[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一実施態様に係る超電導線は、第1表面と、第1表面の反対側の面である第1裏面とを有する第1の超電導線材と、第2表面と、第2表面の反対側の面である第2裏面とを有する第2の超電導線材と、第1の超電導線材と第2の超電導線材とを接合する接続部材とを備えている。第1の超電導線材は、第1の超電導層と、第1の超電導層の第1表面側及び第1裏面側に設けられた第1の補強層とを有する。第2の超電導線材は、かつ第2の超電導層と、第2の超電導層の第2表面側及び第2裏面側に設けられた第2の補強層とを有する。
第1の超電導線材は、第1表面側の第1の補強層の少なくとも一部が除去されている第1の端部を有している。第2の超電導線材は、第2表面側の第2の補強層の少なくとも一部が除去されている第2の端部を有している。
第1の端部に位置する第1表面は、接続部材により、第2の端部以外に位置する第2表面に接合され、第2の端部に位置する第2表面は、接続部材により、第1の端部以外に位置する第1表面に接合されている。
上記(1)の超電導線によると、曲げ変形、引張変形等に対する良好な機械的特性を得ることができる。
(2)上記(1)の超電導線において、第1表面側の第1補強層の全部は第1の端部において除去されており、第2表面側の第2補強層の全部は第2の端部において除去されていてもよい。
上記(2)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗値を低減することができる。
(3)上記(1)及び(2)の超電導線は、接続部材よりも低い電気抵抗値を有する導電部材を備えていてもよく、導電部材は、第1の端部に位置する第1表面と第2の端部に位置する第2表面との間に配置されていてもよい。
上記(3)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗値を低減することができる。
(4)上記(1)〜(3)の超電導線は、第1裏面側の第1の補強層上に設けられた第1の補強部材をさらに備えていてもよく、第1の補強部材は第1の端部から突出して第2表面側の第2の補強層に接合されていてもよい。
上記(4)の超電導線によると、曲げ変形、引張変形等に対するさらに良好な機械的特性を得ることができる。
(5)上記(1)〜(4)の超電導線は、第2裏面側の第2補強層上に設けられている第2の補強部材をさらに備えていてもよく、第2の補強部材は第2の端部から突出して第1表面側の第1の補強層に接合されていてもよい。
上記(5)の超電導線によると、曲げ変形、引張変形等に対するさらに良好な機械的特性を得ることができる。
(6)上記(1)〜(5)の超電導線は、第1の超電導線材及び第2の超電導線材の許容引張強度のうちの小さい方の許容引張強度の80%以上の許容引張強度を有していてもよい。
上記(6)の超電導線によると、良好な引張特性を得ることができる。
(7)上記(1)〜(6)の超電導線は、第1の超電導線材及び第2の超電導線材の許容曲げ直径のうちの大きい方の許容曲げ直径の4倍以下の許容曲げ直径を有していてもよい。
上記(7)の超電導線によると、良好な曲げ特性を得ることができる。
(8)本発明の一実施態様に係る超電導線は、第1表面と、第1表面の反対側の面である第1裏面とを有する第1の超電導線材と、第2表面と、第2表面の反対側の面である第2裏面とを有する第2の超電導線材と、第1の超電導線材と第2の超電導線材とを接合する接続部材とを備えている。第1の超電導線材は、第1の超電導層と、第1の超電導層の第1表面側及び第1裏面側に設けられた第1の補強層とを有する。第2の超電導線材は、第2の超電導層と、第2の超電導層の第2表面側及び第2裏面側に設けられた第2の補強層とを有する。
第1の超電導線材は、第1表面側の第1の補強層の少なくとも一部が除去されている第1の端部を有している。第2の超電導線材は、第2表面側の第2の補強層の少なくとも一部が除去されている第2の端部を有している。
第1の端部に位置する第1表面と第2の端部に位置する第2表面とは、接続部材により接合されている。第1裏面側の第1の補強層は、第1の端部から突出して第2表面側の第2の補強層に接合されている第1の突出部を有している。第2裏面側の第2の補強層は、第2の端部から突出して第1表面側の第1の補強層に接合されている第2の突出部を有している。
上記(8)の超電導線によると、曲げ変形、引張変形等に対する良好な機械的特性を得ることができる。
(9)上記(8)の超電導線において、第1表面側の第1補強層の全部は第1の端部において除去されており、第2表面側の第2補強層の全部は第2の端部において除去されていてもよい。
上記(9)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗値を低減することができる。
(10)本発明の一実施形態に係る超電導線は、第1表面と、第1表面の反対側の面である第1裏面とを有する第1の超電導線材と、第2表面と、第2表面の反対側の面である第2裏面とを有する第2の超電導線材と、第1表面と第2表面との間に配置される第3の補強部材と、第1の超電導線材と第3の補強部材とを接合し、第2の超電導線材と第3の補強部材とを接合する接続部材とを備えている。第1の超電導線材は、第1の超電導層と、第1の超電導層の第1表面側及び第1裏面側に設けられた第1の補強層とを有している。第1の超電導線材は、第1表面側の第1の補強層の少なくとも一部が除去されている第1の端部を有している。第2の超電導線材は、第2の超電導層と、第2の超電導層の第2表面側及び第2裏面側に設けられた第2の補強層とを有している。第2の超電導線材は、第2表面側の第2の補強層の少なくとも一部が除去されている第2の端部を有している。
第1の端部に位置する第1表面は、第2の端部以外に位置する第2表面に対向するように配置され、第2の端部に位置する第2表面は、第1の端部以外に位置する第1表面に対向するように配置されている。第3の補強部材は、接続部材よりも電気抵抗値が低く、接続部材よりも強度が高い。
上記(10)の超電導線によると、曲げ変形、引張変形等に対するより良好な機械的特性及びを得ることが可能となり、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗値を低減することができる。
(11)上記(10)の超電導線において、第1表面側の第1補強層の全部は第1の端部において除去されており、第2表面側の第2補強層の全部は第2の端部において除去されていてもよい。
上記(11)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗値を低減することができる。
(12)上記(1)〜(11)の超電導線において、第1の補強層は、第1の超電導層に対して圧縮歪みを生じさせており、第2の補強層は、第2の超電導層に対して圧縮歪みを生じさせていてもよい。
上記(12)の超電導線によると、曲げ変形、引張変形等に対するより良好な機械的特性を得ることができる。
(13)上記(12)の超電導線において、第1の端部に位置する第1の超電導層に対する圧縮歪みは、第1の端部以外に位置する第1の超電導層に対する圧縮歪みよりも小さくてもよい。第2の端部に位置する第2の超電導層に対する圧縮歪みは、第2の端部以外に位置する第2の超電導層に対する圧縮歪みよりも小さくてもよい。
上記(13)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗値を低減することができる。
(14)本発明の一実施形態に係る超電導線の製造方法は、第1表面と、第1表面の反対側の面である第1裏面とを有する第1の超電導線材を、第2表面と、第2表面の反対側の面である第2裏面とを有する第2の超電導線材に接合する工程を備えている。第1の超電導線材は、第1の超電導層と、第1表面側及び第1裏面側に設けられた第1の補強層とを有する。第2の超電導線材は、第2の超電導層と、第2表面側及び第2裏面側に設けられた第2の補強層とを有する。
第1の超電導線材は、第1表面側の第1の補強層の少なくとも一部が除去された第1の端部を有している。第2の超電導線材は、第2表面側の第2の補強層の少なくとも一部が除去された第2の端部を有している。第1の端部に位置する第1表面は、接続部材により、第2の端部以外に位置する第2表面に接合されている。第2の端部に位置する第2表面は、接続部材により、第1の端部以外に位置する第1表面に接合されている。
上記(14)の超電導線の製造方法によると、曲げ変形、引張変形等に対するより良好な機械的特性を有する超電導線の接続を行うことができる。
(15)上記(14)の超電導線の製造方法において、第1の端部に位置する第1表面側の第1の補強層及び第2の端部に位置する第2表面側の第2の補強層は全て除去されてもよい。
上記(15)の超電導線の製造方法によると、接続抵抗値を低減することができる。
(16)上記(14)及び(15)の超電導線の製造方法は、第1の端部に位置する第1表面と第2の端部に位置する第2表面との間に導電部材を挿入する工程をさらに備えていてもよい。
上記(16)の超電導線の製造方法によると、接続抵抗値をさらに低減することができる。
(17)本発明の一実施形態に係る超電導線の製造方法は、第1表面と、第1表面の反対側の面である第1裏面とを有する第1の超電導線材を、第2表面と、第2表面の反対側の面である第2裏面とを有する第2の超電導線材に接合する工程を備えている。第1の超電導線材は、第1の超電導層と、第1表面側及び第1裏面側に設けられた第1の補強層とを有する。第2の超電導線材は、第2の超電導層と、第2表面側及び第2裏面側に設けられた第2の補強層とを有する。
第1の超電導線材は、第1表面側の第1の補強層の少なくとも一部が除去された第1の端部を有している。第2の超電導線材は、第2表面側の第2の補強層の少なくとも一部が除去された第2の端部を有している。第1の端部に位置する第1表面は、接続部材により、第2の端部に位置する第2表面に接合されている。
第1裏面側の第1の補強層は、第1の端部より突出した第1の突出部を有している。第2裏面側の第2の補強層は、第2の端部より突出した第2の突出部を有している。第1の突出部は、第2表面側の第2の補強層に接合されている。第2の突出部は、第1表面側の第1の補強層に接合されている。
上記(17)の超電導線の製造方法によると、曲げ変形、引張変形等に対するより良好な機械的特性を有する超電導線の接続を行うことができる。
(18)上記(17)の超電導線の製造方法において、第1の端部に位置する第1表面側の第1の補強層及び第2の端部に位置する第2表面側の第2の補強層は全て除去されてもよい。
上記(18)の超電導線の製造方法によると、接続抵抗値を低減することができる。
(19)本発明の一実施形態に係る超電導線の製造方法は、第1表面と、第1表面の反対側の面である第1裏面とを有する第1の超電導線材と、第2表面と、第2表面の反対側の面である第2裏面とを有する第2の超電導線材とを、接続部材により第1表面と第2表面との間に配置された第3の補強部材に接合する工程を備えている。第1の超電導線材は、第1表面側の第1の補強層の少なくとも一部が除去された第1の端部を有している。第1の超電導線材は、第1の超電導層と、第1表面側及び第1裏面側に設けられた第1の補強層とを有している。第2の超電導線材は、第2表面側の第2の補強層の少なくとも一部が除去された第2の端部を有している。第2の超電導線材は、第2の超電導層と、第2表面側及び第2裏面側に設けられた第2の補強層とを有している。記第1の端部に位置する第1表面は、第2の端部以外に位置する第2表面に対向するように配置されており、第2の端部に位置する第2表面は、第1の端部以外に位置する第1表面に対向するように配置されている。第3の補強部材は、接続部材よりも電気抵抗値が低く、接続部材よりも強度が高い。
上記(19)の超電導線の製造方法によると、曲げ変形、引張変形等に対するより良好な機械的特性を有し、接続抵抗値が低減された超電導線の接続を行うことができる。
(20)上記(19)の超電導線の製造方法において、第1の端部に位置する第1表面側の第1の補強層及び第2の端部に位置する第2表面側の第2の補強層は全て除去されてもよい。
上記(20)の超電導線の製造方法によると、接続抵抗値を低減することができる。
(21)本発明の一実施形態に係る超電導線は、第1表面と、第1表面の反対側の面である第1裏面とを有する第1の超電導線材と、第2表面と、第2表面の反対側の面である第2裏面とを有する第2の超電導線材と、第1の超電導線材を第2の超電導線材に接合する接続部材とを備えている。第1の超電導線材は、第1表面側が縮み、第1裏面側が伸びるように湾曲している第1湾曲部を有している。第2の超電導線材は、第2表面側が伸び、第2裏面側が縮むように湾曲している第2湾曲部を有している。接続部材は、第1湾曲部に位置する第1表面と、第2湾曲部に位置する第2表面とを接合している。
