JP2020181104A - 光配向用液晶配向剤、液晶配向膜およびこれを用いた液晶表示素子 - Google Patents

光配向用液晶配向剤、液晶配向膜およびこれを用いた液晶表示素子 Download PDF

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Abstract

【課題】光に対して安定性が高く、且つ、液晶表示素子に適用したとき、より高いコントラストを実現する液晶配向膜、および、そのような液晶配向膜を形成できる液晶配向剤を提供すること。【解決手段】ポリマー成分として少なくともポリマー成分Aおよびポリマー成分Bを含有する光配向用液晶配向剤であって、ポリマー成分Aは少なくとも熱反応性を有する光反応性モノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体またはその誘導体からなり、前記熱反応性を有する光反応性モノマーは、前記重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含み、且つ、前記重合体の構成単位を形成する部分が加熱により化学反応を起こすものであり、ポリマー成分Bは少なくとも熱反応性を有しない光反応性モノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体またはその誘導体からなり、前記熱反応性を有しない光反応性ジアミンは、前記重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含み、且つ、前記重合体の構成単位を形成する部分が加熱による化学反応を起こさないものである。【選択図】なし

Description

本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜およびこれを用いた液晶表示素子に関する。詳しくは、光配向方式の液晶配向膜(以降、光配向膜と略記することがある。)を形成するための液晶配向剤、この液晶配向剤を用いて形成される光配向方式の液晶配向膜、そして、この液晶配向膜を有する液晶表示素子に関する。
液晶表示素子として、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、垂直配向型のVA(Multi-domain Vertical Alignment)モード等、様々な駆動方式のものが知られている。これらの液晶表示素子は、テレビ、携帯電話等、各種電子機器の画像表示装置に応用されており、さらなる表示品位の向上を目指して開発が進められている。具体的には、液晶表示素子の性能の向上は、駆動方式、素子構造の改良のみならず、素子に使用される構成部材によっても達成される。そして、液晶表示素子に使用される構成部材のなかでも、特に液晶配向膜は表示品位に係わる重要な部材の1つであり、液晶表示素子の高品位化の要求に応えるべく、この液晶配向膜についても盛んに研究が進められている。
ここで、液晶配向膜は、液晶表示素子の液晶層の両側に設けられた一対の基板上に、該液晶層に接して設けられ、液晶層を構成する液晶分子を、基板に対して一定の規則性を持って配向させる機能を有する。液晶配向性の高い液晶配向膜を用いることにより、コントラストが高く、残像特性が改善された液晶表示素子を実現することができる(例えば、特許文献1および2参照)。
こうした液晶配向膜の形成には、現在、ポリアミック酸、可溶性のポリイミドもしくはポリアミック酸エステルを有機溶剤に溶解させた溶液(ワニス)が主に用いられている。これらのワニスにより液晶配向膜を形成するには、ワニスを基板に塗布した後、加熱等により塗膜を固化してポリイミド系液晶配向膜を形成し、必要に応じて前述の表示モードに適する配向処理を施す。配向処理方法としては、布などで配向膜の表面を擦ってポリマー分子の方向を整えるラビング法と、配向膜に直線偏光の紫外線を照射することにより、ポリマー分子に光異性化や二量化等の光化学変化を起こさせて膜に異方性を付与する光配向法が知られており、このうち光配向法は、ラビング法に比べて配向の均一性が高く、また、非接触の配向処理法であるため膜に傷が付かないことや、発塵や静電気等の液晶表示素子の表示不良を発生させる原因を低減できる等の利点がある。
こうした光配向法を用いた液晶配向膜として、例えば、特許文献1〜5には、光異性化の技術を応用することで、アンカリングエネルギーが大きく、液晶配向性が良好な光配向膜を得たことが記載されている。
特開2010−197999号公報 国際公開2013/157463号 特開2005−275364号公報 特開2007−248637号公報 特開2009−069493号公報 特開平11−249142号公報 国際公開2013/161569号 特開2015−135464号公報 国際公開2017/119376号
上記のように、光配向法による配向処理を施して異方性を付与したポリイミド系液晶配向膜が知られている。しかしながら、光配向法によるポリイミド系液晶配向膜は、ラビング処理によるポリイミド系液晶配向膜と比較して一般に電気特性が劣り、特に、バックライトからの光が長時間照射されるような使用状況において、液晶表示素子の表示品位を損ない易い傾向がある。これは、光化学反応を生じさせるために液晶配向膜に導入している特定部位(光反応性基)、中でも、アゾ基が光を吸収してラジカルを発生しやすいために、液晶表示素子の電圧保持率(以降、VHRと略記する。)が低下するためであると考えられる。
これに対しては、従来の光配向法によるポリイミド系液晶配向膜を使用しながら、層構成等を工夫することで、液晶表示素子の電圧保持率の低下を抑える検討が行われている(例えば、特許文献6〜9を参照。)。しかしながら、そのような構成を液晶配向膜に採用したとしても、液晶配向膜が光反応性基を有している以上、その光劣化による電圧保持率の低下は避けられず、近年の要求に十分に応える表示品位を実現することは難しいのが実情である。
そこで本発明者らは、液晶表示素子に適用したとき、光照射に伴う電圧保持率の低下を生じさせにくく、且つ、近年の要求に応える高いコントラストと鮮明な明暗表示を実現する新たな液晶配向膜の構成を見出すべく検討を進めた。その結果、電圧保持率低下の問題に対しては、液晶配向膜のポリマーに光反応性基と化学的に反応する置換基を導入し、加熱により、光反応性基を置換基と反応させて光安定性が高い構造へと変換させることにより、光照射に伴う電気特性の劣化が顕著に抑制されることを見出した。
特許文献6〜9では、液晶表示素子の電圧保持率の低下を抑えるために、液晶配向膜の構成に着目して工夫を行っているものの、液晶配向膜のポリマーに光反応性基と化学的に反応する構造を導入して、加熱による化学反応により光反応性基を光に対して安定な構造に変換することについては全く記載されておらず、これらの文献からは、そのような構造を導入することで、液晶表示素子の電圧保持率の低下が抑制されることについては予測がつかない。
このような状況下において本発明者らは、光に対して安定性が高く、且つ、液晶表示素子に適用したとき、より高いコントラストを実現する液晶配向膜、および、そのような液晶配向膜を形成できる液晶配向剤を提供することを目的として鋭意検討を進めた。また、バックライト等からの光に長時間晒されても高い電圧保持率が維持されるとともに、コントラストが高く、明暗表示が鮮明な液晶表示素子を提供することを目的として鋭意検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、加熱により化学反応を起こす光反応性構造を構成単位に含む第1のポリマー成分(ポリマー成分A)と、加熱により化学反応を起こさない光反応性構造を構成単位に含む第2のポリマー成分(ポリマー成分B)とを混合し調製された液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成することにより、その液晶配向膜を適用した液晶表示素子において、光照射に伴う電圧保持率の低下が顕著に抑えられ、また、コントラストが高く、鮮明な明暗表示が実現することを見出した。本発明は、こうした知見に基づいて提案されたものであり、具体的に以下の構成を有する。
[1]光反応性構造を含む構成単位を有するポリマー成分Aおよびポリマー成分Bを含有する光配向用液晶配向剤であって、
前記ポリマー成分Aは、少なくとも熱反応性を有する光反応性モノマーを含有するモノマー組成物Aを重合させてなる重合体またはその誘導体からなり、前記熱反応性を有する光反応性モノマーは、前記重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含み、且つ、前記重合体の構成単位を形成する部分が加熱により化学反応を起こすものであり、
前記ポリマー成分Bは、少なくとも熱反応性を有しない光反応性モノマーを含有するモノマー組成物Bを重合させてなる重合体またはその誘導体からなり、前記熱反応性を有しない光反応性ジアミンは、前記重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含み、且つ、前記重合体の構成単位を形成する部分が加熱による化学反応を起こさないものである、光配向用液晶配向剤。
[2] 前記熱反応性を有する光反応性モノマーにおける前記化学反応が環化反応である、[1]に記載の光配向用液晶配向剤。
[3] 前記熱反応性を有する光反応性モノマーが、下記式(a−1)で表される構造および下記式(a−2)で表される構造の少なくとも一方を有する光反応性構造を含む、[1]または[2]に記載の光配向用液晶配向剤。
[式(a−1)において、Raは、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表し;
式(a−2)において、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表し;
式(a−1)および式(a−2)において、*は光反応性基との結合位置を表す。]
[4] 前記熱反応性を有する光反応性モノマーが、光異性化構造または光フリース転位構造を有する光反応性構造を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
[5] 前記熱反応性を有する光反応性モノマーが、下記式(1)で表される構造を有する光反応性構造を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
[式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、下記式(1−1)または下記式(1−2)で表される基を表し、R1およびR2の少なくとも1つは、下記式(1−1)または下記式(1−2)で表される基であり;
*はベンゼン環における結合位置を表し、一方のベンゼン環における水素と置換可能な位置のいずれか、または、他方のベンゼン環の水素と置換可能な位置のいずれかであり;
ベンゼン環の水素は、置換基で置換されていてもよい。]
[式(1−1)および式(1−2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表し;
*は、式(1)におけるベンゼン環への結合位置を表す。]
[6] 前記モノマー組成物Aを重合させてなる重合体またはその誘導体が、ポリアミック酸、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーおよびポリアミドイミドポリアミック酸から選択される少なくとも1種であり、
前記熱反応性を有する光反応性モノマーが、下記式(2)で表されるジアミンである、[1]〜[5]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
[式(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、式(1−1)または式(1−2)で表される基を表し、R1およびR2の少なくとも1つは、式(1−1)または式(1−2)で表される基であり;
6およびR8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、−CON(CH3)−、または単結合を表し、R6およびR8において、直鎖アルキレンの−CH2−の1つまたは隣接しない2つは−O−で置き換えられていてもよく;
7およびR9は、それぞれ独立して、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、複素環、または単結合を表し;
2N−R7−R6−の結合位置は、一方のベンゼン環における水素と置換可能な位置のいずれかであり、H2N−R9−R8−の結合位置は、他方のベンゼン環における水素と置換可能な位置のいずれかであり;
ベンゼン環における水素は、置換基で置換されていてもよい。]
[式(1−1)および式(1−2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表し;
*は、式(2)におけるベンゼン環への結合位置を表す。]
[7] R1が式(1−1)で表される基であり、R2が水素である、[5]または[6]に記載の光配向用液晶配向剤。
[8] R4が水素または置換もしくは無置換のアルキルである、[7]に記載の光配向用液晶配向剤。
[9] 前記式(2)で表されるジアミンは、下記式(3)〜(6)のいずれかで表されるジアミンである、[6]に記載の光配向用液晶配向剤。
[式(3)〜(6)において、R4は、独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表し;
ベンゼン環の水素は、置換基で置換されてもよく;
式(5)および式(6)において、R5は、独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表す。]
[10] 前記式(2)で表されるジアミンは、下記式(3−1)〜式(3−9)、式(4−1)〜式(4−9)、式(5−1)、式(5−2)、式(6−1)、および式(6−2)のいずれかで表されるジアミンである、[9]に記載の光配向用液晶配向剤。
[式において、Meはメチル、Etはエチル、Prはプロピル、iPrはイソプロピル、Buはブチル、tBuはt−ブチルをそれぞれ表す。]
[11] 前記モノマー組成物Aが、さらに、非光反応性テトラカルボン酸二無水物を含有する、[6]〜[10]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
[12] 前記熱反応性を有しない光反応性モノマーが、光異性化構造または光二量化構造を有する光反応性構造を含む、[1]〜[11]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
[13] 前記熱反応性を有しない光反応性モノマーが、光異性化構造を有する光反応性構造を含む、[12]に記載の光配向用液晶配向剤。
[14] 前記熱反応性を有しない光反応性モノマーがジアミンである、[12]または[13]に記載の光配向用液晶配向剤。
[15] 前記熱反応性を有しない光反応性モノマーが下記式(II−1)、式(II−2)、式(III−1)、式(III−2)、式(IV−1)、式(IV−2)、式(IV−3)、式(V−1)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−1)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物である[12]〜[14]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
(上記各式において、環を構成するいずれかの炭素に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示し、式(IV−3)において、rは1から10の整数であり、式(V−2)において、R6は独立して−CH3、−OCH3、−CF3、または−COOCH3を表し、aは独立して0〜2の整数であり、式(V−3)において、環Aおよび環Bはそれぞれ独立して、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素および複素環から選ばれる少なくとも1つを表し、R11は、炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、または−CON(CH3)−を表し、R12は、炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、または−CON(CH3)−を表し、R11およびR12において、直鎖アルキレンの−CH2−の1つまたは2つは−O−で置換されてもよく、R7〜R10は、それぞれ独立して、−F、−CH3、−OCH3、−CF3、または−OHを表し、b〜eは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、式(VII−1)において、R4およびR6は、独立して炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、−CON(CH3)−、または単結合を表し、R4およびR6において、直鎖アルキレンの−CH2−の1つまたは隣接しない2つは−O−で置き換えられてもよく、R5およびR7は、独立して、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、複素環、または単結合を表す。
[16] 前記熱反応性を有しない光反応性モノマーが下記式(V−2−1)、式(V−3−2)、式(VI−2−1)、式(VII−1−1)および式(VII−1−2)のいずれかで表される化合物である[12]〜[15]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
[17] 前記モノマー組成物Bが、さらに、非光反応性テトラカルボン酸二無水物を含有する、[12]〜[16]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
[18] ポリマー成分Aの配合量が、ポリマー成分Aとポリマー成分Bの合計重量に対して10〜90重量%である、[1]〜[17]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
[19] 前記液晶配向剤が、さらに、第3のポリマー成分を含有し、
前記第3のポリマー成分は、光反応性構造を含まないモノマーからなるモノマー組成物Cを重合させてなる重合体またはその誘導体からなる、[1]〜[18]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
[20] 前記モノマー組成物Cを重合させてなる重合体またはその誘導体は、ポリアミック酸、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーおよびポリアミドイミドポリアミック酸から選択される少なくとも1種である、[19]に記載の光配向用液晶配向剤。
[21] 横電界型液晶表示素子の液晶配向膜の形成に用いられる、[1]〜[20]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤。
[22] [1]〜[21]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤によって形成された液晶配向膜。
[23] [22]に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
[24] [1]〜[21]のいずれかに記載の光配向用液晶配向剤からなる膜に、偏光を照射して異方性を付与する配向工程と、異方性を付与した前記膜を加熱して焼成させる加熱焼成工程を有し、前記加熱焼成工程の際、前記液晶配向用液晶配向剤が含むポリマー成分の光反応性構造に環化反応を生じさせ、光反応性基を減少させる、液晶配向膜の形成方法。
[25] 前記加熱焼成工程を、加熱温度を変えて2段階以上の工程で行う、[24]に記載の液晶配向膜の形成方法。
[26] [24]または[25]に記載の液晶配向膜の形成方法を用いて液晶配向膜を形成する、液晶表示素子の製造方法。
[27] 製造する液晶表示素子が横電界型液晶表示素子である、[26]に記載の液晶表示素子の製造方法。
本発明の光配向用液晶配向剤により形成した液晶配向膜を用いることにより、光照射に伴う電圧保持率の低下が抑えられ、また、コントラストが高く、明暗表示が鮮明な液晶表示素子を実現することができる。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
光配向用液晶配向剤
本発明における「光配向用液晶配向剤」とは、その膜を基板上に形成したとき、偏光を照射することで異方性を付与することができる液晶配向剤を意味し、本明細書中では単に「液晶配向剤」ということがある。
本発明の光配向用液晶配向剤(液晶配向剤)は液晶配向膜の形成に用いられるものである。本発明の光配向用液晶配向剤は、ポリマー成分として少なくともポリマー成分Aおよびポリマー成分Bを含有する光配向用液晶配向剤であって、前記ポリマー成分Aは、重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含み、且つ、その光反応性構造は加熱により化学反応を起こすものであり、前記ポリマー成分Bは、重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含み、且つ、その光反応性構造は加熱による化学反応を起こさないものである。
<光反応性構造>
本発明における「光反応性構造」とは、光の照射により構造が変化する原子団を意味する。こうした光反応性構造は、通常、光を吸収して化学変化を起こす特定部位(光反応性基)を有し、その光反応性基の化学変化に起因して構造が変化する。以下の説明では、こうした光照射による光反応性構造における変化を光化学変化という。光化学変化の具体例として、光異性化、光フリース転位等を挙げることができる。光反応性構造に構造変化を生じる光の波長は、特に制限されないが、150〜800nmであることが好ましく、200〜400nmであることがより好ましく、300〜400nmであることがさらに好ましい。また、光反応性構造に構造変化を生じるのに要する光照射強度は、0.05〜20J/cm2であることが好ましい。
本発明の液晶配向剤は、光反応性構造を含む構成単位を有するポリマー成分を含有する。ポリマー成分は、液晶配向剤の膜に光配向処理が施されたとき、そのポリマー主鎖が特定の方向に配向して異方性を発現するものである。以下の説明では、「光反応性構造を含む構成単位を有するポリマー成分」を「光反応性ポリマー成分」ということがある。
<光反応性モノマー>
本発明における「光反応性モノマー」は、モノマー組成物に含まれる他の分子と重合して重合体を形成する化合物の分子であって、重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含むものである。
本発明における「熱反応性を有する光反応性モノマー」は、モノマー組成物に含まれる他の分子と重合して重合体を形成する化合物の分子であって、重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含み、且つ、その重合体の構成単位を形成する部分が加熱により化学反応を起こすものである。また、本発明における「熱反応性を有しない光反応性モノマー」は、モノマー組成物に含まれる他の分子と重合して重合体を形成する化合物の分子であって、重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含み、且つ、その重合体の構成単位を形成する部分が加熱による化学反応を起こさないものである。
ここで、「重合体の構成単位を形成する部分」とは、モノマーを構成する分子の中で、重合性基(重合の際に、他の分子の重合性基と反応して結合を形成する末端基)を除いた原子団、言い換えれば、重合後にも残って、重合体の構成単位を構成する部分のことを意味する。以下の説明では、「重合体の構成単位を形成する部分」を「構成単位形成部」ということがある。
また、本発明においては、構成単位形成部に光反応性構造を含むモノマーのうち、そのモノマーの重合体からなる膜を200℃で10分間静置したとき、当該光反応性構造の200nm〜900nmの範囲での極大吸収波長における透過率が静置前の透過率から20%以上変化するモノマーが、構成単位形成部が加熱により化学反応を起こすモノマー、すなわち「熱反応性を有する光反応性モノマー」に該当することとし、そうした加熱による透過率変化を示さないモノマーは「熱反応性を有しない光反応性モノマー」であることとする。以下の説明では、重合体を構成する構成単位のうち、熱反応性を有する光反応性モノマーに由来する構成単位を「第1の構成単位」といい、熱反応性を有しない光反応性モノマーに由来する構成単位を「第2の構成単位」という。
熱反応性を有する光反応性モノマーにおいて、加熱により起こる化学反応は特に限定されないが、光反応性構造の光反応性基を、光反応性を有しない構造に変換する反応であることが好ましく、光反応性基と、当該モノマーの分子が有する他の基との環化反応であることが特に好ましい。これにより、ポリマーの直線性が高くなり、より配向性が高い液晶配向膜を得ることができる。
