以下、複数の実施形態によるバルブタイミング調整装置を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位は、同一または同様の作用効果を奏する。
(第1実施形態)
第1実施形態のバルブタイミング調整装置およびその一部を図1〜5に示す。バルブタイミング調整装置10は、例えば車両に搭載され、内燃機関としてのエンジン1のクランク軸2に対するカム軸3の回転位相を変化させることによって、カム軸3が開閉駆動する吸気弁4または排気弁5のうち吸気弁4のバルブタイミングを調整するものである。バルブタイミング調整装置10は、クランク軸2からカム軸3までの動力伝達経路に設けられている。クランク軸2は、「駆動軸」に対応する。カム軸3は、「従動軸」に対応する。吸気弁4、排気弁5は、「バルブ」に対応する。
バルブタイミング調整装置10の構成について図1、2に基づき説明する。バルブタイミング調整装置10は、位相変換部PCおよび作動油制御部OC等を備えている。
位相変換部PCは、ハウジング20、ベーンロータ30を有している。ハウジング20は、ギア部21およびケース22を有している。ケース22は、筒部221、板部222、223を有している。筒部221は、筒状に形成されている。板部222は、筒部221の一端を塞ぐよう設けられている。板部223は、筒部221の他端を塞ぐよう設けられている。これにより、ハウジング20の内側に空間200が形成されている。板部222、板部223は、ボルト12により筒部221に固定されている。ギア部21は、板部223の外縁部に形成されている。
板部223は、カム軸3の端部に嵌合している。カム軸3は、ハウジング20を回転可能に支持している。ギア部21とクランク軸2とには、チェーン6が巻き掛けられている。ギア部21は、クランク軸2と連動して回転する。ケース22は、筒部221から径方向内側に突き出す複数の隔壁部23を形成している。ケース22の板部222の中央には、ケース22の外側の空間に開口する開口部24が形成されている。開口部24は、ベーンロータ30に対してカム軸3とは反対側に位置する。
ベーンロータ30は、ボス31、および、複数のベーン32を有している。ボス31は、筒状であり、カム軸3の端部に固定される。ベーン32は、ボス31から径方向外側に向かって各隔壁部23間に突き出している。ハウジング20の内側の空間200は、ベーン32により遅角室201と進角室202とに仕切られている。すなわち、ハウジング20は、ベーンロータ30との間に遅角室201および進角室202を形成している。遅角室201は、ベーン32に対して周方向の一方に位置している。進角室202は、ベーン32に対して周方向の他方に位置している。ベーンロータ30は、遅角室201および進角室202に供給される流体としての作動油の油圧に応じて、ハウジング20に対して遅角方向または進角方向へ相対回転する。ここで、遅角室201および進角室202は、流体供給対象としての「油圧室」に対応する。
このように、位相変換部PCは、遅角室201および進角室202を有し、作動油供給源OSとしてのオイルポンプ8から遅角室201および進角室202に供給される作動油によりクランク軸2とカム軸3との回転位相を変換し、吸気弁4のバルブタイミングを調整可能である。
位相変換部PCは、クランク軸2と連動して回転するハウジング20、ハウジング20との間に遅角室201および進角室202を形成しカム軸3に固定されてカム軸3と一体に回転するベーンロータ30、および、ベーンロータ30の中央に形成されたロータ穴部300を有している。ロータ穴部300は、ボス31を軸方向に貫くよう形成されている。
ベーンロータ30は、ロータ凹部310を有している。ロータ凹部310は、ボス31のカム軸3側の端面から円形に凹むよう形成されている。ロータ凹部310の内径は、カム軸3の端部の外径と略同じに設定されている。バルブタイミング調整装置10は、カム軸3の端部がロータ凹部310に嵌合するようにしてカム軸3に取り付けられる。これにより、ベーンロータ30は、カム軸3に対する径方向の位置が安定する。
作動油制御部OCとしての作動油制御弁11は、作動油供給源OSと遅角室201とを接続する遅角供給油路RRs、および、作動油供給源OSと進角室202とを接続する進角供給油路RAsを流れる作動油を制御することで、遅角室201および進角室202に供給される作動油の流れを制御可能である。
図3に示すように、作動油制御弁11は、バルブボディ40、スリーブ50、スプール61、クリアランス形成部としての第1クリアランス形成部71等を有している。
バルブボディ40は、バルブボディ本体41、ロータ係止部42、係止部44、封止部45、導入ポート401、再導入ポート402、遅角ポート411、進角ポート412、被係合部46等を有している。
バルブボディ本体41は、例えば金属により、略円筒状に形成されている。バルブボディ本体41の一端の外周壁には、ねじ部43が形成されている。
ロータ係止部42は、バルブボディ本体41の他端側に設けられている。ロータ係止部42は、バルブボディ本体41の他端の外周壁から径方向外側へ延びるよう筒状に形成されている。ロータ係止部42のねじ部43とは反対側の外周壁は、例えば六角筒状に形成されている。
係止部44は、例えば金属により環状の板状に形成され、外縁部がバルブボディ本体41の他端の内周壁に嵌合するよう設けられている。封止部45は、例えば金属により円形の板状に形成され、外縁部がバルブボディ本体41の内周壁に嵌合するようバルブボディ本体41の内側に設けられている。