上記(21)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗を低減しつつ、曲げ特性を改善することができる。
(22)上記(21)の超電導線において、第1の超電導線材は、第1の超電導層と、第1の超電導層の第1表面側及び第1裏面側に設けられた第1の補強層とを有していてもよい。第2の超電導線材は、第2の超電導層と、第2の超電導層の第2表面側及び第2裏面側に設けられた第2の補強層とを有していてもよい。第1の補強層及び第2の補強層は、第1の超電導層及び第2の超電導層よりも剛性が高い金属材料で形成されていてもよい。
上記(22)の超電導線によると、接続抵抗を低減しつつ、引張特性と曲げ特性の双方を改善することができる。
(23)上記(21)の超電導線において、第1の超電導線材と第2の超電導線材とが重なり合っている部分の長さは、5mm以上1000mm以下であってもよい。
上記(23)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗を低減しつつ、曲げ特性を改善することができる。
(24)上記(21)の超電導線は、第1の超電導線材と第2の超電導線材とが重なり合っている部分において、30mm以上1000mm以下の曲率半径を有していてもよい。
上記(24)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗を低減しつつ、曲げ特性を改善することができる。
(25)上記(21)の超電導線において、第1の超電導線材は、第1の超電導層と、第1の超電導層の第1表面側及び第1裏面側に設けられた第1の補強層とを有していてもよい。第2の超電導線材は、第2の超電導層と、第2の超電導層の第2表面側及び第2裏面側に設けられた第2の補強層とを有していてもよい。第1湾曲部は、第1表面側の第1の補強層の少なくとも一部が除去されている第1の端部を含んでいてもよい。第2湾曲部は、第2表面側の第2の補強層の少なくとも一部が除去されている第2の端部を含んでいてもよい。
上記(25)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗をさらに低減しつつ、曲げ特性を改善することができる。
(26)上記(25)の超電導線において、第1の端部に位置する第1表面は、接続部材により、第2の端部以外に位置する第2表面に接合されていてもよい。第2の端部に位置する第2表面は、接続部材により、第1の端部以外に位置する第1表面に接合されていてもよい。
上記(26)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗をさらに低減しつつ、曲げ変形、引張変形等に対するさらに良好な機械的特性を得ることができる。
(27)上記(25)の超電導線は、接続部材よりも低い電気抵抗値を有し、第1の端部に位置する第1表面と第2の端部に位置する第2表面との間に配置されている導電部材を備えていてもよい。
上記(27)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗をさらに低減することができる。
(28)上記(25)の超電導線において、第1の端部において第1表面側の第1の補強層は全て除去されていてもよい。第2の端部において、第2表面側の第2の補強層は全て除去されていてもよい。
上記(28)の超電導線によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗をさらに低減することができる。
(29)上記(28)の超電導線において、第1の補強層は第1の超電導層に対して圧縮歪みを生じさせており、第2の補強層は第2の超電導層に対して圧縮歪みを生じさせていてもよい。
上記(29)の超電導線によると、曲げ変形、引張変形等に対する機械的特性をさらに改善することができる。
(30)本発明の一実施形態に係る超電導線の製造方法は、第1表面と、前記第1表面の反対側の面である第1裏面とを有する第1の超電導線材と、第2表面と、第2表面の反対側の面である第2裏面とを有する第2の超電導線材と、接続部材とを準備する工程と、第1表面と第2表面との間に接続部材を挿入した状態で第1の超電導線材、第2の超電導線材及び接続部材を挟持する工程と、第1の超電導線材、第2の超電導線材及び接続部材の挟持されている部分に熱及び圧力を加える工程とを備えている。第1の超電導線材は、挟持されている部分において、第1表面側が縮み、第1裏面側が伸びるように湾曲している。第2の超電導線材は、挟持されている部分において、第2表面側が伸び、第2裏面側が縮むように湾曲している。
上記(30)の超電導線の製造方法によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗を低減しつつ、曲げ特性が改善された超電導線の接続を行うことができる。
(31)上記(30)の超電導線の製造方法において、挟持する工程並びに加熱及び圧力を加える工程は、接合装置により行われてもよい。接合装置は、押圧部と、押圧部の上方に配置された固定部と、押圧部及び固定部の内部に配置されたヒータと、押圧部を上下方向に移動させる駆動部とを備えていてもよい。押圧部は、上面を有していてもよい。固定部は、下面を有していてもよい。上面及び下面は、同一方向に凸の湾曲形状を有していてもよい。第1の超電導線材、第2の超電導線材及び接続部材は、上面と下面とにより挟持され、熱は、ヒータにより加えられ、圧力は、駆動部が固定部を上下方向に移動させて上面と下面との間隔を変化させることにより加えられてもよい。
上記(31)の超電導線の製造方法によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗を低減しつつ、曲げ特性が改善された超電導線の接続を行うことができる。
(32)上記(31)の超電導線の製造方法において、固定部は、第1の部分と、第2の部分とに分割されていてもよい。挟持する工程は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有していてもよい。第1工程は、第1の部分及び第2の部分のいずれか一方に位置する下面と上面との間で第1の超電導線材、第2の超電導線材及び接続部材を挟持してもよい。第2工程は、第1の部分及び第2の部分の他方に位置する下面と上面との間で第1の超電導線材、第2の超電導線材及び接続部材を挟持してもよい。第3工程は、第1の部分及び第2の部分の位置を固定してもよい。
上記(32)の超電導線の製造方法によると、第1の超電導線材、第2の超電導線材及び接続部材の位置がずれにくく、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接合特性にばらつき、劣化が生じることを抑制することができる超電導線の接続を行うことができる。
(33)上記(31)の超電導線の製造方法において、接合装置には、圧力を測定する測定部がさらに設けられていてもよい。駆動部は、測定部における測定結果に基づき、圧力の変化が所定の範囲内となるように制御されてもよい。
上記(33)の超電導線の製造方法によると、超電導線の超電導特性の劣化を抑制するとともに、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接合特性を改善することができる。
(34)上記(31)の超電導線の製造方法において、上面の曲率半径及び下面の曲率半径は、30mm以上1000mm以下であってもよい。
上記(34)の超電導線の製造方法によると、第1の超電導線材と第2の超電導線材との間の接続抵抗を低減しつつ、曲げ特性が改善された超電導線の接続を行うことができる。
[本発明の実施形態の詳細]
次に、実施の形態の詳細について説明する。
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態に係る超電導線の構成について、図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る超電導線の上面図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超電導線は、第1の超電導線材1と、第2の超電導線材2と、接続部材3(図2参照)とを有している。接続部材3には、例えば、錫(Sn)鉛(Pb)共晶合金、錫(Sn)インジウム(In)合金等のはんだが用いられる。第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2は、シート状の形状を有している。第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とは、接続部材3により接合されている。なお、図1においては、第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2のみが図示されているが、第1の実施形態に係る超電導線は、より多数の超電導線材を接合して形成することも可能である。
図2は、第1の実施形態に係る超電導線における第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが接合されている部分での断面図である。図2(A)に示すように、第1の超電導線材1は、第1の超電導層11と、第1の補強層12と、第1の内部接続部材13と、第1の表面接続部材14とを有している。第2の超電導線材2は、第2の超電導層21と、第2の補強層22と、第2の内部接続部材23と、第2の表面接続部材24とを有している。第1の超電導線材1は、第1の端部1aを有している。第2の超電導線材2は、第2の端部2aを有している。第1の端部1aは、第1の超電導線材1の長手方向における端に位置する部分である。第2の端部2aは、第2の超電導線材2の長手方向における端に位置する部分である。
第1の超電導線材1は、第1表面1bと、第1裏面1cとを有している。第1裏面1cは、第1表面1bの反対側の面である。第2の超電導線材2は、第2表面2bと、第2裏面2cとを有している。第2裏面2cは、第2表面2bの反対側の面である。
第1の超電導層11及び第2の超電導層21は、例えば銀(Ag)のシース中にビスマス(Bi)系の高温超電導酸化物を含有する層である。但し、第1の超電導層11及び第2の超電導層21の構成はこれに限られるものではない。
第1の補強層12及び第2の補強層22には、例えばニッケル(Ni)合金が用いられる。但し、第1の補強層12及び第2の補強層22に用いられる材料はこれに限られるものではない。例えば、第1の補強層12及び第2の補強層22として、ステンレス鋼、銅(Cu)合金等を用いることができる。なお、第1の補強層12に用いられる材料は、第2の補強層22に用いられる材料と同一の材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
第1の内部接続部材13及び第2の内部接続部材23には、例えば錫(Sn)銀(Ag)合金等の鉛フリーはんだが用いられる。第1の内部接続部材13及び第2の内部接続部材23は、接続部材3よりも融点が高いことが好ましい。
第1の表面接続部材14及び第2の表面接続部材24には、例えば錫(Sn)銀(Ag)合金等の鉛フリーはんだが用いられる。なお、第1の表面接続部材14及び第2の表面接続部材24は、第1の内部接続部材13及び第2の内部接続部材23と同一の材料であってもよく、異なる材料であってもよい。第1の表面接続部材14及び第2の表面接続部材24は、接続部材3よりも融点が高いことが好ましい。
第1の超電導層11の第1表面1b側及び第1裏面1c側には、第1の補強層12が設けられている。第1の端部1aに位置する第1表面1b側では、第1の補強層12が全て除去されている。
なお、図2(B)に示すように、第1の端部1aに位置する第1表面1b側においては、第1の補強層12の一部が除去されていてもよい。この場合、第1の端部1aに位置する第1の超電導層11の第1表面1b側は第1の補強層12により覆われているが、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12の厚さは、第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の補強層12の厚さよりも薄くなっている。このように、第1の端部1aは、第1表面1b側の第1の補強層12の少なくとも一部が除去された部分であればよい。
図2(A)に示すように、第2の超電導層21の第2表面2b側及び第2裏面2c側には、第2の補強層22が設けられている。第2の端部2aに位置する第2表面2b側では、第2の補強層22が全て除去されている。
