JP2020154014A - 反射防止膜及びその製造方法、及びそれを用いた光学部材 - Google Patents

反射防止膜及びその製造方法、及びそれを用いた光学部材 Download PDF

Info

Publication number
JP2020154014A
JP2020154014A JP2019049551A JP2019049551A JP2020154014A JP 2020154014 A JP2020154014 A JP 2020154014A JP 2019049551 A JP2019049551 A JP 2019049551A JP 2019049551 A JP2019049551 A JP 2019049551A JP 2020154014 A JP2020154014 A JP 2020154014A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antireflection film
fine particle
silica fine
fluoride
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019049551A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7343750B2 (ja
Inventor
寛之 中山
Hiroyuki Nakayama
寛之 中山
秀雄 藤井
Hideo Fujii
秀雄 藤井
佐々木 直人
Naoto Sasaki
直人 佐々木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP2019049551A priority Critical patent/JP7343750B2/ja
Publication of JP2020154014A publication Critical patent/JP2020154014A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7343750B2 publication Critical patent/JP7343750B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

【課題】優れた反射分光特性を有するとともに密着性に優れ、撥水性又は親水性を付与することを可能な反射防止膜を提供する。【解決手段】基材の表面上に形成される1層以上からなる無機緻密層と、その上に形成されたシリカ微粒子層とを有する反射防止膜であって、前記無機緻密層の最外層がフッ化物であり、前記シリカ微粒子層は表面にアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基を有し、屈折率が1.35〜1.50である反射防止膜。【選択図】図1