<ポリマー成分>
本発明における「ポリマー成分」は、モノマー組成物を重合させてなる重合体またはその誘導体からなり、通常は、複数の重合体の分子または複数の誘導体の分子からなる集合物である。
本発明における重合体の「誘導体」とは、モノマー組成物を重合させてなる重合体の一部分を他の原子または原子団に置き換えたもののことを意味する。誘導体は、重合体の第1の構成単位および第2の構成単位以外の部分が、他の原子または原子団に置き換えられたものであることが好ましい。
本発明の液晶配向剤は、モノマー組成物Aを重合させてなる重合体またはその誘導体からなるポリマー成分Aとモノマー組成物Bを重合させてなる重合体またはその誘導体からなるポリマー成分Bとを含む。また、液晶配向剤は、上記各重合体からなるポリマー成分と、その重合体の誘導体からなるポリマー成分の両方を含んでいてもよい。
ポリマー成分Aは、少なくとも熱反応性を有する光反応性モノマーに由来する構成単位(第1の構成単位)を含む。この第1の構成単位は、熱反応性を有する光反応性モノマーの構成単位形成部が含んでいた「光反応性構造」を含み、且つ、加熱により化学反応を起こす構成単位である。
ポリマー成分Bは、少なくとも熱反応性を有しない光反応性モノマーに由来する構成単位(第2の構成単位)を含む。この第1の構成単位は、熱反応性を有しない光反応性モノマーの構成単位形成部が含んでいた「光反応性構造」を含み、且つ、加熱により化学反応を起こさない構成単位である。
本発明の液晶配向剤によって液晶配向膜を形成するには、例えば液晶配向剤を基板に塗布して膜を形成した後、光配向用の偏光を照射する。これにより、その偏光方向と概ね平行にあるポリマー主鎖(ポリマー成分AまたはBの主鎖)において、その構成単位の光反応性構造が選択的に光化学反応を起こして構造が変化し、ポリマー主鎖のうちで特定の方向を向いた成分(構造が変化した結果、特定の方向を向いた成分)が支配的になる。すなわち、膜を構成するポリマー主鎖が特定の方向に配向して異方性が付与された状態になる。その後、この光配向させた膜を加熱して焼成することにより、固体の液晶配向膜が形成される。この加熱焼成の際、本発明では、ポリマー成分A第1の構成単位が化学反応を起こして、その光反応性基が消失し、膜全体で光反応性基の数が減少する。そのため、形成された液晶配向膜は、強い光に晒されてもラジカルを発生しにくく、光に対して高い安定性を示す。また、このとき、ポリマー成分Bは、化学反応を起こすことなく、光配向処理を行った直後の構造を保持するため、その構造がポリマー主鎖の異方性に効果的に寄与する。これにより、形成された液晶配向膜は、光に対して安定性が高いことに加えて、良好な液晶配向性を発揮する。そのため、この液晶配向剤により液晶配向膜が形成された液晶表示素子では、バックライトからの光に長時間晒されても高い電圧保持率が維持されるとともに、コントラストが高く、鮮明な明暗表示を行うことができる。
液晶配向剤における第1の構成単位を含むポリマー成分(ポリマー成分A)と、第2の構成単位を含むポリマー成分(ポリマー成分B)の重量比は任意に定めることができる。良好な信頼性と良好な配向性を実現するためには、ポリマー成分Aの配合量が、ポリマー成分Aとポリマー成分Bの合計重量に対して10%〜90%であることが望ましい。
以下において、ポリマー成分AおよびBの原料となるモノマー組成物AおよびB、について詳述する。
<モノマー組成物A、B>
モノマー組成物Aは、熱反応性を有する光反応性モノマーを少なくとも含有する組成物である。モノマー組成物Aは、熱反応性を有しない光反応性モノマーを含んでいてもよいが、含んでいないことが好ましい。また、モノマー組成物Aは、光反応性構造を含まないその他のモノマーを含んでいてもよい。
モノマー組成物Bは、熱反応性を有しない光反応性モノマーを少なくとも含有する組成物である。モノマー組成物Bは、熱反応性を有する光反応性モノマーを含まない。また、モノマー組成物Bは、光反応性構造を含まないその他のモノマーを含んでいてもよい。
[熱反応性を有する光反応性モノマー]
モノマー組成物Aは熱反応性を有する光反応性モノマーを含む。モノマー組成物Aが含有する熱反応性を有する光反応性モノマーは、1種類であっても2種類以上であってもよい。
熱反応性を有する光反応性モノマーは、重合体の構成単位を形成する部分(構成単位形成部)に光反応性構造を含み、且つ、その重合体の構成単位を形成する部分が加熱により化学反応を起こす化合物である。本発明では、この熱反応性を有する光反応性モノマーの構成単位形成部が重合体に導入されて、光反応性構造を含み、且つ、加熱により化学反応を起こす第1の構成単位を形成する。モノマー組成物が含有する熱反応性を有する光反応性モノマーは、1種類のみであっても2種類以上であってもよい。
なお、以下の説明では、モノマーが「構成単位形成部に光反応性構造を含む」ことを「光反応性」と表現することがあり、例えば「構成単位形成部に光反応性構造を含むモノマー」を「光反応性モノマー」ということがある。また、構成単位形成部が加熱により化学反応を起こす性質を「熱反応性」ということがある。
熱反応性を有する光反応性モノマーの構成単位形成部は、光反応性構造のみからなっていてもよいし、その他の構造を含んでいてもよい。構成単位形成部が含む光反応性構造の数は、1つであっても2つ以上であってもよい。構成単位形成部が2つ以上の光反応性構造を含むとき、それらの光反応性構造同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
熱反応性を有する光反応性モノマーの構成単位形成部は、下記式(a−1)で表される構造および下記式(a−2)で表される構造の少なくとも一方を含む光反応性構造を有することが好ましい。これにより、モノマー組成物を重合させてなる重合体として、式(a−1)で表される構造および式(a−2)で表される構造の少なくとも一方を構成単位に含む重合体を得ることができる。こうした重合体またはその誘導体をポリマー成分として含有する液晶配向剤では、その液晶配向剤の塗膜を加熱したとき、各式におけるベンゼン環の置換基と光反応性基とが環化反応して光反応性基が消失し、膜全体で光反応性基の数が減少する。その結果、光に対して安定な液晶配向膜を形成することができる。
ここで、構成単位形成部は、式(a−1)で表される構造のみを含んでいても、式(a−2)で表される構造のみを含んでいてもよく、式(a−1)で表される構造と式(a−2)で表される構造の両方を含んでいてもよい。また、構成単位形成部が含む式(a−1)で表される構造の数、および、式(a−2)で表される構造の数は、それぞれ1つであっても2つ以上であってもよい。構成単位形成部が式(a−1)で表される構造を2つ以上含むとき、それらの構造同士は、互いに同一であっても異なっていてもよく、構成単位形成部が式(a−2)で表される構造を2つ以上含むとき、それらの構造同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(a−1)において、Raは、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表す。式(a−2)において、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表す。RbとRcは互いに同一であっても異なっていてもよい。式(a−1)および式(a−2)において、*は光反応性基との結合位置である。*は光反応性基に直接結合していてもよいし、二価の基を介して光反応性基と連結していてもよい。
式(a−1)において、Raにおけるアルキルは、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルキルの好ましい炭素数は1〜10であり、よりこのましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、さらにより好ましくは1〜3である。アルキルの具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1−メチルペンチル、1−エチルブチル等を例示することができる。
aにおけるアルカノイルは、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルカノイルの好ましい炭素数は1〜10であり、より好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜2であり、さらにより好ましくは1である。アルカノイルの具体例として、メタノイル、エタノイル、プロパノイル、イソプロパノイル、ブタノイル、イソブタノイル、sec−ブタノイル、tert−ブタノイル、ペンタノイル、イソペンタノイル、ネオペンタノイル、tert−ペンタノイル、1−メチルブタノイル、1−エチルプロパノイル、ヘキサノイル、イソヘキサノイル、1−メチルペンタノイル、1−エチルブタノイル等を例示することができる。
aにおけるアルコキシカルボニルは、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルコキシカルボニルの好ましい炭素数は1〜10であり、より好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜3であり、さらにより好ましくは2である。アルコキシカルボニルの具体例として、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、tert−ブチルオキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、ネオペンチルオキシカルボニル、tert−ペンチルオキシカルボニル、1−メチルブチルオキシカルボニル、1−エチルプロピルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、イソヘキシルオキシカルボニル、1−メチルペンチルオキシカルボニル、1−エチルブチルオキシカルボニル等を例示することができる。
aにおけるアリールカルボニルのアリールは、単環であっても縮合環であってもよい。アリールの好ましい炭素数は6〜22であり、より好ましくは6〜14であり、さらに好ましくは6〜10である。アリールの具体例として、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等を例示することができる。アリールカルボニルの具体例として、フェニルカルボニル、1−ナフチルカルボニル等を例示することができる。
aにおけるアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、およびアリールカルボニルは、それぞれ置換基で置換されていてもよい。置換基として、−OH、−NH2、ハロゲン等を挙げることができる。
これらのうちで、最終的に製造される液晶配向膜の性能を良好にできる点から、Raはメチル、エチル、プロピル、水素、メタノイル、フェニルであることが好ましい。
式(a−2)において、RbおよびRcにおけるアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アリールカルボニルおよびこれらの基に置換しうる置換基の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の式(a−1)のRaにおけるアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アリールカルボニルおよびこれらの基に置換しうる置換基についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
式(a−1)および式(a−2)において、*に結合する光反応性基は、特に限定されないが、アゾ基、1,2−エテンジイル、1,2−エチンジイル、イミノ基、カルボニル、オキシカルボニル等を挙げることができる。
式(a−1)および式(a−2)における各ベンゼン環の水素は置換基で置換されていてもよい。置換基の好ましい範囲と具体例については、下記式(1)において、ベンゼン環に置換しうる置換基の好ましい範囲と具体例を参照することができる。
式(a−1)で表される構造および式(a−2)で表される構造の少なくとも一方を有する光反応性構造はアゾベンゼン構造を構成していることが好ましく、下記式(1)で表される構造であることがより好ましい。下記式(1)で表される構造に紫外線が照射されると、アゾ基のトランス−シス異性化が起こってポリマー主鎖の向きが変化する。これにより、ポリマー主鎖が特定の向きに配向した液晶配向膜が得られる。
式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、式(1−1)または式(1−2)で表される基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は、式(1−1)または式(1−2)で表される基である。R1およびR2のうちで式(1−1)または式(1−2)で表される基であるものは、R1およびR2のうちの一方であっても両方であってもよい。R1およびR2の両方が式(1−1)または式(1−2)で表される基であるとき、それらの基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
*は、式(1)で表される構造の両側の構造への結合位置を表し、その一方のベンゼン環における水素と置換可能な位置のいずれか、または、他方のベンゼン環における水素と置換可能な位置のいずれかである。
式(1−1)において、R4は、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表す。式(a−2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表す。R4とR5は、互いに同一であっても異なっていてもよい。式(1−1)および式(1−2)において、*は式(1)における各ベンゼン環への結合位置を表す。R4およびR5におけるアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アリールカルボニルおよびこれらの基に置換しうる置換基の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の式(a−1)のRaにおけるアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アリールカルボニルおよびこれらの基に置換しうる置換基についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
式(1)におけるベンゼン環の水素は置換基で置換されていてもよい。置換基の好ましい例として、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル、ハロゲン、カルボキシアルキルが挙げられる。アルキルは、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルキルの好ましい炭素数は1〜4であり、より好ましくは1〜2である。アルキルの具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等を例示することができる。アルコキシの好ましい炭素数は1〜4であり、より好ましくは1〜2である。アルコキシの具体例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等を例示することができる。ハロゲン化アルキルの具体例として、トリフルオロメチル等を例示することができる。ハロゲンの具体例として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等を例示することができる。カルボキシアルキルの具体例として、カルボキシメチル、カルボキシエチル等を例示することができる。
熱反応性を有する光反応性モノマーの構成単位形成部に導入する光反応性構造は、上記のアゾベンゼン構造の他、スチルベン構造、アシルヒドラゾン構造などの光異性化構造、フェニルエステル構造などの光フリース転位構造などが挙げられる。熱反応性を有する光反応性モノマーの構成単位形成部が含む光反応性構造は、好ましくはアゾベンゼン構造、スチルベン構造、アシルヒドラゾン構造などの光異性化構造であり、中でも、アゾベンゼン構造であることが特に好ましい。
(光反応性構造を有する構成単位の加熱による化学反応)
本発明で用いる熱反応性を有する光反応性モノマーの構成単位形成部は、光反応性構造を有し、且つ、加熱により化学反応を起こす。これにより、この構成単位形成部が第1の構成単位として導入された重合体またはその誘導体では、光配向法にて異方性を付与した後(光照射により光反応性構造に構造変化を生じさせた後)、加熱を行うことで、光反応性構造を光に対して安定な構造に変換することができる。
以下に、光反応性構造を有し、且つ、加熱により化学反応を起こす構造の例として、アゾベンゼン構造、アシルヒドラゾン構造またはフェニルエステル構造の特定の位置に置換基を導入した構造について、加熱による化学反応により光反応性基が消失するメカニズムについて説明する。下記の式(A−1)で表される構造は、式(1)で表される構造に包含されるものであり、熱反応性を有する光反応性モノマーに導入する光反応性構造としてより好ましい。また、下記の式(B−1)、(C−1)または(D−1)で表される構造も、熱反応性を有する光反応性モノマーに導入する光反応性構造として好ましく用いることができる。
(A)アゾベンゼン構造の環化反応:5員環形成
一方のベンゼン環のアゾ基に対するオルト位に置換基R1Aを有するアゾベンゼン構造、すなわち、下記式(A−1)で表されるアゾベンゼン構造を有する第1の構成単位では、下記反応式に示すように、加熱により、アゾ基がベンゼン環の置換基R1Aと反応してインダゾール環を形成し、アゾ基が消失する。この反応の詳細については、New J. chem., 1999, 23, 1223-1230を参照することができる。
式(A−1)において、R1Aは、式(A−1−1)または式(A−1−2)で表される基を表す。式(A−1−1)および式(A−1−2)において、R4AおよびR5Aは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表す。R4AおよびR5Aの説明と好ましい範囲、具体例については、上記の式(a−1)のRaにおけるアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アリールカルボニルおよびこれらの基に置換しうる置換基についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
(B)アゾベンゼン構造の環化反応:6員環形成
一方のベンゼン環のアゾ基に対するオルト位に置換基(−CH2COOR1B)を有するアゾベンゼン構造、すなわち、下記式(B−1)で表されるアゾベンゼン構造を有する第1の構成単位では、下記反応式に示すように、加熱により、アゾ基がベンゼン環の置換基(−CH2COOR1B)と反応して環状構造を形成し、アゾ基が消失する。
式(B−1)において、R1Bは、水素または置換もしくは無置換のアルキルを表す。アルキルおよびアルキルに置換しうる置換基の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の式(a−1)のRaにおけるアルキルおよびその置換基についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
(C)アシルヒドラゾン構造の環化反応:5員環形成
ベンゼン環におけるイミノ基に対するオルト位に置換基R1Cを有するアシルヒドラゾン構造、すなわち、式(C−1)で表されるアシルヒドラゾン構造を有する第1の構成単位では、下記反応式に示すように、加熱により、イミノ基(=NR)がベンゼン環の置換基R1Cと反応して環状構造を形成し、イミノ基が消失する。
式(C−1)において、R1Cは、式(C−1−1)または式(C−1−2)で表される基を表す。式(C−1)、式(C−1−1)および式(C−1−2)において、R2C、R4CおよびR5Cは、各々独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表す。R2C、R4CおよびR5Cにおけるアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アリールカルボニルおよびこれらの基に置換しうる置換基の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の式(a−1)のRaにおけるアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アリールカルボニルおよびこれらの基に置換しうる置換基の説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
(D)フリース転位後の環化反応:5員環形成
ベンゼン環のエステル結合部位に対するオルト位に置換基(−CH2NHR1D)を有するフェニルエステル構造、すなわち下記式(D−1)で表されるフェニルエステル構造は、下記反応式に示すように、フリース転位させた後、カルボニル基がベンゼン環の置換基(−CH2NHR1D)と反応して環状構造を形成し、カルボニル基が消失する。
式(D−1)において、R1Dは、置換もしくは無置換のアルキルを表す。アルキルおよびアルキルに置換しうる置換基の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の式(a−1)のRaにおけるアルキルおよびその置換基についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
光反応性構造を含む第1の構成単位が化学反応を起こしたか否かは、紫外可視吸収スペクトル(透過率)、核磁気共鳴(NMR)スペクトル、赤外分光(IR)スペクトルにより確認することができる。例えば、光反応性構造がアゾベンゼン構造を構成している場合には、アゾベンゼンの吸収波長である365nmでの透過率が上昇することで、上記の環化反応が生じたことを確認することができる。ここで、アゾベンゼン構造を光反応性構造として含む熱反応性を有する光反応性モノマーを用いた液晶配向剤では、加熱による化学反応により365nmの透過率が10%以上上昇することが好ましい。具体的には、その液晶配向剤からなる膜を230℃で30分間加熱焼成したとき、その膜の365nmにおける透過率が、加熱焼成前の膜の365nmにおける透過率から10%以上上昇することが好ましい。こうした液晶配向剤では、その膜に光配向処理を行った後、加熱を行うことでアゾベンゼン構造の光反応性を確実に低減させることができる。これにより、光安定性が高く、良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を形成することができる。
(熱反応性を有する光反応性モノマーの化合物例)
熱反応性を有する光反応性モノマーの好ましい例として、式(2)で表されるジアミンを挙げることができる。
式(2)で表されるジアミンは、式(1)で表される構造と共通のアゾベンゼン構造を有している。そのため、例えば、このジアミンを熱反応性を有する光反応性モノマーとして用い、熱反応性を有しない光反応性モノマーやその他のモノマーとしてテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を用いることにより、モノマー組成物を重合させてなる重合体として、式(1)で表される構造を主鎖の構成単位に有するポリアミック酸やポリアミック酸エステル、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマー等を得ることができる。さらに、このポリアミック酸から、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル等の誘導体を生成することができ、また、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーからポリアミドイミド等の誘導体を生成することができる。これにより、式(1)で表される構造を主鎖の構成単位に含む各種誘導体を得ることができる。モノマー組成物を重合させてなる重合体または誘導体の詳細な説明については、[モノマー組成物を重合させてなる重合体またはその誘導体]および(モノマー組成物からの重合体の合成方法)の欄の記載を参照することができる。
式(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、式(1−1)または式(1−2)で表される基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は、式(1−1)または式(1−2)で表される基である。式(2)におけるR1およびR2の説明については、式(1)におけるR1およびR2についての説明を参照することができる。
