以下、本発明の実施の形態に係る半導体装置及び電力変換装置について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の特徴の一つは、高速での電流遮断が可能であり、かつ、電流導通損失の低減を可能にした回路構成を採用した点である。
(実施の形態1)
以下では、まず本実施の形態1に係る半導体装置に設けられる複合半導体スイッチの構成及び動作について説明し、その後に半導体装置の構成について説明する。
(複合半導体スイッチの構成)
図1は本発明の実施の形態1に係る複合半導体スイッチの要部構成を示す回路図である。図2は本発明の実施の形態1に係る複合半導体スイッチの全体構成を示す回路図である。複合半導体スイッチ100は、第1半導体スイッチング素子である他励式のサイリスタ1と、サイリスタ1と直列接続される自励式の第2半導体スイッチング素子であるMOSFET2と、サイリスタ1とMOSFET2とで構成される直列回路部に並列接続される自励式の第3半導体スイッチング素子であるIGBT3とを備える。
サイリスタ1は、オン抵抗が比較的低く、電流導通損失が比較的小さい半導体スイッチング素子である。サイリスタ1のアノードAは電流遮断器200の入力端INに接続される。入力端INは、主回路の正極導体に接続される。正極導体については後述する。
サイリスタ1のカソードKはMOSFET2のドレインDと図2に示される制御回路4の駆動回路43に接続される。サイリスタ1のゲートG2は、図2に示される制御回路4の駆動回路43に接続される。
MOSFET2は、第1及び第2半導体スイッチング素子と比較して、スイッチング速度が高速な半導体スイッチング素子である。MOSFET2は、例えば、耐圧が数10Vクラスの場合オン、抵抗が数ミリオーム或いはそれ以下の低耐圧MOSFETである。MOSFET2には、ボディダイオードが内蔵され、又はダイオードが逆並列に接続されている。MOSFET2のドレインDは、サイリスタ1のカソードKに接続される。MOSFET2のソースSは、電流遮断器200の出力端OUTに接続される。出力端OUTは、主回路の負極接点に接続される。負極接点については後述する。MOSFET2のゲートG3は、制御回路4の駆動回路43に接続される。
サイリスタ1とMOSFET2とで直列回路部が形成される。この直列回路部は、複合半導体スイッチ100における主導通部11を形成する。MOSFET2は、複合半導体スイッチ100における電流経路を切り替えるための素子であり、その動作の詳細については、後述する。
IGBT3は、サイリスタ1と比較してスイッチング速度が高速の半導体スイッチング素子である。高速スイッチング動作が可能なため、IGBT3は、スイッチング損失が比較的低い半導体スイッチング素子で構成可能である。IGBT3のコレクタCは、電流遮断器200の入力端INに接続される。IGBT3のエミッタEは、電流遮断器200の出力端OUTに接続される。IGBT3のゲートG1は。制御回路4の駆動回路43に接続される。IGBT3は、主導通部11に対して並列に接続され、複合半導体スイッチ100における補助導通部12を形成する。IGBT3は、高速スイッチング動作によって、最終的に電流を遮断するための素子であり、その動作の詳細については、後述する。
スイッチング速度及びオン抵抗に関し、サイリスタ1とIGBT3との関係をまとめると、定常時の導通については、低オン抵抗で電流導通損失が小さく、また電流容量が大きいサイリスタ1が役割を担う。
一方、スイッチング動作については、高速でスイッチング動作が可能でスイッチング損失が小さいIGBT3が役割を担うようにしている。そして、電流経路の切り替え、すなわち、役割分担の切り替えは、これらの素子のうち最も高速なMOSFET2がその役割を担っている。
次に、制御回路4について説明する。制御回路4は、複合半導体スイッチ100における各半導体素子(サイリスタ1、MOSFET2、IGBT3)のゲート及びサイリスタ1のカソードに電圧を印加するタイミングを制御する回路である。制御回路4は、保護回路41、パルス分配回路42、及び駆動回路43を備える。
保護回路41は、複合半導体スイッチ100の制御端子CTLを介して、外部の制御装置5から制御信号(オン、オフ制御信号)が与えられる。保護回路41は、複合半導体スイッチ100の入力端IN側の電流を検出し、この電流の値が所定の過電流設定値lim以上の場合、次段のパルス分配回路42への制御信号の供給を停止する。
パルス分配回路42は、保護回路41を介して与えられた制御信号に、所定の遅延時間Tdon,Tdoffを与えることで各半導体スイッチング素子のオン、オフ動作タイミングをシフトさせる。遅延時間Tdon,Tdoffについては、後述する。
駆動回路43は、パルス分配回路42において制御信号に与えられた遅延時間Tdon等に応じたタイミングで、各半導体素子のゲート及びサイリスタ1のカソードに電圧を印加する。
なお、保護回路41、パルス分配回路42及び駆動回路43の構成の詳細については、図3を参照して説明する動作を実現できるものであればどのようなものであってもよく、任意の回路構成を採用可能である。
サイリスタ1、MOSFET2、IGBT3は、一の半導体装置としてパッケージ化され、当該半導体装置は配電盤等に配置され、外部の制御装置5から、上述した一の制御信号が制御端子CTLに与えられ、更に制御回路4によって半導体装置を駆動して動作する。パッケージ化された半導体装置の構成例は後述する。
(複合半導体スイッチの動作)
次に複合半導体スイッチ100の電流遮断動作について、図3及び図4を参照して詳細に説明する。
図3は本発明の実施の形態1に係る複合半導体スイッチの動作を説明するための波形図である。図4は本発明の実施の形態1に係る複合半導体スイッチの動作を説明するための概要図である。
図3及び図4の(I)に示すように、最初に、サイリスタ1、MOSFET2及びIGBT3がオフの状態で、制御回路4からIGBT3のゲートG1に電圧が印加される。これにより、タイミングt1でIGBT3のみがオンになる。
IGBT3は比較的高速でスイッチング動作可能な半導体スイッチング素子なので、速やかにオン状態になることができる。