カム軸3のバルブタイミング調整装置10側の端部には、ボルト孔100、供給穴部101が形成されている。ボルト孔100は、カム軸3のバルブタイミング調整装置10側の端面の中央からカム軸3の軸方向に延びるようにして形成されている。供給穴部101は、カム軸3の外周壁から径方向内側に延びてボルト孔100に連通するよう形成されている(図1参照)。
カム軸3のボルト孔100の内周壁には、バルブボディ本体41のねじ部43にねじ結合可能な軸側ねじ部110が形成されている。バルブボディ本体41は、ロータ穴部300に挿通し、ねじ部43が軸側ねじ部110にねじ結合することで、一端がボルト孔100に螺合する。このとき、ロータ係止部42は、ベーンロータ30のボス31のカム軸3とは反対側の面のロータ穴部300の径方向外側の部位を係止し、カム軸3との間にベーンロータ30を締め付け固定する。このように、バルブボディ40は、ベーンロータ30の中央に形成されたロータ穴部300に設けられる。
導入ポート401は、ねじ部43と封止部45との間において、バルブボディ本体41の内周壁と外周壁とを接続するよう形成されている。導入ポート401は、例えばバルブボディ本体41の周方向に等間隔で4つ形成されている。
再導入ポート402は、封止部45と係止部44との間において、バルブボディ本体41の内周壁と外周壁とを接続するよう形成されている。再導入ポート402は、例えばバルブボディ本体41の周方向に等間隔で4つ形成されている。
遅角ポート411は、再導入ポート402と係止部44との間において、バルブボディ本体41の内周壁と外周壁とを接続するよう形成されている。遅角ポート411は、例えばバルブボディ本体41の周方向に等間隔で4つ形成されている。
進角ポート412は、封止部45と再導入ポート402との間において、バルブボディ本体41の内周壁と外周壁とを接続するよう形成されている。進角ポート412は、例えばバルブボディ本体41の周方向に等間隔で4つ形成されている。
このように、バルブボディ本体41の軸方向において、導入ポート401、進角ポート412、再導入ポート402、遅角ポート411は、この順で形成されている。導入ポート401と再導入ポート402とは、バルブボディ本体41の周方向において、同じ位置に形成されている。遅角ポート411と進角ポート412とは、バルブボディ本体41の周方向において、同じ位置に形成されている。導入ポート401および再導入ポート402は、バルブボディ本体41の周方向において、隣り合う遅角ポート411および進角ポート412の間に形成されている(図4参照)。
被係合部46は、遅角ポート411とロータ係止部42との間において、バルブボディ本体41の外周壁から径方向内側へ円形に凹むよう形成されている(図3参照)。
スリーブ50は、ベーンロータ30およびカム軸3より硬度の低い材料である、例えば樹脂により、略円筒状に形成されている。スリーブ50は、バルブボディ40のねじ部43とロータ係止部42との間において、バルブボディ本体41の径方向外側に設けられている。ここで、スリーブ50のねじ部43側の端部は、導入ポート401に対しロータ係止部42側に位置している(図3参照)。
ここで、バルブボディ本体41のねじ部43側の端部の外径は、スリーブ50の内径より大きい(図3参照)。そのため、筒状のスリーブ50を、バルブボディ本体41のねじ部43側の端部側から挿入し、ねじ部43とロータ係止部42との間に位置させることはできない。
スリーブ50は、第1スリーブ51、第2スリーブ52からなる。第1スリーブ51、第2スリーブ52は、それぞれ、軸に垂直な断面の形状が半円弧状になるよう形成されている。第1スリーブ51と第2スリーブ52とは、周方向の両端部が接合することにより、略円筒状のスリーブ50を形成する。すなわち、スリーブ50は、周方向に2つに分割されている。
スリーブ50は、流路部500、遅角穴部511、進角穴部512、係合部53等を有している。
流路部500は、スリーブ50の内周壁から径方向外側へ凹み、ねじ部43側の端部から軸方向に延びるよう形成されている。流路部500は、例えばスリーブ50の周方向に等間隔で4つ形成されている。4つの流路部500は、ねじ部43とは反対側の端部が、バルブボディ40の4つの再導入ポート402のそれぞれに連通するよう形成されている(図3参照)。また、4つの流路部500は、ねじ部43側の端部が、バルブボディ40の4つの導入ポート401のそれぞれに連通している。
遅角穴部511は、スリーブ50の内周壁と外周壁とを接続するよう形成されている。遅角穴部511は、例えばスリーブ50の周方向に等間隔で4つ形成されている。4つの遅角穴部511は、バルブボディ40の4つの遅角ポート411のそれぞれに連通するよう形成されている(図3参照)。遅角穴部511は、遅角室201に連通する遅角油路301に接続する。
進角穴部512は、スリーブ50の内周壁と外周壁とを接続するよう形成されている。進角穴部512は、例えばスリーブ50の周方向に等間隔で4つ形成されている。4つの進角穴部512は、バルブボディ40の4つの進角ポート412のそれぞれに連通するよう形成されている(図3参照)。進角穴部512は、スリーブ50の周方向において隣り合う流路部500の間に形成されている(図4参照)。進角穴部512は、進角室202に連通する進角油路302に接続する。
係合部53は、スリーブ50のロータ係止部42側の端部の内周壁から径方向内側へ略円柱状に突出するよう第1スリーブ51に形成されている。スリーブ50は、係合部53がバルブボディ本体41の被係合部46に係合するようバルブボディ本体41の外側に設けられている。これにより、スリーブ50は、バルブボディ本体41に対する径方向および軸方向の位置決めがなされている。