なお、図2(B)に示すように、第2の端部2aに位置する第2表面2b側においては、第2の補強層22の一部が除去されていてもよい。この場合、第2の端部2aに位置する第2の超電導層21の第2表面2b側は第2の補強層22により覆われているが、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22の厚さは、第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の補強層22の厚さよりも薄くなっている。このように、第2の端部2aは、第2表面2b側の第2の補強層22の少なくとも一部が除去された部分であればよい。
第1の補強層12は、張力が付加された状態で、第1の超電導層11上に設けられている。これにより、第1の補強層12は、第1の超電導層11に対して、圧縮歪みを生じさせている。第1の端部1aに位置する第1の超電導層11に生じている圧縮歪みは、第1の端部1a以外に位置する第1の超電導層11に生じている圧縮歪みよりも小さくてもよい。第1の端部1aに位置する第1の超電導層11の第1表面1b側に生じている圧縮歪みが、第1の端部1aに位置する第1の超電導層11の第1裏面1c側に生じている圧縮歪みよりも小さい場合は、第1の端部1aの長手方向における幅は狭いほうが好ましい。具体的には、この場合には、第1の端部1aの長手方向における幅は、20mm以下であることが好ましい。
第2の補強層22は、張力が付加された状態で、第2の超電導層21上に設けられている。これにより、第2の補強層22は、第2の超電導層21に対して、圧縮歪みを生じさせている。第2の端部2aに位置する第2の超電導層21に生じている圧縮歪みは、第2の端部2a以外に位置する第2の超電導層21に生じている圧縮歪みよりも小さくてもよい。第2の端部2aに位置する第2の超電導層21の第2表面2b側に生じている圧縮歪みが、第2の端部2aに位置する第2の超電導層21の第2裏面2c側に生じている圧縮歪みよりも小さい場合は、第2の端部2aの長手方向における幅は狭いほうが好ましい。具体的には、この場合には、第2の端部2aの長手方向における幅は、20mm以下であることが好ましい。
なお、圧縮歪みの測定は、X線又は中性子回折法により行われる。また、圧縮歪みの測定は、スプリングボードを用いて測定されてもよい。
第1の内部接続部材13は、第1の超電導層11と、第1の補強層12との間に設けられている。これにより、第1の超電導層11と第1の補強層12とが接合されている。第2の内部接続部材23は、第2の超電導層21と、第2の補強層22との間に設けられている。これにより、第2の超電導層21と第2の補強層22とが接合されている。なお、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12の全てが除去されている場合、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の内部接続部材13は、除去されていてもよい。また、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22の全てが除去されている場合、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の内部接続部材23は、除去されていてもよい。
第1の表面接続部材14は、第1表面1b側及び第1裏面1c側の第1の補強層12上に設けられている。第2の表面接続部材24は、第2表面2b側及び第2裏面2c側の第2の補強層22上に設けられている。
第1の端部1aに位置する第1表面1bは、第2の端部2a以外に位置する第2表面2bに接合されている。具体的には、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の内部接続部材13が第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の表面接続部材24に接合されている。
第2の端部2aに位置する第2表面2bは、第1の端部1a以外に位置する第1表面1bに接合されている。具体的には、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の内部接続部材23が第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の表面接続部材14に接合されている。
なお、図2(B)に示すように、第1の端部1aに位置する第1表面1b側に第1の補強層12が設けられ、第2の端部2aに位置する第2表面2b側に第2の補強層22が設けられている場合は、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12が第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の表面接続部材24に接合され、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22が第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の表面接続部材14に接合されている。
図2(A)に示すように、第1表面1b側の第1の補強層12の端と第2表面2b側の第2の補強層の端との間には、間隔が設けられている。この間隔が設けられている位置では、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の内部接続部材13が第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の内部接続部材23に接合されている。
なお、図2(B)に示すように、第1の端部1aに位置する第1表面1b側に第1の補強層12が設けられ、第2の端部2aに位置する第2表面2b側に第2の補強層22が設けられている場合は、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12が、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22に、接続部材3により接合されている。
第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bの間には、接続部材3中に導電部材31が設けられていてもよい。導電部材31には、接続部材3よりも電気伝導率が高い材料が用いられる。例えば、接続部材3がSn合金等のはんだである場合、導電部材31にはCu、Ag、金(Au)等が用いられる。
図2(C)に示すように、第1表面1b側の第1の補強層12の端と第2表面2b側の第2の補強層の端との間には、間隔が設けられていなくてもよい。すなわち、第1表面1b側の第1の補強層12の端と第2表面2b側の第2の補強層の端とは、互いに接触していてもよい。なお、第1の端部1aに位置する第1表面1b側に第1の補強層12が設けられ、第2の端部2aに位置する第2表面2b側に第2の補強層22が設けられている場合、第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の補強層12の端は、第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の補強層22の端に接触していてもよい。
図3は、第1の実施形態に係る超電導線の変形例の断面図である。図3に示すように、第1の実施形態に係る超電導線は、第1の補強部材4と、第2の補強部材5とを有していてもよい。なお、第1の実施形態に係る超電導線は、第1の補強部材4及び第2の補強部材5のいずれか一方のみを有していてもよい。
第1の補強部材4は、第1の超電導線材1の第1裏面1cに設けられている。第1の補強部材4は、その端が第1の端部1aから突出し、かつ接続部材3により第2の超電導線材2の第2表面2bに接合されている。第2の補強部材5は、第2の超電導線材2の第2裏面2cに設けられている。第2の補強部材5は、その端が第2の端部2aから突出し、かつ接続部材3により第1の超電導線材1の第1表面1bに接合されている。第1の補強部材4及び第2の補強部材5は、第1の補強層12及び第2の補強層22と異なる材料が用いられていてもよく、同一の材料が用いられていてもよい。
以下に、第1の実施形態に係る超電導線を用いた超電導機器の構造について説明する。図4は、第1の実施形態に係る超電導線を用いた超電導機器6の模式図である。第1の実施形態に係る超電導線を用いた超電導機器6は、例えば冷凍機冷却型の超電導マグネットシステムである。なお、第1の実施形態に係る超電導線を用いた機器はこれに限られない。
第1の実施形態に係る超電導線を用いた超電導機器6は、例えば超電導コイル体61を有している。超電導コイル体61には、第1の実施形態に係る超電導線が用いられている。また、第1の実施形態に係る超電導線を用いた超電導機器6は、その他の構成として、例えば、超電導コイル体61を格納する断熱容器62と、超電導コイル体61を冷却するための冷凍機63と、冷凍機63を駆動するコンプレッサ64と、電源65とを有している。
以下に、第1の実施形態に係る超電導線の製造方法について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る超電導線の製造方法の工程図である。図5に示すように、第1の実施形態に係る超電導線の製造方法は、線材加工工程S1と、線材接合工程S2とを有している。
図6は、線材加工工程S1が行われた後の第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2の断面図である。図6(A)及び(B)に示すように、線材加工工程S1により、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12及び第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22は、全部が除去される。図6(C)及び(D)に示すように、線材加工工程S1により、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12及び第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22は、一部が除去されてもよい。
図7は、線材加工工程S1が行われた後の第1の超電導線材1の第1表面1b側からみた上面図である。図7(A)に示すように、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12は、第1の補強層12の端が第1の超電導線材1の長手方向と直角をなすように除去されてもよい。なお、図7(B)に示すように、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12は、第1の補強層12の端が第1の超電導線材1の長手方向に対して傾くように除去されてもよく、第1の超電導線材1の端は、第1の超電導線材1の長手方向に対して傾くように除去されてもよい。図7(C)に示すように、第1の超電導線材1の端が第1の超電導線材1の長手方向に傾くように除去された場合、その先端部分がさらに除去されてもよい。
図8は、線材加工工程S1が行われた後の第2の超電導線材2の第2表面2b側からみた上面図である。図8(A)に示すように、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22は、第2の補強層22の端が第2の超電導線材2の長手方向と直角をなすように除去されてもよい。なお、図8(B)に示すように、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22は、第2の補強層22の端が第2の超電導線材2の長手方向に対して傾くように除去されてもよく、第2の超電導線材2の端は、第2の超電導線材2の長手方向に対して傾くように除去されてもよい。この場合、第2の補強層22の端及び第2の超電導線材2の端は、第1表面1bと第2表面2bとが対向するように重ね合わせた際に、第1の補強層12の端及び第1の超電導線材1の端と平行になるように除去されることが好ましい。なお、図8(C)に示すように、第2の超電導線材2の端が第2の超電導線材2の長手方向に傾くように除去された場合、その先端部分がさらに除去されてもよい。このような形状を有することにより、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との間で生じる応力集中をより緩和することが可能となる。
