JP2020139213A - マグネトロンスパッタリング装置用のカソードユニットおよび成膜方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ターゲット表面への漏洩磁場の作用領域を自在に変更できて、スパッタ面をその略全面に亘って均等に侵食できるようにしたマグネトロンスパッタリング装置用のカソードユニット及び成膜方法を提供する。【解決手段】ターゲットTgのスパッタ面41と背向する側に配置されて、ターゲットのスパッタ面側に漏洩磁場を作用させる磁石ユニットMuを備える本発明のマグネトロンスパッタリング装置Sm用のカソードユニットCUは、磁石ユニットが、ターゲットと同等以上の領域に設けられる、磁心81にコイル82を巻回してなる電磁石8と、各電磁石のコイルに対して夫々通電可能で且つ通電電流の向きが可変の電源Psとを備える。【選択図】図1
Description
本発明は、ターゲットのスパッタ面と背向する側に配置されて、ターゲットのスパッタ面側に漏洩磁場を作用させる磁石ユニットを備えるマグネトロンスパッタリング装置用のカソードユニット及びこのカソードユニットを有するマグネトロンスパッタリング装置を利用した成膜方法に関する。
半導体製造装置やフラットパネルディスプレイの製造工程においては、矩形の輪郭を持つガラス基板や円形の輪郭を持つシリコンウエハなどの基板表面に所定の薄膜を成膜する工程があり、このような成膜工程には、マグネトロン方式のスパッタリング装置が広く利用されている。このものは、真空チャンバを備え、真空チャンバには、この真空チャンバ内にセットされるガラス基板に対向させてカソードユニットが備えられている。カソードユニットは、通常、基板に対応する輪郭を持つこの基板より一回り大きい面積のターゲットと、ターゲットのスパッタ面と背向する側に配置されてスパッタ面側に漏洩磁場を作用させる磁石ユニットとで構成されている。
例えば、矩形のガラス基板の成膜に利用される磁石ユニットとしては、ターゲットに平行に設置される板状のヨークを備え、このヨークのターゲット側の主面に、棒状の中央磁石とこの中央磁石の周囲を所定間隔で囲う周辺磁石とを固定したものが利用されている(例えば、特許文献1参照)。この場合、中央磁石の同磁化に換算したときの体積を各周辺磁石の同磁化に換算したときの体積の和と同等になるように設定され、未使用時のターゲットのスパッタ面から中央磁石及び周辺磁石の先端までの距離(TM距離)が所定値になるように磁石ユニットが配置される。このような磁石ユニットを用いると、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が中央磁石の延在方向に沿ってのびてレーストラック状に閉じるようにターゲット表面から漏洩する磁場が作用する。
上記カソードユニットをスパッタリング装置に取り付けて所定の薄膜を成膜する場合、真空雰囲気の真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、スパッタ電源からターゲットに負の電位を持つ直流電力や交流電力を投入する。すると、真空チャンバ内でスパッタ面前方の空間に、レーストラック状の線に沿ってプラズマが発生し、プラズマで電離されたスパッタガスのイオンでターゲットがスパッタリングされ、ターゲットから所定の余弦則に従って飛散するスパッタ粒子が基板表面に付着、堆積して成膜される。このとき、ターゲットのスパッタ面は、プラズマの形状が転写されるかの如く、侵食されていく。
ここで、スパッタリングの進行に伴ってスパッタ面をその略全面に亘って均等に侵食させるために、中央磁石の長手方向に直交する方向におけるヨークの幅をターゲットの幅より短く設定し、スパッタリング中、磁石ユニットを直交方向に所定速度で往復動させることが一般である。然し、これでは、磁石ユニットを移動させたときにプラズマが揺らぎ、これに起因して異常放電(アーク放電)を誘発し、良好な成膜が阻害される虞がある。また、上記従来例の磁石ユニットは、一旦組み付けてスパッタリング装置の所定位置に設置すると、もはやターゲット表面への漏洩磁場の作用領域(ひいては、発生されるプラズマの形状)を自在に変更することができないという問題がある。
本発明は、以上の点に鑑み、ターゲット表面への漏洩磁場の作用領域を自在に変更できて、スパッタ面をその略全面に亘って均等に侵食できるようにしたマグネトロンスパッタリング装置用のカソードユニット及び成膜方法を提供することをその課題とするものである。
