JP2020161787A - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

R−t−b系焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Dyの含有量を抑制したまま、高いBrと高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】少なくともR、B、GaおよびTを含み、R:27.0質量%以上35.0質量%以下であり、B:0.80質量%以上0.93質量%以下であり、Ga:0.15質量%以上1.0質量%以下であり、T:61.5質量%以上70.0質量%以下(TはFe又はFeとCoであり、Tの90質量%以上がFeである)であり、かつ下記式(1)を満たすR−T−B系焼結磁石素材を準備する工程と、14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)前記R−T−B系焼結磁石素材を、400℃以上600℃以下の熱処理温度で、10秒以上30分未満の保持時間で保持して熱処理する熱処理工程と、を含む、R−T−B系焼結磁石の製造方法。【選択図】なし

Description

本開示は、R−T−B系焼結磁石の製造方法に関する。
14B型化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1つを含む、TはFe又はFeとCoであり、Tの90質量%以上がFeである)は、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハイブリッド自動車用、電気自動車用や家電製品用の各種モータ等に使用されている。
R−T−B系焼結磁石は、高温で保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」と記載する場合がある)が低下し、不可逆熱減磁が起こる。そのため、特にハイブリッド自動車用や電気自動車用モータに使用される場合、高温下でも高いHcJを維持することが要求されている。
従来、HcJ向上のために、R−T−B系焼結磁石に重希土類元素(主としてDy)が多量に添加されていたが、残留磁束密度B(以下、単に「B」と記載する場合がある)が低下するという問題があった。そのため、近年、R−T−B系焼結磁石の表面から内部に重希土類元素を拡散させて主相結晶粒の外殻部に重希土類元素を濃化してBの低下を抑制しつつ、高いHcJを得る方法が採られている。
しかし、Dyは、産出地が限定されている等の理由から、供給が不安定である、および価格が変動するなどの問題を有している。そのため、Dyなどの重希土類元素をできるだけ使用せずに(使用量をできるだけ少なくして)R−T−B系焼結磁石のHcJを向上させる技術が求められている。
特許文献1には、通常のR−T−B系合金よりもBの含有量を低くするとともに、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属元素Mを含有させることによりR17相を生成させ、該R17相を原料として生成させた遷移金属リッチ相(R13M)の体積率を充分に確保することにより、Dyの含有量を抑制しつつ、保磁力HcJの高いR−T−B系焼結磁石が得られることが記載されている。
国際公開第2013/008756号
特許文献1に記載されているようなDyの含有量の少ないR−T−B系焼結磁石において、さらなる磁気特性の向上が模索されている。本開示は、Dyの含有量を抑制したまま、高いBと高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の態様1は、
少なくともR、B、GaおよびTを含み、
R:27.0質量%以上35.0質量%以下であり、Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1つを含んでおり、
B:0.80質量%以上0.93質量%以下であり、
Ga:0.15質量%以上1.0質量%以下であり、
T:61.5質量%以上70.0質量%以下(TはFe又はFeとCoであり、Tの90質量%以上がFeである)であり、かつ下記式(1)を満たすR−T−B系焼結磁石素材を準備する工程と、

14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)

