JP2020143635A - カムシャフト構造 - Google Patents

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卓志 松任
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Abstract

【課題】エンジン周りに可変バルブタイミング装置及びウォーターポンプを効率的に配置して省スペース化を図る。【解決手段】カムシャフト構造1は、カムシャフト3と、カムスプロケット4と、カムスプロケット4に対するカムシャフト3の位相を変える可変バルブタイミング装置5と、エンジンブロックのウォータージャケットに冷却水を送り込むウォーターポンプ6とを備える。カムスプロケット4と可変バルブタイミング装置5とウォーターポンプ6とを軸方向に並べて配置し、且つ、カムスプロケット4とウォーターポンプ6との軸方向間に可変バルブタイミング装置5を配置する。【選択図】図1

Description

本発明は、カムシャフト及びその周辺の機構からなるカムシャフト構造に関する。
車両のエンジンには、燃費の向上等を図るために、吸気用バルブや排気用バルブの開閉タイミングを調整する可変バルブタイミング装置を設けることがある。可変バルブタイミング装置は、通常、カムシャフトの軸端に設けられる(例えば、下記の特許文献1参照)。
一方、水冷式のエンジンには、クランクシャフトの回転を伝達してポンプインペラを回転駆動することにより、エンジンブロックのウォータージャケットに冷却水を送り込むウォーターポンプが設けられる。例えば、下記の特許文献2に示されている水冷式のエンジンでは、ウォーターポンプのポンプインペラが、減速機を介してクランクシャフトと接続されている。
特許第3807143号公報 特開平8−100648号公報
上記のような可変バルブタイミング装置及びウォーターポンプの双方をエンジンに設ける場合、エンジン周りにこれらを設置するためのスペースを確保する必要がある。しかし、自動二輪車等に搭載される小型の水冷式エンジン(特に、単気筒エンジン)では、エンジン周りのスペースが狭いため、可変バルブタイミング装置及びウォーターポンプを配置するスペースを確保することが容易ではない。
そこで、本発明は、エンジン周りに可変バルブタイミング装置及びウォーターポンプを効率的に配置して省スペース化を図ることを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、カムシャフトと、前記カムシャフトの回転軸を中心として前記カムシャフトに対して相対回転可能であるカムスプロケットと、前記カムスプロケットに対する前記カムシャフトの位相を変える可変バルブタイミング装置と、エンジンブロックのウォータージャケットに冷却水を送り込むウォーターポンプとを備えたカムシャフト構造であって、前記カムスプロケットと前記可変バルブタイミング装置と前記ウォーターポンプとが軸方向に並べて配置され、且つ、前記カムスプロケットと前記ウォーターポンプとの軸方向間に前記可変バルブタイミング装置が配置されたカムシャフト構造を提供する。
このように、カムスプロケットと可変バルブタイミング装置とウォーターポンプとを軸方向に並べて配置し、且つ、カムスプロケットとウォーターポンプとの間に可変バルブタイミング装置を配置することにより、これらを効率的に配置して省スペース化を図ることができる。
可変バルブタイミング装置としては、油圧を駆動源とした油圧式や、電動モータを駆動源とした電動式が知られている。油圧式の可変バルブタイミング装置は、環境温度によって油の粘度が変化するため、冬などの低温時には動作が悪くなる恐れがある。これに対し、電動式の可変バルブタイミング装置は、環境温度に関わらず安定した動作が可能である。従って、上記のカムシャフト構造には、電動式の可変バルブタイミング装置を使用することが好ましい。具体的には、例えば、電動モータと、差動装置とを備え、前記差動装置が、前記カムスプロケットと一体に回転する駆動回転体、および、前記カムシャフトと一体に回転する従動回転体を有し、前記電動モータの回転駆動力により前記駆動回転体と前記従動回転体とを相対回転させるものである可変バルブタイミング装置を使用することができる。
