以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。図1〜図9は、本発明の便座装置による第1実施形態を示している。
図1は、本発明の第1実施形態に係るトイレ装置を示す斜視図である。
図2は、ミストモードが実行されているときに図1中のトイレ装置を矢示A−A方向からみた断面図である。
図3は、残水排出モードが実行されているときに図1中のトイレ装置を矢示A−A方向からみた断面図である。
図1に示すトイレ装置1は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器100」と称する)と、便座装置10と、を備える。便器100は、汚物を受ける凹状のボウル部101を有する。便座装置10は、便器100の上部に設置されている。
便器100の後方には、本体部12が配置されている。便座部14は、本体部12に回動可能に軸支されている。便座装置10は、便器100の内部と便座部14とのうち少なくとも一方にミストMを噴霧する噴霧装置60と、噴霧装置60を制御する制御装置70と、を備えている。便座部14の後側には、本体部12に回動可能に軸支される便蓋16が設けられている。図1の状態は、便座部14が閉じた状態(下げられた状態)であり、便蓋16が開いた状態(上げられた状態)である。便蓋16は、閉じた状態では、便座部14の座面14aを上方から覆う。
本体部12には、使用者が便座部14に座ったことを検知する着座検知センサ20が設けられている。また、本体部12の内部には、便座部14に座った使用者の人体局部(「おしり」など)の洗浄を実現する身体洗浄機能部58などが内蔵されている。着座検知センサ20が便座部14に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの手動操作部24を操作すると、身体洗浄機能部58の洗浄ノズル(以下説明の便宜上、単に「ノズル58a」と称する)を便器100のボウル部101内に進出させることができる。なお、図1に示す便座装置10では、ノズル58aがボウル部101内に進出した状態を表している。
ノズル58aの先端部には、ひとつまたは複数の吐水口が設けられている。そして、ノズル58aは、その先端部に設けられた吐水口から水を噴射して、便座部14に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。なお、本願明細書において、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「左側方」、および「右側方」のそれぞれは、開いた便蓋16に背を向けて便座部14に座った使用者から見た方向である。
図2、図3に示すように、便器100は、ボウル部101の上に設けられたリム部102を有する。リム部102は、便器100の上縁部を形成する環状部分である。リム部102は、上面103と、内壁面104と、を有する。上面103は、閉じられた便座部14の裏面14bと対面している。ボウル部101内には、溜水部101aが設けられている。この溜水部101aには、溜水W1が溜められる。図3に示すように、溜水部101aは、ボウル部101内のうち溜水W1の最大水位WLよりも下側の部分となっている。そして、例えば使用者が、手動操作部24(リモコン)に設けられたスイッチによって便器洗浄の操作を行ったり、使用者が便座部14から立ち上がったりすると、便器洗浄(ボウル部101内の汚物を排出し、ボウル部101の表面を洗浄する動作)が実行される。便器洗浄においては、ボウル部101内に洗浄水が供給される。
また、図2に示すように、制御装置70がミストモードを実行しているときには、噴霧装置60から便器100の内部および便座部14に向けて水道水または除菌水のミストMが噴霧される。一方、図3に示すように、制御装置70が残水排出モードを実行しているときには、噴霧装置60から便器100の溜水部101aに溜められた溜水W1に向けて残水Pが落下する。ミストモードおよび残水排出モードについては、後述で説明する。
図4は、便座装置の要部構成を示すブロック図である。
なお、図4は、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
着座検知センサ20は、使用者の便座部14への着座の有無を検知することができる。着座検知センサ20は、使用者の着座および離座を検知する。着座検知センサ20には、マイクロ波センサ、測距センサ(赤外線投光式センサ)、超音波センサ、タクトスイッチ、静電容量スイッチ(タッチセンサ)、または歪みセンサを用いることができる。
なお、タクトスイッチ、静電センサおよび歪みセンサなどの接触式センサを用いる場合には、これらの接触式センサは、便座部14に設けられる。便座部14に使用者が座ると、使用者の体重によってタクトスイッチが押下される。または、使用者が静電センサに接触する。または、使用者の体重によって歪みセンサに圧力が加えられる。これらのセンサからの電気信号により、使用者の着座を検知することができる。
