以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。なお、各図面は、発明の内容の理解を高めるためのものであり、誇張された表示が含まれる他、各図面間において、縮尺等は厳密に一致していない点が予め指摘される。
図1は、空調システム1を利用した建物(住宅)2の一例を示す概念図である。建物2としては、住宅である場合が例示されているが、ビル等であってもよい。建物2は、第1空間3と、第1空間3よりも容積が小さい少なくとも1つの第2空間4とを含んでいる。
本実施形態の第1空間3は、リビングルーム5である。一般に、リビングルーム5は、建物2内の他の空間に比べて、居住者の滞在時間が長くなる傾向がある。なお、第1空間3は、第2空間4よりも容積が大きければ、リビングルーム5に限定されない。
第2空間4は、第1空間3よりも小さい空間であれば、適宜選択することができる。本実施形態の第2空間4は、洗面所6を含んでいる。さらに、本実施形態の第2空間4は、客間(和室)7を含んでいる。一般に、洗面所6及び客間7は、リビングルーム5に比べて、居住者の滞在時間が短く、熱負荷変動が大きい傾向がある。本実施形態の第2空間4には、例えば、図示しない寝室や子供部屋等が含まれてもよい。
空調システム1は、空気調和機11と、チャンバー12と、ファン13とを含んで構成されている。本実施形態において、空気調和機11及びファン13は、筐体14の内部に収容されているが、このような態様に限定されない。
本実施形態の筐体14は、床の上に設置されている。なお、筐体14の設置場所は、特に限定されるわけではなく、例えば、床の下の空間(床下空間9)に設置されてもよいし、小屋裏に設けられてもよい。また、筐体14は、1階の床の上に設置されているが、例えば、2階以上の上階の床(図示省略)の上に設置されても良い。
筐体14は、その内部にスペース(空間)を有する箱状に形成されている。この筐体14の内部に、空気調和機11及びファン13が収容されている。本実施形態の筐体14には、給気口(図示省略)及び外気取込口16が設けられているが、給気口及び外気取込口16のいずれか一方のみが設けられてもよい。
給気口(図示省略)は、第1空間3及び第2空間4等を循環した空気A3を、筐体14の内部に供給するためのものである。給気口は、建物2内の空間と、筐体14の内部との間を連通している。
外気取込口16は、筐体14の内部に、外気A1(床下空気A2)を取り込むためのものである。本実施形態の外気取込口16には、ダクト17が接続されている。このダクト17は、筐体14の内部と、床下空間9(図1に示す)とを連通させている。これにより、外気取込口16は、床下空間9及びダクト17を介して、筐体14の内部に、外気A1(床下空気A2)を取り込むことができる。
ダクト17には、床下空気A2(外気A1)を、外気取込口16側に送るための外気供給ファン18が設けられている。外気供給ファン18の風量については、適宜設定することができ、例えば、建物2に必要な換気回数に基づいて設定されるのが望ましい。本実施形態では、床下空間9を介して、外気A1(床下空気A2)が取り込まれているが、屋外から外気A1が直接取り込まれてもよい。
本実施形態の空気調和機11としては、一般的な家庭用のセパレート型エアコンである場合が例示される。空気調和機11は、室内機11Aと、建物2の外部に設置された室外機(図示省略)とをセットとして含んでいる。室内機11Aは、吸込口21と吐出口22とを有している。吸込口21は、室内機11Aの内部の熱交換器(図示省略)に、空気を取り込むためのものである。吐出口22は、熱交換された空調空気A4を吐出するためのものである。
室内機11Aの吸込口21の近傍(本実施形態では、吸込口21の上方)には、給気口(図示省略)及び外気取込口16が設けられている。これにより、空気調和機11は、空間(例えば、第1空間3及び第2空間4等)を循環した空気A3と、床下空気A2(外気A1)との混合気を空調することができるため、建物2の内部に空気を循環させながら、建物2の内部を換気及び空調することができる。
空調空気A4は、筐体14の内部に設けられたフィルター(図示省略)によって浄化されてもよい。これにより、空調システム1は、浄化された空気を、第1空間3及び第2空間4に供給することができる。
ファン13は、空調空気A4を、チャンバー12の入口23に供給するためのものである。本実施形態のファン13は、空気調和機11とは別に設けられているため、空気調和機11とファン13とを個別にメンテナンスすることができる。