上記のカムシャフト構造では、ウォーターポンプの回転部材と可変バルブタイミング装置の従動回転体とをトルク伝達可能に連結することで、カムスプロケットに入力された回転駆動力を、可変バルブタイミング装置の駆動回転体及び従動回転体を介して、ウォーターポンプの回転部材に伝達することができる。このとき、ウォーターポンプの回転部材と可変バルブタイミング装置の従動回転体とを非接触式継手(例えばマグネットカップリング)を介して連結すれば、非接触状態で両者の間でトルクを伝達することができる。これにより、ウォーターポンプの回転部材と可変バルブタイミング装置の従動回転体とを連結するためにウォーターポンプのハウジングに穴を設ける必要がなく、ハウジングを密封することができるため、ハウジング内の冷却水が電動式の可変バルブタイミング装置に侵入する事態を防止できる。
以上のように、本発明のカムシャフト構造によれば、エンジン周りに可変バルブタイミング装置及びウォーターポンプを効率的に配置して省スペース化を図ることができるため、これらを自動二輪車等の小型エンジンにも設置しやすくなる。
本発明の一実施形態に係るカムシャフト構造の縦断面図である。 上記カムシャフト構造の斜視図である。 上記カムシャフト構造の分解斜視図である。 上記カムシャフト構造の可変バルブタイミング装置を拡大して示す断面図である。 図4のA−A線で矢視した断面図である。 図4のB−B線で矢視した断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、本発明の一実施形態に係るカムシャフト構造1は、排気用カムシャフト2と、吸気用カムシャフト3と、カムスプロケット4と、可変バルブタイミング装置5と、ウォーターポンプ6とを備える。このカムシャフト構造1は、自動二輪車等に搭載される小型の水冷式エンジン、特にSOHC(Single Over Head Camshaft)型のエンジンに設けられるものであり、排気用カムシャフト2と吸気用カムシャフト3とが同軸に設けられる。
排気用カムシャフト2は、全体として軸方向両端が開口した円筒状を成している。排気用カムシャフト2には、一つまたは複数のカムが設けられ、図示例ではシリンダヘッド10側(図中右側)の端部に一つのカム2aが設けられる。排気用カムシャフト2の反シリンダヘッド10側(図中左側)の端部には、後述する可変バルブタイミング装置5の差動装置8の駆動回転体81が設けられる。図示例では、排気用カムシャフト2と駆動回転体81とが一体に形成されている。排気用カムシャフト2は、軸受11を介して静止部材であるヘッドカバー(図示省略)に回転可能に支持される。
カムスプロケット4は、エンジンのクランクシャフトからタイミングチェーンを介して伝達された駆動力により回転駆動される。排気用カムシャフト2、駆動回転体81、およびカムスプロケット4は、何れも回転軸Oを中心として同軸上に配置される。従って、排気用カムシャフト2、駆動回転体81、およびカムスプロケット4は、エンジンからの駆動力により、回転軸Oを中心として一体に回転する。本実施形態では、カムスプロケット4が、排気用カムシャフト2と別部材で構成され、排気用カムシャフト2の外周に圧入固定される。尚、排気用カムシャフト2とカムスプロケット4とを一体に形成してもよい。また、排気用カムシャフト2と駆動回転体81とを別部材で構成してもよい。
吸気用カムシャフト3は、両端が開口した中空形状をなす排気用カムシャフト2の内周に配置される。吸気用カムシャフト3のシリンダヘッド10側の軸端は、排気用カムシャフト2のシリンダヘッド10側の軸端から軸方向に突出している。吸気用カムシャフト3には、一つあるいは複数のカムが設けられており、図示例では二つのカム3aが設けられている。吸気用カムシャフト3の反シリンダヘッド10側(図中左側)の端部には、後述する可変バルブタイミング装置5の差動装置8の従動回転体82が設けられる。図示例では、吸気用カムシャフト3と従動回転体82とが別部材で構成され、これらがボルト15で固定される。吸気用カムシャフト3のシリンダヘッド10側の端部は、軸受12を介してヘッドカバーに対して回転可能に支持される。
排気用カムシャフト2の内周と吸気用カムシャフト3の外周との間には軸受13が配置され、駆動回転体81の内周と従動回転体82の外周との間には軸受14が配置されている。これらの軸受13,14により、排気用カムシャフト2と吸気用カムシャフト3との間の相対回転が許容される。軸受13,14は、例えば滑り軸受、具体的には焼結含油軸受で構成することができる。
可変バルブタイミング装置5は、電動モータ7と、差動装置8と、これらを収容するケーシング9とを主な構成とする。
ケーシング9は、組み立ての都合上、有底円筒状のケーシング本体9aと、蓋部9bとに分割されている。ケーシング本体9aと蓋部9bとは、ボルト等の締結手段を用いて一体化される。蓋部9bには、電動モータ7へ給電するための給電線や、電動モータ7の回転数を検知する図示しない回転数検知センサに接続される信号線を、外部に引き出すための筒状の突起9c,9d(図2,図3参照)が設けられている。