人体検知センサ22は、便器100の前方にいる使用者、すなわち便座部14から前方へ離間した位置に存在する使用者を検知することができる。つまり、人体検知センサ22は、トイレ室に入室して便座部14に近づいてきた使用者を検知することができる。このような人体検知センサとして、例えば焦電センサ、マイクロ波センサ、超音波センサ、または測距センサ(赤外線投光式センサ)を用いることができる。人体検知センサ22は、トイレ室のドアを開けて入室した直後の使用者や、トイレ室に入室する直前の使用者、すなわちトイレ室に入室しようとしてドアの前に存在する使用者を検知してもよい。例えば、マイクロ波センサを用いた場合には、トイレ室のドア越しに使用者の存在を検知することが可能となる。
手動操作部24は、使用者が例えば任意のタイミングで除菌水の噴霧を行うための操作部である。手動操作部24は、スイッチまたはボタンなどを有するリモコンであり、使用者が手動操作部24を操作すると、除菌水の噴霧を指示する操作情報(信号)が制御装置70に送られる。制御装置70は、その操作情報に基づいて除菌装置54や噴霧装置60を制御する。これにより、使用者は、手動操作部24を操作することで、除菌水の噴霧を行うことができる。また、手動操作部24は、除菌水の噴霧だけでなく、使用者が便座装置10の各機能を操作するためのスイッチやボタンなどを有していてもよい。各機能に対応した操作が行われると、その操作情報が制御装置70に送られ、制御装置70は、その操作情報に基づいて、便座装置10の各部の動作を制御する。
また、本体部12の内部には、便座用モータ26、便蓋用モータ28、便座ヒータ30、送風装置32、温風ヒータ34、および風向き変更部36が設けられている。便座用モータ26は、制御装置70からの指令に基づいて、電動で便座部14を回動させ開閉する。便蓋用モータ28は、制御装置70からの指令に基づいて、電動で便蓋16を回動させ開閉する。
便座ヒータ30(乾燥装置)は、例えば便座部14の内部に設けられている。便座ヒータ30は、例えば便座部14の中央に形成された開口の周りに沿って設けられた環状の金属部材を有する。便座ヒータ30は、制御装置70からの指令に基づいて通電が行われることで、便座部14を温める。便座ヒータ30としては、例えばチュービングヒータや、シーズヒータ、ハロゲンヒータ、カーボンヒータなどを用いてもよい。金属部材は、例えばアルミニウムや銅などで構成される。また、金属部材の形状は、シート状やワイヤ状、メッシュ状など、種々の形状を採用することができる。
送風装置32は、例えば本体部12の内部に設けられたファンである。送風装置32は、制御装置70からの指令に基づいて動作する。送風装置32は、例えばモータの回転に伴い羽根が回転することにより、便器100内(ボウル部101内)に向けて送風することができる。送風装置32は、噴霧装置60から噴出されるミストMを風に乗せて便器100および便座部14にミストMを送る。送風装置32は、例えばモータの回転制御により、風量を変更可能な風量変更部となっている。また、送風装置32は、便座部14に座った使用者の局部に送風してもよい。
温風ヒータ34は、送風装置32によって本体部12の外部へ送られる空気を温める。これにより、使用者の局部に向けて温風を送り、局部を乾燥させることができる。また、風向き変更部36は、本体部12から便器100内に向けて送られる風の向きを変更する。風向き変更部36は、例えばモータによりダンパやルーバなどの向きを変更させて、便器100内に送出される風の向きを変更する。また、風向き変更部36は、コアンダ効果により風の向きを可変に制御してもよい。風向き変更部36は、便器100内の風向きを変更することで、噴霧装置60から噴出されたミストMを便器100および便座部14に効率よく行き渡らせる。
水路系において、便座装置10は、管路40〜43、電磁弁50、バキュームブレーカ52、除菌装置54、切替弁56、ノズル58a、ノズル洗浄室58c、および噴霧装置60を有する。これらは、本体部12内に配置されている。
管路40は、水道や貯水タンクなどの図示しない給水源から供給された水を噴霧装置60やノズル58aなどに導くためのものである。管路40の上流側には、電磁弁50が設けられている。電磁弁50は、開閉可能な電磁バルブであり、本体部12の内部に設けられた制御装置70からの指令に基づいて水の供給を制御する。
