JP2020172807A - 鉄筋コンクリート用スペーサー及びレベル指標体 - Google Patents
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Description
先ず、鉄筋コンクリート用スペーサーの第1実施形態について説明する。図1は、鉄筋コンクリート用スペーサーの第1実施形態を示す斜視図である。この鉄筋コンクリート用スペーサー1は、例えば建物の土間コンクリート床やコンクリートスラブを施工する際に用いられる。
図示されるとおり、本実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1は、鉄筋35を所定の高さ位置に保持するために概略四角筒状の本体1Aを有しており、四角筒状の本体1Aの少なくとも高さ方向の辺の長さL1は、鉄筋35を配置すべき高さと同じに設定されている。この本体1Aの内側には、本体1Aを構成する各辺の中央付近を支持するようにして形成された十字状のリブ1B,1Bが設けられている。
そして、鉄筋35が載置される本体1Aの上辺12の表面の少なくとも中央付近には、鉄筋35の横滑りを防ぐための複数の溝部1C,1C,…が設けられている。ここで、十字状のリブ1B,1Bによって仕切られた4つの中空部1D,1D,1D,1Dの各々は柱状の空間であり、複数の溝部1C,1C,1C,…の各々は、柱状の中空部1D,1D,1D,1Dの中心線と平行に設定されている。また、上辺12は平面状であり、上辺12に設けられた複数の溝部1C,1C,…の深さは一様である。
また、図2に示されるとおりリブ1B,1Bで仕切られた4つの中空部1D,1D,1D,1Dの各々の四隅11,11,11,11,…は、アール状又は肉盛り状に補強されている。このような補強構造によれば、リブ1B,1Bと本体1Aとの連結部や、リブ1B,1B同士の交差部などが割れる可能性を抑えることができる。
また、図1に示されるとおり本体1Aを設置するための面となる辺は底板部1Eとされ、この底板部1Eの奥行長さL2は、それよりも上部側における本体1Aの奥行長さL3よりも長く形成されている。このような底板部1Eを設けることで鉄筋コンクリート用スペーサー1の姿勢安定性を向上させつつ、中空部1D,1D,1D,1Dの奥行きを狭めることができるので(図9を参照)、全ての辺の奥行きを大きく確保していた従来の鉄筋コンクリート用スペーサー60(図10)と比較すると、骨材50の中詰まりが生じにくい構造となっている。なお、骨材50の隙間にモルタル80を充填しやすく、しかも打設されたコンクリートに空隙70(図10参照)が殆ど生じないことは実験により明らかとなっている(図9を参照)。
また、本実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1の各部の寸法は、例えば、以下のとおりである。
高さ方向の辺の長さL1:70mm
幅方向の辺の長さL4:70mm
本体の辺の厚みT1:3.5mm
リブの厚みT2:4mm
溝部の深さd:0.5mm
底板部の奥行長さL2:50mm
底板部以外の辺の奥行長さL3:30mm
つまり、本実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1は、本体1Aの高さ方向の辺の長さL1と幅方向の辺の長さL4とが共に70mmに設定された70×70タイプの鉄筋コンクリート用スペーサーである。なお、他の寸法を同一として長さL1,L4を共に80mmに設定することで80×80タイプの鉄筋コンクリート用スペーサー1を実現することもできる。もちろん、寸法はこれに限定されるものではない。
鉄筋コンクリート用スペーサー1の本体1A及びリブ1B,1Bの材質としては様々なものを選択することが可能であり、特に樹脂を選択した場合には鉄筋コンクリート用スペーサー1を軽量化することが容易である。また、樹脂としては例えばポリプロピレン(PP)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)のいずれかを用いることができる。中でも、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、強度及びコストのバランスが本実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1に好適であることが実験により判明している(図8を参照)。
なお、本体1A及びリブ1B,1Bは同一の材料で一体として成形されるものとし、その成形には、モールド成形(プラスチック射出成形)や3Dプリンタなどの公知の成形技術を適用することができる。また、機械加工による削り出しなどの他の製作方法を適用することももちろん可能である。
上述したとおり、本実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1は、リブ1Bを十字状としたので、リブ1Bで仕切られる本体1A内の中空部(4つの中空部1D,1D,1D,1D)の各々の空間を大きくすることができるので骨材(砕石)50の中詰まりを防ぎ、コンクリートに空隙70(図10)が発生するのを防ぐことができる(図9)。例えば、本実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1は、個々の中空部1Dのサイズを、70×70タイプの場合には29.5mmも確保でき、80×80タイプの場合には34.5mmも確保できるので、25mm以下の骨材(砕石)50が中詰まりする可能性がほぼ無いことが実験により判明した。
