JP2020150716A - 電動モータおよびこれを備えた電動アクチュエータ - Google Patents

電動モータおよびこれを備えた電動アクチュエータ Download PDF

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Abstract

【課題】電動モータのステータのケーシングに対する固定の信頼性及び軸方向の位置決め精度を高める。【解決手段】電動モータ4は、ケーシング40と、ケーシング40の内周に固定されたステータ41と、回転軸Oを中心としてケーシング40に対して回転可能のロータ42とを有する。ケーシング40は、ケーシング本体40a及び蓋部40bを有する。ケーシング本体40aの内周面40a3に、蓋部40bの外周面40b1およびステータコア41aの外周面を嵌合させ、ケーシング本体40aと蓋部40bとでステータコア41aを軸方向両側から挟持固定する。【選択図】図3

Description

本発明は、電動モータおよびこれを備えた電動アクチュエータに関する。
外部から駆動力が入力される入力側と、入力された駆動力を出力する出力側とで、回転位相差を変化させることが可能な電動アクチュエータとして、例えば、自動車のエンジンの吸気バルブと排気バルブの一方または両方の開閉タイミングを変更する可変バルブタイミング装置に用いられるものが知られている。
一般的に、この種の電動アクチュエータは、電動モータと、電動モータによる駆動力を得て回転力を減速して伝達する減速機とを備えている(特許文献1参照)。電動モータによって減速機が駆動されないときは、入力側の部材(例えば、スプロケット)と出力側の部材(例えば、カムシャフト)とが一体に回転する。電動モータによって減速機が駆動されると、減速機によって入力側の部材に対する出力側の部材の回転位相差が変更され、これによってバルブの開閉タイミングが調整される。
特開2018−194151号公報
上記の特許文献1に示されている電動アクチュエータでは、ケーシングの内周に電動モータのステータが固定されている。ステータは、ロータとの間に形成されるモータギャップを高精度に設定するために、ケーシングに対して所定の位置に正確に固定する必要がある。例えば、ステータをケーシングに接着で固定すると、長期間の使用等により接着強度が低下したときに、ステータがケーシングに対して軸方向にずれる恐れがあるため、固定の信頼性に欠ける。
例えば、止め輪等の機械的な係合手段を用いて、ステータをケーシングに対して軸方向に位置決めすることも考えられる。この場合、ステータのケーシングに対する軸方向移動を確実に規制することができる。しかし、止め輪は、ケーシングに設けた環状溝に取り付けられるため、止め輪と環状溝との嵌め合い隙間の分だけモータステータが軸方向にガタついてしまうため、ステータのケーシングに対する軸方向の位置決め精度を十分に高めることができない。
そこで、本発明は、電動モータのステータのケーシングに対する固定の信頼性及び軸方向の位置決め精度を高めることを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、ケーシングと、前記ケーシングの内周に固定されたステータと、回転軸を中心として前記ケーシングに対して回転可能のロータとを有する電動モータであって、前記ケーシングが第一ケーシング部材及び第二ケーシング部材を有し、前記第一ケーシング部材の内周面に、前記第二ケーシング部材の外周面および前記ステータの外周面を嵌合させ、前記第一ケーシング部材と前記第二ケーシング部材とで前記ステータを軸方向両側から挟持固定した電動モータを提供する。
このように、第一ケーシング部材の内周面に、第二ケーシング部材の外周面およびステータの外周面を嵌合させることで、第一ケーシング部材に対して第二ケーシング部材及びステータを同軸上に位置決めすることができる。この状態で、第一ケーシング部材と第二ケーシング部材とでステータを軸方向両側から挟持固定することで、ケーシングに対してステータを軸方向で位置決めすることができる。このように、第一及び第二ケーシング部材でステータを軸方向両側から挟持固定することで、接着等よりも固定の信頼性が高められると共に、ステータとケーシングとを軸方向のガタつきなく固定することができる。