管路40上において、電磁弁50の下流には、バキュームブレーカ52が設けられている。このバキュームブレーカ52は、例えば水を流すための流路と、流路内に空気を取り込むための吸気口と、吸気口を開閉する弁機構と、を有する。弁機構は、例えば流路に水が流れているときに吸気口を塞ぎ、水の流れの停止とともに吸気口を開放して流路内に空気を取り込む。すなわち、バキュームブレーカ52は、管路40に水の流れがないときに、に空気を取り込む。弁機構には、例えばフロート弁が用いられる。バキュームブレーカ52は、上記のように管路40内に空気を取り込むことにより、例えば管路40のバキュームブレーカ52よりも下流の部分の水抜きを促進させる。バキュームブレーカ52は、例えば、ノズル58aや噴霧装置60からの水抜きを促進する。
管路40上において、バキュームブレーカ52の下流には、除菌水を生成する除菌装置54が設けられている。除菌装置54は、例えば次亜塩素酸などを含む除菌水を生成する。除菌装置54としては、例えば電解槽ユニットが挙げられる。電解槽ユニットは、制御装置70からの通電の制御によって、陽極板(図示せず)と陰極板(図示せず)との間の空間(流路)を流れる水道水を電気分解する。なお、除菌水は、次亜塩素酸を含むものには限定されない。除菌水は、例えば銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む溶液、電解塩素やオゾンなどを含む溶液、酸性水またはアルカリ水などでもよい。除菌装置54は電解槽に限らず、除菌水を生成可能な任意の構成でよい。
管路40上において、除菌装置54の下流には、切替弁56が設けられている。切替弁56の下流には、身体洗浄機能部58のノズル58aやノズル洗浄室58c、噴霧装置60が設けられている。管路40は、切替弁56により、ノズル58aへ水を導く管路41、ノズル洗浄室58cへ水を導く管路42、および噴霧装置60へ水を導く管路43に分岐している。切替弁56は、制御装置70からの指令に基づいて、管路41、管路42、および管路43のそれぞれの開閉を制御する。つまり、切替弁56は、ノズル58a、ノズル洗浄室58c、および噴霧装置60への水の供給を制御する。また、切替弁56は、その下流に供給する水の流量を変更する。管路43は、噴霧装置60の給水部となっている。
身体洗浄機能部58は、ノズル58a、ノズルモータ58b、ノズル洗浄室58c、およびノズルダンパ58dを有している。ノズル58aは、非使用時にはノズルダンパ58dの後方に位置して本体部12内に収納されている。そして、人体局部の洗浄時等において、ノズル58aは、ノズルモータ58bからの駆動力を受け、本体部12に対して開閉可能なノズルダンパ58dを押圧して、便器100のボウル部101内に進出する。ノズルモータ58bは、制御装置70からの指令に基づいて駆動する。ノズル58aは、本体部12から前方へ進出した状態で、吐水口から水を吐出して、人体局部を洗浄する。ノズル洗浄室58cは、その内部に設けられた吐水口から除菌水あるいは水道水を噴射することにより、ノズル58aの外周表面(胴体)を洗浄する。
噴霧装置60は、便器100の内部(ボウル部101)と便座部14とのうち少なくとも一方にミストMを噴霧する。噴霧装置60は、水道水または除菌装置54で生成された除菌水をミスト状にして、そのミストMを噴霧部62からボウル部101、リム部102、および便座部14に噴霧する。換言すると、噴霧装置60は、除菌水のミストMまたは水道水のミストMを、ボウル部101、リム部102、および便座部14に着水させる。噴霧装置60の具体的な構成については後で説明する。なお、本願明細書において「着水」とは、水(除菌水または水道水)が物体の表面に付着することをいう。特に「直接着水」という場合には、水(除菌水または水道水の微粒子)が空中から物体の表面に到着することを意味する。
制御装置70には、図示しない電源回路から電力を供給される回路が用いられる。制御装置70は、例えばマイコンなどの集積回路を含む。制御装置70は、使用者を検知する人体検知センサ22または着座検知センサ20の検知情報、手動操作部24の操作情報に基づいて、便座用モータ26、便蓋用モータ28、便座ヒータ30、送風装置32、温風ヒータ34、風向き変更部36、電磁弁50、バキュームブレーカ52、除菌装置54、切替弁56、ノズルモータ58b、および噴霧装置60を制御する。
制御装置70は、人体検知センサ22の検知情報(使用者の存在の有無を示す信号)や、着座検知センサ20の検知情報(使用者の着座の有無を示す信号)を受信し、受信した検知情報に基づいて、便座装置10の各部の動作を制御する。
制御装置70は、噴霧装置60を制御する。この場合、制御装置70は、噴霧装置60からミストMを噴霧するミストモードと、管路43内の残水を抜く水抜モードと、噴霧装置60から残水を排出する残水排出モードと、を実行する。ミストモードは、例えばプレミストモード、アフターミストモード、定期ミストモード、および手動ミストモードの複数のモードを有している。水抜モードと残水排出モードとは、これらミストモードの後に実行される。水抜モードは、ミストモードの後で残水排出モードが終了するよりも前に、実行される。