スプール61は、例えば金属により略円筒状に形成されている。スプール61は、スプール溝部611、スプール溝部612、ドレン穴部601等を有している。
スプール溝部611は、スプール61の周方向の全範囲において外周壁から径方向内側へ凹み、一端から軸方向へ延びるよう形成されている。スプール溝部612は、スプール61の周方向の全範囲において外周壁から径方向内側へ凹むよう、スプール溝部611から軸方向へ所定距離離れた位置に形成されている(図3参照)。
ドレン穴部601は、スプール61の内周壁とスプール溝部611とを接続するよう形成されている。ドレン穴部601は、例えばスプール61の周方向に等間隔で複数形成されている。
スプール61は、バルブボディ本体41の内側において軸方向に往復移動可能に設けられている。ここで、スプール61の外周壁は、バルブボディ本体41の内周壁と摺動可能である。
スプール61のスプール溝部611側の端部には、ドレンプラグ62が設けられている。ドレンプラグ62は、例えば金属により形成されている。ドレンプラグ62は、プラグ筒部621、フランジ部622、ドレン穴部602を有している。
プラグ筒部621は、例えば有底筒状に形成されている。フランジ部622は、プラグ筒部621の底部とは反対側の端部の外周壁から径方向外側へ延びるよう環状に形成されている。ドレン穴部602は、プラグ筒部621の内周壁と外周壁とを接続するよう形成されている。ドレン穴部602は、例えばプラグ筒部621の周方向に等間隔で複数形成されている。
ドレンプラグ62は、プラグ筒部621のフランジ部622側の端部の内周壁がスプール61のスプール溝部611の端部に嵌合するようスプール61と一体に設けられている。
ドレンプラグ62は、フランジ部622のプラグ筒部621側の面の外縁部が係止部44の内縁部に当接可能に設けられている。ドレンプラグ62のフランジ部622とバルブボディ本体41の内壁との間には、スプリング63が設けられている。スプリング63は、例えばコイルスプリングであり、一端がフランジ部622に当接し、他端がバルブボディ本体41の内壁に当接している。スプリング63は、フランジ部622をスプール61とともに係止部44側へ付勢している。これにより、フランジ部622は、係止部44に押し付けられる。
スプール61は、フランジ部622が係止部44に当接したとき、軸方向の移動が規制される。また、スプール61は、フランジ部622が、バルブボディ本体41の内壁に形成された段差部413に当接したとき、軸方向の移動が規制される。すなわち、スプール61は、フランジ部622が係止部44または段差部413と当接する範囲で、軸方向に往復移動可能である。
フランジ部622が係止部44に当接しているとき(図3参照)、スプール溝部612と再導入ポート402および遅角ポート411とが連通する。フランジ部622が段差部413に当接しているとき、スプール溝部612と再導入ポート402および進角ポート412とが連通する。フランジ部622が係止部44と段差部413との中間位置に位置するとき、遅角ポート411および進角ポート412は、スプール61の外周壁により塞がれる。
第1クリアランス形成部71は、被係合部46とロータ係止部42との間において、バルブボディ本体41の外周壁から径方向外側へ延びるよう略円筒状に、バルブボディ本体41と一体に形成されている(図3参照)。第1クリアランス形成部71の外径は、ロータ穴部300の内径と略同じである。そのため、第1クリアランス形成部71の外周壁は、ロータ穴部300に嵌合する。ロータ穴部300の内径とボルト孔100の内径とは同じである。スリーブ50の外径は、ロータ穴部300の内径、ボルト孔100の内径、および、第1クリアランス形成部71の外径より小さい。そのため、バルブタイミング調整装置10がカム軸3に取り付けられた状態において、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間には、筒状のクリアランスC1が形成される。
このように、第1クリアランス形成部71は、外周壁がロータ穴部300に嵌合するようバルブボディ本体41に設けられ、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1を形成可能である。
図5に示すように、スリーブ50の外径をD1、第1クリアランス形成部71の外径をD2とすると、スリーブ50および第1クリアランス形成部71は、D1<D2となるよう形成されている。
上記構成により、バルブボディ本体41をカム軸3のボルト孔100に螺合してバルブタイミング調整装置10をカム軸3に取り付けるとき、特にねじ部43を軸側ねじ部110にねじ結合するとき、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1が形成される。これにより、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300またはボルト孔100の内周壁とが接触するのを抑制し、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300またはボルト孔100の内周壁との間に締結トルクによる摩擦力が生じるのを抑制できる。
作動油供給源OSとしてのオイルポンプ8は、オイル排出部ODとしてのオイルパン7に貯留されている作動油を汲み上げ、供給穴部101に供給する。これにより、ボルト孔100には、作動油が流入する。
