先ず始めに、本発明の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバおよび最適オン/オフ時刻算出処理システムの各種態様について説明する。
本発明に係る第1の態様の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、
複数の空気調和機のそれぞれに対応する室内温度記録情報、室外温度記録情報、消費電力記録情報、機種情報および設定温度記録情報を含むデータベース、前記データベースに含まれるデータに基づいて決定された空気調和機設置場所における住宅冷温熱保持能力、並びに前記データベースに含まれるデータに基づいて作成された室温変化予測モデルおよび消費電力予測モデル、を記憶するように構成された記憶装置と、
前記複数の空気調和機における1つの予測対象空気調和機をオンまたはオフするオン/オフ設定時刻を含む最適オン/オフ時刻算出要求に対して、前記予測対象空気調和機の前記住宅冷温熱保持能力、前記室温変化予測モデルおよび前記消費電力予測モデルに基づいて、室温変化を算出するように構成された予測演算部と、
前記最適オン/オフ時刻算出要求に対して、前記室温変化および前記オン/オフ設定時刻に基づいて、前記予測対象空気調和機の設置場所における快適指標が所定範囲内に維持される最適オン/オフ時刻を算出するように構成された最適オン/オフ時刻演算部と、
前記最適オン/オフ時刻を前記予測対象空気調和機へ送信するように構成されたサーバ送信部と、
を備える。
本発明に係る第2の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第1の態様において、
前記オン/オフ設定時刻が前記予測対象空気調和機を運転停止するオフ時刻である場合、前記最適オン/オフ時刻演算部は、前記予測対象空気調和機の前記オン/オフ設定温度に基づいて、前記予測対象空気調和機の設置場所において前記オフ時刻まで前記快適指標が前記所定範囲内に維持される快適温度を決定し、前記室温変化に基づいて、室内温度が前記快適温度に到達するまでの事前停止期間を算出し、前記オフ時刻より前記事前停止期間だけ早い時刻を最適オフ時刻とするように構成されてもよい。
本発明に係る第3の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第1の態様または第2の態様において、
前記オン/オフ設定時刻が前記予測対象空気調和機を運転開始するオン時刻である場合、前記最適オン/オフ時刻演算部は、前記予測対象空気調和機の前記設定温度記録情報に基づいて、前記予測対象空気調和機の設置場所において前記オン時刻から前記快適指標が前記所定範囲で維持する快適温度を決定し、前記室温変化に基づいて、室内温度が前記快適温度に到達するまでの予備作動期間を算出し、前記オン時刻より前記予備作動期間だけ早い時刻を最適オン時刻とするように構成されてもよい。
本発明に係る第4の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第2の態様または第3の態様において、
前記予測対象空気調和機が冷房モードにある場合、前記快適温度が前記予測対象空気調和機の前記設定温度記録情報の設定温度より高い温度となり、前記予測対象空気調和機が暖房モードにある場合、前記快適温度が前記予測対象空気調和機の前記設定温度記録情報の設定温度より低い温度となるよう構成されている。
本発明に係る第5の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第1の態様から第4の態様のいずれかの態様において、
前記快適指標が、予測温冷感申告(PMV)指数、予測不快者率(PPD)または標準有効温度(SET*)であってもよい。
本発明に係る第6の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第1の態様において、
前記サーバが、前記データベースに含まれるデータに基づいて住宅冷温熱保持能力推定モデル、前記室温変化予測モデルおよび前記消費電力予測モデルを作成するモデル演算部をさらに備え、
前記予測演算部が、住宅冷温熱保持能力推定モデルおよび前記データベースに含まれるデータに基づいて、前記予測対象空気調和機の前記設置場所の前記住宅冷温熱保持能力を決定するように構成されてもよい。
本発明に係る第7の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第6の態様において、