プレミストモードは、使用者のトイレ装置1の使用前に、人体検知センサ22の検知情報に基づいて、除菌水または水道水のミストMを自動で噴霧する動作モードである。アフターミストモードは、使用者のトイレ装置1の使用後に、人体検知センサ22の検知情報に基づいて、除菌水のミストMを自動で噴霧する動作モードである。定期ミストモードは、例えば便座装置10がトイレ装置1の不使用時間帯を学習制御して、除菌水のミストMを自動で噴霧する動作モードである。手動ミストモードは、手動操作部24の操作情報に基づいて、除菌水のミストMを噴霧する動作モードである。
図5(a)〜図5(e)は、便座装置の本体部を示す平面図および斜視図である。
図5(a)に示すように、噴霧装置60、ノズルダンパ58d、および送風ダンパ36aは、便座装置10が便器100の上部に設置された状態において、ボウル部101の後方上部に位置する。図5(b)は、図5(a)の一部を拡大して示している。なお、図5(b)では、噴霧装置60の前方に位置する本体部12の前壁部122を破断して、噴霧装置60と噴霧部62が収容される収納室121とを表している。図5(c)〜図5(e)は、噴霧装置60、ノズルダンパ58dおよび送風ダンパ36aの周辺を拡大して表す斜視図である。
ノズルダンパ58dは、本体部12の前壁12aに対して回動可能に軸支されている。ノズル58aは、本体部12の内部に後退している状態では、ノズルダンパ58dの後方に位置する。人体局部の洗浄時などにおいて、ノズル58aは、ノズルダンパ58dに当接し、ノズルダンパ58dを回動させて開き、本体部12の内部から進出する。
送風ダンパ36aは、ノズルダンパ58dの左側方に位置して、本体部12の前壁12aに対して回動可能に軸支されている。送風ダンパ36aは、風向き変更部36の一部を構成している。送風ダンパ36aの後方には、送風装置32、温風ヒータ34、および風向き変更部36のルーバなどが配置されている。送風ダンパ36aは、本体部12の開口120を覆う。送風装置32から送られた空気は、風向き変更部36により風向きを制御された状態で開口120から便器100内へ送られる。
図5(c)は、送風装置32が動作を停止した状態であり、図5(d)および図5(e)は、送風装置32が作動し、ボウル部101内に向けて送風している状態を示す。図5(c)に示すように、送風が停止した状態においては、送風ダンパ36aは、閉じている。図5(d)に示すように、送風装置32が作動すると、送風ダンパ36aは、送風装置32から送られる空気の圧力(風圧)により回動して開く。これにより、送風装置32は、例えば矢示Cのように、ボウル部101内の後方上部からボウル部101内の前方下部へ向けて送風する。
図5(e)の状態においては、図5(d)の状態に比べて、送風装置32が送る風量が多い(または風速が高い)。この場合には、送風ダンパ36aは、図5(d)の状態に比べて、さらに回動して開く。これにより、送風装置32は、例えば矢示Dのように、ボウル部101内の後方上部からボウル部101内の前方上部へ向けて送風する。なお、送風ダンパ36aの後方に風向き変更部36を構成するルーバなどを設けて、このルーバの向きを可変とすることにより、風向きを左右方向に変更させてもよい。
このように、送風装置32から送られる風の方向は、風向き変更部36(送風ダンパ36a)によって変化する。送風装置32は、風量(風速)によって送風方向を制御することができる。送風装置32からの送風によって生じる気流に、噴霧装置60から噴霧されたミストMを乗せることで、ミストMが着水する範囲および各範囲におけるミストMの着水量(各範囲に着水する除菌水または水道水の量)を制御することができる。
図6は、図5(c)中の本体部と噴霧装置とを矢示B−B方向からみた断面図である。
図7(a)〜図7(c)は、ミストモード、水抜モード、および残水排出モードを実行しているときの噴霧装置の状態を模式的に示す模式図である。図7(a)は、ミストモードを実行しているときの模式図である。図7(b)は、水抜モードを実行しているときの模式図である。図7(c)は、残水排出モードを実行しているときの模式図である。
本体部12には、噴霧装置60の噴霧部62が収納される収納室121が設けられている。収納室121は、噴霧部62の前方を覆う前壁部122と、噴霧部62の下方を覆う底壁部123と、前壁部122と底壁部123との間に設けられた開口部124と、を有している。収納室121は、開口部124以外は前後方向、左右方向、および上下方向が囲まれた空間となっており、内部に水W2(水道水または除菌装置54で生成された除菌水)が供給される。
前壁部122は、本体部12の前壁12aの一部を構成している。底壁部123は、本体部12の前壁12bの一部を構成している。前壁部122と底壁部123とは、本体部12に一体的に設けられていてもよいし、本体部12とは別体で設けられていてもよい。