フランジ部622が係止部44に当接しているとき(図3参照)、供給穴部101からボルト孔100に流入した作動油は、バルブボディ本体41のねじ部43の内側、導入ポート401、流路部500、再導入ポート402、スプール溝部612、遅角ポート411、遅角穴部511、遅角油路301を経由して遅角室201側に流れることができる。このとき、導入ポート401、流路部500、再導入ポート402、スプール溝部612、遅角ポート411、遅角穴部511、遅角油路301を経由して、オイルポンプ8と遅角室201との間に遅角供給油路RRsが形成される。また、このとき、進角室202の作動油は、進角油路302、進角穴部512、進角ポート412、スプール61の内側、ドレン穴部602を経由してオイルパン7に流れることができる。
フランジ部622が段差部413に当接しているとき、供給穴部101からボルト孔100に流入した作動油は、バルブボディ本体41のねじ部43の内側、導入ポート401、流路部500、再導入ポート402、スプール溝部612、進角ポート412、進角穴部512、進角油路302を経由して進角室202側に流れることができる。このとき、導入ポート401、流路部500、再導入ポート402、スプール溝部612、進角ポート412、進角穴部512、進角油路302を経由して、オイルポンプ8と進角室202との間に進角供給油路RAsが形成される。また、このとき、遅角室201の作動油は、遅角油路301、遅角穴部511、遅角ポート411、スプール溝部611、ドレン穴部601、スプール61の内側、ドレン穴部602を経由してオイルパン7に流れることができる。
図1に示すように、ドレンプラグ62のスプール61とは反対側には、リニアソレノイド9が設けられる。リニアソレノイド9は、ドレンプラグ62に当接するようにして設けられる。リニアソレノイド9は、通電により、ドレンプラグ62を介してスプール61をスプリング63の付勢力に抗してカム軸3側へ押圧する。これにより、スプール61は、バルブボディ本体41に対する軸方向の位置が変化する。
リニアソレノイド9のコネクタには、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)13が接続される。ECU13は、例えばCPU等の演算部、メモリ等の記憶部、I/O等の入出力部等を備え、車両に設けられた各種センサからの情報等に基づき、車両の各装置および各機器の作動を制御する。ECU13は、エンジン1の運転状況等に応じてリニアソレノイド9への通電を制御し、バルブタイミング調整装置10の作動を制御する。
本実施形態は、ロックピン33をさらに備えている(図1、2参照)。ロックピン33は、有底円筒状に形成され、ベーン32に形成された収容穴部321に軸方向に往復移動可能に収容されている。ロックピン33の内側には、スプリング34が設けられている。スプリング34は、ロックピン33を板部223側へ付勢している。板部223のベーン32側には、嵌入凹部25が形成されている。
ロックピン33は、ハウジング20に対しベーンロータ30が最遅角位置にあるとき、嵌入凹部25に嵌入可能である。ロックピン33が嵌入凹部25に嵌入しているとき、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が規制される。一方、ロックピン33が嵌入凹部25に嵌入していないとき、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が許容される。
ベーン32のロックピン33と遅角室201との間には、遅角室201に連通するピン制御油路(図示せず)が形成されている。遅角室201からピン制御油路に流入する作動油の圧力は、ロックピン33がスプリング34の付勢力に抗して嵌入凹部25から抜け出す方向に働く。
以上のように構成されたバルブタイミング調整装置10では、遅角室201に作動油が供給されると、ピン制御油路に作動油が流入し、ロックピン33が嵌入凹部25から抜け出し、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が許容された状態となる。
次に、バルブタイミング調整装置10の作動について説明する。ECU13は、リニアソレノイド9の駆動を制御し、バルブタイミング調整装置10の作動を制御する。
例えば、車両のイグニッションスイッチをオフ操作し、エンジン1を停止させた場合、リニアソレノイド9への通電も停止される。そのため、スプール61は、スプリング63の付勢力により、フランジ部622が係止部44に当接する位置に保持される(図3参照)。このとき、進角ポート412は、スプール61の外周壁により塞がれておらず、スプール61の内側の空間に連通する。そのため、進角室202の作動油は、進角油路302、進角穴部512、進角ポート412、スプール61の内側、ドレン穴部602を経由してオイルパン7に排出される。これにより、進角室202は低圧になる。
また、このとき、スプール溝部612と再導入ポート402および遅角ポート411とが連通し(図3参照)、オイルポンプ8と遅角室201との間に遅角供給油路RRsが形成される。
エンジン1の停止時は、オイルポンプ8の作動も停止されるため、遅角室201、進角室202には作動油は供給されない。そのため、ベーンロータ30は、カム軸3に作用する交番トルクの負のトルクによって、ハウジング20に対し遅角方向に相対回転する(図2参照)。これにより、ベーンロータ30が最遅角位置に位置し、吸気弁4のバルブタイミングは、最遅角の位相に制御される。
なお、このとき、ベーンロータ30が最遅角位置に保持されると、スプリング34の付勢力により、ロックピン33が嵌入凹部25に嵌入する。これにより、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が規制される。