前記ロータと一体に回転するモータ軸を設けた場合、前記モータ軸の軸方向一方の端部を前記第一ケーシング部材に対して回転可能に支持する第一の軸受と、前記モータ軸の軸方向他方の端部を前記第二ケーシング部材に対して回転可能に支持する第二の軸受とを設けることが好ましい。上記のように、第一ケーシング部材と第二ケーシング部材は、内周面と外周面の嵌合により同軸上に配されると共に、ステータを介した軸方向の当接により軸方向で互いに位置決めされる。こうして、半径方向および軸方向で互いに位置決めされた第一及び第二ケーシング部材で、第一および第二の軸受を介してモータ軸の軸方向両端を支持することで、モータ軸の回転精度が高められるため、モータ性能が安定する。
上記の電動モータは、例えば、外部からの駆動力によって前記回転軸を中心として回転可能の駆動回転体と、前記回転軸を中心として回転可能の従動回転体と、前記電動モータで駆動され、前記駆動回転体と前記従動回転体とを相対回転させる差動装置とを備えた電動アクチュエータに組み込まれる。前記差動装置は、前記駆動回転体および従動回転体のそれぞれと噛み合い、前記ロータの回転に伴って自転可能且つ前記回転軸を中心として公転可能の遊星回転体と、前記遊星回転体と前記駆動回転体との間に形成された第一の減速機と、前記遊星回転体と前記従動回転体との間に形成された第二の減速機とを有し、前記第一の減速機と前記第二の減速機の減速比が異なる。このように、回転軸を中心として公転(偏心運動)する遊星回転体を有する場合、上記のようにモータ軸の軸方向両端を軸受を介してケーシングで支持して、モータ軸の振れ回りを抑えることが特に好ましい。
上記の電動アクチュエータは、前記駆動回転体が、エンジンからの回転駆動力が伝達されるスプロケットと一体に回転し、前記従動回転体がカムシャフトと一体に回転する、可変バルブタイミング装置として使用することができる。
以上のように、電動モータのステータを第一及び第二ケーシング部材で軸方向両側から挟持固定することで、ステータのケーシングに対する固定の信頼性及び軸方向の位置決め精度を高めることができる。
本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータの断面図(図2のI−I線断面図)である。 上記電動アクチュエータを反シリンダヘッド側からみた正面図である。 図1の拡大図である。 図1のIV−IV線断面図である。 図1のV−V線断面図である。 他の実施形態に係る電動アクチュエータの断面図である。
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
図1に示す電動アクチュエータ1は、例えばエンジンのシリンダヘッド10(図1に鎖線で示す)に設けられる可変バルブタイミング装置として用いられる。この電動アクチュエータ1は、駆動回転体2と、シリンダヘッド10に設けられたカムシャフト(図示省略)と一体に回転する従動回転体3と、電動モータ4と、差動装置5とを主要な構成要素として備える。
駆動回転体2は、全体として軸方向両端が開口した円筒状をなし、反シリンダヘッド10側(図1の左側)の端部に設けられた小径部21と、小径部21のシリンダヘッド10側(図1の右側)に設けられ、内径及び外径が小径部21よりも大きい大径部22と、小径部21と大径部22とを連結する連結部23とを有する。大径部22の外周にはスプロケット20が固定される。スプロケット20は、大径部22の外周面にトルク伝達可能に取り付けられ、エンジンからチェーンを介して伝達された駆動力により回転駆動される。駆動回転体2およびスプロケット20は、回転軸Oを中心として同軸上に配置され、エンジンからの駆動力により回転軸Oを中心として一体に回転する。尚、本実施形態では、スプロケット20を大径部22の外周に圧入固定した別部材で構成した場合を例示しているが、この例示に限らず、大径部22とスプロケット20とを一体に形成してもよい。
従動回転体3は、駆動回転体2から伝達された駆動力を出力する部材であり、出力軸31と、出力軸31の反シリンダヘッド10側(図1の左側)に設けられた従動ギア32とを有する。出力軸31と従動ギア32は回転軸O上で同軸に配置され、センタボルト33によって互いに結合されている。そのため、出力軸31と従動ギア32は回転軸Oを中心として一体に回転する。出力軸31は、カムシャフトとトルク伝達可能に連結される。尚、出力軸31と従動ギア32、あるいは出力軸31とカムシャフト、あるいはこれらの全てを一体に形成してもよい。