開口部124は、前壁部122と底壁部123との間に設けられている。開口部124は、前壁部122の下端122aと底壁部123の前端123aとの間に位置して、ボウル部101の内部と収納室121との間を連通している。
開口部124は、噴霧装置60の噴霧部62から噴霧されたミストMを便器100の内側(ボウル部101)に通過させるためのものである。また、開口部124は、便器100の溜水部101aに溜められた溜水W1の上方に位置している。これにより、噴霧装置60の噴霧部62の残水Pを収納室121から排出するときに、残水Pを開口部124から溜水W1に落下させることができる。
開口部124は、ミストMが噴霧されない状態においても開口している。すなわち、開口部124は、開閉可能なカバー部などで閉塞されることなく、便器100の内側と収納室121との間を常時連通している。これにより、収納室121の通気性がよくなるので、収納室121内の残水を効率よく乾燥させることができ、スケールが収納室121内に発生するのを抑制することができる。
図6に示すように、開口部124は、本体部12の下端側に形成されている。この場合、前壁部122は、噴霧装置60の前側全体を覆っているので、例えばボウル部101から跳ねた尿や汚水が開口部124から収納室121内に浸入してとしても、噴霧装置60にかかるのを抑制することができる。
図5に示すように、開口部124は、鉛直方向(上下方向)よりも水平方向(左右方向)が長く形成された横長スリット形状となっている。これにより、前壁部122の前面122bを上側から下側(開口部124側)に伝わる尿や汚水が開口部124から収納室121内に浸入しにくくできる。
一方、図6に示すように、底壁部123は、上面123bが開口部124に向けて下降傾斜している。これにより、収納室121内に供給された水W2は、底壁部123の上面123bを伝わって開口部124からボウル部101内に排出させることができる。従って、底壁部123の上面123bに残水が発生するのを低減することができるので、収納室121にスケールや菌が繁殖するのを抑制することができる。
噴霧装置60は、本体部12の内部に設けられている。噴霧装置60は、便座装置10が便器100の上部に設置された状態において、便座部14よりも下方に配置され、便器100内に向けてミストMを噴霧する。ここで、噴霧装置60が便座部14よりも下方に配置されている状態とは、噴霧装置60の少なくとも一部(この例では噴霧部62)が便座部14よりも下方であることをいう。これにより、便座部14よりも下方から、便器100内に水道水または除菌水のミストMが噴霧される。
噴霧装置60は、モータ61と、モータ61の下方に接続され板状に形成された噴霧部62と、噴霧部62の上面62aに水W2を供給する給水部(管路43)と、を有する。モータ61の回転は、制御装置70によって制御される。噴霧部62は、円盤状のディスクとして形成され、収納室121内に配設されている。すなわち、噴霧部62は、周囲が取り囲まれている。
噴霧部62の上方には、給水部を構成する管路43の給水口43aが設けられている。給水口43aから噴霧部62の上面62aに水W2(水道水または除菌装置54で生成された除菌水)が供給される。モータ61が回転すると、回転の駆動力が噴霧部62に伝達され、噴霧部62が回転する。噴霧部62の回転中に、水W2が供給されることで、噴霧部62は水W2をミスト状にして噴霧する。すなわち、噴霧装置60は、噴霧部62の回転によりミストMを生成する回転霧化式となっている。
なお、管路43の給水口43aは、1つに限らず、複数設けられていてもよい。図7では、給水口43aを2個設けた場合を示している。例えば、複数の給水口43aを噴霧部62の外周に沿って略等間隔に配置することにより、噴霧装置60の周囲において、ミストMの粒径や流量の偏りを抑え、均一な噴霧を行うことができる。
図6に示すように、噴霧部62は、例えば円錐形状からなり、水W2が滴下される上面62aの上端側から下端側(径方向外側)に向けて下向きに傾斜する傾斜面62bを有している。噴霧部62の傾斜面62bは、前壁部122側では開口部124に向けて傾斜している。そして、噴霧部62は、傾斜面62bの径方向外側の端部62cからミストMを噴霧する。
これにより、回転する噴霧部62の上面62aに滴下された水W2は、遠心力によって噴霧部62上で膜状に広がり、端部62cから放射される。すなわち、噴霧部62は、鉛直方向(上下方向)よりも水平方向(左右方向)にミストMが広がるように形成されている。また、噴霧部62は、傾斜面62bを有することで、水平方向に対して下方に向けてミストMを噴霧する。すなわち、噴霧部62の上面62aに滴下された水W2は、端部62cから開口部124に向かって横長状に噴霧される。