次に、車両のイグニッションスイッチをオン操作してエンジン1を始動させると、オイルポンプ8も作動する。これにより、オイルポンプ8から吐出された作動油は、遅角供給油路RRsを経由して遅角室201に供給される。その結果、遅角室201が高圧になる。したがって、ベーンロータ30が最遅角位置に保持され、吸気弁4のバルブタイミングが最遅角の位相に保持される。よって、エンジン1の始動性が向上する。
また、このとき、遅角室201からピン制御油路に作動油が供給されるものの、クランキング初期の時点では、ピン制御油路の圧力が低く、ロックピン33は、嵌入凹部25に嵌入した状態である。そのため、交番トルクによるベーンロータ30のばたつきを抑制できる。
その後、ピン制御油路の圧力が高くなると、ロックピン33が嵌入凹部25から抜け出し、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が許容される。なお、このとき、進角室202は、低圧の状態が維持されている。
次に、例えばエンジン1がアイドリング運転から定常運転に移行すると、ECU13により、リニアソレノイド9に所定の電力が供給される。これにより、リニアソレノイド9は、スプール61をスプリング63の付勢力に抗してカム軸3側へ押圧する。スプール61がリニアソレノイド9に押圧されると、フランジ部622が係止部44と段差部413との中間位置に位置し、遅角ポート411および進角ポート412は、スプール61の外周壁により塞がれる。
そのため、遅角室201および進角室202の作動油は、オイルパン7へ排出されることなく、オイルポンプ8から遅角室201および進角室202への作動油の供給も規制される。
これにより、ベーンロータ30は、最遅角と最進角との中間位置に保持される(図2参照)。そのため、吸気弁4のバルブタイミングが最遅角と最進角との中間位相に制御される。したがって、定常運転時のエンジン1の回転の安定化および燃費の向上を図ることができる。
次に、例えばエンジン1が定常運転から高回転負荷領域に移行した場合、ECU13により、リニアソレノイド9にさらに大きな電力が供給される。これにより、スプール61がリニアソレノイド9にさらに押圧され、フランジ部622が段差部413に当接する。このとき、スプール溝部612と再導入ポート402および進角ポート412とが連通し、オイルポンプ8と遅角室201との間に進角供給油路RAsが形成される。
このとき、遅角室201の作動油は、遅角油路301、遅角穴部511、遅角ポート411、スプール溝部611、ドレン穴部601、スプール61の内側、ドレン穴部602を経由してオイルパン7に排出される。これにより、遅角室201は低圧になる。
一方、オイルポンプ8から吐出された作動油は、進角供給油路RAsを経由して進角室202に供給される。その結果、進角室202が高圧になる。
そのため、ベーンロータ30は、ハウジング20に対し進角方向に相対回転する(図2参照)。これにより、ベーンロータ30が最進角位置に位置し、吸気弁4のバルブタイミングは、最進角の位相に制御される。よって、排気弁5のバルブオーバーラップが大きくなり、吸気の充填効率が高くなり、エンジン1の出力トルクの向上を図ることができる。
このように、エンジン1の運転状態に応じて、ECU13がリニアソレノイド9への通電を制御し、作動油制御弁11のバルブボディ本体41に対するスプール61の軸方向の位置を制御する。これにより、位相変換部PCを制御し、クランク軸2に対するカム軸3の回転位相を最適な位相に制御できる。
上述のように、本実施形態では、バルブボディ本体41をカム軸3のボルト孔100に螺合してバルブタイミング調整装置10をカム軸3に取り付けた状態では、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1が形成される。しかしながら、バルブタイミング調整装置10の作動時には、作動油の熱等により、樹脂製のスリーブ50が膨潤し、スリーブ50の外径が拡大する。そのため、スリーブ50の外周壁は、ロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁に密着する。これにより、クリアランスC1は、縮小または消失する。よって、クリアランスC1を経由して遅角油路301と進角油路302との間で作動油が流通するのを抑制できる。
また、バルブタイミング調整装置10の作動時、作動油の熱等により、樹脂製のスリーブ50が膨潤し、スリーブ50の内径が縮小する。そのため、スリーブ50の内周壁は、バルブボディ本体41の外周壁に密着する。これにより、スリーブ50の内周壁とバルブボディ本体41の外周壁との間を経由して遅角穴部511と進角穴部512との間で作動油が流通するのを抑制できる。
以上説明したように、<1>本実施形態では、クリアランス形成部としての第1クリアランス形成部71は、外周壁がロータ穴部300に嵌合するようバルブボディ本体41に設けられ、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1を形成可能である。そのため、バルブボディ本体41をカム軸3のボルト孔100に螺合してバルブタイミング調整装置10をカム軸3に取り付けるとき、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300またはボルト孔100の内周壁とが接触するのを抑制し、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300またはボルト孔100の内周壁との間に締結トルクによる摩擦力が生じるのを抑制できる。これにより、スリーブ50の外周壁が摩擦により損傷するのを抑制できる。
