以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
<研磨用組成物>
(砥粒)
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒としてのシリカ粒子(シリカ粒子Sともいう。特に断りがない限り以下同じ。)を含む。ここに開示される技術による端部形状改善効果は、シリカ砥粒を含む研磨用組成物を用いる構成において好適に実現される。シリカ粒子(後述のシリカ粒子S1,S2,S3のいずれも包含する。特に断りがない限り以下同じ。)は、シリカを主成分とする各種のシリカ粒子であり得る。ここでシリカを主成分とするシリカ粒子とは、該粒子の90重量%以上、例えば95重量%以上、典型的には98重量%以上がシリカである粒子をいう。使用し得るシリカ粒子の例としては、特に限定されず、コロイダルシリカ、凝結粒シリカ、沈降シリカ(沈殿シリカともいう。)、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ、フュームドシリカ、乾燥シリカ、爆発法シリカ等が挙げられる。さらに、上記シリカ粒子を原材料として得られたシリカ粒子を用いることもできる。そのようなシリカ粒子の例には、上記原材料のシリカ粒子(以下「原料シリカ」ともいう。)に、加温、乾燥、焼成等の熱処理、オートクレーブ処理等の加圧処理、解砕や粉砕等の機械的処理、表面改質等から選択される1または2以上の処理を適用して得られたシリカ粒子が含まれ得る。表面改質としては、例えば、官能基の導入、金属修飾等の化学的修飾が挙げられる。ここに開示される技術における砥粒は、このようなシリカ粒子の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むものであり得る。
シリカ粒子の好適例として、コロイダルシリカが挙げられる。なかでも、ケイ酸ソーダ法シリカやアルコキシド法シリカのように、水相での粒子成長を経て合成されたコロイダルシリカの使用が好ましい。この種のコロイダルシリカを含むシリカ砥粒によると、良好な面品質が好適に達成され得る。ここに開示されるシリカ砥粒がコロイダルシリカを含む場合、該シリカ砥粒に含まれるコロイダルシリカは、1種であってもよく、製造条件および/または物性の異なる2種以上であってもよい。また、上記シリカ砥粒は、1種または2種以上のコロイダルシリカからなる構成であってもよく、コロイダルシリカと、他のシリカ粒子すなわちコロイダルシリカ以外のシリカ粒子とを組み合わせて含む構成であってもよい。いくつかの態様では、研磨用組成物に含まれる砥粒が、コロイダルシリカを単独で含む。コロイダルシリカを単独で用いることにより、より良好な面品質が実現され得る。
コロイダルシリカの粒子形状は特に限定されず、例えば球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形の具体例としては、ピーナッツ形状、繭形状、突起付き形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。ピーナッツ形状は、例えば落花生の殻の形状であり得る。突起付き形状は、例えば金平糖形状であり得る。
シリカ粒子の他の例として、例えば、原料シリカに対して熱処理を施して得られたシリカ粒子(以下「熱処理シリカ」ともいう。)、具体的には加温されたシリカ粒子、乾燥されたシリカ粒子、焼成されたシリカ粒子等が挙げられる。ここで、加温されたシリカ粒子とは、典型的には、60℃以上110℃未満の環境下に一定時間以上、例えば15分以上、典型的には30分以上保持する処理を経て得られたシリカ粒子をいう。また、乾燥されたシリカ粒子とは、典型的には、110℃以上500℃未満、好ましくは300℃以上500℃未満の環境下に一定時間以上、例えば15分以上、典型的には30分以上保持する処理を経て得られたシリカ粒子をいう。そして、焼成されたシリカ粒子(以下「焼成シリカ」ともいう。)とは、典型的には500℃以上、好ましくは700℃以上、さらに好ましくは900℃以上の環境下に一定時間以上、例えば15分以上、典型的には30分以上保持する処理を経て得られたシリカ粒子をいう。上述したいずれかの原料シリカ、すなわち、沈降シリカ、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ、フュームドシリカ、乾燥シリカ、爆発法シリカ等を熱処理する過程を経て得られたシリカ粒子は、ここでいう熱処理シリカの概念に包含される典型例である。シリカ砥粒が熱処理シリカを含む場合、該シリカ砥粒に含まれる熱処理シリカは、1種であってもよく、製造条件および/または物性の異なる2種以上であってもよい。また、上記シリカ粒子は、1種または2種以上の熱処理シリカからなる構成であってもよく、熱処理シリカと、他のシリカ粒子すなわち熱処理されていないシリカ粒子とを組み合わせて含む構成であってもよい。
ここに開示される技術は、研磨用組成物に含まれる砥粒が、熱処理シリカを単独で含むか、熱処理シリカと他のシリカ粒子とを組み合わせて含む態様でも実施することができる。いくつかの好ましい態様では、研磨用組成物に含まれるシリカ粒子は、コロイダルシリカと熱処理シリカとを組み合わせて含む。コロイダルシリカに加えて、熱処理シリカ粒子をさらに含むことによって、高い面品質を実現し、高い加工性を好ましく実現することができる。
シリカ粒子がコロイダルシリカと熱処理シリカとを含む態様において、その含有割合は特に限定されない。加工性と面品質との両立の観点から、コロイダルシリカ100重量部に対する熱処理シリカの割合は、凡そ20重量部以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ15重量部以下、より好ましくは凡そ10重量部以下であり、凡そ7重量部以下(例えば凡そ5重量部以下)であってもよい。また、熱処理シリカ使用による効果を好ましく得る観点から、コロイダルシリカ100重量部に対する熱処理シリカの割合は、凡そ0.1重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ1重量部以上、より好ましくは凡そ2重量部以上(例えば凡そ5重量部以上)である。
シリカ粒子の平均一次粒子径は特に限定されず、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上、特に好ましくは35nm以上である。平均一次粒子径の増大によって、より高い加工性が実現され得る。また、より面品質の高い表面を得るという観点から、上記平均一次粒子径は、好ましくは凡そ300nm以下、より好ましくは凡そ200nm以下であり、凡そ150nm以下(例えば凡そ100nm以下)であってもよい。
なお、ここに開示される技術において、砥粒(典型的にはシリカ粒子)の平均一次粒子径は、BET法に基づいて求められる平均粒子径をいう。例えば、砥粒がシリカ砥粒(すなわちシリカ粒子からなる砥粒)の場合、シリカ砥粒の平均一次粒子径は、BET法により測定される比表面積S(m2/g)から、D1(nm)=(6000/2.2)/Sの式により算出され得る。この式における2.2はシリカの比重の値であり、シリカとしての粒子径となる。比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
いくつかの態様において、シリカ粒子は、SEM画像解析に基づく体積平均粒子径が凡そ50nm以上であり得る。シリカ粒子の体積平均粒子径は、加工性等の観点から、好ましくは凡そ80nm以上、より好ましくは凡そ100nm以上、さらに好ましくは凡そ110nm以上、特に好ましくは凡そ140nm以上である。上記体積平均粒子径は、例えば凡そ160nm以上であってもよく、さらには凡そ180nm以上であってもよい。また、シリカ粒子の体積平均粒子径は、面品質の高い表面を得る観点から、凡そ400nm以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ300nm以下、より好ましくは凡そ250nm以下、さらに好ましくは凡そ200nm以下、特に好ましくは凡そ180nm以下である。上記体積平均粒子径は、例えば凡そ130nm以下であってもよい。
本明細書におけるSEM画像解析に基づく体積平均粒子径は、具体的には次の方法で求められる。測定対象の粒子(1種類の砥粒粒子であってもよく、2種類以上の砥粒粒子の混合物であってもよい。)に含まれる1000個以上の粒子を、1視野内に50個以上の粒子を含むSEM画像で観察する。観察倍率は10000倍〜50000倍とする。各粒子画像の投影面積と等しい面積を有する理想円(真円)の半径rから4πr3/3により得られる値を各粒子の体積として算出する。ここで、上記体積は、一次粒子であるか二次粒子であるかを問わず、研磨用組成物中において独立して分散している粒子を1個の粒子と数えて算出するものとする。上記所定個数の粒子の体積から体積基準の累積分布曲線を導出し、その累積頻度50%粒子径(D50)を体積平均粒子径(D50)として採用する。SEM画像解析に基づく体積平均粒子径(D50)は、一般的な画像解析ソフトウエアを用いて求めることができる。
