JP2928479B2 - スパッタリング装置 - Google Patents

スパッタリング装置

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JP2928479B2 JP7937896A JP7937896A JP2928479B2 JP 2928479 B2 JP2928479 B2 JP 2928479B2 JP 7937896 A JP7937896 A JP 7937896A JP 7937896 A JP7937896 A JP 7937896A JP 2928479 B2 JP2928479 B2 JP 2928479B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスパッタリング装置
に関し、特に、比較的に広い面積を有する基板の表面
に、タ−ゲット面の全体を有効に消費しながら、均一の
厚みで、かつ、均質な薄膜を作製できるマグネトロンカ
ソード電極を備えたスパッタリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のスパッタリング装置では各種方式
のカソード電極構造が提案されている。その中で、工業
的に、マグネトロン方式のカソード電極構造が最も多く
使用されている。その理由は、膜形成速度が大きいから
である。従来のマグネトロン方式の電極は、さまざまな
タイプが存在する。これらのタイプは、例えば“Thin F
ilm Process ”(アカデミック・プレス出版、1978
年、J.L.VossenとW.Kernによる編集)の75頁〜173
頁、又は「薄膜ハンドブック」(1983年に出版、日
本学術振興会薄膜第131委員会編集)の186頁〜1
89頁に記述されている。
【0003】現在のところ、マグネトロン方式のカソー
ド電極の中で、特に、平面形状を有するタ−ゲットを備
えたPlanar Magnetronカソ−ド電極が工業的に最も有用
である。
【0004】従来、矩形の平面形状を有する平板マグネ
トロンカソ−ド電極を用いたスパッタリング装置では、
大面積の基板の上に薄膜を形成する場合に、次の問題
(1)〜(4)が提起される。 (1)装置の巨大化 (2)タ−ゲットの不均一消耗による不経済性 (3)タ−ゲット面での不均一イオン衝撃とプラズマ空
間密度分布の不均一性に起因する基板のスパッタリング
膜の不均質性 (4)タ−ゲット面での不均一イオン衝撃に伴うパ−テ
ィクルの発生以下に、上記の問題(1)〜(4)を分説
する。
【0005】(1)装置の巨大化の問題 スパッタリング装置の中で、基板とタ−ゲットの相対的
位置関係については、例えば「ドライプロセス応用技
術」(小林春洋、岡田隆、細川直吉著、日刊工業新聞出
版、1984年)の63頁及び64頁に記述されてい
る。通常、大面積基板の上に薄膜を形成するときには、
基板並進方式が採用される。この基板並進方式は、矩形
タ−ゲットを配置したスパッタリング装置の内部で、当
該矩形タ−ゲットの表面に平行な面に沿って基板を搬送
しながらスパッタリングを行い、基板の表面に薄膜を形
成する方式である。例えば特公昭63−65754号
(特開昭60−86272号)に、矩形マグネトロンカ
ソ−ド電極を組み込んだ基板並列方式のスパッタリング
装置の構成例が開示されている。当該基板並進方式スパ
ッタリング装置では、基板の搬送方向は、均一な厚みの
薄膜を得るために、矩形タ−ゲットの短辺に平行な方向
に選択される。
【0006】一般的に、タ−ゲットの短辺の長さよりも
基板の寸法が大きいとき、基板上に均一な厚みの薄膜を
形成するためには、成膜されながら移送される基板に関
し、当該基板の移送距離を充分に大きくとることが要求
される。この要求と、生産性を上げるという要求とに基
づいて、大型基板用の基板並進方式スパッタリング装置
では、現在、その規模が大きくなる傾向がある。
【0007】例えば、本願出願人が製品化した、高さ7
00mm、幅680mmのガラス基板上に±10%以内
の均一性の厚みの薄膜を作製するスパッタリング装置
(ANELVA 3960S)では、短辺の長さ250
mm、長辺の長さ864mmの平板タ−ゲットを有する
マグネトロンカソ−ド電極と、高さ950mm、幅83
0mmのトレイとを用いて成膜を行っている。
【0008】さらに、スパッタリング室を真空状態に保
持・管理しながら未処理基板を大気側から搬入するとと
もに膜作製処理済みの基板を大気側に搬出するロ−ドロ
ック機構や、膜作製前の基板を加熱する加熱ゾ−ンや、
ほぼ連続してトレイを搬送するための緩衝用空間などの
必要性から、装置全体の長さは10m〜20mに達す
る。
【0009】(2)タ−ゲットの不均一消耗による不経
済性の問題 マグネトロンカソ−ド電極は、前記の各文献に記述され
るように、そのタ−ゲット表面が不均一なイオン衝撃を
受けるため、不均一に消耗される。この不均一消耗は、
マグネトロンカソ−ド電極においてタ−ゲット表面近傍
に生成される不均一な磁場を利用することが原因で、生
じる。
【0010】従来は、タ−ゲットの不均一消耗に伴う不
経済性と膜厚分布を改良するため、例えば、円筒同軸マ
グネトロンカソ−ド電極や円形平板マグネトロンカソ−
ド電極では、カソ−ド電極内に設けられた磁石組立体の
位置を時間的に変化させる構成を設けていた(特公昭5
5−27627号、特開平3−6372号等)。この構
成は、回転対称の構造を有する電極に適した技術であ
る。この構成によれば、円形平板マグネトロンカソ−ド
電極では、磁石組立体を、ある回転軸の周りに回転させ
ることにより、タ−ゲットの消耗を均一化することがで
きる。反面、かかる構成は、矩形平板状のタ−ゲットを
均一に消耗させる手段としては、有効な技術ではない。
【0011】(3)基板におけるスパッタリング膜の不
均質性の問題 マグネトロンカソ−ド電極のタ−ゲット面におけるイオ
ン衝撃の不均一性は、基板上に形成される膜質の均質性
に影響を与える。この影響を、前述の特公昭63−65
754号(特開昭60−86272号)に記述されてい
る構成を参照して以下に説明する。この構成は、矩形マ
グネトロンカソ−ド電極と基板並進方式のスパッタリン
グ装置の組み合わせで薄膜作製を行う構成である。
【0012】カソ−ド電極と真空容器壁の間に電圧を印
加して真空中で放電を行い、スパッタリングにより成膜
を行うとき、矩形マグネトロンカソ−ド電極の平板状タ
−ゲットの表面上には磁力線が作る閉じたトンネル状経
路に沿って電子がドリフト運動をし、ル−プ状の軌跡を
描く。ドリフト電子は、ガス分子と衝突してこれをイオ
ン化するため、ドリフト電子の描く軌跡に沿って密度の
高いプラズマが形成される。ドリフト電子の描く軌跡の
真下のタ−ゲット表面は、強いイオン衝撃を受け、スパ
ッタリングされる。実際に、ドリフト電子は極めて多数
であるため、その軌跡はある程度の幅を有する帯形状と
なる。したがって、この帯に沿って形成されるプラズマ
は同様に帯形状になる。タ−ゲット表面上のスパッタリ
ングされる領域も帯形状のル−プ領域となる。
【0013】移送されるトレイに載せられた基板は、成
膜のため、タ−ゲットの前面空間を通過する。通過に伴
って、基板上の特定箇所は、矩形タ−ゲットの長辺に平
行な2本のスパッタリング帯領域の上方空間を横切って
通過する。この上方空間はプラズマ密度の高い空間であ
る。よく知られるように、スパッタリングされた原子
は、タ−ゲット表面に垂直な方向のみならず、他の様々
な方向に放出される。したがって、基板上の特定箇所に
は、スパッタリング帯領域の上方空間に達する以前から
スパッタリング粒子が堆積し始める。そして、基板上の
特定箇所が最初のスパッタリング帯領域の上方空間に近
づくに従い堆積速度が増加する。この堆積速度は、スパ
ッタリング帯領域の真上位置で最大となる。トレイの更
なる移送により、基板上の特定箇所の堆積速度はいった
ん減少する。基板上の特定箇所が第2のスパッタリング
帯領域に近づくと、堆積速度が再び増加し、スパッタリ