また、締結トルクによる摩擦力により、バルブボディ本体41に対しスリーブ50が周方向に位置ずれするのを抑制できる。これにより、遅角ポート411、進角ポート412と遅角穴部511、進角穴部512との位置ずれを抑制し、バルブタイミング調整装置10の制御精度の低下を抑制できる。
また、<2>本実施形態では、スリーブ50の外径をD1、第1クリアランス形成部71の外径をD2とすると、スリーブ50および第1クリアランス形成部71は、D1<D2となるよう形成されている。そのため、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1を確実に形成することができる。
また、<5>本実施形態では、スリーブ50は、周方向に複数に分割されている。そのため、本実施形態のようにバルブボディ本体41のねじ部43側の端部の外径が、スリーブ50の内径より大きい場合でも、スリーブ50をねじ部43とロータ係止部42との間に設けることができる。また、スリーブ50が周方向に複数に分割されているため、スリーブ50の内側等に流路部500等を容易に形成することができる。
また、<6>本実施形態では、スリーブ50は、内周壁に係合部53を有している。バルブボディ本体41は、係合部53に係合可能な被係合部46を外周壁に有している。そのため、バルブボディ本体41に対しスリーブ50が周方向に位置ずれするのを確実に抑制できる。これにより、遅角ポート411、進角ポート412と遅角穴部511、進角穴部512との位置ずれを抑制し、バルブタイミング調整装置10の制御精度の低下をさらに抑制できる。
また、<7>本実施形態では、係合部53は、スリーブ50の内周壁から径方向内側へ突出するよう形成されている。被係合部46は、バルブボディ本体41の外周壁から径方向内側へ凹むよう形成されている。そのため、比較的簡単な構成で、バルブボディ本体41に対するスリーブ50の周方向の位置ずれを確実に抑制できる。
(第2実施形態)
第2実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を図6、7に示す。第2実施形態は、クリアランス形成部の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、作動油制御弁11は、第1クリアランス形成部71に代えて、クリアランス形成部としての第2クリアランス形成部72を有している。
第2クリアランス形成部72は、導入ポート401とねじ部43との間において、バルブボディ本体41の外周壁から径方向外側へ延びるよう略円筒状に、バルブボディ本体41と一体に形成されている(図6参照)。第2クリアランス形成部72の外径は、ボルト孔100の内径と略同じである。そのため、第2クリアランス形成部72の外周壁は、ボルト孔100に嵌合する。ロータ穴部300の内径とボルト孔100の内径とは同じである。スリーブ50の外径は、ロータ穴部300の内径、ボルト孔100の内径、および、第2クリアランス形成部72の外径より小さい。そのため、バルブタイミング調整装置10がカム軸3に取り付けられた状態において、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間には、筒状のクリアランスC1が形成される。
このように、第2クリアランス形成部72は、外周壁がボルト孔100に嵌合するようバルブボディ本体41に設けられ、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1を形成可能である。
図7に示すように、スリーブ50の外径をD1、第2クリアランス形成部72の外径をD3とすると、スリーブ50および第2クリアランス形成部72は、D1<D3となるよう形成されている。
上記構成により、バルブボディ本体41をカム軸3のボルト孔100に螺合してバルブタイミング調整装置10をカム軸3に取り付けるとき、特にねじ部43を軸側ねじ部110にねじ結合するとき、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1が形成される。これにより、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300またはボルト孔100の内周壁とが接触するのを抑制し、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300またはボルト孔100の内周壁との間に締結トルクによる摩擦力が生じるのを抑制できる。
以上説明したように、<3>本実施形態では、クリアランス形成部としての第2クリアランス形成部72は、外周壁がボルト孔100に嵌合するようバルブボディ本体41に設けられている。スリーブ50の外径をD1、第2クリアランス形成部72の外径をD3とすると、スリーブ50および第2クリアランス形成部72は、D1<D3となるよう形成されている。そのため、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1を確実に形成することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を図8、9に示す。第3実施形態は、クリアランス形成部の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、クリアランス形成部は、第1クリアランス形成部71および第2クリアランス形成部72を含む。
第1クリアランス形成部71は、第1実施形態と同様、被係合部46とロータ係止部42との間において、バルブボディ本体41の外周壁から径方向外側へ延びるよう略円筒状に、バルブボディ本体41と一体に形成されている(図8参照)。第1クリアランス形成部71の外径は、ロータ穴部300の内径と略同じである。そのため、第1クリアランス形成部71の外周壁は、ロータ穴部300に嵌合する。
