JPH05117851A - スパツタリング装置 - Google Patents

スパツタリング装置

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JPH05117851A
JPH05117851A JP27097591A JP27097591A JPH05117851A JP H05117851 A JPH05117851 A JP H05117851A JP 27097591 A JP27097591 A JP 27097591A JP 27097591 A JP27097591 A JP 27097591A JP H05117851 A JPH05117851 A JP H05117851A
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Kiyoushiyoku Kin
京植 金
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直吉 細川
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 スパッタリング装置で、ターゲットの不均一
イオン衝撃による問題を解決し、比較的に大型の矩形基
板に、並進移送方式ではなく静止状態で薄膜形成を行う
ことができる電極構造を有し、小型化を達成する。特に
矩形ターゲットのエッジ部と中心部との間の不均一性消
耗による不経済性、基板における薄膜の不均質性、パー
ティクルの発生の問題を解決する。 【構成】 マグネトロンカソード電極に、磁極の配置が
互いに反対である第1及び第2の2種類の磁石ユニット
を交互に隣接させて配置した磁石組立体を、往復運動を
行う如く移動自在に設け、ターゲットの面に第1及び第
2の磁石ユニットによって、ドリフト電子の運動方向が
反対である2種類の環状軌跡を交互に隣接して形成す
る。更に、各磁石ユニットで形成される矩形環状の電子
ドリフト運動軌跡の矩形部の形成位置が相互にずれるよ
うに、磁石ユニットの長辺部の長さを相互に異ならせる
又は磁石ユニットの位置をずらすように構成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はスパッタリング装置に係
り、特に、真空中にて薄膜を作製するためのスパッタリ
ング電極の構造であり、比較的に広い面積の基板面に均
一の厚みで均質な薄膜を作製すると共に、使用されるタ
ーゲット面の全面を有効に消費するスパッタリング電極
を備えたスパッタリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のスパッタリング装置では、薄膜作
製に用いられる各種方式の電極構造が提案されている。
その中でも、工業的には、マグネトロン方式の電極構造
が最も多く使用されている。その理由は、膜形成速度が
大きいからである。マグネトロン方式の電極について
も、非常に多様な形態が存在する。これらの電極は例え
ば「ティン・フィルム・プロセス(Thin Film Process
)」(アカデミック・プレス出版、1978年、J.L.V
ossenとW.Kernによる編集)の75頁乃至173頁、又
は「薄膜ハンドブック」(1983年に出版、日本学術
振興会薄膜第131委員会編集)の186頁乃至189
頁に記述されている。これらのマグネトロン方式の電極
の中でも、現在では、特に平面形状を有するターゲット
を備えた平板マグネトロン(Planar Magnetron)カソー
ド電極が、工業的に最も有用である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来、平板マグネトロ
ンカソード電極のうち矩形の形状を有したものを用いた
スパッタリング装置で、大面積の基板の上に薄膜を形成
する場合には、次の問題が提起される。 (1)装置の巨大化 (2)ターゲットの不均一消耗による不経済性 (3)ターゲット面での不均一イオン衝撃とプラズマ空
間密度分布の不均一性とに起因する基板内スパッタリン
グ膜の不均質性 (4)ターゲット面での不均一イオン衝撃に伴うパーテ
ィクルの発生 以下に、上記の各問題を分説する。
【0004】(1)装置の巨大化の問題 スパッタリング装置の中で、基板とターゲットの相対的
位置関係については、例えば「ドライプロセス応用技
術」(小林春洋、岡田隆、細川直吉著、日刊工業新聞出
版、1984年)の63頁及び64頁に記述されてい
る。通常、大面積基板の上に薄膜を形成するときには、
基板並進方式が採用される。この基板並進方式は、矩形
ターゲットを配置したスパッタリング装置の内部で、タ
ーゲットに並行な面に沿って基板を搬送しながら、スパ
ッタリングを行い、薄膜を作製する方式である。例えば
特公昭63−65754号公報に、矩形マグネトロンカ
ソード電極を組み込んだ基板並列方式のスパッタリング
装置の構成例が開示される。かかる基板並進方式のスパ
ッタリング装置で、基板の搬送方向は、均一な膜厚分を
得るために、矩形ターゲットの短辺に平行な方向に選択
される。成膜されながら移送される基板について、一般
的に、基板の寸法がターゲットの短辺の長さよりも大き
いとき、基板上に均一な厚みの薄膜を形成するためには
当該基板の移送距離を充分に大きくとる必要がある。こ
の要求と、加えて、生産性を上げるという要求とから、
大型基板用の基板並進方式スパッタリング装置では、そ
の規模が巨大になる傾向がある。例えば、本出願人が製
品化したILC−3960Sという型名の、幅700m
m、高さ680mmのガラス基板上に±10%以内の均
一性の厚みの薄膜を作製するスパッタリング装置では、
短辺の長さ250mm、長辺の長さ864mmの平板タ
ーゲットを有するマグネトロンカソード電極と、幅95
0mm、高さ830mmのトレイを組み合わせて成膜を
行っている。更にスパッタリング室を連続的に真空状態
に保持・管理しながら、未処理基板を大気側から挿入
し、膜作製処理済みの基板を大気側に押し出す機能を持
たせるためのロードロック機構、及び膜作製前の基板を