Description

本発明は、撥水性及び親水性のいずれかの機能性を備えた反射防止膜及びその製造方法、及びそれを用いた光学部材に関する。
写真用や放送用のカメラ等の撮像装置に用いられる単焦点レンズやズームレンズ等の交換レンズは、鏡筒内に複数枚のレンズで構成されているため、各レンズの空気との界面において生じた反射が複数枚のレンズにより増幅される。そのため各レンズ面での反射光量が多いと、透過光量の損失が多いのみならず、レンズ内又はレンズ間での多重反射に起因するフレアやゴーストが生じ易く、コントラストが低くなる。またデジタル化に伴い、カメラ等の撮像部分がフィルムから撮像素子に置き換わり、撮像素子面で反射する光もフレアやゴーストの要因になっている。
各レンズ面での反射光量を抑えるために、交換レンズや撮像素子等の光学素子の表面には反射防止膜が設けられている。例えば、屈折率の異なる誘電体薄膜を互いに組合せて、各層の膜厚を設計中心波長λに対して、1/2λや1/4λとすることにより、干渉効果を利用して、空気と薄膜の界面、薄膜どうしの界面及び薄膜と基板との界面の各界面で生じた反射光が打ち消し合うように設計された多層膜構成の反射防止膜が設けられている。多層膜構成の反射防止膜の最外層には、反射防止性能を上げる為に屈折率が1.38のフッ化マグネシウム(MgF2)が汎用的に施されている。
しかし近年のAIoT化に伴い、デジタルカメラ、ネットワークカメラ、車載カメラといったセンシングカメラ等のデジタルデバイスとして用いられる撮像装置は、あらゆるロケーションやシチュエーションにおいて鮮明な画像を取得できるように、光学性能以外にも撥水/撥油,親水/防曇,防汚等の機能性が付与されていることが求められている。
例えば撥水性を付与する方法として、反射防止膜の最外層にSiO2層と含フッ素シリコン層からなる撥水層を真空蒸着により成膜する方法が知られている。しかし、SiO2層と撥水層の光学膜厚を光学性能に影響を及ぼさない膜厚で成膜制御することは非常に困難であり、製造ロットによって反射防止性能にバラツキが生じるという問題があった。
特開平7-104102号公報(特許文献1)は、ガラス基板上にMgF2層を最表層とした反射防止層を形成し、反射防止層上に光学膜厚が5nm以下のSiO2密着層(屈折率1.46)を形成し、この上に光学膜厚が5nm以下の含フッ素シリコン撥水層(屈折率1.38程度)を形成してなる撥水性反射防止膜を開示している。
特許文献1の撥水性反射防止膜は、MgF2層と含フッ素シリコン撥水層との密着性を確保するため、SiO2層をインタラクション(結合部)として介在させているが、SiO2の屈折率は1.46と高く、反射防止性能(設計の自由度)が低下する。またSiO2層と含フッ素シリコン層の光学膜厚をそれぞれ5nm以下とすることにより光学特性への影響を抑えているが、撥水層を構成するSiO2層と含フッ素シリコン層の2層を真空蒸着により成膜するので、光学性能に影響を及ぼさないように光学膜厚を5nm以下に制御することは非常に困難であり、製造ロットによって反射防止性能にバラツキが生じるという問題は解消できていない。
特開平7-104102号公報
従って本発明の目的は、優れた反射分光特性を有するとともに密着性に優れ、撥水性又は親水性を付与することが可能な反射防止膜を提供することである。
本発明の別の目的は、かかる反射防止膜を高い精度で製造する方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、かかる反射防止膜を備えた光学部材を提供することである。
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、最外層がフッ化物である1層以上からなる無機緻密層を形成し、フッ化物層上に屈折率が1.35〜1.50の撥水性を有するシリカ微粒子層を直接成膜することにより、反射防止性能を劣化させることなく撥水性を付与することができ、かつ親水性への機能変換も可能であることを発見し、本発明に想到した。
即ち、本発明の反射防止膜は、基材の表面上に形成される1層以上からなる無機緻密層と、その上に形成されたシリカ微粒子層とを有する反射防止膜であって、前記無機緻密層の最外層がフッ化物であり、前記シリカ微粒子層は表面にアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基を有し、屈折率が1.35〜1.50であることを特徴とする。
反射防止膜の水の接触角は70〜115°であるのが好ましい。またシリカ微粒子層の空隙率は5〜25%であるのが好ましく、光学膜厚は20〜100 nmであるのが好ましい。
無機緻密層の最外層を構成するフッ化物は、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化ビスマス(BiF3)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化セリウム(CeF3)、チオライト(Na5Al3F14)、クライオライト(Na3AlF6)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化鉛(PbF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ネオジム(NdF3)又はフッ化ナトリウム(NaF)であるのが好ましい。またフッ化物以外の前記無機緻密層の材料が、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、ZnO、Ta2O5、Nb2O5、HfO2、CeO2、SnO2、In2O3、Y2O3、Pr6O11及びSb2O3からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
本発明の反射防止膜は、シリカ微粒子層の表面にシラノール基をさらに有し、前記シリカ微粒子層の上にベタイン構造とシラノール基を有する親水性膜を形成しても良い。かかる親水性を有する反射防止膜は、水の接触角が15°未満であるのが好ましい。記親水性膜の光学膜厚は5nm以下であるのが好ましい。
上記の親水性反射防止膜の製造方法は、基材上に無機緻密層を成膜し、前記無機緻密層の上にアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基を有するシリカ微粒子層を湿式プロセスで成膜後焼成し、酸素プラズマを照射することにより、前記シリカ微粒子層の表面にシラノール基を形成した後、前記シリカ微粒子層の表面にベタイン構造とシラノール基を有する親水性部材を塗布し、焼成することにより、前記親水性膜を形成することを特徴とする。シリカ微粒子層の焼成を150℃以上400℃以下の温度で行い、また、親水性膜の焼成を80℃以上130℃未満の温度で行うのが好ましい。
本発明の光学素子は、基材の表面上に上記反射防止膜が形成されてなることを特徴とする。基材の屈折率が1.45〜1.95であるのが好ましい。基材は、ガラス、石英、シリコン又はカルコゲナイドからなるのが好ましく、平板状又はレンズ状であるのが好ましい。
光学素子のヘーズ値が0.3%以下であるのが好ましい。また光学素子は波長域が300 nm〜2000 nmの光線に使用されるものであるのが好ましい。
本発明によれば、最外層がフッ化物である1層以上からなる無機緻密層を形成し、フッ化物層上に屈折率が1.35〜1.50の撥水性を有するシリカ微粒子層を直接成膜することにより、反射防止性能を劣化させることなく撥水性を付与することができ、かつ親水性への機能変換も可能である。
本発明の一実施例による反射防止膜を備えた光学部材を示す図である。 本発明の他の実施例による反射防止膜を備えた光学部材を示す図である。 実施例1の分光反射率を示すグラフである。 実施例2の分光反射率を示すグラフである。 参考例1の分光反射率を示すグラフである。 実施例3の分光反射率を示すグラフである。 実施例4の分光反射率を示すグラフである。 実施例5の分光反射率を示すグラフである。 比較例2の分光反射率を示すグラフである。 比較例3の分光反射率を示すグラフである。
[1] 第一の実施態様
図1は本発明の一実施例による撥水性反射防止膜を備えた光学素子を示す図である。図1に示す光学素子は、基材10と、基材10の表面に形成された反射防止膜20とを有する。反射防止膜20は、基材10から順に、最外層がフッ化物である無機緻密層21と、アルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基を有するシリカ微粒子層22とが形成されている。
(1) 基材