特に限定するものではないが、シリカ粒子の平均アスペクト比は、例えば1.0以上であり得る。加工性等の観点から、いくつかの態様において、平均アスペクト比は、例えば1.02以上であってよく、1.05以上でもよく、1.10以上でもよく、1.15以上でもよい。また、面品質を効率よく高めやすくする観点から、いくつかの態様において、平均アスペクト比は2.50以下であることが適当であり、2.0以下でもよく、1.70以下でもよい。ここに開示される技術は、シリカ粒子の平均アスペクト比が1.50以下、さらには1.30以下である態様でも好適に実施され得る。ここで、シリカ粒子の平均アスペクト比とは、該砥粒を構成する個々の粒子の長径/短径比の平均値、すなわち個数平均アスペクト比をいう。以下、特記しない場合、本明細書において平均アスペクト比とは、上記個数平均アスペクト比を意味するものとする。
本明細書において、シリカ粒子の平均アスペクト比は次の方法で測定することができる。すなわち、SEMを用いて、測定対象の砥粒に含まれる所定個数のシリカ粒子を、1視野内に50個以上の粒子を含むSEM画像で観察する。観察倍率は25000倍〜50000倍で観察を行う。測定対象のシリカ粒子は、1種類のシリカ粒子でもよく、2種類以上のシリカ粒子の混合物でもよい。上記SEM画像中のシリカ粒子について、各々の粒子画像に外接する最小の長方形を描く。その長方形の長辺の長さを長径の値とし、短辺の長さを短径の値として、各粒子について長径の値を短径の値で除した値をアスペクト比として算出する。すなわち、各粒子のアスペクト比は、該粒子に外接する最小の長方形の長辺/短辺の比として求められる。上記所定個数の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、個数平均アスペクト比を求めることができる。上記個数アスペクト比は、一般的な画像解析ソフトウエアを用いて求めることができる。
なお、上記所定個数、すなわち粒子毎のアスペクト比を算出する粒子の個数は、測定精度や再現性を高める観点から、1000個以上とすることが適当であり、1500個以上とすることが好ましい。上記所定個数の上限は特に制限されない。測定効率の観点から、上記所定個数は、例えば5000個以下であってよく、2500個以下でもよい。
いくつかの好ましい態様では、シリカ粒子として、SEM画像解析に基づく平均アスペクト比が1.10以上であるシリカ粒子S1を含む。相対的に球形度が低いシリカ粒子S1を用いることによって、高い加工性が得られやすい。シリカ粒子S1の平均アスペクト比は、加工性の観点から、好ましくは1.12以上、より好ましくは1.15以上、さらに好ましくは1.17以上(例えば1.18以上)である。上記平均アスペクト比は凡そ2.5以下であることが適当であり、面品質の観点から、好ましくは凡そ2.0以下、より好ましくは凡そ1.5以下、さらに好ましくは凡そ1.3以下(例えば1.25以下)である。シリカ粒子S1の好適例としては、コロイダルシリカが挙げられる。シリカ粒子S1に該当するコロイダルシリカは非球状コロイダルシリカともいう。
いくつかの態様において、シリカ粒子S1は、SEM画像解析に基づく体積平均粒子径が200nm未満であり得る。相対的に球形度が低く、かつ粒子径が比較的小さいシリカ粒子S1を用いることによって、高い加工性と高い面品質が両立して得られやすい。シリカ粒子S1の体積平均粒子径は、面品質の観点から、好ましくは180nm未満、より好ましくは160nm未満(例えば凡そ150nm以下)である。また、上記体積平均粒子径は、凡そ50nm以上であることが適当であり、加工性の観点から、好ましくは凡そ90nm以上、より好ましくは凡そ120nm以上(例えば凡そ130nm以上)である。
シリカ粒子(砥粒全体であり得る。)全体に占めるシリカ粒子S1の割合は特に限定されない。加工性の観点から、シリカ粒子全体に占めるシリカ粒子S1の割合は、凡そ10重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ20重量%以上、より好ましくは凡そ30重量%以上、例えば凡そ40重量%以上であってもよく、凡そ50重量%以上であってもよい。また、加工性と面品質との両立を考慮すると、シリカ粒子S1は他のシリカ粒子(例えば後述のシリカ粒子S2)と併用することが好ましい。そのような観点から、シリカ粒子(砥粒全体であり得る。)全体に占めるシリカ粒子S1の割合は、凡そ95重量%以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ85重量%以下、より好ましくは凡そ70重量%以下、さらに好ましくは凡そ65重量%以下である。
いくつかの好ましい態様では、シリカ粒子として、SEM画像解析に基づく平均アスペクト比が1.10未満であるシリカ粒子S2を含む。相対的に球形度が高いシリカ粒子S2を用いることによって、高い面品質が好ましく実現される。また、球形度の高いシリカ粒子を含む態様において、ここに開示される技術による端部形状改善効果は好ましく発揮される。シリカ粒子S2の平均アスペクト比は、面品質の観点から、好ましくは凡そ1.08以下、より好ましくは凡そ1.06以下(例えば1.05未満)である。上記平均アスペクト比は1.0以上であり、加工性等の観点から、好ましくは1.02以上、より好ましくは1.03以上である。シリカ粒子S2の好適例としては、コロイダルシリカが挙げられる。シリカ粒子S2に該当するコロイダルシリカは球状コロイダルシリカともいう。
いくつかの態様において、シリカ粒子S2は、SEM画像解析に基づく体積平均粒子径が200nm未満であり得る。相対的に球形度が高く、かつ粒子径が比較的小さいシリカ粒子S2を用いることによって、高い面品質が好ましく実現される。また、上記シリカ粒子S2を含む態様において、ここに開示される技術による端部形状改善効果は好ましく発揮される。シリカ粒子S2の体積平均粒子径は、面品質の観点から、好ましくは150nm未満、より好ましくは120nm未満であり、100nm未満(例えば凡そ95nm以下)であってもよい。また、上記体積平均粒子径は、凡そ30nm以上であることが適当であり、加工性の観点から、好ましくは凡そ40nm以上、より好ましくは凡そ50nm以上(例えば凡そ60nm以上)である。
シリカ粒子(砥粒全体であり得る。)全体に占めるシリカ粒子S2の割合は特に限定されない。面品質の観点から、シリカ粒子全体に占めるシリカ粒子S2の割合は、凡そ50重量%以上であってもよく、例えば75重量%以上であってもよく、凡そ90重量%以上(例えば凡そ99重量%以上)であってもよく、典型的には凡そ100重量%であり得る。上記シリカ粒子S2の割合は、例えば凡そ90重量%以下であってもよい。他のシリカ粒子と併用する場合は、併用の効果(例えば加工性向上)をよりよく発揮する観点から、上記シリカ粒子S2の割合を凡そ60重量%以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ50重量%以下(例えば45重量%以下)である。上記シリカ粒子S2の割合の下限は特に限定されず、例えば凡そ5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ10重量%以上、より好ましくは凡そ15重量%以上であり、例えば25重量%以上(典型的には凡そ30重量%以上)であってもよい。
特に好ましい態様において、シリカ粒子S1とシリカ粒子S2とが併用される。シリカ粒子S1とシリカ粒子S2とを併せて用いることにより、高い面品質と加工性とを両立しやすくなる。シリカ粒子S1とS2との含有比率は特に限定されず、例えば、シリカ粒子S2に対するシリカ粒子S1の含有比(S1/S2)は凡そ1/99以上とすることが適当であり、好ましくは10/90以上、より好ましくは30/70以上、さらに好ましくは40/60以上、特に好ましくは50/50以上であり、例えば60/40以上であってもよい。上記含有比(S1/S2)は、例えば99/1以下であることが適当であり、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、さらに好ましくは70/30以下(例えば65/35以下)である。
また、いくつかの好ましい態様では、シリカ粒子として、SEM画像解析に基づく平均アスペクト比が1.10以上であり、かつSEM画像解析による体積平均粒子径が200nm以上であるシリカ粒子S3をさらに含む。相対的に球形度が低く、かつ粒子径が比較的大きいシリカ粒子S3を含ませることで、加工性は向上する。シリカ粒子S3の好適例としては、熱処理シリカ(典型的には焼成シリカ)が挙げられる。