ング帯領域の真上位置で堆積速度が再び最大になる。堆
積速度が最大になるのは2回目である。それ以後のトレ
イの移送では、基板がタ−ゲットの前面空間から遠ざか
るに従って、基板上の特定箇所における堆積速度は、単
調に減少していく。
【0014】以上のように、基板上の特定箇所に注目す
るとき、成膜速度が時間的に変化する。また、基板表面
に堆積するスパッタリング粒子の入射角度と、基板表面
が接する空間のプラズマ密度は、それぞれ、時間的に大
きく変化する。その結果、基板上に形成された最終的な
薄膜は、基板上の特定箇所に注目すると、膜の厚み方向
に関して、物理的特性が異なる箇所が形成される。
【0015】さらに、大型基板上での成膜を目的とし
て、成膜速度の均一性、膜質の均質性の改善のために、
同一の磁極配置の磁石ユニットを4個配置した磁石組立
を考えよう。この場合、磁石ユニットの磁石部分に対向
する基板面上で、膜厚分布が減少する。以上の4連磁石
の場合には、膜厚分布の問題のほかに、複数の磁石ユニ
ットによる磁場が相互干渉して、タ−ゲット表面に平行
な磁場強度において磁場強度「むら」が発生する。この
磁場の干渉による強弱の分布に従って、タ−ゲット面上
でイオン電流密度すなわち、スパッタ量の「むら」を発
生する。したがって、膜厚分布や膜質分布の不均一性を
生じる。このことはすでに、本願出願人の出願に係る特
願平3−194298号で言及している。この先行出願
では、磁場強度「むら」の解決のために、磁極配置が互
いに異なる2種類の磁石ユニットを交互に複数配置する
構造が提案された。この構造は有用ではあるが、近接し
た異極同志の打ち消しあいのために、磁場強度が弱くな
り易い。そのため、強い磁場強度を得るためには、磁石
寸法を大きくする必要があり、かつ、そのための費用が
高くなるという問題がある。
【0016】(4)パ−ティクルの発生の問題 マグネトロンカソ−ド電極のタ−ゲット面におけるイオ
ン衝撃の不均一性は、成膜最中のパ−ティクルの発生の
原因になる。前述したように、矩形マグネトロンカソ−
ド電極上のタ−ゲット面では、タ−ゲットの幅に比較し
て狭い幅の1本の閉じた帯状領域が、イオン衝撃を受け
てスパッタエッチングされる。タ−ゲット面上のその他
の領域は、スパッタエッチングされず、しかも、タ−ゲ
ットから飛び出して空間でガス分子と何回も衝突して散
乱されたスパッタリング原子が、その上に堆積する。長
時間スパッタリングを継続すると、タ−ゲット面上のス
パッタリングされる帯状領域以外の面は、スパッタ膜が
形成される。タ−ゲット上に堆積されるスパッタ膜は、
厚くなるに従い、その内部応力のために自然に剥離し、
パ−ティクルとなる。基板上の薄膜に微細なパタ−ンを
加工して電子部品を作るときに、パ−ティクルは良品率
を低下する最大の要因の一つとみなされているので、パ
−ティクルの発生が少ないマグネトロンカソ−ド電極の
開発が望まれている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、
矩形状の平板マグネトロンカソードを用いたスパッタリ
ング装置では種々の問題点が指摘できる。本発明の目的
は、タ−ゲットにイオンが不均一に衝撃を与える問題を
解決し、比較的に大型の矩形基板を静止した状態で良好
な薄膜を形成できるカソード電極構造を有して、かつ、
装置全体を小型化できるスパッタリング装置を提供する
ことにある。本発明の他の目的は、矩形タ−ゲットが不
均一に消耗されることによる不経済性、基板に堆積され
る薄膜の不均質性、パーティクルの発生、の各問題を解
決するカソード電極構造を有するスパッタリング装置を
提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、内部を真
空状態にする排気系を備えた真空容器と、この真空容器
の内部に配置され、成膜処理される基板を取り付ける基
板保持部材と、前記基板に対して対向する位置関係で配
置され、前記基板に成膜する矩形平面状ターゲットを備
えた少なくとも一つのマグネトロンカソード電極と、前
記真空容器の内部にガスを流通させて内部圧力を適切に
維持するガス制御系と、前記マグネトロンカソード電極
に電力を供給する電源系とを含むスパッタリング装置に
関する発明であって、次の特徴を備えている。 (a)前記マグネトロンカソード電極は、矩形平面状の
一つのターゲットの背面に複数の磁石ユニットを備え
る。 (b)前記磁石ユニットは、ターゲット表面に平行な断
面形状が矩形であり、その長辺が隣の磁石ユニットの長
辺と隣り合うように、複数の磁石ユニットが配置され
る。 (c)前記磁石ユニットの磁極配置は、同一のマグネト
ロンカソード電極に含まれるすべての磁石ユニットにお
いて、互いに等しい。 (d)前記磁石ユニットは、ターゲットの表面上に環状
の電子ドリフト運動軌跡を生じさせるような構造であ
る。 (e)前記複数の磁石ユニットのうち、磁石ユニットの
短辺方向における両端の二つの磁石ユニットがターゲッ
ト表面上に作る磁場の強さは、それより内側の磁石ユニ
ットがターゲット表面上に作る磁場の強さよりも大き
い。 (f)隣り合う前記磁石ユニットの間に磁気シールド壁
が配置される。
【0019】すなわち、この発明は、一つのターゲット
の背面に複数の磁石ユニットを配置するものであって、
これにより、一つのターゲットの表面に、ドリフト電子
による環状軌跡を複数個形成するようにしたものであ
る。そして、各磁石ユニットの磁極配置を互いに等しく
している。複数の磁石ユニットの磁極配置を互いに等し
くして、これを並べて配置すると、近接した異極同志の
打ち消しあいがなくなり、磁石強度を必要以上に強くし
なくてすむ。しかし、同じ磁極配置の磁石ユニットをな
らべて配置すると、従来技術の項目で述べたように、磁
場強度「むら」が発生しやすい。すなわち、磁場分布の
わずかな相違があるような同等の複数の磁石ユニットを
並べて配置したときには、磁場の相互干渉の結果、磁場
分布の相違が強調されて、全体として不規則性の強い磁
場分布が形成され、これがマグネトロンカソ−ドの放電
特性及び膜厚分布特性に好ましくない影響を及ぼす大き
な要因となる。これを解決するために、本発明では、磁
石ユニット間に強磁性体からなる磁気シ−ルド壁を配置
している。この磁気シ−ルド壁は磁石ユニット間の相互
干渉を防止する働きをもつ。
【0020】さらに、この発明では、磁石ユニットがタ
ーゲット表面上に作る磁場の強さに関して、両端の磁石
ユニットの方が内側の磁石ユニットよりも磁場が強くな
っている。一般に、基板の膜厚分布は、基板の中央付近
の膜厚が大きくなりやすく、基板の端部に近付くに従っ
て膜厚が小さくなりやすい。したがって、ターゲットの
中央付近よりも両端付近の磁場を強くすれば膜厚分布の
改善が期待できる。本発明では、矩形状の磁石ユニット
を、その長辺が隣り合うように並べた場合に、両側の二
つの磁石ユニットの作る磁場が、内側の磁石ユニットの
作る磁場より大きくなるようにして、膜厚分布を改善し
ている。ここで、磁石ユニットの磁場の強さの指標とし
ては、図20(B)に示すように、有効磁場強度の環状
軌跡上での平均値BAVを用いることができる。磁石ユ
ニットがターゲット表面上に作る磁場の強さをコントロ
ールするには、磁石ユニット自体の材質や寸法を調節す
る方法のほか、磁石ユニットとターゲットとの値の距離
を調節する方法もある。
【0021】ここで、前述した先行文献の特公昭63−
65754号に開示された電極の構造と、本発明による
電極構造との差異を説明しておく。先行文献に開示され
た電極では、一つのカソ−ド電極には一つの磁石ユニッ
トが含まれ、ドリフト電子による環状軌跡が一つだけ形
成される。そして、このようなカソ−ド電極を複数設け
て、隣同志のカソ−ド電極で環状軌跡の運動方向を同等
にしている。このスパッタリング装置のカソ−ド電極
は、基板を移動させながら薄膜を形成するときに有効で
ある。
【0022】これに対して、本発明では、一つのカソ−
ド電極において、その中に複数の磁石ユニットを設け、
これらの磁石ユニットは磁極配置が互いに同じものを並