駆動回転体2の小径部21の内周面と出力軸31の外周面とは摺動可能な状態で嵌合している。また、駆動回転体2の大径部22の内周面と出力軸31の外周面との間には、軸受11が設けられる。軸受11としては、例えば転がり軸受、具体的には玉軸受が使用でき、図示例では深溝玉軸受が使用されている。軸受11の外輪は駆動回転体2の内周面に固定され、軸受11の内輪は出力軸31の外周面に固定される。これにより、駆動回転体2と従動回転体3との間の相対回転が許容される。尚、駆動回転体2の小径部21の内周面と出力軸31の外周面との間にも軸受(例えば、滑り軸受)を配してもよい。
電動モータ4は、ケーシング40と、ケーシング40の内周に固定されたステータ41と、ステータ41の半径方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータ42とを有するラジアルギャップ型のモータである。図示例では、ケーシング40の内周に、ステータ41及びロータ42だけでなく、後述する差動装置5も収容される。
ステータ41は、軸方向に積層した複数の電磁鋼板から成るステータコア41aと、ステータコア41aに装着された絶縁材料から成るボビン41bと、ボビン41bに巻き回されたステータコイル41cとを有する。ロータ42は、環状のロータコア(ロータインナ)42aと、ロータコア42aの外周に取り付けられた複数のマグネット42bとを有する。ステータ41とロータ42の間に作用する励磁力により、ロータ42が回転軸Oを中心として回転する。
ケーシング40は、回転することなくその場に静止する静止側の部材である。ケーシング40は、組み立ての都合上、第一ケーシング部材としての有底円筒状のケーシング本体40aと、第二ケーシング部材としての蓋部40bとに分割されている。ケーシング本体40aと蓋部40bとは、ボルト等の締結手段を用いて一体化される。ケーシング本体40aは、円筒部40a1と、円筒部40a1のシリンダヘッド10側の端部から内径側に延びるフランジ部40a2とを一体に有する。蓋部40bには、ステータ41へ給電するための給電線や、ロータ42の回転数を検知する図示しない回転数検知センサに接続される信号線を、外部に引き出すための筒状の突起40c,40d(図2参照)が設けられている。
ケーシング本体40aのフランジ部40a2の内周面と駆動回転体2の外周面との間には軸受12が設けられ、これにより駆動回転体2がケーシング40に対して回転可能に支持される。また、蓋部40bの内周面と従動回転体3の従動ギア32の外周面との間には軸受13が設けられ、これにより従動回転体3の反シリンダヘッド10側の端部がケーシング40に対して回転可能に支持される。軸受12、13としては、例えば転がり軸受、具体的には玉軸受が使用でき、図示例では深溝玉軸受が使用されている。軸受12の外輪はケーシング本体40aの内周面に固定され、軸受12の内輪は駆動回転体2の外周面に固定される。軸受13の外輪はケーシング40の蓋部40bの内周面に固定され、軸受12の内輪は従動回転体3の外周面に固定される。
図3に拡大して示すように、ケーシング40の本体40aの反シリンダヘッド10側(図中左側)の端部付近に設けられた円筒面状の内周面40a3と、蓋部40bのシリンダヘッド10側(図中右側)の端部付近に設けられた円筒面状の外周面40b1とが嵌合している。これにより、本体40aと蓋部40bとの芯出しが行われる。
ケーシング本体40aの内周面40a3には、ステータ41の外周面、図示例ではステータコア41aの円筒面状の外周面が嵌合している。これにより、本体40aとステータ41との芯出しが行われる。この状態で、ケーシングの本体40aと蓋部40bとでステータ41が軸方向両側から挟持固定されている。具体的には、本体40aの内周面に設けられた段部40a4と、蓋部40bのシリンダヘッド10側の端部40b2とで、ステータコア41aが軸方向両側から挟持固定される。本実施形態では、ステータ41の外周面とケーシング本体40aの内周面との間に接着剤等は介在しておらず、ステータ41は、ケーシング本体40aと蓋部40bとの挟持のみでケーシング40に固定される。このとき、本体40aの反シリンダヘッド10側の端部40a5と、蓋部40bの外周面に設けられた段部40b3とは軸方向で当接しておらず、これらの間には軸方向の隙間Gが設けられている。