高速スイッチング動作が可能なIGBT3を最初にオンさせることで、複合半導体スイッチ100全体でのスタートアップ動作の高速化が可能になる。この場合、IGBT3のみがオンしているので、補助導通部12のみが導通しており、従って電流は補助導通部12を流れる。
次に、図3及び図4(II)に示すように、IGBT3のゲートG1に電圧が印加された時点から、遅延時間Tdonが経過したとき(タイミングt2)、サイリスタ1及びMOSFET2のそれぞれのゲートG1、G3に、制御回路4から電圧が印加される。これにより、サイリスタ1及びMOSFET2をオンする。
この場合、サイリスタ1は、IGBT3と比較して、オン抵抗が低く、導通性が高いので、電流遮断器200の入力端INから流入した電流の大部分は、導通性が高い側のサイリスタ1、すなわち、主導通部11を流れる。
なお、遅延時間Tdonは、IGBT3のターンオンに要する時間、すなわちターンオン動作が完了して定常状態の電流が通電するまでの時間が確保されていればよい。具体的には、遅延時間Tdonは1μ秒から2μ秒程度であるが、遅延時間Tdonはこれに限らない。このようにIGBT3を先にターンオンすることで、サイリスタ1のターンオン損失は発生しない。
なお、制御回路4は、遅延時間Tdon経過したタイミングt2で、サイリスタ1及びMOSFET2のそれぞれをオンさせるゲート駆動電圧を同時に両ゲートに印加しているが、当該ゲート駆動電圧を同時に両ゲートに印加しなくてもよい。
例えば、制御回路4は、遅延時間Tdon後のタイミングt2でMOSFET2をオンさせるゲート駆動電圧を印加した後に、サイリスタ1をオンさせるゲート駆動電圧を印加してもよい。本実施形態では、サイリスタ1のターンオン速度よりも、MOSFET2のターンオン速度が速いため、サイリスタ1を遅延時間Tdon後にオンさせてからMOSFET2をオンさせる場合に比べて、サイリスタ1のターンオン損失を抑えることができる。
ここで、本願発明者は主導通部11と補助導通部12とに流れる電流の比について、シミュレーションを行っている。例えば、定格が1200V、50Aの条件で半導体スイッチング素子を比較した場合、サイリスタ1については、オン電圧が1.4Vであり、オン抵抗が略28ミリオームである。
一方、IGBT3については、オン電圧が1.8Vで、オン抵抗が略36ミリオームである。採用したMOSFET2はオン抵抗が1ミリオーム以下のものであり、主導通部11側はオン抵抗が補助導通部12側よりも低いので、電流がオン抵抗側(主導通部11側)に流れやすい。すなわち、オン抵抗の比率に応じて、主導通部11と、補助導通部12とに流れる電流の比が得られるので、素子の並列数を適宜選択することで、この比を好適なものに設定可能である。例えば、主導通部11側に、適宜選択した素子を多並列にしてオン抵抗比を補助導通部12に対して所望の適切な値に設定可能である。あるいは、例えば補助導通部12側に、スイッチング速度とオン抵抗のトレードオフの関係を利用して、スイッチング速度を優先して適用する素子を選択し、意図的にオン抵抗を高くすることも考えられる。
電流遮断動作の説明に戻る。続いて、図3及び図4の(III)に示すように、制御回路4は、サイリスタ1のゲートG2及び、MOSFET2のゲートG3への電圧の印加を停止して(すなわち、ゲートをオフして)タイミングt3でターンオフさせる。MOSFET2は、例えば上記のように数10nsでターンオフ可能なので、ゲートへの電圧の印加を停止してから速やかに非導通状態となる。
この段階では、サイリスタ1はアノードAとカソードKとの間が導通したままであり、ターンオフ(消弧)していない。他励式のサイリスタ1では、一度点弧(導通)させると、ゲートG2への電圧の印加を停止しただけで消弧することができない。
しかしながら、本実施の形態では、図3に示したサイリスタ1へのカソード電圧を印加させることによって生じた電位差が、サイリスタ1のアノードAとカソードKとの間に逆バイアスを発生させる。すなわち、MOSFET2が先に非導通状態となることにより、電位がカソードK側の方がアノードA側よりも高い電圧(逆バイアス)がサイリスタ1のアノードAとカソードKとの間に印加される。
この逆バイアスによって、サイリスタ1の電荷をアノードAから引き抜くことができる。これにより、タイミングt4でサイリスタ1が消弧され、非導通状態になる。
タイミングt4では、サイリスタ1及びMOSFET2が非導通状態なので、主導通部11は完全に遮断され、電流は補助導通部12を流れる。
補助導通部12においては、IGBT3がオンしており、電流を遮断するため、タイミングt3でMOSFET2をターンオフさせ、タイミングt3から遅延時間Tdoff経過後に、制御回路4からIGBT3のゲートへの電圧の印加が停止されることによって、タイミングt4でIGBT3がターンオフされる。
IGBT3は比較的高速でスイッチング動作が可能な半導体スイッチング素子であるので、速やかに非導通状態となる。これにより、補助導通部12も遮断され、ひいては、複合半導体スイッチ100全体で電流を遮断する動作が完了する。
以上に説明したとおり、複合半導体スイッチ100によれば電流導通損失を低減することが可能となる。具体的には、MOSFET2は数10Vクラスの定格の場合オン抵抗が数ミリオームであり、IGBT3は高速でスイッチング動作可能であり極めて短い時間で補助導通部12が非導通となる。よって、電流導通損失については、MOSFET2、IGBT3における電流導通損失を実質的に考慮せずに主導通部11におけるサイリスタ1(第1半導体スイッチング素子)1つ分と考えることができる。従って、複合半導体スイッチ100全体での電流導通損失は、例えば、複数の半導体スイッチング素子で直列回路部を構成する従来技術と比較して、小さい。