列に並べ、一つのターゲット上でドリフト電子による環
状軌跡を複数形成するようにしている。隣同志の環状軌
跡ではその電子の運動方向は同等である。
【0023】第2の発明は、第1の発明において、両側
の磁石ユニットがターゲット表面上に作る磁場の強さを
内側の磁石ユニットのそれよりも大きくする手段とし
て、磁石ユニットの磁石部分の高さを調節したものであ
る。すなわち、両側の磁石ユニットの磁石部分の高さ
を、内側の磁石ユニットのそれよりも大きくしている。
ここで、磁石部分の「高さ」とは、磁石部分の二つの磁
極表面(N極表面とS極表面)の間の距離を指す。磁石
の材質を同じにした場合、磁石部分の高さを大きくする
と、より強力な磁石となる。
【0024】第3の発明は、第1の発明において、磁石
ユニットの磁場の均等化を図ったものである。すなわ
ち、単体の磁石ユニット内では±5%以内の磁場均等性
をもたせ、磁石ユニット間では±5%以内の磁場均一性
をもたせている。これにより、放電の偏在や不安定性を
なくし、また、基板上の膜厚分布を向上させている。
【0025】ここで、単体の磁石ユニットにおける磁場
均等性と、磁石ユニット間での磁場均一性とについて、
その定義を、以下に説明する。
【0026】図20(A)において、磁石ユニット80
の上方のターゲット表面82において磁石ユニット80
の作る磁場の強さを考える。ターゲット表面82におい
て、磁石ユニット80の中心の直上の点をO点として座
標軸の原点とする。磁石ユニット80の短辺方向をX
軸、長辺方向をY軸、ターゲット表面82に垂直な方向
をZ軸とする。いま、ターゲット表面82上の任意の点
における磁場の強さを磁束密度Bで表わす。この磁束密
度Bはベクトルであり、そのX軸方向の成分をBX、Y
軸方向の成分をBY、Z軸方向の成分をBZとする。ま
た、磁束密度BのXY平面への投影成分をBXYで表わ
す。このBXYはBXとBYの合成ベクトルに等しい。
ターゲットのスパッタ量を左右するのは、ターゲット表
面上での磁場の強さであり、しかも、電界と直交する成
分すなわちBXYの絶対値がスパッタ量に最も影響を及
ぼしている。したがって、磁石ユニットの磁場の強さを
表わす指標としては、ターゲット表面上における磁束密
度のうちターゲット表面に平行な成分BXYの絶対値
(以下、これを有効磁場強度という。)が最も適切であ
る。
【0027】磁石ユニットの磁場均等性を評価するに
は、上述の有効磁場強度を用いる。ターゲット表面上の
各点で有効磁場強度を測定して、大きな強度の得られる
地点を結ぶと、環状の軌跡84が得られる。この環状軌
跡84は、ターゲットのエロージョン領域の位置と一致
する。この環状軌跡84に沿って測定した有効磁場強度
がどの地点でも均一であれば、ターゲットはエロージョ
ン領域に沿って均一にスパッタリングされることにな
る。本発明では、上述の環状軌跡84に沿って測定した
有効磁場強度の分布の程度を磁場均等性と定義し、これ
が±5%以内になるように磁石ユニット80を作製して
いる。ただし、磁場均等性を求めるには、磁石ユニット
の短辺近傍の領域を除いている。図20(B)は、横軸
に環状軌跡84に沿った距離、縦軸に有効磁場強度(B
XYの絶対値)をとったときの磁場均等性を示したグラ
フである。環状軌跡84が磁石ユニット80の短辺に最
も近付いたD点とF点では、有効磁場強度が大きくなる
が、磁石ユニット80の長辺方向(Y軸方向)の大部分
の領域では有効磁場強度がほぼ一定である。磁石ユニッ
ト80の長辺の長さをLAとすると、少なくともLAの
80%以内の範囲で磁場均等性を±5%以内にするのが
望ましい。したがって、この発明で磁場均等性というと
きは、上述の環状軌跡84に沿って測定した有効磁場強
度の分布の程度を、磁石ユニットの長辺方向の80%以
内の領域で測定したもの、ということができる。
【0028】次に、磁石ユニット間の磁場均一性を説明
する。図20(B)において、一つの磁石ユニットに対
して磁場均等性の平均値BAVが得られる。この値をそ
れぞれの磁石ユニットについて求めることができる。そ
して、平均値BAVを磁石ユニット間で比較して、その
分布の程度を、磁石ユニット間の磁場均一性と定義す
る。この発明では、磁石ユニット間の磁場均一性を±5
%以内におさえることによって、磁石ユニット間での磁
場の強さのばらつきに起因する膜厚分布のばらつきを防
いでいる。
【0029】ところで、上述のように磁石ユニット単体
での磁場均等性と磁石ユニット間での磁場均一性とを±
5%以内に限定したのは次の理由による。磁場強度分布
は、スパッタリングで作製される薄膜の膜厚分布に直接
反映されるため、均一な分布が望まれる。基板内膜厚分
布の均一性をどの程度の範囲内におさめねばならないか
は、応用分野により異なる。しかし、多くのエレクトロ
ニクスデバイス製造プロセスへの応用において、現在望
まれている薄膜の膜厚分布の最大許容偏差は、多くの場
合±5%である。この点を考慮すると、均一性の良い膜
厚分布を得るためには、磁石ユニットの磁場強度分布も
せいぜい±5%以下に抑制することが必要である。ま
た、磁石ユニットの磁場均等性及び磁石ユニット間の磁
場均一性が良ければ、磁石組立体全体として、タ−ゲッ
ト面上に複数の矩形環状の電子ドリフト運動軌跡を効率
よく均一に生成でき、これによりタ−ゲット面上におけ
る放電を偏在させることなく、安定に維持させることが
できる。以上の理由により、磁石ユニットの磁場均等性
及び磁石ユニット間の磁場均一性をそれぞれ±5%以内
とした。もちろん、基板内膜厚分布の最大許容偏差が小
さくなればなるほど、磁石ユニット内及び磁石ユニット
間の磁場強度分布の均一性をより狭い範囲内に限定しな
ければならない。しかしながら、磁場の均一性をより狭
い範囲に限定しようとすればするほど、それを実現する
ための磁石設計上及び製作上の配慮は技術的に困難にな
る。したがって、費用対効果の観点から磁場強度分布の
均一性は±5%程度が限度である。
【0030】磁石ユニットの磁場強度分布のばらつきの
程度は、磁極片の加工寸法精度に大きく依存する。例え
ば、加工寸法精度が±0.2mmの場合、最悪で0.4
mmの差異が生じる可能性がある。その場合には、磁極
表面の上方32mmの地点(ターゲット表面に相当)に
おいて約7%の磁場強度の差が生ずる。加工寸法精度を
±0.05mmに向上させた場合、上述の磁場強度の差
は約2%になる。この説明では、磁極構成材料の残留磁
束密度が磁極の全ての領域で均一であると仮定したが、
実際には材料の特性の不均一性も無視できない。したが
って、磁石ユニットの磁場均等性を±5%以内におさめ
るには、加工寸法精度と、材質の均質性との両方を考慮
することが必要である。所定の磁場均等性を達成するた
めの手段の一例を述べると、磁石ユニットを構成する個
々の磁極片について、その材質及び形状を検討して、各
磁極片の残留磁束密度を12000G±500G以内と
した。また、磁極片の加工精度を±0.05mm以下と
し、その組み立て精度にも注意を払った。これにより、
磁石ユニット内の磁場均等性を向上させた。
【0031】第4の発明は、第3の発明の構成のうち、
隣り合う磁石ユニットの間に磁気シールド壁を配置する
特徴を除いたものである。
【0032】第5の発明は、第4の発明において、磁石
ユニットをその矩形の短辺方向に往復運動可能にしたも
のである。矩形の磁石ユニットを短辺方向に移動させる
と、ドリフト電子による環状軌跡は、その長手方向に対
して垂直に移動することになり、これまでスパッタリン
グされないターゲット部分がスパッタリングされるよう
になる。これにより、基板上の膜厚分布が改善されると
ともに、ターゲットの利用効率が飛躍的に向上する。例
えば、往復運動の振幅を、一つの磁石ユニットの短辺方
向の長さと等しくすることにより、タ−ゲットのエッチ
ングされる領域を均一化することが可能となる。
【0033】第6の発明は、第1の発明の構成のうち、
隣り合う磁石ユニットの間に磁気シールド壁を配置する
特徴を除いて、かつ、両側の磁石ユニットがターゲット
