JP2020142955A - 層状マンガン酸化物成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 成形体の磨耗が抑制された層状マンガン酸化物成形体を提供する。【解決手段】 Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物Aと、層状結晶構造を有し、50μm以下の粒子が体積基準で90%以上であり、層間にカリウムイオンが存在するカリウム型層状マンガン酸化物を含み、攪拌摩耗度が15重量%以下である層状マンガン酸化物成形体、及びその製造方法。【選択図】 なし
Description
本発明は、層状マンガン酸化物成形体及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、共存イオンが存在する処理液から、選択的にストロンチウムを除去するのに有用な吸着剤として使用できる層状マンガン酸化物成形体及びその製造方法、並びに当該層状マンガン酸化物成形体を含む吸着剤に関する。
水溶液から有害イオンを除去できる吸着剤として、層状マンガン酸化物が知られている。
特許文献1及び非特許文献1には、ストロンチウムを含む放射性核種の吸着剤としてバーネサイトタイプの層状マンガン酸化物が開示されている。
非特許文献2には、ストロンチウムの吸着剤として、乾燥凝集させたバーネサイトタイプの層状マンガン酸化物の顆粒を用いて吸着評価を実施している。
また、層状マンガン酸化物を用いた他の用途の成形体としては非特許文献3には、ホルムアルデヒド除去用の触媒として、活性炭上に層状マンガン酸化物を担持した複合体が開示されている。
一方、層状マンガン酸化物以外の吸着剤として、特許文献2にセシウム及びストロンチウムの吸着剤として、フェロシアン化物、ケイチタン酸、及びゼオライトが開示されている。
非特許文献1及び特許文献2に記載の吸着剤は、粉末状であるため、大量の被処理水溶液を、大きい流速で吸着媒充填層を通過させる吸着処理における過酷な環境下における使用には適しておらず、粉末が充填層を閉塞させ、処理能力が低下する。
非特許文献2の成形体は、乾燥凝集体であるため、前記環境下において、長時間通水すると、成形体の形骸を維持できず、微粉が発生し充填層を閉塞させ、処理能力が低下する。
非特許文献3の複合体は、担体にマンガン酸化物が担持されているため、吸着媒充填層に充填し、液を流すような方法で用いる際には、充填物全体に対して吸着剤として機能するマンガン酸化物の量が少なくなり、吸着できるストロンチウムの量が少なくなる。
特許文献2の吸着剤はいずれも、海水や地下水のような処理液中に他のアルカリ金属、アルカリ土類金属が存在する条件下においては、層状マンガン酸化物と比較し、ストロンチウムの選択性が低く、他のアルカリ金属、アルカリ土類金属に対してより多くのストロンチウムを吸着できない課題があった。
DYER Alan et al.,Sorption characteristics of radionuclides on synthetic birnessite−type layered manganese oxides.,J.Mater.Chem.,2010,10,1867−1874
ANDREI Egorin et al.,Investigation of Sr uptake by birnessite−type sorbents from seawater.,Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry.,2018,317,243−251
JINGE Li et al.,Birnessite−Type Manganese Oxide on Granular Activated Carbon for Formaldehyde Removal at Room Temperature.,J.Phys.Chem.C 2016,120,24121−24129
本発明の目的は、強度が大きく、液浸漬時の摩耗がしにくい層状マンガン酸化物成形体及びその製造方法、並びに当該層状マンガン酸化物成形体を含むストロンチウム吸着剤を提供することにある。
本発明者らは上記課題に対して鋭意検討した。その結果、層状マンガン酸化物の成形体であって、特定の酸化物を含有する成形体が、吸着媒充填層に充填し、被処理水溶液を大きい流速で流す条件下での吸着処理に用いても、成形体の摩耗度が著しく抑制されること、海水または地下水などの水溶液中のストロンチウムの選択性が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物Aと、層状結晶構造を有し、50μm以下の粒子が体積基準で90%以上であり、層間にカリウムイオンが存在するカリウム型層状マンガン酸化物を含み、攪拌摩耗度が15重量%以下である層状マンガン酸化物成形体、その製造方法、及びそれを用いたストロンチウム吸着剤である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の層状マンガン酸化物成形体は、Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物Aを含むものである。酸化物Aは、無機結合剤として含む。Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物Aを含まないと、層状マンガン酸化物粒子同士の結着性が少なく、層状マンガン酸化物成形体を吸着媒充填層に充填し、被処理水溶液を大きい流速で流す際に、水圧による成形体からの粒子の脱離が多くなる。酸化物Aの元素は、好ましくはSiである。酸化物Aとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、粘土化合物等が挙げられる。
本発明の層状マンガン酸化物成形体は、層状結晶構造を有し、50μm以下の粒子が体積基準で90%以上であり、層間にカリウムイオンが存在するカリウム型層状マンガン酸化物を含むものである。カリウム型層状マンガン酸化物は、層状結晶構造を有していないと、結晶構造内に含まれるカチオンと、被処理水溶液中のストロンチウムイオンとのイオン交換が迅速に行われず、ストロンチウム吸着性能が低くなる。カリウム型層状マンガン酸化物は、50μm以下の粒子が体積基準で90%未満であると、無機結合剤との分散性が低く、均一な成形体を得ることができず、成形体の液浸漬時の摩耗がしやすく、吸着剤である層状マンガン酸化物の液接触面積が小さく、ストロンチウムの吸着性能も低くなる。カリウム型層状マンガン酸化物は、層間にカリウムイオンが存在しないと、被処理溶液へ浸漬した際に、層状マンガン酸化物の層間距離が膨張収縮し適切な距離に保たれず、層状マンガン成形体の液浸漬時に成形体が崩壊する。好ましくは50μm以下の粒子が体積基準で95%以上であり、より好ましくは40μm以下の粒子が体積基準で90%以上であり、特に好ましくは40μm以下の粒子が体積基準で95%以上であり、微細な領域に粒度分布を持つことから、無機結合剤との分散性が高く、均一な成形体を得ることができ、成形体の液浸漬時の摩耗がしにくく、吸着剤である層状マンガン酸化物の液接触面積が大きくなり、ストロンチウムの吸着性能も高くなる。
