDF

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Abstract

【課題】 樹脂成形体に良好な滑性を付与しつつ滑剤の過剰なブリードを抑えることができるとともに、優れた耐擦傷性、耐摩耗性及び耐熱性を付与することができる樹脂成形体の表面物性改良剤組成物、これを含有する熱可塑性樹脂組成物、その樹脂成形体及び自動車内装表皮材を提供する。
【解決手段】 樹脂成形体の表面物性改良剤組成物は、下記に示す成分(A)及び成分(B)を含有するものである。
成分(A):オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、オレフィン以外のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメントにより形成されているマトリックス相中に分散相を形成しているグラフト共重合体。
成分(B):ネオペンチルポリオール又はその脱水縮合物と脂肪酸とのエステル化物よりなる滑剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、自動車内装品等の樹脂成形体に良好な滑性を付与しつつ滑剤のブリードを抑えるように調節することができるとともに、優れた耐擦傷性及び耐摩耗性を付与することができる表面物性改良剤組成物、これを含有する熱可塑性樹脂組成物、その樹脂成形体及び自動車内装表皮材に関するものである。
従来、自動車のインストルメントパネルやドアトリム等の内装表皮材は軟質塩化ビニル樹脂が主流であったが、近年、軽量でリサイクルが容易であり、コストパフォーマンスが高く、燃焼時にガスを発生しないこと等から、ポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂に代替が進められている。しかしながら、オレフィン系樹脂の内装表皮材は、塩化ビニル樹脂を原料とする内装表皮材と比較して、耐傷付き性、耐摩耗性及びシボ残り性が劣るといった欠点があるため、その改良が強く望まれており、いくつかの改善提案がなされている。
例えば、自動車内装部品用プロピレン重合体組成物として、プロピレン系ブロック共重合体と高級脂肪酸アミドとからなり、プロピレン系ブロック共重合体が特定構成を有し、高級脂肪酸アミドが特定構造を有する組成物が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このプロピレン重合体組成物は、その特性を損なうことなく、成形時における白化を有効に防止することができる。
また、自動車内外装部品に用いられる熱可塑性エラストマー積層体も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。すなわち、熱可塑性エラストマー積層体は、結晶性ポリオレフィン樹脂、スチレン又はその誘導体の重合体ブロック及びシリコーンオイル、フッ素系ポリマー、高級脂肪酸アミド等から得られる表皮層と、ポリエチレン発泡体又はポリプロピレン発泡体からなる基材層とから構成されている。この熱可塑性エラストマー積層体は、その表面の耐擦傷性が良く、軽量かつリサイクルが容易であり、焼却時に有害なガスを発生しないものである。
特開平8−302149号公報(第2頁から第4頁) 特開平9−156053号公報(第2頁から第4頁)
ところが、特許文献1に記載のプロピレン重合体組成物は、特定のプロピレン系ブロック共重合体に高級脂肪酸アミドを混合(ブレンド)したものであることから、滑剤成分である高級脂肪酸アミドがプロピレン系ブロック共重合体に相溶して樹脂成形体の表面に出にくくなっている。このため、滑剤の効果が十分に発揮されず、耐擦傷性及び耐摩耗性が劣るとともに、高級脂肪酸アミドは耐熱性が低いという問題がある。
一方、特許文献2に記載されている滑剤としてのシリコーンオイルやフッ素系ポリマーは、結晶性ポリオレフィン樹脂、スチレン又はその誘導体の重合体ブロックと非相溶性であるため、樹脂成形体の表面に過剰に染み出す(ブリードする)という問題がある。これに対し、滑剤としての高級脂肪酸アミドは、結晶性ポリオレフィン樹脂、スチレン又はその誘導体の重合体ブロックと相溶しやすく、樹脂成形体の表面にブリードしにくいことから、耐擦傷性及び耐摩耗性の点で劣るとともに、耐熱性にも劣るという問題がある。
本発明の目的とするところは、樹脂成形体に良好な滑性を付与しつつ滑剤の過剰なブリードを抑えることができるとともに、優れた耐擦傷性、耐摩耗性及び耐熱性を付与することができる樹脂成形体の表面物性改良剤組成物、これを含有する熱可塑性樹脂組成物、その樹脂成形体及び自動車内装表皮材を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明における第1の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤組成物は、下記成分(A)及び成分(B)を含有することを特徴とするものである。
成分(A):オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、オレフィン以外のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメントにより形成されているマトリックス相中に分散相を形成しているグラフト共重合体。
成分(B):ネオペンチルポリオール又はその脱水縮合物と脂肪酸とのエステル化物よりなる滑剤。
第2の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤組成物は、第1の発明において、さらに下記の成分(C)を含有することを特徴とするものである。
成分(C):エチレンと、オレフィン以外のビニル単量体とから形成される共重合体。
第3の発明の熱可塑性樹脂組成物は、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーを主成分とし、第1又は第2の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤組成物を含有することを特徴とするものである。
第4の発明の樹脂成形体は、第3の発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするものである。
第5の発明の自動車内装表皮材は、第4の発明の樹脂成形体が自動車内装用の表皮材の形態に成形されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤組成物は、下記成分(A)及び成分(B)を含有するものである。
成分(A):オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、オレフィン以外のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメントにより形成されているマトリックス相中に分散相を形成しているグラフト共重合体。
成分(B):ネオペンチルポリオール又はその脱水縮合物と脂肪酸とのエステル化物よりなる滑剤。
成分(A)のグラフト共重合体は、成分(B)との親和性に優れるオレフィン系重合体セグメント(a)と、成分(B)との親和性に劣るビニル系重合体セグメント(b)とから構成されているため、成分(B)の表面移行性を調整することができる。このため、例えばα-オレフィン重合体又は熱可塑性エラストマーに対して単純に成分(B)の滑剤をブレンドするだけでは得られなかった滑性効果を十分に発揮できるとともに、成分(B)のブリードも抑制することが可能となり、それに基づいて樹脂成形体表面における擦傷や摩耗に対する耐性を高めることができる。また、成分(B)は300℃以上という高い分解開始温度を持つため、一般的なオレフィン系材料の成形加工温度に十分耐えることができる。従って、表面物性改良剤組成物は、樹脂成形体に良好な滑性を付与しつつ滑剤の過剰なブリードを抑えることができるとともに、優れた耐擦傷性、耐摩耗性及び耐熱性を付与することができる。
第2の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤組成物は、さらに下記の成分(C)を含有するものである。
成分(C):エチレンと、オレフィン以外のビニル単量体とから形成される共重合体。