前記モデル演算部が、前記室内温度記録情報に基づいて一定時間の室内温度変化率を算出し、前記室内温度変化率および前記機種情報に基づいてクラスタ分けをすることにより前記住宅冷温熱保持能力推定モデルを作成するよう構成されてもよい。
本発明に係る第8の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第7の態様において、
前記モデル演算部が、前記室内温度記録情報において前記空気調和機が停止してから一定時間の温度変化率を前記室内温度変化率として算出するよう構成されてもよい。
本発明に係る第9の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第6の態様から第8の態様のいずれかの態様において、
前記モデル演算部が、重回帰分析、勾配ブースティングまたはロジスティック回帰分析によって、前記データベースに含まれるデータに基づいて、前記室温変化予測モデルおよび前記消費電力予測モデルを作成するよう構成されてもよい。
本発明に係る第10の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第6の態様から第9の態様のいずれかの態様において、
一定時間ごとに収集される前記複数の空気調和機のそれぞれの現在室内温度情報、現在室外温度情報および現在消費電力情報を受信して、前記複数の空気調和機のそれぞれに対応する前記室内温度記録情報、前記室外温度記録情報および前記消費電力記録情報に加える第1サーバ受信部と、
外部情報源から、前記複数の空気調和機のそれぞれの設置場所に対応する室外温度予測情報を受信する第2サーバ受信部と、を備えてもよい。
本発明に係る第11の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第6の態様から第10の態様のいずれかの態様において、
情報端末または前記予測対象空気調和機から前記最適オン/オフ時刻算出要求を受信する第3サーバ受信部を備えてもよい。
本発明に係る第12の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバは、前記の第6の態様から第11の態様のいずれかの態様において、
前記モデル演算部が、前記住宅冷温熱保持能力推定モデル、前記室温変化予測モデルまたは前記消費電力予測モデルを定期的に更新するよう構成されてもよい。
本発明に係る第13の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理システムは、
前記の第1の態様から第12の態様のいずれかの態様のサーバと、
前記サーバへ現在室内温度情報、現在室外温度情報、現在消費電力情報、設定温度記録情報、および機種情報の各データを送信し、前記サーバから最適オン/オフ時刻を受信し、前記最適オン/オフ時刻にしたがって運転開始または運転停止を行うように構成された予測対象空気調和機と、
前記予測対象空気調和機または前記サーバへオン/オフ設定時刻を送信するように構成された情報端末と、を備える。
本発明に係る第14の態様の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理システムは、
前記予測対象空気調和機または前記情報端末が、前記サーバへ最適オン/オフ時刻算出要求を送信するように構成されてもよい。
《実施形態1》
以下、本発明に係る空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバおよび最適オン/オフ時刻算出処理システムの一実施形態である実施形態1について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本発明に係る最適オン/オフ時刻算出処理を実行することにより、空気調和機において使用者が設定したオンまたはオフの設定時刻(オン/オフ設定時刻)に対して、最適オン/オフ時刻を算出し、算出された最適オン/オフ時刻により当該空気調和機を制御して、省エネルギー化および快適性維持の両立を図ることができる。
以下で説明する実施形態1は、本発明の一例を示すものである。以下の実施形態1において示される数値、形状、構成、ステップ、およびステップの順序などは、一例を示すものであり、本発明を限定するものではない。以下の実施形態1における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
以下に述べる実施形態1において、特定の要素に関しては変形例を示す場合があり、その他の要素に関しては任意の構成を適宜組み合わせることを含むものであり、組み合わされた構成においてはそれぞれの効果を奏するものである。実施形態1において、それぞれの変形例の構成をそれぞれ組み合わせることにより、それぞれの変形例における効果を奏するものとなる。
