JP2020146755A - プレス成形製品及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】プレス成形時に金属板の表裏に発生する弾性回復応力を相殺または応力差を削減することで、スプリングバック量を低減して形状精度の向上を達成することができるプレス成形製品を提供する。【解決手段】金属板1をプレス成形して曲面部1A及び平面部1Bを有して所定形状に加工されたプレス成形製品Aにおいて、前記金属板1の前記曲面部1Aが形成される部位に曲面の内側方向へ向けて、様々な形状、大きさ、数の凸の膨らみ2…を設けている。【選択図】図1

Description

本発明は、鉄板、アルミ板、ステンレス板、マグネシウム板等の金属板を、金型を用いたプレス成形により曲面部を有する所定形状に加工したプレス成形製品に関する。
金属板をプレス成形して加工されるプレス成形製品は、プレス成形時に金属の材料特性により弾性回復応力が発生し、金型から離型したとき、スプリングバックが生じて形状精度が悪化する。特に、金属素材がハイテン材やアルミ材の場合は、スプリングバック量が大きく製品の形状精度の悪化が著しい。
上記のようなスプリングバックによるプレス成形製品の形状精度の悪化を抑制する対策として、従来、次に説明するような対策1〜3が採用されていた。
対策1 図3に示すように、金属板1をプレス成形して最終的に目標形状bを得ようとする場合、スプリングバック後に目標形状bとなる形状aを予測し、この予測した形状aに対応する形状の金型を使用することで、プレス成形製品Aのスプリングバックによる悪影響を削減する。
対策2 図4に示すように、プレス成形製品Aの目標形状を予め多角形断面を有する形状に設定して、金属板1を多角形断面にプレス成形する。
対策3 図5に示すように、剛性向上ビードBをプレス成形製品Aの必要部位に固定状態に取り付けることにより、製品Aの剛性を上げてスプリングバック量を縮小する。
しかしながら、上記したような従来の対策1〜3には、それぞれ次のような問題があった。すなわち、
対策1の場合は、スプリングバック量を予測してそれに一致した金型を作製しなければならないが、予測値の精度を上げることが技術的に困難であって、成形製品と金型との間に形状差が生じやすく、その結果、製品Aの成形不良を発生する可能性がある。そのため、形状差の修正のために何度も繰り返し修正する調整作業が必要となり、多大な工数と長い修正期間(リードタイム)とを要し、製品のコストアップは避けられないという問題があった。
また、対策2及び対策3の場合は、プレス成形製品が曲面や平面等が混在する複雑な形状であると、製品性能や製品設置スペース等によって対応できる範囲や部位が制限(限定)されるため、所望するプレス成形製品として必要かつ十分な形状を確保することが難しいという問題があった。
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、プレス成形時に金属板の表裏に発生する弾性回復応力に着目し、その表裏の弾性回復応力を相殺または応力差を削減或いは増加することで、スプリングバック量をコントロールして形状精度の向上を達成することができるプレス成形製品を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明に係るプレス成形製品は、金属板をプレス成形して曲面部を有する所定形状に加工されたプレス成形製品であって、前記金属板の少なくとも前記曲面部が形成される部位に曲面の内側方向又は外側方向へ向けて凸の膨らみを設けていることを特徴とする。
上記のごとき特徴構成を有する本発明に係るプレス成形製品によれば、例えば、金属板の曲面部の曲面内側方向に凸の膨らみを設けることにより、膨らみの無い曲面部の外側に発生する伸びによる弾性回復応力と曲面部の内側の膨らみ部分に発生する伸びによる弾性回復応力との差を縮小することが可能であり、これによって、プレス成形製品に生じるスプリングバック量を低減し、製品の形状精度を向上することができる。また、逆に、金属板の曲面部の曲面外側方向に凸の膨らみを設ければ、スプリングバック量を増加させることもできる。
図6において、(1)は平板をプレスによって中央で曲げた平板曲げ加工型モデルの図、(2)は一般的な鋼板の応力-歪線図の略図を示し、「270k(材)」、「980k(材)」とは、それぞれ材料強度が270kgf/mm、980kgf/mmの鋼板(材料)を指す。上記(2)に示すように、一般的に材料強度の高い材料ほど弾性応力(Δε)は増加する。
図6において、(a)−1、(a)−2はそれぞれ270k材、980k材の平板曲げ加工型モデル(凸の膨らみの無いCAEモデル)を示し、(a)に示すように、それぞれにおいて凹曲率側は縮み応力、凸曲率側は伸び応力が発生している。このため表裏の応力差の大きい980k材の方が270k材よりもスプリングバック量が増加している。すなわち、270k材では7mm(=2.4mm−(−4.6mm))のスプリングバック量が、980k材では18.3mm(=9.1mm−(−9.2mm))のスプリングバック量になっている。
