JP2020152792A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明性および低複屈折性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供する。【解決手段】負の配向複屈折性を有する熱可塑性樹脂と無機ナノフィラーとを含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記無機ナノフィラーの屈折率が前記熱可塑性樹脂の屈折率よりも大きく、かつ前記無機ナノフィラーの最長辺の長さをx、最短辺の長さをzとした場合のxが10〜100nmであり、かつアスペクト比(x/z)が3〜20の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、透明性および低複屈折性に優れる熱可塑性樹脂組成物に関する。更に、本発明は、該熱可塑性樹脂組成物を含む、光学フィルム及び加飾用フィルムに関する。
主成分としてメタクリル酸メチルを含有する単量体を重合して成るメタクリル系樹脂は、透明性、耐候性、表面硬度に優れる等の特長を有しており、さらに他の汎用樹脂と比較して低複屈折であるため、様々な光学用途に適用されている。しかしながら、ピックアップレンズ等の精密光学部材、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられる光学部材においては、従来のメタクリル系樹脂では成形時の分子配向により配向複屈折が生じるため、信号の読み取り性能の低下、光漏れ、コントラストの低下、カラーシフト等を引き起こす等、光学部材の機能として不足する場合があり、より複屈折の少ない光学樹脂材料が望まれている。フラットパネルディスプレイ用途にメタクリル系樹脂を適用させる場合、二軸延伸によって樹脂配向させて強度を付与する手法が一般的であり、配向によって複屈折を生じない光学樹脂材料が望まれている。また、射出成形によって得られる光学部材の場合、流動末端部に比べてゲート付近の配向複屈折が選択的に大きくなる潜在的な課題もあり、ゲート付近の配向複屈折だけを選択的に低減出来る光学樹脂材料も望まれている。
メタクリル系樹脂の複屈折を低くするための手法として、メタクリル酸メチルを単独重合してなる負の配向複屈折性を有する樹脂に対して、正の配向複屈折性を有する樹脂を与える単量体を共重合させる方法(特許文献1、特許文献2)が提案されている。しかし、この共重合させる方法では、樹脂の製造に用いられる単量体混合物の組成比のわずかなズレにより、樹脂の固有複屈折が変動するため、固有複屈折が完全にゼロである樹脂を安定的に得ることは困難であり、射出成形時のゲート付近での配向複屈折が選択的に大きくなる潜在的な課題には対処が困難である。
また、負の配向複屈折性を有するメタクリル系樹脂の複屈折を低くするための手法として、正の配向複屈折性を有する樹脂をメタクリル系樹脂にブレンドする方法(特許文献3、特許文献4)も知られている。このブレンドによる方法は、共重合による方法に比べて設備投資額が低い点では優位であるものの、異樹脂ブレンドで完全相溶する組合せとしてはわずかであるうえ、ガラス転移温度差が大きい組合せである場合には緩和挙動によるレターデーション変動が生じやすい問題がある。また、透明樹脂に対して、透明樹脂とは逆符号の固有複屈折を有する低分子物質を分散させる方法(特許文献5)も知られているが、特許文献5は正の固有複屈折を有する透明樹脂と負の固有複屈折を有する層状珪酸塩の組合せのみであり、負の配向複屈折性を有する透明樹脂の複屈折発現を抑制する効果は無かった。
以上のような状況から、負の配向複屈折性を有する透明樹脂の複屈折発現を抑制する方法が依然として求められている。
本発明は、例えば以下のとおりである。
[1] 負の配向複屈折性を有する熱可塑性樹脂と無機ナノフィラーとを含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記無機ナノフィラーの屈折率が前記熱可塑性樹脂の屈折率よりも大きく、かつ前記無機ナノフィラーの最長辺の長さをx、最短辺の長さをzとした場合のxが10〜100nmであり、かつアスペクト比(x/z)が3〜20の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2] 前記熱可塑性樹脂の屈折率と前記無機ナノフィラーの屈折率との差が0.1以上である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] 前記無機ナノフィラーがアルミナを含有する、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] 前記熱可塑性樹脂が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)と、必要に応じて下記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位(b’)とを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)と前記芳香族ビニル構成単位(b’)との合計が、前記熱可塑性樹脂中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)と前記芳香族ビニル構成単位(b’)との合計に対して前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が55モル%以上85モル%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1〜16の炭化水素基である。)
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は、炭素数1〜4の炭化水素基で置換されていてもよい、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエン基、およびシクロヘキセン基からなる群より選択される。)
(式中、R5は水素原子またはメチル基であり、R6は炭素数1〜4の炭化水素基で置換されていてもよいフェニル基である。)
[5] 前記無機フィラーが、前記熱可塑性樹脂と前記無機ナノフィラーとの合計重量に対して、3重量%以下の量で含まれる、[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、光学フィルム。
[7] [1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、加飾用フィルム。
[8] [1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
[2] 前記熱可塑性樹脂の屈折率と前記無機ナノフィラーの屈折率との差が0.1以上である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] 前記無機ナノフィラーがアルミナを含有する、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] 前記熱可塑性樹脂が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)と、必要に応じて下記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位(b’)とを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)と前記芳香族ビニル構成単位(b’)との合計が、前記熱可塑性樹脂中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)と前記芳香族ビニル構成単位(b’)との合計に対して前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が55モル%以上85モル%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] 前記無機フィラーが、前記熱可塑性樹脂と前記無機ナノフィラーとの合計重量に対して、3重量%以下の量で含まれる、[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、光学フィルム。
[7] [1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、加飾用フィルム。