以下の実施形態1の空気調和機においては、冷房および暖房の機能を有する空気調和機について説明するが、この構成は例示であり、本発明は、以下の実施形態において説明する構成に限定されるものではなく、本発明の技術的特徴を適用した各種空調機能、例えば、冷房および暖房の機能の他に、除湿機能、空気洗浄機能などを有する空気調和機を含むものである。
以下の実施形態1の詳細な説明において、「第1」、「第2」などの用語は、説明のためだけに用いられるものであり、相対的な重要性または技術的特徴の順位を明示または暗示するものとして理解されるべきではない。「第1」と「第2」と限定されている特徴は、1つまたはさらに多くの当該特徴を含むことを明示または暗示するものである。
本発明に係る実施形態1は、空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバおよび最適オン/オフ時刻算出処理システムを示すものである。実施形態1の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理システムは、空気調和機およびその空気調和機に関連する情報端末がインターネットを経由してサーバとの間でデータ伝達を行い、空気調和機に対する制御可能なシステムである。このシステムにおいては、空気調和機群50である複数の空気調和機の少なく1つからの要求(リクエスト)またはそれに関連する情報端末からの要求に応じて、インターネットを介してサーバがデータの提供および/またはデータの処理結果の提供を行い、空気調和機を制御可能とする構成である。
図1は、実施形態1の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理システム1の概略構成を示すブロック図である。以下、図1に示す最適オン/オフ時刻算出処理システム1の概要について説明する。実施形態1の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理システム1においては、複数の地域にそれぞれ設置された複数の空気調和機30で構成される空気調和機群50におけるそれぞれの空気調和機30がインターネットを経由してサーバ10に接続される構成である。実施形態1の最適オン/オフ時刻算出処理システム1では、空気調和機群50の複数の空気調和機30における特定の空気調和機(予測対象空気調和機)32およびその予測対象空気調和機32に対応する情報端末20がインターネットを経由してサーバ10に接続可能な構成について説明する。
実施形態1の空気調和機30の最適オン/オフ時刻算出処理システム1は、サーバ10と、情報端末20と、少なくとも予測対象空気調和機32とを備える。最適オン/オフ時刻算出処理システム1においては、使用者が、情報端末20を介して、予測対象空気調和機32に対するオン時刻またはオフ時刻を設定し、予測対象空気調和機32に対する最適オン/オフ時刻算出要求が形成されると、後述するように、省エネルギー化を図り、かつ、予測対象空気調和機32の設置場所における使用者の快適指標が所定範囲に維持されるように、最適オン/オフ時刻が算出される構成である。
また、最適オン/オフ時刻算出処理システム1においては、予測対象空気調和機32を含む全ての空気調和機30のそれぞれが、インターネットを介して自身の運転記録などの各種データをサーバ10へ送信することができる構成である。最適オン/オフ時刻算出処理システム1における複数の空気調和機30としては、日本全国または世界の各地域に設けられている構成が想定される。それぞれの空気調和機30は、各家庭および/または各オフィスにおける部屋の特定な場所(壁面、天井など)に設けられている。空気調和機30においては、例えば、内蔵の温度センサなどを用いて、一定時間ごとに設置された部屋の室内温度または室外温度(外気温度)を検出することが可能な構成を有している。また、空気調和機30は、一定時間ごとにその時の消費電力および/または当該空気調和機30の設定温度を記録することができる構成である。
上記のように構成された複数の空気調和機30における1つが予測対象空気調和機32であり、この予測対象空気調和機32が、設定時刻に対して最適オン/オフ時刻を算出するための最適オン/オフ時刻算出処理の実行対象である。算出された最適オン/オフ時刻にしたがって、予測対象空気調和機32が運転開始(オン)または運転停止(オフ)する。なお、実施形態1においては、複数の空気調和機30の1つとして予測対象空気調和機32について説明するが、他の空気調和機30において同様の構成としてもよい。