図9は、線材加工工程S1における第1の超電導線材1の断面図である。図9(A)に示すように、線材加工工程S1においては、まず、第1の超電導線材1の第1の端部1aに熱H1が加えられる。これによって、第1の端部1aに位置している第1の内部接続部材13が溶融する。なお、第1の端部1aに位置している第1の内部接続部材13が溶融することにより、第1の補強層12が第1の端部1aに位置する第1の超電導層11に対して付与していた圧縮歪みが解放される。
次に、図9(B)に示すように、第1表面1b側の第1の補強層12が引き剥がされる。第1表面1b側の第1の補強層12の引き剥がしは、第1の端部1aに位置する第1の内部接続部材13が溶融した状態で(すなわち熱H1が加えられた状態で)行われる。第1表面1b側の第1の補強層12の引き剥がされた部分は、切断等により除去される。
図9(C)及び(D)に示すように、第1の超電導線材1の第1の端部1a側の端のみに熱H2を加えた後に、第1表面1b側の第1の補強層12を引き剥がしてもよい。この場合、熱H2により、第1の端部1a側の端に位置している第1の内部接続部材13のみが溶融する。すなわち、第1の端部1aに位置している第1の内部接続部材13の大部分が溶融しない。そのため、第1の補強層12が第1の端部1aに位置する第1の超電導層11に対して付与していた圧縮歪みは解放されない。なお、図9(E)に示すように、第1の端部1aのうち、熱H2により溶融した第1の内部接続部材13を含む部分については、切断により除去されてもよい。
なお、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12及び第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22の一部が除去される場合には、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12及び第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22に対する研磨が行われる。
第2の超電導線材2に対しても、第1の超電導線材1に対するのと同様の処理が行われることにより、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22の全部又は一部が除去される。
図10は、線材接合工程S2における第1の実施形態に係る超電導線の断面図である。図10(A)に示すように、線材接合工程S2において、まず、第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2は、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2a以外に位置する第2表面2bとが対向し、かつ第2の端部2aに位置する第2表面2bと第1の端部1a以外に位置する第1表面1bとが対向するように配置される。
図11は、線材接合工程S2における第1の実施形態の変形例に係る超電導線の断面図である。図11(A)に示すように、第1の補強部材4が設けられる場合には、さらに第1の補強部材4が第1裏面1c及び第2表面2b側に配置される。第2の補強部材5が設けられる場合には、さらに第2の補強部材5が第2裏面2c及び第1表面1b側に配置される。
この際、図11(A)に示すように、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部以外に位置する第2表面2bとの間、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとの間及び第1の端部以外に位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとの間には、接続部材3が供給される。第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとの間においては、接続部材3の間に、導電部材31が挿入されていてもよい。なお、接続部材3は、例えばペースト状、シート状等の形態で供給される。また、接合に先立ち、第1の超電導線材1の第1表面1b、第2の超電導線材2の第2表面2b、接続部材3の表面、導電部材31の表面には、フラックスが塗布されてもよい。
なお、第1の補強部材4、第2の補強部材5が設けられる場合、図11(A)に示すように、第1の補強部材4と第1裏面1c及び第2表面2bとの間並びに第2の補強部材5と第1表面1b及び第2裏面2cとの間にも接続部材3が供給される。この場合、接合に先立ち、第1の超電導線材1の第1裏面1c、第2の超電導線材2の第2裏面2c、第1の補強部材4の第2表面2bに対向している側の面、第2の補強部材5の第1表面1bに対向している側の面、接続部材3の表面にも、フラックスが塗布されてもよい。
その後、図10(B)に示すように、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との接合が行われる。より具体的には、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2が重なり合っている部分に、圧力Pが加えられる。圧力Pは、後述する熱H3の印加開始から冷却終了に至るまで、一定に保持されることが好ましい。その後、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とに熱H3が加えられる。熱H3により第1の内部接続部材13、第1の表面接続部材14、第2の内部接続部材23、第2の表面接続部材24は溶融しない一方、接続部材3は溶融する。熱H3を加える加熱時間は、10秒以上であることが好ましい。加熱時間の終了後、例えば冷却ファン等を用いて冷却が行われる。冷却は、安全上、50℃以下となるまで行われることが好ましい。これにより、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との接合が行われる。
第1の補強部材4、第2の補強部材5が設けられる場合、図11(B)に示すように、第1の補強部材4と第2表面2b側の第2の補強層22とが重なり合っている部分及び第2の補強部材5と第1表面1b側の第1の補強層12とが重なり合っている部分に、圧力Pが加えられる。圧力Pは、後述する熱H3の印加開始から冷却終了に至るまで、一定に保持されることが好ましい。その後、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とに熱H3が加えられる。熱H3により第1の内部接続部材13、第1の表面接続部材14、第2の内部接続部材23、第2の表面接続部材24は溶融しない一方、接続部材3は溶融する。熱H3を加える加熱時間は、10秒以上であることが好ましい。加熱時間の終了後、例えば冷却ファン等を用いて冷却が行われる。冷却は、安全上、50℃以下となるまで行われることが好ましい。これにより、接続部材3が溶融し、第1の補強部材4と第2表面2b側の第2の補強層22とが接合され、第2の補強部材5と第1表面1b側の第1の補強層12とが接合される。
以下に、第1の実施形態に係る超電導線の効果を、比較例と対比することにより説明する。
まず、比較例に係る超電導線の構造について説明する。図12は、第1の比較例に係る超電導線の断面図である。図12に示すように、第1の比較例に係る超電導線は、第1の超電導線材1と、第2の超電導線材2と、接続部材3とを有している。第1の比較例に係る超電導線の第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2の構造は、第1の実施形態に係る超電導線と同様である。
しかしながら、第1の比較例に係る超電導線においては、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが、第1の端部1aに位置する第1の超電導層11の第1表面1b側が第2の端部2aに位置する第2の超電導層21の第2表面2b側と対向するように、接続部材3により接合されている。第1の比較例に係る超電導線においては、第1の端部1aに位置する第1の超電導層11の第1表面1b側が第2の端部2aに位置する第2の超電導層21の第2表面2b側とが接合されている部分の端が、応力集中箇所となる。また、第1の比較例に係る超電導線においては、第1の補強層12と第2の補強層22とが長手方向において途中で接合されていない箇所がある(一旦補強層が途切れている)。
次に、第1の実施形態に係る超電導線及び第1の比較例に係る超電導線に対する曲げ試験結果及び引張試験結果について説明する。この曲げ試験及び引張試験に用いられた第1の実施形態に係る超電導線及び第1の比較例に係る超電導線の第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2は、幅が4.5mm、厚さが0.31mm、第1の内部接続部材13及び第2の内部接続部材23がPbフリーはんだ、接続部材3がPbSn共晶はんだ、第1の補強層12及び第2の補強層22がNi合金、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2の重なり合っている長さ(ラップ長)が20mmである。
曲げ試験及び引張試験に先立ち、第1の実施形態に係る超電導線及び第1の比較例に係る超電導線の臨界電流測定が行われる。図13は、臨界電流測定の模式図である。この臨界電流測定は、図13に示すように、液体窒素中で第1の超電導線材1と第2の超電導線材2が接合されている部分を中心として電圧端子間距離220mmで4端子法により電流電圧曲線を取得するとともに、取得された曲線からオームの法則で見られる抵抗成分を除くように計算させた曲線において、1μV/cmの電界基準での電流値を読み取ることにより行われる。
曲げ試験は、第1の実施形態に係る超電導線及び第1の比較例に係る超電導線に対する両曲げを行った後の状態で臨界電流測定を行い、両曲げを行った後の状態における臨界電流が、曲げ試験に先立って測定された臨界電流の95%を下回った際の曲げ半径(許容曲げ直径)を測定することにより行った。なお、両曲げは、室温において、第1の超電導線材1を所定の径を有する治具に沿うように曲げた後、第2の超電導線材2もその治具に沿うように曲げることにより行った。両曲げを行った後に臨界電流測定を行った結果、曲げ試験に先立って測定された臨界電流の95%を上回った場合には、再度より径の小さい治具を用いて両曲げ及び臨界電流測定を繰り返した。
第1の超電導線材1、第2の超電導線材2単独で上記の曲げ試験をおこなったところ、許容曲げ直径は40mmであった。第1の比較例に係る超電導線に対して上記の曲げ試験を行ったところ、第1の比較例に係る超電導線の許容曲げ直径は180mm(第1の超電導線材1、第2の超電導線材2単独の場合の4.5倍)であった。他方、第1の実施形態に係る超電導線に対して上記の曲げ試験を行ったところ、第1の実施形態に係る超電導線の許容曲げ直径は80mm(第1の超電導線材1、第2の超電導線材2単独の場合の2倍)であった。すなわち、第1の実施形態に係る超電導線は、第1の比較例に係る超電導線に対し、2.25倍優れた曲げ特性を示した。なお、第1の実施形態に係る超電導線において導電部材31を設けた場合の許容曲げ直径は、90mmであった。
引張試験は、液体窒素中で行われる。第1の実施形態に係る超電導線及び第1の比較例に係る超電導線に所定の引張張力を加えた状態で臨界電流測定を行い、引張張力を加えた状態における臨界電流が引張試験に先立って測定された臨界電流の95%を下回った際の引張張力を測定することにより行った。許容引張強度は、引張張力÷線材幅÷線材厚みにより算出される(第1の補強層12と第2の補強層22とが同一の材料である場合、線材幅、線材厚みには、第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2の線材幅、線材厚さの平均値が用いられる。第1の補強層12と第2の補強層とが異なる材料である場合、線材幅、線材厚みには、第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2のうち、引張強度の低い超電導線材の線材幅、線材厚みが用いられる。)。なお、引張張力を加えた状態で臨界電流測定を行った結果、引張試験に先立って測定された臨界電流の95%を上回った場合は、再度より高い引張張力を加えて臨界電流測定を繰り返した。