シリカ粒子S3の平均アスペクト比は、加工性の観点から、好ましくは1.20以上、より好ましくは1.25以上、さらに好ましくは1.30以上である。上記平均アスペクト比は凡そ2.5以下であることが適当であり、面品質等の観点から、好ましくは凡そ2.0以下、より好ましくは凡そ1.5以下(例えば1.4以下)である。
シリカ粒子S3の体積平均粒子径は、加工性等の観点から、好ましくは凡そ240nm以上、より好ましくは凡そ280nm以上であり、凡そ300nm以上であってもよい。また、シリカ粒子S3の体積平均粒子径は、面品質等の観点から、凡そ1000nm以下であることが適当であり、好ましくは凡そ700nm以下、より好ましくは凡そ600nm以下(例えば凡そ500nm以下)である。
加工性と面品質との両立の観点から、シリカ粒子S3は、他のシリカ粒子(例えばシリカ粒子S1やS2)と併用することが好ましい。特に好ましい態様において、シリカ粒子S3は、シリカ粒子S1およびシリカ粒子S2と併用される。シリカ粒子S3をシリカ粒子S1およびシリカ粒子S2と併せて用いることにより、加工性と面品質とが高レベルで両立され得る。シリカ粒子(砥粒全体であり得る。)全体に占めるシリカ粒子S3の割合は、凡そ20重量%以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ15重量%以下、より好ましくは凡そ10重量%以下であり、凡そ7重量%以下であってもよい。また、シリカ粒子S3使用による効果を好ましく得る観点から、シリカ粒子(砥粒全体であり得る。)全体に占めるシリカ粒子S3の割合は、凡そ0.1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ1重量%以上、より好ましくは凡そ2重量%以上(例えば凡そ5重量%以上)である。
ここに開示される研磨用組成物は、上記シリカ粒子以外の粒子を含有することができる。シリカ粒子以外の粒子としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれも利用可能である。無機粒子の具体例としては、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。上記アルミナ粒子としては、α−アルミナ、α−アルミナ以外の中間アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。中間アルミナとは、α−アルミナ以外のアルミナ粒子の総称であり、具体例としてはγ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、η−アルミナ、κ−アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。これらシリカ粒子以外の粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される研磨用組成物において、該研磨用組成物に含まれる固形分に占めるシリカ粒子の含有量は特に限定されない。上記シリカ粒子の含有量は、ここに開示される技術による効果をよりよく発揮する観点から、上記固形分全体の40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、さらにより好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、例えば99重量%以上である。なお、本明細書において研磨用組成物に含まれる固形分とは、結合水が除去されない程度の温度、例えば60℃で研磨用組成物から水分を蒸発させた後の残留分すなわち不揮発分をいう。
ここに開示される研磨用組成物は、アルミナ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。アルミナ粒子としては、例えばα−アルミナ粒子が挙げられる。このような研磨用組成物によると、アルミナ粒子の使用に起因する品質低下が防止される。ここでいう品質低下としては、例えば、スクラッチや窪みの発生、アルミナの残留、砥粒の突き刺さり欠陥等が挙げられる。なお、本明細書においてアルミナ粒子を実質的に含まないとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうちアルミナ粒子の割合が1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、典型的には0.1重量%以下であることをいう。アルミナ粒子の割合が0重量%である研磨用組成物、すなわちアルミナ粒子を含まない研磨用組成物が特に好ましい。また、ここに開示される研磨用組成物は、α−アルミナ粒子を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、シリカ粒子以外の粒子、すなわち非シリカ粒子を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。ここで、非シリカ粒子を実質的に含まないとは、研磨用組成物に含まれる固形分全量のうち非シリカ粒子の割合が1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、典型的には0.1重量%以下であることをいう。このような態様において、ここに開示される技術の適用効果が好適に発揮され得る。
研磨用組成物における砥粒(典型的にはシリカ粒子)の含有量は特に制限されないが、典型的には0.1重量%以上であり、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましく、5重量%以上であることが特に好ましい。上記含有量は、複数種類の砥粒を含む場合には、それらの合計含有量である。砥粒の含有量の増大によって、より高い加工性が得られる傾向がある。研磨後の基板の表面平滑性や研磨の安定性の観点から、上記含有量は、30重量%以下が適当であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
(水)
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、上述のような砥粒の他に、該砥粒を分散させる水を含有する。水としては、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。イオン交換水は、典型的には脱イオン水であり得る。
ここに開示される研磨用組成物は、例えば、その固形分含量が0.5重量%〜30.0重量%である形態で好ましく実施され得る。上記固形分含量が1.0重量%〜20.0重量%である形態がより好ましい。研磨用組成物は、典型的にはスラリー状の組成物であり得る。
(リン系極圧剤)
ここに開示される研磨用組成物はリン系極圧剤を含むことを特徴とする。シリカ粒子含有研磨用組成物にリン系極圧剤を用いることによって、端部形状改善と研磨性能とを両立することができる。その理由としては、例えば以下のように考えられる。磁気ディスク用基板は、通常、研磨パッドを研磨対象基板に押し当て両者を相対移動させて研磨されるため、基板の端部には、加工荷重だけでなく、研磨パッドの沈み込みの分だけ側面からの力が加わり、より大きな負荷がかかる。これがロールオフの原因となる。リン系極圧剤は、研磨中、圧力が相対的に大きい基板端部において、その力が一定の閾値を超えると金属表面と反応して保護膜(潤滑膜)を形成し、ロールオフの防止または低減に貢献すると考えられる。つまり、リン系極圧剤は、基板内周部には作用しないか、その作用は小さく、基板端部に選択的に作用する。その結果、良好な研磨性能を実現しつつ、端部形状を改善し得るものと考えられる。なお、上記のメカニズムは、実験結果に基づく本発明者らの考察であり、ここに開示される技術は、上記のメカニズムに限定して解釈されるものではない。
リン系極圧剤は、ここに開示される技術において極圧剤(簡潔には、加工性をある程度維持しつつ端部形状を改善し得る剤)として機能するものを特に制限なく用いることができる。上記リン系極圧剤は、リン酸エステルや亜リン酸エステル、チオリン酸、それらの塩(金属塩、アミン塩)のなかから適当な1種または2種以上を選択して用いることができる。
