JP2020178955A - 吸収性物品 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、特許文献4には、三又形状にした男性用吸収性物品が記載されている。この男性用吸収性物品は、ズレ止め粘着剤層によって下着に貼り付けて装着して使用される。該物品を構成する表面シート及び裏面シートは、合成繊維のシートやプラスティックシートからなり、両シートの外縁がホットメルトなどの接着剤等によって接合されている。しかし、特許文献4記載の男性用吸収性物品は、水洗式トイレに流すことを想定していない。
本発明における「水解性」とは、JIS P 4501のトイレットペーパーの試験方法に従い下記(水解性の有無の試験方法)により、ほぐした材料が4メッシュ(目開き5mm)を通過できる性質をいう。本発明に用いられる水解性材料としては、上記試験の要件を満たす種々の材料を用いることができる。例えば、紙素材などが挙げられる。尿パッド10は、構成部材が水解性材料からなることで、水洗式トイレに流した際に素早く水に溶解することができる。
本発明における「紙素材」とは、合成繊維ではなく、パルプを抄紙して水素結合によってシート状に一体化した材料をいう。このような紙素材は水洗式トイレ等における水流によってパルプ同士の水素結合が解かれやすく、不織布よりも高い水解性を示す。なお、紙素材に用いられる紙の原料としては、パルプの他にタルクなどの填料や澱粉などの紙力増強剤、サイズ剤といったインクの滲み防止用の薬剤が使用されていてもよく、本明細書においてはこれらの薬剤は紙素材に含まれる。
構成部材が水解性を有するか否かは、JIS P 4501に従って判定することができる。具体的には、次の通りである。
まず、容量300mLのビーカーに水300mLを入れ、温度を20℃に調整する。直径35mm、厚さ12mmの円盤状の回転子を用いて、600rpmの回転数で水を撹拌する。そこに、縦10cm×横10cmに切断した構成部材を投入する。構成部材の抵抗によって回転数が一旦低下するが、構成部材が溶解するに従い回転数は上昇する。回転数が540rpmに到達した時点で回転を止める。このとき、溶解した構成部材が4メッシュ(目開き5mm)を通過可能な場合は構成部材が水解性を有すると判定し、そうでない場合は構成部材が水解性を有しないと判定する。
なお、上記の評価方法と同様の方法で、吸収性物品全体が水解性を有するか否かについても判定できる。
紙素材は、水素結合によってシート状になった部材であるため、水洗式トイレ等で水に触れると水素結合が弱まり水解(溶解)する。即ち、このような水解性を有する紙素材を表面及び裏面に用いることで、水洗式トイレに流した際に、吸収性物品は水解(溶解)する。
表面1を形成する層と裏面2を形成する層とが積層されている本実施形態においては、裏面2を形成する層の少なくとも一方の面が撥水性を有している。これにより、尿の非肌面側への滲み出し(裏抜け)を防止でき、下着の汚染を防ぐことができる。撥水性を付与するのは、裏面2を形成する層の肌面側の面でも非肌面側の面でもよいが、尿の非肌面側への滲み出し(裏抜け)を効果的に防止する観点から、非肌面側の面に撥水性を付与することが好ましい。撥水性を付与する方法としては、撥水処理を施すことが挙げられる。撥水処理としては、撥水剤(撥水性油剤)を含む塗布液を通常用いる方法により、被処理面に塗工することが例示できる。
例えば、吸収性本体11は、図3に示すように、表面1を形成する層及び裏面2を形成する層の間に吸収層3を有していてもよい。吸収層3があることで、尿パッド10はより多くの尿を吸収することができ、非肌面側への尿の滲み出し(裏抜け)を抑制することができる。
吸収層3は、複数の紙素材のシートを積層した構造が好ましい。このような吸収層3では尿の吸収能力を高くすることができる。さらには、尿パッド10を水洗式トイレに流した際に、積層した紙素材のシートの間の空間に水が浸み込みやすく、尿パッド10の水解性を確保できる。即ち、尿の吸収能力と水解性とを両立することができる。