上記課題を解決するために、ターゲットのスパッタ面と背向する側に配置されて、ターゲットのスパッタ面側に漏洩磁場を作用させる磁石ユニットを備える本発明のマグネトロンスパッタリング装置用のカソードユニットは、磁石ユニットが、ターゲットと同等以上の領域に設けられる、磁心にコイルを巻回してなる電磁石の複数個と、各電磁石のコイルに対して夫々通電可能で且つ通電電流の向きが可変の電源とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、ターゲットと同等以上の領域に設けられる各電磁石の一部で構成されるものを第1電磁石群、他の一部で構成されるものを第2電磁石群とし、電源から第1電磁石群の各電磁石に正方向の電流を通電すると共に、第2電磁石群の各電磁石に逆方向の電流を通電するだけで、ターゲットのスパッタ面側に釣り合った閉ループの漏洩磁場を局所的に作用させることができる。そして、第1電磁石群及び第2電磁石群を夫々構成する電磁石の数や位置を適宜選択すれば、ターゲット表面への漏洩磁場の作用領域が変更される。
従って、本発明のカソードユニットは、円形や矩形などターゲットの輪郭に依存することなく、利用することができ、しかも、スパッタ面内にて漏洩磁場を作用させる領域を連続してまたは間欠的にシフトさせれば、スパッタ面をその略全面に亘って均等に侵食することができる。このとき、上記従来例のように磁石ユニット自体を移動させるものではないため、プラズマの揺らぎで異常放電(アーク放電)を誘発するといった不具合の発生も抑制できる。
本発明においては、前記各電磁石の磁心は、同一径を持つ円柱状のものであり、各磁心が前記領域全体に亘ってX軸方向及びY軸方向に等間隔で列設されていることが好ましい。これによれば、スパッタ面をその略全面に亘って確実に均等に侵食する構成が実現でき、有利である。
また、上記課題を解決するために、上記カソードユニットを備えるスパッタリング装置にてターゲットをスパッタリングして基板表面に所定の薄膜を成膜する本発明の成膜方法は、前記領域に設けられる各電磁石の一部で構成されるものを第1電磁石群、他の一部で構成されるものを第2電磁石群とし、電源から第1電磁石群の各電磁石に正方向の電流を通電すると共に第2電磁石群の各電磁石に逆方向の電流を通電して、ターゲットのスパッタ面側に釣り合った閉ループの漏洩磁場を局所的に作用させ、ターゲットをスパッタリングする間、第1電磁石群及び第2電磁石群の少なくとも一方を構成する電磁石を変更して、漏洩磁場が局所的に作用する領域をシフトさせる工程を含むことを特徴とする。
以下、図面を参照して、ガラス基板などの基板Swに対して所定の薄膜を成膜するための本発明のマグネトロンスパッタリング装置用のカソードユニットの実施形態を説明する。以下において、基板Swは、その搬送方向に長手の長方形の輪郭を持つものとし、「上」、「下」といった方向を示す用語は、スパッタリング装置の設置姿勢を示す図1を基準にする。
図1を参照して、Smは、本実施形態のカソードユニットCUを備えるマグネトロンスパッタリング装置であり、真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1には、特に図示して説明しないが、ターボ分子ポンプやロータリーポンプで構成される真空ポンプユニットからの排気管が接続され、真空チャンバ1内を所定圧力まで真空引きできるようになっている。真空チャンバ1にはまた、ガス導入部2が設けられ、ガス導入部2には、アルゴン等の希ガスや必要に応じて酸素等の反応ガス(スパッタガス)を導入するガス導入管21が接続されている。そして、ガス導入管21に介設したマスフローコントローラ22により流量制御されたスパッタガスを真空チャンバ1内に導入できるようになっている。真空チャンバ1の上部空間には基板搬送手段3が設けられている。この基板搬送手段3は、基板Swが夫々セットされるキャリア31を有し、図外の駆動手段を間欠駆動させて、後述するターゲットと対向する位置に各基板Swを(図1中、左側から右側に向けて)順次搬送できるようにしている。なお、基板搬送手段3自体は公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。そして、真空チャンバ1の下部空間に、本実施形態のカソードユニットCUが設けられている。
カソードユニットCUは、基板Swに対応する輪郭を持つこの基板Swより一回り大きい面積のターゲットTgと、ターゲットTgの下方(ターゲットTg上面のスパッタ面41と背向する側)に配置されて、スパッタ面41側に漏洩磁場を作用させる磁石ユニットMuとを備える。ターゲットTgとしては、Al、Al合金やTiなどの基板Sw下面に成膜しようとする薄膜の組成に応じて選択される。ターゲットTgの下面にはバッキングプレート42が接合され、ターゲットTgのスパッタリング時、バッキングプレート42に冷媒を循環させてターゲットTgを冷却できるようにしている。そして、ターゲットTgは、そのスパッタ面41が基板Swに対向する姿勢で絶縁板43を介して真空チャンバ1に設けられる。