前記R−T−B系焼結磁石素材を、400℃以上600℃以下の熱処理温度で、10秒以上30分未満の保持時間で保持して熱処理する熱処理工程と、を含む、R−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本発明の態様2は、
前記熱処理工程における前記保持時間が10秒以上10分以下である、態様1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本発明の態様3は、
前記熱処理工程における前記保持時間が10秒以上3分以下である、態様1又は2に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本開示の製造方法よれば、Dyの含有量を抑制したまま、高いBと高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することができる。
R−T−B系焼結磁石は、焼結後に熱処理を行うことでHcJが向上することが一般的に知られている。HcJが最大値をとるためには、最適の熱処理温度に達した後、その熱処理温度で、最低でも1.5時間〜3時間程度保持する必要であると考えられていた。そのため、R−T−B系焼結磁石の磁気特性(特にHcJ)を十分発揮させるために、保持時間を通常は1.5時間以上として熱処理が行われていた。また、B及びHcJの関係はトレードオフの関係にある。そのため通常、保持時間が短いと(例えば5分)Bの値は高いが、HcJの値は大幅に低下する。そして、保持時間を長くすると(例えば3時間)HcJの値は高く、HcJの向上に伴いBの値は低下する。
しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、特許文献1に記載されるような、Bの含有量がR14B化合物の化学量論組成比よりも少なく、かつ、Gaを含有するR−T−B系焼結磁石においては、全く意外なことに保持時間を30分未満と極めて短時間として熱処理を行うことにより、HcJを向上できることを見いだした。また、保持時間を長くしていくと、B及びHcJが両方とも低下していくことがわかった。すなわち、Bの含有量がR14B化合物の化学量論組成比よりも少なく、かつ、Gaを含有するR−T−B系焼結磁石においては、保持時間が30分未満(好ましくは10分以下、さらに好ましくは3分以下)の時にB及びHcJの両方で極大値又は極大値に近い値を示すことがわかった。この知見に基づいて、本発明者らは、本発明に係るR−T−B系焼結磁石の製造方法を完成するに至った。
以下に本発明の実施形態に係る製造方法について詳述する。
なお、本発明において、特定条件の熱処理(400℃以上600℃以下の温度で10秒以上30分未満の保持時間で保持する熱処理)が完了する前の段階にある材料を「R−T−B系焼結磁石素材」または単に「焼結磁石素材」という。R−T−B系焼結磁石素材を、上記の特定条件の熱処理を行った後に得られる材料を「R−T−B系焼結磁石」または単に「焼結磁石」という。つまり、本明細書では、上記の特定条件の熱処理を行う前の材料、および当該熱処理を行っている途中の材料を、「R−T−B系焼結磁石素材」と称する。
<R−T−B系焼結磁石の製造方法>
本発明に係るR−T−B系焼結磁石の製造方法を説明する。
R−T−B系焼結磁石の製造方法は、所定の組成を有するR−T−B系焼結磁石素材を準備する工程と、前記R−T−B系焼結磁石素材を特定の条件で熱処理する熱処理工程とを含んでいる。
以下、各工程について説明する。
(1)R−T−B系焼結磁石素材を準備する工程
本開示におけるR−T−B系焼結磁石素材は、少なくともR、B、GaおよびTを含み、それらの組成は、以下の規定を満たす。
(Rの含有量:27.0質量%以上35.0質量%以下)
Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1つを含む。Rの含有量は、27.0質量%以上35.0質量%以下である。Rの含有量が27.0質量%未満であると焼結時の緻密化が困難となるおそれがあり、35.0質量%を超えると主相比率が低下して高いBを得られないおそれがある。Rの含有量は、好ましくは29.5質量%以上33.0質量%以下である。Rがこのような範囲であれば、より高いBを得ることができる。
(Bの含有量:0.80質量%以上0.93質量%以下)
焼結磁石素材中のBの含有量は、0.80質量%以上0.93質量%以下であり、かつ後述する式(1)を満たす。Bの含有量が0.80質量%未満であるとR17相が生成されて高いHcJが得られないおそれがあり、0.93質量%を超えるとR−T−Ga相の生成量が少なすぎて高いHcJが得られないおそれがある。Bの含有量は、より好ましくは0.88質量%以上0.90質量%以下であり、より高いHcJ向上効果が得られる。
(Gaの含有量:0.15質量%以上1.0質量%以下)
Gaの含有量は、0.15質量%以上1.0質量%以下である。Gaが0.15質量%未満であると、R−T−Ga相の生成量が少なすぎて、R17相を消失させることができず、高いHcJを得ることができないおそれがあり、1.0質量%を超えると不要なGaが存在することになり、主相比率が低下してBが低下するおそれがある。好ましくは、Gaの含有量は0.2質量%以上0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以上0.6質量%以下である。より高いBと高いHcJを得ることができる。
(Tの含有量:61.5質量%以上70.0質量%以下)
Tは、Fe又はFeとCoであり、Tの90質量%以上がFeである。Coを含有することにより耐食性を向上させることができるが、Coの置換量がTの10質量%を超えると、高いBが得られないおそれがある。Tの含有量は、61.5質量%以上70.0質量%以下であり、且つ、上述した式(1)を満足する。Tの含有量が61.5質量%未満であると、大幅にBが低下する恐れがある。
焼結磁石素材中のTの含有量は、Bの含有量との間で、以下の式(1)を満たす。