そして、図6において、(a)に示す平板曲げ加工型モデルの曲面内側方向に凸の膨らみを設けたものが、同(b)に示す本発明の単純化形状モデル(凸の膨らみの有るCAEモデル)であり、このように凹曲率側に凸形状座を設定することで凹曲率側の縮み応力が伸び応力に変換され、鋼板の表裏の応力を相殺しスプリングバックが解消できる。
図6において、(a)−1と(b)−1とを比較すれば、270k材で7mmのスプリングバックが−3.4mm(=−1.4mm―2.0mm)のスプリングバック、つまり3.4mmのスプリングゴーに変化したことが解る。また、同図において、(a)−2と(b)−2とを比較すれば、980k材で18.3mmのスプリングバックが−19.7mm(=−6.3mm―13.4mm)のスプリングバック、つまり19.7mmのスプリングゴーに変化したことが解る。このように材料強度が高いほど応力が増加するため、同一形状型で加工した場合、材料強度の高い材料で大幅に増加したスプリングゴーが発生する場合が考えられるが、凸の膨らみの入れ方を変えて表裏の応力面積を調整することでスプリングゴーを適度に抑えるようなコントロールが可能である。
図7には、凸の膨らみの無い平板曲げ加工型モデルの応力分布を左側に、凸の膨らみを設けた本発明の単純化形状モデルの応力分布を右側に示してあり、両者を比較すれば、表裏で伸びと縮み応力が逆転していることが把握される。
図8は、従来の深ビードと、本発明の実施例となる四つのモデルの構成を示している。なお、千鳥縦長モデルは、平板の曲がる方向に長い楕円形状の膨らみを千鳥状に並べたもの、2重十字モデルは、行列状に複数並ぶ菱形状の膨らみの間に縦横に連なって形成される十字座に、縦長及び横長の楕円形状の膨らみを縦横に交互に並べたもの、浅大波モデルは、平板の曲がる方向に縞状となるように帯状の膨らみを並べたもの、浅菱形モデルは、菱形状の膨らみを縦横に並べたものである。
図9に示すように、ディンプル形状(膨らみ部分)のスプリングバック量はその形状により大きく変化するのであり、一般的な深ビードに比べ、浅い膨らみ(座)形状とするとスプリングバック量が大きくなる。特に、浅大波モデルは表裏の応力差が顕著であり、スプリングバック量が最大となる。一方、千鳥縦長モデル及び浅菱形モデルでは、材料強度に左右され難い形状凍結効果が得られる。
また、2重十字モデルと千鳥縦長モデルでは、凸成形する過程において、図10中のイに示すように、凸成形しない部位に曲率の外側に向かう凸形状が構成される。しかし、その後、下死点段階で外側に向かう凸形状を解消するように働く図中ロで示す加工(製品形状)が進み、加工途中で曲率の外側に発生した伸び応力(板内側は圧縮応力)は最終的に圧縮応力(板内側は伸び応力)に代わり、曲率の内側に向かう凸形状を成形した応力と、前述の凸成形しない部位に発生した応力とは、いずれも板内側に伸び応力を増加させるように働くため、スプリングバックの抑制効果に繋がる。そして、斯かる効果は、曲率の内側に凸形状を形成する際の凸の根本ないし麓(裾)の断面の曲率を小さくすることで、増加する。又、凸形状の形状、深さ、方向性や設定ピッチを変えることで応力の発生量や方向をコントロールすることが可能となる。
上述した浅大波モデル、浅菱形モデルは、座形状をできるだけ浅くして効果の増大を期待したモデルである。ディンプル(膨らみ部分)の深さは塑性加工領域の範囲で可及的に浅くすることにより、スプリングバック抑制効果の最大化を図ることができる。
図6〜図10に示すように、本発明に係るプレス成形製品は、座形状(膨らみ部分の形状)を変化させることに特徴があり、スプリングバック量を予測し、その予測スプリングバック量に対応する形状の金型を作製する必要がないだけでなく、形状差を修正するために何度も繰り返し形状修正する調整作業も必要でなく、工数の減少及び修正期間(リードタイム)の短縮化により製品のコストダウンを図ることができる。
しかも、製品を多角形断面形状にしたり、剛性を向上するためにビードをプレス成形製品の必要部位に固定状態に取り付けたりする必要がないので、製品形状の自由度を向上しつつ、所望のプレス成形製品として必要かつ十分な形状を確保することができるといった効果を奏する。
本発明に係るプレス成形製品において、請求項2に記載のように、前記膨らみは、前記金属板の前記曲面部形成部位の表側に発生する弾性回復応力と裏側に発生する弾性回復応力とをバランス調整して成形製品のスプリングバックを除去又は減少させることが可能な数、大きさ、断面の曲率(断面R)、形状、設定ピッチに設定されていることが望ましい。
特に、この場合は、プレス成形製品性能に制約を与えることがない、又は、少ない数、大きさ、形状の膨らみを選択することにより、製品形状の凍結性(形状保持性)を高めることができる。