この成分(C)を導入することによって、表面物性改良剤組成物の流動性を向上させることができ、その製造を容易にすることができるとともに、その表面物性改良剤組成物が配合される熱可塑性樹脂組成物の成形性を向上させることができる。しかも、成分(C)は成分(B)との親和性に優れるエチレンと成分(B)との親和性に劣るビニル単量体との共重合体であることから、エチレンとビニル単量体との共重合割合によって成分(B)の表面移行性を変更することができ、その滑性効果を調整することができる。
第3の発明の熱可塑性樹脂組成物は、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーを主成分とし、第1又は第2の発明の樹脂成形体の表面物性改良剤組成物を含有するものである。従って、熱可塑性樹脂組成物について第1又は第2の発明の効果を発揮することができる。
第4の発明の樹脂成形体は、第3の発明の熱可塑性樹脂組成物を成形することによって得られるものである。熱可塑性樹脂組成物中の成分(A)及び成分(B)は、α-オレフィン重合体又は熱可塑性エラストマーと良好な相溶性を示し、成形が容易であるとともに、得られる樹脂成形体について第3の発明の効果を発揮することができる。
第5の発明の自動車内装表皮材は、第4の発明の樹脂成形体が自動車内装用の表皮材の形態に成形されているものである。従って、第4の発明の効果を自動車内装表皮材として有効に発揮させることができる。
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における樹脂成形体の表面物性改良剤組成物は、下記成分(A)及び成分(B)を含有するものである。
成分(A):オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、オレフィン以外のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメントにより形成されているマトリックス相中に分散相を形成しているグラフト共重合体。
成分(B):ネオペンチルポリオール又はその脱水縮合物と脂肪酸とのエステル化物よりなる滑剤。
まず、成分(A)であるグラフト共重合体について説明する。この成分(A)は、幹成分を構成するオレフィン系重合体セグメント(a)と、枝成分を構成するオレフィン以外のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)とからなっている。そして、一方のセグメントが、他方のセグメントにより形成されているマトリックス相(連続相)中に分散相を形成している多相構造型を有している。すなわち、他方のセグメントによるマトリックス相(海)中に一方のセグメントによる微細な分散粒子で形成された分散相(島)が多くの相を形成するように構成されている。そして、グラフト共重合体はマトリックス相の性質と分散相の性質とが、ランダム共重合体に比べてそれぞれ発現されやすくなっている。
分散相を形成する分散粒子の平均粒子径は0.001〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましい。その平均粒子径が0.001μm未満の場合には極微細な分散粒子を形成することが難しく、10μmを越える場合にはグラフト共重合体が前記のような相構造を形成しにくくなり、両セグメントの性質を十分に発現させることができなくなる。グラフト共重合体中のビニル系重合体セグメント(b)は滑剤である成分(B)との親和性に劣るが、オレフィン系重合体セグメント(a)が成分(B)との親和性に優れることから、樹脂成形体における成分(B)のブリードを抑制する機能を発揮させることができ、良好な外観を持たせることができる。
上記オレフィン系重合体セグメント(a)を形成するオレフィン系重合体とは、オレフィン単独重合体、又はオレフィンとその他のビニル単量体との共重合体から形成されるセグメントである。オレフィン系重合体としては、例えばα−オレフィン重合体、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとその他の少なくとも1種のビニル単量体から形成される共重合体、エチレン系共重合ゴム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
α−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン及びこれらの混合物等が挙げられる。α−オレフィン単独重合体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとの共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等が挙げられる。
エチレンとその他の少なくとも1種のビニル単量体から構成される共重合体の具体例としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物等が挙げられる。また、エチレン系共重合ゴムの具体例としては、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン・ブテン共重合体ゴム、エチレン・ブテン・非共役ポリエン共重合体ゴム、エチレン・ヘキセン共重合体ゴム、エチレン・オクテン共重合ゴム等が挙げられる。これらのオレフィン系重合体セグメント(a)の中で、成分(B)との親和性が優れている点及び弾性回復性が高い点で、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合ゴム又はエチレン・1−オクテン共重合ゴムが好ましい。
次に、ビニル系重合体セグメント(b)は成分(B)との親和性に劣る成分で、成分(B)を樹脂成形体の表面に移行させる機能を有している。このビニル系重合体セグメント(b)を形成するオレフィン以外のビニル単量体としては、アルキル鎖長の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酸基を有するビニル単量体、ヒドロキシル基を有するビニル単量体、エポキシ基を有するビニル単量体、シアノ基を有するビニル単量体及びスチレンより選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。これらのビニル単量体は、成分(B)を樹脂成形体の表面に移行させる機能を高めることができるからである。なお、本明細書ではアクリルとメタクリルを(メタ)アクリルと総称する。
ビニル単量体として具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。これらの中でも、滑剤との相互作用が大きく、滑剤の表面移行性を調整しやすい点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル又はスチレンが好ましい。
ビニル系重合体セグメント(b)を形成するビニル系重合体の質量平均分子量は、通常1,000〜2,000,000、好ましくは5,000〜1,200,000、より好ましくは100,000〜1,000,000の範囲である。ここで、質量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)中、スチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による測定値である。質量平均分子量が1,000未満であるとグラフト共重合体の耐熱性が低下する傾向があり、2,000,000を越えるとグラフト共重合体の溶融粘度が高くなり、成形性が低下する傾向にある。
また、グラフト共重合体のメルトフローレート(MFR)又はメルトインデクス(MI)は、好ましくは0.01〜500g/10分、さらに好ましくは0.1〜300g/10分、最も好ましくは1〜200g/10分である。このMFRはJIS K7210に規定された方法に準拠して、樹脂温度230℃、測定荷重21N(2.16kg・f)の条件で測定したものである。MFRが0.01g/10分未満又は500g/10分を越えると、表面物性改良剤組成物が配合されるオレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーとの相溶性が悪く、最終的に樹脂成形体の外観が悪化する傾向にあるため好ましくない。