情報端末20は、予測対象空気調和機32のコントローラであってもよく、また、予測対象空気調和機32との間でデータ通信を行うことができる端末、例えば、専用アプリケーションが組み込まれたスマートフォン、携帯電話、モバイルフォン、タブレット、ウェアラブル装置、コンピュータなどであってもよい。
サーバ10としては、例えば、複数の空気調和機30を管理するため、またはデータを収集するための空気調和機30の製造会社の管理サーバであってもよい。または、サーバ10は、インターネットを介して、予測対象空気調和機32に関するサービスを提供するように情報端末20において実行されるアプリケーションと接続するアプリケーションサーバであってもよい。実施形態1においては、サーバ10が、記憶装置11と、予測演算部13と、サーバ送信部14と、を備える。また、サーバ10はモデル演算部12をさらに備えてもよい。サーバ10は、複数の空気調和機30のそれぞれと、例えば気象情報源などの外部情報源40とからインターネットを経由してデータを受信することができる。
サーバ10と、情報端末20と、複数の空気調和機(予測対象空気調和機32を含む)30と、外部情報源(気象情報源など)40との間において、データの送受信を行うために用いられる通信手段としては、有線LAN、無線LAN、携帯情報端末キャリアの通信網を利用した通信などの通信手段であってもよい。例えば、空気調和機30はWi-Fi(登録商標)ルータを介してインターネットとサーバ10と通信可能であり、情報端末20が空気調和機30のコントローラである場合、情報端末20も空気調和機30およびWi-Fi(登録商標)ルータを介してインターネットとサーバ10と通信可能である。
実施形態1において、記憶装置11に記憶されたデータベースは、複数の空気調和機30のそれぞれにおける室内温度記録情報、室外温度記録情報、消費電力記録情報、機種情報、および設定温度記録情報などを含む。また、記憶装置11には、データベースに含まれるデータに基づいて推定された、空気調和機30の設置場所の住宅冷温熱保持能力、並びに「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」が記憶されている。
モデル演算部12は、データベースに含まれるデータに基づいて、後述する「住宅冷温熱保持能力推定モデル」、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成し、記憶装置11に保存することができる。
予測演算部13は、作成された「住宅冷温熱保持能力推定モデル」、およびデータベースに含まれるデータに基づいて、予測対象空気調和機32が設置された場所の「住宅冷温熱保持能力」を推定することができる。また、予測演算部13は、最適オン/オフ時刻算出要求に対して、「室温変化予測モデル」、「消費電力予測モデル」および推定した「住宅冷温熱保持能力」に基づいて、特定の期間内に予測対象空気調和機32の設置場所における室温変化を算出する。
算出された室温変化を利用して、最適オン/オフ時刻演算部18は室温変化および設定時刻に基づいて、予測対象空気調和機32の設置場所における快適指標が所定範囲で維持するような最適オン/オフ時刻を算出する。
サーバ送信部14は、予測演算部13において算出された最適オン/オフ時刻を予測対象空気調和機32へ送信する。予測対象空気調和機32は最適オン/オフ時刻にしたがって運転開始(オン)または運転停止(オフ)される。
前述した「住宅冷温熱保持能力推定モデル」、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」の作成、および作成した各モデルを用いる予測については後に図面をもって詳細に説明する。なお、実施形態1の説明において、「住宅冷温熱保持能力」とは、住宅(オフィスを含む)において空気調和機30が設置された部屋における冷温熱の熱量の保持能力を示す指標であり、当該部屋における夏場の冷えやすさ/冷えにくさ、冬場の暖めやすさ/暖めにくさを示す指標となる。すなわち、「住宅冷温熱保持能力」とは、空気調和機が設けられた部屋の室外に対する断熱能力を示しており、「住宅冷温熱保持能力」が高ければ当該部屋は冷房能力の低い機器で素早く冷やすことが可能であり、暖房能力の低い機器で素早く温めることが可能である。