次に、鉄筋コンクリート用スペーサーの第2実施形態について説明する。図3は、本発明に係る鉄筋コンクリート用スペーサーの第2実施形態を示す斜視図である。図3(A)は、第1の姿勢にあるときの鉄筋コンクリート用スペーサーを、図3(B)は第2の姿勢にあるときの鉄筋コンクリート用スペーサーをそれぞれ示している。図4は、第2実施形態の変形例を示す斜視図である。図4(A)は第1の姿勢にあるときの変形例、図4(B)は第2の姿勢にあるときの変形例をそれぞれ示している。ここでは、第1実施形態との相違点について説明し、共通点についての説明は省略する。また、図3,図4において図1,図2と同一の機能を有した部分については同一の符号を付した。
図示されるとおり、第2実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー2は、第1実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1において、本体1Aの高さ方向の辺の長さL1と幅方向の辺の長さL4とを相違させ、互いに直交する方向の2つの辺12,13のそれぞれの表面に複数の溝部1C,1C,1C,…が設けられると共に、溝部1C,1C,1C,…が設けられた2つの辺と対向して位置する2つの辺がそれぞれ底板部1E,1Eとされたものである。このように、2つの底板部1E,1Eを有した鉄筋コンクリート用スペーサー2は、一方の底板部1Eを設置面とした第1の姿勢(図3(A))で使用することもできるし、他方の底板部1Eを設置面とした第2の姿勢(図3(B))で使用することもできる。第2実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー2では隣り合う辺の長さL1,L4が相違するので、第1の姿勢(図3(A))と第2の姿勢(図3(B))との間で鉄筋35の高さ及びかぶり厚を相違させることができる。なお、第1の姿勢(図3(A))にあるときに上辺となる辺12は平面状であり、その高さは一様である。また、第2の姿勢(図3(B))にあるときに上辺となる辺13は平面状であり、その高さは一様である。
なお、図3(A),(B)の例では、溝部1Cは互いに隣接する辺12,13の全体に形成されているが、溝部1Cの主な形成範囲は、図4(A),(B)に示されるとおり表面12,13の各々の中央付近に限定してもよい。このように溝部1Cの主な形成範囲を限定すれば、作業者が溝部1Cを鉄筋35の配置先の指標(目印)とすることもできるし、鉄筋35の配置先が辺12又は辺13の中央付近から外れている場合には横滑りし易いので、鉄筋35を中央付近に誘導することが容易である。
また、図4(A),(B)に示されるとおりリブ1B,1Bで仕切られた4つの中空部1D,1D,1D,1Dの各々の四隅11,11,11,…は、アール状又は肉盛り状に補強されていてもよい。このような補強構造によれば、リブ1B,1Bと本体1Aとの連結部や、リブ1B,1B同士の交差部が割れる可能性を抑えることができる。
また、図3(A)に示されるとおり本体1Aを設置するための面となる2つの底板部1E,1Eの各々の奥行長さL2は、それよりも上部側における本体1Aの他の辺の奥行長さL3よりも長く形成されている。このような底板部1E,1Eによれば、鉄筋コンクリート用スペーサー2を第1の姿勢(図3(A))及び第2の姿勢(図3(B))のいずれで使用するときであっても、鉄筋コンクリート用スペーサー1の姿勢安定性を向上させつつ中空部1D,1D,1D,1Dの奥行きを狭めることができる(図9を参照)。
また、また、本実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー2の各部の寸法は例えば以下のとおりである。
第1の姿勢における高さ方向(=第2の姿勢における幅方向)の辺の長さL1:70mm
第1の姿勢における幅方向(=第2の姿勢における高さ方向)の辺の長さL4:80mm
本体の辺の厚みT1:3.5mm
リブの厚みT2:4mm
溝部の深さd:0.5mm
底板部の奥行長さL2:50mm
底板部以外の辺の奥行長さL3:30mm
つまり、本実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー2は、本体1Aの高さ方向の辺の長さL1と幅方向の辺の長さL4とがそれぞれ70mm及び80mmに設定された70×80タイプの鉄筋コンクリート用スペーサーである。L1,L4以外の寸法は第1実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1と同じである。もちろん、寸法はこれに限定されるものではない。
また、鉄筋コンクリート用スペーサー2の本体1A及びリブ1B,1Bの材質は、第1実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1の材質と同様に選択される。
本第2実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー2は、第1の姿勢と第2の姿勢との各々で使用可能であって、第1の姿勢で使用する場合と第2の姿勢で使用する場合との間で鉄筋の高さ位置を相違させることが可能であり、しかも各々の姿勢で第1実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1と同様の効果を得ることができる。