本発明の層状マンガン酸化物成形体は、攪拌摩耗度が15重量%以下である。攪拌摩耗度が15重量%を超えると、層状マンガン酸化物成形体を吸着媒充填層に充填し、被処理水溶液を大きい流速で流す際に、粒子が成形体から脱落する量が多くなり、カラム内で粒子が閉塞を起こし、使用ができなくなるおそれがある。攪拌摩耗度は10重量%以下が好ましく、より好ましくは8重量%以下である。ここに、攪拌摩耗度とは、成形体及び水を所定の容器に入れて静置した後に攪拌し、摩耗により成形体から脱落した脱落物の重量について、攪拌前の成形体の重量に対する比を示すものであり、具体的には、実施例の<攪拌摩耗度の測定>に記載した測定により行うものである。
本発明の層状マンガン酸化物成形体に含まれる、Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物AのSi、Al、Zr、Mgのモル比は、マンガンに対して0.1以上0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.15以上0.45以下であり、特に好ましくは0.2以上0.4以下である。層状マンガン酸化物成形体に含まれる、Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物AのSi、Al、Zr、Mgのモル比が、0.1未満であると、層状マンガン酸化物成形体を吸着媒充填層に充填し、被処理水溶液を大きい流速で流す際に、水圧による成形体からの粒子の脱離が増加する。層状マンガン酸化物成形体に含まれる、Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物AのSi、Al、Zr、Mgのモル比が、0.5以上であると、吸着剤である層状マンガン酸化物の液接触面積が小さくなり、ストロンチウム吸着性能が減少する。
本発明の層状マンガン酸化物成形体は、全細孔容積が0.10mL/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.20mL/g以上であり、特に好ましくは0.30mL/g以上である。層状マンガン酸化物成形体の全細孔容積が0.10mL/g以上であれば、吸着剤である層状マンガン酸化物の接液が十分に確保され、ストロンチウム吸着性能が高くなる。通常全細孔容積の上限は0.80ml/g以下であり、これ以下であれば、成形体の密度が高くなり強度が保たれる。
本発明の層状マンガン酸化物成形体は、被処理溶液を流通させた際に成形体内部の層状マンガン酸化物へ物質拡散を促進させ、液接触面積を大きくするために、細孔径20nm以上100nm以下の規則的な細孔を有することが好ましい。ここで、細孔径20nm以上100nm以下の規則的な細孔を有することは、全細孔容積に対する、細孔径20nm以上100nm以下の範囲での細孔容積の比で表すことができる。当該細孔容積の比は0.10以上であることが好ましく、より好ましくは0.15以上0.6以下である。これにより、特に成形体内部へ物質拡散が促進され、本発明の層状マンガン酸化物成形体を吸着剤として使用した際に高い性能、特に高いストロンチウム吸着性を示す。
本発明の層状マンガン酸化物成形体は、全細孔表面積が5.0m2/g以上40.0m2/g以下であることが好ましく、より好ましくは7.0m2/g以上35.0m2/g以下、特に好ましくは9.0m2/g以上30.0m2/g以下である。全細孔表面積が5.0m2/g以上であれば成形体と被吸着液の接触面積が確保され、ストロンチウム吸着性能が高くなる。全細孔表面積が40.0m2/g以下であれば、成形体と、被処理溶液の過剰な接触が避けられ、成形体からの粒子の脱離が減少する。
本発明の層状マンガン酸化物成形体のメジアン径は300μm以上2000μm以下であることが好ましく、より好ましくは350μm以上1500μm以下、特に好ましくは400μm以上1000μm以下である。300μm以上であれば、層状マンガン酸化物成形体を充填層に充填した際の圧力損失が小さくなり、被処理溶液を通水した際に消費するエネルギーが少なくなる。2000μm以下であれば、層状マンガン酸化物成形体の接液面積が大きくなり、ストロンチウム吸着性能が高くなる。
本発明の層状マンガン酸化物成形体は、かさ密度が0.70g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは0.75g/cm3以上、特に好ましくは0.80g/cm3以上である。かさ密度が0.70g/cm3以上であることで、より少量の吸着剤でストロンチウムを吸着することができる。これにより、カラム等の充填層の体積を減らすことができ、処理装置の小型化が可能となる。一方、かさ密度は1.20g/cm3以下であることが好ましい。かさ密度が1.20g/cm3以下であることで、カラム内における被処理水溶液の流通に偏りが生じにくく、カラムとしての吸着性能の低下を抑制できる。
本発明の層状マンガン酸化物成形体に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は、層間距離が6.50Å以上7.10Å以下であり、CuKαを線源とする粉末X線回折で、2θ=13.05±0.57°、2θ=25.00±1.00°及び2θ=59.80±1.00°に回折ピークを有することが好ましい。層間距離が6.50Å以上であれば、水溶液中での水和による層間距離の増大が抑えられ、成形体からの粒子の脱落が減少する。7.10Å以下であれば、篩効果によりストロンチウムイオンを選択にイオン交換することができ、成形体のストロンチウム吸着性能が高くなる。
本発明の層状マンガン酸化物成形体に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は、マンガンに対するカリウムのモル比が0.1以上0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.15以上0.4以下であり、特に好ましくは0.2以上0.35以下である。モル比が0.1以上であれば、ストロンチウムイオンの交換に十分なカリウムイオンが存在し、成形体のストロンチウム吸着性能が高くなる。モル比が0.5以下であれば、液中での層状マンガン酸化物の構造が維持され、成形体からの粒子の脱落が減少する。