前述のように、グラフト共重合体は多相構造型のもので、オレフィン系重合体セグメント(a)とビニル系重合体セグメント(b)の一方のセグメントが、マトリックス相を形成する他方のセグメント中に平均粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成しているものである。分散相を形成する一方のセグメントの平均粒子径が0.001μm未満の場合及び10μmを越える場合のいずれも、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーへグラフト共重合体を混合したときの分散性が悪く、得られる樹脂成形体の外観が悪化したり、機械的物性を損ねたりする傾向があるため好ましくない。
グラフト共重合体を構成するオレフィン系重合体セグメント(a)とビニル系重合体セグメント(b)との割合は、オレフィン系重合体セグメント(a)が通常5〜99質量%、好ましくは20〜95質量%である。従って、ビニル系重合体セグメント(b)は通常1〜95質量%、好ましくは5〜80質量%である。オレフィン系重合体セグメント(a)が5質量%未満又はビニル系重合体セグメント(b)が95質量%を越える場合、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーへのグラフト共重合体の分散性が低下し、得られる樹脂成形体の外観が低下する傾向にある。逆に、オレフィン系重合体セグメント(a)が99質量%を越える場合又はビニル系重合体セグメント(b)が1質量%未満の場合、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーに対する改良効果が不十分となる傾向にある。オレフィン系重合体セグメント(a)とビニル系重合体セグメント(b)との割合を調整し、グラフト共重合体の極性を変更することにより、滑剤である成分(B)とグラフト共重合体との相互作用を調整することができる。
グラフト共重合体を製造する際のグラフト化法は、一般に知られている連鎖移動法、電離性放射線照射法等いずれの方法でも良いが、下記に示す方法が最も好ましい。なぜならば、製造方法が簡便で、グラフト効率が高く、熱によるビニル系重合体セグメント(b)の二次的凝集が起こらず、グラフト共重合体を成分(B)と混合しやすくなり、両者の相互作用に優れているためである。
具体的には、まずオレフィン系重合体の粒子100質量部を水中に懸濁させる。そこへビニル系単量体1〜400質量部、ラジカル重合性有機過酸化物をビニル系単量体100質量部に対し0.01〜20質量部、及び10時間半減期を得るための分解温度40〜90℃のラジカル重合開始剤をビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との合計100質量部に対し0.01〜8質量部を加える。ここで、ラジカル重合性有機過酸化物とは、過酸化物結合とラジカル重合性の官能基を1分子中に有する化合物をいう。このラジカル重合性有機過酸化物として、例えば下記化学式(1)又は化学式(2)で表される化合物の1種又は2種以上の混合物が使用される。ラジカル重合性有機過酸化物の使用量は、ビニル系単量体100質量部に対して0.01〜15質量部であることが好ましい。
次に、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件下で加熱し、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物及びラジカル重合開始剤を前記オレフィン系重合体の粒子中に含浸させる。その含浸率が添加量の好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上に達した時点で温度を上昇させ、ビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物とを前記オレフィン系重合体粒子中で共重合させることによりグラフト化前駆体を得る。このグラフト化前駆体を100〜300℃で溶融、混合することにより、オレフィン系重合体セグメント(a)とビニル系重合体セグメント(b)とからなるグラフト共重合体が得られる。この場合、グラフト共重合体の収率、すなわちグラフト効率は70〜80%に達する。
前記化学式(1)又は化学式(2)で表されるラジカル重合性有機過酸化物とは、次の化合物である。
Figure 2006199762
(式中、R1は水素原子又はメチル基又はエチル基、R2は水素原子又はメチル基、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。mは1又は2である。)
また、前記化学式(2)で表されるラジカル重合性有機過酸化物とは、次の化合物である。
Figure 2006199762
(式中、R6は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子又はメチル基、R8及びR9はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。nは0、1又は2である。)
前記化学式(1)又は化学式(2)で表されるラジカル重合性有機過酸化物として、具体的に好ましいのは、例えばt−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシアリルカーボネート又はt−ブチルペルオキシメタクリルカーボネートである。
次いで、表面物性改良剤組成物を構成する成分(B)は、ネオペンチルポリオール又はその脱水縮合物と脂肪酸とのエステル化物よりなる滑剤である。この成分(B)の滑剤は、表面物性改良剤組成物が配合される樹脂組成物から成形される樹脂成形体に内部滑性及び外部滑性を付与するものである。内部滑性は重合体間の摩擦を少なくして摩擦熱を抑制するものであり、外部滑性は樹脂成形体表面の滑りを良くし、粘着を抑え、離型性を良くするためのものである。この成分(B)を含有する表面物性改良剤組成物を、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーに配合したとき、熱可塑性樹脂組成物又は熱可塑性樹脂組成物から得られる樹脂成形体に特に耐摩耗性及び耐擦傷性を付与することができる。ここで、ネオペンチルポリオールとは、下記の化学式(3)で表される化合物を意味する。
Figure 2006199762
(R11及びR12は炭素数1〜14のアルキル基又はヒドロキシアルキル基)
化学式(3)において、R11及びR12は炭素数が通常1〜14、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であって、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。炭素数が14を越える場合、ネオペンチルポリオールの製造が難しくなり、製造コストが嵩むため好ましくない。炭素数1〜14のアルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基及びテトラデシル基が挙げられる。これらのうち、好ましくはオクチル基、ノニル基及びデシル基である。
炭素数1〜14のヒドロキシアルキル基としてはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシウンデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシトリデシル基又はヒドロキシテトラデシル基が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基又はヒドロキシデシル基が好ましく、ヒドロキシメチル基が特に好ましい。
ネオペンチルポリオールの炭素数は5〜30であることが好ましく、5〜10であることがより好ましい。ネオペンチルポリオールとして具体的には、前記化学式(3)で表される化合物として、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。また、化学式(3)で表される化合物の脱水縮合物として、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの中でネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールが好ましく、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールが特に好ましい。