本実施形態のファン13は、空調空気A4を、ダクト26を介して、チャンバー12の入口23に供給している。ファン13としては、例えば、シロッコファンを採用することができるが、このような態様に限定されない。本実施形態では、一つのファン13で構成されているが、複数のファン13で構成されていてもよい。ファン13の風量については、適宜設定することができ、例えば、建物2に必要な換気回数等に基づいて設定されるのが望ましい。
図2は、チャンバー12の一例を示す斜視図である。図3は、図2の断面図である。チャンバー12は、その内部にスペース(空間)を有する箱状に形成されている。本実施形態のチャンバー12は、上板12a、下板12b、及び、上板12aと下板12bとを継ぐ側板12cとを含んで構成されており、断面略矩形状に形成されている。図1に示されるように、本実施形態のチャンバー12は、1階の天井の上の空間(小屋裏)に設置されているが、特に限定されるわけではなく、例えば、床下空間9等に設置されてもよい。
図2及び図3に示されるように、チャンバー12には、入口23及び複数の出口24が設けられている。チャンバー12は、入口23に供給された空調空気A4が、チャンバー12の内部で、予め定められた第1方向D1に流れるように形成されている。図2に示されるように、チャンバー12は、第1方向D1への空調空気A4の流れを形成するために、第1方向D1の長さL1が相対的に大きい長尺体に形成されるのが望ましい。本実施形態の第1方向D1の長さL1は、第1方向D1と直交する向き(以下、単に「第2方向D2」及び「第3方向D3」ということがある。)の長さL2及びL3に比べて大きく形成されている。
図2及び図3に示されるように、入口23は、チャンバー12の第1方向(空調空気A4の流れる方向)D1の上流側に設けられている。本実施形態の入口23は、チャンバー12の上板12aに設けられているが、下板12bや側板12cに設けられても良い。上述したように、入口23は、ダクト26を介して、ファン13(図1に示す)に接続されている。これにより、チャンバー12には、空気調和機11で熱交換された空調空気A4が、ファン13及びダクト26を介して供給される。
図2に示されるように、複数の出口24は、第1出口24Aと、少なくとも1つの第2出口24Bとを含んで構成されている。
第1出口24Aは、第1空間3(図1に示す)に空調空気A4を供給するためのものである。第1出口24Aは、第2出口24B、24Bよりも第1方向D1の上流側に設けられている。さらに、本実施形態の第1出口24Aは、第1方向D1と交差する向き(本例では、第2方向D2)に配された側板12cに設けられている。これにより、第1出口24Aは、第1方向D1に流れる空調空気A4を、第1方向D1と交差する向き(第2方向D2)に排出することができる。本実施形態の第1出口24Aは、側板12cに設けられる態様が例示されたが、第1方向D1と交差する向き(本例では、第3方向D3)に配された上板12a及び下板12bに設けられてもよい。
第1出口24Aは、第2出口24Bに設けられるようなダンパー30を有することなく、第1空間3と連通している。このため、空調システム1は、ダンパー30の数を減らすことができるため、空調システム1の導入に必要なイニシャルコストを低減することができる。
本実施形態の第1出口24Aは、覆い部34を介して、第1空間3の開口部33と連通しているが、第1出口24Aは、第1空間3に面して設けられてもよい。このような第1出口24Aは、空調空気A4を、第1空間3に直接供給することができるため、第1出口24Aと第1空間3との間に、ダクト等の空気経路等(図示省略)を設ける必要がない。したがって、空調システム1の導入に必要なイニシャルコストを低減することができる。なお、第1出口24Aと第1空間3とが離間している場合には、第1出口24Aと第1空間3との間に、ダクト等の空気経路が設けられてもよい。
上述したように、図1に示した第1空間3(本例では、リビングルーム5)は、各第2空間4(本例では、洗面所6及び客間7)に比べて容積が大きい。このような第1空間3に多くの空調空気A4を供給できるように、第1出口24Aの有効開口面積は、少なくとも1つの第2出口24Bの有効開口面積よりも大きく設定されてもよい。なお、本実施形態のように、複数の第2出口24B、24Bが設けられている場合、第1出口24Aの有効開口面積は、個々の第2出口24Bの有効開口面積よりも大きく設定される。また、第1出口24Aの有効開口面積、及び、第2出口24Bの有効開口面積については、例えば、第1空間3及び第2空間4の容積等に基づいて、適宜設定することができる。