リン系極圧剤としては、基板端部の保護性を考慮して適当なサイズのものを選択し用いることができるので、その分子量は特定の範囲に限定されない。リン系極圧剤の分子量は凡そ85以上とすることができ、110以上(例えば130以上)が適当である。特に限定して解釈されるものではないが、所定値以上の分子量を有するリン系極圧剤は置換基が端部保護に十分な大きさを有し、基板端部側面からの力を効果的に低減するものと考えられる。そのような観点から、リン系極圧剤の分子量は、好ましくは150以上であり、180以上でもよく、200以上でもよく、220以上でもよく、250以上でもよく、300以上でもよく、400以上(例えば450以上)でもよい。上記分子量の上限は、研磨用組成物への溶解性や取扱い性等の観点から、例えば1000以下が適当であり、好ましくは700以下、より好ましくは550以下であり、450以下でもよく、350以下でもよく、270以下でもよく、210以下(例えば170以下)でもよい。
いくつかの好ましい態様では、リン系極圧剤としてリン酸エステルが用いられる。リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルのいずれも使用可能である。リン酸エステルは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に限定して解釈されるものではないが、リン酸エステルは、研磨中、反応性領域(P=OやP−OH)が基板端部に吸着し、リン酸エステル中の置換基(有機基)が、上記端部を保護する領域として機能すると考えられる。
リン酸エステルとしては、基板端部の保護性を考慮して適当なサイズのものを選択し用いることができ、その分子量は特定の範囲に限定されない。リン酸エステルの分子量は凡そ110以上であり、例えば130以上であり得る。端部形状改善の観点から、分子量が150以上であるリン酸エステルが好ましく用いられる。特に限定して解釈されるものではないが、所定値以上の分子量を有するリン酸エステルは置換基が端部保護に十分な大きさを有し、基板端部側面からの力を効果的に低減するものと考えられる。上記リン酸エステルの分子量は、180以上でもよく、200以上でもよく、220以上でもよく、250以上でもよく、300以上でもよく、400以上(例えば450以上)でもよい。上記分子量の上限は、研磨用組成物への溶解性や取扱い性等の観点から、例えば1000以下が適当であり、好ましくは700以下、より好ましくは550以下であり、450以下でもよく、350以下でもよく、270以下でもよく、210以下(例えば170以下)でもよい。
ここに開示されるリン酸エステルは、例えば下記一般式(1)で表される化合物である。
上式(1)中、R
1およびR
2は同一であっても互いに異なっていてもよく、いずれも水素原子または有機基である。ただし、R
1およびR
2のうち少なくとも一方は、有機基である。
いくつかの態様において、上記一般式(1)で表される化合物は、R1およびR2の少なくとも一方が、アルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基、(メタ)アクリル酸アルキルエステル基および(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル基、(ポリ)オキシアルキレンアリールエーテル基および芳香族基から選択される有機基である。上記有機基を構成する炭素原子数は、上記化合物の分子量が150以上となる限りにおいて特に限定されず、端部形状改善性、研磨用組成物における溶解性、取扱い性等を考慮して適当な炭素原子数を有するものが用いられる。例えば、上記アルキル基の炭素原子数は、1以上(例えば2以上)であり、3以上が適当であり、好ましくは4以上であり、6以上であってもよく、8以上であってもよい。アルケニル基およびアルコキシアルキル基の炭素原子数は、それぞれ独立して、2以上であり、3以上が適当であり、好ましくは4以上であり、6以上であってもよく、8以上であってもよい。芳香族基(例えばアリール基、典型的にはフェニル基)の炭素原子数は6以上であり、8以上であってもよい。アルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基および芳香族基の炭素原子数の上限は、それぞれ独立して、24以下が適当であり、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、さらに好ましくは12以下、特に好ましくは8以下である。
いくつかの好ましい態様では、上記一般式(1)で表される化合物は、R1およびR2の少なくとも一方がアルキル基である。上記アルキル基は特に限定されず、直鎖状、分岐状等の鎖状アルキル基であってもよく、脂環式アルキル基であってもよい。上記R1およびR2の少なくとも一方は鎖状アルキル基であることが好ましい。鎖状アルキル基を含むリン酸エステルによると、端部形状改善効果が得られやすい。この態様におけるR1およびR2の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
他のいくつかの好ましい態様において、上記一般式(1)で表される化合物は、R1およびR2の少なくとも一方がアルコキシアルキル基である。上記アルコキシアルキル基において、アルコキシ部分の炭素原子数は特に限定されず、1以上、2以上でもよく、4以上でもよく、また10以下が適当であり、8以下でもよく、6以下でもよい。アルコキシアルキル基のアルキル部分の炭素原子数も特に限定されず、1以上、2以上でもよく、また12以下が適当であり、8以下でもよく、4以下でもよい。
他のいくつかの好ましい態様では、上記一般式(1)で表される化合物は、R1およびR2の少なくとも一方が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル基である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル基を構成するアルキル基の炭素原子数は特に限定されず、例えば2以上であり、4以上でもよく、8以上でもよく、12以上でもよく、また14以下でもよく、10以下でもよく、6以下(例えば4以下)でもよい。
他のいくつかの好ましい態様では、上記一般式(1)で表される化合物は、R1およびR2の少なくとも一方が、(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル基または(ポリ)オキシアルキレンアリールエーテル基である。(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル基や(ポリ)オキシアルキレンアリールエーテル基を構成するアルキル基の炭素原子数は特に限定されず、例えば2以上であり、4以上でもよく、8以上でもよく、12以上でもよく、また24以下でもよく、18以下でもよく、14以下(例えば12以下)でもよい。(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル基、(ポリ)オキシアルキレンアリールエーテル基のオキシアルキレン単位の繰返し数も特に限定されず、1以上であり、2以上が適当であり、3以上でもよく、また10以下が適当であり、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、例えば4以下である。
上記リン酸エステルとしては、モノアリールアシッドホスフェート、ジアリールアシッドホスフェート等のアリールアシッドホスフェート;モノアルキルアシッドホスフェート、ジアルキルアシッドホスフェート等のアルキルアシッドホスフェート;モノアルケニルアシッドホスフェート、ジアルケニルアシッドホスフェート等のアルケニルアシッドホスフェート;アルコキシアルキルアシッドホスフェート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートアシッドホスフェート;モノアルキルホスフェート;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル;ポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸エステル;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、アルキルアシッドホスフェート、アルコキシアルキルアシッドホスフェート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートアシッドホスフェート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルが好ましく、アルキルアシッドホスフェート、アルコキシアルキルアシッドホスフェート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルがより好ましい。