脂肪酸は飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれでもよいが、飽和脂肪酸の方が脂肪酸エステルとして被膜となったときに滑性効果が高く、しかも経時安定性が良いため好ましい。また、脂肪酸の炭素数は、炭素数6〜22であることが好ましく、炭素数12〜22であることがより好ましい。炭素数6未満の場合には脂肪酸エステルの滑性効果が低くなり、炭素数22を越える脂肪酸は製造が難しくなり、製造コストも上昇する。
炭素数6〜22の飽和脂肪酸としては、例えばカプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等が挙げられる。炭素数6〜22の不飽和脂肪酸としては、例えばオブシツル酸、カプロレイン酸、シトロネル酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツヅ酸、フィデセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中で特に、パルミチン酸又はステアリン酸が耐熱性に優れているため好ましい。
このような成分(B)は市販されており、例えばネオペンチルポリオール長鎖脂肪酸エステルとしてユニスターH−476(ペンタエリスリトールと炭素数12〜22の飽和脂肪酸とのエステル化物)、ネオペンチルポリオール長鎖脂肪酸エステルの部分エステル化物としてユニスターH476D、ユニスターH−470T、ネオペンチルポリオール脂肪酸エステルとしてユニスターH−334R、ユニスターHP−1004、H381R、H−481R、ネオペンチルポリオール中鎖脂肪酸エステル物としてユニスターH−310R、ユニスターH−312R、ユニスターHP−409R、ユニスターHP−409B、ユニスターHP−609B、ペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステルとしてWEP−3、WEP−4(ペンタエリスリトールと炭素数14〜20の飽和脂肪酸とのエステル化物)、WEP−5、WEP−6、ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステルとしてユニスターH−676(ジペンタエリスリトールと炭素数12〜22の飽和脂肪酸とのエステル化物)、ユニスターH−622S(これらすべて日本油脂(株)製の商品名)等が挙げられる。これらの滑剤の中で、樹脂成形体表面の耐擦傷性及び耐摩耗性を向上させるという観点から、ユニスターH−476、ユニスターH476D、ユニスターH−470T、WEP−4、WEP−5又はWEP−6が特に好ましい。
また、表面物性改良剤組成物には、滑剤として本発明の目的を損なわない範囲で他の滑剤を配合することができる。そのような他の滑剤としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘミン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エライジン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等のビス脂肪酸アミド、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ油脂肪酸オクチル、ステアリン酸オクチル、ラウリン酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル等の脂肪酸エステル、流動パラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の炭化水素、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸、ステアリルアルコール等の高級アルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、シリコーンオイル等のシリコーン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコール等が挙げられる。
成分(A)と成分(B)とから構成される表面物性改良剤組成物を、加熱混合により製造する際の加熱温度は70〜350℃が好ましく、100〜300℃がより好ましい。この加熱温度が70℃未満の場合、溶融粘度が高いため成分(A)と成分(B)との混合が不十分となり、相分離や層状剥離が現れるため好ましくない。350℃を越える場合、成分(A)と成分(B)の分解が生じるため好ましくない。溶融、混合する方法としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー又はロールによる混練法等公知の方法が採用される。
成分(A)と成分(B)とから構成される表面物性改良剤組成物中における成分(A)の占める割合は、成分(A)を主成分とすることが好ましく、50〜99質量%であることがより好ましく、60〜90質量%であることが特に好ましい。従って、成分(B)の占める割合は、1〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が特に好ましい。成分(A)が主成分でない場合、成分(B)の表面移行を調整できず、成分(B)が1%より少ない場合、成分(B)による滑性効果が十分に発揮されなくなる。
また、成分(A)と成分(B)とから構成される表面物性改良剤組成物中に、さらに成分(C)としてエチレンと、オレフィン以外のビニル単量体から構成される共重合体(ランダム共重合体)を含有させることができる。この成分(C)を含有することにより、表面物性改良剤組成物の流動性を高め、その製造を容易にすることができるとともに、この表面物性改良剤組成物を添加した熱可塑性樹脂組成物の成形性を向上させることができる。さらに、成分(C)は成分(B)との親和性に優れるエチレンから形成される部分と、親和性に劣るビニル単量体から形成される部分とから構成されるため、成分(B)の表面移行性を変えることが可能となるが、ランダム共重合体では通常ビニル単量体から形成される部分の性質が現れやすい。そのため、成分(C)は成分(B)との親和性が低く、成分(B)の滑剤を樹脂成形体の表面へ移行させる傾向を示す。特に、ビニル単量体が酸基、ヒドロキシル基、エポキシ基、シアノ基等の極性をもつ官能基を有している場合にはその傾向が強くなる。
成分(C)を形成するエチレンと、オレフィン以外のビニル単量体との割合は、通常エチレンが55〜95質量%でビニル単量体が5〜45質量%であり、好ましくはエチレンが70〜90質量%でビニル単量体が10〜30質量%である。このようにビニル単量体の割合はエチレンより少なく設定されるが、前述のようにビニル単量体の性質が現れやすい。ビニル単量体の割合を5質量%より少なく、すなわちエチレンを95質量%より多くすることにより、エチレンの性質が現れやすくなる。
このような成分(C)の具体例としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物等が挙げられる。これらの成分(C)は単独で用いてもよく、また2種以上を組み合せて用いてもよい。
これらの中で、炭素数1〜4の低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は酢酸ビニルよりなるビニル単量体とエチレンとの共重合体が、極性を大きく変化させることができる点及び成分(B)との反親和性に優れている点で好ましい。このような成分(C)として具体的には、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物が挙げられる。
成分(C)の含有量は、表面物性改良剤組成物中において20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。成分(C)の含有量が20質量%未満の場合には成分(C)の含有量が少なくなり過ぎてその機能を十分に発揮することができなくなり、80質量%を越える場合には相対的に成分(B)及び成分(A)の含有量が低下し、樹脂成形体表面の滑性、耐擦傷性及び耐摩耗性が低下する傾向を示す。表面物性改良剤組成物に成分(C)を含有させる場合、前記成分(A)及び成分(B)の含有量は、成分(C)の含有量を差し引いた残りの含有量を、前述した成分(A)と成分(B)との含有比率によって設定される。