また、「住宅冷温熱保持能力推定モデル」とは、空気調和機群50におけるいずれかの空気調和機30が設置された住宅(部屋)に関する「住宅冷温熱保持能力」の指標を作成するために、過去から現在に至るまでの当該住宅(部屋)に関連する複数のデータに基づいて作成されたモデルである。この「住宅冷温熱保持能力推定モデル」は、対象となる住宅(部屋)の「住宅冷温熱保持能力」を推定するために用いられる。また、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」に関しても、過去から現在に至るまで予測対象の住宅(部屋)に関連する複数のデータに基づいて作成されたモデルであり、対象となる住宅(部屋)の室温変化および消費電力の予測に用いられる。
「室温変化予測モデル」は、空気調和機30が設置された住宅(部屋)室内温度の特定の期間内の変化の推移を示す予測モデルである。「消費電力予測モデル」は、その特定の期間内の消費電力を示す予測モデルである。
図2は、実施形態1の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理システム1において、全体的な最適オン/オフ時刻の算出フローを示す概略図である。まず、サーバ10は「住宅冷温熱保持能力推定モデル」、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成するための各種データを空気調和機30(予測対象空気調和機32を含む)、および/または外部情報源(気象情報源など)40から受信する。受信したデータは記憶装置11のデータベースに保存される(図2のステップS110およびステップS120を参照)。図2において、サーバ10が空気調和機30(32)からデータを受信するフローで示しているが、サーバ10においては、各地域に分散している複数の空気調和機30のそれぞれから各種データを受信する構成であることを示している。なお、それぞれの空気調和機30においては、空気調和機30が設置されて、最初に起動されたときに、インターネットを経由して自身の機種情報がサーバ10に送信される構成としてもよく、空気調和機30に専用アプリケーションが組み込まれたときに、その空気調和機30の機種情報がサーバ10に送信される構成としてもよい。
実施形態1において、空気調和機30としては、室内機の吸込み口に設けられて室内温度を検出する温度センサと、室外機に設けられて室外温度を検出する温度センサとを備えた構成としてもよい。
空気調和機30においては、確認した現在室内温度、現在室外温度、現在消費電力、および設定温度などの現在状態を示すデータを即時にサーバ10に送信してもよい。または、確認したデータは、当該空気調理器30の内部記憶装置に一旦書き込み、一定時間が経過した後にサーバ10に送信してもよい。若しくは、空気調和機30においては、確認されたデータにおいて一定量のデータが累計された後にサーバ10に送信してもよい。
更に、空気調和機30としては、特定時間において、例えば、日本標準時の5分間隔(例えば、17:00、17:05、17:10、…)において現在状態を確認してもよく、または、空気調和機30が起動してから5分毎に現在状態を確認してもよい。なお、空気調和機30においては、起動していない状態であっても現在室内温度、現在室外温度、現在消費電力などの現在状態を検出して、サーバ10への送信が可能な構成としてもよい。
また、実施形態1における変形例として、空気調和機30が室外機に温度センサを備えていない構成においては、サーバ10が当該空気調和機30の設置場所の外気温度に関して外部情報源40である気象情報源に問い合わせて、外部情報源40から現在室外温度を取得する構成としてもよい。
更に、実施形態1における他の変形例としては、空気調和機30が、所謂スマートハウスに設けられた場合である。そのようなスマートハウスには各種の設備機器の制御を行うために各種のセンサが設けられており、当該空気調和機30が設けられた部屋には温度センサなどの温度検出手段が設けられている。このため、サーバ10においては、スマートハウスにおける空気調和機30が設けられた部屋の温度センサなどの温度検出手段により検出された温度情報を現在室内温度のデータとして当該スマートハウスから受信してもよい。若しくは、当該スマートハウスの管理サーバから当該空気調和機30が設けられた部屋の温度情報をサーバ10が受信する構成としてもよい。
上記のように、予測対象空気調和機32を含む全ての空気調和機30からは、サーバ10に対して、現在室内温度、現在室外温度、現在消費電力、現在設定温度および機種情報などの各種データが送信される。