上記リン酸エステルの好適例としては、モノメチルアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、モノエチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、モノプロピルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルアシッドホスフェート等のアルキルアシッドホスフェート;ブトキシエチルアシッドホスフェート、ジブトキシエチルアシッドホスフェート等のアルコキシアルキルアシッドホスフェート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートアシッドホスフェート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートアシッドホスフェート;ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルリン酸エステル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示されるリン系極圧剤は亜リン酸エステルを含み得る。亜リン酸エステルは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。亜リン酸エステルは、研磨中、上記リン酸エステルと同様の反応性領域(P=O)の機能に加え、エステル結合部分(P−O−C)が有機基を切り離しながら基板端部に吸着し、最終的に無機酸膜を形成すると考えられる。上記無機酸膜は基板端部に高密度で配置されて、主としてケミカルエッチングに対する保護膜としての効果を発現していると考えられる。なお、ここに開示される技術における亜リン酸エステルの作用効果は、上記のメカニズムに限定して解釈されるものではない。
上記亜リン酸エステルの分子量は、端部形状改善の観点から、凡そ85以上が適当であり、好ましくは100以上、より好ましくは120以上であり、例えば150以上であってもよい。上記分子量の上限は、研磨用組成物への溶解性や取扱い性等の観点から、例えば1000以下が適当であり、好ましくは500以下、より好ましくは300以下であり、200以下でもよく、160以下でもよい。
ここに開示される亜リン酸エステルは、例えば下記一般式(2)で表される化合物である。
上式(2)中、R
3およびR
4は同一であっても互いに異なっていてもよく、いずれも水素原子または有機基である。ただし、R
3およびR
4のうち少なくとも一方は、有機基である。
いくつかの態様において、上記一般式(2)で表される化合物は、R3およびR4の少なくとも一方が、アルキル基および芳香族基から選択される有機基である。上記有機基を構成する炭素原子数は特に限定されず、端部形状改善性、研磨用組成物における溶解性、取扱い性等を考慮して適当な炭素原子数を有するものが用いられる。例えば、上記アルキル基の炭素原子数は、1以上であり、2以上が適当であり、4以上でもよい。芳香族基(例えばアリール基、典型的にはフェニル基)の炭素原子数は6以上である。上記アルキル基および芳香族基の炭素原子数の上限は24以下が適当であり、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
いくつかの好ましい態様において、上記一般式(2)で表される化合物は、R3およびR4の少なくとも一方がアルキル基である。上記アルキル基は特に限定されず、直鎖状、分岐状等の鎖状アルキル基であってもよく、脂環式アルキル基であってもよい。上記R3およびR4の少なくとも一方は鎖状アルキル基であることが好ましい。鎖状アルキル基を含む亜リン酸エステルによると、端部形状改善効果が得られやすい。この態様におけるR3およびR4の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
亜リン酸エステルの好適例としては、ジメチルハイドロゲンホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ジイソプロピルハイドロゲンホスファイト、ジブチルハイドロゲンホスファイト、ジイソブチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト等のアルキルハイドロゲンホスファイト;ジフェニルハイドロゲンホスファイト等のアリールハイドロゲンホスファイト;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ジブチルハイドロゲンホスファイトが好ましい。
ここに開示される研磨用組成物におけるリン系極圧剤の含有量は、加工性維持と端部形状改善とを両立する適当量とすることができ、また種によっても異なり得るため、特定の範囲に限定されない。上記含有量は、凡そ0.001mM(mmol/L)以上とすることができ、凡そ0.01mM以上が適当である。端部形状改善の観点から、上記含有量は、凡そ0.1mM以上でもよく、凡そ0.3mM以上でもよく、凡そ0.5mM以上でもよく、凡そ1mM以上でもよく、凡そ2mM以上でもよく、凡そ5mM以上でもよく、凡そ8mM以上でもよい。上記含有量の上限は、例えば100mM以下とすることができ、凡そ30mM以下(例えば15mM以下)が適当である。加工性の観点から、上記含有量は、凡そ10mM以下でもよく、凡そ7mM以下でもよく、凡そ3mM以下でもよく、凡そ1mM以下でもよく、凡そ0.5mM以下でもよく、凡そ0.1mM以下でもよい。
特に限定されるものではないが、ここに開示される技術においてリン系極圧剤としてモノアルキルアシッドホスフェートを用いる態様では、研磨用組成物におけるモノアルキルアシッドホスフェートの含有量は凡そ0.01〜10mM(例えば凡そ0.1〜5mM、典型的には凡そ0.3〜1.5mM)とすることが好ましい。ジアルキルアシッドホスフェートを用いる態様では、その含有量は凡そ0.1〜100mM(例えば凡そ1〜30mM、典型的には凡そ5〜20mM)とすることが好ましい。ヒドロキシ(メタ)アクリレートアシッドホスフェートを用いる態様では、その含有量は凡そ0.1〜50mM(例えば凡そ1〜10mM、典型的には凡そ2〜5mM)とすることが好ましい。(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルを用いる態様では、その含有量は凡そ0.001〜15mM(例えば凡そ0.01〜5mM、典型的には凡そ0.02〜2mM)とすることが好ましい。ここに開示される技術を亜リン酸エステルを用いる態様で実施する場合、亜リン酸エステルの含有量は凡そ0.1〜50mM(例えば凡そ1〜15mM、典型的には凡そ2〜10mM)とすることが好ましい。
(酸)
ここに開示される研磨用組成物は、研磨促進剤として酸を含むことが好ましい。酸としては、無機酸および有機酸のいずれも使用可能である。有機酸としては、例えば、炭素原子数が1〜18程度、典型的には1〜10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等が挙げられる。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機酸の具体例としては、リン酸(オルトリン酸)、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸、クロム酸、亜硝酸等が挙げられる。
有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アジピン酸、シュウ酸、吉草酸、エナント酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、イソクエン酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸等の有機カルボン酸;グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン等のアミノ酸;ニコチン酸;ピクリン酸;ピコリン酸;フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)等の有機ホスホン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、スルホコハク酸、10−カンファースルホン酸、イセチオン酸、タウリン等の有機スルホン酸等が挙げられる。
研磨効率の観点から好ましい酸として、リン酸、ホスホン酸、マレイン酸、塩酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、メタンスルホン酸等が例示される。なかでもリン酸、ホスホン酸、マレイン酸、塩酸、硝酸、硫酸が好ましい。
酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。アルカノールアミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩が挙げられる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