滑剤である成分(B)を樹脂成形体の表面により多くブリードさせるためには、成分(B)の含有量を増加させ、そのブリード量を減少させるためには、成分(B)の含有量を減少させる。そのような観点から、目標とする成分(B)のブリード量に応じて成分(A)及び成分(B)の含有量を決定することができる。さらに、成分(C)の組成及び含有量によって成分(B)のブリード量を調整することができるので、目標とする成分(B)のブリード量に応じて適切な成分(C)の組成及び含有量を決定することができる。このように、成分(B)の含有量に対して成分(A)と成分(C)の含有量を調整することによって、滑剤である成分(B)のブリード量を調節することができる。成分(B)のブリードを長期にわたって継続的に調整する(リリースコントロール)ために、一般的には成分(B)の含有量を成分(A)の含有量と同じにするか、又は少なくすることが望ましい。
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーを主成分とし、上記の表面物性改良剤組成物を含有するものである。オレフィン系重合体と熱可塑性エラストマーとは単独で用いてもよく、また2種以上を組み合せて用いてもよい。オレフィン系重合体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、ポリプロピレンとエチレン・プロピレン共重合ゴムとの混合物(ブレンド物)及びその架橋物、ポリエチレンとエチレン・プロピレン共重合ゴムとの混合物及びその架橋物、ポリプロピレンとエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体の混合物及びその架橋物、ポリエチレンとエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体の混合物及びその架橋物、ポリプロピレンとスチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加品(SEBS)との混合物及びその架橋物、ポリプロピレンとエチレン・1−オクテン共重合体との混合物及びその架橋物、ポリエチレンとエチレン・1−オクテン共重合体との混合物及びその架橋物等が挙げられる。架橋は公知の方法により行われるが、その中でも有機過酸化物による架橋は、架橋効率が良く、簡便であることから好ましい。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーは市販されており、例えばミラストマー(三井化学(株)製の商品名)、サントプレーン(エー・イー・エスジャパン(株)製の商品名)、住友TPE(住友化学(株)製の商品名)、エンゲージ(デュポン・ダウ・エラストマー(株)製の商品名)、サーモラン(三菱化学(株)製の商品名)等が挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)又はその水素添加品(H−SBR)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SBS)又はその水素添加品(SEBS)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SIS)又はその水素添加品(SEPS、HV−SIS)等が挙げられる。係るスチレン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、タフテック(旭化成(株)製の商品名)、エラストマーAR(アロン化成(株)製の商品名)、セプトン((株)クラレ製の商品名)、クレイトン(クレイトンポリマージャパン(株)製の商品名)、JSR TR(JSR(株)製の商品名)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他のゴムを配合することもできる。そのような他のゴムとしては、例えばブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム、アクリルゴム及びシリコーンゴム等が挙げられる。さらに、熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で無機充填剤を配合することができる。そのような無機充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーン、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が挙げられる。さらに熱可塑性樹脂組成物には、耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、分散剤、発泡剤、紫外線防止剤、着色剤、可塑剤、鉱物油系軟化剤等を配合することができる。
上記の熱可塑性樹脂組成物は、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーを主成分とし、前記表面物性改良剤組成物を含有する組成物を120〜350℃で溶融、混合することによって製造される。この温度が120℃未満の場合、各成分の溶融が不完全になったり、溶融粘度が高いため混合が不十分になり、相分離や層状剥離が現れて好ましくない。一方、350℃を越える場合、ゴム、樹脂、滑剤等が分解するため好ましくない。溶融、混合方法としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールによる混練法等公知の方法が採用される。
また、熱可塑性樹脂組成物は、必ずしも表面物性改良剤組成物を一旦調製してから、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーに混合しなくても良く、成分(A)と成分(B)と、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーとを同時に混合又は架橋して調製しても良い。或いは、成分(A)と成分(B)と成分(C)と、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーを同時に混合又は架橋して調製しても良い。これはオレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーの中で、成分(A)と成分(B)、又は成分(A)と成分(B)と成分(C)とが表面物性改良剤組成物と実質上同様な組成となるためである。
また、成分(A)のグラフト共重合体は必ずしもグラフト共重合体として混合しなくても良く、グラフト化前駆体の状態で混合しても良い。これはグラフト化前駆体が溶融、混合されることにより、成分(A)のグラフト共重合体に変換されるからである。なお、グラフト化前駆体で溶融、混合した場合、一部が成分(B)、成分(C)、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーと共重合してグラフト共重合体となる可能性があるが、差し支えない。
熱可塑性樹脂組成物中における表面物性改良剤組成物の含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、0.2〜20質量%がさらに好ましく、1.0〜20質量%が特に好ましい。従って、熱可塑性樹脂組成物中におけるオレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーの含有量は、70〜99.9質量%が好ましく、80〜99.8質量%がさらに好ましく、80〜99.0質量%が特に好ましい。表面物性改良剤組成物の含有量が0.1質量%未満のときには表面物性改良剤組成物による特性の発現が不十分になり、30質量%を越えるときには得られる樹脂成形体の機械的物性が低下するため好ましくない。
次に、上記の熱可塑性樹脂組成物を所定の成形法にて成形することにより樹脂成形体が得られる。樹脂成形体の種類としては、シート、フィルム、中実成形体、中空成形体、発泡体等を挙げることができる。成形法としては、一般に用いられる熱可塑性樹脂の成形法が採用され、具体的にはカレンダー成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、発泡成形法、押出成形法、射出成形法、真空成形法、粉末成形法等を挙げることができる。樹脂成形体として具体的には、自動車内装品、その他の自動車部品、各種の電気製品、機械部品、雑貨品等が挙げられる。