表面上に作る磁場の強さを内側の磁石ユニットのそれよ
りも大きくする手段として、磁石ユニットからターゲッ
トまでの距離を調節する特徴を加えたものである。すな
わち、両側の磁石ユニットのターゲット側の磁極面から
ターゲット表面までの距離を、内側の磁石ユニットのそ
れよりも小さくしている。全く同一の磁石ユニットを使
用した場合、磁石ユニットをターゲットに近付けた方
が、ターゲット表面での磁場の強さをより大きくでき
る。
【0034】第7の発明は、上述の第1、第4、第6の
発明において、ターゲットの表面上に環状の電子ドリフ
ト運動軌跡を生じさせるための磁石構造を具体化したも
のである。すなわち、磁石ユニットを、ヨークと、ヨー
クの上に固定された中心磁石と、ヨークの上に固定され
て中心磁石を取り囲む周辺磁石とから構成している。中
心磁石と周辺磁石は、ヨークに固定された面とターゲッ
ト側の面とに磁極面が存在し、中心磁石のターゲット側
の磁極と周辺磁石のターゲット側の磁極とが互いに逆極
性となっている。
【0035】第8の発明は、第1の発明の構成のうち、
隣り合う磁石ユニットの間に磁気シールド壁を配置する
特徴を除いて、かつ、同一の磁極配置の磁石ユニットを
並べる代わりに、互いに逆極性となる磁石ユニットを隣
り合わせて並べたものである。
【0036】第9の発明は、第8の発明において、磁石
ユニットが、中心磁石のない枠状の矩形の磁石で構成さ
れていてターゲット表面に垂直な磁極面を有するものと
なっている。
【0037】
【発明の実施の形態】本発明の実施例の説明をする前
に、本発明と関連の深い技術について説明する。図1
は、本願発明を適用するスパッタリング装置の基本的な
構成を示す正面断面図である。このスパッタリング装置
は、基板トレイ挿入室1と、トレイに装着された基板の
面に対して薄膜作製を行うためのスパッタリング室2
と、基板トレイ取出し室3から構成される。基板トレイ
挿入室1と、スパッタリング室2と、基板トレイ取出し
室3は直列的に連結される。これらの室は、それぞれ独
立に排気して真空状態に保持・管理することができる構
成を有した真空容器で形成される。基板トレイ挿入室1
とスパッタリング室2の間にはゲートバルブ4が設けら
れ、スパッタリング室2と基板トレイ取出し室3の間に
はゲ−トバルブ5が設けられる。
【0038】スパッタリング室2は、通常、真空状態に
保持・管理される。基板トレイ挿入室1は、リ−クバル
ブ6を用いて大気に開放することができ、基板トレイ取
出し室3は、リ−クバルブ7を用いて大気に開放するこ
とができる。基板トレイ挿入室1では、排気パイプ8を
経由して排気ポンプ(図示せず)で矢印10の方向へ排
気される。基板トレイ取出し室3では、排気パイプ9を
経由して排気ポンプ(図示せず)で矢印11の方向へ排
気される。基板トレイ挿入室1の図1における左端は入
り口扉12であり、基板トレイ取出し室3の図1におけ
る右端は出口扉13である。
【0039】基板が装着されたトレイ14は、入り口扉
12から基板トレイ挿入室1の内部に搬入される。トレ
イ14は基板を保持するための器具である。この基板
は、比較的に大型の基板である。トレイ14が搬入され
た後、入り口扉12とゲ−トバルブ4を閉じた状態で、
排気系を用いて排気が行われる。基板トレイ挿入室1の
内部圧力が充分に低下した時点でゲ−トバルブ4が開か
れ、トレイ14はレ−ル(図示せず)に案内されて矢印
15の方向に搬送され、スパッタリング室2に送り込ま
れる。
【0040】スパッタリング室2では、後述される薄膜
作製機構により、トレイ14に装着された状態の基板の
表面に、スパッタリング法により薄膜が形成される。こ
の実施例では、基板に薄膜が堆積される時、トレイ14
は静止した状態にある。基板に薄膜を形成した後、トレ
イ14は、ゲ−トバルブ5を経由して、基板トレイ取出
し室3に送り込まれる。トレイ14が基板トレイ取出し
室3に送られた後に、ゲ−トバルブ5が閉じられ、リ−
クバルブ7が開かれる。こうして、トレイ14に装着さ
れた基板は、大気圧環境の中に置かれる。その後、取出
し扉13を開き、トレイ14を取出す。
【0041】スパッタリング室2では、図示しないボン
ベからガス導入管16を経て、矢印18aの方向にガス
が導入される。またスパッタリング室2では、図示しな
い排気ポンプにより排気口17を経て矢印18bの方向
に排気される。この結果、導入ガス流量と排気ガス流量
が均衡した状態で、スパッタリング室2は、放電状態に
維持され、かつスパッタリングを行うのに適した10-3
〜10-2Torrの圧力範囲内の一定圧力に保たれる。
【0042】スパッタリング室2の中のゲートバルブ4
に近い箇所(前段側)には、基板加熱ランプ19が配設
される。基板加熱ランプ19は必要に応じて設けられ
る。この基板加熱ランプ19の熱線輻射により、薄膜を
形成する前段階で、基板の温度を高めることができる。
スパッタリング室2の後段側には、矩形平面状の大型タ
−ゲットを備えるマグネトロンカソ−ド電極20(以下
カソ−ド電極20という)が絶縁体21を介して配設さ
れる。カソ−ド電極20の上部には、タ−ゲット組立体
22が取り付けられる。図1のタ−ゲット組立体22の
上面がタ−ゲット面である。また、カソ−ド電極20に
は、電源24と、カソ−ド電極と電源の間の給電線25
と、電源とア−スの間の結線26とからなる電源系23
が接続される。この電源系23によりカソ−ド電極20
に対して電力が供給される。
【0043】スパッタリング室2において、トレイ14
はカソ−ド電極20に対して静止する。この静止状態
で、トレイ14上の基板は、タ−ゲット組立体22のタ
−ゲット面に対向する。基板の対向面には、タ−ゲット
組立体22から飛来するスパッタリング粒子が堆積し、
基板上に薄膜が形成される。図1における例では、一つ
のトレイ14と一つのカソ−ド電極20との組み合わせ
が示されているが、スパッタリング室2の中には、任意
の数のカソ−ド電極20を設けることができる。スパッ
タリング室2の壁部はア−スされている。
【0044】図2は、本発明に関連の深いカソード電極
20の正面断面図である。まず、このカソ−ド電極20
の構造を具体的に詳述する。カソ−ド電極20は、電極
ハウジング31と、電極ハウジング31内部に配設され
た磁石組立体32と、タ−ゲット組立体22とから構成
される。カソ−ド電極20は、スパッタリング室2を形
成する真空容器の壁部33に形成された開口部34に、
絶縁体21を介して取り付けられる。カソ−ド電極20
は、タ−ゲット組立体22のタ−ゲット面が真空室側に
露出するように、開口部34に取り付けられる。取付け
のための固定具及びクランプ機構等の図示は省略してあ
る。
【0045】タ−ゲット組立体22は、タ−ゲット板3
5とタ−ゲット押え治具36とタ−ゲット裏板37から
なり、図示されない結合具により電極ハウジング31に
固定される。
【0046】電極ハウジング31の内部に形成された凹
状空間38には、磁石組立体32が配設される。具体的
に説明すると、凹状空間38には、中心磁石41と周辺
磁石42とヨ−ク43とから構成される磁石ユニット4
4が5個配設されている。5個の磁石ユニット44は、
その寸法、材質、磁極配置がすべて同じである。磁石ユ
ニットの詳細については後に説明する。磁石ユニット4
4の間、及び5個の磁石ユニット44の全体の外側に
は、強磁性体からなる磁気シールド49が配設される。
磁石ユニット44と磁気シールド49は磁石固定台座4
8に固定される。このように、磁石組立体32は、5個
の磁石ユニット44と、磁気シールド49と、磁石固定
台座48とから構成される。
【0047】なお、図示されていないが、凹状空間38
には、電極ハウジング31の外部から冷却水が導入され
る。冷却水はタ−ゲット裏板37に接触して、これを冷
却する。放電を行う際、タ−ゲット組立体22のタ−ゲ
ット面に発生する熱を、冷却水を媒体として、外部に放
出している。
【0048】電極ハウジング31とタ−ゲット裏板37
の間には、Oリング39が配設され、気密性を保つ。電