第2出口24Bは、第2空間4(図1に示す)に空調空気A4を供給するためのものである。本実施形態では、複数の第2空間4(本例では、図1に示した洗面所6及び客間7)のそれぞれに空調空気A4を供給するために、2つの第2出口24B、24Bが設けられている。なお、空調空気A4が供給される第2空間4の個数に応じて、3つ以上の第2出口24Bが設けられてもよい。
各第2出口24B、24Bは、チャンバー12の第1方向(空調空気A4の流れる方向)D1の下流側の端部27に設けられている。本実施形態の第2出口24B、24Bは、第1方向D1と交わる側板12cにそれぞれ設けられている。このような第2出口24B、24Bは、チャンバー12の内部で第1方向D1に流れる空調空気A4を、第1方向D1に沿って排出することができる。したがって、第2出口24B、24Bは、空調空気A4を第1方向D1と交差する向き(本例では、第2方向D2)に屈曲させて排出する第1出口24Aに比べて、空調空気A4をスムーズに排出することができる。これにより、本実施形態のチャンバー12は、開口面積が大きい第1出口24Aから、空調空気A4が優先的に排出されるのを防ぐことが可能となる。
各第2出口24B、24Bは、それぞれ、空気経路(本例では、ダクト)28、28を介して、各第2空間4、4(図1に示す)に連通している。これらの空気経路28、28には、空調空気A4の風量を調節可能なダンパー30をそれぞれ有している。本実施形態のダンパー30は、例えば、電動モータ30aによって駆動する電動ダンパーである場合が例示されるが、空調空気A4の風量を調節可能なものであれば、このような態様に限定されない。
ダンパー30は、その開度(開口面積)が大きくなるほど、空調空気A4の供給量を大きくすることができる。本実施形態のダンパー30は、少なくとも、第1開度と、第1開度よりも小さい第2開度とに調節可能に構成されている。
第1開度及び第2開度については、適宜設定することができる。本実施形態の第1開度は、ダンパー30を全開したときの開度(90%〜100%)に設定されている。一方、第2開度は、建物2(図1に示す)に必要な換気回数を考慮して、換気可能な開度(例えば、2%〜10%)に設定されるのが望ましい。なお、ダンパー30は、互いに異なる3つ以上の開度に設定可能なものが採用されてもよい。
本実施形態のチャンバー12は、ダンパー30を全開(第1開度に設定)したときに、少なくとも1つの第2出口24Bの有効開口面積が、第1出口24Aの有効開口面積よりも小さく設定されている。なお、本実施形態のように、複数の第2出口24B、24Bが設けられている場合には、個々の第2出口24B、24Bの有効開口面積が、第1出口24Aの有効開口面積よりも小さく設定される。これにより、空調システム1は、ダンパー30を全開したときに、第1空間3への空調空気A4の供給が低下するのを防ぐことができる。
図1に示されるように、空調システム1は、ダンパー30の開度を調節するための制御装置31を含んでいる。制御装置31は、CPU(中央演算装置)からなる演算部(図示省略)と、制御手順が予め記憶されている記憶部(図示省略)と、記憶部から制御手順を読み込む作業用メモリ(図示省略)とを含んで構成されている。このような制御装置31は、例えば、間仕切り壁等に設置されている。
制御装置31には、ダンパー30(図2に示した電動モータ30a)が接続されている。これにより、本実施形態の制御装置31は、ダンパー30に信号を伝達することで、ダンパー30の開度を調節することができる。本実施形態の制御装置31には、例えば入力手段(図示省略)を介して、建物2内の空間(第1空間3及び第2空間4)の目標温度が入力される。これらの目標温度、及び、予め定められた手順に基づいて、制御装置31は、ダンパー30の開度を調節している。
制御装置31には、空気調和機11、ファン13及び外気供給ファン18が接続されていてもよい。これにより、制御装置31は、これらの運転を制御することができる。
本実施形態の制御装置31には、第1空間3の温度、及び、第2空間4、4の温度を検出するための温度検出手段(図示省略)が、それぞれ接続されている。これにより、制御装置31は、各温度検出手段に信号を伝達することにより、第1空間3及び第2空間4、4の温度を検出させ、かつ、それらの検出結果を制御装置31に伝達させることができる。
図4は、空調システム1の処理手順(以下、単に「空調方法」ということがある。)の一例を示すフローチャートである。この処理手順は、制御装置31(図1に示す)に記憶されている制御手順に基づいて実施される。