この樹脂成形体は、自動車内装用の表皮材の形態に成形されることにより、自動車内装表皮材が得られる。自動車内装表皮材は、例えばポリオレフィン発泡体と、その表面に設けられる前記熱可塑性樹脂組成物を成形してなる表皮層との積層体である。この表皮層上にトップコート層を塗布形成することもできる。表皮層とトップコート層との間にはプライマー層を介することもできる。前記熱可塑性樹脂組成物を成形してなる表皮層は、T−ダイ付き押出成形機、カレンダー成形機等の樹脂(プラスチック)加工機に、常法に従って熱可塑性樹脂組成物を供給してシート状等の所望形状に成形することによって得られる。
ポリオレフィン発泡体に使用されるポリオレフィンとして具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、これらの架橋発泡体がより好ましい。その架橋発泡体は、ポリエチレン又はポリプロピレンに発泡剤及び架橋剤(ラジカル発生剤)を混合し、得られた混合物を軟化点以上の温度に加熱し、架橋剤を分解させることにより得ることができる。架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機パーオキサイドが用いられる。その他の架橋方法としては、電離性放射線照射による方法や多官能性単量体の存在下における電離性放射線照射による方法等が挙げられる。電離性放射線には電子線、γ線、X線、イオンビーム等があるが、工業的に利用しやすいのは電子線とγ線である。電離性放射線の照射量としては、30〜500kGy程度が適当である。照射量が増える程架橋度は高くなるが、耐熱老化性が悪くなるため、60〜300kGyの範囲が好ましい。
積層体の成形は、公知の成形方法に従って行われる。例えば、熱可塑性樹脂組成物をT-ダイ付き押出機によって押出し、押出された溶融状態にあるシート状の熱可塑性樹脂組成物をポリオレフィン発泡体シートと積層させた状態で一対のロール間を通す方法で成形される。
表皮層上に塗布形成されるトップコート層の材料として具体的には、ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びイソシアネート樹脂から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。さらに具体的には、飽和ポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びその誘導体等、アクリル酸エステル樹脂としてはポリメチル(メタ)アクリレート、ポリイソブチル(メタ)アクリレート、ポリ2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等、イソシアネート樹脂としてはポリヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。このトップコート層の厚みは、300μm以下であることが好ましい。
また、自動車内装表皮材は、通常表面にシボ付けされて用いられる。シボ付けは公知の方法により行うことができ、例えばシート成形時にシボロールとピンチロールとの間を通すこと等により行うことができる。自動車内装表皮材は、例えばインストルメントパネル、ドアトリム、シフトレバー、ハンドル、コンソールボックス、エアバッグカバー、アシストグリップ、天井、シート等の表皮層として用いられる。
さて、樹脂成形体の表面物性改良剤組成物を調製する場合には、成分(A)のグラフト共重合体と成分(B)のエステル化物とを所定の配合比で加熱混合することにより行われる。得られた表面物性改良剤組成物を用いて熱可塑性樹脂組成物を調製する場合には、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーを主成分とし、それに表面物性改良剤組成物を少量配合し、加熱溶融させることにより行われる。そして、この熱可塑性樹脂組成物を用いて樹脂成形体を成形する場合には、熱可塑性樹脂組成物を例えば押出成形機で加熱溶融して押出成形することにより、樹脂成形体として例えば自動車内装表皮材の表皮層となるシートが得られる。
このとき、グラフト共重合体中における炭素鎖長(ポリメチレン結合)の長いオレフィン系重合体セグメント(a)は、炭素鎖長の長い脂肪酸から得られた成分(B)のエステル化物との親和性に優れる一方、炭素鎖長の短いビニル系重合体セグメント(b)は成分(B)との親和性に劣る。表面物性改良剤組成物は、樹脂成形体のマトリックスとなるオレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーに配合され、成分(A)中のオレフィン系重合体セグメント(a)が成分(B)に親和性を示し、成分(B)の滑剤は樹脂成形体表面への移行が抑えられ、ブリードすることが抑制される。一方、ビニル系重合体セグメント(b)が成分(B)に対して非親和性を示し、成分(B)の滑剤は樹脂成形体の表面へ移行しやすく、ブリードが促進される。その上、成分(C)の共重合体が成分(B)の滑剤に対して所定の親和性を持ち、樹脂成形体の表面への滑剤のブリードが調整される。このため、成分(A)の両セグメント及び成分(C)の作用が相俟って樹脂成形体表面への滑剤のブリードを適度なものにすることができる。
従って、滑剤に基づいて樹脂成形体に滑性を付与することができると同時に、主にその滑性に基づいて樹脂成形体表面への擦傷や摩耗に対する耐性を高めることができる。すなわち、滑剤のリリースコントロール性が良いことから、上記の各作用を長期にわたって発現させることができる。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態における樹脂成形体の表面物性改良剤組成物は、成分(A)としてオレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、ビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とするグラフト共重合体及び成分(B)としてネオペンチルポリオール又はその脱水縮合物と脂肪酸とのエステル化物よりなる滑剤を含有する。成分(A)のグラフト共重合体は、成分(B)との親和性に優れるオレフィン系重合体セグメント(a)と、成分(B)との親和性に劣るビニル系重合体セグメント(b)とから構成されているため、成分(B)の表面移行性を調整することができる。
このため、例えばオレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーに対して単純に成分(B)の滑剤をブレンドするだけでは得られなかった滑性効果を発揮できるとともに、成分(B)のブリードも抑制することができ、それに基づいて樹脂成形体表面における擦傷や摩耗に対する耐性を高めることができる。また、成分(B)は300℃以上の高い分解開始温度を持つため、一般的なオレフィン系材料の成形加工温度に十分耐えることができる。従って、表面物性改良剤組成物は、樹脂成形体に良好な滑性を付与しつつ滑剤の過剰なブリードを抑えることができるとともに、優れた耐擦傷性、耐摩耗性及び耐熱性を付与することができる。
・ また、表面物性改良剤組成物は、さらに成分(C)としてエチレンと、オレフィン以外のビニル単量体とから形成される共重合体を含有することが好ましい。この成分(C)を導入することによって、表面物性改良剤組成物の溶融時における流動性を向上させることができ、その製造を容易にすることができるとともに、その表面物性改良剤組成物が配合される熱可塑性樹脂組成物の成形性を向上させることができる。しかも、成分(C)は成分(B)との親和性を所定値に設定することができることから、成分(B)の表面移行性を変えることができ、その滑性効果を調整することができる。
・ さらに、熱可塑性樹脂組成物は、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーを主成分とし、上記樹脂成形体の表面物性改良剤組成物を含有する。従って、熱可塑性樹脂組成物について前記の各効果を発揮することができる。
・ 樹脂成形体は、上記の熱可塑性樹脂組成物を成形することによって得られるものである。熱可塑性樹脂組成物中の成分(A)及び成分(B)は、オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーと良好な相溶性を示し、成形が容易であるとともに、得られる樹脂成形体について前記の効果を発揮することができる。