極ハウジング31と絶縁体21の間の気密性はOリング
40により、絶縁体21と真空容器の壁部33の気密性
はOリング30により、それぞれ保持される。
【0049】タ−ゲット組立体22の真空側に露出する
スパッタリングすべき面以外の面が、イオン衝撃される
のは望ましくない。そこで、スパッタリングされたくな
い面がイオン衝撃されるのを防止するため、ターゲット
シ−ルド部材47が、壁部33の内面の開口部34の周
辺部分に配設される。
【0050】図3は磁石組立体32の平面図である。5
個の磁石ユニット44の間、及び5個の磁石ユニット4
4の全体の外側には、磁気シールド49が配設される。
磁気シールド49は、透磁率の大きな材料である軟鉄等
で作られる。磁石ユニット44の間には、磁石ユニット
44の長辺よりもわずかに長い磁気シールド49aがあ
り、これが周辺の磁気シールド49bにつながってい
る。また、磁石ユニット44と磁気シールド49は、強
磁性体の磁石固定台座48(図2参照)の上に固定され
ていて、下方も磁気遮蔽されている。、磁石ユニット4
4の作る磁力線は磁気シールド49によって吸収され、
磁場の相互干渉が防止される。これにより、磁石組立体
全体としての磁場分布をバランス良く保つことができ
る。磁石固定台座48と磁気シールド49が無い場合に
は、磁場の相互干渉により、磁石組立体32の対角方向
に磁場分布の偏りが生じ、均一な厚みの薄膜が作製でき
ない。
【0051】なお、磁石ユニット44の短辺の外側にあ
る磁気シールド49bは、省略することもできる。しか
し、磁石ユニット44の短辺付近の磁場が、磁石ユニッ
トの長辺方向中央部の磁場に比べて強い場合には、短辺
の外側にも磁気シールド49bを取り付けるのが好まし
い。
【0052】次に、磁石ユニット44の構造を説明す
る。図4(A)は磁石ユニットをその短辺に平行な平面
で切断した断面図、(B)は磁石ユニットの平面図、
(C)はその斜視図である。磁石ユニット44は、平面
形状がほぼ長方形であるヨ−ク43の上に、長形板状の
中心磁石41と、その周囲に配設された矩形リング形状
の周辺磁石42とから構成される。この実施例では、磁
石ユニット44の長辺の長さLAが630mm、短辺の
長さが110mmである。中心磁石41のヨ−ク43側
の磁極はN極、その反対側はS極であり、周辺磁石42
のヨ−ク43側の磁極はS極、その反対側はN極であ
る。この磁極配置によって、ターゲット側では、周辺磁
石42から中心磁石41へ向かう磁力線45が形成され
る。したがって、周辺磁石42の上方ではターゲット表
面から磁力線が出ていき、中心磁石41の上方ではター
ゲット表面に磁力線が入っていく。この磁力線は、環状
に閉じたトンネル経路を形成する。単体の磁石ユニット
44における磁場均等性は±5%以内であり、また、磁
石ユニット間の磁場均一性も±5%以内である。
【0053】上述のような磁力線45が生成された状態
で、カソ−ド電極20に負の高電位を印加すると、タ−
ゲット面に垂直な電界が発生する。このタ−ゲット面に
垂直な電界と、前記トンネル経路を形成する磁場との組
み合わせに基づき、電子は、タ−ゲット面においてトン
ネル経路に沿ってドリフト運動を行う。電子のドリフト
運動は、環状の軌跡を描く。その結果、低電圧大電流の
放電が発生し、この放電によって、基板上にスパッタリ
ング膜を高速に作製できる。
【0054】図5(A)は、タ−ゲット面における電子
のドリフト運動の軌跡を示す平面図であり、(B)はそ
れに対応した磁石組立体32の断面図である。電子は、
環状軌跡46に沿って矢印に示される方向でドリフト運
動を行う。環状軌跡46は、図面において閉じた細い線
で示されているが、実際にはある程度の幅をもった帯状
である。イオンは、ドリフト運動する電子がガス分子と
衝突することによって発生する。従って、イオン電流密
度の分布は、タ−ゲット面28上を通過するドリフト電
子の空間密度をタ−ゲット面に投影したものとみなすこ
とができる。ドリフト電子の軌跡は、1本の細い線では
なく、確立分布を有した幅のある空間である。また、イ
オンはタ−ゲットを衝撃してスパッタリングするので、
幅のあるイオン電流密度分布は、タ−ゲットのスパッタ
リング深さ分布に対応する。各環状軌跡46において、
互いに隣接する平行な2本の長辺部46aと46bは、
ドリフト方向が互いに逆向きとなる。
【0055】図6は、磁石組立体32の磁力線を示す断
面図であり、磁石ユニットの短辺に平行な断面で切断し
たものである。この図面は、4個の磁石ユニットからな
る磁石組立体に関するものであって、中心線から右側だ
けを示してある。各磁石ユニットの磁力線45が磁気シ
ールド49によって吸収され、その結果、磁場の相互干
渉が抑制されているのがよく分かる。
【0056】上述の技術において、カソ−ド電極20の
タ−ゲットの表面は矩形の比較的に大きな面積を有す
る。タ−ゲット面においては、磁石ユニット44の磁力
線で形成される環状軌跡の帯状部分として、スパッタリ
ングされる部分が特定される。そして、一つのターゲッ
トに環状のエロ−ジョン領域を複数個形成することによ
って、できる限り広い面積部分にエロージョン領域を形
成することができる。これにより、比較的大きな面積を
有するタ−ゲットの利用効率(タ−ゲット全面積に対す
る環状軌跡面積の比)を高めることができる。
【0057】前述の通り、電界と、中心磁石及び周辺磁
石によって形成される磁場との相互作用によって、タ−
ゲット面上にドリフト電子の環状軌跡が形成される。必
要とされる磁場は、タ−ゲット面に平行な磁場成分とし
て、例えば200〜500ガウスの程度である。
【0058】図7は、本発明に関連の深い別の技術にお
けるカソード電極の正面断面図である。このカソード電
極において、電極ハウジング、ターゲット組立体、スパ
ッタリング室の壁部およびその開口部、気密性を維持す
るための複数のOリング、ターゲットシールド部材等の
構成および相対位置関係は、図2に示したカソード電極
の場合と同じである。したがって、同一の構成要素には
同一の符号を付し、その説明を省略する。図7のカソー
ド電極の特徴部分は磁石組立体を可動にした点にある。
以下に、この磁石組立体の構成について説明する。
【0059】磁石組立体51は、4個の磁石ユニット4
4を含み、磁石ユニット間には磁気シールド49が、磁
石ユニットの下部には磁石固定台座48が配設される。
本実施例の磁石組立体51では、磁石ユニット44は4
個なので、電極ハウジング31の内部の前記凹状空間3
8には磁石ユニット1個分の幅と同一の幅を有する空間
52が残存する。したがって、電極ハウジング31内の
凹状空間38内において、磁石組立体51を、矢印53
または54の方向に往復移動させることが可能になる。
磁石組立体51の往復運動の振幅は、一つの磁石ユニッ
トの幅とほぼ等しい。本実施例の磁石組立体51には、
これを移動させる移動機構が備えられている。
【0060】上記移動機構について図7と図8を用いて
説明する。図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。
図7において、磁石組立体51は支持台55で支持され
る。磁石組立体51は、図示しないネジ等で支持台55
に固定される。さらに、支持台55は駆動板56に固定
される。図8に示すように、駆動板56には矩形のガイ
ド孔57が中心部に形成され、ガイド孔57の中にはそ
の内壁の一部に接触した円形のカム58が配置される。
カム58はカムシャフト59により回転される。
【0061】駆動板56の底部には4個のスライドベア
リング60が固設される。また凹状空間38の底部近傍
でその長手方向に2本のガイドバー61が配設され、こ
のガイドバー61に前記のスライドベアリング60が挿
通されている。各ガイドバー61の両端は、電極ハウジ
ング31の凹状空間38の内壁面に設けた受け筒62で
固定される。このような構成により、駆動板56は、ガ
イドバー61に案内されて矢印53または54の方向に