ケーシング本体40aと蓋部40bとの嵌合領域の軸方向長さLが短すぎると、両者の同軸度が不足するおそれがある。従って、両者の嵌合領域の軸方向長さLは、例えば、当該嵌合領域におけるケーシング40の肉厚tの1倍以上、好ましくは2倍以上とすることが好ましい。また、ケーシング本体40aと蓋部40bとの嵌合領域では、両者が半径方向に重なるため、半径方向の肉厚が嵩む傾向にある。このため、両者の嵌合領域では、各部材をなるべく薄肉に形成することが好ましい。この場合、両者の嵌合領域の軸方向長さLが長すぎると、薄肉に形成した各部材の強度が不足するおそれがある。従って、ケーシング本体40aと蓋部40bとの嵌合領域は、両者の同軸度を確保できる範囲でなるべく小さくすることが好ましい。
ステータ41は、以下の手順でケーシング40に固定される。まず、ステータコア41aに、ステータコイル41cが巻回されたボビン41bを取り付けてステータ41を組み立てる。そして、ステータ41をケーシング本体40aの内周に反シリンダヘッド10側から挿入し、ステータコア41aの外周面と本体40aの内周面40a3とを嵌合させながら、ステータコア41aのシリンダヘッド10側の端面をケーシング本体40aの段部40a4に当接させる。その後、蓋部40bのシリンダヘッド10側の端部を、ケーシング本体40aの内周に反シリンダヘッド10側から挿入し、蓋部40bの外周面40b1と本体40aの内周面40a3とを嵌合させる。そして、蓋部40bのシリンダヘッド10側の端部40b2とケーシング本体40aの段部40a4とでステータコア41aを軸方向両側から挟持する。このとき、ケーシング本体40aの反シリンダヘッド10側の端部40a5と蓋部40bのシリンダヘッド10側の段部40b3との間に軸方向隙間Gが残っていることで、ケーシング本体40aと蓋部40bとでステータコア41aを軸方向両側から確実に挟持することができる。この状態で、ケーシング本体40aと蓋部40bとをボルト等で固定することにより、電動モータ4の組立が完了する。
このように、ケーシング本体40aと蓋部40bとでステータ41を挟持固定することで、ステータ41のケーシング40に対する軸方向移動が完全に規制されるため、軸方向のガタつきが無い状態で、高い信頼性で両者を固定することができる。特に、本実施形態では、後述するように遊星回転体52が回転軸Oを中心として公転(偏心回転)することで偏心部材51に振れ回りが生じ、この振れ回りの振動がケーシング40に伝達される。この場合でも、ケーシング本体40aと蓋部40bでステータ41が挟持固定されていることで、ステータ41のケーシング40に対する位置ズレが防止され、モータ性能の低下を回避できる。
また、上記のように、ケーシング本体40aと蓋部40bとを固定する工程で、ステータ41をケーシング40に対して半径方向及び軸方向で位置決めしながら固定することができるため、これらを別工程で行う場合と比べて工数が削減されて、生産性が向上する。
尚、上記の例では、ケーシング本体40aの内周面40a3に蓋部40bの外周面40b1およびステータコア41aの外周面を嵌合させているが、これとは逆に、蓋部40bの内周面に、ケーシング本体40aの外周面およびステータコア41aの外周面を嵌合させた構成としてもよい。すなわち、ケーシング本体40aを第二ケーシング部材とし、蓋部40bを第一ケーシング部材としてもよい。
差動装置5は、ロータ42と一体に回転するモータ軸としての偏心部材51と、偏心部材51の内周に配置された遊星回転体52と、偏心部材51と遊星回転体52の間に配置された軸受53,54と、遊星回転体52と駆動回転体2との間に設けられた第一の減速機5aと、遊星回転体52と従動回転体3との間に設けられた第二の減速機5bとを主要な構成要素として備える。
偏心部材51は、全体として軸方向両端が開口した円筒状を成している。図示例の偏心部材51は、ロータコア42aの内周に固定された第一筒部51aと、第一筒部51aより大径に形成され、第一筒部51aからシリンダヘッド10側に突出する第二筒部51bと、第一筒部51aから反シリンダヘッド10側に突出する第三筒部51cとを一体に有する。偏心部材51の各筒部51a,51b,51cの外周面は、回転軸Oと同軸に形成された円筒面である。偏心部材51の第一筒部51aおよび第二筒部51bの内周面には、回転軸Oに対して偏心した円筒面状の偏心内周面51a1、51b1が形成される。偏心部材51の第三筒部51cの内周面は、回転軸Oと同軸に形成された円筒面である。偏心部材51は、偏心内周面51a1、51b1を通る半径方向の断面で見ると、厚肉部分と薄肉部分とを有する(図4および図5参照)。