図1に示す基材10は平板状であるが、本発明はこれに限定されず、レンズ状でも良く、光学素子に用いる基材であれば適用可能である。例えば、表面に曲率を有するレンズ、プリズム、ライトガイド、フィルム又は回折素子でも良い。基材20は、波長587.56 nmのHe光源のd線(以下、単に「d線」とする。)に対して屈折率が1.45〜1.95であるのが好ましい。
基材10の材料は特に限定されないが、ガラス、石英、シリコン、カルコゲナイド等を用いても良い。具体的には、FK03、FK5、BK7、SK20、SK14、LAK7、LAK10、LASF016、LASF04 SFL03、LASF08、NPH2、TAFD4、S-FPL53(登録商標)、S-PSL5(登録商標)、S-BSL7(登録商標)、S-BAL50(登録商標)、S-BSM14(登録商標)、S-LAL7(登録商標)、S-LAL10(登録商標)等の光学ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英、合成石英、青板ガラス、白板ガラス、ルミセラ(登録商標)、ゼロデュア(登録商標)、蛍石、サファイア等が挙げられる。
(2) 無機緻密層
無機緻密層21は、少なくとも1層以上の緻密な無機層からなり、最外層はフッ化物である。フッ化物としては、例えば、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化ビスマス(BiF3)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化セリウム(CeF3)、チオライト(Na5Al3F14)、クライオライト(Na3AlF6)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化鉛(PbF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ネオジム(NdF3)又はフッ化ナトリウム(NaF)が挙げられるが、フッ化マグネシウム(MgF2)が特に好ましい。
無機緻密層21は、フッ化物からなる無機層の単層でも良いし、フッ化物からなる無機層を最外層とする2層以上の複数層でも良い。無機緻密層21が複数層からなる場合、フッ化物以外の無機層は、反射防止膜の誘電体膜として通常用いられる無機材料の酸化物の単体でも良いし、混合物又は化合物でも良い。例えば、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、ZnO、Ta2O5、Nb2O5、HfO2、CeO2、SnO2、In2O3、Y2O3、Pr6O11及びSb2O3からなる群から選ばれた少なくとも一種が挙げられる。これら最外層以外の無機層の材料に上記のフッ化物を用いても良い。
無機緻密層21の層構成及び膜厚は、シリカ微粒子層22の光学特性や所望の光学機能に応じて、コンピュータシミュレーションを用いて最適値を求める等の方法により、適宜求めることができる。
(3) シリカ微粒子層
シリカ微粒子層22はシリカ微粒子からなる多孔質層であり、少なくとも一部のシリカ微粒子に骨格を形成するケイ素原子にアルキル基及び/又はアルケニルが結合してなるアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基が存在している。そのため、シリカ微粒子層22の表面側に疎水性のアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基が配向することにより、反射防止膜20に撥水性の機能が付与される。
シリカ微粒子層22の表面にアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基が存在することにより、無機緻密層21の最外層のフッ化物との密着性にも優れる。つまり、MgF2上にゾル−ゲル法等の湿式プロセスで使用されるシリカゾルやシランカップリング剤は成膜すると、MgF2上で塗膜がはじかれて成膜しづらく、密着性も悪いという問題があったが、シリカ微粒子にアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基が存在する塗工液を用いることにより、MgF2上への成膜性が向上し、焼成硬化後のMgF2との密着性が良好になり、優れた機械的強度が得られる。これは、MgF2との界面において、残存するアルコキシシランもしくはシロキサン骨格やシラノール基がSiO2の酸化物層を形成してMgF2と物理吸着しているためであると考えられる。そのため、本発明のシリカ微粒子層は、わざわざ先にSiO2などの金属酸化物をインタラクション(結合部)として介在させる必要がなく、MgF2上に直接形成することができるため、反射防止特性を損なうことなく、撥水性もしくは親水性といった機能性を付与することができる。
製造工程を簡潔にするために、シリカ微粒子層22の表面にはアルキルシリル基及びアルケニルシリル基のいずれかが存在しているのが良く、機能性及び密着性の観点から、アルキルシリル基が好ましい。
アルキルシリル基は、ケイ素原子にアルキル基が1つ結合したモノアルキルシリル基でも良いし、アルキル基が2つ結合したジアルキルシリル基でも良いが、シリカ微粒子のSi-O結合による機械的強度を維持しつつ、優れた機能性及び密着性を付与するために、モノアルキルシリル基であるのが好ましい。アルキル基の具体例は、エチル基、プロピル基、n-ブチル基等が挙げられるが、メチル基が特に好ましい。
アルケニルシリル基は、アルキルシリル基と同様に、ケイ素原子にアルケニル基が1つ結合したモノアルケニルシリル基でも良いし、アルケニル基が2つ結合したジアルケニルシリル基でも良いが、モノアルケニルシリル基であるのが好ましい。アルケニル基の具体例は、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、ビニル基が特に好ましい。
アルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基は、シリカ微粒子層22の表面側の全体に存在していても良いが、シリカ微粒子層22の表面のケイ素原子の20〜80%がアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基を構成しているのが好ましい。20%未満であると撥水効果が低く純水の接触角が低くなり、80%超であるとシリカ微粒子間で形成されるシロキサン結合が少なくなり、シリカ微粒子層の機械的強度が低下する。
シリカ微粒子層22のd線に対する屈折率は1.35〜1.50である。無機緻密層21の表面に形成されるシリカ微粒子層22は、その屈折率が1.50超であると、反射防止性能(設計の自由度)が低下する。また屈折率が1.35未満の場合、シリカ微粒子層22の空隙率が高くなるため、機械的強度(耐擦傷性)が劣化する。シリカ微粒子層22の屈折率は1.38〜1.46であるのが好ましく、1.38〜1.41であるのがより好ましい。
シリカ微粒子層22の空隙率は、屈折率に応じて適宜決定するパラメータであり、シリカ微粒子層22の空隙率が高いと屈折率が低くなり、空隙率が低いと屈折率が高くなる。シリカ微粒子層22の空隙率は、5〜25%であるのが好ましい。空隙率が5%未満の場合、屈折率がシリカ緻密層に近づき、反射防止性能(設計の自由度)が低下する。また空隙率が25%超であると、機械的強度(耐擦傷性)が劣化する。シリカ微粒子層22の空隙率は5〜20%であるのがより好ましく、10〜15%であるのがさらに好ましい。
シリカ微粒子層22は表面の撥水度は適宜設定可能であるが、表面の水の接触角が70〜115°であるのが好ましい。水の接触角が70°未満であると、撥水性の効果が十分に得られない。また反射防止性能と撥水性をバランス良く得るために、水の接触角の上限は115°程度が望ましい。シリカ微粒子層22は表面の親水性膜33は表面の親水度は適宜設定可能であるが、表面の水の接触角が15°未満であるのが好ましい。水の接触角が15°超であると、親水性の効果が十分に得られない。また水滴付着時の視認性が良好になる為には、水の接触角は5°以下であることが望ましい。
シリカ微粒子層22の光学膜厚は20〜100 nmであるのが好ましい。膜厚が20 nm未満であると、撥水性の機能を十分に発揮できない。また膜厚が100 nm超であると、光学性能が劣化する。シリカ微粒子層22の光学膜厚は25〜50 nmであるのがより好ましい。
かかる反射防止膜20を備えた光学素子は、ヘーズ値(曇価)が0.3%以下であるのが好ましい。それにより、交換レンズのように鏡筒内に複数枚のレンズで構成した場合でも、十分な反射防止特性が得られる。また光学素子は、波長域が300 nm〜2000 nmの光線において、十分な反射防止特性を備え、好適に使用できるのが望ましい。