本実施形態の空調システム(空調方法)では、先ず、制御装置31が、建物2の空調を開始する(ステップS1)。本実施形態のステップS1では、先ず、制御装置31が、空気調和機11、ファン13及び外気供給ファン18の運転を開始する。本実施形態のステップS1では、居住者が制御装置31に入力した目標温度等に基づいて、空気調和機11の設定温度や、ファン13及び外気供給ファン18の風量等が設定される。
さらに、ステップS1では、図2に示した各ダンパー30の開度が全開(本例では、第1開度)に設定される。上述したように、本実施形態のチャンバー12は、ダンパー30を全開したときに、各第2出口24B、24Bの有効開口面積を、第1出口24Aの有効開口面積よりも小さくすることができる。したがって、ステップS1では、チャンバー12に供給された空調空気A4を、各第2空間4、4に優先的に供給しつつ、第1空間3への供給が低下するのを防ぐことができる。
各第2空間4、4は、第1空間3に比べて容積が小さい。このような第2空間4、4に、空調空気A4が優先的に供給されるため、空調システム1は、滞在時間が短く、かつ、熱負荷変動が大きい各第2空間4、4の温度を、目標温度に早期に到達させることができる。
次に、本実施形態の空調システム(空調方法)では、制御装置31が、第2空間4の温度が、予め設定された目標温度になったか否かを判断する(ステップS2)。ステップS2では、先ず、各第2空間4のそれぞれについて、温度検出手段(図示省略)で検出された温度(以下、単に「検出温度」ということがある。)と、目標温度との差(以下、単に「温度差」ということがある。)が求められる。空気調和機11が暖房運転している場合には、目標温度から検出温度を減じることによって、温度差が求められる。一方、空気調和機11が冷房運転している場合には、検出温度から目標温度を減じることによって、温度差が求められる。
次に、本実施形態のステップS2では、制御装置31が、温度差が予め定められた第1閾値よりも小であるか否かを判断する。第1閾値は、第2空間4の温度が、目標温度になったか否かを判断するためのものである。第1閾値については、適宜設定することができる。本実施形態の第1閾値は、−1℃に設定される。このような第1閾値は、温度差と比較されることにより、暖房時の第2空間4の温度が目標温度よりも高くなったか否か、又は、冷房時の第2空間4の温度が目標温度よりも低くなったか否かを判断することができる。したがって、第1閾値は、第2空間4の温度が、目標温度になったか否かを確実に判断することができる。
ステップS2において、温度差が第1閾値(本例では、−1℃)よりも小である場合、第2空間4の温度が目標温度になっている(ステップS2で「Y」)。この場合、第2空間4への空調空気A4の風量を絞り、第1空間3への空調空気A4の風量を増加させるステップS3が実施される。
ステップS3では、制御装置31が、ダンパー30の開度を小さく設定する。本実施形態では、ダンパー30の開度が第2開度(例えば、4%)に設定される。これにより、第2空間4への空調空気A4の風量が絞られる。なお、ステップS3では、複数の第2空間4のうち、目標温度になった第2空間4への風量のみが絞られるのが望ましい。これにより、目標温度になっていない他の第2空間4の風量が維持されるため、第2空間4の温度を目標温度に早期に到達させることができる。
ステップS3では、第2空間4への空調空気A4の風量の減少分を、第1空間3への空調空気A4の風量に充てることができる。これにより、第1空間3への空調空気A4の風量を増加させることができる。したがって、本実施形態の空調システム1では、ダンパー30の数を減らしても、第1空間3及び第2空間4への空調空気A4の風量を調節することができるため、第1空間3及び第2空間4の温度を制御することができる。
上述したように、各第2空間4、4は、第1空間よりも容積が小さいため、目標温度に早期に到達する。このため、本実施形態の空調システム1は、第2空間4の温度が目標温度になった後に、第1空間3への空調空気A4の風量を迅速に増加させることができるため、第1空間3の空調が低下するのを抑制しうる。したがって、本実施形態の空調システム1は、第1空間3及び各第2空間4、4の双方を、効果的に空調することができる。
一方、ステップS2において、温度差が第1閾値(本例では、−1℃)以上である場合、第2空間4の温度が目標温度になっていない可能性が高い(ステップS2で「N」)。この場合、制御装置31が、第2空間4への空調空気の風量を増加させる(ステップS4)。