加熱する機能を持たせるための加熱ゾーン、ほぼ連続し
てトレイを搬送するための緩衝用空間などの必要性か
ら、装置全体の長さは10m〜20mにも達する。
【0005】(2)ターゲットの不均一消耗による不経
済性の問題 マグネトロンカソード電極では、前述の各文献に記述さ
れるように、ターゲット表面が、不均一なイオン衝撃を
受けるため、不均一に消耗する。これは、マグネトロン
カソード電極においてターゲット表面近傍に形成される
本質的に不均一な磁界を利用することに起因して、発生
する。このようなターゲットの不均一消耗に伴う不経済
性と膜厚分布を改良するため、従来、例えば円筒同軸マ
グネトロンカソード電極と円形平板マグネトロンカソー
ド電極では、カソード電極内に設けられた磁石組立体の
位置を時間的に変化させる装置構成を設けるようにして
いる(特公昭55−27627号、特開平3−6372
号等)。この装置構成は、いずれも回転対称の構造を有
する電極に固有な技術である。従ってこの装置構成によ
れば、特に円形平板マグネトロンカソード電極では、磁
石組立体を或る回転軸の周りに回転させることによりタ
ーゲットの消耗をより均一化することができる。反面、
かかる装置構成は、平板状の矩形ターゲットを均一に消
耗させる手段としては、有効な技術ではない。
【0006】(3)基板におけるスパッタリング膜の不
均質性の問題 マグネトロンカソード電極のターゲット面におけるイオ
ン衝撃の不均一性は、ターゲット利用の不経済性の他
に、更に基板上に形成される膜質の均質性に影響を与え
る。この影響の例を、前述の特公昭63−65754号
公報に基づいて、矩形マグネトロンカソード電極と基板
並進方式のスパッタリング装置との組み合わせで薄膜作
製を行う場合について、説明する。カソード電極と真空
容器壁の間に電圧を印加して真空中で放電を行い、スパ
ッタリングにより成膜を行うとき、矩形マグネトロンカ
ソード電極の平板状ターゲットの表面上には磁力線の作
る閉じたトンネル経路に沿って電子がドリフト運動を
し、1本の閉じた軌跡を描く。このドリフト電子は、ガ
ス分子と衝突してイオン化するため、ドリフト電子の描
く閉じた軌跡に沿って密度の高いプラズマが形成され、
またドリフト電子の描く軌跡の真下のターゲット表面が
強いイオン衝撃を受けてスパッタリングされる。実際に
は、ドリフト運動する電子は極めて多数であるため、そ
の軌跡はある程度の幅を有する閉じた帯状のもの(道路
状又は溝状の形態を有するもの)となる。従って、この
帯に沿って形成されるプラズマも同様であり、更にター
ゲット表面上にスパッタリングされる領域も幅を有する
帯形状の領域となる。並進移送されるトレイに設置され
た基板は成膜のためターゲットの前面空間を通過する。
それに伴って、基板上の特定の箇所は、矩形ターゲット
の長辺に平行な2本の前記スパッタリング帯領域の上部
の、プラズマ密度の高い空間を横切って通過する。周知
の如く、スパッタリングされた原子はターゲット表面に
垂直な方向のみならず様々な方向に放出される。従って
前記の基板上の特定箇所には、スパッタリング帯領域の
上部の前記空間に達するかなり以前からスパッタリング
粒子が堆積し始め、最初のスパッタリング帯領域の上部
空間に近づくに従い堆積速度が増加し、その直上で一度
堆積速度が最大値となる。更に、トレイの移送により基
板上の特定箇所の堆積速度は一度減少するが、第2のス
パッタリング帯領域の上部空間に近づくに従い堆積速度
が増加し、スパッタリング帯領域の真上で二度目の堆積
速度最大値になる。それ以降のトレイの移送によって、
基板がターゲットの前面空間から遠ざかるに従い、前記
の基板上の特定箇所における堆積速度は単調に減少して
いく。以上のように、基板面上の特定な固定された箇所
に注目するとき、時間的に、成膜速度が変化する。更
に、時間的に基板表面に堆積するスパッタリング粒子の
入射角度も大きく変化し、また基板表面が接する空間の
プラズマ密度も極めて大きく変化する。上記の結果、基
板上に最終的に作製された薄膜は、基板上の特定な箇所
について注目すると、膜の厚み方向で物理的特性が異な
る場合が発生することになる。
【0007】(4)パーティクルの発生の問題 マグネトロンカソード電極のターゲット面におけるイオ
ン衝撃の不均一性は更に成膜最中のパーティクルの発生
の原因になる。前述したように、矩形マグネトロンカソ
ード電極上のターゲット面では、ターゲットの幅に対し
て狭い幅の1本の閉じた帯状の領域がイオン衝撃を受け
てスパッタエッチングされる。ターゲット面上の他の領
域は、スパッタエッチングされないだけでなく、ターゲ
ットから飛出し空間でガス分子と何回も衝突して散乱さ
れたスパッタリング原子が、その上に堆積する。長時間
スパッタリングを継続すると、ターゲット面上のスパッ
タリングされる帯状領域以外には、スパッタ膜が形成さ
れる。ターゲット上に堆積形成されるスパッタ膜は、厚
くなるに従って、その内部応力のために、自然に剥離
し、パーティクルとなる。基板上の薄膜を微細なパター
ンに加工して電子部品として使用するときに、パーティ
クルは良品率を低下する最大の要因の一つと見做されて
いるので、パーティクルの発生が少ないマグネトロンカ
ソード電極の開発が望まれている。
【0008】以上の問題(1)〜(4)に鑑みて、本発
明者らは、先に、これらの問題を解決できる構造を有し
たマグネトロンカソード電極を備えたスパッタリング装
置を特願平3−194298号で提案した。このスパッ
タリング装置では、その1つの実施例として、複数の磁
石ユニットで構成される磁石組立体と、磁石組立体を往
復運動させる移動機構を備えたマグネトロンカソード電
極を示している。複数の磁石ユニットのそれぞれは、中
心磁極と周辺磁極で形成されるその平面形状に対応し
て、電磁界の電子拘束作用に基づき、ターゲットの面上
で、矩形環状の電子ドリフト運動軌跡を生成する。隣り
合う磁石ユニットでは、磁極の配置関係が逆になってい
るので、電子ドリフト運動軌跡における電子の運動方向
は逆になっている。そして、磁石組立体は、移動機構
