JP2020143563A - トンネルのエントランス止水装置及びエントランス止水方法 - Google Patents
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Abstract
Description
通常シールドトンネルは地下水位より深い地中に構築される。したがって、発進時や到達時にはエントランスの内周とトンネル掘削機の外周との間を止水する必要がある。
一般にこの種のエントランス止水構造は、ゴムシートからなる環状の弾性止水シートと、該弾性止水シートに添えられた複数の鋼製のフラップを含む止水隔壁によって構成されている(特許文献1〜3等参照)。各フラップは、エントランスの縁部にヒンジを介して回転可能に支持されている。複数のフラップが、弾性止水シートひいてはエントランスの周方向に沿って環状に配置されている。
本発明は、かかる事情に鑑み、大深度トンネルであっても大掛かりになることなく止水性を確保し得るエントランス止水装置及び止水方法を提供することを目的とする。
前記エントランスの内周に沿う環状の弾性止水シート及び前記弾性止水シートに添えられたフラップをそれぞれ有して、前記エントランスの軸方向に間隔を置いて設けられた複数段の止水隔壁と、
隣接する止水隔壁どうしの間の隔壁間空間部に流体圧を導入する流体圧導入手段と、
を備えたことを特徴とする。
本発明方法は、トンネル掘削機が出入りするエントランスの内周と前記トンネル掘削機又はトンネル躯体の外周との間をシールするエントランス止水方法であって、
前記エントランスの内周に沿う環状の弾性止水シート及び前記弾性止水シートに添えられたフラップをそれぞれ有する止水隔壁を、前記エントランスの軸方向に間隔を置いて複数段設け、
隣接する止水隔壁どうしの間の隔壁間空間部に流体圧を導入することを特徴とする。
図1に示すように、シールドトンネル1用の発進立坑2が地上から地中の発進深さまで構築されている。発進深さは、地下水位より十分に深く、例えば100メートル近くないしはそれ以上である。発進立坑2の下端近くの鏡部2aのまわりの周壁にエントランス3が設けられている。
なお、止水隔壁10の段数は3段に限らず、2段でもよく、4段以上でもよい。
弾性止水シート11の内周部11aは、エントランスフレーム4の内周面から径方向内側へ延び出ている。
一段目の止水隔壁10Aにおける、前記推進方向の後方側(図3において左側)の面10Arは、前段隔壁間空間部19Bに面している。
二段目の止水隔壁10Bにおける、推進方向前方側の面10Bfは、前段隔壁間空間部19Bに面している。二段目の止水隔壁10Bにおける、推進方向後方側の面10Brは、後段隔壁間空間部19Cに面している。
三段目の止水隔壁10Cにおける、推進方向前方側の面10Cfは、前段隔壁間空間部19Bに面している。
三段目(推進方向の最後尾)の止水隔壁10Cにおける、推進方向後方側の面10Crは、発進立坑2の坑内空間に面している。
各流体圧導入路21は、対応する隔壁間空間部19に連通されている。詳しくは、図3に示すように、流体圧導入路21Bの下流端が、前段隔壁間空間部19Bに連通されている。流体圧導入路21Cの下流端が、後段隔壁間空間部19Cに連通されている。
発進立坑2にシールドマシン9を設置する。該シールドマシン9をジャッキ(図示せず)によって前方(図1において右側)へ推進させてエントランス装置3内に通す。シールドマシン9が進むにつれて、止水隔壁10が順次シールドマシン9に突き当たる。これによって、弾性止水シート11の内周部11a及びフラップ部12aが推進方向前方側へ傾けられ、フラップ部12aの先端部がシールドマシン9の外周面に当たるとともに、該フラップ部12aより延び出たシート内周部11aがシールドマシン9の外周面に密着される。これによって、隔壁間空間部19が閉塞され、エントランスフレーム4の内周とシールドマシン9の外周との間がシールされる。