また、複合半導体スイッチ100によれば、高速に電流遮断が可能となる。具体的には、MOSFET2は数10nsでターンオフ可能であり、サイリスタ1についても、非導通となったMOSFET2による逆バイアスの印加を適宜設定することで、速やかに消弧することができる。そして、IGBT3は比較的高速スイッチング動作が可能な半導体スイッチング素子であるので、サイリスタ1を消弧させてからIGBT3のゲートへの電圧の印加を停止するタイミングを適宜に設定することで、速やかに非導通状態とすることができる。従って、複合半導体スイッチ100全体で、高速に電流遮断が可能である。
補助導通部12は、電流遮断動作において、電流が導通する時間が短くて済むので、補助導通部12に設けるIGBT3の電流容量は短時間の定格のもので十分である。例えば、上記のシミュレーションの条件で、データシートに記載されているスイッチング速度を鑑みると、IGBT3がオンしてから、サイリスタ1及びMOSFET2がオンするまでの遅延時間Tdonは、1μ秒から2μ秒程度である。IGBT3については、短時間の導通のみを考慮すればよいので、素子の小型化や、低コスト化が図れる。
さらに、複合半導体スイッチ100によれば、自己消弧機能を持たないサイリスタ1の、残存電荷の影響による誤オン現象を防止することが可能となる。
この点について、詳細に説明する。原理的に、自己消弧機能を持たないサイリスタでは、一度ゲートに電圧を印加して点弧(導通)させた場合は、ゲートへの電圧の印加を停止しても、点弧(導通)状態を維持したままとなる。この点について、本願発明者は上記の構成に関連して様々な検証を行った。点弧状態のサイリスタ1に電流が導通していない状態であっても、電流が流れていない極めて短い時間において、並列接続されているIGBT3のターンオフ時の電圧が、サイリスタ1のアノードAと、サイリスタ1のカソードKと、MOSFET2との一巡間に印加される事象を発見した。この事象が起こると、サイリスタ1に再度電流の導通が始まる場合がある旨の知見を得た。以下、このようなサイリスタ1の現象を本明細書では誤オン現象と称する。
本願発明者は様々な試験を行ってさらに検証を行い、誤オン現象の回避について、次のような知見を得た。まず、サイリスタ1のカソードKへパルス電圧を印加することによって、MOSFET2の端子間で生じた電位差をサイリスタ1に逆バイアスとして印加する。
しかしながら、この逆バイアスが十分な大きさ、すなわち、サイリスタ1のアノードAとカソードKとの間の電荷を引き抜くのに十分な大きさとなっていない場合がある。逆バイアスがサイリスタ1のアノードAとカソードKとの間の電荷を引き抜くのに十分な時間で作用していない場合に、サイリスタ1が誤オン現象を生じ得ることを本願発明者は見いだした。
ただし、MOSFET2をオフ、すなわち、MOSFET2のゲートへの電圧の印加を停止し、サイリスタ1のゲート電圧の印加を停止した後、サイリスタ1のアノードAとカソードKの間に作用させる逆バイアスΔTが短すぎると、サイリスタ1の電荷を引き抜くことができない。一方、ΔTが長すぎると、高速で電流を遮断することができない。これらを勘案し、ΔTは実際の用途における仕様等の諸条件に応じて、サイリスタ1の電荷を引き抜くのに十分な作用が得られるよう、適宜設定するとよい。
このため、電流遮断器200には、電流遮断器200の外部からパルス分配回路42に対して、ΔTを設定可能な構成を採用してよい。あるいは、実際の用途における諸条件が事前に把握できており、ΔTの好適な値が事前に把握できている場合には、パルス分配回路42において好適な値のΔTを保持する構成を採用してもよい。
従って、複合半導体スイッチ100によれば、自己消弧機能を持たないサイリスタ1を用いる構成であっても、比較的簡便な回路構成で、電流遮断動作におけるサイリスタ1の誤オン現象を防止することができ、ひいては、複合半導体スイッチ100の動作の安定化を図れる。
次に、半導体装置の構成について説明する。図5は本発明の実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す第1図である。図5に示す半導体装置300は第1基板301及びカバー303を備える。第1基板301には、4つのねじ留め穴301aが設けられている。ねじ留め穴301aは、第1基板301の4つの角部付近に設けられている。ねじ留め穴301aにねじが挿入されることで、配電盤等などに第1基板301が固定される。符号Pで示される部材は、主回路の正極導体である。符号Nで示される部材は、主回路の負極導体である。符号Mで示される部材は、サイリスタ1のカソードKとMOSFET2のドレインDを電気的に接続するための中間導体である。
図6は本発明の実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す第2図である。図6の半導体装置300からは図5のカバー303が除かれている。図7は本発明の実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す第3図である。図7の半導体装置300からは図5の正極導体P、負極導体N、及び中間導体Mが省かれている。
第1基板301の基板面301bには、駆動端子群1A、駆動端子群2A、駆動端子群3A、端子S'及び端子M1'が設けられる。
駆動端子群1Aは端子G21及び端子K1で構成される。端子G21はサイリスタ1のゲートG2と電気的に接続される端子である。端子K1はサイリスタ1のカソードKと電気的に接続される端子である。
駆動端子群2Aは端子G31及び端子S1で構成される。端子G31はMOSFET2のゲートG3と電気的に接続される端子である。端子S1はMOSFET2のソースSと電気的に接続される端子である。
駆動端子群3Aは端子G11及び端子E1で構成される。端子G11はIGBT3のゲートG1と電気的に接続される端子である。端子E1はIGBT3のエミッタEと電気的に接続される端子である。
端子S'及び端子M1'は、MOSFET2の端子間(ドレインDとソースSとの間)に電位差を生じさせることによって、サイリスタ1のアノードAとカソードKとの間に逆バイアスを発生させるための逆バイアス用補助端子群である。
また、第1基板301の基板面301bには、配線パターンG22、配線パターンG32、配線パターンK2、配線パターンS2、配線パターンM2、配線パターンE2、配線パターンP2、配線パターンG12及び配線パターンN3が形成されている。