本発明の実施の形態に係るプレス成形製品の一部拡大斜視図である。 同上プレス成形製品の要部の拡大縦断面図である。 スプリングバックによるプレス成形製品の形状精度の悪化を抑制する従来の対策1を説明する要部の縦断面図である。 スプリングバックによるプレス成形製品の形状精度の悪化を抑制する従来の対策2を説明する要部の縦断面図である。 スプリングバックによるプレス成形製品の形状精度の悪化を抑制する従来の対策3を説明するプレス成形製品の一部拡大斜視図である。 本発明のメカニズムとCAEモデルでの評価結果(モデル形状のメカニズム解析)を示す説明図である。 本発明のCAEモデルにて内部応力の変化(モデル形状の表裏応力比較)を示す説明図である 本発明の実験モデル形状(評価モデル形状の種類)を示す説明図である。 本発明の実験モデルでの効果を示すグラフ及び説明図である。 本発明の実験モデル形状での表裏の応力とその特徴を示す説明図である。 本発明の浅大波モデルの具体例を示す説明図である。 本発明の浅菱形モデルの具体例を示す説明図である。 本発明の千鳥縦長モデルの具体例を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るプレス成形製品の一部拡大斜視図、図2は同プレス成形製品の要部の拡大縦断面図である。
本発明の実施の形態に係るプレス成形製品Aは、鉄板、アルミ板、ステンレス板、マグネシウム板等の金属板1を、図示省略の金型を用いたプレス成形によって曲面部1A及び平面部1Bを有する所定形状の製品Aに加工したものである。
上記のように加工されるプレス成形製品Aにおいて、前記曲面部1Aの形成された部位には、図2に拡大して示すように、曲面の内側に向けて凸の複数のディンプル形状の膨らみ2…が設けられている。
前記膨らみ2…は、前記金属板1の前記曲面部1A形成部位の表側に発生する弾性回復応力σaと裏側に発生する弾性回復応力σbとのバランス調整(相殺)によって成形製品Aに発生するスプリングバックを除去又は減少させることが可能な数及び様々な大きさに設定されている。また、前記膨らみ2…の形状は、丸、三角形、四角形、楕円形、長方形、多角形等のいずれであっても、それらの異種形状が混在するものであってもよい。但し、曲面部1A形成部位において応力分布等の観点から一まとまりで捉えられる領域ごと(例えばガウス曲率等の曲率の等しい領域ごと)に、複数の膨らみ2を規則的に並べるのが上記バランス調整の点で望ましく、膨らみの並び方や形状等は、領域ごとに必要となるスプリングバック量等に応じて異ならせればよい。
上記のように構成された本実施の形態に係るプレス成形製品Aによれば、従来のスプリングバック対策1のように、スプリングバック量を予測し、その予測スプリングバック量に対応する形状の金型を作製する必要がないだけでなく、形状差を修正するために何度も繰り返し形状修正する調整作業も必要でないので、工数の減少及び修正期間(リードタイム)の短縮化により製品Aのコストダウンを図ることができる。
また、従来のスプリングバック対策2のように、製品Aの一部を多角形断面形状にしたり、従来のスプリングバック対策3のように、剛性を向上するためにビードをプレス成形製品の必要部位に固定状態に取り付けたりする必要がないので、製品形状の自由度を向上しつつ、所望のプレス成形製品Aとして必要かつ十分な形状を確保することができる。
なお、上記実施の形態のように、曲面部1Aと平面部1Bとを有する所定形状の製品Aに限らず、全体がある曲率の曲面に形成される製品Aに実施する場合も上記と同様な効果を奏する。
図11は、板厚1.0mmの金属板1に浅大波モデル(浅大波形状)を構成するように膨らみ2を設けた実施例を示している。浅大波モデルは、特に一方向のみに曲がる曲面部に設けると、スプリングバック抑制効果を大いに発揮する。本例では、一方向にのみ曲がる曲面部1Aに対して、その曲がる方向と直交する方向に各曲げ稜線が延びるように設けてあり、図11(1)左図に示すように、曲率の内側に向かって突出するR20(曲率半径20mm)の山が連続する凸波形状を設定し、隣り合う山の境界に位置する逆向きに凸となる谷部分は山よりも曲率半径を小さくする(例えば2分の1〜20分の1の範囲とする)のが好ましく、この例では、R2としてある。このように曲率半径の大きさで表裏の伸び縮みの応力発生面積を変化させることができ、本例では、図11(1)右図に示すように、板表側(板内側)の伸び応力面積が縮み応力面積より大きくなっている。
また、図11(1)左図に示すように、板厚1.0mmに対して膨らみ2の深さ(高さ)をその2倍以下(図示例では1.5mmであり1.5倍)に抑えることにより、塑性加工領域(約2.5%歪)にありながら、商品設計スペース制約を少なくすることができる。
浅大波モデルのスプリングバック抑制効果を図11(a)に示す。同図(b)に示す一般的な凍結ビードに比べ、その効果が大きいことがわかる。