ここで、水W2は、噴霧部62の端部62cから開口部124に向かって膜状のまま分裂したり、糸状となった後に分裂したりし、その後に微粒子(ミストM)となる。噴霧部62の回転速度、すなわち、モータ61の回転速度によって、ミストMの粒径を制御することができる。この場合、回転速度が高い程、ミストMの粒径は小さくなる。また、管路43の給水口43aから噴霧装置60に供給される水W2の流量を調整することにより、ミストMの粒径を制御することもできる。
なお、粒径とは、ボウル部101および便座部14に着水する前の空中に存在する微粒子の粒径であり、例えばザウター平均粒径(総体積/総表面積)である。また、ミストMとは、粒径が10マイクロメートル(μm)以上300μm以下の範囲をいう。ミストMの粒径が10μm未満であると、ボウル部101、リム部102、便座部14などの対象部位を濡らすために長い時間が必要となってしまう。また、次亜塩素酸を含む除菌水を用いた場合、ミストMの粒径が10μm未満であると、ミストM中の次亜塩素酸の濃度が減衰しやすく、除菌性能が低下しやすい。一方、ミストMの粒径が300μmより大きいと、ミストMが拡散しにくく、広範囲にミストMを噴霧することが困難となる。
ミストモードでは、ミストMの粒径が10μm以上300μm以下となるように、噴霧装置60のモータ61の回転速度が制御される。一方、残水排出モードでは、粒径が300μm以上となるように、噴霧装置60のモータ61の回転速度が制御される。すなわち、残水排出モードでのモータ61の回転速度は、ミストモードでのモータ61の回転速度よりも遅く(低速で)制御されている。残水排出モードでは、噴霧部62上の残水Pをミストにせずに弾き飛ばし、かつ残水Pが開口部124から噴霧されないようなモータ61の回転速度に制御される。モータ61の回転速度は、噴霧部62の形状、大きさなどに基づき、実験、シミュレーションなどにより設定される。
本実施形態による便座装置10は、上述の如き構成を有するもので、次に噴霧装置60の作動について説明する。
制御装置70は、管路43(給水部)から噴霧部62の上面62aに水W2が供給された状態で噴霧部62を駆動することにより、ミストMを噴霧するミストモードと、ミストモードの後で前記噴霧部62を駆動することにより前記噴霧部62の残水Pを排出する残水排出モードと、を実行する。ミストモードでは、除菌水または水道水のミストMを噴霧装置60からボウル部101および便座部14に向けて噴霧することにより、ボウル部101や便座部14を除菌したり、汚れの付着を抑制したりする。
この場合、制御装置70は、例えばプレミストモード、アフターミストモード、定期ミストモード、および手動ミストモードを実行する。プレミストモードは、使用者のトイレ装置1の使用前に、人体検知センサ22の検知情報に基づいて、除菌水または水道水のミストMを自動で噴霧する。アフターミストモードは、使用者のトイレ装置1の使用後に、人体検知センサ22の検知情報に基づいて、除菌水のミストMを自動で噴霧する。定期ミストモードは、例えば便座装置10がトイレ装置1の不使用時間帯を学習制御して、除菌水のミストMを自動で噴霧する。手動ミストモードは、手動操作部24の操作情報に基づいて、除菌水のミストMを噴霧する。
ここで、例えばミストモードが終了した後に噴霧部62上の残水が乾燥すると、噴霧部62にスケールが付着する可能性がある。このスケールは、噴霧部62の上面62aを流れる水W2の方向を変化させるので、ミストMの放射形状が乱れて便器100内および便座部14に効果的にミストMを噴霧することができない虞がある。
そこで、本実施形態では、ミストモードが終了した後に、水抜モードと残水排出モードとを実行している。
図8は、制御装置によるミストモード、水抜モード、および残水排出モードを示す流れ図である。図8に示す制御処理は、制御装置70のメモリにあらかじめ格納(記憶)されている。また、図8に示す制御処理は、人体検知センサ22の検知情報、手動操作部24の操作情報、および所定の時間などに実行される。
まず、S1では、残水排出モードを実行する。すなわち、制御装置70は、ミストモードを実行する前に、噴霧装置60のモータ61を駆動して噴霧部62を低速で回転させる。この残水排出モードは、予備的に噴霧部62を回転させて、噴霧部62の残水(汚水)を排出させるものである。これにより、例えば噴霧部62に尿や汚水が付着していたとしても、ミストモードでその尿や汚水を含んだミストが噴霧されるのを抑制することができる。なお、S1における残水排出モードは、行われなくてもよい。
次のS2では、ミストモードが開始される。すなわち、制御装置70は、切替弁56を管路43側に切替えて、各ミストモードに基づき除菌水または水道水からなる水W2を管路43の給水口43aから噴霧部62の上面62aに供給する。そして、制御装置70は、噴霧装置60のモータ61を駆動して噴霧部62を高速で回転させる。これにより、図7(a)に示すように、噴霧部62の端部62cからミストMが噴霧される。このミストMは、開口部124を介して便器100の内部(ボウル部101)や便座部14に着水する。