このため、サーバ10は予測対象空気調和機32を含む複数の空気調和機30からの各種データを受信するための第1サーバ受信部15をさらに備えてもよい。第1サーバ受信部15は、前述の一定時間ごとに収集される各空気調和機30からの現在室内温度、現在室外温度および現在消費電力の各検出データを受信して、それぞれの空気調和機30に対応する室内温度記録情報、室外温度記録情報および消費電力記録情報に加えるようにデータベースに書き込んでもよい。
また、予測対象空気調和機32を含む複数の空気調和機30において、現在室外温度のデータを受信できない空気調和機が存在する場合には、サーバ10は外部情報源40からその地域の外気温度情報を現在室外温度情報として受信する第2サーバ受信部16をさらに備えてもよい。第2サーバ受信部16は外部情報源40から当該空気調和機の設置場所の外気温度情報を現在室外温度情報として受信し、対応する現在室外温度記録情報に加えるようにデータベースに書き込んでもよい。
記憶装置11のデータベースには、それぞれの空気調和機30に対応する、機器ID情報、時刻情報、設定温度記録情報、室内温度記録情報、室外温度記録情報、消費電力記録情報または機種情報などの各データが保存されている。データベースに保存されている時刻情報は、室内温度および/または室外温度が検出された日本標準時の時刻であり、その時刻の期日と共に保存されてもよい。室内温度記録情報、室外温度記録情報および消費電力記録情報のそれぞれの記録データは、対応する空気調和機において確認され保存された室内温度、室外温度および消費電力の累積データを示しており、ログデータと呼ばれる。
なお、現在消費電力情報または消費電力記録情報に関しては、電力値[W]の値を記録データとして用いてもよいが、空気調和機の機種が特定され、電源電圧が規定されるため、電流値を記録データとし用いることも可能である。具体的には、空気調和機の電源電圧と電流値の積が空気調和機の消費電力の概略を示すものとなる。
前述したデータベースに保存されている各種データに基づいて、モデル演算部12は予測用の「住宅冷温熱保持能力推定モデル」、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成する(図2のステップS130)。
[住宅冷温熱保持能力推定モデルの作成]
以下、図3を用いて本発明の実施形態1における「住宅冷温熱保持能力推定モデル」の作成について説明する。図3は、「住宅冷温熱保持能力推定モデル」の作成フローを示す図である。
本発明における「住宅冷温熱保持能力」とは、前述のように、空気調和機30の設置場所の住宅(部屋)における冷温熱の熱量の保持能力を示す指標をいう。すなわち、「住宅冷温熱保持能力」は、空気調和機30の設置場所の冷えやすさ/冷えにくさ、および暖めやすさ/暖めにくさを示す指標であり、例えば、住宅(部屋)の建物種別、広さ、築年数、木造構造/鉄筋構造、壁面(断熱)構造などに影響される。「住宅冷温熱保持能力」は、空気調和機30の冷房モードまたは暖房モードの運転が停止してから一定時間の間の室内温度変化率の推移に深く関係すると考えられる。「住宅冷温熱保持能力」は、前述したように空気調和機停止からの一定時間の室内温度変化率に応じて、複数のタイプに分けてもよい。例えば、暖房モードの運転が停止すると、空気調和機30の設置場所である住宅(部屋)が「冷えにくい」、「やや冷えにくい」、「やや冷えやすい」、および「冷えやすい」とそれぞれを代表するタイプA、B、C、Dの4つに分けることが可能である。
実施形態1において、モデル演算部12は、それぞれの空気調和機30からの各種データが格納されたデータベースから、室内温度記録情報、室外温度記録情報、消費電力記録情報、および室内温度変化量を取得する(図3のステップS210)。なお、室内温度変化量をモデル作成に使わずに、モデル演算部12は、取得した室内温度記録情報に基づいて、それぞれの空気調和機30が停止してから一定時間における室内温度の温度変化を、室内温度変化率として算出してもよい。図4Aは、冬場において暖房モードで運転していた空気調和機30を停止してから一定時間の間の室内温度の変化の推移の一例を示すグラフである。例えば、空気調和機30の運転が停止してから一定時間経過後における室内温度変化量は、空気調和機30が停止する時点の初期の室内温度(Tin_t0)から、一定時間経過後の室内温度(Tin_tc)を差し引いた値である。図4Aのグラフに示すように、一定時間(tc)が経過した時の室内温度(Tin_tc)は、室外温度(Tout_t0)に近づいている。ここでは、室外温度(Tout_t0)は一定時間(tc)が経過した後も同じ温度で推移していると仮定している。