ターゲットTgには、直流電源や交流電源などのスパッタ電源5からの出力が接続され、ターゲット種に応じて、ターゲットTgに対して負の電位を持つ直流電力や所定周波数の交流電力が投入できるようになっている。また、真空チャンバ1には、ターゲットTgの周囲を囲うようにして環状のシールド板6が設けられている。シールド板6は、金属製のものであり、アース接地されている。そして、シールド板6がターゲットTgのスパッタリング時、アノードとして機能するようになっている。
図2(a)及び図2(b)も参照して、磁石ユニットMuは、ターゲットTgと同等以上の面積を有してスパッタ面41と平行に設置される板状の支持体7を備える。支持体7には、磁心81にコイル82を所定の巻数で巻回してなる電磁石8の複数個が設けられている。この場合、スパッタ面41(支持体7)内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向とし、各電磁石8の磁心81は、同一径を持つ円柱状のものであり、各磁心81が支持体7の全域に亘ってX軸方向及びY軸方向に等間隔で列設されている。
各電磁石8のコイル82の両自由端は、真空チャンバ1外に設けられる、所定電流値の電流が夫々通電可能で且つ通電電流の向きが可変の直流電源Psに夫々接続されている。そして、各電磁石8の一部で構成されるものを第1電磁石群Mg1、他の一部で構成されるものを第2電磁石群Mg2とし、直流電源Psから、第1電磁石群Mg1を構成する各電磁石8のコイル82に正方向の電流を夫々通電すると共に、第2電磁石群Mg2を構成する各電磁石8のコイル82に逆方向の電流を通電して、ターゲットTgのスパッタ面41側に釣り合った閉ループの漏洩磁場Mfを局所的に作用させることができるようにしている。このような直流電源Psとしては、直流電源回路やスイッチングトランジスタ等を備える公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明は省略する。
また、マグネトロンスパッタリング装置Smは、特に図示して説明しないが、コンピューター、メモリやシーケンサ等を備える制御ユニットを備え、制御ユニットは、例えば、スパッタ電源5、直流電源Ps、マスフローコントローラ22や真空ポンプユニットの作動を統括制御するようになっている。以下に、図面を参照しつつ、上記マグネトロンスパッタリング装置Smによる成膜方法を説明する。
基板Swをキャリア31にセットし、基板搬送手段3によってターゲットTgと対向した位置に基板Swを移送し、真空ポンプユニットにより真空チャンバ1内を真空排気する。このとき、制御ユニットは、直流電源Psを適宜制御し、例えば、図2(a)中、●で示すように、X軸方向両端より2列目及び3列目の各電磁石8(但し、Y軸方向両端に位置する電磁石を除く)を第1電磁石群Mg1とし、各電磁石8のコイル82に正方向の所定電流を通電する。これに併せて、図2(a)中、ハッチング付きの〇で示すように、X軸方向両端と、4列目の各電磁石8と、上記除かれたY軸方向両端に位置する電磁石8とを第2電磁石群Mg2とし、各電磁石8のコイル82に逆方向の所定電流を通電する。これにより、X軸方向で互いに隣接する4列の各電磁石8によって、各電磁石8のコイル82への通電電流を適宜制御することで、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線がY軸方向にのびてレーストラック状に閉じるようにスパッタ面41から漏洩する漏洩磁場MfをターゲットのX軸方向両側に作用させる。この場合、各電磁石8のコイル82への通電電流の電流値を適宜調整して局所的に磁場強度を変化させることができ、一つのレーストラックにおけるプラズマ強度が略均一になるようにしてもよい。
次に、真空チャンバ1が所定圧力(例えば、10−5Pa)まで真空引きされると、マスフローコントローラ22を適宜制御して流量制御されたスパッタガスを真空チャンバ1内に導入し、スパッタ電源5によりターゲットTgに対し例えば負の電位を持つ所定電力を投入する。すると、真空チャンバ1内でスパッタ面41前方の空間に、レーストラック状の線に沿って2個のプラズマが発生し、プラズマで電離されたスパッタガスのイオンでターゲットTgがスパッタリングされ、ターゲットTgから所定の余弦則に従って飛散するスパッタ粒子が基板Sw表面に付着、堆積して成膜される。