配線パターンG22は、サイリスタ1のゲートG2と電気的に接続される端子である。配線パターンG22には、端子G21と、サイリスタ1から伸びるジャンパ線SJ1とが接続される。
配線パターンG32は、MOSFET2のゲートG3と電気的に接続される端子である。配線パターンG32には、端子G31と、MOSFET2のゲートG3から伸びるジャンパ線SJ2とが接続される。
配線パターンK2は、サイリスタ1のカソードKと電気的に接続される端子である。配線パターンK2には、端子K1と、サイリスタ1のカソードKから伸びるジャンパ線SJ3とが接続される。
配線パターンS2は、MOSFET2のソースSと電気的に接続される端子である。配線パターンS2には、端子S1と、MOSFET2のソースSから伸びるジャンパ線SJ4とが接続される。
配線パターンP2は、第1配線パターンである。配線パターンP2には、サイリスタ1及びIGBT3が設けられる。配線パターンP2には一例として1つのサイリスタ1と2つのIGBT3とが設けられている。配線パターンP2は、サイリスタ1のアノードAとIGBT3のコレクタCとを電気的に接続するためのランドである。
なお、配線パターンP2に設けられるサイリスタ1とIGBT3の数はこれに限定されず、配線パターンP2には少なくとも1つのサイリスタ1と1つのIGBT3とが設けられていればよい。
配線パターンE2は、IGBT3のエミッタEと電気的に接続される端子である。配線パターンE2には、端子E1と、IGBT3のエミッタEから伸びるジャンパ線SJ5とが接続される。
配線パターンM2は第2配線パターンである。配線パターンM2には複数のMOSFET2が設けられる。配線パターンM2には一例として6つのMOSFET2が設けられている。配線パターンM2は、複数のMOSFET2のそれぞれのドレインDを、中間導体Mに接続するためのランドである。
配線パターンM2には、MOSFET2のドレインDと、ジャンパ線PJ1と、中間導体Mとが接続される。中間導体Mは、配線パターンM2の接続点M2a及び接続点M2bに接続される。
サイリスタ1のカソードKは、ジャンパ線PJ1を介して、配線パターンM2に接続される。
IGBT3のコレクタCは、配線パターンP2を介して、正極導体Pに接続される。また、サイリスタ1のアノードAは、配線パターンP2を介して、正極導体Pに接続される。また、IGBT3のコレクタCとサイリスタ1のアノードAとは、配線パターンP2を介して、互いに電気的に接続される。
配線パターンG12は、IGBT3のゲートGと電気的に接続される端子である。配線パターンG12には、端子G31と、MOSFET2のゲートGから伸びるジャンパ線SJ6とが接続される。
配線パターンN3は、複数のIGBT3のそれぞれのエミッタEと、複数のMOSFET2のそれぞれのソースSとを、負極導体Nに接続するためのランドである。配線パターンN3には、IGBT3のエミッタEから伸びるジャンパ線PJ2と、MOSFET2のソースSからの伸びるジャンパ線PJ3と、負極導体Nと、端子S'とが接続される。
負極導体Nは、配線パターンN3の接続点N3a及びN3bに接続される。
IGBT3のエミッタEは、ジャンパ線PJ2と配線パターンN3を介して、負極導体Nに接続される。また、MOSFET2のソースSは、ジャンパ線PJ2と配線パターンN3を介して、負極導体Nに接続される。また、IGBT3のエミッタEとMOSFET2のソースSとは、ジャンパ線PJ3、ジャンパ線PJ2及び配線パターンN3を介して、互いに電気的に接続される。
なお、第1基板301の基板面301bには、1つのサイリスタ1と、2つのIGBT3と、6つのMOSFET2とが設けられているが、サイリスタ1、MOSFET2及びIGBT3の数はこれらに限定されない。また、第1基板301に設けられるIGBT3の数は2つに限定されるものではない。また第1基板301に設けられるMOSFET2の数は6つに限定されるものではない。
サイリスタ1のカソードKは、ジャンパ線PJ1と配線パターンM2を介して、MOSFET2のドレインDに接続される。中間導体Mは、接続点M2a、M2bで配線パターンM2に接続される。中間導電パターンM1の端子M1aは、配線パターンM2の接続点M2aに接続される。中間導電パターンM1の端子M1bは、配線パターンM2の接続点M2bに接続される。
以上に説明したように半導体装置300は、基板上の第1配線パターン上に設けられる他励式の第1半導体スイッチング素子と、基板上の第2配線パターン上に設けられ前記第1半導体スイッチング素子に直列接続される自励式の第2半導体スイッチング素子とで構成される直列回路部を、少なくとも1つ備えると共に、前記基板上の第1配線パターン上に設けられ、前記直列回路部に並列接続される自励式の第3半導体スイッチング素子を備える。この構成により、基板上の単一のランド(配線パターン)上に少なくともサイリスタ1及びIGBT3が設けられるため、サイリスタ1とIGBT3とのそれぞれが別個のランドに設けられている場合に比べて、基板の部品実装面積を小さくできる。さらに、ランドを基板上に形成する工程が簡略化され、半導体装置300の製造コストを低減することも可能である。また基板の部品実装面積を小さくできるため、基板の構造が簡素化されて信頼性が向上する。さらに、例えば配電盤等に設けられる既存の半導体装置を、本実施の形態に係る半導体装置300に置き換える場合でも、既存の半導体装置と同等の寸法の半導体装置300を製造することができる。
(変形例)
以下では、半導体装置300の変形例を説明する。以下では図5〜図7に示される半導体装置300と同一の構成を有する部位には、同一の符号を付してその説明を省略する。図8Aは本発明の実施の形態1の変形例に係る半導体装置の構成を示す第1断面図であり、図8Bに示される切断線A−A'における半導体装置300Aの断面図である。図8Bは本発明の実施の形態1の変形例に係る半導体装置の構成を示す第2断面図であり、半導体装置300Aの断面図である。図9は本発明の実施の形態1の変形例に係る半導体装置の構成を示す第3断面図である。