本発明の層状マンガン酸化物成形体に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は、前記層間距離、カリウムのモル比の範囲であれば、カリウムイオンが、一部他の元素、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等や、有機カチオン等と置換されてもよく、マンガン原子が一部他の元素、例えば遷移金属等で置換されていてもよい。
カリウム型層状マンガン酸化物の製造方法は特に限定されないが、例えば、マンガン源、カリウム源を混合し、混合物を300℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上600℃以下、1時間以上24時間以下、好ましくは3時間以上16時間以下、焼成させることが好ましい。混合、焼成して得られた層状マンガン酸化物はそのまま成形体原料として使用することができるが、水洗、乾燥することで、未反応のカリウム除去を行うこともできる。また、層状マンガン酸化物は粉砕や篩分け等により、目的の粒度分布に調整してもよい。
次に、本発明の層状マンガン酸化物成形体の製造方法について説明する。
本発明の層状マンガン酸化物成形体はSi、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物Aのゾル、カリウム型層状マンガン酸化物及び水を混合して混合物を得る混合工程と、該混合物を成形して成形体を得る成形工程と、該成形体を焼成する焼成工程を含む製造方法により製造することができる。
(混合工程)
混合工程では、上記した製造方法で得られたカリウム型層状マンガン酸化物、Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物Aのゾル及び水を混合して混合物を得る。
混合工程では、上記した製造方法で得られたカリウム型層状マンガン酸化物、Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物Aのゾル及び水を混合して混合物を得る。
該酸化物Aのゾルは結合剤として機能する。該元素は特にSi及び又はZrの少なくともいずれかが好ましく、より好ましくはSiである。Siの酸化物のゾルを用いることで、焼成工程における焼成温度を600℃以下まで下げることができる。酸化物Aとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、粘土化合物等が挙げられる。
混合工程で用いられるカリウム型層状マンガン酸化物は、50μm以下の粒子が体積基準で90%以上である。カリウム型層状マンガン酸化物が50μm以下の粒子が体積基準で90%未満の場合は、得られる層状マンガン酸化物成形体の無機結合剤との分散性が低く、不均一な成形体となり、成形体の液浸漬時の摩耗が大きく、吸着剤である層状マンガン酸化物の液接触面積は小さくなり、ストロンチウムの吸着性能が低くなる。好ましくは50μm以下の粒子が体積基準で95%以上であり、より好ましくは40μm以下の粒子が体積基準で90%以上であり、特に好ましくは40μm以下の粒子が体積基準で95%以上であり、微細な領域に粒度分布を持つことから、無機結合剤との分散性が高く、均一な成形体を得ることができ、成形体の液浸漬時の摩耗がしにくく、吸着剤である層状マンガン酸化物の液接触面積が大きくなり、ストロンチウムの吸着性能も高くなる。
混合工程で用いられる酸化物Aのゾル中の酸化物粒子の平均粒子径は3nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは4nm以上80nm以下であり、特に好ましくは5nm以上60nm以下である。ゾル中の酸化物粒子の平均粒子径が100nm以下であると、得られる層状マンガン酸化物成形体の成形体からの粒子の脱離が抑制される。ゾル中の酸化物粒子の平均粒子径が3nm以上、特に5nm以上であると、得られる層状マンガン酸化物成形体の細孔を閉塞しないため、より高い吸着能力を示す。
混合工程で用いられる酸化物Aのゾルの、酸化物の含有量は20重量%以上70重量%以下が好ましく、より好ましくは25重量%以上60重量%以下である。20重量部以上であると混合時に水を加える際に、混合物の粘度が安定するため、より少ない水の量で混合が可能となり、得られる成形体の強度が向上する。70重量%以下であると、混合時に酸化物Aの分散性が向上するため、分散剤の添加が不要となり、分散剤由来の不純物による焼成への影響を防ぐことができるため、十分な成形体強度が得られる。
混合工程で用いられる酸化物AのSi、Al、Zr、Mgのモル比は、マンガンに対して0.1以上0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.15以上0.45以下であり、特に好ましくは0.2以上0.4以下である。酸化物AのSi、Al、Zr、Mgのモル比が、マンガンに対して0.1以上0.5以下であると、得られる層状マンガン酸化物成形体を吸着媒充填層に充填し、被処理水溶液を大きい流速で流す際に、水圧による成形体からの粒子の脱離が少なく、吸着剤である層状マンガン酸化物の液接触面積が小さくなり、ストロンチウム吸着性能が大きくなる。
カリウム型層状マンガン酸化物100重量部に対して、水(ゾル由来の水を含む)は、15重量部以上55重量部以下が好ましく、より好ましくは18重量部以上50重量部以下、特に好ましくは20重量部以上45重量部以下あることが好ましい。水が15重量部以上であると混合の際に粘度が低くなり、均一な混合を行うことができる。水の重量部が55重量部以下であると、混合の際に混合物中への空気の同伴を防げるため、得られる成形体の強度が向上する。
混合工程では、まず、上記の層状マンガン酸化物、酸化物Aのゾルを混合し、混合しながら水を添加することが好ましい。混合工程では、必要に応じて成形助剤やpH調整剤を添加することができ、混合開始前に加える、又は水を加える際に同時に加えることができる。
成形助剤は混合物の粘度を高くする機能を有する化合物であればよく、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、及びトリポリりん酸ナトリウムの群から選ばれる1種以上等を挙げることができる。好ましい成形助剤としてカルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」とする。)を挙げることができる。