で、ターゲット面に対して平行に振動させられ、これに
より、基板に形成される膜の堆積速度の均一性を高め且
つターゲットのエッチング領域を広くしている。
【0009】本発明者らが提案した先のスパッタリング
装置については、更に、次のような改良すべき点を有す
る。磁石組立体を構成する複数の磁石ユニットのそれぞ
れが、寸法的に、同じ大きさで且つその中心位置が移動
方向に直交する方向に関し同一位置に存在する場合に、
各磁石ユニットによって生成される矩形環状の電子ドリ
フト運動軌跡の短辺部によるスパッタ量が、その長辺部
によるスパッタ量よりも多くなる。何故なら、各環状電
子ドリフト運動軌跡の中心位置を結んで形成される中心
線の方向を往復運動の方向に設定し、短辺部は往復運動
の方向に対し平行に設定されるので、短辺部に対応する
ターゲット領域は、長辺部に対応するターゲット領域よ
りも実質的に高いプラズマ密度でスパッタエッチングさ
れることになるからである。こうして、短辺部でスパッ
タエッチングされるターゲット箇所の或る一点での単位
時間当たりのスパッタ量が、長辺部でスパッタエッチン
グされるターゲット箇所の或る一点での単位時間当たり
のスパッタ量よりも多くなる。換言すれば、往復運動の
方向に直角な方向のスパッタ量分布は、長辺方向で定義
される中心位置から短辺部の近傍まで均一にスパッタエ
ッチングされるのに対し、電子ドリフト運動軌跡の短辺
部ではスパッタエッチング量が大幅に増加する。これを
ターゲットの消耗という観点で見ると、前記短辺部に対
応するターゲットのエッジ領域の消耗が、中心領域より
も多く消費する。従って、ターゲットの寿命は、エッジ
部分の消耗の程度で決定され、結果的にターゲットの利
用効率が低下するという不具合が存在する。
【0010】本発明の目的は、本発明者らが先に提案し
た、比較的大型の矩形基板に対し、並進移送方式ではな
く、静止状態で、薄膜形成を行う電極構造を有するスパ
ッタリング装置を更に改良するものであり、特に矩形タ
ーゲットのエッジ部と中心部との間の不均一消耗の問題
を解決したスパッタリング装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係るスパッタリ
ング装置は、上記問題に鑑み、内部を真空状態にする排
気系を備えた真空容器と、真空容器内に位置し、成膜処
理される基板を取付けた基板保持部材と、基板の面に膜
を形成する矩形平面状ターゲットを備えたマグネトロン
カソード電極と、真空容器にガスを流通させて内部圧力
を適切に維持するガス制御系と、マグネトロンカソード
電極に電力を供給する電源系とを含むものであり、マグ
ネトロンカソード電極は、磁極の配置関係が互いに反対
である第1及び第2の2種類の磁石ユニットを交互に隣
接させて複数配置し且つ複数の磁石ユニットの辺部の長
さを互いに異ならせた磁石組立体と、この磁石組立体を
ターゲットに沿って往復運動させる移動機構を備え、複
数の磁石ユニットはそれぞれターゲットの面上に電磁界
の電子拘束作用に基づき矩形環状の電子ドリフト運動軌
跡を作り、これらの複数の電子ドリフト運動軌跡の短辺
部分が互いに重ならないように構成される。前記の構成
において、好ましくは、複数の磁石ユニットは、短辺部
の長さが等しく長辺部が長さが異なる。前述したスパッ
タリング装置と同様な基本構成を有し、更に、マグネト
ロンカソード電極は、同一寸法で且つ磁極の配置関係が
互いに反対である第1及び第2の2種類の磁石ユニット
を交互に隣接させて複数配置し且つ複数の磁石ユニット
の中心位置を互いに移動方向に直交する方向にて異なら
せた磁石組立体と、この磁石組立体を前記ターゲットに
沿って往復運動させる移動機構とを備え、複数の磁石ユ
ニットはそれぞれターゲットの面上に電磁界の電子拘束
作用に基づき同一形状の環状電子ドリフト運動軌跡を作
り、これらの複数の環状電子ドリフト運動軌跡の中心位
置が移動方向に直交する方向にて異なるように構成され
る。前記の各構成において、好ましくは、第1及び第2
の磁石ユニットのそれぞれは、ヨークと、この上に配設
される中心磁石と、ヨークの上であって中心磁石の周囲
に配設される周辺磁石とから構成され、中心磁石と周辺
磁石には、ヨーク側とその反対側に磁極面が設けられ
る。
【0012】
【作用】本発明によるスパッタリング装置では、基本的
な作用として、複数の磁石ユニットを備えた磁石組立体
を、矩形平面状のターゲットを備えたマグネトロンカソ
ード電極にてターゲット面に平行に往復運動を行うよう
に移動自在に設け、電場と各磁石ユニットが形成する磁
場との組み合わせにより、前記ターゲット面における各
磁石ユニットに対応する位置にドリフト電子が形成する
矩形環状の軌跡を生成する。マグネトロンカソード電極
に配設された前記の複数の磁石ユニットは、磁極の配置
構造が反対である2種類の磁石ユニットが用意され、こ
れらの2種類の磁石ユニットが交互に隣接して配設され
る。このように複数の磁石ユニットの磁極の選定とその
配列を適切に決めることにより、磁石組立体全体とし
て、ターゲット面上に複数の矩形環状の電子ドリフト運
動軌跡を効率良く配置でき、これによりターゲット面上
における放電を遍在させることなく、安定に維持させる
ことができる。また移動機構を付加した構造を有するの
で、マグネトロンカソード電極の内部にて、矩形平面状
のターゲットの面に対して、磁石組立体をほぼ平行に振
動させることができ、ターゲットのエッチングされる領
域を均一化することが可能となる。
【0013】更に、本発明によるスパッタリング装置で
は、磁石組立体が往復運動を行うように移動する構成に
基づき各磁石ユニットによる矩形環状の電子ドリフト運
動軌跡の短辺部が運動方向に平行に周期的に移動する場
合に、各磁石ユニットの少なくとも長辺部の寸法等を変
更して、各磁石ユニットによる電子ドリフト運動軌跡の
短辺部が、相互に位置をずらして設定され、それぞれ異
なる適切な位置を周期的に移動するように構成される。
こうして、各電子ドリフト運動軌跡の短辺部に対応する
ターゲット領域のスパッタエッチング量を少なくし、タ