[8] [1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性の光学部材に好適に使用することが出来る。本発明の好ましい態様によれば、耐熱性、および射出成形や延伸加工時の低複屈折性に優れる。
以下で本発明について詳細に説明するが、本発明は例示される製造例や実施例等に限定されるものではなく、本発明の内容を大きく逸脱しない範囲であれば任意の方法に変更して行うことも出来る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)(熱可塑性樹脂)に対して、この透明樹脂より屈折率が大きくかつ高アスペクト比の無機ナノフィラー(II)を添加することで得られる。無機ナノフィラー(II)の含有量は、透明樹脂(I)と無機ナノフィラー(II)との合計重量に対して、3.0重量%以下であることが好ましく、0.1〜2.0重量%であることがより好ましい。無機ナノフィラー(II)の含有量が3.0重量%より大きいと、成形体の強度が損なわれる場合がある。
この熱可塑性樹脂組成物は、射出成形や延伸加工等、強い配向を受ける場合でも、透明樹脂(I)による負の配向複屈折と、無機ナノフィラー(II)による正の形態複屈折とが打ち消し合うために、実質的に複屈折をほとんど生じることが無いため、光学レンズや光学フィルム等の光学部材として好適に使用することが出来る。
透明樹脂(I)の屈折率と無機ナノフィラー(II)の屈折率との差は0.1以上であることが好ましい。該屈折率の差が0.1以上であると、少量添加量で形態複屈折による複屈折改質効果が得られるため好ましい。
この熱可塑性樹脂組成物は、射出成形や延伸加工等、強い配向を受ける場合でも、透明樹脂(I)による負の配向複屈折と、無機ナノフィラー(II)による正の形態複屈折とが打ち消し合うために、実質的に複屈折をほとんど生じることが無いため、光学レンズや光学フィルム等の光学部材として好適に使用することが出来る。
透明樹脂(I)の屈折率と無機ナノフィラー(II)の屈折率との差は0.1以上であることが好ましい。該屈折率の差が0.1以上であると、少量添加量で形態複屈折による複屈折改質効果が得られるため好ましい。
特に射出成形時においては、強い剪断を受けるゲート付近では、透明樹脂(I)の負の配向複屈折が大きくなるが、強い剪断を受けることで無機ナノフィラー(II)の規則的配列による正の形態複屈折も同時に大きくなるため、射出成形で潜在的な課題であったゲート部付近での局所的な複屈折上昇を抑制することが出来る。
以下、実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物について、順に説明する。
本発明に用いる負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)としては、負の配向複屈折性を持つ透明樹脂であれば特に制限されない。負の配向複屈折性を持つ透明樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂、(メタ)アクリル系樹脂(A)等が挙げられる。透明樹脂の負の配向複屈折性が大きい場合には、大量の無機ナノフィラーが必要となる結果、得られる成形品が脆くなるうえ、経済性にも劣る場合があることから、透明樹脂の負の配向複屈折性は出来るだけ小さいことが好ましく、これらの中でも(メタ)アクリル系樹脂(A)が特に好ましい。以下で(メタ)アクリル系樹脂(A)について、詳細に記述する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)として好適に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)と、必要に応じて下記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位(b’)とを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)と前記芳香族ビニル構成単位(b’)との合計が、(メタ)アクリル系樹脂(A)中の全構成単位の合計(100モル%)に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)と前記芳香族ビニル構成単位(b’)との合計(100モル%)に対して前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が55モル%以上85モル%以下(より好ましくは、60〜75モル%)である(メタ)アクリル系樹脂である。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(a)(本明細書中「(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)」ともいう)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1〜16の炭化水素基である。例えば、R2は、炭素数1〜16のアルキル基、または、炭素数1〜4の炭化水素基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)で置換されていてもよい炭素数5〜16のシクロアルキル基であり、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。構成単位(a)が複数存在する場合、複数存在するR1、R2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、構成単位(a)はR2がメチル基、エチル基、ブチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、およびイソボルニル基から選ばれる少なくとも1種である(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位であることが好ましく、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類が挙げられる。構成単位(a)は、より好ましくは、メタアクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルから選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位である。(メタ)アクリル系樹脂(A)の構成単位(a)をメタアクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルから選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位とすることで、本発明の熱可塑性樹脂組成物に好適に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(A)は、負の小さい配向複屈折性を有し、かつ透明性に優れたものになる。
前記一般式(2)で表される脂肪族ビニルモノマー由来の構成単位(b)(本明細書中「脂肪族ビニル構成単位(b)」ともいう)において、R3は水素原子又はメチル基であり、R4は炭素数1〜4の炭化水素基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)で置換されていてもよい、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエン基、およびシクロヘキセン基からなる群より選択される。本明細書中において、「炭化水素基」は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、置換基を有していてもよい。
構成単位(b)が複数存在する場合、複数存在するR3、R4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。より好ましくは、R3が水素原子またはメチル基であり、R4がシクロヘキシル基、シクロヘキサジエン基、またはシクロヘキセン基から選択される少なくとも1種である構成単位であり、さらに好ましくはR3が水素原子またはメチル基であり、R4がシクロヘキシル基である。このような構成単位とすることで、負の小さい配向複屈折性を有し、かつ光学部材に求められる耐熱性や低吸水性を併せ持つ(メタ)アクリル系樹脂(A)が得られる。
前記一般式(3)で表される芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(b’)(本明細書中「芳香族ビニル構成単位(b’)」ともいう)において、R5は水素原子又はメチル基であり、R6は炭素数1〜4の炭化水素基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基;例えばメチル基、ブチル基)で置換されていてもよいフェニル基である。