本実施形態のステップS4では、制御装置31が、ダンパー30の開度を第1開度(例えば、100%)に設定する。なお、ダンパー30の開度が既に第1開度に設定されている場合には、その開度が維持される。ステップS4では、各第2空間4、4のうち、目標温度になっていない第2空間4への風量のみを増加させるのが望ましい。これにより、空調システムは、第2空間4の温度が目標温度になるまで、第2空間4に空調空気A4の風量を大きくすることができるため、第2空間4を効果的に空調することができる。
次に、本実施形態の空調システム(空調方法)では、制御装置31が、空調システム1の停止命令があるか否かを判断する(ステップS5)。停止命令は、例えば、居住者によって制御装置31に入力される。
ステップS5において、停止命令があると判断された場合(ステップS5で「Y」)、制御装置31が空調システム(空調方法)1を停止させる(ステップS6)。一方、ステップS5において、停止命令がないと判断された場合(ステップS5で「N」)、制御装置31がステップS2〜ステップS5を再度実施する。
このように、本実施形態の空調システム(空調方法)1では、停止命令があるまで、第1空間3及び各第2空間4、4への空調空気A4の風量を調節することができるため、第1空間3及び各第2空間4、4の温度の制御を、継続して行うことができる。
これまでの実施形態の空調システム1では、各第2空間4、4の温度と、目標温度との温度差に基づいて、ダンパー30の開度が2つの開度(第1開度及び第2開度)に設定される場合が例示されたが、このような態様に限定されない。例えば、温度差の大きさに基づいて、ダンパー30の開度が3つ以上の開度に設定されてもよい。図5は、本発明の他の実施形態の空調システム1の処理手順(空調方法)の一例を示すフローチャートである。この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態空調システム(空調方法)では、ステップS2において、第2空間4の温度が目標温度になっていないと判断された場合(ステップS2で、「N」)、温度差の大きさに基づいて、ダンパー30の開度が微調節される(微調節ステップS7)。図6は、微調節ステップS7の一例を示すフローチャートである。
この実施形態の微調節ステップS7では、先ず、温度差と、予め定められた閾値(第1閾値〜第4閾値)とが比較されて(ステップS71)、ダンパー30の開度が微調節される(ステップS72〜S75)。
ステップS71において、温度差が第1閾値(本例では、−1℃)以上であり、かつ、第2閾値(本例では、0℃)未満である場合、ステップS3(図5に示す)での第2開度よりも大きい第3開度(例えば、33%〜43%)に設定される(ステップS72)。一方、温度差が第2閾値(本例では、0℃)以上であり、かつ、第3閾値(本例では、1℃)未満である場合、第3開度よりも大きい第4開度(例えば、62%〜68%)に設定される(ステップS73)。
ステップS71において、温度差が第3閾値(本例では、1℃)以上であり、かつ、第4閾値(本例では、2℃)未満である場合、第4開度よりも大きい第5開度(例えば、69%〜73%)に設定される(ステップS74)。一方、温度差が第4閾値(本例では、2℃)以上である場合、第5開度よりも大きい第1開度(本例では、90%〜100%)に設定される(ステップS75)。
このように、この実施形態の微調節ステップS7では、温度差が大きくなるほど、ダンパー30の開度が大きくすることができる。これにより、微調節ステップS7では、第2空間4への空調空気A4の風量を増加させることができるため、第2空間4を効果的に空調することができる。一方、微調節ステップS7では、温度差が小さくなるほど、ダンパー30の開度が小さくすることができる。これにより、微調節ステップS7では、第2空間4への空調空気A4の風量を減少させることができるため、第2空間4への空調空気A4の風量の減少分を、第1空間3への空調空気A4の風量に充てることができる。したがって、この実施形態の空調システム(空調方法)1は、第1空間3及び第2空間4を効率よく空調することができる。
ところで、これまでの実施形態の空調システム1は、建物2の空調を開始してから第2空間4が目標温度になるまで、第1空間3の風量を増加させることができないため、第1空間3の空調に時間を要する場合がある。このため、第1空間3に居住者が滞在している場合には、第1空間3を迅速に空調することが望まれる。