図11に示す浅大波モデルの構成は一例であり、膨らみ2の深さを大きくすれば、板表裏の応力差が拡大し、スプリングバック抑制効果の向上を図ることができる。また、図11(1)左図の例では山のピッチを16mm(P16)としてあるが、山のピッチを大きくすれば(曲げ稜線を減少させれば)、プレス加工時の成形力を低減でき、ピッチを小さくすれば、より狭いスペースでの効果が発揮できるようになる。
図12は、板厚1.0mmの金属板1に浅菱形モデル(浅菱形形状)を構成するように膨らみ2を設けた実施例を示している。浅菱形モデルは、一方向のみに曲がる曲面部に設けても、互いに直交する二方向に曲がる曲面部に設けても、スプリングバック抑制効果を大いに発揮する。本例では、説明の容易化のため、一方向にのみ曲がる曲面部に設けた場合について説明する。図12(1)左図に示すように、曲率の内側に向かって突出するR28(曲率半径28mm)の山が曲面部の延びる方向(曲がる方向)に連続する凸波形状を設定し、隣り合う山の境界に位置する逆向きに凸となる谷部分は山よりも曲率半径を小さくする(例えば2分の1〜20分の1の範囲とする)のが好ましく、この例では、R2としてある。このように曲率半径の大きさで表裏の伸び縮みの応力発生面積を変化させることができ、本例では、図12(1)右図に示すように、板表側(板内側)の伸び応力面積が縮み応力面積より大きくなっている。
また、図12(1)左図に示すように、板厚1.0mmに対して膨らみ2の深さ(高さ)をその2倍以下(図示例では1.0mmであり1倍)に抑えることにより、塑性加工領域(約1.76%歪)にありながら、商品設計スペース制約を少なくすることができる。
浅菱形モデルのスプリングバック抑制効果を図12(a)に示す。同図(b)に示す一般的な凍結ビードに比べ、その効果が大きく、また、形状変化が少ないことがわかる。
図12に示す浅菱形モデルの構成は一例であり、膨らみ2の深さを大きくすれば、板表裏の応力差が拡大し、スプリングバック抑制効果の向上を図ることができる。また、図12(1)左図の例では山のピッチを15mm(P15)としてあるが、山のピッチを大きくすれば(曲げ稜線を減少させれば)、プレス加工時の成形力を低減でき、ピッチを小さくすれば、より狭いスペースでの効果が発揮できるようになる。
図13は、板厚1.0mmの金属板1に千鳥縦長モデル(千鳥縦長形状)を構成するように膨らみ2を設けた実施例を示している。千鳥縦長モデルは、一方向のみに曲がる曲面部に設けても、互いに直交する二方向に曲がる曲面部に設けても、スプリングバック抑制効果を大いに発揮する。本例では、説明の容易化のため、一方向にのみ曲がる曲面部に設けた場合について説明する。図13(3)に示すように、楕円形状の各膨らみ(ディンプル)2は、長軸方向の断面では曲率の内側に向かって突出するR4.5(曲率半径4.5mm)の山となっていて、この山が曲面部の延びる方向(曲がる方向)に並び、短軸方向の断面では曲率の内側に向かって突出するR8(曲率半径8mm)の山となっていて、この山が曲面部の延びる方向(曲がる方向)と直交する方向に並ぶ、といった凸波形状を構成し、各山の麓に位置する逆向きに凸となる谷部分は山よりも曲率半径を小さくする(例えば2分の1〜20分の1の範囲とする)のが好ましく、この例では、R2としてある。このように曲率半径の大きさで表裏の伸び縮みの応力発生面積を変化させることができ、本例では、板表側(板内側)の伸び応力面積が縮み応力面積より大きくなっている。
また、図13(1)に示すように、板厚1.0mmに対して膨らみ2の深さ(高さ)をその2倍超(図示例では3.0mmであり3倍)としつつ、同(2)に示すように、千鳥状に並ぶ各凸座(各膨らみ2)が隣接する凸座と縦横にオーバーラップする(長軸方向及び短軸方向に隣接する凸座の離間距離をそれぞれ長軸及び短軸よりも短くする)ことにより、剛性向上を図ることができる。
千鳥縦長モデルのスプリングバック抑制効果を図13(a)に示す。同図(b)に示す一般的な凍結ビードに比べ、その効果が大きく、また、形状変化が少ないことがわかる。
図13に示す千鳥縦長モデルの構成は一例であり、凸座(膨らみ2)の縦横のピッチを適宜に設定し、凸座(膨らみ2)以外の平面において、曲加工途中では図13(1)に示すように表側に圧縮応力が発生し、加工後は同(2)に示すように表側に伸び応力が発生して応力が逆転するようにしておけば、形状凍結性が得られる。
1 金属板
1A 曲面部
2 膨らみ
A プレス成形製品
本発明は、鉄板、アルミ板、ステンレス板、マグネシウム板等の金属板を、金型を用いたプレス成形により曲面部を有する所定形状に加工したプレス成形製品に関する。
金属板をプレス成形して加工されるプレス成形製品は、プレス成形時に金属の材料特性により弾性回復応力が発生し、金型から離型したとき、スプリングバックが生じて形状精度が悪化する。特に、金属素材がハイテン材やアルミ材の場合は、スプリングバック量が大きく製品の形状精度の悪化が著しい。