第2クリアランス形成部72は、第2実施形態と同様、導入ポート401とねじ部43との間において、バルブボディ本体41の外周壁から径方向外側へ延びるよう略円筒状に、バルブボディ本体41と一体に形成されている(図8参照)。第2クリアランス形成部72の外径は、ボルト孔100の内径と略同じである。そのため、第2クリアランス形成部72の外周壁は、ボルト孔100に嵌合する。
ロータ穴部300の内径とボルト孔100の内径とは同じである。スリーブ50の外径は、ロータ穴部300の内径、ボルト孔100の内径、第1クリアランス形成部71の外径、および、第2クリアランス形成部72の外径より小さい。そのため、バルブタイミング調整装置10がカム軸3に取り付けられた状態において、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間には、筒状のクリアランスC1が形成される。
このように、クリアランス形成部としての第1クリアランス形成部71および第2クリアランス形成部72は、外周壁がロータ穴部300に嵌合するよう、または、外周壁がボルト孔100に嵌合するようバルブボディ本体41に設けられ、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1を形成可能である。
図9に示すように、スリーブ50の外径をD1、第1クリアランス形成部71の外径をD2、第2クリアランス形成部72の外径をD3とすると、スリーブ50、第1クリアランス形成部71および第2クリアランス形成部72は、D1<D2、D1<D3となるよう形成されている。
上記構成により、バルブボディ本体41をカム軸3のボルト孔100に螺合してバルブタイミング調整装置10をカム軸3に取り付けるとき、特にねじ部43を軸側ねじ部110にねじ結合するとき、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1が形成される。これにより、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300またはボルト孔100の内周壁とが接触するのを抑制し、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300またはボルト孔100の内周壁との間に締結トルクによる摩擦力が生じるのを抑制できる。
なお、本実施形態では、第1クリアランス形成部71と第2クリアランス形成部72とが、間にスリーブ50を挟むようにして設けられるため、スリーブ50の一端から他端にかけて、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1を確実に形成できる。
以上説明したように、<4>本実施形態では、クリアランス形成部は、外周壁がロータ穴部300に嵌合するようバルブボディ本体41に設けられた第1クリアランス形成部71、および、外周壁がボルト孔100に嵌合するようバルブボディ本体41に設けられた第2クリアランス形成部72を含む。スリーブ50の外径をD1、第1クリアランス形成部71の外径をD2、第2クリアランス形成部72の外径をD3とすると、スリーブ50、第1クリアランス形成部71および第2クリアランス形成部72は、D1<D2、D1<D3となるよう形成されている。そのため、スリーブ50の外周壁とロータ穴部300およびボルト孔100の内周壁との間に筒状のクリアランスC1を確実に形成することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を図10、11に示す。第4実施形態は、バルブボディ本体41およびスリーブ50の構成等が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、第1スリーブ51と第2スリーブ52とは、一体に形成されている。すなわち、スリーブ50は、筒状に形成されており、周方向に複数に分割されていない。
係合部53は、第1スリーブ51、第2スリーブ52のそれぞれの内周壁に形成されている。係合部53は、スリーブ50の内周壁から径方向内側へ突出するようスリーブ50の一端から他端にかけて形成されている。係合部53は、スリーブ50の軸Ax1に対し平行な平面状に形成されている。係合部53は、スリーブ50の軸Ax1を間に挟んで互いに平行となるようスリーブ50の周方向に2つ形成されている(図11参照)。
被係合部46は、バルブボディ本体41の外周壁から径方向内側へ凹むよう第1クリアランス形成部71からねじ部43にかけて形成されている。被係合部46は、バルブボディ本体41の軸Ax2に対し平行な平面状に形成されている。被係合部46は、バルブボディ本体41の軸Ax2を間に挟んで互いに平行となるようバルブボディ本体41の周方向に2つ形成されている(図11参照)。
スリーブ50は、2つの係合部53が2つの被係合部46のそれぞれに係合するよう、第1クリアランス形成部71とねじ部43との間において、バルブボディ本体41の径方向外側に設けられている。これにより、スリーブ50は、バルブボディ本体41に対する相対回転が規制されている。
本実施形態では、バルブボディ本体41のねじ部43側の端部の外径は、スリーブ50の内径よりやや小さく形成されている。そのため、筒状のスリーブ50を、バルブボディ本体41のねじ部43側の端部側から挿入し、係合部53と被係合部46とを当接させながら軸方向に移動させ、ねじ部43とロータ係止部42との間に位置させることができる。