ーゲット全体のスパッタエッチング量を均一化して、タ
ーゲット全体としての利用効率を改善している。
【0014】
【実施例】以下に、添付図面に基づいて本発明の好まし
い実施例を説明する。図1は本発明に係るスパッタリン
グ装置の全体構成を示す図である。図1においてスパッ
タリング装置は、基板トレイ挿入室1と、トレイに装着
された基板の面に対して薄膜作製を行うためのスパッタ
リング室2と、基板トレイ取出し室3とが直列的に連結
されることにより構成される。各室1,2,3は、それ
ぞれ独立に、排気系を有し、真空状態に維持・管理され
る。基板トレイ挿入室1とスパッタリング室2との間に
はゲートバルブ4が配設され、スパッタリング室2と基
板トレイ取出し室3との間にはゲートバルブ5が配設さ
れる。スパッタリング室2は、成膜している間、真空状
態に保持・管理される。また基板トレイ挿入室1と基板
トレイ取出し室3は、それぞれ、リークバルブ6,7に
より大気に開放されたり、排気パイプ8,9を経由して
排気ポンプ(図示せず)で矢印10,11の方向へ排気
される。基板トレイ挿入室1の図中左端は入り口扉12
であり、基板トレイ取出し室3の図中右端は出口扉13
である。
【0015】基板が装着されたトレイ14は、入り口扉
12から基板トレイ挿入室1に収納される。トレイ14
は基板を保持する手段である。この基板は、径が大き
く、比較的に大型の基板である。その後、入り口扉12
とゲートバルブ4を閉じた状態で、排気系を用いて排気
が行われる。基板トレイ挿入室1の内部圧力が充分に低
下した時点でゲートバルブ4が開かれ、トレイ14はレ
ール(図示せず)に案内され、矢印15の方向に搬送さ
れ、スパッタリング室2に送り込まれる。
【0016】スパッタリング室2では、後述される薄膜
作製機構により、トレイ14に装着された基板で且つ静
止状態にある当該基板の表面に対してスパッタリング法
により薄膜が形成される。薄膜形成後、開いたゲートバ
ルブ5を経由して、トレイ14は基板トレイ取出し室3
に送り込まれる。トレイ14が基板トレイ取出し室3に
移送された後に、ゲートバルブ5が閉じられ、且つリー
クバルブ7が開かれ、トレイ14に装着された基板は大
気中に置かれることになる。そして取出し扉13を開
き、トレイ14を取出す。スパッタリング室2では、図
示しないボンベからガス導入管16を経て矢印18aの
方向にガスが導入され、同じく、図示しない排気ポンプ
により排気口17を経て矢印18bの方向に排気され
る。この結果、導入ガス流量と排気ガス流量が均衡した
状態でスパッタリング室2は放電状態に維持され、且つ
スパッタリングを行うのに適した10-3〜10-2Torrの
範囲の予め決められた一定圧力に保たれる。スパッタリ
ング室2内の入り口側には、基板加熱ランプ19が配設
される。基板加熱ランプ19は、必要に応じて配設され
る。この基板加熱ランプ19の熱線輻射により、薄膜を
形成する前段階で、基板の温度を高めることができる。
スパッタリング室2の後段側には、矩形平面状の大型タ
ーゲットを備えるマグネトロンカソード電極20(以
下、電極20という)が絶縁体21を介して配設されて
いる。電極20の上部には、ターゲット組立体22を取
り付けている。図1中ターゲット組立体22の上面がタ
ーゲット面になっている。また電極20には、電源24
と電極電源間給電線25と電源アース間結線26からな
る電源系23が接続され、この構成により電力が供給さ
れる。
【0017】スパッタリング室2で、トレイ14は電極
20に対して静止し、この状態でトレイ14上の基板は
ターゲット組立体22のターゲット面に対面する。基板
の対向表面には、ターゲット組立体22から飛来するス
パッタリング粒子が堆積し、基板上に薄膜が形成され
る。図1における例では、1個のトレイ14と1個の電
極20の組み合わせが示されているが、スパッタリング
室2における電極20は任意の数を設けることができ
る。なお、スパッタリング室2の壁部はアースされてい
る。
【0018】次に、図2及び図3を参照して、電極20
の第1実施例の構造を具体的に詳述する。図2は電極2
0を移動方向に平行な方向に切って示した断面図であ
り、図3は磁石組立体の平面図である。図3において、
磁石組立体の長辺方向の寸法は縮小されている。電極2
0は、電極ハウジング31と、電極ハウジング31内部
にて往復運動するように移動自在に設けられた磁石組立
体32と、前記のターゲット組立体22とから構成され
る。図2において、磁石組立体32を往復運動させる移
動機構の図示は省略される。33は、スパッタリング室
2を形成する容器の一部の壁部を示す。電極20は、壁
部33に形成された開口部34に、前記絶縁体21を介
して取り付けられる。電極20は、そのターゲット組立
体22のターゲット面が真空室側に露出するように、開
口部34に取り付けられる。取付けのための固定具及び
クランプ機構等は図示は省略される。ターゲット組立体
22は、ターゲット板35とターゲット押え治具36と
ターゲット裏板37からなり、図示されない結合具によ
り電極ハウジング31に固定される。電極ハウジング3
1の内部に形成された凹状空間38には、前述の磁石組
立体32が移動自在に設置される。具体的に、凹状空間
38には、中心磁石41と周辺磁石42とヨーク43か
らなる磁石ユニット44が、例えば3個配設される。3
個の磁石ユニットは、図3に示す如く、その平面形状に
おいて短辺部Aの長さは等しく且つ長辺部Bの長さはそ
れぞれ異なるものが配列される。従って、各磁石ユニッ
トの中心位置を結んで形成される、移動方向に平行な線
Lから短辺部のまでの距離(すなわち、長辺部の長さ)
は、各磁石ユニットで異なっている。更に磁石ユニット
44には、正確に述べると、生成される電子ドリフト運
動軌跡の運動の向きが異なる2種類の磁石ユニット(4
4A,44B)が含まれる。磁石ユニットの詳細につい
ては、後で説明される。各磁石ユニット44の間にはシ
ャントスペーサ45が配設される。このように磁石組立
体32は、3個の磁石ユニット44と2個のシャントス