上記のようなスプリングバックによるプレス成形製品の形状精度の悪化を抑制する対策として、従来、次に説明するような対策1〜3が採用されていた。
対策1 図3に示すように、金属板1をプレス成形して最終的に目標形状bを得ようとする場合、スプリングバック後に目標形状bとなる形状aを予測し、この予測した形状aに対応する形状の金型を使用することで、プレス成形製品Aのスプリングバックによる悪影響を削減する。
対策2 図4に示すように、プレス成形製品Aの目標形状を予め多角形断面を有する形状に設定して、金属板1を多角形断面にプレス成形する。
対策3 図5に示すように、剛性向上ビードBをプレス成形製品Aの必要部位に固定状態に取り付けることにより、製品Aの剛性を上げてスプリングバック量を縮小する。
しかしながら、上記したような従来の対策1〜3には、それぞれ次のような問題があった。すなわち、
対策1の場合は、スプリングバック量を予測してそれに一致した金型を作製しなければならないが、予測値の精度を上げることが技術的に困難であって、成形製品と金型との間に形状差が生じやすく、その結果、製品Aの成形不良を発生する可能性がある。そのため、形状差の修正のために何度も繰り返し修正する調整作業が必要となり、多大な工数と長い修正期間(リードタイム)とを要し、製品のコストアップは避けられないという問題があった。
また、対策2及び対策3の場合は、プレス成形製品が曲面や平面等が混在する複雑な形状であると、製品性能や製品設置スペース等によって対応できる範囲や部位が制限(限定)されるため、所望するプレス成形製品として必要かつ十分な形状を確保することが難しいという問題があった。
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、プレス成形時に金属板の表裏に発生する弾性回復応力に着目し、その表裏の弾性回復応力を相殺または応力差を削減或いは増加することで、スプリングバック量をコントロールして形状精度の向上を達成することができるプレス成形製品及びその製造方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明に係るプレス成形製品は、金属板をプレス成形して曲面部を有する所定形状に加工されたプレス成形製品であって、前記プレス成形により前記曲面部が形成され部位であって前記プレス成形後にプレス加工されることを前提としない部位である曲面部形成部位に曲面の内側方向又は外側方向へ向けて凸の膨らみを設けてあり、前記膨らみは、厚みが略一定であり、その膨らみ出た側の裏側からみると凹入状を呈することを特徴とする。
本発明に係るプレス成型製品の製造方法は、金属板をプレス成形して曲面部を有する所定形状のプレス成形製品を製造するためのプレス成型製品の製造方法であって、前記金属板をプレス成形する際、前記金属板において前記プレス成形により前記曲面部が形成される部位であって前記プレス成形後にプレス加工されることを前提としない部位である曲面部形成部位に、その曲面の内側方向又は外側方向へ向けて凸の膨らみを設け、前記膨らみは、厚みが略一定であり、その膨らみ出た側の裏側からみると凹入状を呈することを特徴とする。
上記のごとき特徴構成を有する本発明に係るプレス成形製品及びその製造方法によれば、例えば、金属板の曲面部の曲面内側方向に凸の膨らみを設けることにより、膨らみの無い曲面部の外側に発生する伸びによる弾性回復応力と曲面部の内側の膨らみ部分に発生する伸びによる弾性回復応力との差を縮小することが可能であり、これによって、プレス成形製品に生じるスプリングバック量を低減し、製品の形状精度を向上することができる。また、逆に、金属板の曲面部の曲面外側方向に凸の膨らみを設ければ、スプリングバック量を増加させることもできる。
図6において、(1)は平板をプレスによって中央で曲げた平板曲げ加工型モデルの図、(2)は一般的な鋼板の応力-歪線図の略図を示し、「270k(材)」、「980k(材)」とは、それぞれ材料強度が270kgf/mm、980kgf/mmの鋼板(材料)を指す。上記(2)に示すように、一般的に材料強度の高い材料ほど弾性応力(Δε)は増加する。
図6において、(a)−1、(a)−2はそれぞれ270k材、980k材の平板曲げ加工型モデル(凸の膨らみの無いCAEモデル)を示し、(a)に示すように、それぞれにおいて凹曲率側は縮み応力、凸曲率側は伸び応力が発生している。このため表裏の応力差の大きい980k材の方が270k材よりもスプリングバック量が増加している。すなわち、270k材では7mm(=2.4mm−(−4.6mm))のスプリングバック量が、980k材では18.3mm(=9.1mm−(−9.2mm))のスプリングバック量になっている。