移動自在である。そして、カムシャフト59が回転する
と、カム58がガイド孔57との接触関係に応じて、駆
動板56は凹状空間38内で往復運動する。円形のカム
58はその中心から偏心した状態でカムシャフト59に
直結されているので、カムシャフト59の回転速度が一
定の場合には、駆動板56の往復運動の速度は両端で遅
く、中央部で早くなり、単振動の運動となる。
【0062】前述のガイド孔57の形状は矩形に限定さ
れず、カム58の回転動作により駆動板56を往復運動
させることができるものであれば、楕円形またはこれに
類似した形状の任意形状にすることができる。
【0063】図7において、カムシャフト59はモータ
63の出力軸に連結され、モータ63によって回転され
る。モータ63は電極ハウジング31の外部に配置さ
れ、支持枠64および支持台65によって電極ハウジン
グ31に固定される。カムシャフト59は、カムシャフ
トの回転を平滑に行いながら支持するラジアル軸受け6
6と、回転しながら電極ハウジング内の冷却水を密封す
るためのオイルシール67とをはめ込んだ軸受筒68に
よって支持されている。以上の構成により、モータ63
の回転動作でカムシャフト59が一定の方向に回転する
と、磁石組立体51は電極ハウジング31の凹状空間3
8の内部で往復的な移動を行う。
【0064】図9(A)はターゲット表面に形成される
エロージョン領域を示す平面図であり、(B)はその断
面図である。このエロージョン領域69は、図5に示す
ような電子ドリフト運動軌跡46に対応している。エロ
ージョン領域におけるスパッタエッチング量は(B)の
斜線部Sである。本実施例では、4個の磁石ユニットが
短辺方向に移動するので、エロージョン領域69も矢印
53または54の方向に往復運動する。その結果、
(B)の斜線部Sが往復運動し、全体として一点鎖線7
0で示すような均一なスパッタエッチングが行われるこ
とになる。その結果、ターゲット35の利用効率が向上
する。
【0065】特に、磁石組立体全体の往復運動の振幅を
磁石ユニットの幅と等しくすることにより、単一の磁石
ユニットを往復運動させるときとほぼ同一の基板内膜厚
分布とタ−ゲット利用効率を保持しながら、平均成膜速
度を大きくすることができ、基板内の膜質均一化の改善
を行うことができる。
【0066】図10〜図12は磁石組立体における磁気
シールド手段の変更例を示す平面図である。いずれも、
4個の磁石ユニットを含む磁石組立体の例である。図1
0の例では、磁石ユニット44の短辺と、その外側の磁
気シールド49bとの間に、鉄やニッケル等で作った強
磁性体ブロック71を挿入している。磁石ユニット44
の短辺近傍の磁場が強い場合は、このような構成を採用
するのが好ましい。これにより、磁場分布、および薄膜
の厚さ分布を調節することができる。図11の例では、
磁石ユニット44と磁気シールド49aとの隙間に、強
磁性体ブロック72を挿入している。また、図12の例
では、磁石組立体32の表面に強磁性体板73を貼り付
けて、磁場を遮断している。この強磁性体板73は磁石
ユニットの短辺近傍だけに貼り付けている。この例は、
広範囲の磁場調整および膜厚調整に有効である。
【0067】図13は本発明の一実施形態のカソード部
分の正面断面図である。このカソード電極において、電
極ハウジング、ターゲット組立体、スパッタリング室の
壁部およびその開口部、気密性を維持するための複数の
Oリング、ターゲットシールド部材等の構成および相対
位置関係は、図2に示したカソード電極の場合と同じで
ある。したがって、同一の構成要素には同一の符号を付
し、その説明を省略する。図2のカソード電極と比較し
て、図13のカソード電極の特徴部分は磁石組立体にあ
り、以下に、この磁石組立体の構成について説明する。
【0068】この磁石組立体には5個の磁石ユニットが
含まれ、このうち、両側の2個の磁石ユニット74A
と、内側の3個の磁石ユニット74Bとでは、構成が異
なっている。両側の磁石ユニット74Aの基本的な構成
は、図4に示した磁石ユニット44と同じである。これ
に対して、内側の磁石ユニット74Bは、ヨーク43と
磁石固定台座48の間にスペーサ75が挿入されてい
る。その分、磁石ユニット74Aと比較して、磁石部分
の高さが小さくなっている。そして、磁石ユニットの磁
極表面の高さ位置は、5個の磁石ユニットですべて等し
くなっている。磁石ユニットの間には磁気シールド49
が配置されている。そして、単体の磁石ユニット内では
磁場均等性を±5%以内にし、両側の二つの磁石ユニッ
ト74A同志では磁場均一性を±5%以内にし、内側の
磁石ユニット74B同志では磁場均一性を±5%以内に
している。
【0069】次に、このカソード電極の作用を説明す
る。図14(A)は、同じ磁石ユニットを4個並列に並
べた状態を示したものである。この場合は、ターゲット
35の表面には磁石ユニットに対応した磁場分布が4個
できて、これらの磁場分布の強度は互いにほぼ等しい。
図14(B)は、図13のカソード電極のように、磁石
部分の高さ(したがって体積)を異ならせた例である。
すなわち、両側の磁石ユニット74Aの磁石部分の高さ
が、内側の磁石ユニットの磁石部分の高さよりも大きく
なっている。なお、この図面では4個の磁石ユニットを
含む例を示してある。このようにすると、ターゲット3
5の表面の磁場の強さは、両側が強く、内側が弱くな
る。図面では、強い磁場をH、弱い磁場をLで示してあ
る。Hでは、磁場強度が大きく、イオン電流密度が大き
く、スパッタエッチング量が多い。逆にLでは、スパッ
タエッチング量が少ない。
【0070】図14(C)は両側の磁場を強くするため
の別の手段を示すものである。この例では、磁石ユニッ
ト自体はすべて同じであるが、両側の磁石ユニット76
Aと磁石固定台座48の間にスペーサ77を挿入して、
両側の磁石ユニット76Aだけをターゲット35に近付
けている。したがって、両側の磁石ユニット76Aの磁
極表面と内側の磁石ユニット76Bの磁極表面との間に
は段差が付いている。このような手段によっても、ター
ゲット35の表面の磁場の強さを、両側を強く、内側を
弱くすることができる。例えば、段差が3mmのとき
に、Lの磁場強度(上述の有効磁場強度)が200G
(ガウス)に対して、Hの磁場強度が225Gとなる。
【0071】図15は、図14(A)に示す磁石組立体
を用いて基板上に成膜を行った場合の膜厚分布の等高線
を示すグラフである。条件は、ターゲットと基板の距離
が135mm、Arガスの圧力が5mTorrで、タ−
ゲット材料は銅を用いた。磁石組立体も基板も静止した
状態である。基板14のうち、矩形の測定範囲78内で
膜厚を測定した。目的とする有効領域79の寸法は、磁
石ユニットの短辺に平行な方向すなわちX方向がLX=
360mm、磁石ユニットの長辺に平行な方向すなわち
Y方向がLY=450mmである。有効領域79の範囲
内での膜厚分布の均一性は±14.3%であった。図中
の等高線の数字は、最大膜厚を100%としたときの膜
厚を百分率で示したものである。このグラフから分かる
ことは、特にX軸方向両端での膜厚分布が好ましくない
ことである。
【0072】これに対して、図16は、図14(C)に
示す磁石組立体を用いたときの膜厚分布のグラフであ
る。成膜条件は図15の場合と同じである。両側の磁石
ユニットと内側の磁石ユニットとの間の段差は5mmで
ある。この場合、360mm×450mmの有効領域7
9の範囲内で、膜厚分布の均一性は±8.1%と大幅に
改善された。図17は、段差を3mmにした場合の図1
6と同様のグラフであり、有効領域79内の膜厚分布の
均一性は±11.1%であった。このように、X軸方向
両側での磁場の強さを大きくすることにより、膜厚分布
の均一性が大きく改善された。
【0073】X軸方向両側での磁場の強さを大きくする
には、上述の手段のほかに、中心磁石および周辺磁石の
水平断面内での寸法を変えたり、磁石の材質を変えたり
することもでき、これらの手段によっても同様の効果を
得ることができる。また、図14(B)におけるスペ−