図8に示される半導体装置300Aは、大電流に対応するために、ジャンパの代わりに、圧接部材60を用いた構造のモジュールである。圧接部材60は、図7に示されるジャンパ線PJ1〜PJ3及びジャンパ線SJ1〜SJ6の代わりに、信号経路及び電流経路を形成するための筒状の構造体である。圧接部材60の詳細は後述する。
図8Aには、図8Bに示される切断線A−A'における半導体装置300Aの断面が示される。図8Aには、2つのIGBT3と1つのサイリスタ1とが示される。図8Bには、1つのサイリスタ1とMOSFET2とが示される。
半導体装置300Aは、ヒートシンク400に固定されている。マウント350に形成された挿入孔351にボルト401が挿入され、ボルト401の先端がヒートシンク400に形成された挿入口402にねじ込まれることにより、ヒートシンク400への固定が行われる。マウント350は、半導体装置300Aの第2基板302などを固定するための固定部材である。第2基板302とマウント350との間には、フランジ370と絶縁層360が設けられている。
フランジ370には、第2基板302が固定される。第2基板302は、絶縁層341と、絶縁層341の上側に設けられる導電パターン340とを有する。絶縁層341の下側には、複数の圧接部材60と、絶縁板93と、導電板91と、導電板92とが設けられている。
導電板91は、絶縁板93の上側に設けられる。導電板92は、絶縁板93の下側に設けられる。
図8Aに示される3つの圧接部材60の内、左側から1つ目の圧接部材60は、左側から1つ目のIGBT3に形成される表面電極23に接する。左側から2つ目の圧接部材60は、左側から2つ目のサイリスタ1に形成される表面電極23に接する。左側から3つ目の圧接部材60は、左側から3つ目のIGBT3に形成される表面電極23に接する。
図8Bに示される2つの圧接部材60の内、左側から1つ目の圧接部材60は、左側から1つ目のMOSFET2に形成される表面電極23に接する。左側から2つ目の圧接部材60は、左側から2つ目のサイリスタ1に形成される表面電極23に接する。
IGBT3、MOSFET2、サイリスタ1のそれぞれの上側に設けられる表面電極23には、図9に示されるように、制御電極22と表側主電極21とが含まれる。
制御電極22は、IGBT3のゲートG1、サイリスタ1のゲートG2又はMOSFET2のゲートG3に接続される制御用電極である。図9に示すように制御電極22には、導電性のコンタクト40の一端(下端)が接続される。コンタクト40の一端側の先端には絶縁部66が設けられている。絶縁部66は、コンタクト40とコンタクト端子30との間を絶縁するための筒状部材である。
コンタクト40は、上下方向に伸びる棒状を成す信号伝達用の導電性部材である。コンタクト40の一端は、例えばサイリスタ1のゲートG2、MOSFET2のゲートG3、IGBT3のゲートG1などに圧接される。コンタクト40の他端(上端)は導電パターン340と電気的に接続される。
図8に示されるMOSFET2、IGBT3、サイリスタ1のそれぞれの下側には、配線パターン52が設けられている。配線パターン52は図7に示される配線パターンP2又は配線パターンM2に相当する。
配線パターン52は絶縁層51の上側に設けられている。絶縁層51の下側には導電パターン50が設けられる。導電パターン50はヒートシンク400に接している。IGBT3、MOSFET2、及びサイリスタ1で発生した熱は、導電パターン50を介して、ヒートシンク400に伝わる。これにより、IGBT3、MOSFET2、及びサイリスタ1が冷却される。
(圧接部材の構成)
図9に示すように圧接部材60のコンタクト40は、第2基板302の形成されたスルーホール74を貫通している。
コンタクト40の周囲には、導電性の筒状部材71が設けられている。筒状部材71はコンタクト40と一体にダイカスト成型されたものでもよいし、別体に製作された後に互いに接続されたものでもよい。
筒状部材71の内側にはスプリング64が設けられている。スプリング64は筒状部材71が半導体チップ20に向かって押しつけられるときに、圧縮される。半導体チップ20は、図8に示されるMOSFET2、IGBT3又はサイリスタ1である。スプリング64が圧縮されながら、筒状部材71の下側に形成される爪部72が、絶縁板93に形成される孔93aに挿入される。絶縁板93の孔93aに挿入された爪部72の返し部分は、スプリング64の復元力によって、絶縁板93の下側面に引っかかる。これにより、筒状部材71及びコンタクト40の上下動が抑制されるため、制御電極22とコンタクト40との接触状態を維持できる。
筒状部材71の外周部には絶縁層61が設けられている。絶縁層61の外周部には、導電性の筒状部材73が設けられている。筒状部材73の外周部には雄ネジ部70が設けられている。雄ネジ部70には、雌ネジ部94が嵌合している。雌ネジ部94は、導電板91の中空部を形作る壁面91aの内側に設けられている。導電板91と筒状部材73との間には、スプリング65が設けられている。スプリング65の下側は導電板91に接している。スプリング65の上側は絶縁層44に接している。絶縁層44は、筒状部材71の上側の端部から径方向外側に張り出した円盤状の絶縁性部材である。
筒状部材73に設けられた雄ネジ部70が雌ネジ部94にねじ込まれることにより、スプリング65が圧縮される。筒状部材73の下端がコンタクト端子30に接したところで、雄ネジ部70のねじ込みが完了する。これにより、コンタクト端子30、筒状部材73、雄ネジ部70、雌ネジ部94及び導電板91が、互いに電気的に接続されるため、コンタクト端子30の下側に設けられる表側主電極21から導電板91までの電流経路が形成される。
スプリング64の復元力によって、雄ネジ部70と雌ネジ部94との接触面の摩擦力が生じるため、筒状部材73の回転が抑制されると共に、雄ネジ部70を雌ネジ部94に確実に接触させることができる。従って、コンタクト端子30、筒状部材73、雄ネジ部70、雌ネジ部94及び導電板91の電気的な接続を確実に行うことができる。
なお、図9に示すような構造の圧接部材60は、例えば図8に示される2つのIGBT3のそれぞれに対応付けて設けられる。