好ましい一実施形態において、(メタ)アクリル系樹脂(A)は、前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、前記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位(b’)とを含み、その構成単位(a)と構成単位(b’)の合計に対する構成単位(a)の割合が55〜85モル%である(メタ)アクリル系樹脂(A’)において、芳香族ビニル構成単位(b’)中の芳香族二重結合の70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)を水素化して得られる熱可塑性樹脂である。すなわち、(メタ)アクリル系樹脂(A’)は、(メタ)アクリル樹脂(A)を水素化する前の熱可塑性樹脂である。
(メタ)アクリル系樹脂(A)において、前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、前記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)及び前記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位(b’)の合計とのモル比は、55:45〜85:15の範囲が好ましく、60:40〜80:20の範囲であるとより好ましく、70:30〜80:20の範囲であるとさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と脂肪族ビニル構成単位(b)と芳香族ビニル構成単位(b’)との合計に対する(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)のモル比が55モル%以上であれば、(メタ)アクリル系樹脂(A)は負の配向複屈折性となる。また、該構成単位(a)のモル比が85モル%以下であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物は、光学部材に求められる耐熱性や低吸水性を有し、かつ負の配向複屈折性も小さい範囲となる。
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、例えば、後述する方法により、(メタ)アクリル系樹脂(A’)の芳香族ビニル構成単位(b’)中の全芳香族二重結合の70%以上を水素化することにより得られる。
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、構成単位(b’)におけるR6(炭素数1〜4の炭化水素基を有することのあるフェニル基)のフェニル基の芳香族二重結合の一部または全部が水添された構成単位(すなわち、構成単位(b))を含んでよく、R6がフェニル基である構成単位(すなわちフェニル基の芳香族二重結合が水素化していない構成単位)を含んでもよい。R6のフェニル基の芳香族二重結合の一部または全部が水添された構成単位(すなわち、前記一般式(2)で表される構成単位(b)に相当する)としては、具体的には、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、α−メチルシクロヘキサン、α−メチルシクロヘキセン、α−メチルシクロヘキサジエン、o−メチルシクロヘキサン、o−メチルシクロヘキセン、o−メチルシクロヘキサジエン、p−メチルシクロヘキサン、p−メチルシクロヘキセン、p−メチルシクロヘキサジエンに由来する構成単位が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種の構成単位を含んでもよい。中でも、シクロヘキサンおよびα−メチルシクロヘキサンから選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)が水素化する前の(メタ)アクリル系樹脂(A’)は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、芳香族ビニルモノマーとを重合することにより製造することが出来る。重合には、公知の方法を用いることが出来、例えば、塊状重合法、溶液重合法などにより製造することが出来る。塊状重合法は、上記モノマー、重合開始剤を含むモノマー組成物を完全混合槽に連続的に供給し、100〜180℃で連続重合する方法等により行われる。上記モノマー組成物は、必要に応じて連鎖移動剤を含んでもよい。
重合開始剤は特に限定されないが、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過酸化ベンゾイル、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
連鎖移動剤は必要に応じて使用し、例えば、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
溶液重合法に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、イソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒を挙げることが出来る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)として好適に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合して(メタ)アクリル系樹脂(A’)を得た後に、該(メタ)アクリル系樹脂(A’)における芳香族ビニル構成単位中の芳香族二重結合の70%以上を水素化して得られる。上記水素化反応に用いられる溶媒は、前記の重合溶媒と同じであっても異なっていてもよい。例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、イソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒を挙げることが出来る。
水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることが出来る。例えば、水素圧力3〜30MPa、反応温度60〜250℃でバッチ式あるいは連続流通式で行うことが出来る。温度を60℃以上とすることにより反応時間がかかり過ぎることがなく、また250℃以下とすることにより分子鎖の切断やエステル部位の水素化を起こすことが少ない。
水素化反応に用いられる触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウム等の金属又はそれら金属の酸化物あるいは塩あるいは錯体化合物を、カーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土等の多孔性担体に担持した固体触媒等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)として好適に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(A)は、前記(メタ)アクリル系樹脂(A’)において、芳香族ビニル構成単位中の芳香族二重結合の70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)を水素化して得られたものである。即ち、(メタ)アクリル系樹脂(A)において、芳香族ビニル構成単位中に残存する芳香族二重結合の割合は30%以下である。30%を超える範囲であると、(メタ)アクリル系樹脂(A)の透明性が低下し、その結果、本発明の熱可塑性樹脂組成物の透明性が低下する場合がある。上記芳香族ビニル構成単位中に残存する芳香族二重結合の割合は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは10%未満、一層好ましくは5%以下、特に好ましくは5%未満の範囲である。