(4) 製造方法
(4-1) 無機緻密層の形成方法
無機緻密層21は、真空蒸着法やスパッタリング法等のPVD法やCVD法の乾式プロセス、ゾル-ゲル法やSOG(Spin on glass)等の湿式プロセスにより形成することができる。光学特性や経済性の面から、真空蒸着法が特に好ましい。
(4-2) シリカ微粒子層の形成方法
シリカ微粒子層22は、湿式法により形成するのが好ましく、特にゾル−ゲル法が好ましい。すなわち、メチルトリアルコキシシラン等の3官能性アルコキシシランやテトラエトキシシラン等の4官能性アルコキシシランの加水分解重縮合物から得られた塗工液を塗布、乾燥及び焼成することにより形成する。ゾル−ゲル法は、例えば、国際公開第2002/018982号、国際公開第2006/030848号、特開2006-3562号、特開2006-215542号、特開2007-94150号、特開2008-225210号、特開2008-233403号、特開2009-75583号、特開2009-258711号、「ジャーナル・オブ・ゾルゲル・サイエンス・アンド・テクノロジー(Journal of Sol-Gel Science and Technology)」,2000年,第18巻,219〜224頁等に記載の方法により得ることができる。
アルコキシシランのシリカ骨格形成化合物からなる第一のゾルとアルキル基及び/又はアルケニル基が修飾されたアルコキシシランのシリカ骨格形成化合物からなる第二のゾルとが混合してなる混合液を用いてシリカ微粒子層を形成する方法について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
混合液を用いてシリカ微粒子層を形成する方法は、(i) アルコキシシランを酸性触媒下で加水分解及び縮重合して第一のゾルを調整する工程と、(ii) アルキル基及び/又はアルケニル基が修飾されたアルコキシシランを酸性触媒下で加水分解及び縮重合して第二のゾルを調整する工程と、(iii) 第一のゾルと第二のゾルを混合して塗工液を作製する工程と、(iv) 得られた混合ゾルを基板上に塗布する工程、(v) 焼成工程により行う。
(i) 第一のゾルの調整工程
(a) アルコキシシラン
出発原料のアルコキシシランは、テトラアルコキシシランのモノマー又はオリゴマー(縮重合物)が好ましい。4官能のアルコキシシランを用いた場合、比較的大きな粒径を有するコロイド状シリカ粒子のゾルを得ることができる。テトラアルコキシシランは、Si(OR)4[Rは炭素数1〜5のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、又は炭素数1〜4のアシル基(アセチル等)]により表されるものが好ましい。テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン等が挙げられる。中でもテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。
(b) 有機溶媒
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール等のアルコールが好ましく、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノールがより好ましい。
(c) 酸性触媒の存在下での加水分解及び縮重合
アルコキシシランに有機溶媒、酸性触媒及び水を添加することにより、加水分解重縮合が進行する。酸性触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸等が挙げられる。酸性触媒を含有するゾルは10〜90℃で約15分〜24時間加熱・撹拌するのが好ましい。加熱・撹拌により加水分解重縮合が進行する。
有機溶媒とアルコキシシランとの量比は、アルコキシシランの濃度がSiO2換算で0.1〜70質量%(シリカ濃度)となるように設定するのが好ましい。シリカ濃度が70質量%超であると、得られるゾル中のシリカ粒子の粒径は大きくなり過ぎ、粘度が増加してゲル化が進行する。一方シリカ濃度が0.1未満であると、得られるゾル中のシリカ粒子の粒径は小さくなり過ぎる。なお有機溶媒/アルコキシシランのモル比としては1×10-1〜1×103の範囲が好ましい。
水/アルコキシシランのモル比は1〜40が好ましい。水/アルコキシシランのモル比が40超であると、加水分解反応が速く進行し過ぎるため反応の制御が難しく、均一なシリカ微粒子が得られにくくなる。一方1未満であると、アルコキシシランの加水分解が十分に起こらない。
第一のゾル中のシリカ粒子のメジアン径は150 nm以下であり、好ましくは10〜50 nmである。メジアン径は動的光散乱法により測定する。
(ii) 第二のゾルの調製工程
(a) アルコキシシラン
出発原料は、アルキル基及び/又はアルケニル基が修飾されたアルコキシシランのモノマー又はオリゴマー(縮重合物)が好ましい。アルキル基及び/又はアルケニル基はアルコキシシランに1つ結合しても良いし、アルキル基に関しては2つ結合しても良い。
アルキル基が1つ結合したアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。アルケニル基が1つ結合したアルコキシシランの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシランが挙げられる。アルキル基が2つ結合したアルコキシシランの具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシランが挙げられる。
(b) 有機溶媒
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール等のアルコールが好ましく、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノールがより好ましい。
(c) 酸性触媒の存在下での加水分解及び縮重合
アルコキシシランに有機溶媒、酸性触媒及び水を添加することにより、加水分解重縮合が進行する。酸性触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸等が挙げられる。酸性触媒を含有するゾルは10〜90℃で約15分〜24時間加熱・撹拌するのが好ましい。加熱・撹拌により加水分解重縮合が進行する。
有機溶媒とアルコキシシランとの量比は、アルコキシシランの濃度がSiO2換算で0.1〜70質量%(シリカ濃度)となるように設定するのが好ましい。シリカ濃度が70質量%超であると、得られるゾル中のシリカ粒子の粒径は大きくなり過ぎ、粘度が増加してゲル化が進行する。一方シリカ濃度が0.1未満であると、得られるゾル中のシリカ粒子の粒径は小さくなり過ぎる。なお有機溶媒/アルコキシシランのモル比としては1×10-1〜1×103の範囲が好ましい。
水/アルコキシシランのモル比は1〜40が好ましい。水/アルコキシシランのモル比が40超であると、加水分解反応が速く進行し過ぎるため反応の制御が難しく、均一なシリカ微粒子が得られにくくなる。一方1未満であると、アルコキシシランの加水分解が十分に起こらない。
第二のゾル中のコロイド状シリカ粒子のメジアン径は1〜150 nmであり、好ましくは10〜50 nmである。
(iii) 混合工程
上記のようにして得られた第一のゾル及び第二のゾルを混合し、塗工液を作製する。第一及び第二の酸性ゾルを混合した後、10〜30℃の室温で10分〜3時間程度撹拌するのが好ましい。
第一のゾルに第二のゾルを添加しても良いし、第二のゾルに第一のゾルを添加しても良い。塗工液の濃度及び流動性を調整し塗布適性を高めるため、展開溶媒に第一のゾル及び第二のゾルを添加しても良い。その際、第一のゾル及び第二のゾルを添加した後、10〜30℃の室温で10分〜3時間程度撹拌するのが好ましい。展開溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール等のアルコールが挙げられる。混合液中のアルコキシシランのSiO2換算でのシリカ濃度は、0.05〜10質量%であることが好ましい。混合液中のシリカ濃度が、10質量%超であると粘度が高く成膜性が低下して、レベリング性も劣化する。一方シリカ濃度が0.05質量%未満であると、固形分濃度が低過ぎて成膜時の膜厚が薄くなりすぎて、基板上への撥水性や親水性といった機能性の附与がしづらくなる。