6およびR8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、−CON(CH3)−、または単結合を表す。R6およびR8において、直鎖アルキレンの−CH2−の1つまたは隣接しない2つは−O−で置き換えられていてもよい。R6とR8は互いに同一であっても異なっていてもよい。R7およびR9は、それぞれ独立して、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、複素環、または単結合を表す。R7とR9は互いに同一であっても異なっていてもよい。
7およびR9における単環式炭化水素は脂環であっても芳香環であってもよい。単環式炭化水素の炭素数は6〜12であることが好ましく、6〜10であることがより好ましく、6〜8であることがさらに好ましい。単環式炭化水素の具体例として、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環を挙げることができる。
7およびR9における縮合多環式炭化水素の炭素数は10〜26であることが好ましく、10〜18であることがより好ましく、10〜14であることがさらに好ましい。縮合多環式炭化水素の具体例として、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環を挙げることができる。
7およびR9における複素環は脂環であっても芳香環であってもよい。複素環の炭素数は1〜26であることが好ましく、3〜14であることがより好ましく、3〜8であることがさらに好ましい。複素環が環員として含む複素原子として、窒素、酸素、硫黄を挙げることができる。複素環の具体例として、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドール環、オキサゾール環を挙げることができる。
式(2)において、−R6−R7−NH2は、式(2)における一方のベンゼン環に結合しており、その結合位置は、ベンゼン環における水素と置換可能な位置のいずれかである。−R8−R9−NH2は、式(2)における他方のベンゼン環に結合しており、その結合位置は、ベンゼン環における水素と置換可能な位置のいずれかである。ベンゼン環の残りの置換可能な位置は、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。置換基の好ましい範囲と具体例については、上記の式(1)において、ベンゼン環に置換しうる置換基の好ましい範囲と具体例を参照することができる。
式(1−1)において、R4は、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表す。式(1−2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表す。式(1−1)および(1−2)において、*は式(2)におけるベンゼン環への結合位置を表す。式(1−1)、(1−2)におけるR4、R5、*についての説明は、式(1)における式(1−1)、(1−2)のR4、R5、*についての説明を参照することができる。
式(2)で表されるジアミンは、合成のしやすさや原料入手の容易さ、さらに液晶配向性の高さから、下記式(3)〜(6)のいずれかで表されるジアミンであることが好ましい。
式(3)〜(6)において、R4およびR5は、式(2)の式(1−1)および式(1−2)におけるR4およびR5と同義である。R4およびR5は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のアルカノイルであることが好ましい。式(3)のR4同士、式(5)のR4同士、R5同士およびR4とR5、式(6)のR4とR5は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
式(3)〜(6)のいずれかで表されるジアミンの好ましい具体例として、式(3−1)〜(3−9)、式(4−1)〜(4−9)、式(5−1)、式(5−2)、式(6−1)、および式(6−2)のいずれかで表されるジアミンを挙げることができる。これらのジアミンを熱反応性を有する光反応性モノマーとして合成したポリマー成分は、高い液晶配向性を示す傾向がある。各式において、Meはメチル、Etはエチル、Prはプロピル、iPrはイソプロピル、Buはブチル、tBuはt−ブチルをそれぞれ表す。
(ジアミンの合成)
上記の式(3)〜(6)のいずれかで表されるジアミンは、下記のようにして合成することができる。
式(3)で表されるジアミンを合成するには、市販の5−ニトロアントラニル酸を還元して2−アミノ−5−ニトロフェニルメタノールを得た後、芳香族アミンの酸化反応によってベンゼン環におけるアゾ基のオルト位にヒドロキシメチル、およびパラ位にニトロ基を有するアゾベンゼンを得る。続いて、水酸基をトリフルオロメタンスルホン酸エステルとし、求核置換反応でアルコキシとする。最後にニトロ基を還元することで目的のジアミンが得られる。
式(4)で表されるジアミンを合成するには、市販の1−ブロモメチルー3−ニトロベンゼンから求核置換反応で1−アルコキシメチルー3−ニトロベンゼンを得た後、ニトロ基を還元して3−アルコキシメチルアニリンを得る。続いて、4−ニトロアニリンとのジアゾカップリングでアゾベンゼンを合成し、ニトロ基を還元することで目的のジアミンが得られる。
式(5)で表されるジアミンを合成するには、市販の5−ニトロアントラニル酸を還元して2−アミノ−5−ニトロフェニルメタノールを得た後、芳香族アミンの酸化反応によってベンゼン環におけるアゾ基のオルト位にヒドロキシメチル、およびパラ位にニトロ基を有するアゾベンゼンを得る。続いて、水酸基をトリフルオロメタンスルホン酸エステルとし、求核置換反応でN,N’−ジアルキルアミノ基とする。最後にニトロ基を還元することで目的のジアミンが得られる。
式(6)で表されるジアミンを合成するには、市販の1−ブロモメチルー3−ニトロベンゼンから求核置換反応でN,N’−ジアルキル−1−(3−ニトロフェニル)メタンアミンを得た後、ニトロ基を還元してジアルキルアミノメチルー3−ニトロベンゼンを得る。続いて、4−ニトロアニリンとのジアゾカップリングでアゾベンゼンを合成し、ニトロ基を還元することで目的のジアミンが得られる。
これらのジアミンは再結晶やカラムクロマトグラフィー法によって精製して使用することもできる。
より液晶配向性の高い液晶配向膜となり得る液晶配向剤を提供するためには、これらの化合物のうち、式(4−1)、式(4−2)、式(4−3)、式(4−4)、式(4−5)および式(6−1)のいずれかで表されるジアミンの少なくとも1つを、熱反応性を有する光反応性モノマーとして用いることが好ましい。
[熱反応性を有しない光反応性モノマー]
熱反応性を有しない光反応性モノマーは、重合体の構成単位を形成する部分(構成単位形成部)に光反応性構造を含み、且つ、その重合体の構成単位を形成する部分が加熱による化学反応を起こさない化合物である。本発明では、この熱反応性を有しない光反応性モノマーの構成単位形成部が重合体に導入されて、光反応性構造を含み、且つ、加熱による化学反応を起こさない第2の構成単位を形成する。液晶配向剤は、こうした第2の構成単位を有する重合体をポリマー成分Bとして含むことにより、その膜に光配向処理を行った後、加熱焼成を行ったとき、第2の構成単位では光配向処理直後の配向状態が保持されて膜内のポリマー主鎖の異方性に効果的に寄与する。そのため、得られた液晶配向膜は、優れた液晶配向性を示す。ここで、モノマー組成物Bが含有する熱反応性を有しない光反応性モノマーは、1種類であっても2種類以上であってもよい。
モノマー組成物Aは熱反応性を有する光反応性モノマーに加えて熱反応性を有しない光反応性モノマーを含んでいてもよいが、含んでいないことが好ましい。
熱反応性を有しない光反応性モノマーの構成単位形成部は、光反応性構造のみからなっていてもよいし、その他の構造を含んでいてもよい。構成単位形成部が含む光反応性構造の数は、1つであっても2つ以上であってもよい。構成単位形成部が2つ以上の光反応性構造を含むとき、それらの光反応性構造同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
熱反応性を有しない光反応性モノマーの構成単位形成部に導入する光反応構造は、光異性化構造または光二量化構造であることが好ましく、光異性化構造であることがより好ましい。光異性化構造として、アゾベンゼン構造、スチルベン構造、アシルヒドラゾン構造などを挙げることができ、光二量化構造として、クマリン構造、シンナメート構造、カルコン構造、トラン構造などを挙げることができる。
(熱反応性を有しない光反応性モノマーの化合物例)
熱反応性を有しない光反応性モノマーとしては、下記式(II−1)、式(II−2)、式(III−1)、式(III−2)、式(IV−1)、式(IV−2)、式(IV−3)、式(V−1)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−1)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
上記各式において、環を構成するいずれかの炭素に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。式(IV−3)において、rは1から10の整数である。式(V−2)において、R6は独立して−CH3、−OCH3、−CF3、または−COOCH3を表し、aは独立して0〜2の整数である。式(V−3)において、環Aおよび環Bはそれぞれ独立して、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素および複素環から選ばれる少なくとも1つを表す。R11は、炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、または−CON(CH3)−を表し、R12は、炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、または−CON(CH3)−を表し、R11およびR12において、直鎖アルキレンの−CH2−の1つまたは2つは−O−で置換されてもよく、R7〜R10は、それぞれ独立して、−F、−CH3、−OCH3、−CF3、または−OHを表し、そして、b〜eは、それぞれ独立して、0〜4の整数である。式(VII−1)において、R4およびR6は、独立して炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、−CON(CH3)−、または単結合を表し、R4およびR6において、直鎖アルキレンの−CH2−の1つまたは隣接しない2つは−O−で置き換えられてもよく、R5およびR7は、独立して、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、複素環、または単結合を表す。
式(V−3)の、環Aおよび環B、ならびに式(VII−1)のR5およびR7における単環式炭化水素は脂環であっても芳香環であってもよい。単環式炭化水素の炭素数は6〜12であることが好ましく、6〜10であることがより好ましく、6〜8であることがさらに好ましい。単環式炭化水素の具体例として、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環を挙げることができる。
式(V−3)の、環Aおよび環B、ならびに式(VII−1)のR5およびR7における縮合多環式炭化水素の炭素数は10〜26であることが好ましく、10〜18であることがより好ましく、10〜14であることがさらに好ましい。縮合多環式炭化水素の具体例として、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環を挙げることができる。
式(V−3)の、環Aおよび環B、ならびに式(VII−1)のR5およびR7における複素環は脂環であっても芳香環であってもよい。複素環の炭素数は1〜26であることが好ましく、3〜14であることがより好ましく、3〜8であることがさらに好ましい。複素環が環員として含む複素原子として、窒素、酸素、硫黄を挙げることができる。複素環の具体例として、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドール環、オキサゾール環を挙げることができる。
熱反応性を有しない光反応性モノマーとしては、上記のうち、式(II−1)、式(II−2)、式(III−1)、式(III−2)、式(IV−1)、式(IV−2)、式(IV−3)、式(V−1)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−1)、式(VI−2)、式(VII−1)のいずれかで表される化合物が好ましい。また、上記式(V−1)、式(V−2)、式(VI−1)、式(VI−2)および式(VII−1)で表される化合物が、その感光性の点からより好ましい。式(V−2)および式(VI−2)においては、2つのアミノ基の結合位置がいずれもパラ位である化合物が特に好ましい。さらに式(V−2)においては、a=0の化合物を、その配向性の点からより好適に用いることができる。
熱反応性を有しない光反応性モノマーのさらに好ましい具体例として、下記式(V−2−1)、式(V−3−2)、式(VI−2−1)、式(VII−1−1)および式(VII−1−2)で表される化合物を挙げることができる。
モノマー組成物Bにおいて、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物(ジアミン)と、式(II−1)、式(III−1)、式(IV−1)、(IV−3)、式(V−1)、および式(VI−1)のいずれかで表される化合物(テトラカルボン酸二無水物)とを用いることにより、モノマー組成物Bを重合させてなる重合体として、式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物(ジアミン)における−NH2を除いた部分の構造、並びに、式(II−1)、式(III−1)、式(IV−1)、式(IV−3)、式(V−1)、および式(VI−1)のいずれかで表される化合物(テトラカルボン酸二無水物)における−CO−O−CO−を除いた部分の構造、および、−CO−O−CO−から変換したカルボニル基とカルボキシル基を主鎖の構成単位に有するポリアミック酸を得ることができる。さらに、ポリアミック酸から、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル等の誘導体を生成することができ、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーからポリアミドイミド等の誘導体を生成することができる。
モノマー組成物Aにおいて、熱反応性を有する光反応性モノマーとして式(2)で表されるジアミンを用い、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして、式(II−1)、式(III−1)、式(IV−1)、(IV−3)、式(V−1)、および式(VI−1)のいずれかで表される化合物(テトラカルボン酸二無水物)を用いることにより、モノマー組成物Aを重合させてなる重合体として、式(1)で表される構造、並びに、式(II−1)、式(III−1)、式(IV−1)、式(IV−3)、式(V−1)、または式(VI−1)における−CO−O−CO−を除いた部分の構造、および、−CO−O−CO−から変換したカルボニル基とカルボキシル基を主鎖の構成単位に有するポリアミック酸を得ることができる。モノマー組成物Aにおいて、熱反応性を有する光反応性モノマーとして式(2)で表されるジアミンを用い、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして、式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物(ジアミン)を用いる場合には、その他のモノマーとしてテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を用いることにより、モノマー組成物を重合させてなる重合体として、式(1)で表される構造、並びに、式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、または式(VIII−2)における−NH2を除いた部分の構造、および、−NH2から変換した−NH−を主鎖の構成単位に有するポリアミック酸やポリアミック酸エステル、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマー等を得ることができる。さらに、ポリアミック酸から、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル等の誘導体を生成することができ、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーからポリアミドイミド等の誘導体を生成することができる。これにより、式(1)で表される構造、並びに、式(II−1)、式(II−2)、式(III−1)、式(III−2)、式(IV−1)、式(IV−2)、式(IV−3)、式(V−1)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−1)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、または式(VIII−2)における−CO−O−CO−または−NH2を除いた部分の構造を主鎖の構成単位に有する各種誘導体を得ることができる。ただし、モノマー組成物Aは熱反応性を有しない光反応性モノマーを含まないことが好ましい。モノマー組成物を重合させてなる重合体または誘導体の詳細な説明については、[モノマー組成物を重合させてなる重合体またはその誘導体]および(モノマー組成物からの重合体の合成方法)の欄の記載を参照することができる。
[その他のモノマー]
モノマー組成物は、熱反応性を有する光反応性モノマーおよび熱反応性を有しない光反応性モノマー以外のモノマー、すなわち構成単位を形成する部分(構成単位形成部)に光反応性構造を含まないモノマーを含んでいてもよい。
なお、以下の説明では、モノマーが「構成単位形成部に光反応性構造を含まない」ことを「非光反応性」と表現することがあり、例えば「構成単位形成部に光反応性構造を含まないモノマー」を「非光反応性モノマー」ということがある。
例えば、モノマー組成物Aにおいて、熱反応性を有する光反応性モノマーとして式(2)で表されるジアミンを用い、その他のモノマーとして、非光反応性のテトラカルボン酸二無水物を用いることにより、モノマー組成物Aを重合させてなる重合体としてポリアミック酸を得ることができ、また、その他のモノマーとして、非光反応性のテトラカルボン酸二無水物の誘導体を用いることにより、モノマー組成物Aを重合させてなる重合体としてポリアミック酸エステルやポリアミック酸−ポリアミドコポリマー等のポリアミック酸の誘導体を得ることができる。
また、モノマー組成物Bにおいて、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物(ジアミン)を用い、その他のモノマーとして、非光反応性のテトラカルボン酸二無水物を用いることにより、モノマー組成物Bを重合させてなる重合体としてポリアミック酸を得ることができ、また、その他のモノマーとして、非光反応性のテトラカルボン酸二無水物の誘導体を用いることにより、モノマー組成物Bを重合させてなる重合体としてポリアミック酸エステルやポリアミック酸−ポリアミドコポリマー等のポリアミック酸の誘導体を得ることができる。
(非光反応性テトラカルボン酸二無水物)
非光反応性モノマーとしてのテトラカルボン酸二無水物は、公知のテトラカルボン酸二無水物から制限されることなく選択することができる。このようなテトラカルボン酸二無水物は、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合した芳香族系(複素芳香環系を含む)、および芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合していない脂肪族系(複素環系を含む)の何れの群に属するものであってもよい。
このようなテトラカルボン酸二無水物の好適な例としては、原料入手の容易さや、ポリマー製造の容易さ、膜の電気特性の点から、下記式(AN−I)〜(AN−V)のいずれかで表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
式(AN−I)、式(AN−IV)および式(AN−V)において、Xは、それぞれ独立して、単結合または−CH2−を表す。式(AN−II)において、Gは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−、または下記式(G13−1)で表される2価の基を表し、−CH2−は、−O−、−CO−、−NH−で置き換えられてもよい。
式(G13−1)において、G13aおよびG13bは、それぞれ独立して、単結合、または、−O−、−CONH−もしくは−NHCO−から選択される2価の基を表す。フェニレンは、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンであることが好ましい。
式(AN−II)〜(AN−IV)において、Yは独立して下記の3価の基の群から選ばれる1つを表す。3価の基の各結合手は、各式におけるカルボニルを構成している炭素または環A10の水素と置換可能な位置のいずれかに連結している。この3価の基の少なくとも1つの水素は、メチル、エチルまたはフェニルで置換されてもよい。
式(AN−III)〜(AN−V)において、環A10は独立して炭素数3〜10の単環式炭化水素から結合手の数だけ水素を除いた環状基、または炭素数6〜30の縮合多環式炭化水素から結合手の数だけ水素を除いた環状基を表す。各環状基における少なくとも1つの水素は、メチル、エチルまたはフェニルで置換されていてもよい。また、各環に掛かっている結合手は、環を構成する任意の炭素に連結しており、2本の結合手が同一の炭素に結合してもよい。
さらに、テトラカルボン酸二無水物として、以下の式(AN−1)〜式(AN−16−15)のいずれかで表されるものが挙げられる。
式(AN−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−1)において、G11は単結合、炭素数1〜12のアルキレン、1,4−フェニレン、または1,4−シクロヘキシレンを表す。X11は独立して単結合または−CH2−を表す。G12は独立して下記の3価の基のいずれかを表す。
12が>CH−であるとき、>CH−の水素はメチルで置換されていてもよい。G12が>N−であるとき、G11は単結合および−CH2−であることはなく、X11は単結合であることはない。R11は水素またはメチルを表す。
式(AN−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−1−2)および(AN−1−14)において、mはそれぞれ独立して1〜12の整数である。
式(AN−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−2)において、R61は独立して水素、炭素数1〜5のアルキル、またはフェニルを表す。
式(AN−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−3)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−3)において、環A11はシクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。
式(AN−3)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−4)において、G13は単結合、−(CH2m−、−O−、−S−、−C(CH32−、−SO2−、−CO−、−C(CF32−、または下記式(G13−1)で表される2価の基を表し、mは1〜12の整数である。環A11は、それぞれ独立して、シクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。G13は環A11の水素と置換可能な位置のいずれかに結合してよい。
式(G13−1)において、G13aおよびG13bは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−CONH−、または−NHCO−で表される2価の基を表す。フェニレンは、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンであることが好ましい。
式(AN−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−4−17)において、mは1〜12の整数である。
式(AN−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−5)において、R11は独立して水素またはメチルを表す。2つのR11のうちベンゼン環におけるR11は、ベンゼン環の置換可能な位置のいずれかに結合する。