次の、S3では、ミストモードが停止する。すなわち、制御装置70は、あらかじめ設定された時間が経過したら、電磁弁50を閉塞して、管路43の給水口43aから噴霧部62への水W2の供給を停止する。また、制御装置70は、噴霧装置60のモータ61の駆動を停止して、噴霧部62の回転を停止する。
次のS4では、給水部(管路43)内の残水を排出する。すなわち、制御装置70は、管路43内の水を抜く水抜モードを開始する。この場合、制御装置70は、バキュームブレーカ52を作動させて、管路43内に残った除菌水または水道水を管路43の給水口43aから噴霧部62の上面62aに排出する。管路43から排出された残水の一部は、噴霧部62から底壁部123に落ち、底壁部123の傾斜面に沿って開口部124からボウル部101の溜水W1に落下する。また、図7(b)に示すように、管路43から排出された残水の一部は、噴霧部62の上面62aに残る。
S5では、給水部(管路43)内の残水排出が完了したか否かを判定する。すなわち、制御装置70は、水抜モードを完了(終了)するか否かを判定する。水抜モードの完了は、例えば管路43内の残水が完全に排出されたとされる経過時間により判断してもよいし、給水口43aにセンサなどを設けて管路43の残水が排出されたか否かを判断してもよい。そして、S5で「YES」、すなわち給水部内の残水排出が完了したと判定された場合には、S6に進む。一方、S5で「NO」、すなわち給水部内の残水排出が完了していないと判定された場合には、S4に戻り、管路43内の残水排出を監視する。
S6では、残水排出モードを実行する。すなわち、制御装置70は、噴霧装置60のモータ61を駆動することにより、噴霧部62をミストモードよりも遅い低速で回転させる。これにより、図7(c)に示すように、噴霧部62上の残水Pは、ミストMにならずに噴霧部62から排出される。すなわち、残水Pは、ミストMよりも大きい粒径で噴霧部62から放出される。この場合、残水Pは、噴霧部62の遠心力が小さいので、開口部124から放出されることなく、例えば収納室121の前壁部122に接触する。そして、残水Pは、前壁部122から開口部124を介して便器100に溜められた溜水W1に落下する。制御装置70は、残水排出モードが開始してからあらかじめ設定された時間が経過したら、モータ61の駆動を停止して残水排出モードを終了させ、エンドとなる。
図9は、水抜モードおよび残水排出モードの実行状態の一例を示すタイムチャートである。図9では、図8中のS3(ミストモード停止)以降のタイムチャートを示している。
まず、時間t1では、ミストモードが終了(OFF)するとともに、水抜モードが開始(ON)される。時間t1から時間t2の間では、水抜モードを実行するために、バキュームブレーカ52を作動させて管路43内の水抜を行う。時間t2では、水抜モードが終了(OFF)するとともに、残水排出モードが開始(ON)される。時間t2から時間t3の間では残水排出モードを実行するために、噴霧装置60のモータ61を低速で回転させる。これにより、噴霧装置60の噴霧部62に残水が発生するのを抑制することができ、ひいては噴霧部62にスケールが発生するのを抑制することができる。そして、時間t3では、残水排出モードが終了(OFF)する。
かくして、第1実施形態による便座装置10は、残水排出モードを実行することで、ミストモードの実行後に噴霧部62の残水を排出することができる。これにより、噴霧部62にスケールが発生するのを抑制することができる。その結果、スケールが原因でミストMが意図しない方向に噴霧されることを抑制できる。また、水抜モードの後に残水排出モードが終了するので、噴霧部62の残水をより確実に排出することができ、噴霧部62にスケールが発生することをより確実に抑制できる。さらに、噴霧部62の残水は便器100の内部に向けて勢いよく噴霧されない。従って、ミストモードによって便座部14や便器100の内部に滞留させていたミストM(例えば除菌水ミスト)の上に、残水排出モードによって便座部14や便器100の内部に噴霧したミストが着水して、ミストモードにより付着させたミストMが流れ落ちることを抑制できる。
次に、図10、図11は、本発明による便座装置の第2実施形態を示している。第2実施形態の特徴は、水抜モード中にも残水排出モードが実行されることにある。なお、第2実施形態では、上述した第1実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
図10は、本発明の第2実施形態に係る制御装置によるミストモード、水抜モード、および残水排出モードを示す流れ図である。
S11〜S13では、それぞれ図8に示すS1〜S3と同様の制御処理がなされる。