(メタ)アクリル系樹脂(A)における、前記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)と前記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位(b’)とのモル比は、透明性の観点から、100:0〜70:30が好ましく、100:0〜80:20がより好ましく、100:0〜90:10がさらに好ましく、100:0〜95:5が特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)は、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、難燃剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、染顔料等の、一般に用いられる添加剤を含んでもよい。(メタ)アクリル系樹脂(A)中の各種の添加剤の含有量は、例えば、0重量%〜10重量%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限はないが、強度及び成形性の観点から、100,000〜150,000であることが好ましく、110,000〜140,000であることがより好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)には、負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)の他に、透明性を損なわず、かつブレンド後も負の配向複屈折性を維持する範囲で他の樹脂をブレンドすることが出来る。他の樹脂の例としては、例えば、ポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられる。具体的には、商品名:エスチレンMS200(新日鉄住金化学(株)製)、レジスファイR−100(電気化学工業(株)製)、XIBOND 140(Polyscope社製)、トーヨースチロールT080(東洋スチレン(株)製)等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)のガラス転移温度は110〜135℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは120〜130℃である。負の配向複屈折性を有する透明樹脂のガラス転移温度が110℃未満であると、本発明で提供される熱可塑性樹脂組成物が高温下および高温高湿環境において寸法変化や反りを生じる場合があるため、好ましくない。また、負の配向複屈折性を有する透明樹脂のガラス転移温度が135℃より高温であると、成形時の配向歪みが大きくなる傾向があり、環境の変化により配向緩和に伴う形状変化を発生しやすくなるため、好ましくない場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる無機ナノフィラー(II)は、負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)よりも屈折率が大きく、かつ高アスペクト比の無機ナノフィラーである。高アスペクト比の無機ナノフィラーの例としては、無機ナノフィラーの最も長辺の長さをx、最も短辺の長さをzとした場合、平板状(x≒y>z)、短冊状(x>y>z)、針状(x>y≒z)等が挙げられる。無機ナノフィラーが高アスペクト比を有することで、本発明の熱可塑性樹脂組成物は延伸や射出成形金型内での剪断等による配向歪みが加えられた場合に、x軸(無機ナノフィラーの長辺)と樹脂分子鎖が同じ方向に配向する傾向にある。この際、厚み方向の複屈折(Rth)については、y軸およびz軸(y>z)はx軸を法線とする面内にあるが、例えばフィルムの延伸加工においては、延伸によってフィルムの厚み方向が押しつぶされる形となり、統計的にフィルムの厚み方向とz軸が一致しやすい傾向にある。
また、例えば平板の射出成形加工においては、金型の壁面と内部の樹脂流動によって強い剪断を受けることにより、統計的に平板の厚み方向とz軸が一致しやすい傾向にある。負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)は、配向によって厚み方向に対して負の配向複屈折を与えるのに対して、負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)よりも屈折率が大きく、かつ高アスペクト比の無機ナノフィラー(II)のz軸が成形品の厚み方向と一致し、x軸方向の屈折率が相対的に大きく、z軸方向の屈折率が相対的に小さくなり、形態複屈折によって正の複屈折が与えられる。その結果、負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)による負の配向複屈折と無機ナノフィラー(II)による正の形態複屈折が相殺し合うことで、厚み方向の複屈折がほとんどゼロである成形品を得ることが出来る。
また、面内方向の複屈折(Re)についても同様であり、例えばフィルムの延伸加工においては、延伸方向と無機ナノフィラーのx軸が同じ方向に配向する傾向がある結果、負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)は配向によって延伸方向に対して負の配向複屈折を与えるのに対して、負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)よりも屈折率が大きく、かつ高アスペクト比の無機ナノフィラー(II)のx軸が配向方向と一致し、x軸方向の屈折率が相対的に大きくなり、形態複屈折によって配向方向に対して正の複屈折が与えられる。その結果、負の配向複屈折性を有する透明樹脂(I)による負の配向複屈折と無機ナノフィラー(II)による正の形態複屈折が相殺し合うことで、配向方向の面内複屈折もほとんどゼロである成形品を得ることが出来る。特に射出成形時においては、強い剪断を受けるゲート付近では、透明樹脂(I)の負の配向複屈折が大きくなる傾向があるが、強い剪断を受けることで無機ナノフィラー(II)の規則的配列による正の形態複屈折も同時に大きくなるため、射出成形で潜在的な課題であったゲート部付近での選択的な複屈折上昇に関しても抑制することが出来る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる無機ナノフィラー(II)の例としては、グラファイト;TiS2、NbSe2、MoS2等の遷移金属ジカルコゲン化物;CrPS4等の二価金属リンカルコゲン化物;マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)等の典型金属の酸化物;MoO3、V2O5等の遷移金属の酸化物;FeOCl、VOCl、CrOCl等のオキシハロゲン化物;Zn(OH)2、Cu(OH)2等の水酸化物;Zr(HPO4)2・nH2O、Ti(HPO4)3・nH2O、Na(UO2PO4)3・nH2O等のリン酸塩;Na2Ti3O7、KTiNbO5、RbxMnxTi2−xO4等のチタン酸塩;Na2U2O7、K2U2O7等のウラン酸塩;KV3O8、K3V5O14、CaV6O16・nH2O、Na(UO2V3O9)・nH2O等のバナジン酸塩;KNb3O3、K4Nb6O17等のニオブ酸塩;Na2W4O13、Ag4W10O13等のタングステン酸塩;Mg2Mo2O7・Cs2Mo5O16、Cs2Mo7O22、Ag4Mo10O33等のモリブデン酸塩;モンモリロナイト、サポナイト、ハイデライト、ヘクトライト、ノントロナイト、スティブンサイト、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュライト、マスコバイト、フィロゴバイト、バイオタイト、レピドライト、バラゴナイト、テトラシリシックマイト、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、H2SiO5、H2Si14O29・5H2O等の、珪酸塩またはこの珪酸塩により構成される鉱物類等を挙げることが出来る。樹脂への分散性、得られる樹脂組成物の耐熱性等の観点、および形態複屈折付与の点から無機ナノフィラーの屈折率は高いほど好ましく、これらの中でもアルミナ(Al2O3)が特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる無機ナノフィラー(II)は、無機ナノフィラーの最も長辺の長さをx、最も短辺の長さをzとした場合、xの長さが10〜100nmであるのものが好ましく、20〜50nmであるものがより好ましい。xの長さが100nmよりも大きい場合、透明樹脂(I)中に分散した場合に透明樹脂(I)と無機ナノフィラー(II)との屈折率差によって光散乱が生じ、得られる成形体の透明性が劣る傾向がある。一方、xの長さが10nmよりも小さい場合、樹脂組成物中での配向性が悪くなるため、正の形態複屈折が発現しにくい傾向にあり、好ましくない。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる無機ナノフィラー(II)のアスペクト比(x/z)は3〜20であることが好ましく、4〜10であることがより好ましい。アスペクト比が3より小さい場合は配向性が悪くなる傾向があるため、正の形態複屈折が発現しにくくなる傾向にある。一方、アスペクト比が20より大きい場合、得られる成形体の透明性が劣る傾向があり、好ましくない。上記範囲にある無機ナノフィラーを用いることで、無機ナノフィラーは配向性が良い結果、正の形態複屈折の発現性に優れ、かつ透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物の成形品が得られる。