・ また、自動車内装表皮材は、上記の樹脂成形体が自動車内装用の表皮材の形態に成形されているものである。従って、上記樹脂成形体の効果を自動車内装表皮材として有効に発揮させることができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。各例中の部及び%は特に断らない限り質量部及び質量%を示す。なお、これらの実施例及び比較例における物性測定に用いた試験方法は以下の通りである。
(1)耐ブリード性: 射出成形機(田端機械工業(株)製)を用い、ペレットから厚さ3mm、一辺90mmの正方形状をなすプレート試験片を成形し、このプレート試験片を70℃のオーブン中に72時間放置し、プレート試験片表面にブリードする滑剤を目視にて観察し、外観を次の評価基準で評価した。
○: ブリードは全くなし、△: ブリードが僅かにあり、×: ブリードがあり。
(2)耐擦傷性: テーパースクラッチテスター((株)東洋精機製作所製)を用い、耐ブリード性試験で用いたプレート試験片と同じプレート試験片に、回転中心から3.5cmの所に刃先がくるように刃を取り付け、ターンテーブルを0.5rpmの速度で回転させた状態で、刃に0.5Nの荷重をかけてプレート試験片に傷を付けた。その傷を次の評価基準で評価した。
◎: 全く傷跡が見られない、○: 傷跡がほとんど見られない、△: 傷跡がやや目立つ、×: 傷跡が大きく目立つ。
(3)耐摩耗性: 学振式堅牢度摩擦摩耗試験機((株)安田精機製作所製)を用い、耐ブリード性試験で用いたプレート試験片と同じプレート試験片に荷重6.9N(700g・f)の荷重をかけ、カナキン3号布(綿布)により100回往復摩耗させた後のプレート試験片表面を目視にて観察し、次の評価基準で評価した。
○: 傷跡がほとんど見られない、△: 傷跡がやや目立つ、×: 傷跡が大きく目立つ、××: 傷跡が大きく目立ち、かつ粉状の摩耗粉が多量に発生する。
(4)耐熱性: 耐ブリード性試験で用いたプレート試験片と同じプレート試験片を130℃の乾燥機で720時間放置後の外観の変化を目視にて観察し、次の評価基準で評価した。
○: 変化なし、×: 黄変
(5)シボ残り性: シボ残り性表皮シートの展開率が250%になる凸引き真空成形金型を用い、シートの表面温度が120℃になるようにヒータをセットして真空成形を行い、あらかじめシート表面に付けられていたシボの残り性を次の評価基準で評価した。
○: シボ(絞)が全く消えていない状態、△: シボがやや消えている状態、×: シボが消えている状態。
(6)メルトフローレート(MFR): メルトインデクサー((株)東洋精機製作所製)を用い、JIS K 7210に準拠した方法により、測定温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
以下の実施例、比較例及び表中の略記号は次の物質を表す。
PP: ポリプロピレン(商品名:サンアロマーPB671A、サンアロマー(株)製、ポリプロピレン95質量%とポリエチレン5質量%とのブロック共重合体)
PE: ポリエチレン(商品名:スミカセンG401、住友化学(株)製)
TPO−1: オレフィン系熱可塑性エラストマー(商品名:ミラストマー8030、三井化学(株)製)
TPO−2: オレフィン系熱可塑性エラストマー(商品名:サントプレーン201−87、エー・イー・エスジャパン(株)製)
SEBS: スチレン系熱可塑性エラストマー(商品名:タフテックH1062、旭化成(株)製、スチレン/エチレン・ブチレンの質量比が18/82)
EPR: エチレン・プロピレン共重合ゴム(商品名:EP07P、JSR(株)製)
EPDM: エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合ゴム(商品名:EP57P、JSR(株)製、エチレン25質量%、プロピレン29.5質量%及び5−エチリデン−2−ノルボルネン4.5質量%の共重合ゴム)
EOR: エチレン・オクテン共重合ゴム(商品名:エンゲージ8100、(株)デュポン・ダウ・エラストマー製、エチレン70質量%及びオクテン30質量%の共重合ゴム)
EEA: エチレン・アクリル酸エチル共重合体(商品名:NUCコポリマーDPD-J6169、日本ユニカー(株)製、エチレン82質量%及びアクリル酸エチル18質量%の共重合体)
EMA: エチレン・メタクリル酸メチル共重合体(商品名:アクリフトWH401、住友化学工業(株)製、エチレン80質量%及びメタクリル酸メチル20質量%の共重合体)
EVA: エチレン・酢酸ビニル共重合体(商品名:NUCコポリマーNUC−3461、日本ユニカー(株)製、エチレン80質量%及び酢酸ビニル20質量%の共重合体)
H−476: ネオペンチルポリオール長鎖脂肪酸エステル(商品名:ユニスターH−476: 日本油脂(株)製、ペンタエリスリトールと炭素数12〜22の飽和脂肪酸とのエステル化物)
H−676: ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステル(商品名:ユニスターH−676: 日本油脂(株)製、ジペンタエリスリトールと炭素数12〜22の飽和脂肪酸とのエステル化物)
WEP−4: ペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステル(商品名:WEP−4:日本油脂(株)製、ペンタエリスリトールと炭素数14〜20の飽和脂肪酸とのエステル化物)
OA: オレイン酸アミド(商品名:アルフローE−10:日本油脂(株)製)
MMA: メタクリル酸メチル
EA: アルキル酸エチル
BA: アクリル酸ブチル
St: スチレン
MAA: メタクリル酸
HPMA: メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル
GMA: メタクリル酸グリシジル
(合成例1、グラフト共重合体の製造)
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中にEPRを700g入れ、攪拌、分散させた。それとは別に、ラジカル重合開始剤としてのジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド1.5g、ラジカル重合性有機過酸化物としてt−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート9gをビニル系単量体としてのSt100g、BA100g及びHPMA100gの混合液に溶解させた。この溶液を前記オートクレーブ中に投入して攪拌した。
次いで、オートクレーブを60〜65℃に昇温し、3時間攪拌することによりラジカル重合開始剤、ラジカル重合性有機過酸化物及びビニル系単量体をEPR中に含浸させた。続いて、含浸されたビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物及びラジカル重合開始剤の合計量が添加量の30質量%以上になっていることを確認した。その後、温度を70〜75℃に上昇させ、その温度で6時間維持して重合を完結させ、水洗及び乾燥してグラフト化前駆体を得た。このグラフト化前駆体からテトラヒドロフランでSt−BA−HPMA共重合体を抽出し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で質量平均分子量(THF中、スチレン換算による)を測定したところ、600,000であった。
次に、このグラフト化前駆体をラボプラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所製)で180℃にて押し出し、グラフト化反応させることによりグラフト共重合体を得た。このグラフト共重合体を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製)により観察したところ、平均粒子径0.35μmの真球状樹脂が均一に分散した多相構造型のグラフト共重合体であった。このグラフト共重合体のグラフト効率は80%であった。
(合成例2、グラフト共重合体の製造)