そして、図6において、(a)に示す平板曲げ加工型モデルの曲面内側方向に凸の膨らみを設けたものが、同(b)に示す本発明の単純化形状モデル(凸の膨らみの有るCAEモデル)であり、このように凹曲率側に凸形状座を設定することで凹曲率側の縮み応力が伸び応力に変換され、鋼板の表裏の応力を相殺しスプリングバックが解消できる。
図6において、(a)−1と(b)−1とを比較すれば、270k材で7mmのスプリングバックが−3.4mm(=−1.4mm―2.0mm)のスプリングバック、つまり3.4mmのスプリングゴーに変化したことが解る。また、同図において、(a)−2と(b)−2とを比較すれば、980k材で18.3mmのスプリングバックが−19.7mm(=−6.3mm―13.4mm)のスプリングバック、つまり19.7mmのスプリングゴーに変化したことが解る。このように材料強度が高いほど応力が増加するため、同一形状型で加工した場合、材料強度の高い材料で大幅に増加したスプリングゴーが発生する場合が考えられるが、凸の膨らみの入れ方を変えて表裏の応力面積を調整することでスプリングゴーを適度に抑えるようなコントロールが可能である。
図7には、凸の膨らみの無い平板曲げ加工型モデルの応力分布を左側に、凸の膨らみを設けた本発明の単純化形状モデルの応力分布を右側に示してあり、両者を比較すれば、表裏で伸びと縮み応力が逆転していることが把握される。
図8は、従来の深ビードと、本発明の実施例となる四つのモデルの構成を示している。なお、千鳥縦長モデルは、平板の曲がる方向に長い楕円形状の膨らみを千鳥状に並べたもの、2重十字モデルは、行列状に複数並ぶ菱形状の膨らみの間に縦横に連なって形成される十字座に、縦長及び横長の楕円形状の膨らみを縦横に交互に並べたもの、浅大波モデルは、平板の曲がる方向に縞状となるように帯状の膨らみを並べたもの、浅菱形モデルは、菱形状の膨らみを縦横に並べたものである。
図9に示すように、ディンプル形状(膨らみ部分)のスプリングバック量はその形状により大きく変化するのであり、一般的な深ビードに比べ、浅い膨らみ(座)形状とするとスプリングバック量が大きくなる。特に、浅大波モデルは表裏の応力差が顕著であり、スプリングバック量が最大となる。一方、千鳥縦長モデル及び浅菱形モデルでは、材料強度に左右され難い形状凍結効果が得られる。
また、2重十字モデルと千鳥縦長モデルでは、凸成形する過程において、図10中のイに示すように、凸成形しない部位に曲率の外側に向かう凸形状が構成される。しかし、その後、下死点段階で外側に向かう凸形状を解消するように働く図中ロで示す加工(製品形状)が進み、加工途中で曲率の外側に発生した伸び応力(板内側は圧縮応力)は最終的に圧縮応力(板内側は伸び応力)に代わり、曲率の内側に向かう凸形状を成形した応力と、前述の凸成形しない部位に発生した応力とは、いずれも板内側に伸び応力を増加させるように働くため、スプリングバックの抑制効果に繋がる。そして、斯かる効果は、曲率の内側に凸形状を形成する際の凸の根本ないし麓(裾)の断面の曲率を小さくすることで、増加する。又、凸形状の形状、深さ、方向性や設定ピッチを変えることで応力の発生量や方向をコントロールすることが可能となる。
上述した浅大波モデル、浅菱形モデルは、座形状をできるだけ浅くして効果の増大を期待したモデルである。ディンプル(膨らみ部分)の深さは塑性加工領域の範囲で可及的に浅くすることにより、スプリングバック抑制効果の最大化を図ることができる。
図6〜図10に示すように、本発明に係るプレス成形製品は、座形状(膨らみ部分の形状)を変化させることに特徴があり、スプリングバック量を予測し、その予測スプリングバック量に対応する形状の金型を作製する必要がないだけでなく、形状差を修正するために何度も繰り返し形状修正する調整作業も必要でなく、工数の減少及び修正期間(リードタイム)の短縮化により製品のコストダウンを図ることができる。
しかも、製品を多角形断面形状にしたり、剛性を向上するためにビードをプレス成形製品の必要部位に固定状態に取り付けたりする必要がないので、製品形状の自由度を向上しつつ、所望のプレス成形製品として必要かつ十分な形状を確保することができるといった効果を奏する。
本発明に係るプレス成形製品及びその製造方法において、請求項2、4に記載のように、前記膨らみは、前記金属板の前記曲面部形成部位の表側に発生する弾性回復応力と裏側に発生する弾性回復応力とをバランス調整して成形製品のスプリングバックを除去又は減少させることが可能な数、大きさ、断面の曲率(断面R)、形状、設定ピッチに設定されていることが望ましい。
特に、この場合は、プレス成形製品性能に制約を与えることがない、又は、少ない数、大きさ、形状の膨らみを選択することにより、製品形状の凍結性(形状保持性)を高めることができる。