第一のゾル/第二のゾルの固形分質量比は0.05〜10であるのが好ましい。この比が0.05未満であると、シリカ微粒子にアルキルシリル基またはアルケニルシリル基が多量に形成され、シリカ微粒子の結合力が低下し、耐擦傷性が低くなる。この比が10超であると、シリカ微粒子層の表面に存在するアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基が少ないため、撥水性が十分でない。第一のゾル/第二のゾルの固形分質量比は0.1〜2であるのがより好ましい。
(iv) 塗布工程
塗工液を基材の表面に塗布する方法としては、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、印刷法等が挙げられる。レンズのような三次元構造物に塗布する場合、ディッピング法が好ましい。ディッピング法における引き上げ速度は約0.1〜10 mm/秒であるのが好ましい。塗工液中のシリカの濃度は0.05〜10質量%が好ましい。
(v) 焼成工程
塗布膜の焼成条件は所望の空隙率及び撥水度に応じて適宜選択する。シリカ微粒子層の空隙率(屈折率)は、シリカゾルを成膜後に焼成して焼き固める温度で制御できる。またシリカゾルの焼成温度が高いと、水酸基の残留が小さくなり、撥水度が大きくなる。焼成温度は250〜400℃であるのが好ましい。焼成温度が250℃未満であると、耐擦傷性及び撥水性が不十分である。焼成温度が400℃超であると、シリカ微粒子層の空隙率が小さくなり、屈折率が大きくなる上に、アルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基のアルキル基及び/又はアルケニル基の焼失が起こり、撥水効果が低減する。焼成温度は300〜350℃であるのがより好ましい。
[2] 第二の実施態様
図2は本発明の他の実施例による親水性反射防止膜を備えた光学素子を示す図である。図2に示す光学素子は、基材10と、基材10の表面に形成された反射防止膜30とを有する。反射防止膜30は、基材10から順に、最外層がフッ化物である無機緻密層31と、アルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基及びシラノール基を有するシリカ微粒子層32と、シリカ微粒子層32の表面に形成されたベタイン構造とシラノール基を有する親水性膜33とを有する。
(1) 基材,無機緻密層
基材10及び無機緻密層31は第一の実施態様の基材10及び無機緻密層21と同じものを用いることができる。
(2) シリカ微粒子層
シリカ微粒子層32は、無機緻密層31と接する面と反対側の外表面にシラノール基を有する。無機緻密層31は外表面にシラノール基を有する以外は第一の実施態様の無機緻密層21と同じものを用いることができる。シリカ微粒子層32の外表面側に骨格として存在するケイ素原子にヒドロキシ基が結合してなるシラノール基が設けられている。それにより、ベタイン構造とシラノール基を有する親水性膜33との優れた密着性が得られる。
シラノール基は、シリカ微粒子層32の外表面側の全体に存在していても良いが、外表面側に骨格として存在するケイ素原子の20〜80%の割合で存在しているのが好ましい。20%未満であるとベタイン構造と形成するシロキサン結合の数が少なくなり、親水性の附与がしづらくなり親水性が低下する。80%超であると、シリカ微粒子間で形成されるシロキサン結合に、そのシラノール基が用いられていないことになり、結果シロキサン結合が少なくなり、シリカ微粒子層の機械的強度が低下する。また後述するようにシラノール基がアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基を置換して形成され、シリカ微粒子層32の外表面側のアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基がほとんど残存していなくても良いし、20〜60%の割合で存在しているのが好ましい。
(3) 親水性膜
親水性膜33は、優れた親水性を発揮し得るベタイン構造と、シリカ微粒子層32との密着性に優れた末端シラノール基とを有する。ベタイン構造は、親水性ポリマーとして一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えばベタイン基を含むメタクリル酸エステルが挙げられる。ベタイン基は、例えばカルボキシベタイン基が挙げられる。
シリカ微粒子層32にシラノール基を設けるのみでも親水性を付与することができるが、大気中に放置すると経時変化と共にシラノール基が汚染され、その親水性が劣化する。そのため、このシラノール基に更に分子内にシラノール基とベタイン構造を有する化合物を、シラノール同士の脱水縮合により結合させ、シリカ微粒子層32の外表面に親水性を有するベタイン構造を形成する。これにより、親水性の効果を持続的に発現させることができる。
親水性膜33の光学膜厚は10 nm以下であるのが好ましい。膜厚が10 nm超であると、反射防止特性が劣化する。また膜厚が3nm未満であると、親水性が不十分である。親水性膜33の光学膜厚は3〜7nmであるのがより好ましい。
親水性膜33は表面の親水度は適宜設定可能であるが、表面の水の接触角が15°未満であるのが好ましい。水の接触角が15°超であると、親水性の効果が十分に得られない。また水滴付着時の視認性が良好になる為には、水の接触角は5°以下であることが望ましい。
(4) 製造方法
(4-1) 無機緻密層の形成方法
無機緻密層31は第一の実施態様の無機緻密層21と同様に形成することができる。
(4-2) シリカ微粒子層の形成方法
シリカ微粒子層32は、第一の実施態様のシリカ微粒子層22と同様に形成した後、外表面にシラノール基を形成する工程を行う。シラノール基の形成方法は、例えば、シリカ微粒子層32の外表面に酸素プラズマを照射することにより、外表面のアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基のSi-C結合を切断し、そこに新たにシラノール基を形成する方法が挙げられる。酸素プラズマは、例えばプラズマクリーナーを用いて、酸素を50〜100cc/分の流量で供給しながら、10〜100 Paの減圧下、100〜1500 Wの照射強度で0.5〜10分間酸素プラズマを照射するのが好ましい。
(4-3) 親水性膜の形成方法
親水性膜形成用ゾルを塗工液としてシリカ微粒子層32の表面に塗布する。塗布方法としては、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、印刷法等が挙げられる。基材10がレンズのような三次元構造物に塗布する場合、ディッピング法が好ましい。ディッピング法における引き上げ速度は約0.1〜10 mm/秒であるのが好ましい。
塗布した塗工液を焼成し、親水性膜を作製する。焼成温度は80℃以上130℃未満であるのが好ましい。焼成温度が80℃未満であると密着性が弱く親水性の機能が劣化し易い。焼成温度が130℃以上であると親水性の官能基が変質して親水性機能が劣化する。焼成時間は1分〜1時間であるのが好ましい。得られた親水性膜を必要に応じて洗浄しても良い。洗浄は例えば純水でリンスすることにより行うことができる。
本発明の反射防止膜は優れた屈折率特性と、撥水性又は親水性の優れた機能性を有し、波長域が300 nm〜2000 nmの光線に使用される光学部材に好適に用いることができる。かかる光学部材は、例えばテレビカメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、車載カメラ、顕微鏡、望遠鏡等の光学機器に搭載するレンズ、プリズム、フィルター等が挙げられる。
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例で作製したサンプルの光学膜厚及び屈折率はレンズ反射率測定機(型番:USPM-RU、オリンパス(株)製)を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
実施例1
[1-1 緻密層の形成]
BK7ガラス平板(直径:30 mm、屈折率:1.518)上に、表1に示す層構成になるように、電子ビーム式の蒸着源を有する真空蒸着装置を用いて、真空蒸着法によりMgF2単層の緻密層を形成した。
[1-2 撥水性シリカゾルの作製]