ペーサ45から構成される。このシャントスペーサは、
必ず必要というものではない。なお、図示されていない
が、凹状空間38には、電極ハウジング31の外部から
冷却水を導入し且つ排出してターゲット裏板37に接触
させ、放電を行う際にターゲット組立体22のターゲッ
ト面に発生する熱を、冷却水を媒体として、外部に放出
している。電極ハウジング31とターゲット裏板37と
の間には、Oリング39が配設され、気密性を保ってい
る。また電極31と絶縁体21との間の気密性はOリン
グ40により、絶縁体21と真空容器の壁部33との気
密性はOリング47によりそれぞれ保持される。またタ
ーゲット組立体20の真空側に露出するスパッタすべき
面以外の面が、イオン衝撃されるのは望ましくないの
で、これを防止するため、シールド部材48が、壁部3
3の内面の開口部34の周辺部分に配設される。
【0019】上記の如き構成を有した3個の磁石ユニッ
ト44を含む磁石組立体32が、図2に示す如く、凹状
空間38にて往復運動100を行う。その結果、スパッ
タリング室2においてターゲット板35に対向して静止
した基板14に対して均一な薄膜を作製することができ
る。各磁石ユニットの短辺部は、中心線Lからの距離が
異なり、それぞれ異なる位置に存するためので、ターゲ
ット板35の表面を広範囲に且つ均一にスパッタエッチ
ングすることができる。前記短辺部に対応するターゲッ
ト領域及び長辺部に対応するターゲット領域は均一にス
パッタリングされる。
【0020】磁石組立体32は、前記実施例では、3個
の磁石ユニット44を一組としているが、磁石ユニット
44の個数は3個に限定されず、任意である。また組数
も複数とすることもできる。
【0021】図4に第2実施例を示す。第2実施例で
は、前記第1実施例と同様に各磁石ユニット44の長辺
部の長さを異ならせると共に、更に短辺部の長さも異な
らせている。この実施例によれば、磁石組立体32の移
動位置が、ターゲット押え治具36の設置位置よりも、
電極ハウジング31の凹状空間38の内面に接近するよ
うに構成することができる。これにより、磁石組立体3
2の各磁石ユニット44が、ターゲット板35の表面の
ほとんどの箇所を通過することができ、いっそう均一な
スパッタエッチングを行うことができる。
【0022】次に図5〜図12を参照して磁石組立体3
2内で使用される磁石ユニット44について説明する。
図5と図9は断面図、図6と図10は平面図、図7と図
11は斜視図、図8と図12は矩形環状の電子ドリフト
運動軌跡を示す図である。
【0023】磁石ユニット44は、平面形状で長方形の
形状を有するヨーク43の上面に、長形板状の中心磁石
41とその周囲に配設された矩形リング形状の周辺磁石
42から構成される。図5〜図8で示される磁石ユニッ
トは、前述した磁石ユニット44Aである。磁石ユニッ
ト44Aは、中心磁石41のヨーク側の磁極はS極且つ
その反対側はN極、周辺磁石42のヨーク側の磁極はN
極且つその反対側はS極になるように配置される。その
結果、中心磁石41から周辺磁石42に至る矢印45で
示される磁力線が形成される。図5〜図8で、磁力線は
有限本数で示されているが、実際には無限である。上記
の構成を有する磁石ユニット44Aを備えた電極部分で
は、ターゲット面に中心から出て周辺の入る磁力線が、
所要の幅を有する閉じたトンネル経路を形成する。かか
る状態で、アース電位に対して負の高電位を電極に印加
すると、ターゲット面に垂直な電界と、前記トンネル経
路を形成する磁力線による磁界との組み合わせに基づ
き、電子は、ターゲット面において閉じた前記トンネル
経路に沿って環状のドリフト運動を行う。その結果、低
電圧大電流の放電が発生され、高速でスパッタリング膜
を作製できる。図8は、ターゲット面における電子のド
リフト運動の軌跡を示し、矢印に示される方向で矩形の
環状軌跡46に沿ってドリフト運動を行う。環状軌跡4
6は帯形状又は道路形状で形成される。次に図9〜図1
2に示される磁石ユニットは磁石ユニット44Bであ
り、基本的に図5〜図8で示された磁石ユニットと同じ
構成要素を有する。相違する点は、中心磁石41′と周
辺磁石42′の磁極の配置が、前記の場合と逆になって
いる点である。この結果、図6〜図8に示されるよう
に、磁力線45′の方向が周辺磁石42′から中心磁石
41′に向いた方向に形成される。従ってアース電位に
対して負の高電位を電極に印加すると、前記と同様に電
界と磁界の組み合わせによる作用でターゲット表面に電
子のドリフト運動が形成されるが、この軌跡は、図12
に示される如く前記の場合とは反対方向の環状軌跡とな
り、この環状軌跡46′に沿って電子はドリフト運動を
行う。
【0024】なお図8及び図12において、矩形環状の
電子ドリフト運動軌跡46,46′で短辺部aと長辺部
bが定義される。短辺部aは磁石ユニット44の短辺部
Aに対応し、長辺部bは磁石ユニット44の長辺部Bに
対応している。
【0025】図2及び図3で説明した前記実施例の構成
において、3個の磁石ユニットのうち両側の磁石ユニッ
トを44Aとし、中央の磁石ユニットを44Bとする。
従って第1実施例の磁石組立体32の各磁石ユニット4
4によって形成される電子ドリフト運動軌跡は、図13
に示すように生成される。図13において、電子ドリフ
ト運動軌跡46,46′は、形状は矩形環状であって同
一である。また短辺部aの長さも同じである。しかし、
各環状の運動軌跡の中心位置を結んで形成される中心線
Lから各短辺部までの距離(長辺部の長さ)はそれぞれ
異なっている。これにより電子ドリフト軌道の短辺部が
相互にずれているため、その往復運動において各短辺部
が異なるターゲット領域をスパッタエッチングすること
になり、ターゲット板35の利用効率を高める。なお図
13において、101は環状凹部38の領域を表す輪郭
を示し、100は往復運動を示している。
【0026】上記の如く、磁石組立体を構成する複数の
磁石ユニットに関し、中心磁極と周辺磁極からなる矩形
の磁石ユニットの長辺部の寸法を相互に異ならせること