次に、第1実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1に取り付け可能なレベル指標体の実施形態を第3実施形態として説明する。図5は、レベル指標体を取り付けた鉄筋コンクリート用スペーサーを示す斜視図、図6は、レベル指標体の左側面図であり、図6(A)〜(C)はレベル調整キャップを取り付けたレベル指標体の低レベル、中レベル、高レベルのそれぞれの状態を示し、図6(D)はレベル調整キャップを取り外した状態のレベル指標体を示している。また、図7(A)は、レベル調整キャップの上面図、図7(B)はレベル調整キャップの左側面図、図7(C)はレベル調整キャップの底面図、図7(D)はレベル調整キャップの背面図である。なお、本実施形態のレベル指標体3は、第1実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー1のみならず第2実施形態の鉄筋コンクリート用スペーサー2にも取り付けることが可能である。また、レベル指標体3は、「レベル柱」と呼ぶこともできる。
図5に示されるとおり、本実施形態のレベル指標体3は、鉄筋コンクリート用スペーサー1に取り付けられ、コンクリートのかぶり厚の指標として用いられる。このレベル指標体3は、本体1Aの上辺に装着するための装着部3Aと、装着部3Aから所定長さに延びる柱状のレベル部3Bとを備えている。また、このレベル指標体3は、レベル部3Bに着脱自在に取り付けることにより高さ調整を行うためのレベル調整キャップ4を備えている。
先ず、作業者がレベル調整キャップ4をレベル部3B(図6(D))の上端へ装着した場合、レベル調整キャップ4の最下段の孔部8がレベル部3Bの最上段のストッパ7に嵌合した状態(図6(C))となり、レベル調整キャップ4の上端部の高さ位置が所定の高さ(最高レベル)にセットされる。
そして、作業者が一定以上の力でレベル調整キャップ4を下方へ押し下げた場合、当該嵌合が解除され、別の高さに位置する孔部8が当該ストッパ7に嵌合することとなり、レベル調整キャップ4の上端部が別の所定の高さにセットされる。
さらに、レベル調整キャップ4の押し下げ量が一定以上になった場合、レベル調整キャップ4の何れか2つの孔部8,8が最上段及び次の段の2つのストッパ7,7に嵌合した状態(図6(B))となり、レベル調整キャップ4の上端部が別の所定の高さにセットされる。
さらに、レベル調整キャップ4の押し下げ量が上限に達した場合、レベル調整キャップ4の下端縁が最下段のストッパ7に当接するので、レベル調整キャップ4はそれよりも下方には下がらなくなり(図6(A))、レベル調整キャップ4の上端部が別の所定の高さにセットされる。
レベル指標体3(レベル調整キャップ4も含む)は、例えば鉄筋コンクリート用スペーサー1と同一の材質(樹脂)で形成することができる。樹脂製の部材は適度な弾力を示すので、鉄筋コンクリート用スペーサー1に対するレベル指標体3の着脱や、レベル調整キャップ4の高さ調節などを容易に行うことが可能となる。もちろん、材質はこれに限定されるものではない。
上述したとおり本実施形態に係るレベル指標体3は、何れかの実施形態に係る鉄筋コンクリート用スペーサーに取り付けることで、コンクリートのかぶり厚を指標できるという効果がある。
以上のように、本発明に係る鉄筋コンクリート用スペーサー及びレベル指標体の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
2 鉄筋コンクリート用スペーサー
1A 本体
1B リブ
1C 溝部
1D 中空部
1E 底板部
11 四隅
12 辺
13 辺
35 鉄筋
60 鉄筋コンクリート用スペーサー
70 空隙
80 モルタル
L1 高さ方向の辺の長さ
L2 底板部の奥行長さ
L3 底板部以外の辺の奥行長さ
d 溝部の深さ
T1 本体の辺の厚み
T2 リブの厚み
Claims (7)
- 鉄筋を所定の高さ位置に保持するための鉄筋コンクリート用スペーサーにおいて、
角筒状の本体であって、辺の長さが前記鉄筋を配置すべき高さとされた本体と、
前記本体の内側に設けられ、前記本体を構成する各辺の中央付近を支持するようにして形成された十字状のリブと、
を備え、
前記鉄筋が載置される前記本体の上辺表面の少なくとも中央付近には鉄筋の横滑りを防ぐための溝部が設けられていることを特徴とする鉄筋コンクリート用スペーサー。 - 請求項1に記載の鉄筋コンクリート用スペーサーにおいて、
前記リブで仕切られた中空部の隅はアール状又は肉盛り状に補強されていることを特徴とする鉄筋コンクリート用スペーサー。 - 請求項1又は2に記載の鉄筋コンクリート用スペーサーにおいて、
前記本体の設置面となる辺は底板部とされ、前記底板部の奥行長さは他の辺の奥行長さよりも長く形成されていることを特徴とする鉄筋コンクリート用スペーサー。 - 請求項3に記載の鉄筋コンクリート用スペーサーにおいて、
前記本体の高さ方向の辺の長さと幅方向の辺の長さとが相違しており、互いに直交する方向の2つの辺の表面に前記溝部が設けられると共に、前記溝部が設けられた2つの辺と対向して位置する2つの辺がそれぞれ前記底板部とされていることを特徴とする鉄筋コンクリート用スペーサー。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート用スペーサーにおいて、
前記本体及び前記リブは、ポリプロピレン(PP)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)のいずれかによって形成されていることを特徴とする鉄筋コンクリート用スペーサー。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート用スペーサーに取り付けられ、コンクリートのかぶり厚の指標となるレベル指標体であって、
前記本体の上辺に装着するための装着部と、
前記装着部から所定長さに延びるレベル部と、
を備えていることを特徴とするレベル指標体。 - 請求項6に記載のレベル指標体において、
前記レベル部に着脱自在に取り付けることにより高さ調整を行うためのレベル調整キャップを備えていることを特徴とするレベル指標体。
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