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中にEORを500g入れ、攪拌、分散した。それとは別に、ラジカル重合開始剤としてのベンゾイルペルオキシド0.5g、ラジカル重合性有機過酸化物としてt−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート3gをビニル系単量体としてのMMA200g、BA200g及びMAA100gの混合液に溶解させた。この溶液を前記オートクレーブ中に投入して攪拌した。
次いで、オートクレーブを60〜65℃に昇温し、2時間攪拌することによりラジカル重合開始剤、ラジカル重合性有機過酸化物及びビニル系単量体をEOR中に含浸させた。続いて、含浸されたビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物及びラジカル重合開始剤の合計量が添加量の30質量%以上になっていることを確認した後、温度を80〜85℃に上昇させた。そして、その温度で5時間維持して重合を完結させた後、水洗及び乾燥してグラフト化前駆体を得た。
このグラフト化前駆体からテトラヒドロフランでMMA−BA−MAA共重合体を抽出し、GPCで質量平均分子量(THF中、スチレン換算による測定)を測定したところ、800,000であった。次いで、このグラフト化前駆体をラボプラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所製)で200℃にて押し出し、グラフト化反応させることによりグラフト共重合体を得た。得られたグラフト共重合体を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製)により観察したところ、平均粒子径0.25μmの真球状樹脂が均一に分散した多相構造型のグラフト共重合体であった。このグラフト共重合体のグラフト効率は70%であった。
(合成例3、グラフト共重合体の製造)
表1に示した成分及び配合割合に変更して、合成例1と同様の操作でグラフト共重合体を得た。
Figure 2006199762
(実施例1〜6、参考例1〜3、表面物性改良剤組成物の製造)
表2に示す成分及び配合割合でドライブレンドした後、シリンダー温度180℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機で溶融、混合して、表面物性改良剤組成物のペレットを得た。
Figure 2006199762
(実施例7〜12、比較例1〜4)
表3に示す配合でα-オレフィン重合体又は熱可塑性エラストマーと表面物性改良剤組成物をドライブレンドした後、シリンダー温度200℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機で溶融、混合して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。これらのペレットを用い、樹脂成形体としての試験片を成形し、得られた試験片について前記の耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐熱性、シボ残り性及び流動性(MFR)の試験を行った。それらの結果を表3に示した。
Figure 2006199762
(実施例及び比較例のまとめ)
表3に示したように、実施例7〜12の試験片は、耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐熱性、シボ残り性及び流動性(加工性)の全てについて良好な結果を得ることができた。
一方、比較例1ではオレフィン系熱可塑性エラストマー単体であるため、耐ブリード性と耐熱性は良好であるが、耐擦傷性、耐摩耗性、シボ残り性及び流動性で劣ることが明らかであった。比較例2では、ポリプロピレンに滑剤を単にブレンドしただけであるため、滑剤の表面移行性をコントロールできず、耐熱性は良好であるが、耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性、シボ残り性及び流動性で劣っていた。比較例3では、成分(A)が含まれていないため、滑剤の表面移行性をコントロールできず、結果として耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性、シボ残り性及び流動性の点で劣っていた。比較例4では成分(B)以外の滑剤であるオレイン酸アミドを使用した場合であるが、耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性及びシボ残り性は良好であるが、耐熱性が劣っていた。
なお、前記実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 表面物性改良剤組成物には、成分(B)との親和性が良いオレフィン系重合体を配合し、成分(B)の樹脂成形体表面へのブリードを抑えるように構成することもできる。
・ 表面物性改良剤組成物には、成分(B)との親和性に劣るオレフィン以外のビニル系重合体を配合し、成分(B)の樹脂成形体表面へのブリードを促すように構成することもできる。
・ 表面物性改良剤組成物には、エチレンと、オレフィン以外のビニル単量体とのブロック共重合体を配合することもできる。
・ 熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性エラストマーとして、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等を用いることもできる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記成分(A)のグラフト共重合体を構成する分散相の分散粒子の平均粒子径は、0.001〜10μmである請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤組成物。このように構成した場合、請求項1又は請求項2に係る発明の効果を有効に発揮させることができる。
・ 前記成分(A)のビニル系重合体セグメントは、アルキル基、酸基、ヒドロキシル基、エポキシ基又はシアノ基を有するビニル単量体とそれ以外のビニル単量体との共重合体から形成されている請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤組成物。このように構成した場合、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加え、成分(B)を樹脂成形体の表面に移行させる効果を向上させることができる。

Claims (5)

  1. 下記成分(A)及び成分(B)を含有することを特徴とする樹脂成形体の表面物性改良剤組成物。
    成分(A):オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、オレフィン以外のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメントにより形成されているマトリックス相中に分散相を形成しているグラフト共重合体。
    成分(B):ネオペンチルポリオール又はその脱水縮合物と脂肪酸とのエステル化物よりなる滑剤。
  2. さらに下記の成分(C)を含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤組成物。
    成分(C):エチレンと、オレフィン以外のビニル単量体とから形成される共重合体。
  3. オレフィン系重合体又は熱可塑性エラストマーを主成分とし、請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形体の表面物性改良剤組成物を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする樹脂成形体。
  5. 請求項4に記載の樹脂成形体が自動車内装用の表皮材の形態に成形されていることを特徴とする自動車内装表皮材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010070598A (ja) * 2008-09-17 2010-04-02 Tigers Polymer Corp オープン架橋用の炭素質含有ゴム組成物
JP2016124880A (ja) * 2014-12-26 2016-07-11 住友理工株式会社 防振ゴム組成物

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