ここに開示される研磨用組成物に含まれ得る塩としては、無機酸の塩、例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩を好ましく採用し得る。例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、リン酸カリウム等を好ましく使用し得る。
酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上(例えば2種または3種)を組み合わせて用いることができる。いくつかの好ましい態様において、酸と、該酸とは異なる酸の塩とを組み合わせて用いることができる。上記酸は、好ましくは無機酸である。上記酸の塩は、好ましくは無機酸の塩である。
研磨用組成物が酸を含む場合、研磨用組成物における酸のモル濃度(複数種類の酸を含む場合には、それらの合計モル濃度)は特に限定されず、例えば凡そ0.001モル/L以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.01モル/L以上、より好ましくは凡そ0.05モル/L以上、さらに好ましくは0.07モル/L以上、特に好ましくは0.09モル/L以上である。いくつかの態様において、酸のモル濃度は、例えば0.1モル/L以上であってもよく、典型的には0.12モル/L以上であってもよい。酸のモル濃度の増大によって、より高い加工性が実現され得る。研磨後の面品質や研磨の安定性等の観点から、上記酸のモル濃度は、凡そ1.2モル/L以下が適当であり、好ましくは凡そ1モル/L以下、より好ましくは凡そ0.8モル/L以下、さらに好ましくは凡そ0.5モル/L以下、特に好ましくは凡そ0.3モル/L以下(例えば0.2モル/L以下)である。
(酸化剤)
ここに開示される研磨用組成物は、酸化剤を含有することができる。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
また、研磨液が酸化剤を含む場合、酸化剤の含有量は、研磨対象物を酸化する速度、ひいては加工性を考慮して、0.05モル/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.1モル/L以上、さらに好ましくは0.15モル/L以上、特に好ましくは0.3モル/L以上である。また、研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、面精度保持の観点から、1モル/L以下であることが好ましく、より好ましくは0.8モル/L以下、さらに好ましくは0.6モル/L以下である。
(塩基性化合物)
研磨用組成物には、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
炭酸塩や炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;このような水酸化第四級アンモニウムのアルカリ金属塩;等が挙げられる。上記アルカリ金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機酸塩の具体例としては、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
(その他の成分)
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤、水溶性高分子、分散剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用可能である。界面活性剤の使用により、研磨用組成物の分散安定性が向上し得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記界面活性剤は、典型的には、分子量1×106未満の水溶性有機化合物であり得る。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、およびこれらの塩等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸;およびこれらの塩等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アルキルイミダゾール型、アミノ酸型、アルキルアミンオキシド型等が挙げられる。
界面活性剤を含む態様の研磨用組成物では、界面活性剤の含有量を、例えば0.0005重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.002重量%以上である。また、加工性等の観点から、上記含有量は、3.0重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.5重量%以下、例えば0.1重量%以下である。
ここに開示される研磨用組成物には、水溶性高分子を含有させてもよい。水溶性高分子を含有させることにより、研磨後の面品質が向上し得る。水溶性高分子の例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、イソプレンスルホン酸とアクリル酸の共重合体、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン、キトサン塩類等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶性高分子を含む態様の研磨用組成物では、研磨用組成物中における該水溶性高分子の含有量を、例えば0.001重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、複数の水溶性高分子を含む態様では、それらの合計含有量である。上記含有量は、研磨後の研磨対象物の表面平滑性等の観点から、好ましくは0.003重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、さらに好ましくは0.007重量%以上である。また、加工性等の観点から、上記含有量は、1.0重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.5重量%以下、例えば0.1重量%以下である。なお、ここに開示される技術は、研磨用組成物が水溶性高分子を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
分散剤の例としては、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩等のポリカルボン酸系分散剤;ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、ナフタレンスルホン酸アンモニウム塩等のナフタレンスルホン酸系分散剤;アルキルスルホン酸系分散剤;ポリリン酸系分散剤;ポリアルキレンポリアミン系分散剤;第四級アンモニウム系分散剤;アルキルポリアミン系分散剤;アルキレンオキサイド系分散剤;多価アルコールエステル系分散剤;等が挙げられる。
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
防腐剤および防カビ剤の例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
(pH)
ここに開示される研磨用組成物のpHは特に制限されない。研磨用組成物のpHは、例えば、12.0以下、典型的には0.5〜12.0とすることができ、10.0以下、典型的には0.5〜10.0としてもよい。加工性や面品質等の観点から、研磨用組成物のpHは、7.0以下、例えば0.5〜7.0とすることができ、5.0以下、典型的には1.0〜5.0とすることがより好ましく、4.0以下、例えば1.0〜4.0とすることがさらに好ましい。研磨用組成物のpHは、例えば3.0以下、典型的には1.0〜3.0、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.8とすることができる。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、ニッケルリン基板等の磁気ディスク基板の研磨用の研磨用組成物に好ましく適用され得る。特に一次研磨用の研磨用組成物に好ましく適用され得る。
(研磨液)