サ75は、成膜条件により使用してもしなくてもよい。
使用すれば、図14(B)と同じになり、使用しなけれ
ば、図14(C)に示すような段差の効果も加わること
になる。
【0074】図18は本発明の別の実施形態のカソード
電極の正面断面図である。このカソード電極は、図13
に示すカソード電極の磁石組立体に、図7および図8に
示す移動機構を組み合わせたものである。移動機構の構
成は、図7および図8に示すものと同じである。したが
って、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明
を省略する。
【0075】この実施形態においても、上述の図7およ
び図8に示すものと同様に、タ−ゲット面において複数
のドリフト電子の環状軌跡が周期的に移動を行うので、
タ−ゲットは移動方向両端部を除き均一に消耗され、こ
れによりタ−ゲットの利用効率が向上する。しかも、こ
の実施形態では、図13の実施形態と同様に移動方向両
端付近の磁場が内側よりも強くなっているので、このよ
うな移動機構によっては均一に消耗されにくい移動方向
両端部のターゲット部分がより積極的にスパッタリング
され、利用効率はさらに改善される。
【0076】図19は、これまで説明してきた磁石ユニ
ットとは構造の異なる別のタイプの磁石ユニットを示す
ものであり、(A)はその磁石ユニットの斜視図、
(B)はこの磁石ユニットを含む磁石組立体の正面断面
図である。この磁石ユニット85では、中心磁石が存在
せず、矩形で環状の磁石部分86だけが存在し、その内
側壁面がS極に、外側壁面がN極になっている。すなわ
ち、この磁石ユニット85を電極ハウジング内に配置す
ると、磁極面がターゲット面に対して垂直になる。この
磁石ユニット85は、図13または図18の実施形態に
おける磁石ユニットとして用いることができる。例え
ば、図19(B)に示すように、磁石ユニット85Aと
85Bを組み合わせて、外側の磁石ユニット85Aがタ
ーゲット表面に作る磁場を、内側の磁石ユニット85B
が作る磁場よりも大きくする。内側の磁石ユニット85
Aはスペーサ87の上に載せてあり、磁石部分の高さを
小さくしている。このタイプの磁石組立体を利用する
と、隣接する磁極の相互干渉を抑制するための磁気シー
ルドを磁石ユニット間に配置する必要はない。したがっ
て、磁石組立体をより小型化できる。
【0077】本発明は上述の実施形態に限定されるもの
ではなく、次のような変更が可能である。 (1)前述した各実施形態における磁石組立体およびこ
れに含まれる磁石ユニットの寸法、材料、個数等はこれ
に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱するこ
となく任意の変更が可能である。 (2)図18における磁石組立体の移動機構は、偏心カ
ムとガイド孔との組み合わせを利用しているが、これ以
外の移動機構を採用することもできる。 (3)上述の各実施形態では、磁石ユニットの磁極配置
として、中心磁石のターゲット側の磁極面がS極で、周
辺磁石のターゲット側の磁極面がN極となっているもの
を採用しているが、これと反対の磁極配置を採用しても
よい。すなわち、すべての磁石ユニットの磁極配置を、
中心磁石のターゲット側の磁極面をN極に、周辺磁石の
ターゲット側の磁極面をS極にすることができる。
【0078】
【発明の効果】本発明のすべてに共通する特徴は、両端
の磁石ユニットがターゲット表面に作る磁場が内側より
も強くなっていることであり、これにより、特に磁石ユ
ニットの短辺方向における基板上の膜厚分布が改善す
る、という共通の効果を有する。
【0079】請求項1の発明は、上述の共通の効果に加
えて、磁石ユニット間に磁気シールドを配置したので、
磁石ユニット同志の磁場の打ち消しあいをなくすととも
に、磁場の相互干渉による磁場の偏在を防いでいる。
【0080】請求項4の発明は、上述の共通の効果に加
えて、単体の磁石ユニット内では±5%以内の磁場均等
性をもたせ、磁石ユニット間では±5%以内の磁場均一
性をもたせているので、放電の偏在や不安定性がなくな
り、また、基板上の膜厚分布が向上する。
【0081】請求項5の発明は、上述の共通の効果に加
えて、複数の磁石ユニットからなる磁石組立体を往復運
動させるようにしたので、膜厚分布をより改善できると
ともに、ターゲットの利用効率を向上させることがで
き、さらに、タ−ゲット面上の堆積膜に起因して発生す
るパ−ティクルを抑制できる。
【0082】請求項8の発明は、上述の共通の効果に加
えて、隣接する磁極の相互干渉を抑制するための磁気シ
ールドを磁石ユニット間に配置する必要がなく、磁石組
立体をより小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用するスパッタリング装置の全体構
成の正面断面図である。
【図2】本発明に関連の深いカソード電極の正面断面図
である。
【図3】図2のカソード電極の磁石組立体の平面図であ
る。
【図4】図2のカソード電極の磁石ユニットの断面図、
平面図および斜視図である。
【図5】ドリフト電子の運動軌跡を示す平面図と、それ
に対応する磁石組立体の断面図である。
【図6】磁石組立体の作る磁力線を示す断面図である。
【図7】本発明に関連が深い別のカソード電極の正面断
面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】ターゲット上のエロージョン領域を示す平面図
と断面図である。
【図10】磁石組立体の磁気シールドの変更例を示す平
面図である。
【図11】磁石組立体の磁気シールドの別の変更例を示
す平面図である。
【図12】磁石組立体の磁気シールドのさらに別の変更
例を示す平面図である。
【図13】本発明の一実施形態のカソード電極の正面断
面図である。
【図14】磁石ユニットの三つの配置例を示す断面図で
ある。
【図15】図14(A)の配置を用いて作製した薄膜の
膜厚分布を示すグラフである。
【図16】図14(C)の配置で段差を5mmにして作
製した薄膜の膜厚分布を示すグラフである。
【図17】図14(C)の配置で段差を3mmにして作
製した薄膜の膜厚分布を示すグラフである。
【図18】本発明の別の実施形態のカソード電極の正面
断面図である。
【図19】別のタイプの磁石ユニットの斜視図と、これ
を使った磁石組立体の断面図である。
【図20】磁石ユニットの磁場均等性を説明するための
図面である。
【符号の説明】
22 ターゲット組立体 31 電極ハウジング 43 ヨーク 48 磁石固定台座 49 磁気シールド 74A、74B 磁石ユニット 75 スペーサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 細川 直吉 東京都府中市四谷5丁目8番1号 アネ ルバ株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−243761(JP,A) 特開 平6−192833(JP,A) 特公 昭63−65754(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 14/00 - 14/58

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部を真空状態にする排気系を備えた真
    空容器と、この真空容器の内部に配置され、成膜処理さ
    れる基板を取り付ける基板保持部材と、前記基板に対し
    て対向する位置関係で配置され、前記基板に成膜する矩
    形平面状ターゲットを備えた少なくとも1つのマグネト
    ロンカソード電極と、前記真空容器の内部にガスを流通
    させて内部圧力を適切に維持するガス制御系と、前記マ
    グネトロンカソード電極に電力を供給する電源系とを含
    むスパッタリング装置において、次の特徴を備えるスパ
    ッタリング装置。 (a)前記マグネトロンカソード電極は、矩形平面状の
    一つのターゲットの背面に複数の磁石ユニットを備え