により、換言すれば、各短辺部の中心線Lからの距離を
異ならせる。これにより、各磁石ユニットで生成される
矩形環状の電子ドリフト運動軌跡に関し、往復運動方向
に平行に周期的に移動する各短辺部のターゲット上の移
動位置をずらし、各短辺部でスパッタエッチングされる
領域が相互に重なり合うのを避けるように構成したた
め、ターゲット材料の利用効率が改善される。
【0027】次に図15に基づいて電子ドリフト運動軌
跡の他の実施例について説明する。図15(A)は、前
述の第2実施例に基づく構成によって形成される電子ド
リフト運動軌跡46,46′を示す。これらの運動軌跡
では、長辺部の長さと短辺部の長さを共に互いに異なら
せている。3つの磁石ユニットを配列してなる磁石組立
体32を往復運動させる構成のものでは、その他に図1
5(C),(D)に示す如き形状を有するように構成し
ていることも可能である。図15(C)の実施例では、
各運動軌跡(a),(b),(c)の短辺部及び長辺部
の長さを異ならせ、且つそれぞれの間隔を広くしてい
る。図15(D)の実施例では、図15(C)の実施例
において運動軌跡(a),(b),(c)の位置を入れ
替え且つ運動軌跡(b),(c)について運動方向を反
転させるように構成している。すなわち、電子ドリフト
運動軌跡の運動方向の組み合わせを維持したまま、各運
動軌跡の短辺部及び長辺部の長さと幅を異なるものと
し、且つその配列の仕方を、前記実施例の如く順序良く
並べるのではなく、任意の順序で並べるように構成して
いる。上記の如く、各磁石ユニットの短辺部と長辺部の
長さを変えることにより、ターゲットの利用効率を更に
高めることができる。
【0028】図15(B)は、6個の電子ドリフト運動
軌跡46,46′を交互に配列し且つそれらの中心点1
02を移動方向に直交する方向に関して交互にずらして
配列している。矩形環状の各電子ドリフト運動軌跡の形
状自体は同一の寸法を有している。この場合にも、各電
子ドリフト運動軌跡の位置が一定でないので、前記の場
合と同様な効果が生じる。
【0029】上記の如く、電子ドリフト運動軌跡に関し
て各種の寸法、配列を考えることができる。これらの電
子ドリフト運動軌跡のそれぞれに対応して磁石ユニット
が設けられる。
【0030】ここで図15(C)で示された前述の電子
ドリフト運動軌跡(a),(b),(c)のそれぞれに
対応するターゲット板35におけるスパッタエッチング
後の断面を図14の(a),(b),(c)に示す。こ
の場合、電子ドリフト運動軌跡(a),(b),(c)
はそれぞれ所定時間停止した状態でスパッタエッチング
を行うものとし、且つ図14で示した断面は短辺部に平
行に切断した面での断面を示している。同様に、図15
(C)で示された前述の電子ドリフト運動軌跡(a),
(b),(c)のそれぞれに対応するターゲット板35
の表面におけるスパッタエッチング領域を図16に示
す。各電子ドリフト運動軌跡(a),(b),(c)
は、図16に示す如くそれぞれ異なる幅を有しているの
で、図14に示すようにその幅に対応してターゲットに
おけるスパッタエッチング量が決定される。運動軌跡
(a)ではスパッタエッチング量は斜線部S1 であり、
運動軌跡(b)ではスパッタエッチング量は斜線部S2
であり、運動軌跡(c)ではスパッタエッチング量は斜
線部S3 である。従って、電子ドリフト運動軌跡
(a),(b),(c)がターゲット面上で移動すれ
ば、運動軌跡(a),(b),(c)によりそれぞれ実
線と破線からなる輪郭線で示される形状が一様なスパッ
タエッチングが行われることになる。図16は、図14
の電子ドリフト軌道領域をターゲット面上方から見た図
である。
【0031】次に、図17〜図20を参照して、本発明
に係るマグネトロンカソード電極の他の実施例を説明す
る。この電極において、電極ハウジング、ターゲット組
立体、スパッタリング室の壁部及びその開口部、気密性
を維持するための複数のOリング、シールド部材等の構
成及び相対的位置関係は、図2に基づいて説明した前記
実施例の電極の場合と同じである。従って、同一の構成
要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。この
実施例の特徴的部分は磁石組立体の構成にある。以下
に、この磁石組立体の構成について説明する。
【0032】磁石組立体51は、4個の磁石ユニット4
4が併設され、より具体的には前記磁石ユニット44A
と磁石ユニット44Bが交互に配設される。各磁石ユニ
ットの間にはシャントスペーサ45が配設される。本実
施例の磁石組立体51では、磁石ユニット44は4個で
あるので、電極ハウジング31の内部の前記凹状空間3
8には磁石ユニット1個分の幅とほぼ同一の幅を有する
空間52が残存する。従って、電極ハウジング31内の
凹状空間38内において、磁石組立体51を、矢印53
又は矢印54の方向に往復移動させることが可能とな
る。磁石組立体51の往復運動で、その振幅は、1つの
磁石ユニットの幅とほぼ等しい。本実施例の磁石組立体
51には、これを移動させる移動機構が備えられてい
る。
【0033】上記移動機構について図19及び図20を
参照して説明する。図20は図17中のK−K線断面図
である。55は、磁石組立体51を支持する支持台であ
る。磁石組立体51は、図示しないネジ等で支持台55
に固定される。更に、支持台55は駆動板56に固定さ
れる。駆動板56には例えば矩形のガイド孔57が中心
部に形成され、ガイド孔57の中にその内壁の一部に接
触した例えば円形のカム58が配置される。カム58は
カムシャフト59により回転される。駆動板56の底部
には例えば4個のスライドベアリング60が固設され
る。また凹状空間38の底部近傍でその長手方向に例え
ば2本のガイドバー61が配設され、このガイドバー6
1に前記のスライドベアリング60が挿通されている。
各ガイドバー61の両端は、電極ハウジング31の凹状
空間38の内壁面に設けた受け筒62で固定される。か
かる構成により、駆動板56は、ガイドバー61に案内