100 mlの二口ナスフラスコにテトラエトキシシラン3.91 gとpH2の塩酸水溶液1.35 gを入れ、アリーン冷却器をつけて、60℃で2時間撹拌・還流した。こうして得られたゾルに、エタノール4.62 gと2-プロパノール10.73 gを添加し10分間撹拌して、テトラエトキシシランが加水分解重合したゾルAを得た。続いて、新たに100 mlの二口ナスフラスコを用意し、そこにメチルトリエトキシシラン10.3 gとpH3の酢酸水溶液3.04 gを入れ、アリーン冷却器をつけて、60℃で2時間撹拌・還流した。こうして得られたゾルに、エタノール1.08 g、2-プロパノールを2.52 gを添加し10分間撹拌して、メチルトリエトキシシランが加水分解重合したゾルBを得た。これらとは別に、2-プロパノール64.71 gと1-ブタノール7.42 gを100 mlディスポビーカーに入れて撹拌し、予め撥水性シリカゾルの展開溶媒を作製した。この展開溶媒に、上記で作製したゾルAを4.12 g、ゾルBを3.33 g添加して、更に10分間撹拌して、撥水性シリカゾルを作製した。
[1-3 撥水性反射防止膜の作製]
作製した撥水性シリカゾルを、MgF2膜が真空蒸着されたBK7ガラス基板上に、引き上げ速度1mm/秒でディップコートしてコーティングし、得られた成膜基板をイナートオーブンに投入し、200℃で1.5時間焼成し、図1に示す表面にメチルシリル基を有するシリカ微粒子層が成膜された撥水性反射防止膜20を作製した。
実施例2
焼成温度を350℃にした以外は実施例1と同様の工程で、撥水性反射防止膜20を作製した。
参考例1
イナートオーブンの代わりに電気炉を使用し、焼成温度を500℃にした以外は実施例1と同様の工程で、撥水性反射防止膜20を作製した。
実施例3
ガラス基板をFK5ガラス平板(直径:30 mm、屈折率:1.489)に変更し、緻密層を表1に示す最外層はMgF2膜である6層緻密層に変更した以外は実施例2と同様に工程で、撥水性反射防止膜20を作製した。
実施例4
実施例2と同様の工程で作製した撥水性反射防止膜20に、ヤマト科学(株)製のプラズマクリーナー(型番:PDC210)を用いて、酸素を100 cc/分の流量で供給しながら、48 Paの減圧下、500 Wの照射強度で5分間酸素プラズマを照射した。この成膜基板を、シラノール基を有するベタイン基含有親水性ポリマーからなる親水膜形成用ゾル(LAMBIC-771W,大阪有機化学工業(株)製)を純水で2倍希釈した溶液中に、引き上げ速度3.0 mm/秒でディップコートし、更にその成膜基板を120℃で30分加熱後、純水でリンスすることで、親水性反射防止膜30を作製した。
実施例5
実施例3と同様の工程で作製した撥水性反射防止膜20を用いた以外は実施例4と同様の工程で、親水性反射防止膜30を作製した。
比較例1
実施例1の[1-1]で作製した、MgF2膜がBK7ガラス基板上に真空蒸着された基板を比較例1のサンプルとした。
比較例2
[(1-1) 有機修飾シリカ湿潤ゲルの作製(TMCSによる表面修飾)]
(1-1-1) シリカ湿潤ゲルの作製
扶桑化学工業(株)製のメチルシリケート51(テトラメトキシシランの平均4量体)5.90 gと和光純薬工業(株)製のメタノール(特級)50.55 gの混合物に和光純薬工業(株)製の28%アンモニア(特級)から調整した0.10 Nのアンモニア水3.20 gを添加し10分間攪拌した。その後、室温にて3日間静置して加水分解重縮合反応を促進させエージングした。
(1-1-2) シリカ湿潤ゲルの溶媒置換
工程(1-1-1) で作製したシリカ湿潤ゲルを2cm角程度の大きさに切り出し、それを結晶皿にとり、和光純薬工業(株)製のエタノール(特級)を添加し、マグネティックスターラーを用いて300 rpmでゆっくり1日間攪拌して、シリカ湿潤ゲル中の溶媒をエタノールに置換した。置換後デカンテーションすることで、エタノール溶媒置換されたシリカ湿潤ゲルを得た。溶媒置換に用いたエタノールは、シリカ湿潤ゲル20 gに対して100 mlの割合で添加した。
つづいて、エタノールにより溶媒置換されたシリカ湿潤ゲルに和光純薬工業(株)製の4-メチル-2-ペンタノン(特級)を添加し、マグネティックスターラーを用いて300 rpmでゆっくり1日間攪拌して、シリカ湿潤ゲル中の溶媒を4-メチル-2-ペンタノンに置換した。置換後デカンテーションすることで、4-メチル-2-ペンタノンに溶媒置換されたシリカ湿潤ゲルを得た。溶媒置換に用いた4-メチル-2-ペンタノンは、シリカ湿潤ゲル20 gに対して100 mlの割合で添加した。
(1-1-3) シリカ湿潤ゲルの表面修飾
工程(1-1-2) で作製した湿潤ゲル60 gを結晶皿にとり、東京化成工業(株)製のトリメチルクロロシランと和光純薬工業(株)製の4-メチル-2-ペンタノン(特級)からなる混合液体を添加し、マグネティックスターラーを用いて300 rpmでゆっくり1日間攪拌して、シリカ湿潤ゲル中の酸化ケイ素末端を有機修飾した。有機修飾後デカンテーションすることで、有機修飾シリカ湿潤ゲルを得た。トリメチルクロロシランと4-メチル-2-ペンタノンの混合液の作製は、体積比にして5ml:95 mlの割合で混合した。シリカ湿潤ゲルの有機修飾は、シリカ湿潤ゲル20 gに対して、トリメチルクロロシランと4-メチル-2-ペンタノンの混合液が100 mlの割合で添加した。
(1-1-4) 有機修飾シリカ湿潤ゲルの洗浄
工程(1-1-3) で作製した湿潤ゲル60 gを結晶皿にとり、和光純薬工業(株)製の4-メチル-2-ペンタノン(特級)を添加し、マグネティックスターラーを用いて300 rpmでゆっくり1日間攪拌して、有機修飾シリカ湿潤ゲルを洗浄した。その後、デカンテーションすることで、有機修飾剤及び副生成物の除去された有機修飾湿潤ゲルを得た。洗浄に用いた4-メチル-2-ペンタノンは、シリカ湿潤ゲル20 gに対して100 mlの割合で添加した。
[(1-2) 有機修飾シリカ湿潤ゲルの超音波分散液の作製]
工程(1-1) で作製した有機修飾シリカ湿潤ゲルを100 mlディスポビーカーにとり、和光純薬工業(株)製の4-メチル-2-ペンタノン(特級)を添加し、マグネティックスターラーを用いて700 rpmで攪拌しながら(株)日本精機製作所の超音波分散装置(定格出力:600 W、発振周波数:19.5 KHz ±1KHz)で2時間超音波分散した。分散溶液の濃度は、固形分濃度にして3.5 wt%になるように調整し、シリカ多孔質膜作製用塗工液を得た。分散溶液の固形分濃度は、有機修飾シリカ湿潤ゲルを120℃の送風定温恒温機(イナートオーブン)に2時間入れて乾燥したときの、乾燥前後の質量から算出した固形分から調製した。
[(1-3) 基板へのゾルの塗布及び塗工膜の硬質化]
実施例1の工程[1-1]で作製したBK7ガラス基板上に真空蒸着されたMgF2膜上に、上記工程(1-2) で作製したシリカ多孔質膜作製用塗工液をスピンコート法により塗布し、自然乾燥して比較例2のサンプルを得た。
比較例3
比較例2で作製したサンプルを電気炉に投入し、400℃で1.5時間焼成することで、比較例3のサンプルとした。
[分光反射率の測定]
実施例1〜5,参考例1及び比較例2及び3で作製したサンプルについて、分光反射率の測定を行った。分光反射率は、レンズ反射率測定機(型番:USPM-RU、オリンパス株式会社製)を使用して、380〜780 nmの波長域について入射角0°で測定した。また上記実施例,参考例及び比較例について、基材の分光反射率及び基材にMgF2単層を形成した場合の分光反射率も同様の方法で測定した。得られた結果を図3〜図10に示す。
[HAZE値及び水の接触角の測定]
実施例,参考例及び比較例で作製したサンプルのHAZE値(曇価)を(株)村上色彩技術研究所_HM-150を用いて測定し、純水の接触角測定を協和科学(株)製接触角測定装置を用いて測定した。得られた結果を表2に示す。
[耐傷性及び密着性の評価方法]
基材表面の反射防止膜を、1kg/cm2の圧力をかけながら3600 mm/分の速度で20 mm×20 mmの不織布(商品名「スピックレンズワイパー」、小津産業(株)製)で30回擦り、表面の傷及び剥離状況を目視で確認し以下の基準で評価した。得られた結果を表2に示す。
<判定基準>
反射防止膜の一部に傷は付いたが剥離はしなかった・・・○
反射防止膜に傷が付き一部剥離または反射色が変化した・・・△
反射防止膜が全部剥離した・・・×
表1及び2及び図3〜10に示すように、実施例1〜5の反射防止膜は、優れた反射防止特性を維持しつつ、耐擦傷性・密着性に優れ、かつ撥水性又は親水性の機能性も備えていた。参考例1はシリカ微粒子層の焼成温度を500℃であったため、表面のメチルシリル基の焼失が起こり、親水性に傾いた。シリカ微粒子層を形成していない比較例1の反射防止膜は、純水接触角が41°と撥水性及び親水性のいずれの機能性も備えていなかった。シリカエアロゲル膜を最外層に有する比較例2及び3は、耐擦傷性・密着性に劣るという結果となった。
10・・・基材
20,30・・・反射防止膜
21,31・・・無機緻密層
22,32・・・シリカ微粒子層
33・・・親水性膜