図4に拡大して示すように、電動モータ7は、ケーシング本体9aに固定されたステータ71と、ステータ71の半径方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータ72とを有するラジアルギャップ型のモータである。ステータ71は、軸方向に積層した複数の電磁鋼板から成るステータコア71aと、ステータコア71aに装着された絶縁材料から成るボビン71bと、ボビン71bに巻き回されたステータコイル71cとで構成されている。ロータ72は、環状のロータコア(ロータインナ)72aと、ロータコア72aに取り付けられた複数のマグネット72bとで構成されている。ステータ71とロータ72の間に作用する励磁力により、ロータ72が回転軸Oを中心として回転する。
差動装置8は、駆動回転体81と、従動回転体82と、ロータ72と一体に回転する偏心部材83と、偏心部材83の内周に配置された遊星回転体84と、偏心部材83と遊星回転体84の間に配置された軸受85とを主要な構成要素として備える。
駆動回転体81は、カムスプロケット4と一体に回転可能に設けられる。図示例では、駆動回転体81と排気用カムシャフト2とが一体に形成され、その外周にカムスプロケット4が固定されている。従動回転体82は、吸気用カムシャフト3と一体に回転可能に設けられる。図示例では、従動回転体82と吸気用カムシャフト3とが同軸に配置され、ボルト15を介して固定されている。ケーシング9の蓋部9bの内周面と従動回転体82の外周面との間の空間は、オイルシール16により密封されている。
偏心部材83は、ロータコア72aの内周に固定された小径筒部83aと、小径筒部83aより大径に形成され、ロータコア72aから軸方向に突出する大径筒部83bとを一体に有する。偏心部材83の外周面は、回転軸Oと同軸に形成された円筒面である。偏心部材83の小径筒部83aの内周面には、回転軸Oに対して偏心した円筒面状の偏心内周面83a1が形成される。偏心部材83の内周面のうち、偏心内周面83a1以外の領域は、回転軸Oと同軸に形成された円筒面である。偏心部材83は、偏心内周面83a1を通る半径方向の断面で見ると、厚肉部分と薄肉部分とを有する(図5および図6参照)。
偏心部材83は、軸方向の両側に配置した軸受17,18によって支持される。本実施形態では、シリンダヘッド10側の軸受17を滑り軸受で構成し、反シリンダヘッド10側の軸受18を転がり軸受(深溝玉軸受)で構成しているが、両軸受17,18の構成や種類は任意に選択することができ、例えばシリンダヘッド10側の軸受17を転がり軸受で構成することもできる。シリンダヘッド10側の軸受17により偏心部材83が駆動回転体81に回転可能に支持され、反シリンダヘッド10側の軸受18により、偏心部材83がケーシング9の蓋部9bに回転可能に支持される。
遊星回転体84は円筒状をなし、その内周に第一内歯部86と第二内歯部87とが形成される。図4に示すように、第一内歯部86と第二内歯部87は軸方向にずらして形成され、第一内歯部86がシリンダヘッド10側に、第二内歯部87が反シリンダヘッド10側にそれぞれ設けられている。第一内歯部86と第二内歯部87は、何れも半径方向の断面が曲線(例えばトロコロイド系曲線)を描く複数の歯で構成されている(図5および図6参照)。第二内歯部87のピッチ円径は第一内歯部86のピッチ円径よりも小さい(図4参照)。また、第二内歯部87の歯数は、第一内歯部86の歯数よりも少ない。
駆動回転体81の外周面には、第一内歯部86と噛み合う第一外歯部88が形成される。また、従動回転体82の外周面には、第二内歯部87と噛み合う第二外歯部89が形成される。第一外歯部88および第二外歯部89は、何れも半径方向の断面が曲線(例えばトロコイド系曲線)を描く複数の歯で形成されている(図5および図6参照)。第二外歯部89のピッチ円径は第一外歯部88のピッチ円径よりも小さい(図4参照)。また、第二外歯部89の歯数は、第一外歯部88の歯数よりも少ない。
第一外歯部88の歯数は、互いに噛み合う第一内歯部86の歯数よりも少なく、好ましくは一つ少ない。同様に、第二外歯部89の歯数も、互いに噛み合う第二内歯部87の歯数よりも少なく、好ましくは一つ少ない。一例として、本実施形態では、第一内歯部86の歯数を24個、第二内歯部87の歯数を20個、第一外歯部88の歯数を23個、第二外歯部89の歯数を19個としている。