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、該研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈して調製されたものであり得る。ここで希釈とは、典型的には水による希釈である。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。このような濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍〜50倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、例えば2倍〜20倍、典型的には2倍〜10倍程度の濃縮倍率が適当である。
(多剤型研磨用組成物)
なお、ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分、典型的には、水以外の成分のうち一部の成分を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。いくつかの好ましい態様に係る多剤型研磨用組成物は、砥粒を含むパートAと、砥粒以外の成分を含むパートBとから構成されている。砥粒を含むパートAは、さらに分散剤を含んでもよい。パートBに含まれる砥粒以外の成分としては、例えば、酸、水溶性高分子その他の添加剤が挙げられる。リン系極圧剤は、パートA、Bのいずれか、または両方に含まれ得る。通常、これらは、使用前は分けて保管されており、使用時に混合され得る。ここでいう使用時とは、典型的には研磨対象基板の研磨時であり得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤がさらに混合され得る。例えば、上記酸化剤が水溶液の形態で供給される場合、当該水溶液は、多剤型研磨用組成物を構成するパートCとなり得る。
ここに開示される研磨用組成物は、例えば、ニッケルリン基板、ガラス基板、カーボン製基板等の研磨に好ましく適用され得る。また、めっき材質として、基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層以外の金属層または金属化合物層を備えたディスク基板であってもよい。なかでも、アルミニウム合金製の基材ディスク上にニッケルリンめっき層を有するニッケルリンめっき基板用の研磨用組成物として好適である。かかる用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。
ここに開示される研磨用組成物は、仕上げ研磨工程後において高精度な表面が要求される磁気ディスク基板の製造プロセスにおける予備研磨工程のように、高い研磨効率が要求される用途において特に有意義に使用され得る。仕上げ研磨工程の前工程として複数の予備研磨工程を有する場合は、いずれの予備研磨工程にも使用可能であり、これらの予備研磨工程において同一のまたは異なる研磨用組成物を用いることができる。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、磁気ディスク基板の一次研磨工程すなわち最初のポリシング工程に用いられる研磨用組成物として好適である。なかでも、ニッケルリン基板の製造プロセスにおいて、ニッケルリンめっき後の最初の研磨工程すなわち一次研磨工程において好ましく使用され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、例えば、Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定される表面粗さが20Å〜300Å程度の磁気ディスク基板を研磨して、該磁気ディスク基板を10Å以下の表面粗さに調整する用途に好適である。かかる用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。ここでいう表面粗さとは、算術平均粗さ(Ra)のことをいう。
<磁気ディスク基板の製造方法および研磨方法>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、磁気ディスク基板を研磨対象物とする研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法の好適な態様につき説明する。以下では、研磨対象物を研磨対象基板ともいう。
上記方法を実施するにあたって、まず、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(ワーキングスラリー)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。濃度調整としては、例えば希釈が挙げられる。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。具体的には、研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面すなわち研磨対象面に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動させる。上記移動は、例えば回転移動であり得る。
研磨パッドとしては、圧縮弾性率が50%よりも大きいものが用いられる。上記圧縮弾性率を有する研磨パッドを用いることにより、高い面品質が実現されやすい。その一方で、圧縮弾性率が相対的に高い研磨パッドは、研磨時に、研磨対象基板に沈み込みが大きく、また加工時間も長くなる傾向があり、ロールオフが発生しやすい。ここに開示される研磨用組成物に含まれるリン系極圧剤は、上記研磨パッドの沈み込みのため負荷が大きくなっている研磨対象基板の端部に選択的に作用し、例えば相対的に加工時間が長くなる研磨においても、ロールオフの発生を防止または低減し、端部形状を改善することができる。ここに開示される技術によると、圧縮弾性率が50%よりも大きい研磨パッドを用いる研磨において、リン系極圧剤を使用することで、加工性維持と端部形状改善とを両立することができる。
研磨パッドの圧縮弾性率は、加工性維持と端部形状改善との両立の観点から、凡そ60%以上が適当であり、好ましくは凡そ70%以上、より好ましくは凡そ80%以上、さらに好ましくは凡そ90%以上、特に好ましくは凡そ95%以上である。研磨パッドの圧縮弾性率の上限は、理論上100%である。
本明細書における研磨パッドの圧縮弾性率は、JIS L 1021に基づき、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることができる。具体的には、無荷重状態から初荷重(300g/cm2)を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終荷重(1800g/cm2)を30秒間かけた後の厚さt1を測定する。次に、厚さt1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重(300g/cm2)を30秒間かけた後の厚さt0’を測定する。得られた値を、式:
圧縮弾性率(%)=100×(t0’−t1)/(t0−t1)
に代入することにより、圧縮弾性率(%)を算出することができる。
使用し得る研磨パッドは、上記圧縮弾性率を満足する限りにおいて特に限定されない。例えば、硬質発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の研磨パッドを用いることができる。発泡ポリウレタンタイプとしては、例えば、全体が発泡ポリウレタンにより構成されているものが挙げられる。なかでも、加工性に優れ、また基板表面の高品質化を実現しやすいスウェードタイプの研磨パッド(典型的にはポリウレタン製研磨パッド)が好ましい。なお、ここに開示される技術で用いられる研磨パッドは砥粒を含まない。
スウェードタイプの研磨パッドはベース層と表面層とを有するものであり、典型的には、不織布やゴムシート、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステルフィルムからなるベース層(パッド基材ともいう。)に支持された発泡層を表面層として有するものが用いられる。スウェードタイプの研磨パッドの好適例として、ポリウレタン製の発泡表面層(例えば連続発泡タイプ)がPETフィルム等のポリエステルフィルム(ベース層)に支持されたポリウレタン製研磨パッドが挙げられる。スウェードタイプの研磨パッドは、バフパッドであってもよく、典型的には、表面をバフ加工していないノンバフ状態にある研磨パッド(いわゆるノンバフパッド)であってもよい。
研磨工程に使用する研磨装置は、研磨対象物の両面を同時に研磨する両面研磨装置であってもよく、研磨対象物の片面のみを研磨する片面研磨装置であってもよい。上記研磨工程が予備研磨工程である場合、いくつかの態様において、該研磨工程を行う研磨装置として両面研磨装置を好ましく採用し得る。一次研磨工程の後に仕上げ研磨工程を行う場合、該仕上げ研磨工程を行う研磨装置としては、片面研磨装置を好ましく採用し得る。