式(AN−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−6)において、X11は独立して単結合または−CH2−を表す。X12は−CH2−、−CH2CH2−または−CH=CH−を表す。nは1または2である。nが2であるとき、2つのX12は互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(AN−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−7)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−7)において、X11は単結合または−CH2−を表す。
式(AN−7)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−8)において、X11は単結合または−CH2−を表す。R12は水素、メチル、エチル、またはフェニルを表す。環A12はシクロヘキサン環またはシクロヘキセン環を表す。
式(AN−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−9)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−9)において、rはそれぞれ独立して0または1である。
式(AN−9)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−10−1)および式(AN−10−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−11)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−11)において、環A11は独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。
式(AN−11)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−12)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−12)において、環A11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。
式(AN−12)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
式(AN−15)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
式(AN−15)において、wは1〜10の整数である。
式(AN−15)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
上記以外のテトラカルボン酸二無水物として、下記の化合物が挙げられる。
上記テトラカルボン酸二無水物において、後述する液晶配向膜の各特性を向上させる好適な材料について述べる。液晶の配向性を向上させることを重視する場合には、式(AN−1)、式(AN−3)、および式(AN−4)で表される化合物が好ましく、式(AN−1−2)、式(AN−1−13)、式(AN−3−2)、式(AN−4−17)、および式(AN−4−29)で表される化合物がより好ましく、式(AN−1−2)においては、m=4または8が好ましく、式(AN−4−17)においては、m=4、または8が好ましく、m=8がより好ましい。
液晶表示素子の透過率を向上させることを重視する場合には、式(AN−1−1)、式(AN−1−2)、式(AN−3−1)、式(AN−4−17)、式(AN−4−30)、式(AN−5−1)、式(AN−7−2)、式(AN−10−1)、式(AN−16−3)、式(AN−16−4)、および式(AN−2−1)で表される化合物が好ましく、中でも式(AN−1−2)においては、m=4または8が好ましく、式(AN−4−17)においては、m=4、または8が好ましく、m=8がより好ましい。
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、式(AN−1−1)、式(AN−1−2)、式(AN−3−1)、式(AN−4−17)、式(AN−4−30)、式(AN−7−2)、式(AN−10−1)、式(AN−16−3)、式(AN−16−4)、および式(AN−2−1)で表される化合物が好ましく、式(AN−1−2)においては、m=4または8が好ましく、式(AN−4−17)においては、m=4、または8が好ましく、m=8がより好ましい。
液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることにより、液晶配向膜中の残留電荷(残留DC)の緩和速度を向上させることが、焼き付きを防ぐ方法の1つとして有効である。この目的を重視する場合には、式(AN−1−13)、式(AN−3−2)、式(AN−4−21)、式(AN−4−29)、および式(AN−11−3)で表される化合物が好ましい。
(非光反応性ジアミンおよび非光反応性ジヒドラジド)
モノマー組成物AまたはBがポリアミック酸やその誘導体を合成するための組成である場合、(例えば、モノマー組成物Aが熱反応性を有する光反応性モノマーとして式(2)で表されるジアミンを含み、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして、式(II−1)、式(II−2)、式(III−1)、式(III−2)、式(IV−1)、式(IV−2)、式(IV−3)、式(V−1)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−1)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物および/もしくは、非光反応性のテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を含む場合、または、モノマー組成物Bが熱反応性を有しない光反応性モノマーとして式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物(ジアミン)と、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして式(II−1)、式(III−1)、式(IV−1)、式(IV−3)、式(V−1)、および式(VI−1)のいずれかで表される化合物(テトラカルボン酸二無水物)および/もしくは、非光反応性のテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体と、を含む場合)、モノマー組成物AまたはBに非光反応性ジアミンや非光反応性ジヒドラジドを含有させてもよい。これにより、モノマー組成物から得られる重合体に、非光反応性ジアミンに由来する構成単位、非光反応性ジヒドラジドに由来する構成単位を導入することができ、得られる液晶配向膜の特性を制御することができる。
非光反応性モノマーとして用いるジアミンおよびジヒドラジドとしては、公知のジアミンおよびジヒドラジドから制限されることなく選択することができる。
ジアミンはその構造によって2種類に分けることができる。即ち、2つのアミノ基を結ぶ骨格を主鎖として見たときに、主鎖から分岐する基、即ち側鎖基を有するジアミンと側鎖基を持たないジアミンである。以下の説明では、このような側鎖基を有するジアミンを側鎖型ジアミンと称することがある。そして、このような側鎖基を持たないジアミンを非側鎖型ジアミンと称することがある。この側鎖基はプレチルト角を大きくする効果を有する基である。
非側鎖型ジアミンと側鎖型ジアミンを適切に使い分けることにより、それぞれに必要なプレチルト角に対応することができる。
側鎖型ジアミンは、本発明の特性を損なわない程度に併用するのが好ましい。また側鎖型ジアミンおよび非側鎖型ジアミンについて、液晶に対する垂直配向性、VHR、焼き付き特性および配向性を向上させる目的で取捨選択して使用することが好ましい。
既知のジアミン、ジヒドラジドを以下に示す。
上記の式(DI−1)において、G20は、−CH2−または式(DI−1−a)で表される基を表す。G20が−CH2−であるとき、m個の−CH2−の少なくとも1つは−NH−、−O−に置き換えられてもよく、m個の−CH2−の少なくとも1つの水素は−OHで置換されてもよい。mは1〜12の整数である。DI−1におけるmが2以上であるとき、複数のG20は互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、G20が式(DI−1−a)で表される基であるとき、mは1である。
式(DI−1−a)において、vはそれぞれ独立して1〜6の整数である。
式(DI−3)、式(DI−6)および式(DI−7)において、G21は独立して単結合、−NH−、−NCH3−、−O−、−S−、−S−S−、−SO2−、−CO−、−COO−、−CONCH3−、−CONH−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2m−、−O−(CH2m−O−、−N(CH3)−(CH2k−N(CH3)−、−(O−C24m−O−、−O−CH2−C(CF32−CH2−O−、−O−CO−(CH2m−CO−O−、−CO−O−(CH2m−O−CO−、−(CH2m−NH−(CH2m−、−CO−(CH2k−NH−(CH2k−、−(NH−(CH2mk−NH−、−CO−C36−(NH−C36n−CO−、または−S−(CH2m−S−を表し、mは独立して1〜12の整数であり、kは1〜5の整数であり、nは1または2である。式(DI−4)において、sは独立して0〜2の整数である。
式(DI−5)において、G33は単結合、−NH−、−NCH3−、−O−、−S−、−S−S−、−SO2−、−CO−、−COO−、−CONCH3−、−CONH−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2m−、−O−(CH2m−O−、−N(CH3)−(CH2k−N(CH3)−、−(O−C24m−O−、−O−CH2−C(CF32−CH2−O−、−O−CO−(CH2m−CO−O−、−CO−O−(CH2m−O−CO−、−(CH2m−NH−(CH2m−、−CO−(CH2k−NH−(CH2k−、−(NH−(CH2mk−NH−、−CO−C36−(NH−C36n−CO−、または−S−(CH2m−S−、−N(Boc)−(CH2e−N(Boc)−、−NH−(CH2e−N(Boc)−、−N(Boc)−(CH2e−、−(CH2m−N(Boc)−CONH−(CH2m−、−(CH2m−N(Boc)−(CH2m−、下記式(DI−5−a)または下記式(DI−5−b)で表される基であり、mは独立して1〜12の整数であり、kは1〜5の整数であり、eは2〜10の整数であり、nは1または2である。Bocはt−ブトキシカルボニルである。
式(DI−6)および式(DI−7)において、G22は独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH32−、−C(CF32−、または炭素数1〜10のアルキレンを表す。
式(DI−2)〜(DI−7)中のシクロヘキサン環およびベンゼン環の少なくとも1つの水素は、−F、−Cl、炭素数1〜3のアルキレン、−OCH3、−OH、−CF3、−CO2H、−CONH2、−NHC65、フェニル、またはベンジルで置換されてもよく、加えて式(DI−4)においては、シクロヘキサン環およびベンゼン環の少なくとも1つの水素は、下記式(DI−4−a)〜(DI−4−i)のいずれかで表される基の群から選ばれる1つで置換されていてもよく、式(DI−5)においては、G33が単結合の時にはシクロヘキサン環およびベンゼン環の少なくとも1つの水素はNHBocまたはN(Boc)2で置換されてもよい。
環を構成する炭素に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。そして、シクロヘキサン環またはベンゼン環への−NH2の結合位置は、G21、G22またはG33の結合位置を除く任意の位置である。
式(DI−4−a)および式(DI−4−b)において、R20は独立して水素または−CH3を表す。式(DI−4−f)および式(DI−4−g)において、mはそれぞれ独立して0〜12の整数であり、Bocはt−ブトキシカルボニルである。
式(DI−5−a)において、qはそれぞれ独立して0〜6の整数である。R44は水素、−OH、炭素数1〜6のアルキル、または炭素数1〜6のアルコキシを表す。
式(DI−11)において、rは0または1である。式(DI−8)〜(DI−11)において、環に結合する−NH2の結合位置は、任意の位置である。
式(DI−12)において、R21およびR22は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルを表し、G23は独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキルで置換されたフェニレンを表し、wは1〜10の整数である。
式(DI−13)において、R23は独立して炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシまたは−Clを表し、pは独立して0〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。
式(DI−14)において、環Bは単環の複素環式芳香族基を表し、R24は水素、−F、−Cl、炭素数1〜6のアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニルを表し、qは独立して0〜4の整数である。qが2以上であるとき、複数のR24は互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(DI−15)において、環Cは複素環式芳香族基または複素環式脂肪族基を表す。
式(DI−16)において、G24は単結合、炭素数2〜6のアルキレンまたは1,4−フェニレンを表し、rは0または1である。そして、環を構成する炭素に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。
式(DI−13)〜式(DI−16)において、環に結合する−NH2の結合位置は、任意の位置である。
上記式(DI−1)〜(DI−16)の側鎖を有しないジアミンとして、以下の式(DI−1−1)〜式(DI−16−1)の具体例を挙げることができる。
式(DI−1)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−1−7)および式(DI−1−8)において、kはそれぞれ独立して、1〜3の整数である。式(DI−1−9)において、vはそれぞれ独立して1〜6の整数である。
式(DI−2)〜(DI−3)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−4)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−4−20)および(DI−4−21)において、mはそれぞれ独立して1〜12の整数である。
式(DI−5)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−5−1)において、mは1〜12の整数である。
式(DI−5−12)および式(DI−5−13)において、mはそれぞれ独立して1〜12の整数である。
式(DI−5−16)において、vは1〜6の整数である。
式(DI−5−30)において、kは1〜5の整数である。
式(DI−5−35)〜式(DI−5−37)、および式(DI−5−39)において、mはそれぞれ独立して1〜12の整数であり、式(DI−5−38)および式(DI−5−39)において、kはそれぞれ独立して1〜5の整数であり、式(DI−5−40)において、nは1または2の整数である。
式(DI−5−42)〜式(DI−5−44)において、eはそれぞれ独立して2〜10の整数であり、式(DI−5−45)においてR43は水素、−NHBoc、または−N(Boc)2である。式(DI−5−42)〜式(DI−5−44)において、Bocはt−ブトキシカルボニルである。
式(DI−6)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−7)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−7−3)および式(DI−7−4)において、mはそれぞれ独立して1〜12の整数であり、nは独立して1または2である。
式(DI−8)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−9)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−10)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−11)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−12)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−13)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−14)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−15)で表されるジアミンの例を以下に示す。
式(DI−16)で表されるジアミンの例を以下に示す。
既知の側鎖を有しないジヒドラジドとしては、以下の式(DIH−1)〜(DIH−3)のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
式(DIH−1)において、G25は単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、または−C(CF32−を表す。
式(DIH−2)において、環Dはシクロヘキサン環、ベンゼン環またはナフタレン環を表し、この基の少なくとも1つの水素はメチル、エチル、またはフェニルで置換されてもよい。式(DIH−3)において、環Eはそれぞれ独立してシクロヘキサン環、またはベンゼン環を表し、この環の少なくとも1つの水素はメチル、エチル、またはフェニルで置換されてもよい。複数のEは互いに同一であっても異なっていてもよい。Yは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、または−C(CF32−を表す。式(DIH−2)および式(DIH−3)において、環に結合する−CONHNH2の結合位置は、任意の位置である。
式(DIH−1)〜(DIH−3)のいずれかで表される化合物の例を以下に示す。
式(DIH−1−2)において、mは1〜12の整数である。
上記のようなジアミンおよびジヒドラジドは液晶表示素子のイオン密度を低下させる等、電気特性を改善する効果がある。
プレチルト角を大きくする目的に適したジアミンについて説明する。プレチルト角を大きくする目的に適した側鎖基をもったジアミンとしては、式(DI−31)〜(DI−35)、式(DI−36−1)〜(DI−36−8)のいずれかで表されるジアミンが挙げられる。
式(DI−31)において、G26は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、または−(CH2ma−を表し、maは1〜12の整数である。G26の好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CH2O−、および炭素数1〜3のアルキレンであり、特に好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−CH2−および−CH2CH2−である。R25は炭素数3〜30のアルキル、フェニル、ステロイド骨格を有する基、または下記の式(DI−31−a)で表される基を表す。このアルキルにおいて、少なくとも1つの水素は−Fで置換されてもよく、そして少なくとも1つの−CH2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置換さていてもよい。このフェニルの水素は、−F、−CH3、−OCH3、−OCH2F、−OCHF2、−OCF3、炭素数3〜30のアルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシで置換されていてもよい。ベンゼン環に結合する−NH2の結合位置はその環において任意の位置であることを示すが、その結合位置はメタ位またはパラ位であることが好ましい。即ち、基「R25−G26−」の結合位置を1位としたとき、2つの結合位置は3位と5位、または2位と5位であることが好ましい。
式(DI−31−a)において、G27、G28およびG29は結合基であり、これらは、それぞれ独立して単結合、または炭素数1〜12のアルキレンであり、このアルキレンの1以上の−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−で置換されていてもよい。環B21、環B22、環B23および環B24は、それぞれ独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイルまたはアントラセン−9,10−ジイルを表し、環B21、環B22、環B23および環B24において、少なくとも1つの水素は−Fまたは−CH3で置換されてもよく、s、tおよびuは、それぞれ独立して0〜2の整数であって、これらの合計は1〜5であり、s、tまたはuが2であるとき、各々の括弧内の2つの結合基は同じであっても異なってもよく、そして、2つの環は同じであっても異なっていてもよい。R26は水素、−F、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCH2F、−OCHF2、または−OCF3を表し、この炭素数1〜30のアルキルの少なくとも1つの−CH2−は下記式(DI−31−b)で表される2価の基で置換されていてもよい。
式(DI−31−b)において、R27およびR28は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキルであり、vは1〜6の整数である。R26の好ましい例は炭素数1〜30のアルキルおよび炭素数1〜30のアルコキシである。
式(DI−32)および式(DI−33)において、G30は独立して単結合、−CO−または−CH2−を表し、R29は独立して水素または−CH3を表し、R30は独立して水素、炭素数1〜20のアルキル、または炭素数2〜20のアルケニルを表す。式(DI−33)におけるベンゼン環の少なくとも1つの水素は、炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルで置換されてもよい。そして、環を構成するいずれかの炭素に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。式(DI−32)における2つの基「−フェニレン−G30−O−」の一方はステロイド核の3位に結合し、もう一方はステロイド核の6位に結合していることが好ましい。式(DI−33)における2つの基「−フェニレン−G30−O−」のベンゼン環への結合位置は、ステロイド核の結合位置に対して、それぞれメタ位またはパラ位であることが好ましい。式(DI−32)および式(DI−33)において、ベンゼン環に結合する−NH2はその環における結合位置が任意であることを示す。
式(DI−34)および式(DI−35)において、G31は独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンを表し、G32は単結合または炭素数1〜3のアルキレンを表す。R31は水素または炭素数1〜20のアルキルを表し、このアルキルの少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。R32は炭素数6〜22のアルキルを表し、R33は水素または炭素数1〜22のアルキルを表す。環B25は1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、rは0または1である。そしてベンゼン環に結合する−NH2はその環における結合位置が任意であることを示すが、独立してG31の結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。
式(DI−31)で表される化合物の例を以下に示す。
式(DI−31−1)〜(DI−31−11)において、R34はそれぞれ独立して炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシを表し、好ましくは炭素数5〜25のアルキルまたは炭素数5〜25のアルコキシである。R35はそれぞれ独立して炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシを表し、好ましくは炭素数3〜25のアルキルまたは炭素数3〜25のアルコキシである。