第1空間3を迅速に空調するには、第1出口24A(図2に示す)の開口面積を大きくして、第1空間3への空調空気A4の風量を大きくすることが有効である。しかしながら、第1出口24Aの開口面積が常に大きく設定されると、第2空間4を優先的に空調できなくなるという問題がある。このため、チャンバー12は、第1出口24Aの開口面積を調節可能な開閉手段が含まれてもよい。図7は、本発明の他の実施形態のチャンバー12を示す部分斜視図である。この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態のチャンバー12は、開閉手段36が取り外された状態(図示省略)において、第1出口24Aの開口面積が、これまでの実施形態の第1出口24Aの開口面積(図2に示す)よりも大きく設定されている。開閉手段36は、少なくとも1枚の遮蔽部37を含んでいる。この実施形態の遮蔽部37は、板状に形成されており、第1出口24Aの開口面に沿って複数並べて配置されている。
各遮蔽部37は、第1出口24Aの開口面38に対して傾斜可能に配置されている。この実施形態では、水平軸回りに傾動可能に固定されている。これにより、本実施形態の開閉手段36(複数の遮蔽部37)は、ルーバーとして構成される。
この実施形態の開閉手段36は、第1出口24Aの開口面38と、遮蔽部37との角度θ1を小さくすることで、第1出口24Aの少なくとも一部を覆う第1状態にすることができる。この第1状態において、第1出口24Aの開口面積が、これまでの実施形態の第1出口24Aの開口面積(図2に示す)と同一に設定されている。この第1状態では、これまでの実施形態と同様に、第2空間4(図1に示す)が目標温度になるまで、第2出口24Bの風量を大きくすることができるため、第2空間4を優先的に空調することができる。
本明細書において、寸法等の「同一」には、製造上の軽微なバラツキ(誤差)等が許容されるものとする。また、この実施形態の第1出口24Aの開口面積は、隣接する遮蔽部37、37の離間距離L4と、第1出口24Aの幅方向の距離L5とを乗じて求められる面積の合計値として求められる。
一方、この実施形態の開閉手段36(遮蔽部37)は、第1出口24Aの開口面38と、遮蔽部37との角度θ1を大きくすることで、第1状態よりも第1出口24Aを露出させる第2状態(図示省略)にすることができる。この第2状態において、第1出口24Aの開口面積は、これまでの実施形態の第1出口24Aの開口面積(図2に示す)よりも大きく設定されている。この第2状態では、第2空間4(図1に示す)が目標温度になる前から、第1空間3(図1に示す)への風量を増加させることができるため、第1空間3を迅速に空調することができる。
開閉手段36は、第1状態(図7に示す)と、第2状態(図示省略)とに切り替え可能に設定されている。第1状態と第2状態との切り替えは、居住者の手動によって行われてもよいし、制御装置31からの信号に応じて切り替える駆動手段(図示省略)によって行われてもよい。
このような開閉手段36は、第1状態(図7に示す)から第2状態(図示省略)に切り替えられることにより、例えば、空調システム1の起動直前まで空調されていなかった第1空間3を、迅速に空調することができる。一方、開閉手段36が第2状態から第1状態に切り替えられることにより、これまでの実施形態と同様に、第2空間4を優先的に空調することができる。したがって、この実施形態の開閉手段36は、居住者の要望に応じて、第1空間3及び第2空間4の温度を制御することが可能になる。
チャンバー12は、開閉手段36及びダンパー30を全開したときに、少なくとも1つの第2出口24Bの有効開口面積が、第1出口24Aの有効開口面積よりも小さくてもよい。なお、この実施形態のように、複数の第2出口24B、24Bが設けられている場合には、個々の第2出口24B、24Bの有効開口面積が、第1出口24Aの有効開口面積よりも小さく設定される。また、この実施形態において、開閉手段36の全開とは、第2状態(図示省略)のことを示している。これにより、この実施形態の空調システム1は、第1空間3への空調空気A4の風量を効果的に増加させることができる。
第1出口24Aが第1状態よりも覆われるのを防ぐために、遮蔽部37が第1状態の角度θ1よりも小さく傾斜するのを防ぐストッパー(図示省略)が設けられてもよい。これにより、第1空間3への空調空気A4の風量が、必要以上に小さくなるのを防ぐことができる。
これまでの実施形態の開閉手段36は、第1出口24Aの開口面38に対して傾斜可能な遮蔽部37で構成される態様が例示されたが、このような態様に限定されない。図8は、本発明のさらに他の実施形態のチャンバー12の一例を示す斜視図である。この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の開閉手段36は、第1出口24Aの開口面38に沿ってスライド可能な遮蔽部37で構成されている。この実施形態の遮蔽部37は、第1出口24Aの上側に設けられた上レール部39と、第1出口24Aの下側に設けられた下レール部40とに案内されて、第1方向D1に沿ってスライド可能に構成されている。