研磨条件(研磨荷重や線速度、スラリー供給量、研磨時間)は、研磨対象物や、目標とする表面性状、研磨効率等に基づいて適切に設定される。ここに開示される技術においては、研磨荷重(加工荷重)が相対的に大きく研磨面の摩擦力が大きい態様の研磨や、研磨荷重(加工荷重)が相対的に小さく研磨時間が長くなりがちな態様の研磨のいずれにおいても、端部形状を改善することができ、研磨荷重は特に限定されない。例えば、研磨荷重が凡そ20g/cm2以上、好ましくは凡そ50g/cm2以上、より好ましくは凡そ80g/cm2以上、さらに好ましくは凡そ100g/cm2以上(例えば凡そ120g/cm2以上)である研磨において、その研磨荷重に基づき十分な加工性が発揮されることに加えて、基板端部形状を好ましく改善することができる。また例えば、凡そ1000g/cm2以下の(凡そ500g/cm2以下でもよく、凡そ300g/cm2以下でもよく、凡そ200g/cm2以下でもよい)研磨荷重による研磨において、例えば上記研磨荷重のため加工時間が長くなる場合であっても、優れた基板端部形状の改善効果を実現することができる。
上記のような研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。上記研磨工程は、磁気ディスク基板、例えばニッケルリン基板の製造プロセスの一部であり得る。したがって、この明細書によると、上記研磨工程を含む磁気ディスク基板の製造方法および研磨方法が提供される。
上記研磨工程は、ここに開示研磨用組成物を研磨対象基板に供給し、研磨パッドを用いて該研磨対象基板を研磨する工程(1)であり得る。この工程(1)は、研磨対象物の予備研磨工程、例えば一次研磨工程であってもよく、仕上げ研磨工程であってもよい。上記工程(1)を、端部形状が問題となりやすい予備研磨工程(例えば一次研磨工程)として実施することで、ここに開示される技術による効果は好ましく発揮される。この態様において、上記方法は、工程(1)の後に仕上げ研磨工程を含み得る。すなわち、上記方法は、工程(1)で得られた基板を仕上げ研磨用組成物CFを用いて研磨する工程(2)をさらに含む方法であり得る。
工程(2)、すなわち仕上げ研磨工程に使用する研磨用組成物は特に限定されない。典型的には、工程(2)は、工程(1)で用いられる研磨用組成物とは異なる研磨用組成物で研磨対象物を研磨する。いくつかの好ましい態様では、工程(2)で用いられる仕上げ研磨用組成物CFは、工程(1)で用いられるシリカ粒子SよりもSEM画像解析に基づく体積平均粒子径が小さいシリカ粒子SFを含むものであり得る。工程(1)および(2)をこの順で含む研磨を実施することにより、工程(1)によって、高い加工力で効率よく基板を研磨しつつ、仕上げ研磨前に端部形状を改善することができ、次いで工程(2)を実施することで、端部形状が改善し、かつ高い面品質を有する磁気ディスク基板が好ましく実現される。なお、シリカ粒子SFは、粒子径が相対的に小さい他はシリカ粒子Sと基本的に同じであり得るので、シリカ粒子Sで説明した事項を適用することができる。仕上げ研磨用組成物CFについても、工程(1)で用いられる研磨用組成物と同様、水を含み、さらに任意に添加剤(酸、酸化剤等)を含み得る。仕上げ研磨用組成物CFに関するその他の事項は、本分野の技術常識に基づき設計可能であり、ここに開示される技術を特徴づけるものではないので、説明は省略する。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<例1〜23>
シリカ粒子S1(非球状コロイダルシリカ、平均アスペクト比1.2、D50=150nm)と、シリカ粒子S2(球状コロイダルシリカ、D50=60nm)と、シリカ粒子S3(焼成シリカ、平均アスペクト比1.3、D50=300nm)と、表1に示す添加剤と、85%リン酸と、31%過酸化水素水とを脱イオン水とともに混合して各例に係る研磨用組成物を調製した。研磨用組成物中のシリカ粒子S1の含有量は40.9g/L、シリカ粒子S2の含有量は27.3g/L、シリカ粒子S3の含有量は6g/L、リン酸の含有量は14.7g/L、過酸化水素水の含有量は60g/Lであり、添加剤の含有量は表1に示すとおりである。なお、表1中、ラウリルEO2アシッドホスフェートはジエチレングリコールモノラウリルエーテルアシッドホスフェートであり、アルキルEO3アシッドホスフェートはポリオキシエチレン(EO3)アルキルエーテルアシッドホスフェートである。
[ディスクの研磨]
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液に使用して、下記の条件で、研磨対象物の研磨を行った。研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板を使用した。上記基板は、直径3.5インチ、外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型、厚さは1.75mmであり、研磨前における表面粗さRaは130Åであった。なお、上記表面粗さRaは、Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定したニッケルリンめっき層の算術平均粗さである。
(研磨条件)
研磨装置:システム精工社製の両面研磨機、型式「9.5B−5P」
研磨パッド:AまたはB
A:圧縮弾性率70%
B:圧縮弾性率96%
いずれも、FILWEL社製のスウェードパッド(ベース層と表面層とを有し、表面層が発泡ポリウレタン製のパッド)
研磨対象基板の投入枚数:15枚(3枚/キャリア ×5キャリア)
研磨液の供給レート:135mL/分
研磨荷重(加工荷重):120g/cm2または150g/cm2
上定盤回転数:27rpm
下定盤回転数:36rpm
サンギヤ(太陽ギヤ)回転数:8rpm
研磨量:各基板の両面の合計で約2.2μmの厚さ
[加工性]
各例に係る研磨用組成物を用いて上記研磨条件で研磨対象基板を研磨したときの加工性(研磨レート)を算出した。加工性は、次の計算式に基づいて求めた。
加工性[μm/min]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板の面積[cm2]×ニッケルリンめっきの密度[g/cm3]×研磨時間[min])×104
得られた値を、例20の加工性を100としたときの相対値に換算して表1の「加工性」の欄に示す。値が大きいほど加工性に優れる。
[端部形状]
各例に係る研磨用組成物を用いて上記研磨条件で研磨を行った基板(研磨後の研磨対象基板)につき、非接触表面形状測定機(商品名「NewView5032」、Zygo社製)を用いて、対物レンズ倍率2.5倍、中間レンズ倍率1.0倍で、基板の端部(半径45.5mm〜47.5mmの領域)おける測定位置座標のPV差(Peak-Valley差、最大高低差)を測定した。
得られた値を、例20の測定値を100としたときの相対値に換算して表1の「端部形状」の欄に示す。値が小さいほど端部形状は改善している。
表1に示されるように、リン系極圧剤を含む組成物を用いた例1〜19では、添加剤非含有の例20(参考例)と比べて、加工性を維持または向上しつつ、端部形状が改善した。これに対し、非リン系の添加剤を使用した例21〜23では、端部形状の改善は認められたが、加工性が低下した。これらの添加剤は、端部だけでなく基板表面全体を保護したためと考えられる。
また、例13と例16との対比から、圧縮弾性率の高い研磨パッドを用いた例16において、より優れた端部形状改善効果が得られた。この結果は、圧縮弾性率が相対的に高い研磨パッドを用いて、圧縮弾性率が相対的に低い研磨パッドと同等の加工を行おうとすれば、加工時間が長くなり得ることを示しているが、そのように加工時間が長くなった場合でも、端部形状の悪化を効果的に防止し得ることを示唆している。さらに、例16から加工荷重を高めた例17では、例16よりも加工性が向上し、かつ端部形状改善効果が維持された。この結果は、圧縮弾性率が所定値よりも大きい研磨パッドを用いる磁気ディスク基板の研磨において、リン系極圧剤が、研磨パッドの沈み込みのため力が大きくなっている研磨対象基板の端部に選択的かつ効果的に作用していることを支持するものと考えられる。上記の結果はいずれも、圧縮弾性率の高い研磨パッドを用いる磁気ディスク基板の研磨において、リン系極圧剤使用の効果がよりよく発揮され得ることを示している。
上記の結果から、圧縮弾性率が50%よりも大きい研磨パッドとシリカ粒子含有研磨用組成物とを用いる磁気ディスク基板の研磨において、当該研磨用組成物にリン系極圧剤を用いることで、加工性等の研磨性能と端部形状改善とを両立し得ることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。