第1の超電導線材1、第2の超電導線材2単独で上記の引張試験をおこなったところ、許容引張応力は424MPaであった。第1の比較例に係る超電導線に対して上記の引張試験を行ったところ、第1の比較例に係る超電導線の許容引張強度は165MPa(第1の超電導線材1、第2の超電導線材2単独の場合の39%)であった。他方、第1の実施形態に係る超電導線に対して上記の引張試験を行ったところ、第1の実施形態に係る超電導線の許容引張強度は389MPa(第1の超電導線材1、第2の超電導線材2単独の場合の91%)であった。すなわち、第1の実施形態に係る超電導線は、第1の比較例に係る超電導線に対し、2.33倍優れた引張特性を示した。なお、第1の実施形態に係る超電導線において導電部材31を設けた場合の許容引張強度は、389MPaであった。
上記のとおり、第1の比較例に係る超電導線は、応力集中箇所を有しているとともに、補強層が長手方向において途中で途切れている。一方、第1の実施形第1の態に係る超電導線は、顕著な応力集中箇所を有しておらず、長手方向において第1の補強層12及び第2の補強層22が途切れることなく接合されている。そのため、上記の曲げ試験結果に示されるように、第1の実施形態に係る超電導線によると、曲げ変形、引張変形等に対する良好な機械的特性を得ることが可能となる。
なお、第1の実施形態に係る超電導線は、第1の端部1aに位置する第1表面1b側に第1の補強層12が設けられておらず(または、第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の補強層12よりも薄くなっており)、第2の端部2aに位置する第2表面2b側に第2の補強層22が設けられていない(または、第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の補強層22よりも薄くなっている)ため、第1の補強層12と第2の補強層22とが第1の超電導層11と第2の超電導層21との間に位置することに伴う接続抵抗の増加は抑制されている。この点を以下において説明する。
まず、第2の比較例に係る超電導線の構造について説明する。
図14は、第2の比較例に係る超電導線の断面図である。図14に示すように、第2の比較例に係る超電導線は、第1の超電導線材1と、第2の超電導線材2と、接続部材3とを有している。第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2は、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとが対向するように、接続部材3により接合されている。
第2の比較例に係る超電導線における第1の超電導線材1は、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12と、第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の補強層12が同一の厚さを有している点において、第1の実施形態に係る超電導線と異なっている。また、第2の比較例に係る超電導線における第2の超電導線材2は、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22と、第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の補強層22が同一の厚さを有している点において、第1の実施形態に係る超電導線と異なっている。
次に、第1の実施形態に係る超電導線及び第2の比較例に係る超電導線に対する接続抵抗測定試験について説明する。第1の実施形態に係る超電導線及び第2の比較例に係る超電導線の第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2は、幅が4.5mm、厚さが0.31mm、第1の内部接続部材13及び第2の内部接続部材23がPbフリーはんだ、接続部材3がPbSn共晶はんだ、第1の補強層12及び第2の補強層22がNi合金、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2の重なり合っている長さ(ラップ長)が20mmである。
なお、この接続抵抗測定試験は、液体窒素中で第1の超電導線材1と第2の超電導線材2が接合されている部分を中心として電圧端子間距離220mmで4端子法により電流電圧曲線を取得するとともに、取得された曲線からオームの法則で見られる抵抗成分の傾きを算出することにより行われた。
第2の比較例に係る超電導線に対して、上記の接続抵抗測定試験を行ったところ、第2の比較例に係る超電導線の接続抵抗は696nΩであった。他方、第1の実施形態に係る超電導線に対して上記の接続抵抗測定試験を行ったところ、第1の実施形態に係る超電導線の接続抵抗は109nΩであった。第1の実施形態に係る超電導線は、第1の比較例に係る超電導線に対し、6.39倍優れた接続抵抗を示した。なお、第1の実施形態に係る超電導線において導電部材31を設けた場合、接続抵抗は73nΩであった。
なお、参考として、第2の比較例に係る超電導線に対して、上記の曲げ試験及び引張試験を行ったところ、許容曲げ直径は150mm、許容引張強度は424MPaであった。
上記のとおり、第1の実施形態に係る超電導線においては、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12が設けられておらず(または、第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の補強層12よりも薄くなっており)、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22が設けられていない(または、第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の補強層22よりも薄くなっている)。他方、第2の比較例に係る超電導線においては、第1の端部1a及び第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の補強層12が均等な厚さを有しており、第2の端部2a及び第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の補強層22が均等な厚さを有している。
すなわち、第1の実施形態に係る超電導線おいては、第2の比較例に係る超電導線と比較して、第1の超電導層11と第2の超電導層21との間に配置されている相対的に電気抵抗値の高い第1の補強層12及び第2の補強層22の厚さが薄くなっている。そのため、第1の実施形態に係る超電導線においては、接続抵抗の増加は抑制されている。
第1の実施形態に係る超電導線において、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12が全て除去されており、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22が全て除去されている場合、第1の超電導層11と第2の超電導層21との間に配置されている相対的に電気抵抗値の高い第1の補強層12及び第2の補強層22の厚さがより薄くなっている。そのため、この場合には、接続抵抗値をさらに低減することが可能となる。
第1の実施形態に係る超電導線において、接続部材3中に、導電部材31を設けた場合、導電部材31の電気抵抗値が接続部材3よりも低いため、第1の超電導層11と第2の第2の超電導層21との接続抵抗をさらに低減することが可能となる。
第1の実施形態に係る超電導線が第1の補強部材4、第2の補強部材5を有している場合、第1の補強部材4、第2の補強部材5が接続部材3による第1の超電導線材1と第2の超電導線材2の接合を補強する。そのため、この場合には、曲げ変形、引張変形等に対するさらに良好な機械的特性を得ることが可能となる。
第1の実施形態に係る超電導線において、第1の超電導層11に対して第1の補強層12による圧縮歪みが生じており、第2の超電導層21に対して第2の補強層22による圧縮歪みが生じている場合には、曲げ変形、引張変形等が加わった際に第1の超電導層11及び第2の超電導層21に生じる引張応力が緩和される。そのため、この場合には、曲げ変形、引張変形等に対するさらに良好な機械的特性を得ることが可能となる。
第1の実施形態に係る超電導線において、第1の端部1aに位置する第1の超電導層11に対する圧縮歪みが、第1の端部1a以外に位置する第1の超電導層に対する圧縮歪みよりも小さく、第2の端部2aに位置する第2の超電導層21に対する圧縮歪みが、第2の端部2a以外に位置する第2の超電導層21に対する圧縮歪みよりも小さい場合には、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12及び第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22を除去する際の第1の端部1a及び第2の端部2aの反りが小さい。そのため、この場合には、第1の端部1a及び第2の端部2aの幅を広くすることができ、その結果、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との接続抵抗をさらに低下させることが可能となる。
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態に係る超電導線について説明する。なお、ここでは、第1の実施形態と異なる点について主に説明する。
以下に、第2の実施形態に係る超電導線の構造について説明する。図15は、第2の実施形態に係る超電導線の上面図である。図15に示すように、第2の実施形態に係る超電導線は、第1の実施形態に係る超電導線と同様、第1の超電導線材1と、第2の超電導線材2と、接続部材3(図16参照)とを有している。
図16は、第2の実施形態に係る超電導線における第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが接合されている部分での断面図である。図16(A)及び図16(B)に示すとおり、第1の超電導線材1の第1裏面1c側の第1の補強層12の形状及び第2の超電導線材2の第2裏面2c側の第2の補強層22の形状が、第1の実施形態に係る超電導線と異なっている。
具体的には、第1裏面1c側の第1の補強層12は、第1の端部1aから突出している第1の突出部12aを有している。第1の突出部12aは、接続部材3により第2表面2b側の第2の補強層22に接合されている。第2裏面2c側の第2の補強層22は、第2の端部2aから突出している第2の突出部22aを有している。第2の突出部22aは、接続部材3により第1表面1b側の第1の補強層12に接合されている。
第1の端部1aに位置する第1表面1bは、第2の端部2aに位置する第2表面2bと対向するように配置され、接続部材3により、第2の端部2aに位置する第2表面2bと接合されている。この点においても、第2の実施形態に係る超電導線は、第1の実施形態に係る超電導線と異なっている。
具体的には、図16(A)に示すように、第1の端部1aに位置する第1表面1b上の第1の内部接続部材13が、第2の端部2aに位置する第2表面2b上の第2の内部接続部材23に接合されている。なお、図15(B)に示すように、第1の端部1aに位置する第1の超電導層11の第1表面1b側に第1の補強層12が設けられ、第2の端部2aに位置する第2の超電導層の第2表面2b側に第2の補強層22が設けられている場合には、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12が、接続部材3により、第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22に接合されている。
以下に、第2の実施形態に係る超電導線の製造方法について説明する。
図17は、第2の実施形態に係る超電導線の製造方法の工程図である。第1の実施形態に係る超電導線の製造方法と同様に、第2の実施形態に係る超電導線の製造方法は、図17に示すように、線材加工工程S1と、線材接合工程S2とを有している。
しかしながら、第2の実施形態に係る超電導線の製造方法の線材接合工程S2は、第1の実施形態に係る超電導線の製造方法の線材接合工程S2と異なっている。
図18は、線材接合工程S2における第2の実施形態に係る超電導線の断面図である。図18(A)に示すように、線材接合工程S2においては、第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2は、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとが対向して配置される。その結果、第1の突出部12aが第2表面2bに対向し、第2の突出部22aが第1表面1bに対向するように配置される。