14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)

式(1)を満足することにより、Bの含有量が一般的なR−T−B系焼結磁石よりも少なくなる。一般的なR−T−B系焼結磁石は、主相であるR14B相以外に軟磁性相であるR17相が生成しないように、[T]/55.85(Feの原子量)は14[B]/10.8(Bの原子量)よりも少ない組成となっている([T]は、質量%で示すTの含有量である)。本発明のR−T−B系焼結磁石は、一般的なR−T−B系焼結磁石と異なり、[T]/55.85が14[B]/10.8よりも多くなるように式(1)で規定している。なお、本発明のR−T−B系焼結磁石におけるTの主成分はFeであるため、Feの原子量を用いた。
(残部)
焼結磁石素材の好ましい1つの態様は、残部がTおよび不可避不純物である。つまり、Tが式(1)を満たす限りにおいて、Tと不可避不純物とが残部を構成してもよい。
不可避不純物としては、ジジム合金(Nd−Pr)、電解鉄、フェロボロンなどに通常含有されるCr、Mn、Si、La、Ce、Sm、Ca、Mgなどを含有することができる。さらに、製造工程中の不可避的不純物として、O(酸素)、N(窒素)およびC(炭素)などを例示できる。
焼結磁石素材の更に別の好ましい態様では、本発明の目的を達成する範囲内で、任意のその他の元素を更に含んでもよい。そのように選択的に含有させることができるその他の元素を以下に例示する。
(Cu:0質量%超、1.0質量%以下)
Cuを適量含むことにより、HcJをさらに向上させることができる。
Cuは、1.0質量%以下で含まれてもよい。Cuの含有量は、好ましくは0.05〜0.50質量%である。Cuを0.05質量%〜0.50質量%で含有すると、HcJをさらに向上させることができる。
(Al:0質量%超、1.0質量%以下)
Alを適量含むことにより、HcJをさらに向上させることができる。
Alは、1.0質量%以下で含まれてもよい。Alの含有量は、好ましくは0.05〜0.50質量%である。Alを0.50質量%以下で含有すると、HcJをさらに向上させることができる。Alは通常、製造工程で不可避的不純物として0.05質量%以上含有され得るが、不可避的不純物で含有される量と意図的に添加した量の合計で1.0質量%以下含有してもよい。Alの含有量は、より好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下である。
(その他の元素)
また、焼結磁石素材は、上述した元素の他にも、1種以上の他の元素(不可避的不純物以外の意図的に加えた元素)を含んでもよい。例えば、このような元素として、少量(各々0.1質量%程度)のAg、Zn、In、Sn、Ti、Ge、Y、H、F、P、S、V、Ni、Mo、Hf、Ta、W、Nb、Zrなどを含有してもよい。また、上述した不可避的不純物として挙げた元素を意図的に加えてもよい。このような元素は、合計で例えば1.0質量%程度含まれてもよい。この程度であれば、高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることが十分に可能である。
前記組成を有するR−T−B系焼結磁石素材は、以下の工程(i)〜(iii)によって準備することができる。つまり、焼結磁石素材を準備する工程は、以下の工程(i)〜(iii)を含むことができる。なお、工程(i)〜(iii)は、焼結磁石素材を製造できる一例に過ぎず、本発明をこれに限定するものではない。
また、焼結磁石素材を準備する工程は、工程(i)〜(iii)に加えて、さらに、高温加熱工程(工程(iv))や拡散工程(工程(v))を含んでいてもよい。
(i)合金粉末を準備する工程
前記組成となるようにそれぞれの元素の金属または合金を準備し、これらをストリップキャスティング法等を用いてフレーク状の合金を製造する。
得られたフレーク状の合金を水素粉砕し、粗粉砕粉のサイズを例えば1.0mm以下とする。次に、粗粉砕粉をジェットミル等により微粉砕することで、例えば粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られた値(メジアン径))が3〜7μmの微粉砕粉(合金粉末)を得る。なお、ジェットミル粉砕前の粗粉砕粉、ジェットミル粉砕中およびジェットミル粉砕後の合金粉末に助剤として公知の潤滑剤を使用してもよい。