無機ナノフィラー(II)における最も長辺の長さxと、最も短辺の長さzの測定方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて樹脂中に存在する無機ナノフィラーを直接観察する方法等を用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる無機ナノフィラー(II)は、透明樹脂(I)中で凝集せずに均一に単分散していることが好ましい。樹脂中での分散性を向上させるためには、無機ナノフィラーの表面に有機低分子化合物を担持させることが好ましい。有機低分子化合物を担持させる方法は、いずれの方法を用いてもよいが、本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融成形を実施する場合にも十分な安定性を持つ結合が形成されていることが好ましいことから、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合等の化学結合によって担持させる方法が好ましい。
有機低分子化合物を無機ナノフィラーに担持させるための方法は特に限定されないが、例えば無機ナノフィラーを有機溶剤中で膨潤・分散させた分散液を調製し、この分散液に有機低分子化合物を添加して、常温または加温下で攪拌することによって行うことが出来る。
ここで用いる有機溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、シクロヘキサン等の鎖状および環状の脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;エチルアセテート、プロピオラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類; その他、水、ニトロベンゼン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることが出来る。これらは単独で用いるか、あるいは2種以上を混合して用いることが出来る。好ましくは芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール類、水であり、特に好ましいものとして、ジクロロメタン、キシレン、トルエン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンが挙げられる。
有機溶剤の使用量は、重量比で、無機ナノフィラー:溶剤が1:0〜1:100の範囲である。溶剤の使用量が少なすぎると分散液が高粘度となって取り扱いが困難になり、多すぎると後工程での溶剤除去効率が悪くなるおそれがあることから、無機ナノフィラー:溶剤が1:4〜1:60の範囲が好ましい。
無機ナノフィラーを有機溶剤中で膨潤・分散させる方法は特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることが出来る。例えば、攪拌槽を用いて両者を混合する方法、ブレンダーを用いて両者を混合する方法、ヘンシェルミキサー等の高速ミキサーを用いて両者を混合する方法等がある。また、この時に超音波を与えながら混合することが、膨潤度を増し、無機ナノフィラーの分散を均一にする為に好ましい。新有機化は、溶剤中に分散させた分散液の状態で用いてもよいし、溶剤を除去・乾燥した粉末の状態で用いてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、(i)負の配向複屈折性を有する透明樹脂および無機ナノフィラーを溶液中でブレンドし、その後、溶媒を除去する方法、(ii)負の配向複屈折性を有する透明樹脂および無機ナノフィラーを、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて溶融混練する方法等により製造することが出来る。(i)の方法の後で引き続き溶融混練を行う方法や、(ii)の方法で溶媒の除去と溶融混練を同時に行う方法を用いてもよい。樹脂中での無機ナノフィラーの分散性の向上を図ることが出来る点では、(i)の方法や、(i)の方法での溶媒除去と同時に、または溶媒除去に引き続き溶融混練を行う方法が好ましい。また、負の配向複屈折性を有する透明樹脂の重合工程で無機ナノフィラーをあらかじめ添加する方法を用いてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形方法は特に制限されず、公知の成形方法を採用することが出来る。例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、プレス成形法、押出成形法、ブロー成形法、真空成形法等が挙げられる。フィルム状に成形する場合は、Tダイを用いた押出成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法、また、溶液キャスト法を用いることも出来、一軸延伸加工、二軸延伸加工にも用いることが出来る。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形時の強い剪断によって樹脂配向しても複屈折をほとんど生じることが無い点から、射出成形法や延伸加工に好適に用いることが出来る。また、射出成形法の場合、無機ナノフィラー等の成分が樹脂組成物中に含まれると、成形品表面の微細な凹凸での外部散乱によって成形品のヘイズが高くなる場合がある。このような場合には断熱金型やヒート&クール成形法を用いることで、成形品表面が平滑になるため、成形品のヘイズを低く抑え、透明性を維持させることが出来る。
例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物の射出成形によって得られる成形体は、優れた透明性、低複屈折性の特徴を有するので、例えば、光学式情報記録媒体基板、カメラまたはカメラ付き携帯情報機器用の撮影用レンズ、レーザービームプリンター用等のFθレンズ、光学式情報記録装置用のピックアップレンズ等の光学レンズ、眼鏡レンズ、液晶表示装置、EL表示装置等のフラットパネルディスプレイ素子用基板、偏光板保護フィルム、タッチパネル基板等の光学フィルム、導光板等として好適に用いることが出来る。また、例えば本発明の熱可塑性樹脂組成物の二軸延伸加工によって得られる二軸延伸フィルムは、優れた透明性、低複屈折性、樹脂の配向による機械強度を有するので、IRカットフィルター、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、液晶セル基板用フィルム、液晶表示素子基板、タッチパネル基板等に好適に用いることが出来る。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例および比較例により何ら制限されるものではない。本明細書において、%は特記しない限り重量パーセントを示す。実施例および比較例における熱可塑性樹脂組成物の評価は以下のように行った。
<屈折率>
以下の合成例にて得られた(メタ)アクリル系樹脂を使用し、日精樹脂工業(株)製NP7−1F射出成形装置によって、50Φ、3.2mm厚の円盤状試料を作製し、リファインテック(株)製REFINE SAW,Loで縦40mm、横8mm、厚さ3.2mmに切削した。その試料の屈折率を、(株)アタゴ製多波長アッベ屈折計DR−M2で測定した。測定温度は20℃、測定波長は589nmであり、中間液にはモノブロモナフタレンを使用した。
また、以下の実施例及び比較例で使用した無機ナノフィラーに関しては、金型へ実施例に記載のアルミナナノ粒子の分散溶液をキャストしたのち溶媒を留去し、縦40mm、横8mm、厚さ3.2mmの短冊状の試料を得た。その試料の屈折率を上記と同様の方法で測定した。
以下の合成例にて得られた(メタ)アクリル系樹脂を使用し、日精樹脂工業(株)製NP7−1F射出成形装置によって、50Φ、3.2mm厚の円盤状試料を作製し、リファインテック(株)製REFINE SAW,Loで縦40mm、横8mm、厚さ3.2mmに切削した。その試料の屈折率を、(株)アタゴ製多波長アッベ屈折計DR−M2で測定した。測定温度は20℃、測定波長は589nmであり、中間液にはモノブロモナフタレンを使用した。