pH調整剤は混合物の粘度を調整する化合物であればよく、例えば、硝酸、硫酸、酢酸、水酸化ナトリウム、アンモニアの群から選ばれる1種以上等を挙げることができる。好ましいpH調整剤として、酢酸又はアンモニアの少なくともいずれか、より好ましいものとして酢酸を挙げることができる。
混合方法として、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ナウターミキサー、又はミックスマラーのいずれか一つの方法で行うことができる。
(成形工程)
成形工程では、混合工程で得られた混合物を任意の成形方法により成形する。成形方法は、円柱状や三つ葉状をはじめ多角形状に成形するのであればよく、例えば、押し出し成形法等が挙げられる。さらに、押し出し成形体を破砕・整粒し、任意の大きさの成形体を得ることができる。また、ビーズ状に成形するのであれば転動造粒法が挙げられる。転動造粒法には、例えば、ブレード型、パン型、ドラム型、羽根撹拌式による転動造粒が挙げられる。
成形工程では、混合工程で得られた混合物を任意の成形方法により成形する。成形方法は、円柱状や三つ葉状をはじめ多角形状に成形するのであればよく、例えば、押し出し成形法等が挙げられる。さらに、押し出し成形体を破砕・整粒し、任意の大きさの成形体を得ることができる。また、ビーズ状に成形するのであれば転動造粒法が挙げられる。転動造粒法には、例えば、ブレード型、パン型、ドラム型、羽根撹拌式による転動造粒が挙げられる。
(焼成工程)
成形工程で得られた成形体を焼成することで本発明の層状マンガン酸化物成形体を得ることができる。成形体を焼成することにより、得られる層状マンガン酸化物成形体の耐圧強度が高くなる。焼成温度は、400℃以上600℃以下で焼成することが好ましく、450℃以上550℃以下で焼成することがより好ましい。
成形工程で得られた成形体を焼成することで本発明の層状マンガン酸化物成形体を得ることができる。成形体を焼成することにより、得られる層状マンガン酸化物成形体の耐圧強度が高くなる。焼成温度は、400℃以上600℃以下で焼成することが好ましく、450℃以上550℃以下で焼成することがより好ましい。
無機結合剤として酸化物ゾルを用いたことで、400℃以上600℃以下の比較的低温で焼成しても、機械的強度が向上し、十分な磨耗度を有する層状マンガン酸化物成形体を得ることができる。焼成保持時間は、0.5時間以上、さらには1時間以上を挙げることができる。焼成雰囲気は酸化雰囲気下であればよく、例えば、大気中を挙げることができる。好ましい焼成雰囲気としては5L/min以上、さらには20L/min以上の大気気流中で焼成することを挙げることができる。これにより、成形体の焼結性がより向上する傾向にある。
焼成して得られた層状マンガン酸化物成形体は、解砕してもよく、解砕しなくてもよいが、被処理液と成形体の接触面積を大きくするために、解砕することが好ましい。ここに、解砕とは、成形体に対して力を加え、元の粒径よりも小さくすることをいい、例えばくし歯型解砕機、ローラー型解砕機、乳鉢、ジョークラッシャー、ローラーミル、ジェットミル等で成形体を小さくすることである。
本発明の層状マンガン酸化物成形体は、本発明の成形体だけをストロンチウム吸着剤として用いてもよく、また、本発明の成形体に任意の成分の吸着剤を混ぜてストロンチウム吸着剤としてもよい。ストロンチウム吸着剤は、ストロンチウムを含む被処理溶液中に浸漬させることで、ストロンチウムを吸着することができる。
本発明により、カラムへの充填、又は吸着剤としての使用において、成形体の磨耗が抑制された層状マンガン酸化物成形体を提供することができる。
本発明の層状マンガン酸化物成形体は、磨耗度が低いため、大きい流速で吸着媒充填層を通過させるような、大量の被処理水溶液の吸着除去処理に用いても、磨耗により脱落した固形物の閉塞による性能低下を抑制できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<化学組成の測定>
得られた試料の組成分析は誘導結合プラズマ発光分析法(ICP法)により行った。すなわち、試料粉末と過酸化水素水とフッ化水素酸とを加圧酸溶解することで、測定溶液を調製した。誘導結合プラズマ発光分析装置(商品名:OPTIMA3000DV、PERKIN ELMER製)を用い、得られた測定溶液を測定することで、得られた試料の化学組成を分析した。
得られた試料の組成分析は誘導結合プラズマ発光分析法(ICP法)により行った。すなわち、試料粉末と過酸化水素水とフッ化水素酸とを加圧酸溶解することで、測定溶液を調製した。誘導結合プラズマ発光分析装置(商品名:OPTIMA3000DV、PERKIN ELMER製)を用い、得られた測定溶液を測定することで、得られた試料の化学組成を分析した。
<X線回折の測定>
X線回折装置(商品名:Ultima4、リガク製)を使用し、得られた試料の粉末についてX線回折の測定を行った。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定モードはステップスキャン、スキャン条件はスキャンスピード8.0°/min、ステップ幅0.04°、測定範囲は2θとして5°から70°の範囲で測定した。
X線回折装置(商品名:Ultima4、リガク製)を使用し、得られた試料の粉末についてX線回折の測定を行った。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定モードはステップスキャン、スキャン条件はスキャンスピード8.0°/min、ステップ幅0.04°、測定範囲は2θとして5°から70°の範囲で測定した。
<粒度分布の測定>
粒子径分布測定装置(装置名:マイクロトラックMT3300EXII、マイクロトラックベル製)を使用して、試料の粒度分布を測定した。測定条件は、粒子屈折率2.46、分散媒屈折率1.33とした。前処理として50mlガラスビーカーに試料約0.4g入れ、水を約40g加え、ホモジナイザーを用いて超音波をかけて2分間処理し、十分に分散させた。この試料分散液を粒子径分布測定装置に投入し、各粒子径毎の体積分布を測定した。この粒子径分布から、各粒子径範囲の存在比を算出した。
粒子径分布測定装置(装置名:マイクロトラックMT3300EXII、マイクロトラックベル製)を使用して、試料の粒度分布を測定した。測定条件は、粒子屈折率2.46、分散媒屈折率1.33とした。前処理として50mlガラスビーカーに試料約0.4g入れ、水を約40g加え、ホモジナイザーを用いて超音波をかけて2分間処理し、十分に分散させた。この試料分散液を粒子径分布測定装置に投入し、各粒子径毎の体積分布を測定した。この粒子径分布から、各粒子径範囲の存在比を算出した。
<攪拌摩耗度の測定>