(ii)成形工程
得られた合金粉末を用いて磁界中成形を行い、成形体を得る。磁界中成形は、金型のキャビティー内に乾燥した合金粉末を挿入し、磁界を印加しながら成形する乾式成形法、金型のキャビティー内に該合金粉末を分散させたスラリーを注入し、スラリーの分散媒を排出しながら成形する湿式成形法を含む既知の任意の磁界中成形方法を用いてよい。
(iii)焼結工程
成形工程で得られた成形体を焼結することにより、R−T−B系焼結磁石素材が得られる。成形体の焼結は既知の方法(例えば、焼結温度1000℃〜1090℃で焼結時間1時間〜10時間程度)を用いることができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、焼結は真空雰囲気中または不活性ガス中で行うことが好ましい。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
(iv)高温加熱工程
焼結工程で得られた焼結磁石素材に、さらに、700℃以上焼結温度以下の比較的高い温度で加熱する高温加熱工程を行ってもよい。高温加熱工程を行うことにより、より高いHcJを有する焼結磁石を得ることができる。高温加熱工程における加熱時間は、1.5時間以上が好ましい。
(v)拡散工程
焼結工程で得られた焼結磁石素材、または高温加熱工程を行った後の焼結磁石素材に、さらに、拡散工程を行ってもよい。拡散工程は、既知の拡散源及び拡散方法を用いて行うことができる。例えば、特開2008−147634号公報には、DyおよびTb等を含有する粉末を、焼結体表面(R−T−B系焼結磁石素材の表面)に存在させた状態で、焼結温度よりも低い温度で加熱することで、前記粉末からDyおよびTb等を焼結体に拡散させる方法が開示されている。また、WO2018/143230には、R−T−B系焼結磁石素材表面の少なくとも一部に、R−Ga合金の少なくとも一部を接触させ、700℃以上950℃以下の温度で第一の熱処理を実施することで、R及びGaを磁石内部へ拡散させる方法が開示されている。
焼結工程後(または、高温加熱工程および/または拡散工程後)のR−T−B系焼結磁石素材に機械加工を施してから熱処理工程を行ってもよい。
(2)熱処理工程
焼結磁石素材を準備する工程で得られた焼結磁石素材に対し、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行う。熱処理温度は400℃以上600℃以下とする。熱処理温度が400℃未満または600℃超だと、HcJ及びBの向上効果が得られない。熱処理温度の測定方法としては、熱処理炉内のR−T−B系焼結磁石素材に熱電対を接触させて温度を測定することが好ましい。また、簡易的には、あらかじめ、熱処理炉内の温度と熱処理炉内に置かれた別のR−T−B系焼結磁石素材の温度とを熱電対により同時に測定することで、熱処理炉内の温度と熱処理炉内のR−T−B系焼結磁石素材の温度との対応関係を調査しておき、その対応関係に基づいて、熱処理炉内の温度から熱処理炉内のR−T−B系焼結磁石素材の温度を読み取ってもよい。
R−T−B系焼結磁石素材が熱処理温度に到達した後、その熱処理温度で10秒以上30分未満の時間で保持する。本実施形態に係る製造方法は、この保持時間が従来よりも極めて短い点に特徴がある。
上述したように、焼結して得られた焼結磁石素材に熱処理を行うことで、最終製品としてのR−T−B系焼結磁石のHcJを向上できることは、従来から知られていた。R−T−B系焼結磁石のHcJを最大値にするためには、最適の熱処理温度で、1.5時間〜3時間程度またはそれ以上の保持時間で保持する必要があると考えられていた。また、Bは、保持時間10秒程度で最大値に達し、保持時間をさらに長くしていくとHcJの向上に伴い低下していくと考えられていた。保持時間が短いとHcJが大きく低下するため、従来は、保持時間を1.5時間以上として熱処理を行っていた。
しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、Bの含有量がR14B化合物の化学量論組成比よりも少なく、かつ、Gaを含有するR−T−B系焼結磁石素材では、熱処理時の保持時間を非常に短時間にすることにより、高いBと高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石が得られることが分かった。本実施形態で規定した組成を有するR−T−B系焼結磁石素材では、R−T−B系焼結磁石のHcJが最大になる保持時間は、保持時間10秒以上30分未満の範囲に存在することが分かった。そこで、本実施形態では、熱処理時の保持時間を10秒以上30分未満と定めた。
保持時間は、10秒以上25分以下が好ましく、10秒以上10分以下がさらに好ましく、10秒以上5分以下であるのがさらに好ましく、10秒以上3分以下がさらに好ましい。より高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を製造することができる。
熱処理工程中に、雰囲気中の酸素による酸化を抑制するために、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で熱処理することが好ましい。不活性ガスとしては、例えばヘリウム、アルゴンなどを用いることができる。
最終的な製品形状にするなどの目的で、得られた焼結磁石に研削などの機械加工を施してもよい。その場合、熱処理は機械加工前でも機械加工後でもよい。さらに、得られた焼結磁石に表面処理を施してもよい。表面処理は既知の表面処理であってもよく、例えばAl蒸着や電気Niめっきや樹脂塗料などの表面処理を行うことができる。
このようにして得られるR−T−B系焼結磁石は、高いHcJおよびBを有している。なお、R−T−B系焼結磁石の組成は、上記のR−T−B系焼結磁石素材と実質的に同じ組成となる。
本開示を実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はそれらに限定されるものではない。
実験例1
R−T−B系焼結磁石の組成がおよそ表1のNo.1〜No.3の組成になるように(No.2に関しては、拡散後の組成がおよそNo.2の組成となるように考慮して)各元素を秤量し、ストリップキャスト法により鋳造して、急冷合金を作製した。得られた急冷合金に水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、粗粉砕粉100質量%に対して、潤滑剤として0.04質量%のステアリン酸亜鉛を添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50(メジアン径)が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。
得られた合金粉末を分散媒と混合しスラリーを作製した。溶媒にはノルマルドデカンを用い、潤滑剤としてカプリル酸メチルを混合した。スラリーの濃度は合金粉末70質量%、分散媒30質量%とし、潤滑剤は合金粉末100質量%に対して0.16質量%とした。前記スラリーを磁界中で成形して成形体を得た。成形時の磁界は0.8MA/mの静磁界で、加圧力は5MPaとした。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
得られた成形体を、真空中、1000℃以上1090℃以下(サンプル毎に焼結による緻密化が十分起こる温度を選定)で4時間焼結して室温まで冷却後、更に真空中、800℃で2時間保持する高温加熱処理を行った後、室温まで急冷してR−T−B系焼結磁石素材(No.1´〜3´)を得た。得られたR−T−B系焼結磁石素材の密度は7.5Mg/m以上であった。
次にNo.2´のR−T−B系焼結磁石素材に対して拡散処理を行った。まず、拡散合金を準備した。拡散合金は、およそ拡散合金の組成がPr:80質量%、Tb:10質量%、Ga:5質量%、Cu:5質量%となるように各元素の原料を秤量しそれらの原料を溶解して、単ロール超急冷法(メルトスピニング法)によりリボンまたはフレーク状の合金を作製した。得られた合金を、乳鉢を用いてアルゴン雰囲気中で粉砕した後、目開き425μmの篩を通過させ、拡散合金(PrTbGaCu合金)を準備した。得られた拡散合金の成分を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定したところ、ほぼ狙い通りの組成(Pr:80質量%、Tb:10質量%、Ga:5質量%、Cu:5質量%)であった。次に、No.2´のR−T−B系焼結磁石素材の表面(全面)に前記拡散合金を散布した。散布量は、R−T−B系焼結磁石素材の100質量%に対して、3.3質量%であった。その後、50Paに制御した減圧アルゴン中で、900℃の温度で3時間加熱する拡散処理を行った。これにより、拡散工程をおこなったR−T−B系焼結磁石素材(No.2´´)を準備した。