されて矢印53又は矢印54の方向に移動自在である。
そして、カムシャフト59が回転すると、カム58とガ
イド孔57との接触関係に応じて、駆動板56は凹状空
間38内で往復移動する。カム58とガイド孔57が円
形であり、カムシャフト59の回転速度が一定の場合に
は、駆動板56の往復運動の速度は両端で遅く、中央部
で速い単振動の運動となる。前述のガイド孔57の形状
は、矩形に限定されず、カム58の回転動作により駆動
板56を往復移動させることができるものであれば、楕
円形又はこれに類似した形状の任意形状にすることがで
きる。カムシャフト59はモータ63の出力軸に連結さ
れ、モータ63によって回転される。モータ63は電極
ハウジング31の外部に配置され、支持枠64及び支持
台65によって電極ハウジング31に固定される。カム
シャフト59は、カムシャフトの回転を平滑に行いなが
ら支持するラジアル軸受66と、回転しながら電極ハウ
ジング内の冷却水を密封するためのオイルシール67と
を嵌め込んだ軸受筒68によって固定されている。
【0034】以上の構成により、モータ63の回転動作
でカムシャフト59が一定の方向に回転すると、磁石組
立体51は電極ハウジング31の凹状空間38の内部で
往復的な移動を行う。図18は、磁石組立体51が左端
に存在する場合のターゲット表面に形成されるドリフト
運動電子の環状軌跡を示す。環状軌跡は、前述した磁石
ユニット44A,44Bのそれぞれに対応して交互に反
対向きになっている。この環状軌跡の状態で、環状軌跡
は、磁石組立体51の移動に伴って、矢印53の方向に
移動する。また図19は、磁石組立体51が右端に存在
する場合のターゲット表面に形成されるドリフト運動電
子の環状軌跡を示す。この環状軌跡の状態で環状軌跡
は、磁石組立体51の移動に伴って、矢印54の方向に
移動する。こうして4個の環状軌跡は、磁石組立体51
の移動に伴って移動する。隣接する環状軌跡の方向は反
対になっているので、隣接する2つの環状軌跡での、隣
接する2本の経路部分における電子の運動方向は同方向
になる。
【0035】上記の磁石組立体51では、更に、基本的
に図15(B)に示した電子ドリフト運動軌跡が形成さ
れるように磁石ユニットの配列が行われる。すなわち、
各磁石ユニットが、移動方向に直交する方向に交互にず
らして配置される。
【0036】上記の構成によれば、ターゲット面におい
て複数のドリフト運動電子の環状軌跡が周期的に移動を
行うので、ターゲットは両端部を除き均一に消耗され、
これによりターゲットの利用効率はいっそう高められ
る。特に、磁石組立体全体の往復運動の振幅を磁石ユニ
ットの幅と等しくすることにより、基板内膜厚分布とタ
ーゲット利用効率を改良しながら、平均成膜速度を大き
くすることができ、更に基板内の膜質均一化の改善を行
うことができる。
【0037】前述した各実施例の各構成要素の形態、寸
法、材料、個数等は、最も望ましいものであるが、それ
に限定されるものではない。また各磁石ユニットを構成
する中心磁石及び周辺磁石では、その磁石材質は全く同
じものである。しかし、ターゲット利用効率及び基板上
の膜厚分布の均一化を達成するため、各磁石ユニットの
材質等を異なるものとした方が、磁石組立体全体として
望ましいことがある。かかる場合においても、磁石ユニ
ットの磁極の組み合わせが反対のものを、交互に近接し
て配置するという構成が採用される。
【0038】磁石ユニットに設けられる磁石について
は、例えば図21(A)又は(B)に示すように、電極
ハウジング31に配置したとき、磁石71,71′の各
磁極面71a,71b,71′a,71′bがターゲッ
ト面に対して垂直になるように構成することができる。
この場合には、前述した中心磁石を設ける必要はない。
図22は、図21の磁石を利用した磁石ユニット71,
71′を5個、支持板72上に配置して磁石組立体73
を形成した例を示す。この構成例では、隣接する磁極の
相互干渉を抑制するためのシャントスペーサを配設する
必要はない。従って極めて効率的に電極ハウジング内に
配設することができ、且つ更なる小型化を達成すること
ができる。
【0039】マグネトロンカソード電極で、スパッタエ
ッチングを受けるターゲット状の環状帯の幅を拡大し、
ターゲット利用率を向上するためには、更に複雑な構造
を有する磁極組立体を用いることができる。この場合に
も、本発明の構成を採用することができる。また図17
及び図20で説明した実施例の磁石組立体の移動機構
は、カム及びガイド孔による水平往復運動の機構が説明
されたが、これらの運動機構は任意のものを採用するこ
とができる。
【0040】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように本発明によ
れば、スパッタリング装置おいて、矩形平面形状の大形
ターゲットを備えるマグネトロンカソード電極に複数の
磁石ユニットを含む磁石組立体を設け、且つこれらの複
数の磁石ユニットには磁極の配置が反対である2種類の
磁石ユニットを用意し、これらを交互に隣接させて配設
するように構成し、又は、更に電極に移動機構を付加し
て磁石組立体を振動運動させるように構成したため、大
きな面積を有する矩形の基板に対して成膜処理を行うこ
とができ、且つスパッタリング装置を小型に形成するこ
とができる。特に磁石ユニットの形態に対応して形成さ
れる電子ドリフト運動軌跡の少なくとも長辺部の長さを
変える、又は各磁石ユニットの中心位置を長辺方向にず
らすことにより、移動方向と平行な各電子ドリフト運動
軌跡の短辺部の位置をずらし、短辺部の重なりに起因し
て増す短辺部によるスパッタエッチング量を相対的に低
くし、ターゲットにおけるスパッタエッチング量を全体
的に均一化する。こうして、複数の磁石ユニットの短辺
部の配置位置を分散させ、スパッタリングされるターゲ
ット領域の遍在を少なくし、これによって基板に形成さ
れる薄膜の膜厚の均一性及び膜質の均質性を向上し、併
せてターゲット面上の堆積膜に起因して発生するパーテ