また、以下の実施例及び比較例で使用した無機ナノフィラーに関しては、金型へ実施例に記載のアルミナナノ粒子の分散溶液をキャストしたのち溶媒を留去し、縦40mm、横8mm、厚さ3.2mmの短冊状の試料を得た。その試料の屈折率を上記と同様の方法で測定した。
<共重合体の水素化率>
以下の合成例にて得られた(メタ)アクリル系樹脂について、水素化反応前後のUVスペクトル測定における260nmの吸収の減少率により水素化率を求めた。水素化反応前の樹脂の濃度(C1)における吸光度(A1)、水素化反応後の樹脂の濃度(C2)における吸光度(A2)から、以下の式より算出した。なお、樹脂の濃度とは、吸光度測定に用いる溶液中の樹脂濃度を指す。
水素化率(%)=[1−(A2×C1)/(A1×C2)]×100
以下の合成例にて得られた(メタ)アクリル系樹脂について、水素化反応前後のUVスペクトル測定における260nmの吸収の減少率により水素化率を求めた。水素化反応前の樹脂の濃度(C1)における吸光度(A1)、水素化反応後の樹脂の濃度(C2)における吸光度(A2)から、以下の式より算出した。なお、樹脂の濃度とは、吸光度測定に用いる溶液中の樹脂濃度を指す。
水素化率(%)=[1−(A2×C1)/(A1×C2)]×100
<固有複屈折>
以下の合成例にて得られた(メタ)アクリル系樹脂について、分子軌道法によって、構成単位それぞれの結合単位における誘電分極差を計算し、その体積平均として下記ローレンツ−ローレンツの式によって固有複屈折値を算出した。
Δn0=2/9π×(n2+2)2/n×ΔP・d・N/M
(Δn0:固有複屈折値、ΔP:分子鎖軸方向の誘電分極率と分子鎖軸に直角方向の誘電分極率との差、n:屈折率、d:密度、N:アボガドロ数、M:分子量)
以下の合成例にて得られた(メタ)アクリル系樹脂について、分子軌道法によって、構成単位それぞれの結合単位における誘電分極差を計算し、その体積平均として下記ローレンツ−ローレンツの式によって固有複屈折値を算出した。
Δn0=2/9π×(n2+2)2/n×ΔP・d・N/M
(Δn0:固有複屈折値、ΔP:分子鎖軸方向の誘電分極率と分子鎖軸に直角方向の誘電分極率との差、n:屈折率、d:密度、N:アボガドロ数、M:分子量)
<厚み測定>
以下の実施例、比較例にて得られた熱可塑性樹脂組成物の一軸延伸フィルムについて、デジタルマイクロメーター(ミツトヨ(株)製:高精度マイクロメータMDH−25MB)を用いて測定し、取得した成形品の測定点10点の平均を厚みとした。
以下の実施例、比較例にて得られた熱可塑性樹脂組成物の一軸延伸フィルムについて、デジタルマイクロメーター(ミツトヨ(株)製:高精度マイクロメータMDH−25MB)を用いて測定し、取得した成形品の測定点10点の平均を厚みとした。
<透明性評価>
以下の実施例、比較例にて得られた熱可塑性樹脂組成物の一軸延伸フィルムについて、ヘイズ(曇り度)はJIS K 7105、ASTM D1003に準じて、日本電色工業(株)製色差計COH―400にて測定した。ヘイズが2.0以下のものを良好(○)とした。
以下の実施例、比較例にて得られた熱可塑性樹脂組成物の一軸延伸フィルムについて、ヘイズ(曇り度)はJIS K 7105、ASTM D1003に準じて、日本電色工業(株)製色差計COH―400にて測定した。ヘイズが2.0以下のものを良好(○)とした。
<複屈折評価>
以下の実施例、比較例にて得られた熱可塑性樹脂組成物の一軸延伸フィルムについて、分光エリプソメータ(日本分光(株)製:M−220)にて、測定波長590nmで遅相軸を検出し、3次元屈折率測定モード(あおり角−8〜8°)で、波長590nmにおけるフィルム面内の主屈折率nx、ny(ただし、nx>ny)および厚み方向の主屈折率nzを測定し、下記式により、面内レタデーションReおよび厚み方向レタデーションRthを算出した。面内レタデーションReが0.0〜2.0nmのものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。また、厚み方向レタデーションRthが−2.0〜+2.0nmのものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
Re=(nx−ny)×d (d:フィルム厚み)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
以下の実施例、比較例にて得られた熱可塑性樹脂組成物の一軸延伸フィルムについて、分光エリプソメータ(日本分光(株)製:M−220)にて、測定波長590nmで遅相軸を検出し、3次元屈折率測定モード(あおり角−8〜8°)で、波長590nmにおけるフィルム面内の主屈折率nx、ny(ただし、nx>ny)および厚み方向の主屈折率nzを測定し、下記式により、面内レタデーションReおよび厚み方向レタデーションRthを算出した。面内レタデーションReが0.0〜2.0nmのものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。また、厚み方向レタデーションRthが−2.0〜+2.0nmのものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
Re=(nx−ny)×d (d:フィルム厚み)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
合成例1〔(メタ)アクリル系樹脂(A1)の製造〕
精製したメタクリル酸メチル(三菱ガス化学(株)製)77.0モル%と、精製したスチレン(和光純薬工業(株)製)23.0モル%と、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富(株)製、商品名:ルペロックス575)0.002モル%からなるモノマー組成物を、ヘリカルリボン翼付き10L完全混合槽に1kg/hで連続的に供給し、平均滞留時間2.5時間、重合温度150℃で連続重合を行った。重合槽の液面が一定となるよう底部から連続的に抜き出し、脱溶剤装置に導入してペレット状の(メタ)アクリル系樹脂(A1’)を得た。
得られた(メタ)アクリル系樹脂(A1’)をイソ酪酸メチル(関東化学(株)製)に溶解し、10重量%イソ酪酸メチル溶液を調製した。1000mLオートクレーブ装置に(メタ)アクリル系樹脂(A1’)の10重量%イソ酪酸メチル溶液を500重量部、10重量%パラジウム/炭素(Pd/C)(NEケムキャット(株)製)を1重量部仕込み、水素圧9MPa、200℃で15時間保持してベンゼン環部位を水素化した。フィルターにより触媒を除去し、脱溶剤装置に導入してペレット状の(メタ)アクリル系樹脂(A1)を得た。1H−NMRによる測定の結果、(メタ)アクリル系樹脂(A1)におけるメタクリル酸メチル(MMA)構成単位の割合は75モル%であった。また、波長260nmにおける吸光度測定の結果、(メタ)アクリル系樹脂(A1)のベンゼン環部位の水素化率は99%であった。得られた(メタ)アクリル系樹脂(A1)のガラス転移温度は120℃、飽和吸水率は0.9wt%、屈折率は1.494であった。また、得られた(メタ)アクリル系樹脂(A1)の固有複屈折は−0.0012であり、負の配向複屈折性を有していた。
精製したメタクリル酸メチル(三菱ガス化学(株)製)77.0モル%と、精製したスチレン(和光純薬工業(株)製)23.0モル%と、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富(株)製、商品名:ルペロックス575)0.002モル%からなるモノマー組成物を、ヘリカルリボン翼付き10L完全混合槽に1kg/hで連続的に供給し、平均滞留時間2.5時間、重合温度150℃で連続重合を行った。重合槽の液面が一定となるよう底部から連続的に抜き出し、脱溶剤装置に導入してペレット状の(メタ)アクリル系樹脂(A1’)を得た。
得られた(メタ)アクリル系樹脂(A1’)をイソ酪酸メチル(関東化学(株)製)に溶解し、10重量%イソ酪酸メチル溶液を調製した。1000mLオートクレーブ装置に(メタ)アクリル系樹脂(A1’)の10重量%イソ酪酸メチル溶液を500重量部、10重量%パラジウム/炭素(Pd/C)(NEケムキャット(株)製)を1重量部仕込み、水素圧9MPa、200℃で15時間保持してベンゼン環部位を水素化した。フィルターにより触媒を除去し、脱溶剤装置に導入してペレット状の(メタ)アクリル系樹脂(A1)を得た。1H−NMRによる測定の結果、(メタ)アクリル系樹脂(A1)におけるメタクリル酸メチル(MMA)構成単位の割合は75モル%であった。また、波長260nmにおける吸光度測定の結果、(メタ)アクリル系樹脂(A1)のベンゼン環部位の水素化率は99%であった。得られた(メタ)アクリル系樹脂(A1)のガラス転移温度は120℃、飽和吸水率は0.9wt%、屈折率は1.494であった。また、得られた(メタ)アクリル系樹脂(A1)の固有複屈折は−0.0012であり、負の配向複屈折性を有していた。