攪拌摩耗度の測定は、JIS−K−1464(工業用乾燥剤の摩耗試験)及び米国特許59258284号公報に準拠して行った。すなわち、水7.5g、及び成形体を乾燥重量で2.5g、30mL広口ポリエチレン瓶に入れ、25℃、24時間静置した。ポリエチレン瓶を、ペイントシェイカー(東洋精機製作所製)を用いて5分間振とう攪拌し、摩耗により成形体から脱落した脱落物を、100mesh(目開き150μm)篩にかけることで分離回収し、200℃、12時間乾燥した際の乾燥後の脱落物重量を以下の式で算出した。
攪拌摩耗度の測定は、JIS−K−1464(工業用乾燥剤の摩耗試験)及び米国特許59258284号公報に準拠して行った。すなわち、水7.5g、及び成形体を乾燥重量で2.5g、30mL広口ポリエチレン瓶に入れ、25℃、24時間静置した。ポリエチレン瓶を、ペイントシェイカー(東洋精機製作所製)を用いて5分間振とう攪拌し、摩耗により成形体から脱落した脱落物を、100mesh(目開き150μm)篩にかけることで分離回収し、200℃、12時間乾燥した際の乾燥後の脱落物重量を以下の式で算出した。
攪拌摩耗度(重量%)=(脱落物の重量/攪拌前の成形体の乾燥重量)×100
<細孔容積、細孔径の測定>
水銀ポロシメ−タ装置(装置名:ポロシメーターオートポア9510、島津製作所製)を使用して、試料の細孔容積、細孔径の測定を行った。測定条件は以下の通りであった。
<細孔容積、細孔径の測定>
水銀ポロシメ−タ装置(装置名:ポロシメーターオートポア9510、島津製作所製)を使用して、試料の細孔容積、細孔径の測定を行った。測定条件は以下の通りであった。
PoreDiameter:5〜5000nm
試料予備乾燥条件:−100kPa,105℃×3h
<成形体のメジアン径の測定>
粒子径分布測定装置(装置名:マイクロトラックMT3300EXII、マイクロトラックベル製)を使用して、成形体のメジアン径を測定した。測定条件は、粒子屈折率2.46、分散媒屈折率1.00とした。One−Shot Dry(ワンショットドライ)(乾式)の供給口を使用し、成形体を0.3g量り取り空気吸引による乾式法により粒子径分布測定装置に投入し、各粒子径毎の体積分布を測定することで、成形体のメジアン径を得た。
試料予備乾燥条件:−100kPa,105℃×3h
<成形体のメジアン径の測定>
粒子径分布測定装置(装置名:マイクロトラックMT3300EXII、マイクロトラックベル製)を使用して、成形体のメジアン径を測定した。測定条件は、粒子屈折率2.46、分散媒屈折率1.00とした。One−Shot Dry(ワンショットドライ)(乾式)の供給口を使用し、成形体を0.3g量り取り空気吸引による乾式法により粒子径分布測定装置に投入し、各粒子径毎の体積分布を測定することで、成形体のメジアン径を得た。
<酸化物ゾル中の酸化物粒子の平均粒子径の測定>
酸化物ゾル中の酸化物粒子の平均粒子径は、ガス吸着法による比表面積測定(BET法)より測定した。すなわち、酸化物ゾルを200℃にて一晩乾燥させたものについてBET1点法の窒素吸着により、測定装置にはガス吸着式比表面積測定装置(フローソーブIII,島津製作所製)を用い、以下の式を用いて算出した。
酸化物ゾル中の酸化物粒子の平均粒子径は、ガス吸着法による比表面積測定(BET法)より測定した。すなわち、酸化物ゾルを200℃にて一晩乾燥させたものについてBET1点法の窒素吸着により、測定装置にはガス吸着式比表面積測定装置(フローソーブIII,島津製作所製)を用い、以下の式を用いて算出した。
酸化物ゾル中の酸化物粒子の平均粒子径=6/(酸化物粒子密度×比表面積)
<吸着試験>
層状マンガン酸化物成形体を用いて、水溶液中のストロンチウム及びセシウムの吸着試験を行った。被処理水溶液として、以下の成分を含む水溶液(以下「模擬汚染海水」とする。)を調整した。
<吸着試験>
層状マンガン酸化物成形体を用いて、水溶液中のストロンチウム及びセシウムの吸着試験を行った。被処理水溶液として、以下の成分を含む水溶液(以下「模擬汚染海水」とする。)を調整した。
NaCl :3.0g/L
MgCl2・6H2O :0.048g/L
CaCl2 :0.014g/L
CsCl :0.0013g/L
SrCl2・6H2O :0.015g/L
層状マンガン酸化物成形体5mlを吸着剤として、内径8mmのカラムに10cmの高さとなるように充填し、模擬汚染海水を流速8.3cc/min(空間速度SV;100hr−1、線流速LV;10m・hr−1)にて、上昇流で10L通水し、カラム出口水を採取した。
MgCl2・6H2O :0.048g/L
CaCl2 :0.014g/L
CsCl :0.0013g/L
SrCl2・6H2O :0.015g/L
層状マンガン酸化物成形体5mlを吸着剤として、内径8mmのカラムに10cmの高さとなるように充填し、模擬汚染海水を流速8.3cc/min(空間速度SV;100hr−1、線流速LV;10m・hr−1)にて、上昇流で10L通水し、カラム出口水を採取した。
<カラム出口水のストロンチウム及びセシウム濃度の測定>
水溶液中のストロンチウム及びセシウム濃度はICP法により測定した。測定にはICP−MASS(装置名:NExION300S、PERKIN−ELMER製)で測定した。吸着試験を行う前の処理溶液中の濃度をC0(mg/L)、吸着試験を行った後の処理溶液中の濃度をC(mg/L)とし、以下の式より除去率を算出した。
水溶液中のストロンチウム及びセシウム濃度はICP法により測定した。測定にはICP−MASS(装置名:NExION300S、PERKIN−ELMER製)で測定した。吸着試験を行う前の処理溶液中の濃度をC0(mg/L)、吸着試験を行った後の処理溶液中の濃度をC(mg/L)とし、以下の式より除去率を算出した。
除去率=(C/C0)×100
<かさ密度の測定>
試料のかさ密度は、以下の方法により測定した。大きさをそろえた成形体を、乾燥重量で5gをはかり取った。この所定重量の成形体を、自然落下によりメスシリンダー内に挿入し、メスシリンダー目盛より体積を読みとり、以下の式によりかさ密度を算出した。
<かさ密度の測定>
試料のかさ密度は、以下の方法により測定した。大きさをそろえた成形体を、乾燥重量で5gをはかり取った。この所定重量の成形体を、自然落下によりメスシリンダー内に挿入し、メスシリンダー目盛より体積を読みとり、以下の式によりかさ密度を算出した。
かさ密度=W/V(g/cm3)
W:層状マンガン酸化物成形体の乾燥重量(g)
V:メスシリンダーの読み取り値(cm3)
製造例1