互いに噛み合う第一内歯部86と第一外歯部88は第一の減速機8aを構成し、第二内歯部87と第二外歯部89は第二の減速機8bを構成する。第一の減速機8aおよび第二の減速機8bは、何れもサイクロイド減速機と呼ばれるものである。二つの減速機8a,8bの減速比は異なっており、本実施形態では第一の減速機8aの減速比を第二の減速機8bの減速比よりも大きくしている。このように二つの減速機8a,8bの減速比を異ならせることで、後で述べるように、エンジンに駆動される吸気用カムシャフト3の回転を、電動モータ7の作動状態に応じて変化させる(差動させる)ことが可能となる。
軸受85は、例えば外輪85aを有する針状ころ軸受で構成される。この軸受85は、偏心部材83の偏心内周面83a1と、遊星回転体84の円筒面状の外周面との間に配置される。従って、遊星回転体84の外周面および内周面の中心P(図5、図6参照)は、回転軸Oに対して偏心した位置にある。この軸受85により、遊星回転体84が偏心部材83に対して相対回転可能に支持される。
図5に示すように、第一内歯部86の中心Pは、回転軸Oに対して径方向に距離E偏心している。従って、第一内歯部86と第一外歯部88は、周方向の一部の領域で互いに噛み合った状態となり、これとは径方向反対側の領域で噛み合わない状態となる。また、図6に示すように、第二内歯部87の中心Pも回転軸Oに対して径方向に距離E偏心しているため、第二内歯部87と第二外歯部89とは、周方向の一部の領域で互いに噛み合った状態となり、これとは径方向反対側の領域で噛み合わない状態となる。なお、図5及び図6では、互いの矢視方向が異なっているため、第一内歯部86と第二内歯部87のそれぞれの偏心方向が各図において互いに左右逆方向に示されているが、第一内歯部86及び第二内歯部87は同じ方向に同じ距離Eだけ偏心している。
ここで、差動装置8の減速比をi、電動モータ回転速度をn、カムスプロケット4の回転速度をnとすると、出力回転位相角度差は(n−n)/iとなる。
また、第一内歯部86の歯数をz1、第二内歯部87の歯数をz2とすると、本実施形態に係る差動装置8の減速比は、下記式1によって求められる。
減速比=z1×z2/|z1−z2|・・・式1
例えば、第一内歯部86の歯数(z1)が24、第二内歯部87の歯数(z2)が20の場合、上記式1から減速比は120となる。このように、本実施形態に係る差動装置8では、大きな減速比によって高トルクを得ることが可能である。
続いて、図1〜図6を参照しつつ可変バルブタイミング装置5の動作について説明する。
エンジンの動作中は、カムスプロケット4に伝達されたエンジンからの駆動力によって駆動回転体81が回転し、これに伴って排気用カムシャフト2が回転する。この時、排気用カムシャフト2の回転数はカムスプロケット4の回転数と等しい。
電動モータ7に通電されず、電動モータ7から差動装置8への入力がない状態では、駆動回転体81の回転が遊星回転体84を介して従動回転体82に伝達され、従動回転体82は駆動回転体81と一体に回転する。すなわち、駆動回転体81と遊星回転体84は、第一内歯部86と第一外歯部88との噛み合い部でのトルク伝達により、この噛み合い状態を保持したままま一体に回転する。同様に、遊星回転体84と従動回転体82も第二内歯部87と第二外歯部89の噛み合い位置を保持したまま一体に回転する。そのため、駆動回転体81と従動回転体82は同じ回転位相を保持しながら回転する。従って、排気用カムシャフト2と吸気用カムシャフト3とは回転位相差0で回転する。
その後、例えばエンジンがアイドル運転などの低回転域に移行した際には、公知の手段、例えば、電子制御などによって電動モータ7に通電し、ロータ72をカムスプロケット4の回転数よりも相対的に遅く又は速く回転させる。電動モータ7を作動させると、ロータ72のロータコア72aに結合された偏心部材83が回転軸Oを中心として一体に回転する。これに伴い、薄肉部分と厚肉部分とを備えた偏心部材83の回転に伴う押圧力が軸受85を介して遊星回転体84に作用する。この押圧力により、第一内歯部86と第一外歯部88との噛み合い部で周方向の分力が生じるため、遊星回転体84が駆動回転体81に対して相対的に偏心回転運動を行う。つまり、遊星回転体84が回転軸Oを中心として公転しながら、第一内歯部86および第二内歯部87の中心Pを中心として自転する。この際、遊星回転体84が1回公転するごとに、第一内歯部86と第一外歯部88との噛み合い位置が一歯分ずつ周方向にずれるため、遊星回転体84は減速されつつ回転(自転)する。