吸収層3には吸収シート(吸収性ポリマーを親水性かつ水解性のシートで挟持したシート)を使用することもできる。また、パルプ繊維と吸収性ポリマー、またはこれを水解性のシートで被覆したものを吸収層3としてもよい。なお、前記(水解性の有無の試験方法)で水解性を有すると判定される吸収性ポリマーは、水解性材料である。
また、吸収層3は、凹凸の紙素材のシート(凹凸シート)を含むことがより好ましい。さらに、凹凸シートを複数重ね合わせた積層体とすることがより好ましい。これにより、凹凸によって吸収層3内のシート間により多くの空間を設けることができ、水解性がより高められる。また、凹凸シートの積層体において、シートの凸部同士を向かい合わせにして積層していることが好ましい。これにより、シート間の空間をより大きく確保でき、水解性を更に高めることができる。上記の凹凸シートとしては、例えば、シワ加工を施したクレープ紙、紙素材をエンボス処理したものなどが挙げられる。中でも、シワ加工を施したクレープ紙が好ましい。
なお、上記凹凸シートにおける凹凸とは、十分な水解性を備える観点から、肉眼で確認できる程度に粗い凹凸であることが好ましい。
一体変形部5は、表面1を形成する層と裏面2を形成する層とを積層して嵌合押圧するため、層間の接合面積が増し、更に表面1を形成する層と裏面2を形成する層とを構成する繊維同士の絡みが増す。そのため、一体変形部5は、表面1及び裏面2をそれぞれ別々に押圧変形させ、その後に両者を嵌合させた形態よりも高い固定強度を有する。
一体変形部5における固定は、水解可能にされていることが好ましい。「水解可能」とは、前述の「水解性」と同義である。
なお、一体変形部5は、図2に示す表面1を形成する層と裏面2を形成する層との2層の積層部分に配されるものに限らず、他の部材を含む3層以上の積層部分に配されるものであってもよい。
この場合、固定用タブ12は、男性用下着90の開口部91に挿入したときに開口部91から外側に突出する大きさであることが好ましい。これにより、尿パッド10の下着への固定が一層安定し、さらには排尿時において尿が下着へ付着しにくくなる。例えば、尿パッド10が後述する男性器取り出し構造を有していない場合、下着を押し下げて男性器を取り出すことになる。その際に身体から尿パッド10が離れるが、固定用タブ12で尿パッド10を固定しているので、尿パッド10と開口部91の位置がずれることがない。そのため排尿後の残尿を吸収することができる。
このような構成によれば、固定用タブ12及び吸収性本体11の切込み16が開いた場合、V字の溝15が形成される。例えば、固定用タブ12を男性用下着90の開口部91に挿入して尿パッド10を固定しているときに固定用タブ12及び吸収性本体11の切込み16が閉じられていても、排尿時に固定用タブ12及び吸収性本体11の切込み16を開いてV字の溝15を形成できればよい。排尿時に、V字の溝15の下部側が閉じた、男性器の通り道を作り、開口部91を介して、下着を汚さずに男性器を出し入れできる。尿漏れは排尿後に男性器を下着の内部に引っ込める際に特に生じやすく、固定用タブ12の、V字の溝15の下部側に閉じた部分を構成する部分は、排尿後の尿漏れを効果的に吸収することができる。
固定用タブ12が男性器取り出し構造を有する場合において、切込み16の上部側の端は固定用タブ12の上部側の端と揃っているか、固定用タブ12の上部側の端よりも上部側にあることが好ましい。即ち、切込み16の上部側の端が、固定用タブ12の上部側の端と接しているか、固定用タブ12の上部側の端を越えていることが好ましい。切込み16の上部側の端がこのような位置にあると、固定用タブ12が図5(C)に示すようなV字の溝15を有する場合では、固定用タブ12の上部側を開きやすくなり、男性器の出し入れが容易になる。また、切込み16の上部側の端は、固定用タブ12の上部側の端よりも上部側にある場合、吸収性本体11上部側の端まで達していることが好ましい。
後述するように、製造過程において材料に切込みを入れたり折り畳んだりせず、工程を簡素化して製造できる観点から、固定用タブ12は吸収性本体11とは別体に形成されてもよい。
以下、固定用タブ12と吸収性本体11とを同一の部材で構成する場合、及び固定用タブ12と吸収性本体11とを別体に形成する場合それぞれの好ましい態様について、図面を参照しながら説明する。