炭酸カリウム(特級試薬、キシダ化学)とMn3O4(商品名:ブラウノックス、東ソー株式会社製)をカリウムとマンガンのモル比1.0で乳鉢混合を行い、混合粉をマッフル炉で空気流通下500℃、6時間で焼成を行い、該焼成品を5倍水にて水洗濾過し、60℃にて一晩乾燥し、乾式粉砕機(フォースミル;大阪ケミカル製)にて粗粒を粉砕し、カリウム型層状マンガン酸化物を得た。得られたカリウム型層状マンガン酸化物は、X線回折の測定により層状結晶構造を有することがわかり、層間にカリウムイオンが存在し、粒度分布の測定により50μm以下の粒子が体積基準で100%であることがわかり、層間距離は7.05Å、粉末X線回折のピークは12.56°、25.56°、59.96°、K/Mnモル比は0.25であった。
W:層状マンガン酸化物成形体の乾燥重量(g)
V:メスシリンダーの読み取り値(cm3)
製造例1
炭酸カリウム(特級試薬、キシダ化学)とMn3O4(商品名:ブラウノックス、東ソー株式会社製)をカリウムとマンガンのモル比1.0で乳鉢混合を行い、混合粉をマッフル炉で空気流通下500℃、6時間で焼成を行い、該焼成品を5倍水にて水洗濾過し、60℃にて一晩乾燥し、乾式粉砕機(フォースミル;大阪ケミカル製)にて粗粒を粉砕し、カリウム型層状マンガン酸化物を得た。得られたカリウム型層状マンガン酸化物は、X線回折の測定により層状結晶構造を有することがわかり、層間にカリウムイオンが存在し、粒度分布の測定により50μm以下の粒子が体積基準で100%であることがわかり、層間距離は7.05Å、粉末X線回折のピークは12.56°、25.56°、59.96°、K/Mnモル比は0.25であった。
得られたカリウム型層状マンガン酸化物のX線回折図を図1に示し、粒度分布を図3に示す。
製造例2
乾式粉砕機の代わりに、乳鉢粉砕したこと以外は製造例1と同様の方法でカリウム型層状マンガン酸化物を得た。得られたカリウム型層状マンガン酸化物は、X線回折の測定により層状結晶構造を有することがわかり、層間にカリウムイオンが存在し、粒度分布の測定により50μm以下の粒子が体積基準で74%であることがわかり、層間距離は7.07Å、粉末X線回折のピークは12.52°、24.96°、60.08°、K/Mnモル比は0.25であった。
乾式粉砕機の代わりに、乳鉢粉砕したこと以外は製造例1と同様の方法でカリウム型層状マンガン酸化物を得た。得られたカリウム型層状マンガン酸化物は、X線回折の測定により層状結晶構造を有することがわかり、層間にカリウムイオンが存在し、粒度分布の測定により50μm以下の粒子が体積基準で74%であることがわかり、層間距離は7.07Å、粉末X線回折のピークは12.52°、24.96°、60.08°、K/Mnモル比は0.25であった。
得られたカリウム型層状マンガン酸化物のX線回折図を図2に示し、粒度分布を図3に示す。
実施例1
無機結合剤としてシリカゾルを使用した層状マンガン酸化物成形体を得た。
無機結合剤としてシリカゾルを使用した層状マンガン酸化物成形体を得た。
すなわち、製造例1で得られたカリウム型層状マンガン酸化物(50μm以下の粒子が体積基準で100%)、シリカゾル、及び、CMCを以下の重量割合となるように混合し、混合物を得た。
カリウム型層状マンガン酸化物:100重量部
シリカゾル中のシリカ:16重量部
水:36重量部
CMC:5重量部
無機結合剤としてのシリカゾルは、ゾル濃度48重量%及びゾル中のシリカ粒子の平均粒子径0.02μmのシリカゾル(商品名:スノーテックス50−T、日産化学工業製)を使用した。また、成形助剤としてCMC(商品名:セロゲンWS−D、第一工業製薬製)を使用した。
シリカゾル中のシリカ:16重量部
水:36重量部
CMC:5重量部
無機結合剤としてのシリカゾルは、ゾル濃度48重量%及びゾル中のシリカ粒子の平均粒子径0.02μmのシリカゾル(商品名:スノーテックス50−T、日産化学工業製)を使用した。また、成形助剤としてCMC(商品名:セロゲンWS−D、第一工業製薬製)を使用した。
得られた混合物はヘンシェルミキサーで20分間混合した後、押出し成形して、直径1.5mmの円柱状の成形体を得た。得られた成形体を25L/minの空気流通下で、500℃、3時間焼成した後、解砕し、0.3〜0.6mmに分級し、層状マンガン酸化物成形体(成形体に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は50μm以下の粒子が体積基準で100%)を得た。
得られた層状マンガン酸化物成形体のSi/Mnモル比は0.31であり、成形体のメジアン径は760μmであり、かさ密度は0.94g/mLであり、攪拌摩耗度は8.2重量%であった。なお、攪拌摩耗度の測定前後における層状マンガン酸化物成形体の形状変化はなかった。
得られた層状マンガン酸化物成形体の全細孔容積は0.54mL/gであり、全細孔容積に対する細孔径20nm以上100nm以下の範囲での細孔容積の比は0.269であり、全細孔比表面積は11.84m2/gであった。
得られた層状マンガン酸化物成形体の水銀圧入法試験により得られた細孔径分布を図4に示す。
得られた層状マンガン酸化物成形体を用いて、模擬海水中のストロンチウム及びセシウムの吸着試験を行った。吸着試験後の模擬汚染海水中のストロンチウム濃度は0.266重量ppmであった。これより、ストロンチウムの除去率は94.2%であった。また、セシウムの濃度は1.0重量ppmであった。これより、セシウムの除去率は0%であった。
得られた層状マンガン酸化物成形体が、海水成分共存下で優れたストロンチウム除去性能を示すことが確認できた。
実施例2
製造例1で得られたカリウム型層状マンガン酸化物、シリカゾル、水、CMCを以下の割合となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で層状マンガン酸化物成形体を得た。
製造例1で得られたカリウム型層状マンガン酸化物、シリカゾル、水、CMCを以下の割合となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で層状マンガン酸化物成形体を得た。
カリウム型層状マンガン酸化物:100重量部
シリカゾル中のシリカ:16重量部
水:32重量部
CMC:5重量部
得られた層状マンガン酸化物成形体のSi/Mnモル比は0.31であり、成形体のメジアン径は754μmであり、かさ密度は0.98g/mLであり、攪拌摩耗度は8.7重量%であった。なお、攪拌摩耗度の測定前後における層状マンガン酸化物成形体の形状変化はなかった。
シリカゾル中のシリカ:16重量部
水:32重量部
CMC:5重量部
得られた層状マンガン酸化物成形体のSi/Mnモル比は0.31であり、成形体のメジアン径は754μmであり、かさ密度は0.98g/mLであり、攪拌摩耗度は8.7重量%であった。なお、攪拌摩耗度の測定前後における層状マンガン酸化物成形体の形状変化はなかった。