以上説明したように、<8>本実施形態では、係合部53は、スリーブ50の軸Ax1に対し平行な平面状に形成されている。被係合部46は、バルブボディ本体41の軸Ax2に対し平行な平面状に形成されている。そのため、筒状のスリーブ50を、バルブボディ本体41のねじ部43側の端部側から挿入し、係合部53と被係合部46とを当接させながら軸方向に移動させ、ねじ部43とロータ係止部42との間に位置させることができる。これにより、スリーブ50を周方向に複数に分割することなく、筒状に形成できる。したがって、部材点数を低減できるとともに、スリーブ50の組付け工数を低減できる。
また、<9>本実施形態では、係合部53は、スリーブ50の軸Ax1を間に挟んで互いに平行となるようスリーブ50の周方向に2つ形成されている。被係合部46は、バルブボディ本体41の軸Ax2を間に挟んで互いに平行となるようバルブボディ本体41の周方向に2つ形成されている。そのため、バルブボディ本体41に対しスリーブ50が周方向に位置ずれするのを確実に抑制できる。
(第5実施形態)
第5実施形態のバルブタイミング調整装置の一部を図12に示す。第5実施形態は、バルブボディ本体41およびスリーブ50の構成等が第4実施形態と異なる。
本実施形態では、係合部53は、第2スリーブ52のみに形成されている。係合部53は、スリーブ50の内周壁から径方向内側へ突出するようスリーブ50の一端から他端にかけて形成されている。係合部53は、スリーブ50の軸Ax1に対し平行な平面状に形成されている。係合部53は、スリーブ50の周方向に1つ形成されている(図12参照)。
被係合部46は、バルブボディ本体41の外周壁から径方向内側へ凹むよう第1クリアランス形成部71からねじ部43にかけて形成されている。被係合部46は、バルブボディ本体41の軸Ax2に対し平行な平面状に形成されている。被係合部46は、バルブボディ本体41の周方向に1つ形成されている(図12参照)。
スリーブ50は、係合部53が被係合部46に係合するよう、第1クリアランス形成部71とねじ部43との間において、バルブボディ本体41の径方向外側に設けられている。これにより、スリーブ50は、バルブボディ本体41に対する相対回転が規制されている。
本実施形態では、第4実施形態と同様、筒状のスリーブ50を、バルブボディ本体41のねじ部43側の端部側から挿入し、係合部53と被係合部46とを当接させながら軸方向に移動させ、ねじ部43とロータ係止部42との間に位置させることができる。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、スリーブ50が樹脂により形成される例を示した。これに対し、他の実施形態では、スリーブ50は、ベーンロータ30およびカム軸3より硬度の低い材料であれば、例えば金属等、樹脂以外の材料により形成されていてもよい。なお、スリーブ50を、ベーンロータ30およびカム軸3より硬度の低い材料により形成することにより、スリーブ50に遅角供給油路RRsまたは進角供給油路RAsの一部を容易に形成できる。
また、上述の第1〜3実施形態では、スリーブ50が周方向に2つに分割されている例を示した。これに対し、他の実施形態では、スリーブ50は、3つ以上に分割されていてもよい。
また、上述の実施形態では、係合部53が、スリーブ50の内周壁から径方向内側へ突出するよう形成され、被係合部46が、バルブボディ本体41の外周壁から径方向内側へ凹むよう形成されている例を示した。これに対し、他の実施形態では、係合部53は、スリーブ50の内周壁から径方向外側へ凹むよう形成され、被係合部46は、バルブボディ本体41の外周壁から径方向外側へ突出するよう形成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、ピン制御油路が遅角室201に接続し、遅角室201に作動油が供給されると、ピン制御油路に作動油が流入し、ロックピン33が嵌入凹部25から抜け出し、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が許容された状態となる例を示した。これに対し、他の実施形態では、ピン制御油路が進角室202に接続し、進角室202に作動油が供給されると、ピン制御油路に作動油が流入し、ロックピン33が嵌入凹部25から抜け出し、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が許容された状態となることとしてもよい。この場合、ベーンロータ30が最遅角位置に位置するとき、進角室202に作動油を供給すると、ロックピン33が嵌入凹部25から抜け出し、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が許容され、ベーンロータ30が進角方向に回転する。
また、上述の実施形態では、クリアランス形成部としての第1クリアランス形成部71および第2クリアランス形成部72がバルブボディ本体41と一体に形成される例を示した。これに対し、他の実施形態では、クリアランス形成部は、例えばバルブボディ本体41と別体に筒状に形成され、バルブボディ本体41に設けられることとしてもよい。
また、他の実施形態では、チェーン6に代えて、例えばベルト等の伝達部材によりハウジング20とクランク軸2とが連結されていてもよい。
また、他の実施形態では、バルブタイミング調整装置10は、エンジン1の排気弁5のバルブタイミングを調整することとしてもよい。
また、他の実施形態では、作動油制御弁11をバルブタイミング調整装置10以外の、例えば車両の自動変速機等の他の機器類に適用してもよい。
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。