Claims (18)

  1. 基材の表面上に形成される1層以上からなる無機緻密層と、その上に形成されたシリカ微粒子層とを有する反射防止膜であって、
    前記無機緻密層の最外層がフッ化物であり、
    前記シリカ微粒子層は表面にアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基を有し、屈折率が1.35〜1.50であることを特徴とする反射防止膜。
  2. 請求項1に記載の反射防止膜において、水の接触角が70〜115°であることを特徴とする反射防止膜。
  3. 請求項1又は2に記載の反射防止膜において、前記シリカ微粒子層の空隙率が5〜25%であることを特徴とする反射防止膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止膜において、前記シリカ微粒子層の光学膜厚は20〜100 nmであることを特徴とする反射防止膜。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止膜において、前記フッ化物が、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化ビスマス(BiF3)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化セリウム(CeF3)、チオライト(Na5Al3F14)、クライオライト(Na3AlF6)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化鉛(PbF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ネオジム(NdF3)又はフッ化ナトリウム(NaF)であることを特徴とする反射防止膜。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止膜において、前記フッ化物以外の前記無機緻密層の材料が、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、ZnO、Ta2O5、Nb2O5、HfO2、CeO2、SnO2、In2O3、Y2O3、Pr6O11及びSb2O3からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする反射防止膜。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止膜において、
    前記シリカ微粒子層は表面にシラノール基をさらに有し、
    前記シリカ微粒子層の上にベタイン構造とシラノール基を有する親水性膜が形成されていることを特徴とする反射防止膜。
  8. 請求項7に記載の反射防止膜において、水の接触角が15°未満であることを特徴とする反射防止膜。
  9. 請求項7又は8に記載の反射防止膜において、前記親水性膜の光学膜厚は5nm以下であることを特徴とする反射防止膜。
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載の反射防止膜を製造する方法であって、
    基材上に無機緻密層を成膜し、
    前記無機緻密層の上にアルキルシリル基及び/又はアルケニルシリル基を有するシリカ微粒子層を湿式プロセスで成膜し、焼成した後、
    酸素プラズマを照射することにより、前記シリカ微粒子層の表面にシラノール基を形成し、
    前記シリカ微粒子層の表面にベタイン構造とシラノール基を有する親水性部材を塗布し、焼成することにより、前記親水性膜を形成することを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  11. 請求項10に記載の反射防止膜の製造方法において、前記シリカ微粒子層の焼成を150℃以上400℃以下の温度で行うことを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  12. 請求項11に記載の反射防止膜の製造方法において、前記親水性膜の焼成を80℃以上130℃未満の温度で行うことを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  13. 基材と、前記基材の表面上に形成された請求項1〜10のいずれかに記載の反射防止膜とを有することを特徴とする光学素子。
  14. 請求項13に記載の光学素子において、前記基材の屈折率が1.45〜1.95であることを特徴とする光学素子。
  15. 請求項13又は14に記載の光学素子において、ヘーズ値が0.3%以下であることを特徴とする光学素子。
  16. 請求項13〜15のいずれかに記載の光学素子において、前記基材は、ガラス、石英、シリコン又はカルコゲナイドからなることを特徴とする光学素子。
  17. 請求項13〜16のいずれかに記載の光学素子において、前記基材は平板状又はレンズ状であることを特徴とする光学素子。
  18. 請求項13〜17のいずれかに記載の光学素子において、波長域が300 nm〜2000 nmの光線に使用されることを特徴とする光学素子。
JP2019049551A 2019-03-18 2019-03-18 反射防止膜及びその製造方法、及びそれを用いた光学部材 Active JP7343750B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019049551A JP7343750B2 (ja) 2019-03-18 2019-03-18 反射防止膜及びその製造方法、及びそれを用いた光学部材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019049551A JP7343750B2 (ja) 2019-03-18 2019-03-18 反射防止膜及びその製造方法、及びそれを用いた光学部材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020154014A true JP2020154014A (ja) 2020-09-24
JP7343750B2 JP7343750B2 (ja) 2023-09-13