このような開閉手段36は、遮蔽部37をスライドさせることにより、第1出口24Aの少なくとも一部を覆う第1状態(図8に示す)と、第1状態よりも第1出口24Aを露出させる第2状態(図示省略)とに切り替えることができる。
第1状態では、遮蔽部37から露出している第1出口24Aの開口面積が、これまでの実施形態の第1出口24Aの開口面積(図2に示す)と同一に設定されている。これにより、第1状態では、これまでの実施形態と同様に、第2出口24Bの風量を大きくすることができるため、第2空間4を優先的に空調することができる。
一方、第2状態(図示省略)では、第1出口24Aの開口面積が、これまでの実施形態の第1出口24Aの開口面積(図2に示す)よりも大きく設定されている。これにより、第2状態では、第1空間3の風量を増加させることができるため、第1空間3を迅速に空調することができる。第1状態と第2状態との切り替えは、例えば、遮蔽部37に設けられた取手41によって居住者が行ってもよいし、制御装置31からの信号に応じて切り替え可能な駆動手段(図示省略)によって行ってもよい。
第1出口24Aが第1状態よりも覆われるのを防ぐために、上レール部39及び下レール部40は、第1状態の遮蔽部37の位置で終端するのが望ましい。これにより、第1空間3への空調空気A4の風量が小さくなるのを防ぐことができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図1及び図2に示した基本構成を有する空調システムが、建物内に設置された(実施例)。実施例のチャンバーは、ダンパーを有することなく第1空間に連通する第1出口と、ダンパーを有する空気経路を介して第2空間と連通する第2出口とが設けられている。第2出口は、チャンバー内で空調空気が流れる第1方向の下流側の端部に設けられている。
比較のために、第1出口と第1空間との間を連通する空気経路、及び、第2出口と第2空間との間を連通する空気経路の双方に、ダンパーを設けた空調システムが、建物内に設置された(比較例1)。さらに、第1方向の下流側の端部に、第1出口、及び、第2出口の双方を設けた空調システムが、建物内に設置された(比較例2)。比較例2の第1出口は、実施例と同様に、ダンパーを有することなく第1空間に連通している。
実施例、比較例1及び比較例2の空調システムについて、建物内の空調(暖房)が行われた。なお、実施例の空調システムでは、図2の手順に基づいて、建物内の空調(暖房)が行われた。そして、第1空間(リビングルーム)及び第2空間(洗面所)の温度が測定され、それらの空間の温度を制御可能か否かが検証された。
図9(a)は、実施例の第1空間の温度と時間との関係を示すグラフであり、図9(b)は、実施例の第2空間の温度と時間との関係を示すグラフである。図10(a)は、比較例1の第1空間の温度と時間との関係を示すグラフであり、図10(b)は、比較例1の第2空間の温度と時間との関係を示すグラフである。図11(a)は、比較例2の第1空間の温度と、時間との関係を示すグラフであり、図11(b)は、比較例2の第2空間の温度と、時間との関係を示すグラフである。
テストの結果、実施例は、第1出口が第1方向と交差する向きに空調空気を排出することができるため、第1方向に沿って排出する比較例2に比べて、第1空間への空調空気の風量が大きくなるのを防ぐことができた。これにより、実施例の第2空間の測定温度(図9(b)に示す)は、比較例2の第2空間の測定温度(図11(b)に示す)に比べて、目標温度に近づけることができた。
さらに、実施例は、第2空間への空調空気の風量をダンパーで絞ることにより、その空調空気の風量の減少分を、第1空間への空調空気の風量に充てることができた。これにより、図9(a)に示されるように、実施例は、第1空間の測定温度を目標温度に近づけることができた。
このように、実施例(図9(a)、(b)に示す)は、すべての空気経路にダンパーを設けた比較例1(図10(a)、(b)に示す)と同様に、建物内の空間の温度を制御することができた。一方、実施例は、比較例1に比べて、ダンパーの個数を減らすことができるため、空気搬送経路のイニシャルコストを67%低減することができた。したがって、実施例は、イニシャルコストを低減しつつ、建物内の空間の温度を制御することができた。