一方、図8に示されるサイリスタ1に対応付けて設けられる圧接部材60は、例えば導電板91に雌ネジ部94が設けられる代わりに、導電板92に雌ネジ部94が設けられており、この雌ネジ部94が雄ネジ部70と接触するように構成される。このように構成される圧接部材60を用いることによって、導電板92、雌ネジ部94、雄ネジ部70、筒状部材73、及びコンタクト端子30が、電気的に接続されるため、導電板92から、コンタクト端子30の下側に設けられる表側主電極21までの電流経路が形成されて、半導体チップ20(サイリスタ1)と圧接部材60とが電気的に接続される。
なお、図9に示される圧接部材60は、図示例の形状に限定されず、ジャンパ線を用いることなく、半導体チップ20の表面電極23に電力及び信号を伝達する経路を圧接構造により形成できる部材であればよい。
(電流経路の説明)
次に半導体装置300Aに流れる電流経路を説明する。ここでは、正極導体P、サイリスタ1、MOSFET2、負極導体Nの順で流れる電流の経路を説明し、その後に、正極導体P、IGBT3、負極導体Nの順で流れる電流の経路を説明する。
図10Aは本発明の実施の形態1の変形例に係る半導体装置に流れる電流経路を説明するための第1図である。図10Bは本発明の実施の形態1の変形例に係る半導体装置に流れる電流経路を説明するための第2図である。
図10Bに示されるように、矢印で示される電流は、正極導体Pから配線パターン52(サイリスタ1のアノードA)、表面電極23(サイリスタ1のカソードK)、サイリスタ1に接続される圧接部材60、導電板92(中間導体Mの一部もしくは接続する導電板)、配線パターン52(MOSFET2のドレインD)、表面電極23(MOSFET2のソースS)、MOSFET2に接続される圧接部材60、導電板91(負極導体Nの一部もしくは接続する導電板)の順で流れる。
また、図10Aに示されるように、矢印で示される電流は、正極導体Pから配線パターン52(IGBT3のコレクタC)、表面電極23(IGBT3のエミッタE)、導電板91(IGBT3のエミッタE)、負極導体Nの順で流れる。
以上に説明したように、半導体装置300Aによれば、サイリスタ1、MOSFET2及びIGBT3のそれぞれの上側配線を大電流密度に対応した構造とすることができる。特に圧接部材60は、その内部に、コンタクトプローブ(コンタクト40)を備えるため、主回路導通路と独立した信号伝達経路を確保することができる。また、導電体を締結する構造を採用することにより、デバイス活性領域に対する面状のコンタクトが可能になるため、カソードK、エミッタE、ソースSなどを形成する電極における集電効果を高めることができる。また、図7に示される第1基板301に比べて、ジャンパ線を接続するための配線パターンが不要になり、第1基板301の構造が簡素化されると共に、配線パターン52の面積を広げることができるため、放熱効率が大幅に向上する。
また、本実施の形態に係る半導体装置300は、第1半導体スイッチング素子がサイリスタであり、基板に設けられ、第1半導体スイッチング素子、第2半導体スイッチング素子及び第3半導体スイッチング素子のそれぞれを駆動するための駆動端子群と、基板に設けられ、サイリスタのアノードとカソードとの間に逆バイアスを発生させる逆バイアス用端子群と、を備えるように構成される。これにより、第1半導体スイッチング素子、第2半導体スイッチング素子及び第3半導体スイッチング素子のそれぞれのゲートに接続される信号線の接続作業が容易化され、さらにサイリスタ1のアノードとカソードに逆バイアスをかけるための信号線の接続作業が容易化される。
また、本実施の形態に係る半導体装置300Aは、第1半導体スイッチング素子、第2半導体スイッチング素子及び第3半導体スイッチング素子のそれぞれには第1配線パターン側とは反対側に主電極が形成され、主電極を圧接し、第1半導体スイッチング素子、第2半導体スイッチング素子及び第3半導体スイッチング素子のそれぞれの主電流経路を形成する圧接部材を備えるように構成される。これにより、圧接部材による電流経路が形成され、ジャンパ線が用いられる場合に比べて電流容量を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る半導体装置300Aは、第1半導体スイッチング素子、第2半導体スイッチング素子及び第3半導体スイッチング素子のそれぞれには第1配線パターン側とは反対側に制御用電極が形成され、制御用電極を圧接して、第1半導体スイッチング素子、第2半導体スイッチング素子及び第3半導体スイッチング素子のそれぞれの駆動信号が伝達する経路を形成する圧接部材を備えるように構成される。これにより、圧接部材による制御用信号の伝達経路が形成され、ジャンパ線が用いられる場合に比べて配線数が減り、半導体装置300Aの構造を簡素化できる。
(実施の形態2)
実施の形態2では交流に対応した半導体装置の構成例について説明する。以下では、実施の形態1と同様の構成要素については、同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
図11は、本発明の実施の形態2に係る複合半導体スイッチの要部構成を示す回路図である。図11に示される複合半導体スイッチ700は、2つのRB−IGBT(Reverse-Blocking Insulated Gate Bipolar Transistor:逆阻止型IGBT)600と、2つの直列接続体500とを備える。
RB−IGBT600は、順耐圧と同等の信頼性の高い逆耐圧を有するトランジスタである。2つのRB−IGBT600は、逆並列接続される。2つのRB−IGBT600が逆並列接続されることによって、順耐圧と同等の信頼性の高い逆耐圧を有する双方向スイッチング素子が得られる。またRB−IGBT600を用いることによって、例えば、逆方向電圧が印加された際の耐圧を維持するためのダイオードを従来のIGBTに組み合わせた構成に比べて、素子数が少なくなり、電力損失が小さくなるだけでなく、素子全体のサイズが小さくなる。このため、図11に示す2つのRB−IGBT600を複合半導体スイッチ700に適用することによって、低コストで、かつ、小型化された複合半導体スイッチ700を得ることができる。