式(DI−31−12)〜(DI−31−17)において、R36はそれぞれ独立して炭素数4〜30のアルキルを表し、好ましくは炭素数6〜25のアルキルである。R37はそれぞれ独立して炭素数6〜30のアルキルを表し、好ましくは炭素数8〜25のアルキルである。
式(DI−31−18)〜(DI−31−43)において、R38はそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシを表し、好ましくは炭素数3〜20のアルキルまたは炭素数3〜20のアルコキシである。R39はそれぞれ独立して水素、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCH2F、−OCHF2または−OCF3を表し、好ましくは炭素数3〜25のアルキル、または炭素数3〜25のアルコキシである。そしてG33は炭素数1〜20のアルキレンを表す。
式(DI−32)で表される化合物の例を以下に示す。
式(DI−33)で表される化合物の例を以下に示す。
式(DI−34)で表される化合物の例を以下に示す。
式(DI−34−1)〜式(DI−34−12)において、R40はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜20のアルキル、好ましくは水素または炭素数1〜10のアルキルを表し、そしてR41はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜12のアルキルを表す。
式(DI−35)で表される化合物の例を以下に示す。
式(DI−35−1)〜(DI−35−3)において、R37はそれぞれ独立して炭素数6〜30のアルキルを表し、R41はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜12のアルキルを表す。
式(DI−36−1)〜(DI−36−8)で表される化合物を以下に示す。
式(DI−36−1)〜(DI−36−8)において、R42はそれぞれ独立して炭素数3〜30のアルキルを表す。
上記ジアミンおよびジヒドラジドにおいて、後述する液晶配向膜の各特性を向上させる好適な材料について述べる。液晶の配向性をさらに向上させることを重視する場合には、式(DI−1−3)、式(DI−5−1)、式(DI−5−5)、式(DI−5−9)、式(DI−5−12)、式(DI−5−13)、式(DI−5−29)、式(DI−6−7)、式(DI−7−3)、および式(DI−11−2)で表される化合物を用いるのが好ましい。式(DI−5−1)においては、m=2、4または6が好ましく、m=4がより好ましい。式(DI−5−12)においては、m=2〜6が好ましく、m=5がより好ましい。式(DI−5−13)においては、m=1または2が好ましく、m=1がより好ましい。
透過率を向上させることを重視する場合には、式(DI−1−3)、式(DI−2−1)、式(DI−5−1)、式(DI−5−5)、式(DI−5−24)、および式(DI−7−3)で表されるジアミンを用いるのが好ましく、式(DI−2−1)で表される化合物がより好ましい。式(DI−5−1)においては、m=2、4または6のが好ましく、m=4がより好ましい。式(DI−7−3)においては、m=2または3、n=1または2が好ましく、m=3、n=1がより好ましい。
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、式(DI−2−1)、式(DI−4−1)、式(DI−4−2)、式(DI−4−10)、式(DI−4−15)、式(DI−4−22)、式(DI−5−28)、式(DI−5−30)、および式(DI−13−1)で表される化合物を用いるのが好ましく、式(DI−2−1)、式(DI−5−1)、および式(DI−13−1)で表されるジアミンがより好ましい。式(DI−5−1)においては、m=1が好ましい。式(DI−5−30)においては、k=2が好ましい。
液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることにより、液晶配向膜中の残留電荷(残留DC)の緩和速度を向上させることが、焼き付きを防ぐ方法の1つとして有効である。この目的を重視する場合には、式(DI−4−1)、式(DI−4−2)、式(DI−4−10)、式(DI−4−15)、式(DI−5−1)、式(DI−5−12)、式(DI−5−13)、式(DI−5−28)、式(DI−4−20)、式(DI−4−21)、式(DI−7−12)、および式(DI−16−1)で表される化合物を用いるのが好ましく、式(DI−4−1)、式(DI−5−1)、および式(DI−5−13)で表される化合物がより好ましい。式(DI−5−1)において、m=2、4または6が好ましく、m=4がより好ましい。式(DI−5−12)においては、m=2〜6が好ましく、m=5がより好ましい。式(DI−5−13)においては、m=1または2が好ましく、m=1がより好ましい。式(DI−7−12)においては、m=3または4が好ましく、m=4がより好ましい。
各ジアミンにおいて、ジアミンに対するモノアミンの比率が40モル%以下の範囲で、ジアミンの一部がモノアミンに置き換えられていてもよい。このような置き換えは、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こすことができ、それ以上の重合反応の進行を抑えることができる。このため、このような置き換えによって、得られるポリマー(ポリアミック酸またはその誘導体)の分子量を容易に制御することができ、例えば本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノアミンに置き換えられるジアミンは、本発明の効果が損なわれなければ、1種でも2種以上でもよい。前記モノアミンとしては、例えばアニリン、4−ヒドロキシアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、およびn−エイコシルアミンが挙げられる。
(モノイソシアネート)
モノマー組成物がポリアミック酸やその誘導体を合成するための組成である場合、例えば、熱反応性を有する光反応性モノマーとして式(2)で表されるジアミンを含み、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして、式(II−1)、式(II−2)、式(III−1)、式(III−2)、式(IV−1)〜(IV−3)、式(V−1)〜式(V−3)、式(VI−1)、式(VI−2)、(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物を含み、さらに、必要に応じて、非光反応性のテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を含む場合、さらに、モノイソシアネート化合物をモノマー組成物に含有させてもよい。モノマー組成物にモノイソシアネート化合物を含有させることにより、得られるポリアミック酸またはその誘導体の末端が修飾され、分子量が調節される。この末端修飾型のポリアミック酸またはその誘導体を用いることにより、例えば本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノマー中のモノイソシアネート化合物の含有量は、モノマー中のジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の総量に対して1〜10モル%であることが、前記の観点から好ましい。前記モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、およびナフチルイソシアネートが挙げられる。
(モノマー組成物AおよびBにおける好ましいモノマーの組み合わせ)
モノマー組成物Aは、熱反応性を有する光反応性モノマーとして式(2)で表されるジアミンと、その他のモノマーとして非光反応性テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とを含むことが好ましい。これにより、式(1)で表される構造、並びに、非光反応性テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体における−CO−O−CO−を除いた部分の構造、および、−CO−O−CO−から変換したカルボニル基とカルボキシル基を主鎖の構成単位に有するポリアミック酸、さらに、それらポリアミック酸の誘導体を得ることができる。また、これらの組み合わせには、さらに、上記の非光反応性ジアミンや非光反応性ジヒドラジド、モノイソシアネートを添加してもよい。
モノマー組成物Bは、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物(ジアミン)と、その他のモノマーとして、非光反応性テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を含むことが好ましい。これにより、式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、(VII−1)、式(VIII−1)、または式(VIII−2)における−NH2を除いた部分の構造、および、−NH2から変換した−NH−を主鎖の構成単位に有するポリアミック酸、さらに、それらポリアミック酸の誘導体を得ることができる。また、これらの組み合わせには、さらに、上記の非光反応性ジアミンや非光反応性ジヒドラジド、モノイソシアネートを添加してもよい。
モノマー組成物Bは、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、または式(VII−1)で表されるジアミンと、その他のモノマーとして、非光反応性テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とを含むことがより好ましく、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして式(V−2−1)、式(V−3−2)、式(VI−2−1)、式(VII−1−1)、または式(VII−1−2)で表されるジアミンと、その他のモノマーとして、非光反応性テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とを含むことがより好ましい。
[モノマー組成物を重合させてなる重合体またはその誘導体]
光反応性ポリマー成分Aは、モノマー組成物Aを重合させてなる重合体またはその誘導体からなる。また、光反応性ポリマー成分Bは、モノマー組成物Bを重合させてなる重合体またはその誘導体からなる。ポリマー成分Aを構成する各重合体は、それぞれ第1の構成単位、および必要に応じて添加したその他のモノマーに由来する構成単位を有し、ポリマー成分Bを構成する各重合体は、それぞれ第2の構成単位、および必要に応じて添加したその他のモノマーに由来する構成単位を有するが、各構成単位の数や配列は、各光反応性ポリマー成分の重合体同士で互いに同一であっても異なっていてもよい。また、ポリマー成分Aを構成する各誘導体はそれぞれ第1の構成単位、および必要に応じて添加したその他のモノマーに由来する構成単位を有し、ポリマー成分Bを構成する各重合体は、それぞれ、第2の構成単位に対応する構成単位、および必要に応じて添加したその他のモノマーに由来する構成単位に対応する構成単位を有するが、各構成単位の数や配列は、各誘導体同士で互いに同一であっても異なっていてもよい。
モノマー組成物AおよびBを重合させてなる重合体またはその誘導体の好ましい種類として、ポリアミック酸、ポリアミック酸誘導体、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。ポリアミック酸誘導体としては、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーおよびポリアミドイミドポリアミック酸が挙げられる。モノマー組成物を重合させてなる重合体またはその誘導体としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸誘導体であることが好ましく、ポリアミック酸であることがより好ましい。
ポリアミック酸は、式(DI)で表されるジアミンと式(AN)で表されるテトラカルボン酸二無水物との重合反応により合成されるポリマーであり、式(PAA)で表される繰り返し単位を有する。ポリアミック酸を脱水閉環することで、式(PI)で表される繰り返し単位を有するポリイミド液晶配向膜を形成することができる。ここで、モノマー組成物Aにおいて、例えば熱反応性を有する光反応性モノマーとして式(2)で表されるジアミンを用い、その他のモノマーとして非光反応性テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体を用いることにより、式(1)で表されるアゾベンゼン構造、並びに、非光反応性テトラカルボン酸二無水物のうちの−CO−O−CO−を除いた部分の構造、−CO−O−CO−が変換した構造を主鎖の構成単位に有するポリアミック酸を得ることができる。また、モノマー組成物Bにおいて、熱反応性を有しない光反応性モノマーとして式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物(ジアミン)を用い、その他のモノマーとして、非光反応性テトラカルボン酸二無水物を用いることにより、式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、(VII−1)、式(VIII−1)、または式(VIII−2)のうちの−NH2を除いた部分の構造、並びに、非光反応性テトラカルボン酸二無水物のうちの−CO−O−CO−を除いた部分の構造、−CO−O−CO−が変換した構造を主鎖の構成単位に有するポリアミック酸を得ることができる。
式(AN)、式(PAA)、および式(PI)において、X1は4価の有機基を表す。式(DI)、式(PAA)、および式(PI)において、X2は2価の有機基を表す。X1における4価の有機基の好ましい範囲と具体例については、式(II−1)、式(III−1)、式(IV−1)、式(IV−3)、式(V−1)、および式(VI−1)の対応する構造(−CO−O−CO−を除いた部分の構造)および(テトラカルボン酸二無水物)の欄に記載したテトラカルボン酸二無水物の対応する構造を参照することができる。X2における2価の有機基の好ましい範囲と具体例については、式(1)で表される構造の好ましい範囲と具体例、式(II−2)、式(III−2)、式(IV−2)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)の対応する構造(−HN2を除いた部分の構造)を参照することができる。
ポリアミック酸の誘導体は、ポリアミック酸の一部分を他の原子または原子団に置き換えて特性を改変した化合物であり、特に液晶配向剤に用いる溶剤への溶解性を高くしたものであることが好ましい。このようなポリアミック酸の誘導体としては、例えば可溶性ポリイミド、ポリアミック酸エステル、およびポリアミック酸アミド等が挙げられ、より具体的には1)ポリアミック酸のすべてのアミノ基とカルボキシル基とが脱水閉環反応したポリイミド、2)部分的に脱水閉環反応した部分ポリイミド、3)ポリアミック酸のカルボキシル基がエステルに変換されたポリアミック酸エステル、4)テトラカルボン酸二無水物化合物に含まれる酸二無水物の一部を有機ジカルボン酸に置き換えて反応させて得られたポリアミック酸−ポリアミドコポリマー、さらに5)該ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーの一部または全部を脱水閉環反応させたポリアミドイミドが挙げられる。これらの誘導体のうち、例えばポリイミドとしては、上記式(PI)で表される構成単位を有するものを挙げることができ、ポリアミック酸エステルとしては、下記式(PAE)で表される構成単位を有するものを挙げることができる。
式(PAE)において、X1は4価の有機基、X2は2価の有機基、Yはアルキルを表す。X1、X2の好ましい範囲と具体例については、式(PAA)におけるX1、X2についての記載を参照することができる。Yの説明と好ましい範囲、具体例については、上記の式(a−1)のRaにおけるアルキルについての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
(モノマー組成物からの重合体の合成方法)
モノマー組成物が含む光反応性モノマー、および必要に応じて添加した他のモノマーの重合、ならびに、得られた重合体からの誘導体の生成は、通常用いられる反応条件で行うことができる。
以下に、モノマー組成物がポリアミック酸またはその誘導体を合成するためのモノマーからなる場合について、そのモノマーの重合反応条件と、誘導体を生成するための反応条件について説明する。
モノマー組成物からのポリアミック酸およびその誘導体の合成は、ポリイミドの膜の形成に用いられる公知のポリアミック酸またはその誘導体の合成と同様に行うことができる。
例えばテトラカルボン酸二無水物の総仕込み量は、ジアミンの合計1モルに対して、0.9〜1.1モルとすることが好ましい。
また、モノマー組成物を重合させて得たポリアミック酸を、ポリアミック酸誘導体であるポリイミドとする場合には、得られたポリアミック酸溶液を、脱水剤である無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物、および脱水閉環触媒であるトリエチルアミン、ピリジン、コリジンなどの三級アミンとともに、温度20〜150℃でイミド化反応させることにより、ポリイミドを得ることができる。あるいは、得られたポリアミック酸溶液から多量の貧溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒やグリコール系溶媒)を用いてポリアミック酸を析出させ、析出させたポリアミック酸を、トルエン、キシレン等の溶媒中で、上記の脱水剤および脱水閉環触媒とともに、温度20〜150℃でイミド化反応させることにより、ポリイミドを得ることもできる。
このイミド化反応において、脱水剤と脱水閉環触媒の割合は、0.1〜10(モル比)であることが好ましい。脱水剤と脱水閉環触媒の合計使用量は、当該ポリアミック酸の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物のモル量の合計に対して1.5〜10倍モルであることが好ましい。このイミド化反応に用いる脱水剤、触媒量、反応温度および反応時間を調整することによって、イミド化の程度を制御することができ、これにより、ポリイミドのほか、ポリアミック酸の一部のみがイミド化した部分ポリイミドを得ることができる。得られたポリイミドまたは部分ポリイミドは、反応に用いた溶剤と分離し、他の溶剤に再溶解させて液晶配向剤として使用することもできるし、あるいは溶剤と分離することなく液晶配向剤として使用することもできる。
ポリアミック酸エステルは、モノマー組成物を重合させて得たポリアミック酸と水酸基含有化合物、ハロゲン化物、エポキシ含有化合物等とを反応させることにより合成する方法や、テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸ジエステルもしくはテトラカルボン酸ジエステルジクロライドと、ジアミンとを反応させることにより合成する方法により得ることができる。テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸ジエステルは、例えばテトラカルボン酸二無水物を2当量のアルコールと反応させ開環させて得ることができ、テトラカルボン酸ジエステルジクロライドは、テトラカルボン酸ジエステルを2当量の塩素化剤(例えば塩化チオニルなど)と反応させることで得ることができる。なお、ポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
本発明の光配向用液晶配向剤は、重合体またはその誘導体(特にポリアミック酸またはその誘導体)のうちの1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
ポリアミック酸またはその誘導体の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、7,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜200,000であることがより好ましい。ポリアミック酸またはその誘導体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定から求めることができる。
モノマー組成物を重合させて得たポリアミック酸またはその誘導体、そのポリアミック酸から生成した誘導体は、多量の貧溶剤で沈殿させて得られる固形分をIR(赤外分光法)、NMR(核磁気共鳴分析)で分析することによりその存在を確認することができる。またKOHやNaOH等の強アルカリの水溶液によるポリアミック酸またはその誘導体の分解物の有機溶剤による抽出物をGC(ガスクロマトグラフィ)、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)またはGC−MS(ガスクロマトグラフィ質量分析法)で分析することにより、使用されているモノマーを確認することができる。
<ポリマー成分の好ましい態様>
本発明の液晶配向剤は、少なくとも、単一のモノマー組成物Aから得た1種類のポリマー成分Aと単一のモノマー組成物Bから得た1種類のポリマー成分Bを含む。単一のモノマー組成物Aから得た1種類のポリマー成分Aと単一のモノマー組成物Bから得た1種類のポリマー成分Bを含めて3種以上のポリマー成分を含むものであってもよい。3種類以上のポリマー成分を含む液晶配向剤を、ブレンド型液晶配向剤と称することがある。ブレンド型液晶配向剤における複数のポリマー成分は、全ポリマー成分が光反応性ポリマー成分であってもよく、非光反応性ポリマー成分である第3のポリマー成分を含んでいてもよい。ここで、「非光反応性ポリマー成分」とは、モノマー組成物を重合させてなる重合体またはその誘導体からなるポリマー成分であって、モノマー組成物が、非光反応性モノマーからなるもののことをいう。本発明の液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜の液晶配向性を重視する場合は、第3のポリマー成分はポリアミック酸またはその誘導体からなることが好ましい。
液晶配向剤の保存安定性、液晶配向剤の表示素子基板への印刷性、および形成される液晶配向膜の特性のバランスを重視する場合は、ブレンド型液晶配向剤であることが好ましい。ブレンド型液晶配向剤の例として:
2種類以上のポリマー成分A(少なくともモノマー組成物における熱反応性を有する光反応性モノマーが互いに異なる)と、1種類のポリマー成分Bを組み合わせたブレンド型液晶配向剤;
1種類のポリマー成分Aと、2種類以上のポリマー成分B(少なくともモノマー組成物における熱反応性を有しない光反応性モノマーが互いに異なる)を組み合わせたブレンド型液晶配向剤:
2種類以上のポリマー成分Aと、2種類以上のポリマー成分Bを組み合わせたブレンド型液晶配向剤;
1種類のポリマー成分Aと、1種類のポリマー成分Bと、非光反応性ポリマー成分である第3のポリマー成分を組み合わせたブレンド型液晶配向剤;
2種類以上のポリマー成分Aと、1種類のポリマー成分Bと、非光反応性ポリマー成分である第3のポリマー成分とを組み合わせたブレンド型液晶配向剤;
1種類のポリマー成分Aと、2種類以上のポリマー成分Bと、非光反応性ポリマー成分である第3のポリマー成分とを組み合わせたブレンド型液晶配向剤:
2種類以上のポリマー成分Aと、2種類以上のポリマー成分Bと、非光反応性ポリマー成分である第3のポリマー成分とを組み合わせたブレンド型液晶配向剤;
を挙げることができる。
ブレンド型液晶配向剤の好ましい例として:
2種類のポリマー成分Aと、1種類のポリマー成分Bを組み合わせたブレンド型液晶配向剤;
1種類のポリマー成分Aと、2種類のポリマー成分Bを組み合わせたブレンド型液晶配向剤:
2種類のポリマー成分Aと、2種類のポリマー成分Bを組み合わせたブレンド型液晶配向剤;
1種類のポリマー成分Aと、1種類のポリマー成分Bと、非光反応性ポリマー成分である第3のポリマー成分を組み合わせたブレンド型液晶配向剤;
を挙げることができる。
ブレンド型液晶配向剤のより好ましい例として、1種類のポリマー成分Aと、1種類のポリマー成分Bと、非光反応性ポリマー成分である第3のポリマー成分を組み合わせたブレンド型液晶配向剤を挙げることができる。
ここで、第3のポリマー成分は、ポリアミック酸またはその誘導体を合成するためのモノマーを含有するモノマー組成物から得たものであることが好ましい。非光反応性ポリマー成分のモノマーに用いるテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、その他のモノマーの好ましい範囲と具体例については、(非光反応性テトラカルボン酸二無水物)、(非光反応性ジアミンおよび非光反応性ジヒドラジド)および(モノイソシアネート)の欄の記載を参照することができる。