また、遊星回転体84が上述の偏心回転運動を行うことにより、遊星回転体84の1回の公転ごとに、第二内歯部87と第二外歯部89との噛み合い箇所が一歯分ずつ周方向にずれる。これにより、従動回転体82が遊星回転体84に対して減速されつつ回転する。このように、遊星回転体84を電動モータ7で駆動することにより、カムスプロケット4からの駆動力に電動モータ7からの駆動力が重畳され、従動回転体82の回転が、電動モータ7からの駆動力の影響を受ける差動の状態となる。そのため、駆動回転体81に対する従動回転体82の相対的な回転位相差を正逆方向に変更することが可能となり、吸気用カムシャフト3に設けられたカム3aによる吸気バルブ(図示省略)の開閉タイミングを進角方向もしくは遅角方向に変更することができる。
このように吸気バルブの開閉タイミングを変更することにより、アイドル運転時のエンジンの回転の安定化と燃費の向上を図ることができる。また、アイドル状態からエンジンの運転が通常運転に移行し、例えば、高速回転に移行した際には、カムスプロケット4に対する電動モータ7の相対回転の速度差を大きくすることで、カムスプロケット4に対する吸気用カムシャフト3の回転位相差を高回転に適した回転位相差に変更することができ、エンジンの高出力化を図ることが可能である。
ウォーターポンプ6は、図1に示すように、可変バルブタイミング装置5の反シリンダヘッド10側に設けられる。ウォーターポンプ6は、内部に冷却水が流通するハウジング61と、ハウジング61の内部に回転可能に設けられた回転部材62と、回転部材62とハウジング61との間に設けられた軸受63(図示例では転がり軸受)とを備える。回転部材62は、軸受で回転支持される回転軸64と、回転軸64から外径側に延びるフランジ部65と、フランジ部65の外径端から軸方向に延びる円筒部66とを有する。フランジ部65には、ポンプインペラ67が設けられる。図示例では、フランジ部65および円筒部66が一体に形成され、フランジ部65の内周に回転軸64が圧入固定されている。
回転部材62は、カムスプロケット4の回転が伝達されることにより、回転軸Oを中心として回転駆動される。図示例では、回転部材62が、可変バルブタイミング装置5の差動装置8の従動回転体82とトルク伝達可能に連結される。具体的には、回転部材62と従動回転体82とが、非接触式継手としてのマグネットカップリングを介して連結される。マグネットカップリングは、従動回転体82に設けられたマグネット68と、回転部材62の円筒部66に設けられたマグネット69とで構成され、これらを半径方向に対向させて配置する。カムスプロケット4が回転すると、これと同期して駆動回転体81、遊星回転体84、及び従動回転体82が回転する。そして、マグネット68,69の吸引力により、従動回転体82の回転駆動力が回転部材62に伝達されてポンプインペラ67が回転し、これによりハウジング61内の冷却水がエンジンのウォータージャケットに送り込まれる。
本実施形態のカムシャフト構造1では、カムスプロケット4と、可変バルブタイミング装置5と、ウォーターポンプ6とを軸方向に並べて配置している。具体的には、可変バルブタイミング機構5およびウォーターポンプ6が、排気側カムシャフト2および吸気側カムシャフト3の反シリンダヘッド10側の軸端に同軸に設けられる。その上で、可変バルブタイミング装置5が、カムスプロケット4とウォーターポンプ6との軸方向間に配置される。これにより、可変バルブタイミング機構5およびウォーターポンプ6を効率的に配置して省スペース化を図ることができるため、これらを自動二輪車等の小型のエンジンにも設置しやすくなる。
また、本実施形態のカムシャフト構造1では、可変バルブタイミング装置5の差動装置8の遊星回転体84の内径側に駆動回転体81および従動回転体82を配置しているため、遊星回転体84を駆動する電動モータ7として中空モータを採用し、この中空モータを遊星回転体84の外径側に配置するレイアウトを採用することができる。そのため、スペース効率が良好となり、可変バルブタイミング装置5の軸方向のコンパクト化が図られ、カムシャフト構造1のさらなる省スペース化を達成できる。
また、本実施形態のカムシャフト構造1では、ウォーターポンプ6の回転部材62を、可変バルブタイミング装置5の差動装置8の従動回転体82の同軸延長上に配置しているため、回転部材62と従動回転体82とをトルク伝達可能に連結することが可能となる。これにより、カムスプロケット4からの回転駆動力を、駆動回転体81、遊星回転体84、及び従動回転体82を介してウォーターポンプ6の回転部材62に伝達することができるため、ウォーターポンプ6の駆動機構をコンパクト化することができる。