Family

ID=72558769

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019049551A Active JP7343750B2 (ja) 2019-03-18 2019-03-18 反射防止膜及びその製造方法、及びそれを用いた光学部材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7343750B2 (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09208898A (ja) * 1995-12-01 1997-08-12 Nissan Chem Ind Ltd 低屈折率及び撥水性を有する被膜
JP2006003562A (ja) * 2004-06-16 2006-01-05 Pentax Corp 反射防止膜及び反射防止膜を有する光学素子
JP2006215542A (ja) * 2005-01-07 2006-08-17 Pentax Corp 反射防止膜及びこれを有する撮像系光学素子
JP2011105584A (ja) * 2009-10-19 2011-06-02 Mitsubishi Chemicals Corp シリカ体及びその製造方法
JP2012128135A (ja) * 2010-12-15 2012-07-05 Seiko Epson Corp 光学物品およびその製造方法
JP2015231216A (ja) * 2014-06-06 2015-12-21 株式会社タムロン 光学ユニット及び車載用撮像装置
JP2018075800A (ja) * 2016-11-11 2018-05-17 セントラル硝子株式会社 親水性物品及びその製造方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09208898A (ja) * 1995-12-01 1997-08-12 Nissan Chem Ind Ltd 低屈折率及び撥水性を有する被膜
JP2006003562A (ja) * 2004-06-16 2006-01-05 Pentax Corp 反射防止膜及び反射防止膜を有する光学素子
JP2006215542A (ja) * 2005-01-07 2006-08-17 Pentax Corp 反射防止膜及びこれを有する撮像系光学素子
JP2011105584A (ja) * 2009-10-19 2011-06-02 Mitsubishi Chemicals Corp シリカ体及びその製造方法
JP2012128135A (ja) * 2010-12-15 2012-07-05 Seiko Epson Corp 光学物品およびその製造方法
JP2015231216A (ja) * 2014-06-06 2015-12-21 株式会社タムロン 光学ユニット及び車載用撮像装置
JP2018075800A (ja) * 2016-11-11 2018-05-17 セントラル硝子株式会社 親水性物品及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7343750B2 (ja) 2023-09-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5509616B2 (ja) 反射防止膜、光学部品、交換レンズ及び撮像装置
JP6532228B2 (ja) 光学部材及び光学部材の製造方法
JP5313587B2 (ja) 反射防止膜及びこれを有する光学部品、交換レンズ及び撮像装置
JP4107050B2 (ja) コーティング材組成物及びそれにより形成された被膜を有する物品
KR100783714B1 (ko) 코팅재 조성물 및 그것에 의해 형성된 피막을 가지는 물품
JP7118615B2 (ja) 光学素子、光学系および撮像装置
KR20090102658A (ko) 반사방지막의 형성방법 및 광학소자
JP6932524B2 (ja) 光学部材及び光学部材の製造方法
JP2006215542A (ja) 反射防止膜及びこれを有する撮像系光学素子
JP2007183366A (ja) 防塵性光透過性部材及びその用途、並びにその部材を具備する撮像装置
JP6903994B2 (ja) 光学素子及びその製造方法
JP2010055060A (ja) 反射防止膜及びこれを有する光学部品、交換レンズ及び撮像装置
JP5347145B2 (ja) 反射防止膜及びこれを有する光学部品、並びに前記光学部品を有する交換レンズ及び撮像装置
JP4251093B2 (ja) 照明装置
JP5683146B2 (ja) 光学膜の製造方法および光学素子の製造方法
JP5665404B2 (ja) 光学膜の製造方法、光学膜および光学部品
JP2017167271A (ja) 光学部材及び光学部材の製造方法
JP6592897B2 (ja) シリカエアロゲル膜の製造方法
JP7118614B2 (ja) 光学部材、撮像装置、及び光学部材の製造方法
JP2013217977A (ja) 反射防止膜及び光学素子
JP7343750B2 (ja) 反射防止膜及びその製造方法、及びそれを用いた光学部材
JP2020032719A (ja) 部材および部材の製造方法
JP2012148952A (ja) 低反射膜形成用塗布液およびその調製方法およびそれを用いた低反射部材
JP2020007382A (ja) コーティング組成物とその製造方法、および光学部材、ならびに撮像装置
JP7439555B2 (ja) 光学部材及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211223

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20221226

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230110

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230307

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230620

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230713

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230801

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20230714

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230814

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7343750

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151