このような複数のポリマー成分を用いる場合、例えば、液晶配向能に優れた性能を有するポリマー成分と、液晶表示素子の電気的特性を改善するのに優れた性能を有するポリマー成分を併用する態様がある。この場合、それぞれのポリマー成分が含む高分子の構造や分子量を制御することにより、これらのポリマー成分を溶剤に溶解した液晶配向剤を、後述するように、基板に塗布し、予備乾燥を行って薄膜を形成する過程で、液晶配向能に優れた性能を有するポリマー成分を薄膜の上層に、液晶表示素子の電気的特性を改善するのに優れた性能を有するポリマー成分を薄膜の下層に偏析させることができる。これには、混在するポリマー成分において、表面エネルギーの小さな高分子からなるポリマー成分が上層に、表面エネルギーの大きな高分子からなるポリマー成分が下層に分離する現象を応用することができる。このような層分離の確認は、形成された液晶配向膜の表面エネルギーが、上層に偏析させることを意図したポリマー成分のみを含有する液晶配向剤によって形成された膜の表面エネルギーと同じか、または近い値であることで確認することができる。
また、ポリアミック酸同士の混合からなる液晶配向剤では、上層に偏析させたいポリマー成分をポリイミドで構成することにより層分離を発現させることもできる。
熱反応性を有する光反応性モノマーおよび熱反応性を有しない光反応性モノマーは、薄膜の上層に偏析させるポリマー成分のためのモノマー組成物に含有させてもよいし、薄膜の下層に偏析させるポリマー成分のためのモノマー組成物に含有させてもよいし、また、両方のモノマー組成物に含有させてもよい。ポリアミック酸またはその誘導体を得るための熱反応性を有する光反応性モノマーおよび熱反応性を有しない光反応性モノマーの好ましい範囲と具体例については、[熱反応性を有する光反応性モノマー]および[熱反応性を有しない光反応性モノマー]の欄の記載を参照することができる。
薄膜の上層に偏析させるポリマー成分がポリアミック酸またはその誘導体からなるものである場合、その合成に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、上記に例示した公知のテトラカルボン酸二無水物から制限されることなく選択することができる。
例えば、テトラカルボン酸二無水物は、式(AN−1−1)、式(AN−2−1)、式(AN−3−1)、式(AN−4−5)、および式(AN−4−17)で表される化合物が好ましく、式(AN−4−17)がより好ましい。式(AN−4−17)においては、m=4または8が好ましく、m=8がより好ましい。
また、薄膜の上層に偏析させるポリマー成分がポリアミック酸またはその誘導体からなるものである場合、その合成に用いる非光反応性ジアミンおよび非光反応性ジヒドラジドとして、上記に例示した公知のジアミンおよびジヒドラジドから制限されることなく選択することができる。
例えば、非光反応性ジアミンおよび非光反応性ジヒドラジドとして、式(DI−4−1)、式(DI−4−13)、式(DI−4−15)、式(DI−5−1)、式(DI−7−3)、および式(DI−13−1)で表される化合物を用いるのが好ましい。中でも、式(DI−4−13)、式(DI−4−15)、式(DI−5−1)、および式(DI−13−1)で表される化合物を用いるのがより好ましい。式(DI−5−1)において、m=1、2または4が好ましく、m=4がより好ましい。式(DI−7−3)においてはm=3、n=1が好ましい。
合成に用いる非光反応性ジアミンは、非光反応性ジアミンの全量中、芳香族ジアミンを30モル%以上含むことが好ましく、50モル%以上含むことがより好ましい。
薄膜の下層に偏析させるポリマー成分がポリアミック酸またはその誘導体からなるものである場合、その合成に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、上記に例示した公知のテトラカルボン酸二無水物から制限されることなく選択することができる。
例えば、テトラカルボン酸二無水物は、式(AN−1−1)、式(AN−1−13)、式(AN−2−1)、式(AN−3−2)、および式(AN−4−21)で表される化合物が好ましく、式(AN−1−1)、式(AN−2−1)、および式(AN−3−2)がより好ましい。
合成に用いるテトラカルボン酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物の全量中、芳香族テトラカルボン酸二無水物を10モル%以上含むことが好ましく、30モル%以上含むことがより好ましい。
薄膜の下層に偏析させるポリマー成分がポリアミック酸またはその誘導体からなるものである場合、その合成に用いるジアミンおよびジヒドラジドとしては、上記に例示した公知のジアミンから制限されることなく選択することができる。
例えば、ジアミンおよびジヒドラジドは、式(DI−4−1)、式(DI−4−2)、式(DI−4−10)、式(DI−4−18)、式(DI−4−19)、式(DI−5−9)、式(DI−5−28)、式(DI−5−30)、式(DI−13−1)、および式(DIH−2−1)で表される化合物が好ましい。中でも、式(DI−4−1)、式(DI−4−18)、式(DI−4−19)、式(DI−5−9)、および式(DI−13−1)で表される化合物がより好ましい。式(DI−5−30)において、k=2であるジアミンが好ましい。
合成に用いるジアミンは、芳香族ジアミンを、全ジアミンに対して、30モル%以上含むものである事が好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましい。
薄膜の上層に偏析させるポリアミック酸またはその誘導体からなるポリマー成分は、そのポリマー成分と薄膜の下層に偏析させるポリアミック酸またはその誘導体からなるポリマー成分の合計量に対して、5重量%〜70重量%が好ましく、10重量%〜60重量%がさらに好ましく、10重量%〜40重量%が特に好ましい。
ポリマー成分Aとポリマー成分Bと非光反応性ポリマー成分を含む液晶配向剤においては、ポリマー成分Aとポリマー成分Bの合計量は、ポリマー成分Aとポリマー成分Bと非光反応性ポリマー成分の合計量に対して5重量%〜70重量%が好ましく、10重量%〜60重量%がさらに好ましく、10重量%〜40重量%が特に好ましい。
重視する液晶表示素子の特性によって、液晶配向剤におけるポリマー成分Aとポリマー成分Bの比率を適宜調整し、特性のバランスを調節することができる。例えば、AC残像またはVHR信頼性を重視する場合、ポリマー成分Aの含有量は、ポリマー成分Aとポリマー成分Bの合計量に対して40重量%以上が好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、60重量%以上が特に好ましい。また、コントラストを重視する場合、ポリマー成分Bの含有量は、ポリマー成分Aとポリマー成分Bの合計量に対して30重量%以上が好ましく、40重量%以上がさらに好ましく、50重量%以上が特に好ましい。
<液晶配向剤のその他の成分>
液晶配向剤は、光反応性構造を含む構成単位を有するポリマー成分(光反応性ポリマー成分
を少なくとも含み、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、光反応性構造を含む構成単位を有しないポリマー成分(非光反応性ポリマー成分)や溶剤、添加剤を挙げることができる。
非光反応性ポリマー成分の説明については、<ポリマー成分の好ましい態様>の欄の対応する記載を参照することができる。
[溶剤]
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤の塗布性やポリマー成分の濃度の調整の観点から、溶剤をさらに含有していてもよい。溶剤は、ポリマー成分を構成する高分子を溶解する能力を持った溶剤であれば格別制限なく適用可能である。溶剤には、例えばポリアミック酸、可溶性ポリイミド等の高分子成分の製造工程や各種用途で通常使用されている溶剤等を用いることができ、使用目的に応じて適宜選択できる。溶剤は1種でも2種以上の混合溶剤であってもよい。
溶剤としては、ポリアミック酸またはその誘導体の親溶剤や、塗布性改善を目的とした他の溶剤が挙げられる。
例えば、ポリアミック酸またはその誘導体の親溶剤である非プロトン性極性有機溶剤を用いることができ、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトンが挙げられる。
塗布性改善等を目的とした他の溶剤の例としては、ジイソブチルケトン、乳酸アルキル、ジアセトンアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ジイソブチルカルビノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルまたはフェニルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−ブトキシ−2−プロパノール等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、これらアセテート類等のエステル化合物が挙げられる。
これらの中で、液晶配向剤の溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジイソブチルケトン、4−メチル−2−ペンタノール、ジイソブチルカルビノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、1−ブトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルセロソルブアセテートがより好ましい。
例えばポリアミック酸を光反応性ポリマー成分に用いた液晶配向剤が溶剤を含む場合、液晶配向剤中のポリアミック酸の濃度は0.1〜40重量%であることが好ましい。この液晶配向剤を基板に塗布するときには、膜厚の調整のために、含有されているポリアミック酸を予め溶剤により希釈する操作が必要とされることがある。
液晶配向剤における固形分濃度は特に限定されるものではなく、液晶配向剤の塗布法に合わせて適宜選択することが好ましい。塗布時のムラやピンホール等を抑えるため、通常は、液晶配向剤全量に対して、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
液晶配向剤の粘度は、液晶配向剤の塗布に用いる方法、ポリマー成分として含む高分子の種類および濃度、溶剤の種類および等によっても異なるが、例えば、液晶配向剤を印刷機により塗布する場合には、5〜100mPa・sであることが好ましく、10〜80mPa・sであることがより好ましい。これにより、印刷ムラを抑えて十分な膜厚で液晶配向膜を形成することができる。また、液晶配向剤をスピンコートにより塗布する場合には、液晶配向剤の粘度は、5〜200mPa・sであることが好ましく、10〜100mPa・sであることがより好ましい。液晶配向剤をインクジェット塗布装置により塗布する場合には、液晶配向剤の粘度は、5〜50mPa・sであることが好ましく、5〜20mPa・sであることがより好ましい。
液晶配向剤の粘度は、回転粘度測定法により測定され、例えば回転粘度計(東機産業製TVE−20L型)を用いて測定(測定温度:25℃)される。
[添加剤]
本発明の液晶配向剤は各種添加剤をさらに含有していてもよい。各種添加剤は、配向膜の各種特性を向上させるために、それぞれの目的に応じて選択して使用することができる。以下に例を示す。
(アルケニル置換ナジイミド化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、アルケニル置換ナジイミド化合物をさらに含有していてもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して1〜50重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。アルケニル置換ナジイミド化合物は、本発明で用いられるポリアミック酸またはその誘導体を溶解する溶剤に溶解させることができる化合物であることが好ましい。好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物には、特開2008−096979号公報、特開2009−109987号公報、特開2013−242526号公報に開示されているアルケニル置換ナジイミド化合物が挙げられる。特に好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物としては、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)が挙げられる。
(ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物をさらに含有していてもよい。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。なお、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物にはアルケニル置換ナジイミド化合物は含まれない。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物には、好ましいものとして、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビスアクリルアミド、エチレンビスアクリレート、および4,4’−メチレンビス(N,N−ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)、シアヌル酸トリアリル、他に、特開2009−109987号公報、特開2013−242526号公報、国際公報2014/119682、国際公報2015/152014に開示されているラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して1〜50重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましい。
(オキサジン化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、オキサジン化合物をさらに含有していてもよい。オキサジン化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。オキサジン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。
オキサジン化合物は、ポリアミック酸またはその誘導体を溶解させる溶剤に可溶であり、加えて、開環重合性を有するオキサジン化合物が好ましい。好ましいオキサジン化合物には、式(OX−3−1)、式(OX−3−9)、式(OX−3−10)で表されるオキサジン化合物、他に、特開2007−286597号公報、特開2013−242526号公報に開示されているオキサジン化合物が挙げられる。
(オキサゾリン化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、オキサゾリン化合物をさらに含有していてもよい。オキサゾリン化合物はオキサゾリン構造を有する化合物である。オキサゾリン化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。オキサゾリン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることが好ましい。好ましいオキサゾリン化合物には、特開2010−054872号公報、特開2013−242526号公報に開示されているオキサゾリン化合物が挙げられる。より好ましくは、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼンが挙げられる。
(エポキシ化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的、膜の硬度を向上させる目的、もしくはシール剤との密着性を向上させる目的から、エポキシ化合物をさらに含有していてもよい。エポキシ化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。エポキシ化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることがさらに好ましい。
エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ環を1つまたは2つ以上有する種々の化合物を用いることができる。
膜の硬度を向上させる目的、もしくはシール剤との密着性を向上させる目的のためには、分子内にエポキシ環を2つ以上有する化合物が好ましく、3つまたは4つ有する化合物がより好ましい。
エポキシ化合物としては、特開2009-175715号公報、特開2013−242526号公報、特開2016−170409号公報、国際公報2017/217413に開示されているエポキシ化合物が挙げられる。好ましいエポキシ化合物としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(3,3‘,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリス(2,3−エポキシプロピル)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N‘−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンが挙げられる。
上記の他、エポキシ環を有するオリゴマーや重合体を添加することもできる。エポキシ環を有するオリゴマーや重合体は特開2013−242526号公報に開示されているオリゴマーや重合体を使用することができる。
(シラン化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、基板およびシール剤との密着性を向上させる目的から、シラン化合物をさらに含有していてもよい。シラン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.1〜30重量%であることが好ましく、0.5〜20重量%であることがより好ましく、0.5〜10重量%であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤としては、特開2013−242526、特開2015−212807号公報、特開2018−173545号公報、国際公報2018/181566に開示されているシランカップリング剤を使用することができる。
好ましいシランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、および3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−トリメトキシプロピルコハク酸、3−トリエトキシプロピルコハク酸、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
上記記載の添加剤の他、配向膜の強度を上げる目的、または液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、シクロカーボネート基を持つ化合物、ヒドロキシアルキルアミド部位や水酸基を持つ化合物を添加することもできる。具体的化合物としては、特開2016−118753号公報、国際公報2017/110976に開示されている化合物が挙げられる。好ましい化合物としては、以下の式(HD−1)〜式(HD−4)が挙げられる。これらの化合物は、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.5〜50重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることがさらに好ましい。
また、帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、低温でイミド化を進行させる場合はイミド化触媒を使用することもできる。イミド化触媒としては、特開2013−242526号公報に開示されているイミド化触媒が挙げられる。
液晶配向膜
次に、本発明の液晶配向膜について説明する。
本発明の液晶配向膜は、本発明の光配向用液晶配向剤によって形成されたものである。
本発明の光配向用液晶配向剤の説明と好ましい範囲、具体例については、光配向用液晶配向剤の欄の記載を参照することができる。
以下において、本発明の光配向用液晶配向剤(液晶配向剤)による液晶配向膜の形成方法の一例について説明する。
本発明の液晶配向膜は、液晶配向剤から液晶配向膜を作製する通常の方法によって得ることができる。本発明の液晶配向膜は、例えば、本発明の液晶配向剤の塗膜を形成する工程と、塗膜を加熱乾燥して液晶配向剤の膜を形成する工程と、液晶配向剤の膜に光を照射して異方性を付与する工程(配向工程)と、異方性を付与した液晶配向剤の膜を加熱焼成する工程(加熱焼成工程)を経ることによって得ることができる。この加熱焼成の際、本発明では、液晶配向膜のポリマー成分Aに含まれる重合体またはその誘導体の第1の構成単位が化学反応を起こして、光配向用の光反応性基が消失し、膜全体で光反応性基の数が減少する。そのため、形成された液晶配向膜は、強い光に晒されてもラジカルを発生しにくく、光に対して高い安定性を示す。また、このとき、ポリマー成分Bに含まれる重合体またはその誘導体の第2の構成単位は、化学反応を起こすことなく、光配向処理を行った直後の構造を保持するため、その構造がポリマー主鎖の異方性に効果的に寄与する。これにより、形成された液晶配向膜は、光に対して安定性が高いことに加えて、良好な液晶配向性を発揮する。
塗膜は、通常の液晶配向膜の作製と同様に、液晶表示素子における基板に本発明の液晶配向剤を塗布することによって形成することができる。基板には、ITO(IndiumTinOxide)、IZO(In23−ZnO)、IGZO(In−Ga−ZnO4)電極等の電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよいガラス製、窒化ケイ素製、アクリル製、ポリカーボネイト製、ポリイミド製等の基板が挙げられる。
液晶配向剤を基板に塗布する方法としてはスピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等が一般に知られている。これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。
加熱乾燥工程は、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。加熱乾燥工程は溶剤の蒸発が可能な範囲内の温度で実施することが好ましく、加熱焼成工程における温度に対して比較的低い温度で実施することがより好ましい。具体的には加熱乾燥温度は30℃〜150℃の範囲であること、さらには50℃〜120℃の範囲であることが好ましい。
加熱焼成工程は、例えば光反応性ポリマー成分を構成するポリアミック酸またはその誘導体が脱水・閉環反応を呈するのに必要な条件で行うことができる。塗膜の焼成は、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も本発明において同様に適用可能である。加熱温度は、40〜300℃であることが好ましく、100〜300℃であることがより好ましく、120〜280℃であることがさらに好ましく、150〜250℃であることがさらにより好ましい。加熱時間は1分間〜3時間であることが好ましく、5分間〜1時間であることがより好ましく、15分間〜45分間であることがさらに好ましい。加熱時間は加熱温度によって調整することが望ましく、例えば加熱温度が40〜180℃の時は加熱時間が10分間〜3時間であることが好ましく、加熱温度が180〜300℃の時は加熱時間が1分間〜1時間であることが好ましい。なかでも反応効率を高めることができる点から、加熱温度が150〜280℃で加熱時間が10分間〜1時間であることがより好ましく、加熱温度が180〜250℃で加熱時間が15分間〜45分間であることがさらに好ましい。
また、加熱焼成は、異なる温度で複数回行うこともできる。このとき、異なる温度に設定された複数の加熱装置を用いてもよいし、1台の加熱装置を用いて、異なる温度に順次変化させながら行ってもよい。異なる温度で2回加熱焼成を行う場合、1回目は90〜180℃、2回目は185℃以上の温度で行うのが好ましい。また、低温度から高温へと温度を変化させて焼成することができる。温度を変化させて焼成を行なう場合、初期温度は90〜180℃が好ましい。最終温度は185〜300℃が好ましく、190〜230℃がより好ましい。
本発明の液晶配向膜の形成方法において、液晶を水平および/または垂直方向に対して一方向に配向させるために、薄膜へ異方性を付与する手段として、公知の光配向法を好適に用いることができる。