得られた層状マンガン酸化物成形体の全細孔容積は0.62mL/gであり、全細孔容積に対する細孔径20nm以上100nm以下の範囲での細孔容積の比は0.209であり、全細孔比表面積は12.4m2/gであった。
吸着試験後の模擬汚染海水中のストロンチウム濃度は0.246重量ppmであった。これより、ストロンチウムの除去率は94.6%であった。また、セシウムの濃度は1.0重量ppmであった。これより、セシウムの除去率は0%であった。
本実施例の層状マンガン酸化物成形体が、海水成分共存下で優れたストロンチウム除去性能を示すことが確認できた。
実施例3
製造例1で得られたカリウム型層状マンガン酸化物、シリカゾル、水、CMCを以下の割合となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で層状マンガン酸化物成形体を得た。
製造例1で得られたカリウム型層状マンガン酸化物、シリカゾル、水、CMCを以下の割合となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で層状マンガン酸化物成形体を得た。
カリウム型層状マンガン酸化物:100重量部
シリカゾル中のシリカ:16重量部
水:29重量部
CMC:5重量部
得られた層状マンガン酸化物成形体のSi/Mnモル比は0.31であり、成形体のメジアン径は743μmであり、かさ密度は1.00g/mLであり、攪拌摩耗度は6.4重量%であった。なお、攪拌摩耗度の測定前後における層状マンガン酸化物成形体の形状変化はなかった。
シリカゾル中のシリカ:16重量部
水:29重量部
CMC:5重量部
得られた層状マンガン酸化物成形体のSi/Mnモル比は0.31であり、成形体のメジアン径は743μmであり、かさ密度は1.00g/mLであり、攪拌摩耗度は6.4重量%であった。なお、攪拌摩耗度の測定前後における層状マンガン酸化物成形体の形状変化はなかった。
得られた層状マンガン酸化物成形体の全細孔容積は0.5mL/gであり、全細孔容積に対する細孔径20nm以上100nm以下の範囲での細孔容積の比は0.271であり、全細孔比表面積は14.43m2/gであった。
吸着試験後の模擬汚染海水中のストロンチウム濃度は0.273重量ppmであった。これより、ストロンチウムの除去率は94.6%であった。また、セシウムの濃度は1.0重量ppmであった。これより、セシウムの除去率は0%であった。
本実施例の層状マンガン酸化物成形体が、海水成分共存下で優れたストロンチウム除去性能を示すことが確認できた。
実施例4
ゾル濃度30重量%及びゾル中のシリカ粒子の平均粒子径0.01μmのシリカゾル(商品名:スノーテックス40、日産化学工業製)を使用し、製造例1で得られたカリウム型層状マンガン酸化物、シリカゾル、水、CMCを以下の割合となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で層状マンガン酸化物成形体を得た。
ゾル濃度30重量%及びゾル中のシリカ粒子の平均粒子径0.01μmのシリカゾル(商品名:スノーテックス40、日産化学工業製)を使用し、製造例1で得られたカリウム型層状マンガン酸化物、シリカゾル、水、CMCを以下の割合となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で層状マンガン酸化物成形体を得た。
カリウム型層状マンガン酸化物:100重量部
シリカゾル中のシリカ:16重量部
水:32重量部
CMC:5重量部
得られた層状マンガン酸化物成形体のSi/Mnモル比は0.31であり、成形体のメジアン径は748μmであり、かさ密度は0.99g/mLであり、攪拌摩耗度は7.1重量%であった。なお、攪拌摩耗度の測定前後における層状マンガン酸化物成形体の形状変化はなかった。
シリカゾル中のシリカ:16重量部
水:32重量部
CMC:5重量部
得られた層状マンガン酸化物成形体のSi/Mnモル比は0.31であり、成形体のメジアン径は748μmであり、かさ密度は0.99g/mLであり、攪拌摩耗度は7.1重量%であった。なお、攪拌摩耗度の測定前後における層状マンガン酸化物成形体の形状変化はなかった。
得られた層状マンガン酸化物成形体の全細孔容積は0.42mL/gであり、全細孔容積に対する細孔径20nm以上100nm以下の範囲での細孔容積の比は0.268であり、全細孔比表面積は10.21m2/gであった。
吸着試験後の模擬汚染海水中のストロンチウム濃度は0.321重量ppmであった。これより、ストロンチウムの除去率は94.0%であった。また、セシウムの濃度は1.0重量ppmであった。これより、セシウムの除去率は0%であった。
本実施例の層状マンガン酸化物成形体が、海水成分共存下で優れたストロンチウム除去性能を示すことが確認できた。
比較例1
製造例2で得られたカリウム型層状マンガン酸化物(50μm以下の粒子が体積基準で74%)、無機結合剤としてのシリカゾルに、ゾル濃度30重量%及びゾル中のシリカ粒子の平均粒子径0.045μmのシリカゾル(商品名:スノーテックス50−T、日産化学工業製)を使用し、水、CMCを以下の割合となるように混合し、0.3〜1.0mmで分級した以外は実施例1と同様の方法で層状マンガン酸化物成形体(成形体に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は50μm以下の粒子が体積基準で74%)を得た。
製造例2で得られたカリウム型層状マンガン酸化物(50μm以下の粒子が体積基準で74%)、無機結合剤としてのシリカゾルに、ゾル濃度30重量%及びゾル中のシリカ粒子の平均粒子径0.045μmのシリカゾル(商品名:スノーテックス50−T、日産化学工業製)を使用し、水、CMCを以下の割合となるように混合し、0.3〜1.0mmで分級した以外は実施例1と同様の方法で層状マンガン酸化物成形体(成形体に含まれるカリウム型層状マンガン酸化物は50μm以下の粒子が体積基準で74%)を得た。
カリウム型層状マンガン酸化物:100重量部
シリカゾル中のシリカ:16重量部
水:36重量部
CMC:5重量部
得られた層状マンガン酸化物成形体のSi/Mnモル比は0.31であり、成形体のメジアン径は812μmであり、かさ密度は0.97g/mLであり、攪拌摩耗度は7.3重量%であった。なお、攪拌摩耗度の測定前後における層状マンガン酸化物成形体の形状変化はなかった。
シリカゾル中のシリカ:16重量部
水:36重量部
CMC:5重量部
得られた層状マンガン酸化物成形体のSi/Mnモル比は0.31であり、成形体のメジアン径は812μmであり、かさ密度は0.97g/mLであり、攪拌摩耗度は7.3重量%であった。なお、攪拌摩耗度の測定前後における層状マンガン酸化物成形体の形状変化はなかった。