合成例2〔(メタ)アクリル系樹脂(A2)の製造〕
合成例1で使用したメタクリル酸メチルの使用量を32.0モル%とし、またスチレンの使用量を68.0モル%とした以外は、合成例1と同様にして(メタ)アクリル系樹脂(A2)を得た。1H−NMRによる測定の結果、メタクリル酸メチル構成単位の割合は30モル%であり、波長260nmにおける吸光度測定の結果、ベンゼン環部位の水素化反応率は99%であった。得られた(メタ)アクリル系樹脂(A2)のガラス転移温度は123℃、飽和吸水率は0.4wt%、屈折率は1.499であった。また、得られた(メタ)アクリル系樹脂(A2)の固有複屈折は+0.0069であり、正の配向複屈折性を有していた。
合成例1で使用したメタクリル酸メチルの使用量を32.0モル%とし、またスチレンの使用量を68.0モル%とした以外は、合成例1と同様にして(メタ)アクリル系樹脂(A2)を得た。1H−NMRによる測定の結果、メタクリル酸メチル構成単位の割合は30モル%であり、波長260nmにおける吸光度測定の結果、ベンゼン環部位の水素化反応率は99%であった。得られた(メタ)アクリル系樹脂(A2)のガラス転移温度は123℃、飽和吸水率は0.4wt%、屈折率は1.499であった。また、得られた(メタ)アクリル系樹脂(A2)の固有複屈折は+0.0069であり、正の配向複屈折性を有していた。
実施例1〔樹脂(A1)/板状アルミナ(B1)1wt%〕
合成例1で得た(メタ)アクリル系樹脂(A1)およびアルミナナノ粒子(板状)(B1)分散溶液(川研ファインケミカル(株)製、形状:20nm×20nm×5nm、固形分濃度:10wt%、溶媒:ジクロロメタン、屈折率1.66)を用い、(メタ)アクリル系樹脂(A1)とアルミナナノ粒子(板状)(B1)の重量比が99:1となるようジクロロメタン溶媒中で混合し、金型上で溶媒を蒸発させ、厚さ100μmのキャストフィルム(原反)を製膜した。得られた原反は延伸温度145℃、延伸速度150%/minにて一軸延伸し、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.5で良好(○)であり、Re/Rthは(−)0.9/−0.3で良好(○)であり、総合判定は合格(○)であった。
合成例1で得た(メタ)アクリル系樹脂(A1)およびアルミナナノ粒子(板状)(B1)分散溶液(川研ファインケミカル(株)製、形状:20nm×20nm×5nm、固形分濃度:10wt%、溶媒:ジクロロメタン、屈折率1.66)を用い、(メタ)アクリル系樹脂(A1)とアルミナナノ粒子(板状)(B1)の重量比が99:1となるようジクロロメタン溶媒中で混合し、金型上で溶媒を蒸発させ、厚さ100μmのキャストフィルム(原反)を製膜した。得られた原反は延伸温度145℃、延伸速度150%/minにて一軸延伸し、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.5で良好(○)であり、Re/Rthは(−)0.9/−0.3で良好(○)であり、総合判定は合格(○)であった。
実施例2〔樹脂(A1)/板状アルミナ(B1)2wt%〕
実施例1の(メタ)アクリル系樹脂(A1)とアルミナナノ粒子(板状)(B1)の重量比を98:2とした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.6で良好(○)であり、Re/Rthは(+)0.6/+0.3で良好(○)であり、総合判定は合格(○)であった。
実施例1の(メタ)アクリル系樹脂(A1)とアルミナナノ粒子(板状)(B1)の重量比を98:2とした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.6で良好(○)であり、Re/Rthは(+)0.6/+0.3で良好(○)であり、総合判定は合格(○)であった。
実施例3〔樹脂(A3)/板状アルミナ(B1)3wt%〕
実施例1で使用した(メタ)アクリル系樹脂(A1)の代わりに(メタ)アクリル樹脂(A3)(三菱ケミカル(株)製:アクリペットVH5(ガラス転移温度105℃、屈折率1.492、固有複屈折−0.0043))を用い、(メタ)アクリル系樹脂(A3)とアルミナナノ粒子(板状)(B1)の重量比を97:3とした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.8で良好(○)であり、Re/Rthは(+)1.6/+1.8で良好(○)であり、総合判定は合格(○)であった。
実施例1で使用した(メタ)アクリル系樹脂(A1)の代わりに(メタ)アクリル樹脂(A3)(三菱ケミカル(株)製:アクリペットVH5(ガラス転移温度105℃、屈折率1.492、固有複屈折−0.0043))を用い、(メタ)アクリル系樹脂(A3)とアルミナナノ粒子(板状)(B1)の重量比を97:3とした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.8で良好(○)であり、Re/Rthは(+)1.6/+1.8で良好(○)であり、総合判定は合格(○)であった。
実施例4〔樹脂(A1)/短冊状アルミナ(B2)1wt%〕
実施例1で使用したアルミナナノ粒子(板状)(B1)分散溶液の代わりに、アルミナナノ粒子(短冊状)(B2)分散溶液(川研ファインケミカル(株)製、形状:50nm×10nm×5nm、固形分濃度:10wt%、溶媒:ジクロロメタン、屈折率1.66)を用いた以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.6で良好(○)であり、Re/Rthは(+)0.8/0.0で良好(○)であり、総合判定は合格(○)であった。
実施例1で使用したアルミナナノ粒子(板状)(B1)分散溶液の代わりに、アルミナナノ粒子(短冊状)(B2)分散溶液(川研ファインケミカル(株)製、形状:50nm×10nm×5nm、固形分濃度:10wt%、溶媒:ジクロロメタン、屈折率1.66)を用いた以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.6で良好(○)であり、Re/Rthは(+)0.8/0.0で良好(○)であり、総合判定は合格(○)であった。
比較例1〔樹脂(A1)〕
実施例1の(メタ)アクリル系樹脂(A1)とアルミナナノ粒子(板状)(B1)の重量比を100:0(アルミナナノ粒子無添加)とした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.4で良好(○)であり、Re/Rthは(−)4.2/−3.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
実施例1の(メタ)アクリル系樹脂(A1)とアルミナナノ粒子(板状)(B1)の重量比を100:0(アルミナナノ粒子無添加)とした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.4で良好(○)であり、Re/Rthは(−)4.2/−3.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
比較例2〔樹脂(A1)/球状アルミナ(B3)1wt%〕
実施例1で使用したアルミナナノ粒子(板状)(B1)分散溶液の代わりに、アルミナナノ粒子(球状)(B3)(川研ファインケミカル(株)製、形状:20nm×20nm×20nm、固形分濃度:10wt%、溶媒:ジクロロメタン、屈折率1.66)を用いた以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.6で良好(○)であり、Re/Rthは(−)4.1/−3.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
実施例1で使用したアルミナナノ粒子(板状)(B1)分散溶液の代わりに、アルミナナノ粒子(球状)(B3)(川研ファインケミカル(株)製、形状:20nm×20nm×20nm、固形分濃度:10wt%、溶媒:ジクロロメタン、屈折率1.66)を用いた以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.6で良好(○)であり、Re/Rthは(−)4.1/−3.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
比較例3〔樹脂(A1)/球状アルミナ(B3)5wt%〕