また、本実施形態のカムシャフト構造1では、ウォーターポンプ6の回転部材62と可変バルブタイミング装置5の差動装置8の従動回転体82とを非接触式継手を介して連結しているため、回転部材62と従動回転体82とを連結するためにウォーターポンプ6のハウジング61に開口部を設ける必要がなく、ウォーターポンプ6のハウジング61を密閉することができる。これにより、ハウジング61内の冷却水が、可変バルブタイミング装置5の電動モータ7等の通電部に侵入する事態を防止できる。
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、ウォーターポンプ6の回転部材62と可変バルブタイミング装置5の差動装置8の従動回転体82との連結は、マグネットカップリング等を用いた非接触式の連結に限らず、これらをスプライン嵌合等により直接連結してもよい。この場合、ウォーターポンプ6のハウジング61に、従動回転体82を挿入するための開口部が設けられるため、この開口部からの冷却水の漏れ出しを防止するシール手段を設けることが好ましい。
また、以上の説明では、可変バルブタイミング装置5の差動装置8の第一の減速機8aおよび第二の減速機8bとしてサイクロイド減速機を使用する場合を例示したが、差動装置8としては、自転・公転する遊星回転体84を有し、かつ二つの減速機8a,8bの減速比が異なる限り任意の構成の減速機(サイクロイド減速機、波動歯車装置、遊星歯車装置等)を使用することができる。この他、遊星回転体84に代えて複数のローラを保持器で保持したローラアセンブリを使用し、ローラを第一外歯部88および第二外歯部89に沿って転動させるタイプの減速機を使用することもできる。
また、以上の説明では、排気用カムシャフト2を中空形状とし、その内周に吸気用カムシャフト3を配置する場合を例示したが、これとは逆に、吸気用カムシャフト3を中空形状とし、その内周に排気用カムシャフト2を配置することもできる。
また、差動装置8の駆動回転体81に排気用カムシャフト2を設け、従動回転体82に吸気用カムシャフト3を設ける場合を例示したが、これとは逆に、駆動回転体81に吸気用カムシャフト3を設け、従動回転体82に排気用カムシャフト2を設けることもできる。
以上、本発明に係るカムシャフト構造の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことである。
1 カムシャフト構造
2 排気用カムシャフト
3 吸気用カムシャフト
4 カムスプロケット
5 可変バルブタイミング装置
6 ウォーターポンプ
61 ハウジング
62 回転部材
67 ポンプインペラ
68 マグネット
69 マグネット
7 電動モータ
71 ステータ
72 ロータ
8 差動装置
81 駆動回転体
82 従動回転体
83 偏心部材
84 遊星回転体
85 軸受
9 ケーシング
10 シリンダヘッド
O 回転軸

Claims (5)

  1. カムシャフトと、前記カムシャフトの回転軸を中心として前記カムシャフトに対して相対回転可能であるカムスプロケットと、前記カムスプロケットに対する前記カムシャフトの位相を変える可変バルブタイミング装置と、エンジンブロックのウォータージャケットに冷却水を送り込むウォーターポンプとを備えたカムシャフト構造であって、
    前記カムスプロケットと前記可変バルブタイミング装置と前記ウォーターポンプとが軸方向に並べて配置され、且つ、前記カムスプロケットと前記ウォーターポンプとの軸方向間に前記可変バルブタイミング装置が配置されたカムシャフト構造。
  2. 前記可変バルブタイミング装置が、電動モータと、差動装置とを備え、
    前記差動装置が、前記カムスプロケットと一体に回転する駆動回転体、および、前記カムシャフトと一体に回転する従動回転体を有し、前記電動モータの回転駆動力により前記駆動回転体と前記従動回転体とを相対回転させるものである請求項1に記載のカムシャフト構造。
  3. 前記ウォーターポンプの回転部材と前記可変バルブタイミング装置の差動装置の従動回転体とが、トルク伝達可能に連結された請求項2に記載のカムシャフト構造。
  4. 前記ウォーターポンプの回転部材と前記可変バルブタイミング装置の差動装置の従動回転体とが、非接触式継手を介してトルク伝達可能に連結された請求項3に記載のカムシャフト構造。
  5. 前記非接触式継手がマグネットカップリングである請求項4に記載のカムシャフト構造。
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