図3に示すように、鏡部2aが破れることによって地下水や掘削による泥水などを含む鏡側流入流体w0が鏡側空間部18に流入され得る。発進深さは例えば100メートル近くないしはそれ以上の大深度であるため、鏡側流入流体w0は例えば0.5MPa〜数MPaの高圧である。
検出した流体圧P0に応じて、流体圧導入手段20によって各隔壁間空間部19に流体圧を導入する。すなわち、流体圧導入路21Bの加圧ポンプ22を駆動することによって前段隔壁間空間部19Bに高圧水w19Bによる流体圧P19Bを印加する。かつ流体圧導入路21Cの加圧ポンプ22を駆動することによって後段隔壁間空間部19Cに高圧水w19cによる流体圧P19Cを印加する。好ましくは、前記圧力計24の検出圧力に応じて、各流体圧導入路21の圧力調整バルブ23によって流体圧P19B,P19Cを調整する。
P0 −P19B≦P10A (式1)
P19B−P19C≦P10B (式2)
P19C≦P10C (式3)
ここで、P10Aは一段目(推進方向の最も前方)の止水隔壁10Aの耐圧強度(Pa)である。P10Bは二段目の段止水隔壁10Bの耐圧強度(Pa)である。P10Cは三段目(最後段)の止水隔壁10Cの耐圧強度(Pa)である。
要するに、最後段以外の止水隔壁10A,10Bについては、推進方向前方側の面に付与される流体圧と推進方向後方側の面に付与される流体圧との差が該止水隔壁10A,10Bの耐圧強度を下回るように、推進方向後方側の面が面する隔壁間空間部19の流体圧P19B,P19Cを設定する(式1及び式2)。
P19C<P19B<P0 (式4)
要するに、推進方向のより後方側(図2において左側)に配置された隔壁間空間部19であるほど流体圧を低圧に設定することが、より好ましい(式4)。
このように、エントランス止水装置5によれば、複数段の止水隔壁10にかかる水圧負荷を推進方向後方側の段になるほど小さくすることによって、最後段の止水隔壁10Cにかかる水圧負荷を十分に低減できる。したがって、止水隔壁10Cが変形、破壊を来すのを確実に防止でき、ひいては高圧地下水や泥水を含む鏡側流入流体w0が発進立坑2内に流入するのを阻止することができる。エントランス止水装置5を大掛かりな構造にする必要がなく、施工コストの増大を抑制できる。
なお、三段の止水隔壁10だけでは最後段の止水隔壁10Cにかかる水圧負荷が十分低減できないときは、止水隔壁10の段数を増やすことが好ましい。
図5に示すように、推進に伴って、推進方向の後方側の止水隔壁10から順次シールドマシン9が抜け出る。例えば、図5(a)に示すように、最後尾の止水隔壁10Cからシールドマシン9が抜け出たときは、止水隔壁10Cの傾斜角度が緩む。すなわち、止水隔壁10Cにおける弾性止水シート11の内周部11a及びフラップ部12aが鉛直側へ向けてある角度だけ回転され、フラップ部12aの先端部がトンネル躯体1aの外周面に当たるとともに、シート内周面11aがトンネル躯体1aの外周面に密着される。これによって、エントランスフレーム4の内周とトンネル躯体1aの外周との間がシールされる。
図5(b)に示すように、さらにシールドマシン9が二段目(中間)の止水隔壁10Bから抜け出たときは、止水隔壁10Bの傾斜角度が変化して隔壁間空間部19Bの体積が増大するから、同様の内圧復帰操作を行う。
流体圧源として水などの流動性の高い流体を用いることで、隔壁間空間部19の体積変化及び内圧変化にすばやく対応できる。
図5(c)に示すように、シールドマシン9が一段目の止水隔壁10Aを通過したときは、止水隔壁10Aの傾斜角度が変化し、鏡側空間部18の体積が増大し、その分、高圧地下水や泥水を含む鏡側流入流体w0が鏡側空間部18に流入する。
例えば、シールドマシン9の全体がエントランス装置3を通過した後は、隔壁間空間部19内の流体を発泡ウレタン等の発泡樹脂に置換してもよい。エントランス止水装置5が、隔壁間空間部19への発泡樹脂注入手段を有していてもよい。流体圧導入手段20が、流体圧源の高圧流体と発泡樹脂とを選択的に隔壁間空間部19へ供給可能であってもよい。