この際に、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとの間、第1の突出部12aと第2表面2bとの間及び第2の突出部22aと第1表面1bとの間に、接続部材3が供給される。なお、接合に先立ち、第1の超電導線材1の第1表面1b、第2の超電導線材2の第2表面2b、第1の突出部12aの第2表面2bと対向する側の面、第2の突出部22aの第1表面1bと対向する側の面、接続部材3の表面には、フラックスが塗布されてもよい。
その後、図18(B)に示すように、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との接合が行われる。より具体的には、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2が重なり合っている部分に、熱H3及び圧力Pが加えられる。これにより、接続部材3が溶融し、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との接合が行われる。
以下に、第2の実施形態に係る超電導線の効果について説明する。
第2の実施形態に係る超電導線においては、上記のとおり、第1の端部1aに位置する第1表面1bは、第2の端部2aに位置する第2表面2bと対向するように配置され、接続部材3により、第2の端部2aに位置する第2表面2bと接合されている。そのため、第2の実施形態に係る超電導線は、第1の比較例に係る超電導線と同様に、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとの接合部の端において、応力集中箇所を有している。
しかしながら、第2の実施形態に係る超電導線においては、第1裏面1c側の第1の補強層12が、第1の端部1aから突出し、第2表面2b側の第2の補強層22に接合されている。また、第2の実施形態に係る超電導線においては、第2裏面2c側の第2の補強層22が、第2の端部2aから突出し、第1表面1b側の第1の補強層12に接合されている。
そのため、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとの接合部が、第1裏面1c側の第1の補強層12、第2裏面2c側の第2の補強層22により補強されている。その結果、第2の実施形態に係る超電導線によると、曲げ変形、引張変形等に対する良好な機械的特性を得ることが可能となる。
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態に係る超電導線について説明する。なお、ここでは、第1の実施形態と異なる点について主に説明する。
以下に、第3の実施形態に係る超電導線の構造について説明する。図19は、第3の実施形態に係る超電導線の上面図である。図19に示すように、第3の実施形態に係る超電導線は、第1の実施形態に係る超電導線と同様、第1の超電導線材1と、第2の超電導線材2と、接続部材3(図20参照)とを有している。
図20は、第3の実施形態に係る超電導線における第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが接合されている部分での断面図である。図20(A)及び図20(B)に示すように、第3の実施形態に係る超電導線は、第3の補強部材7を有している点において、第1の実施形態に係る超電導線と異なっている。
図20(A)及び図20(B)に示すように、第3の実施形態に係る超電導線においては、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とは、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2a以外に位置する第2表面2bとが対向し、かつ第2の端部2aに位置する第2表面2bと第1の端部1a以外の第1表面1bとが対向するように配置されている。
具体的には、図20(A)に示すように、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12及び第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22が全て除去されている場合、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の内部接続部材13が、第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の表面接続部材24と対向し、かつ第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の内部接続部材23が、第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の表面接続部材14と対向している。
また、図20(B)に示すように、第1の端部1aに位置する第1表面1b側に第1の補強層12が設けられ、第2の端部2aに位置する第2表面2b側に第2の補強層22が設けられている場合、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の補強層12が、第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の表面接続部材24と対向し、かつ第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の補強層22が、第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の表面接続部材14と対向している。
第3の補強部材7は、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが重なり合っている部分の少なくとも一部において、第1表面1bと第2表面2bとの間に設けられている。第3の補強部材7は、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが重なり合っている部分の全長にわたって、第1表面1bと第2表面2bとの間に設けられていることが好ましい。
より具体的には、第3の補強部材7は、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2a以外に位置する第2表面2bとの間、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとの間、及び第1の端部1a以外に位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとの間に設けられている。
図21は、第3の実施形態の変形例に係る超電導線における第1の超電導部材と第2の超電導部材とが接合されている部分での断面図である。図21(A)及び図21(B)に示すように、第3の補強部材7は、複数の部材により構成されていてもよい。
第3の補強部材7は、第1の超電導線材1の第1表面1b及び第2の超電導線材2の第2表面2bに、接続部材3を用いて接合されている。
第3の補強部材7は、接続部材3よりも電気抵抗値が低いことが好ましい。第3の補強部材7は、接続部材3よりも強度が高いことが好ましい。第3の補強部材に用いられる材料は、例えばCu合金である。
以下に、第3の実施形態に係る超電導線の製造方法について説明する。
図22は、第3の実施形態に係る超電導線の製造方法の工程図である。図22に示すように、第3の実施形態に係る超電導線の製造方法は、線材加工工程S1と、線材接合工程S2とを有している。第3の実施形態に係る超電導線の製造方法における線材加工工程S1は、第1の実施形態と同様である。
図23は、線材接合工程S2における第3の実施形態に係る超電導線の断面図である。図23(A)に示すように、線材接合工程S2においては、第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2は、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2a以外に位置する第2表面2bとが対向し、かつ第2の端部2aに位置する第2表面2bと第1の端部1a以外に位置する第1表面1bとが対向するように配置される。
この際、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが重なり合っている部分の少なくとも一部において、第1表面1bと第2表面2bとの間に、第3の補強部材7が挿入される。また、第3の補強部材7と第1表面1bとの間及び第3の補強部材7と第2表面2bとの間には、接続部材3が供給される。なお、接合に先立ち、第1の超電導線材1の第1表面1b、第2の超電導線材2の第2表面2b、第3の補強部材7の表面、接続部材3の表面には、フラックスが塗布されてもよい。
その後、図23(B)に示すように、第1の超電導線材1と第3の補強部材7との接合及び第2の超電導線材2と第3の補強部材7との接合が行われる。より具体的には、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2が重なり合っている部分に、熱H3及び圧力Pが加えられる。これにより、接続部材3が溶融し、第1の超電導線材1と第3の補強部材7との接合及び第2の超電導線材2と第3の補強部材7との接合が行われる。
以下に、第3の実施形態に係る超電導線の効果について説明する。
上記のとおり、第3の実施形態に係る超電導線は、第3の補強部材7を有しており、第3の補強部材7は接続部材3よりも強度が高く、電気抵抗値が低い。そのため、第3の実施形態に係る超電導線は、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが接続部材3により直接接合される場合と比較し、より低い接続抵抗及びより高い曲げ変形、引張変形等に対する機械的強度を得ることが可能となる。
(第4の実施形態)
以下に、第4の実施形態に係る超電導線の超電導線について説明する。なお、以下においては、第1ないし第3の実施形態に係る超電導線と異なる点について主に説明する。第1ないし第3の実施形態に係る超電導線材と重複する部分については、同様の説明を繰り返さない。
まず、第4の実施形態に係る超電導線の構造について説明する。図24は、第4の実施形態に係る超電導線の上面図である。図24に示すように、第4の実施形態に係る超電導線は、第1の超電導線材1と、第2の超電導線材2と、接続部材3(図25参照)とを有している。第1の超電導線材1は、第1の端部1aを有していなくてもよい。第2の超電導線材2は、第2の端部2aを有していなくてもよい。すなわち、第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2においては、第1の補強層12及び第2の補強層22の全てが残存していてもよい。
第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とは、各々の端が重なり合うように接続部材3により接続されている。第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが重なり合っている部分は、第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2の長手方向において、長さL(ラップ長)を有している。長さLは、好ましくは、5mm以上1000mm以下である。
図25は、図24のXXV−XXVにおける断面図である。図25に示すように、第1の超電導線材1は、第1湾曲部1dを有している。第1湾曲部1dは、第1の超電導線材1の端に位置している。このことを別の観点からいえば、第1湾曲部1dは、第2の超電導線材2と重なり合っている部分に位置している。第2の超電導線材2は、第2湾曲部2dを有している。第2湾曲部2dは、第2の超電導線材2の端に位置している。このことを別の観点からいえば、第2湾曲部2dは、第1の超電導線材1と重なり合っている部分に位置している。
第1の超電導線材1は、第1湾曲部1dにおいて湾曲している。より具体的には、第1の超電導線材1は、第1湾曲部1dにおいて、第1表面1b側が縮むとともに、第1裏面1c側が伸びるように湾曲している。
第2の超電導線材2は、第2湾曲部2dにおいて湾曲している。より具体的には、第2の超電導線材2は、第2湾曲部2dにおいて、第2表面2b側が伸びるとともに、第2裏面2c側が縮むように湾曲している。
第1湾曲部1dに位置する第1表面1bは、接続部材3により、第2湾曲部2dに位置する第2表面2bと接合されている。これにより、第1の超電導線材1は、第2の超電導線材2に接合されている。この結果、第4の実施形態に係る超電導線材は、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが重なり合っている部分において湾曲している。