図7(B)は、固定用タブ12が裏面2を形成する層のみ(2層の積層構造)からなることで、吸収性本体11と同一の部材で構成された尿パッド10(第2実施態様)を示している。裏面2を形成する層は固定用タブ12において、一体変形部5により固定用タブ12と吸収性本体11との境近傍が固定されていることが好ましい(図示せず)。固定用タブ12の位置と一致するように表面1を形成する層に切込みを設けると、固定用タブ12を形成する層の間から男性器の出し入れを行うことができ、排尿後に男性器を下着内部に収容する際の尿の漏れを固定用タブ12が防止できる。前述の通り、裏面2を形成する層は撥水性を有していることから、第2実施態様では、裏面2を形成する層が固定用タブ12を形成することで、固定用タブ12の部分から尿が下着へ染み出すのを抑制することができる。加えて、図7(A)に示す形態と比較して固定用タブ12が表面1を形成する層を有さない分だけ厚みを薄くすることができ、製造コストを低減することもできる。
なお、吸収性本体11が表面1を形成する層及び裏面2を形成する層以外に吸収層3を有する場合、第1実施態様及び第2実施態様のいずれにおいても、製造工程の複雑化を防止する観点から、固定用タブ12に吸収層3が含まれていてもよい。
図8(A)は、固定用タブ12が吸収性本体11の構成部材とは異なる別体4で構成され、かつ別体4が表面1を形成する層及び裏面2を形成する層の間に挟まれた尿パッド10(第3実施態様)を示している。かかる実施態様は、裏面2を形成する層に切込みを設け、表面1を形成する層及び裏面2を形成する層の間に別体4を挟み、別体4を該切込みから非肌面側へ突出させた構成である。また、表面1を形成する層、別体4、及び裏面2を形成する層は一体変形部5により固定されている。第3実施態様において、固定用タブ12の位置と一致するように表面1を形成する層に切込みを設けると、別体4には図5(B)及び(C)に示したような男性器取り出し構造が形成され男性器の出し入れを行うことができる。
図8(B)は、別体4で構成された固定用タブ12が、裏面2を形成する層の非肌面側に取り付けられた尿パッド10(第4実施態様)を示している。かかる実施態様では、別体4は表面1を形成する層及び裏面2を形成する層と、一体変形部5により固定されている。第4実施形態において、固定用タブ12の位置と一致するように表面1を形成する層及び裏面2を形成する層に切込みを設けると、別体4には図5(B)及び(C)に示したような男性器取り出し構造が形成され男性器の出し入れを行うことができる。
第3実施態様及び第4実施態様のいずれにおいても、固定用タブ12の強度を高める観点から、2層以上から構成される別体4は吸収性本体11と固定用タブ12との境界及び下部側において一体変形部5により固定されていることが好ましい。中でも、吸収性本体11と固定用タブ12との積層部分の一体変形部5で固定されていることがより好ましい。また、第3実施態様及び第4実施態様のいずれにおいても、別体4は水解性材料からなり、撥水性を有する材料であることがより好ましい。なお、別体4の素材である水解性材料は、吸収性本体11の素材と同じであってもよく、異なっていてもよい。
吸収性本体11の大きさは、男性器が配置される領域をカバーし男性用下着への尿の付着を防ぐことができる範囲で適宜設定される。例えば、吸収性本体11の上下方向の長さは、100mm以上が好ましく、120mm以上がより好ましく、130mm以上が更に好ましく、また、200mm以下が好ましく、180mm以下がより好ましく、170mm以下が更に好ましい。また、吸収性本体11の幅方向の長さは、80mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、120mm以上が更に好ましく、また、200mm以下が好ましく、170mm以下がより好ましく、150mm以下が更に好ましい。例えば、150mm×130mmの大きさの吸収性本体11を好ましく用いることができる。