本発明の実施の形態に係るプレス成形製品の一部拡大斜視図である。 同上プレス成形製品の要部の拡大縦断面図である。 スプリングバックによるプレス成形製品の形状精度の悪化を抑制する従来の対策1を説明する要部の縦断面図である。 スプリングバックによるプレス成形製品の形状精度の悪化を抑制する従来の対策2を説明する要部の縦断面図である。 スプリングバックによるプレス成形製品の形状精度の悪化を抑制する従来の対策3を説明するプレス成形製品の一部拡大斜視図である。 本発明のメカニズムとCAEモデルでの評価結果(モデル形状のメカニズム解析)を示す説明図である。 本発明のCAEモデルにて内部応力の変化(モデル形状の表裏応力比較)を示す説明図である 本発明の実験モデル形状(評価モデル形状の種類)を示す説明図である。 本発明の実験モデルでの効果を示すグラフ及び説明図である。 本発明の実験モデル形状での表裏の応力とその特徴を示す説明図である。 本発明の浅大波モデルの具体例を示す説明図である。 本発明の浅菱形モデルの具体例を示す説明図である。 本発明の千鳥縦長モデルの具体例を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るプレス成形製品の一部拡大斜視図、図2は同プレス成形製品の要部の拡大縦断面図である。
本発明の実施の形態に係るプレス成形製品Aは、鉄板、アルミ板、ステンレス板、マグネシウム板等の金属板1を、図示省略の金型を用いたプレス成形によって曲面部1A及び平面部1Bを有する所定形状の製品Aに加工したものである。
上記のように加工されるプレス成形製品Aにおいて、前記曲面部1Aの形成された部位には、図2に拡大して示すように、曲面の内側に向けて凸の複数のディンプル形状の膨らみ2…が設けられている。
前記膨らみ2…は、前記金属板1の前記曲面部1A形成部位の表側に発生する弾性回復応力σaと裏側に発生する弾性回復応力σbとのバランス調整(相殺)によって成形製品Aに発生するスプリングバックを除去又は減少させることが可能な数及び様々な大きさに設定されている。また、前記膨らみ2…の形状は、丸、三角形、四角形、楕円形、長方形、多角形等のいずれであっても、それらの異種形状が混在するものであってもよい。但し、曲面部1A形成部位において応力分布等の観点から一まとまりで捉えられる領域ごと(例えばガウス曲率等の曲率の等しい領域ごと)に、複数の膨らみ2を規則的に並べるのが上記バランス調整の点で望ましく、膨らみの並び方や形状等は、領域ごとに必要となるスプリングバック量等に応じて異ならせればよい。
上記のように構成された本実施の形態に係るプレス成形製品Aによれば、従来のスプリングバック対策1のように、スプリングバック量を予測し、その予測スプリングバック量に対応する形状の金型を作製する必要がないだけでなく、形状差を修正するために何度も繰り返し形状修正する調整作業も必要でないので、工数の減少及び修正期間(リードタイム)の短縮化により製品Aのコストダウンを図ることができる。
また、従来のスプリングバック対策2のように、製品Aの一部を多角形断面形状にしたり、従来のスプリングバック対策3のように、剛性を向上するためにビードをプレス成形製品の必要部位に固定状態に取り付けたりする必要がないので、製品形状の自由度を向上しつつ、所望のプレス成形製品Aとして必要かつ十分な形状を確保することができる。
なお、上記実施の形態のように、曲面部1Aと平面部1Bとを有する所定形状の製品Aに限らず、全体がある曲率の曲面に形成される製品Aに実施する場合も上記と同様な効果を奏する。
図11は、板厚1.0mmの金属板1に浅大波モデル(浅大波形状)を構成するように膨らみ2を設けた実施例を示している。浅大波モデルは、特に一方向のみに曲がる曲面部に設けると、スプリングバック抑制効果を大いに発揮する。本例では、一方向にのみ曲がる曲面部1Aに対して、その曲がる方向と直交する方向に各曲げ稜線が延びるように設けてあり、図11(1)左図に示すように、曲率の内側に向かって突出するR20(曲率半径20mm)の山が連続する凸波形状を設定し、隣り合う山の境界に位置する逆向きに凸となる谷部分は山よりも曲率半径を小さくする(例えば2分の1〜20分の1の範囲とする)のが好ましく、この例では、R2としてある。このように曲率半径の大きさで表裏の伸び縮みの応力発生面積を変化させることができ、本例では、図11(1)右図に示すように、板表側(板内側)の伸び応力面積が縮み応力面積より大きくなっている。
また、図11(1)左図に示すように、板厚1.0mmに対して膨らみ2の深さ(高さ)をその2倍以下(図示例では1.5mmであり1.5倍)に抑えることにより、塑性加工領域(約2.5%歪)にありながら、商品設計スペース制約を少なくすることができる。
浅大波モデルのスプリングバック抑制効果を図11(a)に示す。同図(b)に示す一般的な凍結ビードに比べ、その効果が大きいことがわかる。
図11に示す浅大波モデルの構成は一例であり、膨らみ2の深さを大きくすれば、板表裏の応力差が拡大し、スプリングバック抑制効果の向上を図ることができる。また、図11(1)左図の例では山のピッチを16mm(P16)としてあるが、山のピッチを大きくすれば(曲げ稜線を減少させれば)、プレス加工時の成形力を低減でき、ピッチを小さくすれば、より狭いスペースでの効果が発揮できるようになる。