次のS14では、給水部(管路43)内の残水を排出する。また、残水排出モードを開始する。すなわち、制御装置70は、水抜モード中に残水排出モードを実行する。水抜モードは、図8中のS4と同様の制御処理がなされる。残水排出モードは、図8中のS6と同様の制御処理がなされる。この場合、残水排出モードは、水抜モード中に終了しない構成となっている。換言すると、水抜モードは、残水排出モードの途中で終了する構成となっている。
次のS15では、給水部(管路43)内の残水排出が完了したか否かを判定する。S15は、図8中のS5と同様の制御処理がなされる。そして、S15で「YES」、すなわち、給水部内の残水排出が完了したと判定された場合には、S16に進む。一方、S15で「NO」、すなわち給水部内の残水排出が完了していないと判定された場合には、S14に戻り、管路43内の残水排出を監視する。
S16では、残水排出モードを終了する。すなわち、制御装置70は、管路43内の水抜きが完了した後に、噴霧装置60のモータ61の駆動を停止して、エンドとなる。これにより、水抜モードにより噴霧部62の上面62aに排出された管路43内の残水が噴霧部62に残るのを抑制することができる。
図11は、水抜モードおよび残水排出モードの実行状態の一例を示すタイムチャートである。図11では、図10中のS13(ミストモード停止)以降のタイムチャートを示している。図11に示す例では、水抜モード中に実行される残水排出モードは、水抜モード中に間欠的に実行される。
まず、時間t11では、ミストモードが終了(OFF)するとともに、水抜モードが開始(ON)する。時間t12では、残水排出モードが開始(ON)する。時間t13では、残水排出モードを中断(OFF)する。すなわち、制御装置70は、時間t13で一旦モータ61の駆動を停止する。これにより、ミストモードが終了したときの残水と、時間t11からt13までの間に管路43内から排出された残水とを排出させることができる。時間t14では、モータ61を駆動することにより、残水排出モードを再開する。時間t15では、モータ61の駆動を停止して残水排出モードを中断する。時間t16では、残水排出モードを再開する。そして、時間t17では、水抜モードを終了(OFF)する。この場合、制御装置70は、残水排出モードを継続して行うので、モータ61の駆動は停止しない。その後、時間t18では、モータ61の駆動を停止して、残水排出モードを終了(OFF)する。
このように、図11に示す例では、水抜モードが開始する時間t11から水抜モードが終了するt17までの期間で、残水排出モードの中断と再開とを繰り返し行う。そして、残水排出モードは、水抜モードが終了した時間t17より後の時間t18で終了する。
かくして、このように構成された第2実施形態についても上述した第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。第2実施形態では、水抜モード中に噴霧部62の残水を排出させているので、噴霧部62の残水を効率よく収納室121から排出させることができる。また、噴霧装置60のモータ61を間欠的に駆動しているので、噴霧装置60(モータ61)の駆動時間を短くすることができ、噴霧装置60の寿命を向上できる。
図12(a)〜図12(c)は、本発明の変形例による噴霧装置で実行されるミストモード、水抜モード、および残水排出モードを模式的に示す模式図である。図12に示す噴霧装置600は、板状に形成された噴霧部601から水W2に超音波を照射することで、水W2をミスト化する超音波霧化装置である。図12(a)は、ミストモードを実行しているときの模式図である。図12(b)は、水抜モードを実行しているときの模式図である。図12(c)は、残水排出モードを実行しているときの模式図である。
噴霧装置600は、例えば噴霧部601の振幅を少なくすることで、水W2のミスト化を抑制して噴霧部601から残水Pの排出を行うことができる。このように、第1実施形態で用いた回転霧化式の噴霧装置60に変えて、超音波式の噴霧装置600としても、上述した第1、第2実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
また、上述した第2実施形態では、ミストモードが終了したときに、噴霧装置60のモータ61の駆動を停止して水抜モードを実行した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばミストモードが終了したときに、モータ61の回転速度を高速から低速にしてもよい。すなわち、残水排出モードは、ミストモードから継続して行ってもよい。また、ミストモードと水抜モードとの間にも、残水排出モードを行ってもよい。すなわち、残水排出モードは、少なくとも水抜モードが終了した後に終了すればよく、ミストモードの開始時期は任意に設定することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便器、便座装置などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。