得られた層状マンガン酸化物成形体の全細孔容積は0.43mL/gであり、全細孔容積に対する細孔径20nm以上100nm以下の範囲での細孔容積の比は0.424であり、全細孔比表面積は16.17m2/gであった。
吸着試験後の模擬汚染海水中のストロンチウム濃度は1.294重量ppmであった。これより、ストロンチウムの除去率は71.3%であった。また、セシウムの濃度は1.0重量ppmであった。これより、セシウムの除去率は0%であった。
本比較例で、粗大な粒子を含む層状マンガン酸化物を用いた層状マンガン酸化物成形体は、保形性は良いが、海水成分共存下でのストロンチウム除去性能が劣ることが確認できた。
比較例2
製造例1で得られた層状マンガン酸化物を金型に入れ、500kg/cm2の圧力となるようにプレス成型し、0.3〜0.6mmに分級して層状マンガン酸化物成形体を得た。
製造例1で得られた層状マンガン酸化物を金型に入れ、500kg/cm2の圧力となるようにプレス成型し、0.3〜0.6mmに分級して層状マンガン酸化物成形体を得た。
得られた層状マンガン酸化物成形体のSi/Mnモル比は0.0であり、成形体のメジアン径は771μmであり、かさ密度は1.01g/mLであり、攪拌摩耗度は31.9重量%であった。
得られた層状マンガン酸化物成形体の全細孔容積は0.47mL/gであり、全細孔容積に対する細孔径20nm以上100nm以下の範囲での細孔容積の比は0.067であり、全細孔比表面積は4.89m2/gであった。
得られた層状マンガン酸化物成形体の水銀圧入法試験により得られた細孔径分布を図5に示す。
吸着試験後の模擬汚染海水中のストロンチウム濃度は0.050重量ppmであった。これより、ストロンチウムの除去率は98.9%であった。また、セシウムの濃度は1.0重量ppmであった。これより、セシウムの除去率は0%であった。
本比較例の層状マンガン酸化物成形体は、海水成分共存下で優れたストロンチウム除去性能を示すが、保形性に乏しいことが確認できた。
本発明の層状マンガン酸化物成形体は、特に被処理水溶液を大きな流速、かつ大量に流す条件下でも、ストロンチウム吸着剤として使用することができる。得られた層状マンガン酸化物成形体(ストロンチウム吸着剤)は、カラム充填時及び被処理液の通水時において成形体からの脱落物によるカラム性能の低下を抑制でき、なおかつ、海水、地下水に共存するストロンチウムなどの有害イオンを効率よく処理できる。
Claims (14)
- Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物Aと、層状結晶構造を有し、50μm以下の粒子が体積基準で90%以上であり、層間にカリウムイオンが存在するカリウム型層状マンガン酸化物を含み、攪拌摩耗度が15重量%以下であることを特徴とする層状マンガン酸化物成形体。
- 前記Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素のモル比が、マンガンに対して0.1以上0.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の層状マンガン酸化物成形体。
- 全細孔容積が0.10mL/g以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の層状マンガン酸化物成形体。
- 全細孔容積に対する細孔径20nm以上100nm以下の範囲での細孔容積の比が0.10以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の層状マンガン酸化物成形体。
- 全細孔比表面積が5.0m2/g以上40.0m2/g以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の層状マンガン酸化物成形体。
- 成形体のメジアン径が300μm以上2000μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の層状マンガン酸化物成形体。
- 前記カリウム型層状マンガン酸化物の層間距離が6.50Å以上7.10Å以下であり、CuKαを線源とする粉末X線回折で、2θ=13.05±0.57°、2θ=25.00±1.00°及び2θ=59.80±1.00°に回折ピークを有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の層状マンガン酸化物成形体。
- 前記カリウム型層状マンガン酸化物中のマンガンに対するカリウムのモル比が0.1以上0.5以下であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の層状マンガン酸化物成形体。
- Si、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素の酸化物Aのゾル、50μm以下の粒子が体積基準で90%以上であるカリウム型層状マンガン酸化物及び水を混合して混合物を得る混合工程と、該混合物を成形して成形体を得る成形工程と、該成形体を焼成する焼成工程を含むことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の層状マンガン酸化物成形体の製造方法。
- 前記ゾル中の酸化物粒子の平均粒子径が3nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項9に記載の層状マンガン酸化物成形体の製造方法。
- 前記混合工程において、前記ゾル中のSi、Al、Zr、Mgの群から選ばれる一つ以上の元素のモル比が、マンガンに対して0.1以上0.5以下となるように混合することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の層状マンガン酸化物成形体の製造方法。
- 前記混合工程において、カリウム型層状マンガン酸化物100重量部に対し、水15重量部以上55重量部以下となるように混合することを特徴とする請求項9〜請求項11のいずれか一項に記載の層状マンガン酸化物成形体の製造方法。
- 前記焼成工程における焼成温度が400℃以上600℃以下であることを特徴とする請求項9〜請求項12のいずれか一項に記載の層状マンガン酸化物成形体の製造方法。
- 請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の層状マンガン酸化物成形体を含むことを特徴とするストロンチウム吸着剤。
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