次に、No.1´、2´´及び3´のR−T−B系焼結磁石素材に対して表2に示す条件で熱処理を行うことにより、R−T−B系焼結磁石を得た。なお、熱処理温度は、熱処理炉内のR−T−B系焼結磁石素材に熱電対を接触させることにより測定した。
得られたR−T−B系焼結磁石の成分を表1に示す。なお、表1における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、式(1)の充足性を表1に示した。ここで「○」は式(1)を満たしていることを意味し、「×」は式(1)を満たしていないことを意味している。また、得られたR−T−B系焼結磁石のB及びHcJの値を表2に示す。これらB及びHcJの値は、R−T−B系焼結磁石に機械加工を施し、サンプルを7mm×7mm×7mmに加工し、BHトレーサにより測定した。
表2において、高い磁気特性と判断された値に下線を引いた。具体的には、Bが1.40(T)以上、かつ、HcJが1500(kA/m)を満たす場合に、B値およびHcJ値の両方に下線を引いた。BとHcJのいずれか一方でも上記基準を満たさない場合には、いずれの値にも下線を引かなかった。
Figure 2020161787
Figure 2020161787
表2に示す本発明例と比較例について、No.1の5つの焼結磁石の間での比較、No.2の5つの焼結磁石の間での比較、No.4の2つの焼結磁石の間の比較、No.5の2つの焼結磁石の間の比較及びNo.6の2つの焼結磁石の間の比較から、熱処理における保持時間を本発明の範囲にすることで、B及びHcJの両方が、その組成で得られる極大値又は極大値に近い値を示すことが分かる。これに対し、R−T−B系焼結磁石の組成が本発明の組成範囲からはずれているNo.3(B量及び式(1)が範囲外)は、本発明の保持時間(5分)ではHcJが大幅に低下している。一方、同じ組成のNo.3について、保持時間を長く(180分)すると、HcJは向上するものの、HcJの向上にともないBが低下している。また、表2に示すように、より高いBと高いHcJを得るには、熱処理における保持時間は、10分以下が好ましく、5分以下がさらに好ましく、3分以下がさらに好ましい。

Claims (3)

  1. 少なくともR、B、GaおよびTを含み、
    R:27.0質量%以上35.0質量%以下であり、Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択された少なくとも1つを含んでおり、
    B:0.80質量%以上0.93質量%以下であり、
    Ga:0.15質量%以上1.0質量%以下であり、
    T:61.5質量%以上70.0質量%以下(TはFe又はFeとCoであり、Tの90質量%以上がFeである)であり、かつ下記式(1)を満たすR−T−B系焼結磁石素材を準備する工程と、

    14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
    ([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)

    前記R−T−B系焼結磁石素材を、400℃以上600℃以下の熱処理温度で、10秒以上30分未満の保持時間で保持して熱処理する熱処理工程と、を含む、R−T−B系焼結磁石の製造方法。
  2. 前記熱処理工程における前記保持時間が10秒以上10分以下である、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  3. 前記熱処理工程における前記保持時間が10秒以上3分以下である、請求項1又は2に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
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