ターゲットTgをスパッタリングする間、間欠的にまたは連続して、第1電磁石群Mg1と第2電磁石群Mg2との構成が変化しないように、電流を通電する各電磁石8を(電流の向きも適宜変えて)1列ずつX軸方向内方へと変化させていくと、図2(b)に示すように、ターゲットTgのスパッタ面41の中央領域にて、X軸方向で互いに隣接する4列の各電磁石8によって単一のレーストラック状の漏洩磁場Mfが作用して単一のプラズマが発生する。そして、図2(b)の状態になると、電流を通電する各電磁石を(電流の向きも適宜変えて)1列ずつX軸方向外方へと変化させ、図2(a)の状態とする。以降、ターゲットTgをスパッタリングする間、スパッタ面41内にて漏洩磁場Mfを作用させる領域を連続してまたは間欠的に切り換える操作が繰り返される。
以上の実施形態によれば、スパッタ面41内にて漏洩磁場Mfを作用させる領域を連続または間欠的にシフトできるため、スパッタ面41をその略全面に亘って均等に侵食することができる。このとき、上記従来例のように磁石ユニット自体を移動させるものではないため、プラズマの揺らぎで異常放電(アーク放電)を誘発するといった不具合の発生も抑制できる。この場合、円形や矩形などターゲットTgの輪郭に応じて、漏洩磁場Mfを作用させる領域を適宜形成できるため、ターゲット形状に依存することなく、本実施形態の磁石ユニットMuは利用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、X軸方向で互いに隣接する4列の各電磁石8によって作用する漏洩磁場MfをX軸方向に沿って変化させるものを例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、X軸方向で互いに隣接する4列の各電磁石8によって作用する漏洩磁場をスパッタ面41中央に作用させてY軸方向に長手のレーストラック状のプラズマPmを発生させ、ターゲットTgの中心を回転中心としてレーストラック状のプラズマPmが回転するように電流を通電する各電磁石8を(電流の向きも適宜変えながら)変化させるようにしてもよい。この場合、ターゲットTgが円形であれば、その全面に亘って略均等にターゲットTgのスパッタ面41を侵食できるが、図3に示すように、ターゲットTgが矩形のとき、ターゲットTgの四隅に、スパッタ面41が侵食されない領域が生じ得る。このような場合、この領域に対向する各電磁石8に適宜通電して釣り合った閉ループの漏洩磁場Mfを局所的にさせれば、侵食領域とすることができる。
また、上記実施形態では、同一径を持つ円柱状の磁心81にコイル82を所定の巻数で巻回してなる電磁石8の複数個を支持体7の全域に亘ってX軸方向及びY軸方向に等間隔で列設したものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、磁心81の輪郭は円形に限られるものではなく、また、それらの配列もターゲットTgの輪郭に応じて適宜変更でき、このとき、必ずしも規則正しく配列されている必要はない。
CU…カソードユニット、Mg1…第1電磁石群、Mg2…第2電磁石群、Mu…磁石ユニット、Ps…直流電源、Sm…マグネトロンスパッタリング装置、Sw…基板、Tg…ターゲット、41…スパッタ面、8…電磁石、81…磁心、82…コイル。
Claims (3)
- ターゲットのスパッタ面と背向する側に配置されて、ターゲットのスパッタ面側に漏洩磁場を作用させる磁石ユニットを備えるマグネトロンスパッタリング装置用のカソードユニットであって、
磁石ユニットが、ターゲットと同等以上の領域に設けられる、磁心にコイルを巻回してなる電磁石の複数個と、各電磁石のコイルに対して夫々通電可能で且つ通電電流の向きが可変の電源とを備えることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置用のカソードユニット。 - 前記スパッタ面内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向とし、
前記各電磁石の磁心は、同一径を持つ円柱状のものであり、各磁心が前記領域全体に亘ってX軸方向及びY軸方向に等間隔で列設されていることを特徴とする請求項1記載のマグネトロンスパッタリング装置用のカソードユニット。 - 請求項1または請求項2記載のカソードユニットを備えるスパッタリング装置にてターゲットをスパッタリングして基板表面に所定の薄膜を成膜する成膜方法において、
前記領域に設けられる各電磁石の一部で構成されるものを第1電磁石群、他の一部で構成されるものを第2電磁石群とし、電源から第1電磁石群の各電磁石に正方向の電流を通電すると共に第2電磁石群の各電磁石に逆方向の電流を通電して、ターゲットのスパッタ面側に釣り合った閉ループの漏洩磁場を局所的に作用させ、
ターゲットをスパッタリングする間、第1電磁石群及び第2電磁石群の少なくとも一方を構成する電磁石を変更して、漏洩磁場が局所的に作用する領域をシフトさせる工程を含むことを特徴とする成膜方法。
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