図26は、第4の実施形態に係る超電導線の断面構造の概略を示す模式図である。図26においては、第4の実施形態に係る超電導線の断面の概略を示すために、構造の詳細は省略してある。図26に示すように、第4の実施形態に係る超電導線材は、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが重なり合っている部分において、曲率半径R1を有している。曲率半径R1は、好ましくは30mm以上1000mm以下である。
上記のとおり、第1の超電導線材1は第1の補強層12を有しており、第2の超電導線材2は第2の補強層22を有している。第1の補強層12及び第2の補強層22には、好ましくは、ニッケル合金が用いられる。第1の補強層12及び第2の補強層22には、ステンレス鋼、銅合金等が用いられてもよい。但し、第1の補強層12及び第2の補強層22に用いられる材料は、これに限られない。第1の補強層12及び第2の補強層22に用いられる材料は、第1の超電導層11及び第2の超電導層21より剛性(ヤング率)が高い金属材料であればよい。
続いて、第4の実施形態に係る超電導線の製造方法について説明する。図27は、第4の実施形態に係る超電導線の製造方法を示す工程図である。図27に示すように、第4の実施形態に係る超電導線の製造方法は、線材準備工程S3と、線材接合工程S4とを有する。
線材準備工程S3においては、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3が準備される。上記のとおり、第1の超電導線材1は、第1表面1b及び第1裏面1cを有しており、第2の超電導線材2は、第2表面2b及び第2裏面2cを有している。
線材接合工程S4においては、接続部材3を用いて、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との接合が行われる。線材接合工程S4は、例えば、接合装置8を用いて行われる。
図28は、線材接合工程S4に用いられる接合装置8の構造を示す模式図である。図28に示すように、接合装置8は、押圧部81と、固定部82と、ヒータ83と、駆動部84と、制御部85と、測定部86とを有している。
押圧部81は、駆動部84により、上下方向(図28中の矢印方向)に駆動される。駆動部84は、例えばトルクモータ又はサーボモータにより構成されることが好ましい。駆動部84の動作は、制御部85により制御される。
押圧部81は、上面81aを有している。上面81aは、下に凸の湾曲形状を有している。上面81aは、下に凸の湾曲形状を有していてもよい。上面81aは、曲率半径R2を有している。曲率半径R2は、30mm以上1000mm以下であることが好ましい。
固定部82は、下面82aを有している。下面82aは、上面81aと同一方向に凸の湾曲形状を有している。すなわち、上面81aが下に凸の湾曲形状を有している場合、下面82aは下に凸の湾曲形状を有しており、上面81aが上に凸の湾曲形状を有している場合、下面82aは上に凸の湾曲形状を有している。下面82aは、上面81aと同一の曲率半径を有していることが好ましい。すなわち、下面82aは、曲率半径R2を有している。
固定部82は、第1の部分82bと、第2の部分82cとに分割されている。固定部82の内部(第1の部分82b及び第2の部分82cの内部)には、ヒータ83が設けられている。ヒータ83は、押圧部81の内部にも設けられていてもよい。ヒータ83は、例えば電熱線により構成されている。ヒータ83の出力は、制御部85により制御されている。
押圧部81及び固定部82は、第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2の熱膨張係数に近い材料で形成されていることが好ましい。押圧部81及び固定部82は、十分な機械的強度を有していることが好ましい。例えば、押圧部81及び固定部82は、ジュラルミン等のアルミニウム(Al)合金で形成されていることが好ましい。なお、押圧部81及び固定部82の少なくとも一方の内部には、温度測定部(図示せず)が配置されていてもよい。温度測定部は、例えば熱電対である。
押圧部81及び固定部82には、接続部材3との濡れ性が悪くなるような表面処理がされていることが好ましい。例えば、押圧部81及び固定部82がAl合金により形成されている場合、押圧部81及び固定部82の表面にアルマイト処理が施されていることが好ましい。これにより、溶融した接続部材3が、押圧部81及び固定部82に付着することを抑制することができる。また、これにより耐食性、耐摩耗性を向上させることができる。さらに、これにより、押圧部81及び固定部82の表面を保護することができる。
押圧部81及び固定部82は、取外し可能となっていることが好ましい。例えば、平坦な上面81aを有する押圧部81及び平坦な下面82aを有する固定部82と交換することにより、接合装置8は、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とを、重なり合っている部分において湾曲させずに接続する必要がある場合にも対応することができる。また、曲率半径R2と異なる曲率半径の上面81aを有する押圧部81及び曲率半径R2と異なる曲率半径の下面82aを有する固定部82と交換することにより、異なる曲率半径を有する第1湾曲部1d及び第2湾曲部2dを形成する場合に対応することができる。
測定部86は、押圧部81と固定部82との間に加えられている圧力Pを測定する。測定部86は、例えばロードセルにより構成されている。制御部85は、測定部86の測定結果に基づいて、駆動部84を制御することにより、押圧部81と固定部82との間に加わる圧力Pを調整する。
図27に示すように、線材接合工程S4は、挟持工程S41と、加熱押圧工程S42とを有している。
挟持工程S41においては、第1の超電導線材1の第1表面1bと第2の超電導線材2の第2表面2bとの間に、接続部材3が挿入される。また、挟持工程S41においては、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3が挟持される。挟持されている部分においては、第1の超電導線材1及び第2の超電導線材2の各々の端と、接続部材3とが重なり合っている。挟持されている部分においては、第1の超電導線材1は、第1表面1b側が縮み、かつ第1裏面1c側が伸びるように湾曲した状態となっている。挟持されている部分においては、第2の超電導線材2は、第2表面2b側が伸び、かつ第2裏面2c側が縮むように湾曲した状態となっている。
より具体的には、挟持工程S41は、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3を、上面81aと下面82aとの間に挟持することにより行われる。より詳細には、押圧部81の上面81a側に第1の超電導線材1の第1裏面1cが配置される。また、固定部82の下面82a側に、第2の超電導線材の第2裏面2cが配置される。
上記のとおり、押圧部81の上面81aは、下に凸の湾曲形状を有しており、固定部82の下面82aも下に凸の湾曲形状を有している。そのため、第1の超電導線材1は、挟持されている部分において、第1表面1b側が縮み、かつ第1裏面1c側が伸びるように湾曲した状態で挟持される。同様に、第2の超電導線材2は、挟持されている部分において、第2表面2b側が伸び、かつ第2裏面2c側が縮むように湾曲した状態で挟持される。
好ましくは、挟持工程S41は、第1工程S411と、第2工程S412と、第3工程S413とを含んでいる。第1工程S411の開始前には、固定部82は第1の超電導線材1及び第2の超電導線材を挟持していない。第1工程S411においては、第1の部分82bに位置する下面82aと上面81aとにより、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3が挟持される。なお、この際、第1の部分82bの位置は、完全には固定されていない。そのため、第1工程S411においては、第1の部分82bの自重により、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3の位置関係が暫定的に固定される。すなわち、第1工程S411が行われた後では、作業者が第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3から手を放しても、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3の位置関係は容易に変化しない。
第2工程S412は、第1工程S411の後に行われる。第2工程S412においては、第2の部分82cと押圧部81とにより、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3が挟持される。なお、この際、第2の部分82cの位置は固定されていない。
第3工程S413は、第2工程S412の後に行われる。第3工程S413においては、第1の部分82b及び第2の部分82cの位置が固定される。この第1の部分82b及び第2の部分82cの固定は、例えば、第1の部分82b及び第2の部分82cをねじ止めすることにより行われる。これにより、挟持工程S41が完了する。
加熱押圧工程S42においては、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3が押圧部81及び固定部82により挟持された状態で行われる。加熱押圧工程S42においては、挟持されている部分に位置する第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3に熱H3が加えられる。この熱H3は、ヒータ83により加えられる。これにより、接続部材3が溶融する。なお、ヒータ83による加熱温度は、接続部材3の融点以上であって、第1の内部接続部材13及び第2の内部接続部材23の融点以下であることが好ましい。
加熱押圧工程S42においては、上記の加熱が行われている間に、挟持されている部分に位置する第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3に圧力Pが加えられる。圧力Pは、駆動部84が押圧部81を上下方向に移動させて上面81aと下面82aとの間隔を変化させることにより加えられる。なお、圧力Pの印加は、熱H3の印加が開始された後に開始されてもよく、熱H3の印加が開始される前に開始されてもよい。
圧力Pは、一定となるように制御されることが好ましい。ここで、圧力Pが一定となるように制御されるとは、圧力Pの変化が所定の範囲内、すなわち予め決定された基準範囲内に維持されることをいう。所定の範囲は、±10パーセントであることが好ましい。所定の範囲は、±5パーセントであることがさらに好ましい。この制御においては、例えば、測定部86が、挟持されている部分に位置する第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3に加えられている圧力Pを測定する。次に、制御部85が測定部86の測定結果に基づいて駆動部84を制御する。以上の工程により、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが、接続部材3により接合される。
以下に、第4の実施形態に係る超電導線の効果について説明する。
図29は、第1湾曲部1dが設けられていない第1の超電導線材1と第2湾曲部2dが設けられていない第2の超電導線材2とを接合した超電導線の曲げ変形の態様を示す模式図である。なお、図29においては、第1の超電導線材1に局所的に大きな曲げが生じてしまう場合を示しているが、第2の超電導線材2に局所的に大きな曲げが生じてしまう場合もありえる。
接続部材3は、第1の超電導層11及び第2の超電導層21と比較して剛性が高い。そのため、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが接続部材3により接合されている箇所では、他の部分よりも剛性が高くなっている。そのため、第1湾曲部1d及び第2湾曲部2dが設けられていない場合には、図29(A)に示すように、局所的に大きな曲げが生じてしまうおそれがある。
このような局所的に大きな曲げが生じてしまうことを回避するためには、図29(B)に示すように、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが重なり合っている長さ(ラップ長)を短くする必要がある。しかしながら、ラップ長を短くすることにより、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との接続抵抗が大きくなってしまう。