図1に示すように、偏心部材51のシリンダヘッド10側の端部は、軸受14によってケーシング40に対して回転支持される。軸受14は、例えば転がり軸受(深溝玉軸受)で構成される。本実施形態では、軸受14の外輪がケーシング本体40aの内周面に固定され、軸受14の内輪が偏心部材51の第二筒部51bの外周面に固定される。
遊星回転体52は、全体として軸方向両端が開口した円筒状を成している。図示例の遊星回転体52は、第一筒部52aと、第一筒部52aの反シリンダヘッド10側(図中左側)に設けられた第二筒部52bとを一体に有する。第一筒部52aの内周面には第一内歯部57が形成され、第二筒部52bの内周面には第二内歯部58が形成される。第一内歯部57と第二内歯部58は、何れも半径方向の断面が曲線(例えばトロコロイド系曲線)を描く複数の歯で構成されている。第二内歯部58のピッチ円径は第一内歯部57のピッチ円径よりも小さい。また、第二内歯部58の歯数は、第一内歯部57の歯数よりも少ない。
遊星回転体52の第一内歯部57は、駆動回転体2の小径部21の外周面に設けられた第一外歯部55と噛み合う。また、遊星回転体52の第二内歯部58は、従動回転体3の従動ギア32の外周面に設けられた第二外歯部56と噛み合う。第一外歯部55および第二外歯部56は、何れも半径方向の断面が曲線(例えばトロコイド系曲線)を描く複数の歯で形成されている。第二外歯部56のピッチ円径は第一外歯部55のピッチ円径よりも小さく、第二外歯部56の歯数は、第一外歯部55の歯数よりも少ない。
第一外歯部55の歯数は、互いに噛み合う第一内歯部57の歯数よりも少なく、好ましくは一つ少ない。同様に、第二外歯部56の歯数も、互いに噛み合う第二内歯部58の歯数よりも少なく、好ましくは一つ少ない。一例として、本実施形態では、第一内歯部57の歯数を24個、第二内歯部58の歯数を20個、第一外歯部55の歯数を23個、第二外歯部56の歯数を19個としている。
互いに噛み合う第一内歯部57と第一外歯部55は第一の減速機5aを構成し、第二内歯部58と第二外歯部56は第二の減速機5bを構成する。第一の減速機5aおよび第二の減速機5bは、何れもサイクロイド減速機と呼ばれるものである。二つの減速機5a,5bの減速比は異なっており、本実施形態では第一の減速機5aの減速比を第二の減速機5bの減速比よりも大きくしている。このように二つの減速機5a,5bの減速比を異ならせることで、後で述べるように、エンジンに駆動される出力軸31の回転を、電動モータ4の作動状態に応じて変化させる(差動させる)ことが可能となる。
軸受53は、例えば転がり軸受で構成され、図示例では針状ころ軸受で構成される。この軸受53は、偏心部材51の第一筒部51aの偏心内周面51a1と、遊星回転体52の第二筒部52bの円筒面状の外周面との間に配置される。従って、遊星回転体52の第二筒部52bの外周面および内周面の中心P(図4参照)は、回転軸Oに対して偏心した位置にある。軸受54は、例えば転がり軸受で構成され、図示例では深溝玉軸受で構成される。この軸受54は、偏心部材51の第二筒部51bの偏心内周面51b1と、遊星回転体52の第一筒部52aの円筒面状の外周面との間に配される。従って、遊星回転体52の第一筒部52aの外周面および内周面の中心P(図3参照)は、回転軸Oに対して偏心した位置にある。これらの軸受53,54により、遊星回転体52が偏心部材51に対して相対回転可能に支持される。
図4は、第一の減速機5aで切断した断面図(図1におけるIV−IV線矢視断面図)、図5は、第二の減速機5bで切断した断面図(図1におけるV−V線矢視断面図)である。