光配向法による本発明の液晶配向膜の形成方法について、詳細に説明する。光配向法を用いた本発明の液晶配向膜は、塗膜を加熱乾燥した後の薄膜に、放射線の直線偏光または無偏光を照射することにより、薄膜に異方性を付与し、その膜を加熱焼成することにより形成することができる。または、塗膜を加熱乾燥し、加熱焼成した後に、薄膜に放射線の直線偏光または無偏光を照射することにより形成する事ができる。配向性の点から、放射線の照射工程は加熱焼成工程前に行うのが好ましい。
さらに、液晶配向膜の液晶配向能を上げるために、塗膜を加熱しながら放射線の直線偏光または無偏光を照射することもできる。放射線の照射は、塗膜を加熱乾燥する工程、または加熱焼成する工程で行ってもよく、加熱乾燥工程と加熱焼成工程の間に行ってもよい。該工程における加熱乾燥温度は、30℃〜150℃の範囲であること、さらには50℃〜120℃の範囲であることが好ましい。また該工程における加熱焼成温度は、30℃〜300℃の範囲であること、さらには50℃〜250℃の範囲であることが好ましい。
放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線または可視光を用いることができるが、300〜400nmの光を含む紫外線が好ましい。また、直線偏光または無偏光を用いることができる。これらの光は、前記薄膜に液晶配向能を付与することができる光であれば特に限定されないが、液晶に対して強い配向規制力を発現させたい場合、直線偏光が好ましい。
本発明の液晶配向膜は、低エネルギーの光照射でも高い液晶配向能を示すことができる。前記放射線照射工程における直線偏光の照射量は0.05〜20J/cm2であることが好ましく、0.5〜10J/cm2がより好ましい。また直線偏光の波長は200〜400nmであることが好ましく、300〜400nmであることがより好ましい。直線偏光の膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、液晶に対する強い配向規制力を発現させたい場合、膜表面に対してなるべく垂直であることが配向処理時間短縮の観点から好ましい。また、本発明の液晶配向膜は、直線偏光を照射することにより、直線偏光の偏光方向に対して直角方向に液晶を配向させることができる。
放射線の直線偏光または無偏光を照射する工程に使用する光源には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、Deep UVランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、エキシマランプ、KrFエキシマレーザー、蛍光ランプ、LEDランプ、ナトリウムランプ、マイクロウェーブ励起無電極ランプ、などを制限なく用いることができる。
本発明の液晶配向膜は、前述した工程以外の他の工程をさらに含む方法によって好適に得られる。例えば、本発明の液晶配向膜は焼成または放射線照射後の膜を洗浄液で洗浄する工程は必須としないが、他の工程の都合で洗浄工程を設けることができる。
洗浄液による洗浄方法としては、ブラッシング、ジェットスプレー、蒸気洗浄または超音波洗浄等が挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、併用してもよい。洗浄液としては純水または、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろん、これらの洗浄液は十分に精製された不純物の少ないものが用いられる。このような洗浄方法は、本発明の液晶配向膜の形成における前記洗浄工程にも適用することができる。
本発明の液晶配向膜の液晶配向能を高めるために、加熱焼成工程の前後、または、偏光または無偏光の放射線照射の前後に、熱や光によるアニール処理を用いることができる。該アニール処理において、アニール温度が30〜180℃、好ましくは50〜150℃であり、時間は1分〜2時間が好ましい。また、アニール処理に使用するアニール光には、UVランプ、蛍光ランプ、LEDランプなどが挙げられる。光の照射量は0.3〜10J/cm2であることが好ましい。
本発明の液晶配向膜の膜厚は、特に限定されないが、10〜300nmであることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましい。本発明の液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。
本発明の液晶配向膜は特に大きな配向の異方性を持つことを特徴とする。このような異方性の大きさは特開2005−275364等に記載の偏光IRを用いた方法で評価する事ができる。またエリプソメトリーを用いた方法によっても評価することができる。詳しくは、分光エリプソメータによって液晶配向膜のリタデーション値を測定することができる。膜のリタデーション値はポリマー主鎖の配向度に比例して大きくなる。すなわち、大きなリタデーション値を持つポリマーの膜は、大きな配向度を持ち、液晶配向膜として使用した場合、より大きな異方性を持つ液晶配向膜が液晶組成物に対し大きな配向規制力を持つと考えられる。
本発明の液晶配向膜は横電界方式の液晶表示素子に好適に用いることができる。横電界方式の液晶表示素子に用いる場合、Pt角が小さいほど、また液晶配向能が高いほど暗状態での黒表示レベルは高くなり、コントラストが向上する。Pt角は0.1°以下が好ましい。
本発明の液晶配向膜は、スマートフォン、タブレット、車載モニター、テレビ等、液晶ディスプレイ用の液晶組成物の配向制御に用いることができる。液晶ディスプレイ用の液晶組成物の配向用途以外に、光学補償材やその他すべての液晶材料の配向制御に用いることができる。また本発明の液晶配向膜は大きな異方性を有するので、単独で光学補償材用途に使用することができる。
液晶表示素子
次に、本発明の液晶表示素子について説明する。
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向膜を有する点に特徴がある。本発明の液晶配向膜およびその形成方法の説明と好ましい範囲、具体例については、液晶配向膜の欄の記載を参照することができる。
本発明の液晶表示素子は、液晶配向膜が本発明の液晶配向膜であることにより、高輝度バックライトを搭載した場合でも、高い電圧保持率が維持され、高い表示品位を実現することができる。また、液晶配向膜が優れた液晶配向性を発揮して、コントラストが高く、鮮明な明暗表示を実現することができる。
本発明の液晶表示素子について詳細に説明する。本発明は、対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方または両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成された液晶層と、前記対向基板を挟むように設置されている一対の偏光フィルムとバックライトと駆動装置とを有する液晶表示素子において、前記液晶配向膜が本発明の液晶配向膜により構成されている。
電極は、基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極には、例えばITOや金属の蒸着膜等が挙げられる。また電極は、基板の一方の面の全面に形成されていてもよいし、例えばパターン化されている所望の形状に形成されていてもよい。電極の前記所望の形状には、例えば櫛型またはジグザグ構造等が挙げられる。電極は、一対の基板のうちの一方の基板に形成されていてもよいし、両方の基板に形成されていてもよい。電極の形成の形態は液晶表示素子の種類に応じて異なり、例えばIPS型液晶表示素子(横電界型液晶表示素子)の場合は前記一対の基板の一方に電極が配置され、その他の液晶表示素子の場合は前記一対の基板の双方に電極が配置される。前記基板または電極の上に前記液晶配向膜が形成される。
ホモジニアス配向の液晶表示素子(例えばIPS、FFSなど)の場合は、構成として、少なくとも、バックライト側からバックライト、第一の偏光フィルム、第一の基板、第一の液晶配向膜、液晶層、第二の基板、第二の偏光フィルムを有し、前記偏光フィルムの偏向軸は、第一の偏光フィルムの偏向軸(偏光吸収の方向)と第二の偏光フィルムの偏向軸は交差(好ましくは直交)するように設置される。この時、第一の偏光フィルムの偏向軸と液晶配向方向が平行になるように、または直交するように設置することができる。第一の偏光フィルムの偏向軸と液晶配向方向が平行になるように設置した液晶表示素子をO−モード、直交するように設置した液晶表示素子をE−モードと言う。本発明の液晶配向膜は、O−モード、E−モードどちらにも適用でき、目的によって選択することができる。
多くの光異性化型材料には2色性を有する化合物が用いられている。そのため、液晶配向剤に対して異方性を付加させるために照射する偏光の偏光軸を、バックライト側に配置した偏光フィルムからの偏光の偏光軸と平行に揃える(本発明の液晶配向剤を使用した場合には、O−モードの配置とする)と、液晶配向膜の光吸収波長域の透過率が上昇する。その為、液晶表示素子の透過率を更に改善することができる。
前記液晶層は、液晶配向膜が形成された面が対向している前記一対の基板によって液晶組成物が挟持される形で形成される。液晶層の形成では、微粒子や樹脂シート等の、前記一対の基板の間に介在して適当な間隔を形成するスペーサを必要に応じて用いることができる。
液晶層の形成方法としては、真空注入法とODF(One Drop Fill)法が知られている。
真空注入法では、液晶配向膜面が対向するように、空隙(セルギャップ)を設けて、かつ液晶の注入口を残して、シールを印刷し、基板を張り合わせる。基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に、真空差圧を利用して液晶を注入充填した後、注入口を封止し、液晶表示素子を製造する。
ODF法では、一対の基板のうちの一方の液晶配向膜面の外周にシール剤を印刷し、シール剤の内側の領域に液晶を滴下した後、液晶配向膜面が対向するように他方の基板を張り合わせる。そして、液晶を基板の前面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化し、液晶表示素子を製造する。
基板の張り合わせに用いられるシール剤には、UV硬化型以外に熱硬化型も知られている。シール剤の印刷は、例えばスクリーン印刷法により行なうことができる。
液晶組成物には、特に制限はなく、誘電率異方性が正または負の各種の液晶組成物を用いることができる。誘電率異方性が正の好ましい液晶組成物には、特許3086228、特許2635435、特表平5−501735、特開平8−157826、特開平8−231960、特開平9−241644(EP885272A1)、特開平9−302346(EP806466A1)、特開平8−199168(EP722998A1)、特開平9−235552、特開平9−255956、特開平9−241643(EP885271A1)、特開平10−204016(EP844229A1)、特開平10−204436、特開平10−231482、特開2000−087040、特開2001−48822等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
前記負の誘電率異方性を有する液晶組成物の好ましい例として、特開昭57−114532、特開平2−4725、特開平4−224885、特開平8−40953、特開平8−104869、特開平10−168076、特開平10−168453、特開平10−236989、特開平10−236990、特開平10−236992、特開平10−236993、特開平10−236994、特開平10−237000、特開平10−237004、特開平10−237024、特開平10−237035、特開平10−237075、特開平10−237076、特開平10−237448(EP967261A1)、特開平10−287874、特開平10−287875、特開平10−291945、特開平11−029581、特開平11−080049、特開2000−256307、特開2001−019965、特開2001−072626、特開2001−192657、特開2010−037428、国際公開2011/024666、国際公開2010/072370、特表2010−537010、特開2012−077201、特開2009−084362等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
誘電率異方性が正または負の液晶組成物に1種以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
また例えば、本発明の液晶表示素子に用いる液晶組成物は、例えば配向性を向上させる観点から、添加物をさらに添加してもよい。このような添加物は、光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤などである。好ましい光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤には、特開2013−242526等に開示されているオキサジン化合物が挙げられる。
PSA(polymer sustained alignment)モードの液晶表示素子に適合させるために重合可能な化合物を液晶組成物に混合することができる。重合可能な化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。好ましい化合物には、特開2013−242526等に開示されている化合物が挙げられる。
以下、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
測定法と評価法
[重量平均分子量(Mw)の測定]
ポリアミック酸の重量平均分子量は、2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計(Waters社製)を用いてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。測定に使用したサンプルは、得られたポリアミック酸をリン酸−DMF混合溶液(リン酸/N,N−ジメチルホルムアミド=0.6/100:重量比の混合溶液)で、ポリアミック酸濃度が約2重量%になるように希釈したものである。カラムにはHSPgel RT MB−M(Waters社製)を使用し、リン酸−DMF混合溶液を展開溶媒として、カラム温度50℃、流速0.40mL/minの条件で測定を行った。標準ポリスチレンには東ソー(株)社製のTSK標準ポリスチレンを用いた。
[電圧保持率(VHR)信頼性の評価]
液晶表示素子の電圧保持率(VHR)は、「水嶋他、第14回液晶討論会予稿集p78(1988)」に記載の方法に従い、60℃で、波高±5Vの矩形波をセルに印加して測定した。電圧保持率は、印加した電圧がフレーム周期後どの程度保持されているかを示す指標であり、この値が100%であれば、全ての電荷が保持されていることを意味する。VHR信頼性は、上記セルをLEDバックライトに300時間曝露し、再度VHRを測定することで評価した。曝露前のVHRと300時間後のVHRを比較して、値の低下幅が小さいほど、製膜された配向膜の光ストレスに対する信頼性が高いことを意味する。具体的には、低下幅ΔVHR(%)と評価基準を次に示すように定義した。
ΔVHR(%)=(光曝露前VHR)−(光曝露300時間後VHR)
[実施例1〜18(ブレンド用ワニスを用いない場合)]
ΔVHR(%)が5%未満:◎
ΔVHR(%)が5%以上8%未満:○
ΔVHR(%)が8%以上15%未満:△
ΔVHR(%)が15%以上:×
[実施例19〜46(ブレンド用ワニスを用いる場合)]
ΔVHR(%)が3%未満:◎
ΔVHR(%)が3%以上6%未満:○
ΔVHR(%)が6%以上10%未満:△
ΔVHR(%)が10%以上:×
[透過率の評価]
透明ガラス基板上に液晶配向膜を形成し、紫外可視分光光度計V−660(日本分光株式会社製)にて、380nm〜430nmの透過率を測定し、380nm〜430nmにおける透過率の平均値を求めた。この数値が大きいほど、配向膜の着色が抑制されていて、光透過特性が良好な配向膜であることを意味する。この平均値をT(%)として評価した。具体的には、T(%)を次に示すように定義した。
[実施例1〜18(ブレンド用ワニスを用いない場合)]
T(%)が80%以上:◎
T(%)が77%以上80%未満:○
T(%)が74%以上77%未満:△
T(%)が74%未満:×
[実施例19〜46(ブレンド用ワニスを用いる場合)]
T(%)が88%以上:◎
T(%)が85%以上88%未満:○
T(%)が80%以上85%未満:△
T(%)が80%未満:×
[AC残像・コントラストの測定(液晶配向性の評価)]
AC残像は国際公開2000/43833号パンフレットに記載の方法に従って測定した。
具体的には、作製した液晶セルの輝度−電圧特性(B−V特性)を測定し、これをストレス印加前の輝度−電圧特性:B(before)とした。次に、液晶セルに4.5V、60Hzの交流を20分間印加した後、1秒間ショートし、再び輝度−電圧特性(B−V特性)を測定した。これをストレス印加後の輝度−電圧特性:B(after)とした。そして、測定した各B−V特性の電圧1.3Vにおける輝度を用い、下記式にて輝度変化率ΔB(%)を求めた。ΔB(%)の値が小さいほど、AC残像の発生を抑制できること、すなわち液晶配向性が良好であることを意味する。
ΔB(%)=[B(after)1.3−B(before)1.3]/B(before)1.3×100
式において、B(before)1.3はストレス印加前のB−V特性における1.3Vでの輝度を示し、B(after)1.3はストレス印加後のB−V特性における1.3Vでの輝度を示す。
輝度変化率ΔBは以下の基準で評価した。
ΔB(%)が1.5%未満:◎
ΔB(%)が1.5%以上2.0%未満:〇
ΔB(%)が2.0%以上3.0%未満:△
ΔB(%)が3.0%以上:×
また、ストレス印加前のB−V特性における最小輝度と最大輝度の比を用いてコントラスト(CR)を求めた。CRの値が大きいほど、明暗表示が鮮明であることを意味する。
CR=B(before)max/B(before)min
式において、B(before)maxはストレス印加前のB−V特性における最大輝度を示し、B(before)minはストレス印加前のB−V特性における最小輝度を示す。
コントラストCRは下の基準で評価した。
CRが3500以上:◎
CRが3250以上3500未満:〇
CRが3000以上3250未満:△
CRが3000未満:×
使用した化合物および溶剤
本実施例でワニスの調製に使用したジアミンを、熱反応性を有する光反応性ジアミン、熱反応性を有しない光反応性ジアミンおよび非光反応性ジアミンに分けて下記に示す。なお、熱反応性を有する光反応性ジアミンには、式(2)で表されるジアミンを使用した。
[熱反応性を有する光反応性ジアミン]
「熱反応性を有しない光反応性ジアミン」
[非光反応性ジアミン]
[テトラカルボン酸二無水物]
本実施例でワニスの調製に使用したテトラカルボン酸二無水物を下記に示す。
[溶剤]
本実施例で液晶配向剤の調製に使用した溶剤を下記に示す。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC:ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
ワニスの調製
本実施例で使用したワニスは、下記の手順で調製した。ここで、ブレンド用ワニス1〜6は、光反応性構造を導入していないワニスであり、他のワニスにブレンドして使用するものである。
[ワニスAの調製例1] ワニスA1の調製
攪拌翼、窒素導入管を装着した100mLの3つ口フラスコに、熱反応性を有する光反応性ジアミン(4−3)を2.3967g入れ、N−メチル−2−ピロリドンを64.0g加えた。この溶液に、テトラカルボン酸二無水物として、(AN−4−17,m=8)を3.6033g加え、室温で24時間攪拌した。この反応液に、ブチルセロソルブを30.0g加え、生成したポリマー成分が目的の重量平均分子量になるまで、70℃で加熱攪拌した。その結果、ポリマー成分の重量平均分子量が13,000であり、樹脂分濃度(固形分であるポリマー濃度)が6重量%であるワニスA1を得た。
[ワニスAの調製例2〜8] ワニスA2〜8の調製
ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物として用いる化合物と配合比を、表1に示すように変更したこと以外は、調製例1と同様にして樹脂分濃度が6重量%のワニスA2〜8を調製した。このとき、ポリマー成分の合成条件は、重量平均分子量が5,000から20,000の範囲になるように調整した。生成したポリマー成分の重量平均分子量を表1に示す。なお、表1において、ジアミンとして2以上の化合物が掲載されている調製例では、その全ての化合物を合わせてジアミンとして使用したことを意味し、テトラカルボン酸二無水物として2以上の化合物が掲載されている調製例では、その全ての化合物を合わせてテトラカルボン酸二無水物として使用したことを意味する。角括弧内の数値は配合比(モル%)を表し、「−」はその欄に対応する化合物を使用していないことを意味する。表2、3においても、同様である。
[ワニスBの調整例1〜7] ワニスB1〜7の調製
ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物として用いる化合物と配合比を、表2に示すように変更したこと以外は、調製例1と同様にして樹脂分濃度が6重量%のワニスB1〜7を調製した。生成したポリマー成分の重量平均分子量を表2に示す。
[ブレンド用ワニスの調製例1〜6] ブレンド用ワニス1〜6の調製
ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物として用いる化合物と配合比を、表3に示すように変更したこと以外は、調製例1と同様にして樹脂分濃度が6重量%であるブレンド用ワニス1〜6を調製した。生成したポリマー成分の重量平均分子量を表3に示す。
液晶配向剤の調製
上記の各調製例で調製したワニスA1〜8、ワニスB1〜7およびブレンド用ワニス1〜6を使用して、下記の手順で液晶配向剤を調製した。
[実施例1] 配向剤1の調製
攪拌翼、窒素導入管を装着した50mLのナスフラスコに、ワニスA2(3.0g)とワニスB1(3.0g)を秤り取って投入し、そこにN−メチル−2−ピロリドン(0.8g)およびブチルセロソルブ(0.4g)を加え、室温で1時間攪拌して樹脂分濃度5重量%の配向剤1を得た。
[実施例2〜18] 配向剤2〜18の調製
ワニスA2とワニスB1の代わりに表4に示すワニスを用いること以外は、実施例1と同様にして配向剤2〜18を調製した。
[実施例19] 配向剤19の調製
攪拌翼、窒素導入管を装着した50mLのナスフラスコに、ワニスA1(2.0g)、ワニスB1(2.0g)およびブレンド用ワニス1(6.0g)をそれぞれ秤取って投入し、そこにN−メチル−2−ピロリドン(3.5g)およびブチルセロソルブ(1.5g)を加え、室温で1時間攪拌して樹脂分濃度4重量%の配向剤19を得た。
[実施例20〜46] 配向剤20〜46の調製
ワニスA1、ワニスB1、およびブレンド用ワニス1の代わりに、表5に示すワニスA、ワニスB、およびブレンド用ワニスをそれぞれ用いること以外は、実施例19と同様にして配向剤20〜46を調製した。
[比較例1、2] 比較配向剤1、2の調製
ワニスA2とワニスB1の代わりに、表6に示すワニスを用いること以外は、実施例1と同様にして比較配向剤1、2を調製した。
[比較例3、4] 比較配向剤3、4の調製
ワニスA1、ワニスB1およびブレンド用ワニス1の代わりに、表7に示すワニスA、ワニスBおよびブレンド用ワニスをそれぞれ用いること以外は、実施例19と同様にして比較配向剤3、4を調製した。
各実施例および各比較例で液晶配向剤の調製に用いたワニスを表4〜7に示す。
評価
[電圧保持率(VHR)信頼性の評価]
実施例1〜46および比較例1〜4で調製した液晶配向剤を、IPS電極付きガラス基板およびカラムスペーサー付きガラス基板に滴下し、スピンナー法により、2,000rpmで15秒間基板を回転させることで塗布した。塗布後、基板を60℃で1分間加熱し、溶剤を蒸発させることで液晶配向剤の膜を形成した。この液晶配向剤の膜に、ウシオ電機(株)製マルチライトML−501C/Bを用い、基板に対して鉛直方向から、偏光板を介して波長365nmの紫外線直線偏光を2.0±0.1J/cm2で照射し、光配向処理を行った。この光配向処理を行った液晶配向剤の膜に、220℃にて30分間加熱焼成処理を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。次いで、液晶配向膜が形成された基板2枚を、液晶配向膜が形成されている面を対向させ、かつ、対向する液晶配向膜の間に液晶組成物を注入するための空隙が形成されるように貼り合わせた。このとき、基板の向きは、光配向処理の際に各液晶配向膜に照射した直線偏光の偏光方向が互いに平行になるような向きにした。この貼り合わせた基板間の空隙に、下記組成のネガ型液晶組成物Aを注入し、セル厚7μmの液晶セル(液晶表示素子)を作製した。
<ネガ型液晶組成物A>
(物性値)
相転移温度NI:75.7℃、誘電率異方性Δε:−4.1、屈折率異方性Δn:0.101、粘度η:14.5mPa・s.