ィクルをできる限り抑制するという効果が生じる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスパッタリング装置の一実施例を
示した構成図である。
【図2】本発明に係るマグネトロンカソード電極の第1
実施例を示す断面図である。
【図3】磁石組立体の平面図である。
【図4】本発明に係るマグネトロンカソード電極の第2
実施例を示す断面図である。
【図5】第1の磁石ユニットを説明するための断面図で
ある。
【図6】第1の磁石ユニットを説明するための平面図で
ある。
【図7】第1の磁石ユニットを説明するための外観斜視
図である。
【図8】第1の磁石ユニットによるターゲット面上の環
状軌跡を示す説明図である。
【図9】第2の磁石ユニットを説明するための断面図で
ある。
【図10】第2の磁石ユニットを説明するための平面図
である。
【図11】第2の磁石ユニットを説明するための外観斜
視図である。
【図12】第2の磁石ユニットによるターゲット面上の
環状軌跡を示す説明図である。
【図13】第1実施例によるマグネトロンカソード電極
によるターゲット面上の環状軌跡を示す説明図である。
【図14】電子ドリフト運動軌跡の軌跡幅が異なる場合
のスパッタエッチング量分布を示す断面図である。
【図15】電子ドリフト運動軌跡の各種の組合せ形態を
示す図である。
【図16】図15(C)の電子ドリフト運動軌跡による
ターゲット面におけるスパッタリング領域を示す図であ
る。
【図17】本発明に係るマグネトロンカソード電極の他
の実施例を示す断面図である。
【図18】他の実施例によるマグネトロンカソード電極
によるターゲット面上の環状軌跡の第1の状態を示す説
明図である。
【図19】他の実施例によるマグネトロンカソード電極
によるターゲット面上の環状軌跡の第2の状態を示す説
明図である。
【図20】図17中のK−K線断面図である。
【図21】磁石ユニットに配設される磁石の他の実施例
を示す外観斜視図である。
【図22】図21に示された磁石を用いて構成された磁
石組立体の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板トレイ挿入室 2 スパッタリング室 3 基板トレイ取出し室 14 トレイ 20,51 マグネトロンカソード電極 22 ターゲット組立体 23 電源系 31 電極ハウジング 32 磁石組立体 33 壁部 38 凹状空間 41 中心磁石 42 周辺磁石 43 ヨーク 44 磁石ユニット 45 シャントスペーサ 46,46′ 矩形環状の電子ドリフト軌跡 56 駆動板 57 ガイド孔 58 カム 63 モータ 71,71′ 磁石 73 磁石組立体

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部を真空状態にする排気系を備えた真
    空容器と、この真空容器内に位置し、成膜処理される基
    板を取付けた基板保持部材と、前記基板に膜を形成する
    矩形平面状ターゲットを備えたマグネトロンカソード電
    極と、前記真空容器にガスを流通させて内部圧力を適切
    に維持するガス制御系と、前記マグネトロンカソード電
    極に電力を供給する電源系とを含むスパッタリング装置
    において、 前記マグネトロンカソード電極は、磁極の配置関係が互
    いに反対である第1及び第2の2種類の磁石ユニットを
    交互に隣接させて複数配置し且つ複数の前記磁石ユニッ
    トの辺部の長さを互いに異ならせた磁石組立体と、この
    磁石組立体を前記ターゲットに沿って往復運動させる移
    動機構とを備え、複数の前記磁石ユニットはそれぞれ前
    記ターゲットの面上に電磁界の電子拘束作用に基づき矩
    形環状の電子ドリフト運動軌跡を作り、これらの複数の
    電子ドリフト運動軌跡の寸法が互いに異なることを特徴
    とするスパッタリング装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のスパッタリング装置にお
    いて、複数の前記磁石ユニットは、短辺部の長さが等し
    く長辺部が長さが異なることを特徴とするスパッタリン
    グ装置。
  3. 【請求項3】 内部を真空状態にする排気系を備えた真
    空容器と、この真空容器内に位置し、成膜処理される基
    板を取付けた基板保持部材と、前記基板に膜を形成する
    矩形平面状ターゲットを備えたマグネトロンカソード電
    極と、前記真空容器にガスを流通させて内部圧力を適切
    に維持するガス制御系と、前記マグネトロンカソード電
    極に電力を供給する電源系とを含むスパッタリング装置
    において、 前記マグネトロンカソード電極は、同一寸法で且つ磁極
    の配置関係が互いに反対である第1及び第2の2種類の
    磁石ユニットを交互に隣接させて複数配置し且つ各磁石
    ユニットの中心位置を移動方向に直交する方向にて異な
    らせた磁石組立体と、この磁石組立体を前記ターゲット
    に沿って往復運動させる移動機構とを備え、複数の前記
    磁石ユニットはそれぞれ前記ターゲットの面上に電磁界
    の電子拘束作用に基づき同一形状の環状電子ドリフト運
    動軌跡を作り、これらの複数の環状電子ドリフト運動軌
    跡の中心位置が移動方向に直交する方向にて異なること
    を特徴とするスパッタリング装置。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項記載のスパ
    ッタリング装置において、前記第1及び第2の磁石ユニ
    ットのそれぞれは、ヨークと、この上に配設される中心
    磁石と、前記ヨークの上であって前記中心磁石の周囲に
    配設される周辺磁石とから構成され、前記中心磁石と前
    記周辺磁石には、前記ヨーク側とその反対側に磁極面が
    設けられることを特徴とするスパッタリング装置。
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