図4に示すように、第一内歯部57の中心Pは、回転軸Oに対して径方向に距離E偏心している。従って、第一内歯部57と第一外歯部55は、周方向の一部の領域で互いに噛み合った状態となり、これとは径方向反対側の領域で噛み合わない状態となる。また、図5に示すように、第二内歯部58の中心Pも回転軸Oに対して径方向に距離E偏心しているため、第二内歯部58と第二外歯部56とは、周方向の一部の領域で互いに噛み合った状態となり、これとは径方向反対側の領域で噛み合わない状態となる。なお、図4及び図5では、互いの矢視方向が異なっているため、第一内歯部57と第二内歯部58のそれぞれの偏心方向が各図において互いに左右逆方向に示されているが、第一内歯部57及び第二内歯部58は同じ方向に同じ距離Eだけ偏心している。
ここで、差動装置5の減速比をi、モータ回転速度をn、スプロケット20の回転速度をnとすると、出力回転位相角度差は(n−n)/iとなる。
また、第一減速機5aの減速比をi1、第二減速機5bの減速比をi2とすると、本実施形態に係る差動装置5の減速比は、下記式1によって求められる。
減速比=i1×i2/|i1−i2|・・・式1
例えば、第一減速機5aの減速比(i1)が24/23、第二減速機5bの減速比(i2)が20/19の場合、上記式1から減速比は120となる。このように、本実施形態に係る差動装置5では、大きな減速比によって高トルクを得ることが可能である。
本実施形態の電動アクチュエータ1では、遊星回転体52の内周に駆動回転体2(小径部21)および従動回転体3(出力軸31、従動ギア32)を配置しているため、遊星回転体52を駆動する電動モータ4として中空モータを採用し、この中空モータを遊星回転体52の外周に配置するレイアウトを採用することができる。そのため、スペース効率が良好となり、電動アクチュエータのコンパクト化(特に軸方向寸法のコンパクト化)を達成できるメリットが得られる。
続いて、図1〜図5を参照しつつ、上記の電動アクチュエータ1の動作について説明する。
エンジンの動作中は、スプロケット20に伝達されたエンジンからの駆動力によって駆動回転体2が回転する。電動モータ4に通電されず、電動モータ4から差動装置5への入力がない状態では、駆動回転体2の回転が遊星回転体52を介して従動回転体3に伝達され、従動回転体3は駆動回転体2と同期して回転する。すなわち、駆動回転体2と遊星回転体52、遊星回転体52と従動回転体3とが、それぞれに設けられた歯(第一外歯部55と第一内歯部57、第二外歯部56と第二内歯部58)によって互いにトルク伝達可能に係合しているため、駆動回転体2が回転すると、これらの係合関係を維持しながら駆動回転体2と遊星回転体52と従動回転体3とが同期して回転する。これにより、駆動回転体2に設けられたスプロケット20と従動回転体3の出力軸31に連結されたカムシャフトとが同期して回転する。
その後、例えばエンジンがアイドル運転などの低回転域に移行した際には、公知の手段、例えば、電子制御などによって電動モータ4に通電し、ロータ42およびこれに結合された偏心部材51を回転軸Oを中心として一体に回転させる。これにより、偏心部材51の偏心内周面51a1、51b1、軸受53、54、および遊星回転体52が、回転軸Oを中心とした偏心運動(公転)を行う。偏心部材51が一回転するごとに、第一内歯部57と第一外歯部55との係合箇所、および、第二内歯部58と第二外歯部56との係合箇所が、それぞれ一歯分ずつ周方向にずれる。このとき、第一の減速機(第一内歯部57と第一外歯部55)と第二の減速機(第二内歯部58と第二外歯部56)の減速比が異なることで、偏心部材51の回転に伴う、駆動回転体2の位相変化量と従動回転体3の位相変化量とが異なり、両者が相対回転する差動の状態となる。これにより、駆動回転体2に対する従動回転体3の相対的な回転位相差を正逆方向に変更することが可能となり、カムシャフトによるバルブの開閉タイミングを進角方向もしくは遅角方向に変更することができる。
このようにバルブの開閉タイミングを変更することにより、アイドル運転時のエンジンの回転の安定化と燃費の向上を図ることができる。また、アイドル状態からエンジンの運転が通常運転に移行し、例えば、高速回転に移行した際には、スプロケット20に対する電動モータ4の相対回転の速度差を大きくすることで、スプロケット20に対する出力軸31及びこれに連結されたカムシャフトの回転位相差を高回転に適した回転位相差に変更することができ、エンジンの高出力化を図ることが可能である。