1又は複数の止水隔壁10が例えばシールドマシン9との衝突等で壊れたときのために、予め止水隔壁10の段数を必要数より多くしておいてもよい。つまり、予備の止水隔壁10を追加して設置しておいてもよい。好ましくは、推進方向の前方側から数えて必要数の止水隔壁10よりも推進方向後方側の止水隔壁10を予備の止水隔壁10として扱い、通常時は予備の止水隔壁10には流体圧導入手段20からの流体圧を付与せずにおく。
トンネルの発進エントランスに限らず到達エントランスに本発明を適用してもよい。
1a トンネル躯体
2 発進立坑
3 エントランス
5 エントランス止水装置
9 シールドマシン(トンネル掘削機)
10 止水隔壁
10A 一段目(最も前方側)の止水隔壁
11 弾性止水シート
12 フラップ
12a フラップ部
12c ヒンジ
13 シート押えリング
18 鏡側空間部
19 隔壁間空間部
20 流体圧導入手段
22 加圧ポンプ
23 圧力調整バルブ
24 圧力計
Claims (8)
- トンネル掘削機が出入りするエントランスに設けられるエントランス止水装置であって、
前記エントランスの内周に沿う環状の弾性止水シート及び前記弾性止水シートに添えられたフラップをそれぞれ有して、前記エントランスの軸方向に間隔を置いて設けられた複数段の止水隔壁と、
隣接する止水隔壁どうしの間の隔壁間空間部に流体圧を導入する流体圧導入手段と、
を備えたことを特徴とするトンネルのエントランス止水装置。 - 前記トンネル掘削機の推進方向の最も前方側の止水隔壁より前方側の鏡側空間部の圧力を検出する圧力計を更に備え、前記流体圧導入手段による前記流体圧が前記圧力計の検出圧力に応じて調整されることを特徴とする請求項1に記載のエントランス止水装置。
- 1の止水隔壁における、前記トンネル掘削機の推進方向前方側の面に付与される流体圧と推進方向後方側の面に付与される流体圧との差が、前記1の止水隔壁の耐圧強度を下回るように、前記推進方向後方側の面が面する隔壁間空間部の流体圧が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエントランス止水装置。
- 前記トンネル掘削機の推進方向における、より後方側に配置された隔壁間空間部であるほど前記流体圧が低圧に設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のエントランス止水装置。
- トンネル掘削機が出入りするエントランスの内周と前記トンネル掘削機又はトンネル躯体の外周との間をシールするエントランス止水方法であって、
前記エントランスの内周に沿う環状の弾性止水シート及び前記弾性止水シートに添えられたフラップをそれぞれ有する止水隔壁を、前記エントランスの軸方向に間隔を置いて複数段設け、
隣接する止水隔壁どうしの間の隔壁間空間部に流体圧を導入することを特徴とするトンネルのエントランス止水方法。 - 前記トンネル掘削機の推進方向の最も前方側の止水隔壁より前方側の鏡側空間部の圧力を検出し、該検出圧力に応じて前記流体圧導入手段による前記流体圧を調整することを特徴とする請求項5に記載のエントランス止水方法。
- 1の止水隔壁における、前記トンネル掘削機の推進方向前方側の面に付与される流体圧と推進方向後方側の面に付与される流体圧との差が、前記1の止水隔壁の耐圧強度を下回るように、前記推進方向後方側の面が面する隔壁間空間部の流体圧を設定することを特徴とする請求項5又は6に記載のエントランス止水方法。
- 前記トンネル掘削機の推進方向のより後方側に配置された隔壁間空間部であるほど前記流体圧を低圧にすることを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載のエントランス止水方法。
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