図12は、板厚1.0mmの金属板1に浅菱形モデル(浅菱形形状)を構成するように膨らみ2を設けた実施例を示している。浅菱形モデルは、一方向のみに曲がる曲面部に設けても、互いに直交する二方向に曲がる曲面部に設けても、スプリングバック抑制効果を大いに発揮する。本例では、説明の容易化のため、一方向にのみ曲がる曲面部に設けた場合について説明する。図12(1)左図に示すように、曲率の内側に向かって突出するR28(曲率半径28mm)の山が曲面部の延びる方向(曲がる方向)に連続する凸波形状を設定し、隣り合う山の境界に位置する逆向きに凸となる谷部分は山よりも曲率半径を小さくする(例えば2分の1〜20分の1の範囲とする)のが好ましく、この例では、R2としてある。このように曲率半径の大きさで表裏の伸び縮みの応力発生面積を変化させることができ、本例では、図12(1)右図に示すように、板表側(板内側)の伸び応力面積が縮み応力面積より大きくなっている。
また、図12(1)左図に示すように、板厚1.0mmに対して膨らみ2の深さ(高さ)をその2倍以下(図示例では1.0mmであり1倍)に抑えることにより、塑性加工領域(約1.76%歪)にありながら、商品設計スペース制約を少なくすることができる。
浅菱形モデルのスプリングバック抑制効果を図12(a)に示す。同図(b)に示す一般的な凍結ビードに比べ、その効果が大きく、また、形状変化が少ないことがわかる。
図12に示す浅菱形モデルの構成は一例であり、膨らみ2の深さを大きくすれば、板表裏の応力差が拡大し、スプリングバック抑制効果の向上を図ることができる。また、図12(1)左図の例では山のピッチを15mm(P15)としてあるが、山のピッチを大きくすれば(曲げ稜線を減少させれば)、プレス加工時の成形力を低減でき、ピッチを小さくすれば、より狭いスペースでの効果が発揮できるようになる。
図13は、板厚1.0mmの金属板1に千鳥縦長モデル(千鳥縦長形状)を構成するように膨らみ2を設けた実施例を示している。千鳥縦長モデルは、一方向のみに曲がる曲面部に設けても、互いに直交する二方向に曲がる曲面部に設けても、スプリングバック抑制効果を大いに発揮する。本例では、説明の容易化のため、一方向にのみ曲がる曲面部に設けた場合について説明する。図13(3)に示すように、楕円形状の各膨らみ(ディンプル)2は、長軸方向の断面では曲率の内側に向かって突出するR4.5(曲率半径4.5mm)の山となっていて、この山が曲面部の延びる方向(曲がる方向)に並び、短軸方向の断面では曲率の内側に向かって突出するR8(曲率半径8mm)の山となっていて、この山が曲面部の延びる方向(曲がる方向)と直交する方向に並ぶ、といった凸波形状を構成し、各山の麓に位置する逆向きに凸となる谷部分は山よりも曲率半径を小さくする(例えば2分の1〜20分の1の範囲とする)のが好ましく、この例では、R2としてある。このように曲率半径の大きさで表裏の伸び縮みの応力発生面積を変化させることができ、本例では、板表側(板内側)の伸び応力面積が縮み応力面積より大きくなっている。
また、図13(1)に示すように、板厚1.0mmに対して膨らみ2の深さ(高さ)をその2倍超(図示例では3.0mmであり3倍)としつつ、同(2)に示すように、千鳥状に並ぶ各凸座(各膨らみ2)が隣接する凸座と縦横にオーバーラップする(長軸方向及び短軸方向に隣接する凸座の離間距離をそれぞれ長軸及び短軸よりも短くする)ことにより、剛性向上を図ることができる。
千鳥縦長モデルのスプリングバック抑制効果を図13(a)に示す。同図(b)に示す一般的な凍結ビードに比べ、その効果が大きく、また、形状変化が少ないことがわかる。
図13に示す千鳥縦長モデルの構成は一例であり、凸座(膨らみ2)の縦横のピッチを適宜に設定し、凸座(膨らみ2)以外の平面において、曲加工途中では図13(1)に示すように表側に圧縮応力が発生し、加工後は同(2)に示すように表側に伸び応力が発生して応力が逆転するようにしておけば、形状凍結性が得られる。
1 金属板
1A 曲面部
2 膨らみ
A プレス成形製品

Claims (2)

  1. 金属板をプレス成形して曲面部を有する所定形状に加工されたプレス成形製品であって、
    前記金属板の少なくとも前記曲面部が形成される部位に曲面の内側方向又は外側方向へ向けて凸の膨らみを設けている
    ことを特徴とするプレス成形製品。
  2. 前記膨らみは、前記金属板の前記曲面部形成部位の表側に発生する弾性回復応力と裏側に発生する弾性回復応力とをバランス調整して成形製品のスプリングバックを除去又は減少させることが可能な数、大きさ、断面の曲率、形状、設定ピッチに設定されている
    ことを特徴とする請求項1に記載のプレス成形製品。
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