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、図6に示す実施形態では、偏心部材51の軸方向両側の端部を、軸受14,15によってケーシング40に対して回転支持している。具体的には、偏心部材51のシリンダヘッド10側の端部を軸受14(第一の軸受)を介してケーシング本体40aに対して回転支持し、偏心部材51の反シリンダヘッド10側の端部を軸受15(第二の軸受)を介して蓋部40bに対して回転支持している。軸受15は、例えば転がり軸受(深溝玉軸受)で構成される。本実施形態では、軸受15の外輪がケーシング40の蓋部40bの内周面に固定され、軸受15の内輪が偏心部材51の第三筒部51cの外周面に固定される。このように、偏心部材51の軸方向両端を軸受14,15を介してケーシング40で支持することで、偏心部材51の回転安定性が高められる。特に、この電動アクチュエータ1では、遊星回転体52が回転軸Oを中心に公転することで偏心部材51に振れ回りが生じるため、偏心部材51の軸方向両側の端部を軸受14,15で回転支持することが好ましい。
以上の説明では、第一の減速機5aおよび第二の減速機5bとしてサイクロイド減速機を使用する場合を例示したが、差動装置5としては、自転・公転する遊星回転体52を有し、かつ二つの減速機5a,5bの減速比が異なる限り任意の構成の減速機(サイクロイド減速機、波動歯車装置、遊星歯車装置等)を使用することができる。遊星回転体52に代えて複数のローラを保持器で保持したローラアセンブリを使用し、ローラを第一外歯部55および第二外歯部56に沿って転動させるタイプの減速機を使用することもできる。
以上、本発明に係る電動アクチュエータの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことである。
1 電動アクチュエータ
2 駆動回転体
3 従動回転体
4 電動モータ
5 差動装置
5a 第一の減速機
5b 第二の減速機
10 シリンダヘッド
14 第一の軸受
15 第二の軸受
20 スプロケット
21 小径部
22 大径部
23 連結部
31 出力軸
32 従動ギア
40 ケーシング
40a ケーシング本体
40b 蓋部
41 ステータ
42 ロータ
51 偏心部材(モータ軸)
51a1、51b1 偏心内周面
52 遊星回転体
55 第一外歯部
56 第二外歯部
57 第一内歯部
58 第二内歯部
O 回転軸

Claims (4)

  1. ケーシングと、前記ケーシングの内周に固定されたステータと、回転軸を中心として前記ケーシングに対して回転可能のロータとを有する電動モータであって、
    前記ケーシングが第一ケーシング部材及び第二ケーシング部材を有し、
    前記第一ケーシング部材の内周面に、前記第二ケーシング部材の外周面および前記ステータの外周面を嵌合させ、
    前記第一ケーシング部材と前記第二ケーシング部材とで前記ステータを軸方向両側から挟持固定した電動モータ。
  2. 前記ロータと一体に回転するモータ軸を設け、
    前記モータ軸の軸方向一方の端部を前記第一ケーシング部材に対して回転可能に支持する第一の軸受と、前記モータ軸の軸方向他方の端部を前記第二ケーシング部材に対して回転可能に支持する第二の軸受とを設けた請求項1に記載の電動モータ。
  3. 請求項1又は2に記載の電動モータと、外部からの駆動力によって前記回転軸を中心として回転可能の駆動回転体と、前記回転軸を中心として回転可能の従動回転体と、前記電動モータで駆動され、前記駆動回転体と前記従動回転体とを相対回転させる差動装置とを備え、
    前記差動装置が、前記駆動回転体および従動回転体のそれぞれと噛み合い、前記ロータの回転に伴って自転可能且つ前記回転軸を中心として公転可能の遊星回転体と、前記遊星回転体と前記駆動回転体との間に形成された第一の減速機と、前記遊星回転体と前記従動回転体との間に形成された第二の減速機とを有し、前記第一の減速機と前記第二の減速機の減速比が異なる電動アクチュエータ。
  4. 前記駆動回転体が、エンジンからの回転駆動力が伝達されるスプロケットと一体に回転し、前記従動回転体がカムシャフトと一体に回転する請求項1〜3の何れか1項に記載の電動アクチュエータ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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