2つの直列接続体500は逆並列接続される。2つの直列接続体500のそれぞれは、サイリスタ1とMOSFET2とが直列接続された回路である。
図12は、図11に示す複合半導体スイッチを備えた半導体装置の構成を示す第1図である。図12の半導体装置800は、図11に示す複合半導体スイッチ700と、第1基板301と、カバー303とを備える。
図13は、図11に示す複合半導体スイッチを備えた半導体装置の構成を示す第2図である。図13の半導体装置800からは図12のカバー303が除かれている。
図14は、図11に示す複合半導体スイッチを備えた半導体装置の構成を示す第3図である。図14に示すように、半導体装置800は、2つの基板301cをジャンパ線でつなぎ合わせた構成を有する。なお、図13の半導体装置800には、1つの第1基板301が用いられているが、この1つの第1基板301の代わりに、図14に示すような2つの基板301cを半導体装置800に用いてもよい。2つの基板301cは電力用のジャンパ線で接続されることで、同電位化されている。
2つの基板301cには、図7に示される各種配線パターンと同様の配線パターンが設けられる。ジャンパ線SJ1などを用いて、各種の配線パターンとサイリスタ1などが接続される。
実施の形態2によれば、RB−IGBT600を半導体装置800に適用することによって、低コストで、かつ、小型化された半導体装置800を得ることができる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態2と同様に、交流に対応した半導体装置の構成例について説明する。実施の形態3では、双方向スイッチング素子の構成が実施の形態2と異なる。実施の形態2では、2つのRB−IGBT600が用いられていた。これに対して、実施の形態3では、FWD(Free Wheeling Diode)が組み合わされた2つのIGBT600A、又は、2つのRC−IGBT(Reverse-Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor:逆導通IGBT)600Bが用いられる。以下では、実施の形態1、2と同様の構成要素については、同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
図15Aは、本発明の実施の形態3に係る複合半導体スイッチの要部構成を示す第1回路図、図15Bは、本発明の実施の形態3に係る複合半導体スイッチの要部構成を示す第2回路図である。
図15Aに示される複合半導体スイッチ700は、2つのIGBT600Aと、2つの直列接続体500とを備える。2つのIGBT600Aには、電流を転流させるためのFWD601が逆並列接続されている。FWD601が組み合わされた2つのIGBT600Aは、互いに逆方向に直列接続されている。FWD601が組み合わされた2つのIGBT600Aが逆方向に直列接続されることによって、双方向スイッチング素子が得られる。
図15Bに示される複合半導体スイッチ700は、2つのRC−IGBT600Bと、2つの直列接続体500とを備える。RC−IGBT600Bは、IGBT602とFWD601を一体化して1チップ化したパワーモジュールである。RC−IGBT600Bでは、IGBT602とFWD601が一体化しているため、個別のIGBTとダイオードとを用いる場合に比べて部品点数が少なくなり、パワーモジュールの組み立て性が向上する。また、RC−IGBT600Bでは、IGBT602とFWD601が一体化しているため、チップ面積及びモジュール面積を小さくできる、小型のパワーモジュールを得ることができる。また、RC−IGBT600Bでは、IGBT602とFWD601が一体化しているため、FWDとIGBTとの接続点における熱抵抗が低くなる。そのため、FWD領域で発生した熱がIGBT領域を介して放射され、従来のFWDを接続した構成に比べて、放熱性が向上し、パワーモジュールの信頼性が向上する。
図16は、図15に示す複合半導体スイッチを備えた半導体装置の構成を示す第1図である。図16の半導体装置800は、図15A又は図15Bに示す複合半導体スイッチ700と、第1基板301と、カバー303とを備える。
図17は、図15に示す複合半導体スイッチを備えた半導体装置の構成を示す第2図である。図17の半導体装置800からは図16のカバー303が除かれている。
図18は、図15に示す複合半導体スイッチを備えた半導体装置の構成を示す第3図である。図18では、図15A又は図15Bに示される複合半導体スイッチ700を備えた半導体装置800の例が示される。図18に示すように、半導体装置800では、第1基板301の上下方向に、2つのMOSFET2が離れて配列される。ジャンパ線J9は、カソードKと配線パターンK2とを接続する。
2つのMOSFET2のそれぞれのソースSには、ジャンパ線J2を介して、配線パターンP2,N2が接続される。2つのMOSFET2のそれぞれのゲートG3には、ジャンパ線J1を介して、配線パターンG1が接続される。
右側のサイリスタ1のカソードKには、ジャンパ線J3を介して、配線パターンM2が接続される。右側のサイリスタ1のゲートG2には、ジャンパ線J7を介して、配線パターンG5が接続される。
右側の2つのIGBT600AのそれぞれのエミッタE(E2)には、ジャンパ線J6を介して、配線パターンE11が接続される。右側の2つのIGBT600AのそれぞれのゲートGには、ジャンパ線J5を介して、配線パターンG4が接続される。
左側のサイリスタ1のカソードKには、ジャンパ線J3を介して、配線パターンM2が接続される。左側のサイリスタ1のゲートG2には、ジャンパ線J7を介して、配線パターンG5が接続される。
左側の2つのIGBT600AのそれぞれのエミッタE(E1)には、ジャンパ線J6を介して、配線パターンE11が接続される。左側の2つのIGBT600AのそれぞれのゲートGには、ジャンパ線J5を介して、配線パターンG4が接続される。