作製した各液晶セルについて、5V、30Hzで電圧保持率(初期電圧保持率)を測定した。続いて、点灯させたバックライト試験機(富士フィルム(株)製、FujiCOLOR LED Viewer Pro HR−2;輝度2,700cd/m2)の上に液晶セルを載せて300時間保持し、その光照射後の電圧保持率を測定した。ΔVHR(%)の評価結果を、表8〜11に示す。
表8、表9に示すように、熱反応性を有する光反応性ジアミンを用いて調製したワニスAと、熱反応性を有しない光反応性ジアミンを用いて調製したワニスBの両方を用いて調製した配向剤1〜46を用いた液晶セルのΔVHR(%)は、○もしくは◎評価となり、良好なVHR信頼性を得ることができた。これに対して、表10、11に示すように、ワニスAを用いずにワニスBと溶剤から調製した、比較配向剤1を用いた液晶セル、および、ワニスAを用いずにワニスB、ブレンド用ワニスおよび溶剤から調製した比較配向剤3を用いた液晶セルは、ΔVHR(%)の評価が×となった。これは、バックライトの照射により起こるアゾベンゼン構造の光化学反応に伴い、液晶配向膜の電気特性が劣化したためであると考えられる。なお、配向剤1〜46において、熱反応性を有しない光反応性ジアミンから調製されたワニスAを含有しているにも関わらず、良好なVHR信頼性が得られているのは、熱反応性を有する光反応性ジアミンの分子内化学反応により形成された構造が、光に対して非常に安定であるためであると推測される。
[透過率の評価]
実施例1〜46および比較例1〜4で調製した液晶配向剤を用い、透明ガラス基板上に、電圧保持率の評価と同様の条件で液晶配向剤の塗膜を形成した。続いて、基板を220℃で30分間加熱焼成処理を行うことで膜厚100nmの液晶配向膜を形成し、その基板の紫外可視透過率スペクトルを測定して、380nm〜430nmの範囲における透過率の平均値を求めた。その評価結果を表12〜15に示す。
熱反応性を有する光反応性ジアミンを用いて調製したワニスAと、熱反応性を有しない光反応性ジアミンを用いて調製したワニスBの両方を用いて調製した配向剤1〜46を用いて形成された液晶配向膜のT(%)は、実施例38、39、44の3例を除いたすべての実施例で○もしくは◎評価となり、良好な光透過性を得ることができた。これに対して、表14、表15に示すように、ワニスAを含まずワニスB比較配向剤No.1、3を用いて形成された配向膜では、T(%)は×評価となった。
熱反応性を有する光反応性ジアミンを用いた系での高い透過率は、熱反応性を有する光反応性ジアミンに由来するアゾベンゼン構造が、膜の加熱焼成によってインダゾール環を形成することにより、アゾベンゼン構造に由来の吸収帯(380nm〜430nm)での吸光度が減少したことによるものと考えられる。このことから、熱反応性を有する光反応性ジアミンを用いて液晶配向膜に導入した熱反応性は、膜の加熱焼成により化学変化する構造として確実に機能することを確認することができた。
[AC残像特性およびコントラスト特性の評価(液晶配向性の評価)]
実施例1〜46、比較例1〜4で調製した液晶配向剤を用い、FFS電極付きガラス基板およびカラムスペーサー付きガラス基板に、電圧保持率の評価と同様の条件で膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。これらの液晶配向膜が形成された基板2枚を、液晶配向膜が形成されている面を対向させ、かつ、対向する液晶配向膜の間に液晶組成物を注入するための空隙が形成されるように貼り合わせた。このとき、基板の向きは、光配向処理の際に各液晶配向膜に照射した直線偏光の偏光方向が互いに平行になるような向きにした。この貼り合わせた基板間の空隙に、上記組成のネガ型液晶組成物Aを注入し、注入口を光硬化剤で封止して、セル厚4μmの液晶セル(液晶表示素子)を作製した。得られた液晶セルについて、ストレス印加前とストレス印加後の1.3Vにおける輝度変化率ΔB、および、B−V特性における最大輝度と最小輝度の比CRを測定し、AC残存特性とコントラスト特性を評価した。その評価結果を表16〜19に示す。
表16、17に示すように、熱反応性を有する光反応性ジアミンを用いて調製したワニスAと、熱反応性を有しない光反応性ジアミンを用いて調製したワニスBの両方を用いて調製した配向剤1〜46を用いた各液晶セルは、いずれもストレス印加による輝度変化率ΔBが3.0%未満(△〜◎評価)であり、良好なAC残存特性を示した。また、配向剤1〜46を用いた各液晶セルは、最大輝度と最小輝度の比CRが3000以上(△〜◎評価)であり、高いコントラストで明暗を表示することができた。特に、配向剤12を用いた各液晶セルは、ΔBが1.5%未満(◎)であって、CRが3500以上(◎)であり、優れたAC残存特性を示し、非常に高いコントラストで明暗表示を行うことができた。
これに対して、ワニスAを用いずワニスBを用いて調製した比較配向剤No.1、3を用いた各液晶セルは、ΔBが△評価となり、実施例1〜46の多くの場合よりもAC残像特性が劣っていた。一方、ワニスBを用いずワニスAを用いて調製した比較配向剤2、4を用いた各液晶セルは、CRは×評価となり、明暗表示が不鮮明であった。
以上の結果から、熱反応性を有する光反応性ジアミンを含むモノマー組成物を用いて合成されたワニス(ワニスA)と、熱反応性を有しない光反応性ジアミンを含むモノマー組成物を用いて合成されたワニス(ワニスB)の両方を用いて調製し液晶配向剤とすることにより、形成された液晶配向膜の透過率とVHR信頼性の低下を抑制しつつ、その液晶配向膜を適用した液晶セルにおいて、AC残像特性とコントラスト特性の両方を著しく改善できることがわかった。
本発明の光配向用液晶配向剤を使用すれば、長時間の使用においても高い電圧保持率および耐光性を維持し、表示品位の高い液晶表示素子を提供することができる。本発明の光配向用液晶配向剤は横電界型液晶表示素子に好適に適用することができる。また、本発明の液晶配向膜は、液晶を用いたマイクロ波・ミリ波帯の広帯域可変移相器にも用いることができる。この広帯域可変移相器は、電磁波信号の位相制御用のアンテナ等に好適に利用することができる。

Claims (27)

  1. 光反応性構造を含む構成単位を有するポリマー成分Aおよびポリマー成分Bを含有する光配向用液晶配向剤であって、
    前記ポリマー成分Aは、少なくとも熱反応性を有する光反応性モノマーを含有するモノマー組成物Aを重合させてなる重合体またはその誘導体からなり、前記熱反応性を有する光反応性モノマーは、前記重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含み、且つ、前記重合体の構成単位を形成する部分が加熱により化学反応を起こすものであり、
    前記ポリマー成分Bは、少なくとも熱反応性を有しない光反応性モノマーを含有するモノマー組成物Bを重合させてなる重合体またはその誘導体からなり、前記熱反応性を有しない光反応性ジアミンは、前記重合体の構成単位を形成する部分に光反応性構造を含み、且つ、前記重合体の構成単位を形成する部分が加熱による化学反応を起こさないものである、光配向用液晶配向剤。
  2. 前記熱反応性を有する光反応性モノマーにおける前記化学反応が環化反応である、請求項1に記載の光配向用液晶配向剤。
  3. 前記熱反応性を有する光反応性モノマーが、下記式(a−1)で表される構造および下記式(a−2)で表される構造の少なくとも一方を有する光反応性構造を含む、請求項1または2に記載の光配向用液晶配向剤。
    [式(a−1)において、Raは、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表し;
    式(a−2)において、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表し;
    式(a−1)および式(a−2)において、*は光反応性基との結合位置を表す。]
  4. 前記熱反応性を有する光反応性モノマーが、光異性化構造または光フリース転位構造を有する光反応性構造を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
  5. 前記熱反応性を有する光反応性モノマーが、下記式(1)で表される構造を有する光反応性構造を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
    [式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、下記式(1−1)または下記式(1−2)で表される基を表し、R1およびR2の少なくとも1つは、下記式(1−1)または下記式(1−2)で表される基であり;
    *はベンゼン環における結合位置を表し、一方のベンゼン環における水素と置換可能な位置のいずれか、または、他方のベンゼン環の水素と置換可能な位置のいずれかであり;
    ベンゼン環の水素は、置換基で置換されていてもよい。]
    [式(1−1)および式(1−2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表し;
    *は、式(1)におけるベンゼン環への結合位置を表す。]
  6. 前記モノマー組成物Aを重合させてなる重合体またはその誘導体が、ポリアミック酸、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーおよびポリアミドイミドポリアミック酸から選択される少なくとも1種であり、
    前記熱反応性を有する光反応性モノマーが、下記式(2)で表されるジアミンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
    [式(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、式(1−1)または式(1−2)で表される基を表し、R1およびR2の少なくとも1つは、式(1−1)または式(1−2)で表される基であり;
    6およびR8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、−CON(CH3)−、または単結合を表し、R6およびR8において、直鎖アルキレンの−CH2−の1つまたは隣接しない2つは−O−で置き換えられていてもよく;
    7およびR9は、それぞれ独立して、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、複素環、または単結合を表し;
    2N−R7−R6−の結合位置は、一方のベンゼン環における水素と置換可能な位置のいずれかであり、H2N−R9−R8−の結合位置は、他方のベンゼン環における水素と置換可能な位置のいずれかであり;
    ベンゼン環における水素は、置換基で置換されていてもよい。]
    [式(1−1)および式(1−2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表し;
    *は、式(2)におけるベンゼン環への結合位置を表す。]
  7. 1が式(1−1)で表される基であり、R2が水素である、請求項5または6に記載の光配向用液晶配向剤。
  8. 4が水素または置換もしくは無置換のアルキルである、請求項7に記載の光配向用液晶配向剤。
  9. 前記式(2)で表されるジアミンは、下記式(3)〜(6)のいずれかで表されるジアミンである、請求項6に記載の光配向用液晶配向剤。
    [式(3)〜(6)において、R4は、独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表し;
    ベンゼン環の水素は、置換基で置換されてもよく;
    式(5)および式(6)において、R5は、独立して、水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルカノイル、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル、または置換もしくは無置換のアリールカルボニルを表す。]
  10. 前記式(2)で表されるジアミンは、下記式(3−1)〜式(3−9)、式(4−1)〜式(4−9)、式(5−1)、式(5−2)、式(6−1)、および式(6−2)のいずれかで表されるジアミンである、請求項9に記載の光配向用液晶配向剤。
    [式において、Meはメチル、Etはエチル、Prはプロピル、iPrはイソプロピル、Buはブチル、tBuはt−ブチルをそれぞれ表す。]
  11. 前記モノマー組成物Aが、さらに、非光反応性テトラカルボン酸二無水物を含有する、請求項6〜10のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
  12. 前記熱反応性を有しない光反応性モノマーが、光異性化構造または光二量化構造を有する光反応性構造を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
  13. 前記熱反応性を有しない光反応性モノマーが、光異性化構造を有する光反応性構造を含む、請求項12に記載の光配向用液晶配向剤。
  14. 前記熱反応性を有しない光反応性モノマーがジアミンである、請求項12または13に記載の光配向用液晶配向剤。
  15. 前記熱反応性を有しない光反応性モノマーが下記式(II−1)、式(II−2)、式(III−1)、式(III−2)、式(IV−1)、式(IV−2)、式(IV−3)、式(V−1)、式(V−2)、式(V−3)、式(VI−1)、式(VI−2)、式(VII−1)、式(VIII−1)、および式(VIII−2)のいずれかで表される化合物である請求項12〜14のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
    (上記各式において、環を構成するいずれかの炭素に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示し、式(IV−3)において、rは1から10の整数であり、式(V−2)において、R6は独立して−CH3、−OCH3、−CF3、または−COOCH3を表し、aは独立して0〜2の整数であり、式(V−3)において、環Aおよび環Bはそれぞれ独立して、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素および複素環から選ばれる少なくとも1つを表し、R11は、炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、または−CON(CH3)−を表し、R12は、炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、または−CON(CH3)−を表し、R11およびR12において、直鎖アルキレンの−CH2−の1つまたは2つは−O−で置換されてもよく、R7〜R10は、それぞれ独立して、−F、−CH3、−OCH3、−CF3、または−OHを表し、b〜eは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、式(VII−1)において、R4およびR6は、独立して炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、−CON(CH3)−、または単結合を表し、R4およびR6において、直鎖アルキレンの−CH2−の1つまたは隣接しない2つは−O−で置き換えられてもよく、R5およびR7は、独立して、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、複素環、または単結合を表す。)
  16. 前記熱反応性を有しない光反応性モノマーが下記式(V−2−1)、式(V−3−2)、式(VI−2−1)、式(VII−1−1)および式(VII−1−2)のいずれかで表される化合物である請求項12〜15のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
  17. 前記モノマー組成物Bが、さらに、非光反応性テトラカルボン酸二無水物を含有する、請求項12〜16のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
  18. ポリマー成分Aの配合量が、ポリマー成分Aとポリマー成分Bの合計重量に対して10〜90重量%である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
  19. 前記液晶配向剤が、さらに、第3のポリマー成分を含有し、
    前記第3のポリマー成分は、光反応性構造を含まないモノマーからなるモノマー組成物Cを重合させてなる重合体またはその誘導体からなる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
  20. 前記モノマー組成物Cを重合させてなる重合体またはその誘導体は、ポリアミック酸、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーおよびポリアミドイミドポリアミック酸から選択される少なくとも1種である、請求項19に記載の光配向用液晶配向剤。
  21. 横電界型液晶表示素子の液晶配向膜の形成に用いられる、請求項1〜20のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
  22. 請求項1〜21のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤によって形成された液晶配向膜。
  23. 請求項22に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
  24. 請求項1〜21のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤からなる膜に、偏光を照射して異方性を付与する配向工程と、異方性を付与した前記膜を加熱して焼成させる加熱焼成工程を有し、前記加熱焼成工程の際、前記液晶配向用液晶配向剤が含むポリマー成分の光反応性構造に環化反応を生じさせ、光反応性基を減少させる、液晶配向膜の形成方法。
  25. 前記加熱焼成工程を、加熱温度を変えて2段階以上の工程で行う、請求項24に記載の液晶配向膜の形成方法。
  26. 請求項24または25に記載の液晶配向膜の形成方法を用いて液晶配向膜を形成する、液晶表示素子の製造方法。
  27. 製造する液晶表示素子が横電界型液晶表示素子である、請求項26に記載の液晶表示素子の製造方法。
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