比較例2の(メタ)アクリル系樹脂(A1)とアルミナナノ粒子(球状)(B3)の重量比を95:5とした以外は比較例2と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは2.8で不良(×)であり、Re/Rthは(−)4.2/−3.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
比較例2の(メタ)アクリル系樹脂(A1)とアルミナナノ粒子(球状)(B3)の重量比を95:5とした以外は比較例2と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは2.8で不良(×)であり、Re/Rthは(−)4.2/−3.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
比較例4〔樹脂(A2)〕
比較例1で用いた(メタ)アクリル系樹脂(A1)の代わりに合成例2で得た(メタ)アクリル系樹脂(A2)を使用した以外は比較例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.4で良好(○)であり、Re/Rthは(+)10.5/+12.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
比較例1で用いた(メタ)アクリル系樹脂(A1)の代わりに合成例2で得た(メタ)アクリル系樹脂(A2)を使用した以外は比較例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.4で良好(○)であり、Re/Rthは(+)10.5/+12.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
比較例5〔樹脂(A2)/板状アルミナ(B1)3wt%〕
実施例3で用いた(メタ)アクリル系樹脂(A1)の代わりに合成例2で得た(メタ)アクリル系樹脂(A2)を使用した以外は実施例3と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.8で良好(○)であり、Re/Rthは(+)14.5/+16.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
実施例3で用いた(メタ)アクリル系樹脂(A1)の代わりに合成例2で得た(メタ)アクリル系樹脂(A2)を使用した以外は実施例3と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.8で良好(○)であり、Re/Rthは(+)14.5/+16.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
比較例6〔樹脂(A2)/短冊状アルミナ(B1)1wt%〕
実施例4で用いた(メタ)アクリル系樹脂(A1)の代わりに合成例2で得た(メタ)アクリル系樹脂(A2)を使用した以外は実施例4と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.6で良好(○)であり、Re/Rthは(+)13.0/+15.5で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
実施例4で用いた(メタ)アクリル系樹脂(A1)の代わりに合成例2で得た(メタ)アクリル系樹脂(A2)を使用した以外は実施例4と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.6で良好(○)であり、Re/Rthは(+)13.0/+15.5で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
比較例7〔樹脂(A3)〕
比較例1で用いた(メタ)アクリル系樹脂(A1)の代わりに(メタ)アクリル樹脂(A3)(三菱ケミカル(株)製:アクリペットVH5(ガラス転移温度105℃、屈折率1.492、固有複屈折−0.0043))を使用した以外は比較例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.4で良好(○)であり、Re/Rthは(−)12.2/−14.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
比較例1で用いた(メタ)アクリル系樹脂(A1)の代わりに(メタ)アクリル樹脂(A3)(三菱ケミカル(株)製:アクリペットVH5(ガラス転移温度105℃、屈折率1.492、固有複屈折−0.0043))を使用した以外は比較例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの厚みは40μmであり、ヘイズは0.4で良好(○)であり、Re/Rthは(−)12.2/−14.0で不良(×)であり、総合判定は不合格(×)であった。
Claims (8)
- 負の配向複屈折性を有する熱可塑性樹脂と無機ナノフィラーとを含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記無機ナノフィラーの屈折率が前記熱可塑性樹脂の屈折率よりも大きく、かつ前記無機ナノフィラーの最長辺の長さをx、最短辺の長さをzとした場合のxが10〜100nmであり、かつアスペクト比(x/z)が3〜20の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂の屈折率と前記無機ナノフィラーの屈折率との差が0.1以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記無機ナノフィラーがアルミナを含有する、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)と、必要に応じて下記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位(b’)とを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)と前記芳香族ビニル構成単位(b’)との合計が、前記熱可塑性樹脂中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)と前記芳香族ビニル構成単位(b’)との合計に対して前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が55モル%以上85モル%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記無機ナノフィラーが、前記熱可塑性樹脂と前記無機ナノフィラーとの合計重量に対して3重量%以下の量で含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、光学フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、加飾用フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
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JP2019051405A JP2020152792A (ja) | 2019-03-19 | 2019-03-19 | 熱可塑性樹脂組成物 |
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JP2019051405A JP2020152792A (ja) | 2019-03-19 | 2019-03-19 | 熱可塑性樹脂組成物 |
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---|---|---|---|---|
US11396165B2 (en) | 2017-06-13 | 2022-07-26 | Riken Technos Corporation | Multilayer film |
US11465323B2 (en) | 2016-09-05 | 2022-10-11 | Riken Technos Corporation | Method for producing multilayer film |
-
2019
- 2019-03-19 JP JP2019051405A patent/JP2020152792A/ja active Pending
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