実施の形態3によれば、実施の形態2と同様に、交流に対応した半導体装置800を得ることができる。また、実施の形態3の半導体装置800に、RC−IGBT600Bを適用することによって、低コストで、かつ、小型化された半導体装置800を得ることができる。
次に図19A〜図20Dを用いて、図18に示される複合半導体スイッチ700と、圧接部材60とを備えた半導体装置800について説明する。まず、図19A〜図19Dを用いて、正極導体Pから負極導体Nに向かって流れる電流の経路について説明し、その後、図20A〜図20Dを用いて、負極導体Nから正極導体Pに向かって流れる電流の経路について説明する。
図19Aは、本発明の実施の形態3の変形例に係る半導体装置の第1断面図、図19Bは、本発明の実施の形態3の変形例に係る半導体装置の第2断面図、図19Cは、本発明の実施の形態3の変形例に係る半導体装置の第3断面図、図19Dは、図18に示される回路を示す図である。図19Aには、図19BのY−Y'矢視断面が示される。図19Bには、図19AのX1−X1'矢視断面が示される。図19Cには図19AのX3−X3'矢視断面が示される。
図19の各図には、複合半導体スイッチ700の正極導体Pから負極導体Nに向かって流れる電流の経路が、矢印で示される。図19の各図において、「1」などの符号が付される箇所は、複合半導体スイッチ700に付される符号と対応している。
図19Aにおいて、複合半導体スイッチ700の正極導体Pに流入した電流は、一方のIGBT(ここではRC−IGBT600Bが用いられているものとする)と、一方のサイリスタ1に流入する。図19Aにおいて、一方のRC−IGBT600Bのコレクタ(C1)からエミッタに流れた電流は、圧接部材60を介して、導電板91に流れる。導電板91に流入した電流は、他方のIGBT(ここではRC−IGBT600Bが用いられているものとする)のエミッタ、コレクタ(C2)を介して、配線パターン52に至り、さらに、図19Dに示す、複合半導体スイッチ700の負極導体Nへ至る。
図19Bにおいて、正極導体Pに流入した電流は、配線パターン52(P)に流入した後、一方のサイリスタ1のアノードに流入する。一方のサイリスタ1のアノードに流入した電流は、当該サイリスタ1のカソードに接続される導電板92に流入し、更に配線パターン52(P)に流入した後、中間導体Mへ流れると共に、図19Bに示すように、MOSFET2のドレインに流入する。MOSFET2のドレインに流入した電流は、MOSFET2のソースに接続された圧接部材60、導電板91、更に図19C(第3断面)の導電板91を介して、配線パターン52(N)に流入する。配線パターンに流入した電流は、図19Cに示すように、複合半導体スイッチ700の負極導体Nへ至る。
つぎに、図20A〜図20Dを用いて、負極導体Nから正極導体Pに向かって流れる電流の経路について説明する。図20Aは、本発明の実施の形態3の変形例に係る半導体装置の第4断面図、図20Bは、本発明の実施の形態3の変形例に係る半導体装置の第5断面図、図20Cは、本発明の実施の形態3の変形例に係る半導体装置の第6断面図、図20Dは、図18に示される回路を示す図である。図20Aには、図20BのY−Y'矢視断面が示される。図20Bには、図20AのX3−X3'矢視断面が示される。図20Cには図20AのX1−X1'矢視断面が示される。
図20の各図には、複合半導体スイッチ700の負極導体Nから正極導体Pに向かって流れる電流の経路が、矢印で示される。図20の各図において、「11」などの符号が付される箇所は、複合半導体スイッチ700に付される符号と対応している。
図20Aにおいて、複合半導体スイッチ700の負極導体Nに流入した電流は、他方のIGBT(ここではRC−IGBT600Bが用いられているものとする)と、他方のサイリスタ1とに流入する。図20Aにおいて、他方のRC−IGBT600Bのコレクタ(C1)からエミッタに流れた電流は、圧接部材60を介して、導電板91に流れる。導電板91に流入した電流は、一方のIGBT600(ここではRC−IGBT600Bが用いられているものとする)のエミッタ、コレクタ(C2)、配線パターン52に至り、さらに、図20Dに示す、複合半導体スイッチ700の正極導体Pへ至る。
図20Bにおいて、導電板92を介して、他方のサイリスタ1のアノードに流入した電流は、当該サイリスタ1のカソードに接続される配線パターン52に流入した後に、中間導体Mへ流れると共に、図20Aに示すように、MOSFET2のドレインに流入する。MOSFET2のドレインに流入した電流は、MOSFET2のソースに接続された圧接部材60、導電板91を介して、図20Bに示すように、複合半導体スイッチ700の正極導体Pへ至る。
以上に説明したように、本実施の形態2、3に係る半導体装置は、基板上の第1配線パターン上に設けられる他励式の第1半導体スイッチング素子と、前記基板上の第2配線パターン上に設けられ前記第1半導体スイッチング素子に直列接続される自励式の第2半導体スイッチング素子とで構成される直列回路部を、少なくとも2つ備えると共に、前記直列回路部のいずれか一方の第1の半導体スイッチが設けられた第1配線パターンに設けられ、並列接続される自励式の第3半導体スイッチング素子が双方向スイッチング素子で構成される。この構成により、実施の形態1の効果を得ることができると共に、交流に対応した半導体装置を得ることができるため、半導体装置の汎用性を高めることができる。
また、本実施の形態に係る半導体装置を構成する半導体スイッチング素子がSiCを含む化合物半導体デバイスであってもよい。第3の半導体スイッチング素子が高耐圧な性質を有するSiC−IGBTなどの自励式バイポーラデバイスを用いることで本半導体装置の高耐圧化を図ることが可能であり、更に第1の半導体スイッチング素子が同様に高耐圧を有するSiC−SCRなどの他励式デバイスを用いてもよい。
なお、本実施の形態に係る半導体装置は、電力変換装置に適用することで、電力変換装置の小型化を図ることができ、さらに電力変換装置の信頼性を向上させることができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。