    る。 (b)前記磁石ユニットは、ターゲット表面に平行な断
    面形状が矩形であり、その長辺が隣の磁石ユニットの長
    辺と隣り合うように、複数の磁石ユニットが配置され
    る。 (c)前記磁石ユニットの磁極配置は、同一のマグネト
    ロンカソード電極に含まれるすべての磁石ユニットにお
    いて、互いに等しい。 (d)前記磁石ユニットは、ターゲットの表面上に環状
    の電子ドリフト運動軌跡を生じさせるような構造であ
    る。 (e)前記複数の磁石ユニットのうち、磁石ユニットの
    短辺方向における両端の二つの磁石ユニットがターゲッ
    ト表面上に作る磁場の強さは、それより内側の磁石ユニ
    ットがターゲット表面上に作る磁場の強さよりも大き
    い。 (f)隣り合う前記磁石ユニットの間に磁気シールド壁
    が配置される。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のスパッタリング装置にお
    いて、前記両側の磁石ユニットの磁石部分の高さは、内
    側の磁石ユニットの磁石部分の高さよりも大きいことを
    特徴とするスパッタリング装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のスパッタリング装置にお
    いて、前記複数の磁石ユニットは、単体の磁石ユニット
    内では±5%以内の磁場均等性を有し、前記両側の二つ
    の磁石ユニット同志では±5%以内の磁場均一性を有
    し、前記内側の磁石ユニット同志では±5%以内の磁場
    均一性を有する。
  4. 【請求項4】 内部を真空状態にする排気系を備えた真
    空容器と、この真空容器の内部に配置され、成膜処理さ
    れる基板を取り付ける基板保持部材と、前記基板に対し
    て対向する位置関係で配置され、前記基板に成膜する矩
    形平面状タ−ゲットを備えた少なくとも1つのマグネト
    ロンカソ−ド電極と、前記真空容器の内部にガスを流通
    させて内部圧力を適切に維持するガス制御系と、前記マ
    グネトロンカソ−ド電極に電力を供給する電源系とを含
    むスパッタリング装置において、次の特徴を備えるスパ
    ッタリング装置。 (a)前記マグネトロンカソード電極は、矩形平面状の
    一つのターゲットの背面に複数の磁石ユニットを備え
    る。 (b)前記磁石ユニットは、ターゲット表面に平行な断
    面形状が矩形であり、その長辺が隣の磁石ユニットの長
    辺と隣り合うように、複数の磁石ユニットが配置され
    る。 (c)前記磁石ユニットの磁極配置は、同一のマグネト
    ロンカソード電極に含まれるすべての磁石ユニットにお
    いて、互いに等しい。 (d)前記磁石ユニットは、ターゲットの表面上に環状
    の電子ドリフト運動軌跡を生じさせるような構造であ
    る。 (e)前記複数の磁石ユニットのうち、磁石ユニットの
    短辺方向における両端の二つの磁石ユニットがターゲッ
    ト表面上に作る磁場の強さは、それより内側の磁石ユニ
    ットがターゲット表面上に作る磁場の強さよりも大き
    い。 (f)前記複数の磁石ユニットは、単体の磁石ユニット
    内では±5%以内の磁場均等性を有し、前記両側の二つ
    の磁石ユニット同志では±5%以内の磁場均一性を有
    し、前記内側の磁石ユニット同志では±5%以内の磁場
    均一性を有する。
  5. 【請求項5】 請求項4記載のスパッタリング装置にお
    いて、前記磁石ユニットは、その矩形の短辺方向に往復
    運動可能であることを特徴とするスパッタリング装置。
  6. 【請求項6】 内部を真空状態にする排気系を備えた真
    空容器と、この真空容器の内部に配置され、成膜処理さ
    れる基板を取り付ける基板保持部材と、前記基板に対し
    て対向する位置関係で配置され、前記基板に成膜する矩
    形平面状タ−ゲットを備えた少なくとも1つのマグネト
    ロンカソ−ド電極と、前記真空容器の内部にガスを流通
    させて内部圧力を適切に維持するガス制御系と、前記マ
    グネトロンカソ−ド電極に電力を供給する電源系とを含
    むスパッタリング装置において、次の特徴を備えるスパ
    ッタリング装置。 (a)前記マグネトロンカソード電極は、矩形平面状の
    一つのターゲットの背面に複数の磁石ユニットを備え
    る。 (b)前記磁石ユニットは、ターゲット表面に平行な断
    面形状が矩形であり、その長辺が隣の磁石ユニットの長
    辺と隣り合うように、複数の磁石ユニットが配置され
    る。 (c)前記磁石ユニットの磁極配置は、同一のマグネト
    ロンカソード電極に含まれるすべての磁石ユニットにお
    いて、互いに等しい。 (d)前記磁石ユニットは、ターゲットの表面上に環状
    の電子ドリフト運動軌跡を生じさせるような構造であ
    る。 (e)前記複数の磁石ユニットのうち、磁石ユニットの
    短辺方向における両端の二つの磁石ユニットがターゲッ
    ト表面上に作る磁場の強さは、それより内側の磁石ユニ
    ットがターゲット表面上に作る磁場の強さよりも大き
    い。 (f)前記両側の磁石ユニットのターゲット側の磁極面
    からターゲット表面までの距離は、前記内側の磁石ユニ
    ットのターゲット側の磁極面からターゲット表面までの
    距離よりも小さい。
  7. 【請求項7】 請求項1、4または6のいずれか1項に
    記載のスパッタリング装置において、前記磁石ユニット
    は、ヨークと、ヨークの上に固定された中心磁石と、ヨ
    ークの上に固定されて中心磁石を取り囲む周辺磁石とか
    ら構成され、中心磁石と周辺磁石は、ヨークに固定され
    た面とターゲット側の面とに磁極面が存在し、中心磁石
    のターゲット側の磁極と周辺磁石のターゲット側の磁極
    とが互いに逆極性であることを特徴とするスパッタリン
    グ装置。
  8. 【請求項8】 内部を真空状態にする排気系を備えた真
    空容器と、この真空容器の内部に配置され、成膜処理さ
    れる基板を取り付ける基板保持部材と、前記基板に対し
    て対向する位置関係で配置され、前記基板に成膜する矩
    形平面状タ−ゲットを備えた少なくとも1つのマグネト
    ロンカソ−ド電極と、前記真空容器の内部にガスを流通
    させて内部圧力を適切に維持するガス制御系と、前記マ
    グネトロンカソ−ド電極に電力を供給する電源系とを含
    むスパッタリング装置において、次の特徴を備えるスパ
    ッタリング装置。 (a)前記マグネトロンカソード電極は、矩形平面状の
    一つのターゲットの背面に複数の磁石ユニットを備え
    る。 (b)前記磁石ユニットは、ターゲット表面に平行な断
    面形状が矩形であり、その長辺が隣の磁石ユニットの長
    辺と隣り合うように、複数の磁石ユニットが配置され
    る。 (c)前記磁石ユニットの磁極配置は、隣り合う磁石ユ
    ニット同志で互いに逆極性である。 (d)前記磁石ユニットは、ターゲットの表面上に環状
    の電子ドリフト運動軌跡を生じさせるような構造であ
    る。 (e)前記複数の磁石ユニットのうち、磁石ユニットの
    短辺方向における両端の二つの磁石ユニットがターゲッ
    ト表面上に作る磁場の強さは、それより内側の磁石ユニ
    ットがターゲット表面上に作る磁場の強さよりも大き
    い。
  9. 【請求項9】 請求項8記載のスパッタリング装置にお
    いて、前記磁石ユニットは、中心磁石のない枠状の矩形
    の磁石で構成されていてターゲット表面に垂直な磁極面
    を有することを特徴とするスパッタリング装置。
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