さらに、固定用タブ12の配置位置は、固定用タブ12を介して男性器を取り出しやすくする観点から、吸収性本体11の上部から0mm以上100mm以下の範囲にあることが好ましく、0mm以上90mm以下の範囲にあることがより好ましく、0mm以上80mm以下の範囲にあることが更に好ましい。特に、固定用タブ12が、図5(C)や図6(A)及び(B)のように下部側のみが接合された複数層の積層構造である場合、吸収性本体11の上部側に偏って配置されていることが好ましく、固定用タブ12の上部側と吸収性本体11の上部側とが一致するように配置されていることがより好ましい。
図9(A)及び(B)は、1枚の積層シートを折り畳むことにより、第1実施形態の尿パッド10を製造する方法の一例を示している。なお、図9(A)及び(B)においては、表面1側を表にして示している。
まず、表面1を形成する層と裏面2を形成する層とを重ねて台形状に切断し、周縁部に一体変形部5を形成して表面1を形成する層及び裏面2を形成する層を押圧固定し、1枚の積層シート100を作製する。
その後、幅方向中央において、上部側に切込線S、下部側に切り欠き部Kを設ける(図9(A))。切り欠き部Kを設けるに当たっては、後述の重なる部分を形成する耳部Xを残す。積層シート100を幅方向中央で谷折りして180°折り、更に折り線L1及びL2に沿って山折りして90°折り返す。切り欠き部Kの上部側の折り畳み部101及び102を重ね、下部側同士を一体変形部5にて押圧固定し、固定用タブ12を形成する。一方、前記固定用タブ12形成時に、切り欠き部Kの幅方向両側にある積層シート100が一部重なる(耳部Xにおいて重なる)ようにしておき、重なる部分を一体変形部5にて押圧固定し、吸収性本体11を形成する。これにより、吸収性本体11と固定用タブ12とが同一部材から形成された尿パッド10が製造される(図9(B))。
次いで、表面1を形成する層、裏面2を形成する層及び別体4が重なった部分の周縁部、並びに吸収性本体11の周縁部に対して一体変形部5を形成し、各構成部材を固定する。これにより、吸収性本体11と固定用タブ12とが別体に形成された尿パッド10が製造される。なお、表面1を形成する層と裏面2を形成する層とを重ねる順番、切込線の入れ方、及び一体変形部5を形成する場所等を適宜設計することにより、他の実施形態の尿パッド10も同様にして製造できる。
2 裏面
3 吸収層
4 別体
5 一体変形部
10 男性用尿パッド
11 吸収性本体
12、12A、12B、12C 固定用タブ
15 V字の溝
16 (吸収性本体の)切込み
Claims (8)
- 表面及び裏面を有する吸収性本体と、前記裏面側から突出する固定用タブとを備え、前記吸収性本体及び前記固定用タブの構成部材が水解性材料からなり、前記裏面が撥水性を有している、吸収性物品。
- 前記吸収性本体が、前記表面を形成する層と前記裏面を形成する層とを有し、少なくとも前記表面を形成する層及び前記裏面を形成する層が紙素材からなり、前記裏面を形成する層の少なくとも一方の面が撥水性を有し、前記表面を形成する層と前記裏面を形成する層とが互いの積層部分における一体変形部にて固定されている、請求項1記載の吸収性物品。
- 前記吸収性本体が、前記表面を形成する層及び前記裏面を形成する層の間に吸収層を有する、請求項1又は2記載の吸収性物品。
- 前記吸収層が凹凸シートを含む、請求項3記載の吸収性物品。
- 前記吸収性本体が単層シートからなり、該単層シートの一方の面が撥水性を有して前記裏面をなしている、請求項1記載の吸収性物品。
- 前記固定用タブが複数層の積層構造であり、該複数層を構成する各層は下部側で互いに一体化しており、該複数層を構成する各層は少なくとも上下方向の中央部で互いに非固定であり、
前記吸収性本体が、前記固定用タブが配される位置に切込みを有し、該切込みと前記固定用タブの層間とが共に開く、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。 - 前記固定用タブが前記吸収性本体とは別体に形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
- 前記固定用タブ及び前記吸収性本体が、該固定用タブと該吸収性本体との積層部分の一体変形部で固定されている、請求項7記載の吸収性物品。
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