他方、第4の実施形態に係る超電導線においては、第1の超電導線材1に第1湾曲部1dが設けられており、第2の超電導線材2に第2湾曲部2dが設けられている。そのため、ラップ長が長くなっても、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが接続部材3により接合されている箇所に局所的に大きな曲げが生じにくい。
したがって、第4の実施形態に係る超電導線によると、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との間の接続抵抗を低減しつつ、曲げ特性を改善することが可能となる。
第1の補強層12及び第2の補強層22に、第1の超電導層11及び第2の超電導層21よりも強度や剛性が高い金属材料(例えばニッケル合金、ステンレス鋼、銅合金)を用いた場合、超電導線の引張強度を改善することができる。他方で、第1の補強層12及び第2の補強層22に、このような金属材料を用いた場合、上記のような局所的な曲げがさらに生じやすくなる。上記のとおり、第1湾曲部1d及び第2湾曲部2dを設けた場合、局所的な曲げの発生を抑制することができる。そのため、第4の実施形態に係る超電導線において、第1の補強層12及び第2の補強層22に第1の超電導層11及び第2の超電導層21よりも強度や剛性が高い金属材料を用いた場合、接続抵抗を低減しつつ、引張特性と曲げ特性の双方を改善することができる。
第4の実施形態に係る超電導線材の製造方法によると、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との間の接続抵抗を低減しつつ、曲げ特性が改善された超電導線を得ることができる。
第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが接合されている箇所に過大な圧力Pが加わると、第1の超電導層11及び第2の超電導層21の内部構造が破壊されてしまうおそれがある。その結果、超電導線の超電導特性が劣化するおそれがある。また、このような過大な圧力Pが加わると、接続部材3が第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との間から押し出されてしまうおそれがある。その結果、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との間の良好な接合特性を得ることが困難となる。
第4の実施形態に係る超電導線の製造方法において、押圧部81及び固定部82がジュラルミン等のアルミニウム(Al)合金で形成されている場合、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが接合される部分に、過大な圧力Pが加わることを抑制することができる。そのため、この場合には、超電導線の超電導特性の劣化を抑制することができるとともに、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との間の接合特性を改善することができる。
第4の実施形態に係る超電導線の製造方法において、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3に加えられる圧力Pの変化が、所定の範囲となるように制御されている場合、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが接合される部分に、過大な圧力Pが加わることが抑制される。そのため、この場合には、超電導線の超電導特性の劣化を抑制することができるとともに、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との間の接合特性を改善することができる。
(第5の実施形態)
以下に、第5の実施形態に係る超電導線について説明する。なお、以下においては、第4の実施形態に係る超電導線と異なる点について主に説明し、同様の説明については繰り返さない。
図30は、第5の実施形態に係る超電導線の上面図である。図31は、図30のXXXI−XXXIにおける断面図である。図30及び31に示すように、第5の実施形態に係る超電導線は、第1の超電導線材1が第1の端部1aを有し、第2の超電導線材2が第2の端部2aを有している点を除いて、第4の実施形態に係る超電導線と同様である。
図31に示されるように、第5の実施形態に係る超電導線においては、第1の端部1aに位置する第1表面1bが第2の端部2a以外に位置する第2表面2bに接合されており、かつ第2の端部2aに位置する第2表面2bが第1の端部1a以外に位置する第1表面1bに接合されていることが好ましい。なお、図31においては、第1の端部1aに位置する第1表面1bは、第1の内部接続部材13により構成されており、第2の端部2aに位置する第2表面2bは、第2の内部接続部材23により構成されている。そのため、図31においては、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の内部接続部材13が第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の表面接続部材24に接合されており、かつ第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の内部接続部材23が第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の表面接続部材14に接合されている。これにより、第1の端部1aに位置する第1表面1bが第2の端部2a以外に位置する第2表面2bに接合されており、かつ第2の端部2aに位置する第2表面2bが第1の端部1a以外に位置する第1表面1bに接合されている。
但し、第5の実施形態に係る超電導線においては、第1の端部1aに位置する第1表面1bが、第2の端部2aに位置する第2表面2bに接合されていてもよい。
第1の端部1aの幅は、第1湾曲部1dの幅よりも狭く、第2の端部2aの幅は、第2湾曲部2dの幅よりも狭い。すなわち、第1の端部1aは、第1湾曲部1dに含まれており、第2の端部2aは、第2湾曲部2dに含まれている。
上記のとおり、第1の端部1aにおいては、第1表面1b側に設けられている第1の補強層12の少なくとも一部が、除去されていればよい。第1の端部1aにおいては、第1表面1b側に設けられている第1の補強層12の全てが除去されていることが好ましい。
同様に、第2の端部2aにおいては、第2表面2b側に設けられている第2の補強層22の少なくとも一部が除去されていればよい。第2の端部2aにおいては、第2表面2b側に設けられている第2の補強層22の全てが除去されていることが好ましい。
第1の補強層12は第1の超電導層11に対して圧縮歪みを生じさせており、第2の補強層22は第2の超電導層21に対して圧縮歪みを生じさせていることが好ましい。なお、圧縮歪みの測定方法は、上記のとおりである。
第5の実施形態に係る超電導線においては、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとの間に、導電部材31が配置されていてもよい。
第5の実施形態に係る超電導線の製造方法は、第4の実施形態に係る超電導線の製造方法と同様である。なお、第1の端部1aを有する第1の超電導線材1及び第2の端部2aを有する第2の超電導線材2は、上記の線材加工工程S1にしたがって準備される。
以下に、第5の実施形態に係る超電導線の効果について説明する。
第5の実施形態に係る超電導線においては、第1の超電導線材1に第1湾曲部1dが設けられているとともに、第2の超電導線材2に第2湾曲部2dが設けられている。そのため、ラップ長を長くしても、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2とが接続部材3により接合されている箇所に局所的に大きな曲げが生じにくい。したがって、第5の実施形態に係る超電導線によると、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との間の接続抵抗を低減しつつ、曲げ特性を改善することができる。
第5の実施形態に係る超電導線材においては、第1の端部1a及び第2の端部2aにおいて、第1表面1b側に設けられている第1の補強層12及び第2表面2b側に設けられている第2の補強層22の少なくとも一部が除去されているため、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との接続抵抗をさらに低減することができる。
第5の実施形態に係る超電導線材において、第1の端部1aに位置する第1表面1bが第2の端部2a以外に位置する第2表面2bに接合されており、かつ第2の端部2aに位置する第2表面2bが第1の端部1a以外に位置する第1表面1bに接合されている場合(より具体的には、第1の端部1aに位置する第1表面1b側の第1の内部接続部材13が第2の端部2a以外に位置する第2表面2b側の第2の表面接続部材24に接合されており、かつ第2の端部2aに位置する第2表面2b側の第2の内部接続部材23が第1の端部1a以外に位置する第1表面1b側の第1の表面接続部材14に接合されている場合)は、顕著な応力集中箇所を有していない。また、この場合には、長手方向において第1の補強層12及び第2の補強層22が途切れることなく接合されている。そのため、第5の実施形態に係る超電導線によると、曲げ変形、引張変形等に対するさらに良好な機械的特性を得ることが可能となる。
第5の実施形態に係る超電導線においては、第1の端部1aに位置する第1表面1bと第2の端部2aに位置する第2表面2bとの間に、導電部材31が配置されている場合、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との間の接続抵抗をさらに低減することが可能となる。
図32は、第1の端部1aにおいて第1表面1b側に設けられている第1の補強層12を全て除去した場合の第1の超電導線材1の形状を示す模式図である。図32に示すように、第1の補強層12が第1の超電導層11に対して圧縮歪みを生じさせている場合、第1の端部1aにおいて第1表面1b側の第1の補強層12が全て除去されることにより、第1表面1b側の第1の補強層12が第1の超電導層11の第1表面1b側に対して生じさせていた圧縮歪みが解放される。その結果、第1の超電導線材1は、第1の端部1aにおいて湾曲する。より具体的には、第1の超電導線材1は、第1表面1bが伸び、第1裏面1c側が縮むように第1の端部1aが湾曲する。
他方、上記のとおり、第1湾曲部1dは、第1表面1bが縮み、第1裏面1c側が伸びるように湾曲している。すなわち、第1湾曲部1dの湾曲方向と、第1の端部1aの湾曲方向とが逆方向となる。
したがって、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3を接合装置8に設置するためには、作業者は、押圧部81上において、第1の端部1aを逆方向に湾曲させるように、これらを手で押さておく必要がある。しかしながら、作業者が手を放すと、第1の超電導線材1は、その弾性に起因して、元の形状へ戻ろうとする。そのため、作業者が挟持工程S41を行うために手を放してしまうと、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3の位置関係がずれてしまう。第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3の位置関係がずれてしまうことにより、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2と間の接合特性に、ばらつきや劣化が生じるおそれがある。
上記のとおり、第5の実施形態に係る超電導線の製造方法において、固定部82が第1の部分82bと第2の部分82cとを有し、挟持工程S41が第1工程S411と第2工程S412と第3工程S413とを含んでいる場合には、第1工程S411により第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3の位置関係が暫定的に固定される。そのため、作業者が挟持工程S41を行うために第2の超電導線材2から手を放したとしても、第1の超電導線材1、第2の超電導線材2及び接続部材3の位置関係がずれにくい。
したがって、第5の実施形態に係る超電導線の製造方法において、固定部82が第1の部分82bと第2の部分82cとを有し、挟持工程S41が第1工程S411と第2工程S412と第3工程S413とを含んでいる場合、作業性を改善し、第1の超電導線材1と第2の超電導線材2との間の接合特性にばらつき、劣化が生じることを抑制することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。