図4Aにおいては、冬場において暖房モードで運転する空気調和機30の室内温度変化率を例として示しているが、夏場に冷房モードで運転するときの室内温度変化率も同様に算出できる。また、モデル演算部12は、データベースからのデータに基づいて、他の季節における「住宅冷温熱保持能力推定モデル」をそれぞれ作成してもよい。それぞれの季節に応じた「住宅冷温熱保持能力推定モデル」を作成することにより、それぞれの季節に適合した、より最適で正確な予測を行うことが可能となる。
データベースからのデータに基づいて、それぞれの空気調和機30における毎回の運転に対して室内温度変化率を算出してもよいが、複数回に1回の頻度で一部の運転に対する室内温度変化率を算出してもよい。モデル演算部12は、通常、それぞれの空気調和機30に関して、複数回の運転に対する室内温度変化率を算出する。
また、任意の室外温度と室内温度のもとで算出される室内温度変化量を、同じ影響度とみなすために、室外温度を用いて下記式(1)によって室内温度変化量を正規化した室内温度変化率として用いてもよい。
ここで、Tin_t0は空気調和機30が停止する時点の初期の室内温度であり、Tout_t0は空気調和機30が停止する時点の初期の室外温度であり、Tin_tcは空気調和機30の運転が停止してから一定時間後の室内温度である。
次に、モデル演算部12は、各空気調和機30の室内温度変化量を正規化した室内温度変化率によって、室内温度変化率の度数分布を作成する(図3のステップS220)。度数分布を作成するために、これらの室内温度変化率を所定の区間(ビンとも呼ばれる)に区切ってもよい。図4Bは、実施形態1における室内温度変化率の度数分布の一例を示す表である。図4Bに示すように、機器IDが[A]である1つの空気調和機30に対して、対応する室内温度記録によって、上記の式(1)により、−0.35、−0.22および−0.41の室内温度変化率が算出されている。同様に、機器IDが[B]である1つの空気調和機30に対して、対応する室内温度記録によって、−0.65および−0.32の室内温度変化率が算出されている。0.1の区間で区切ると、[A]の空気調和機30に対応する室内温度変化率は、区間(−0.3,−0.4](すなわち、−0.4以上で−0.3未満の範囲、以下同様)、(−0.2,−0.3]、および(−0.4,−0.5]にそれぞれ属することとなる。同様のやり方によって、[B]の空気調和機30に対応する室内温度変化率は、区間(−0.6,−0.7]および(−0.3,−0.4]にそれぞれ属することとなる。このように算出され分類された室内温度変化率に基づいて、それぞれの空気調和機30(機器ID)に対して、0.1の区間ベースの室内温度変化率の度数分布を作成することができる。
例えば、図4Bに示した例において、[A]の空気調和機30に対しては、室内温度変化率が(−0.2,−0.3]と(−0.3,−0.4]と(−0.4,−0.5]という3つの区間に区切られ、それぞれの区間に属する室内温度変化率の数が全ての室内温度変化率の数に占める割合は、同じ割合であり、0.33(33%)という度数分布が得られる。[B]の空気調和機30に対しては、室内温度変化率が(−0.2,−0.3]と(−0.3,−0.4]と(−0.4,−0.5]と(−0.5,−0.6]という4つの区間に区切られ、それぞれの区間に属する室内温度変化率の数が全ての室内温度変化率の数に占める割合は、0(0%)、0.5(50%)、0(0%)、0.5(50%)という度数分布が得られる。
室内温度変化率が小さいということは、設置場所の「住宅冷温熱保持能力」が高くて、暖房モードの運転を停止しても室内温度があまり低下しない住宅であり、冬場において暖かさを維持できる住宅であることを表す。一方、室内温度変化率が大きくなると、「住宅冷温熱保持能力」が低いことを示し、暖房モードの運転が停止した後は室内温度が急激に低下しやすく、冬場において暖かさの維持が困難な住宅であることを表す。
図5は、実施形態1において、室内温度変化率の度数分布に対するクラスタ分けの具体例を説明する図である。サーバ10におけるモデル演算部12は、全ての空気調和機30に対する度数分布を作成して、図5に示すように、クラスタ分け、すなわち、クラスタリングする。一例として、それぞれの空気調和機30の間のユークリッド距離を計算し、距離が近い空気調和機30からクラスタリングしていく。例えば、機器IDが[A]である空気調和機30は、機器IDが[B]である空気調和機30からの距離より、機器IDが[C]である空気調和機30からの距離の方が短いため、機器IDが[A]と[C]との2つの空気調和機30が1つのクラスタとなる。このように階層的なクラスタリングにより分類し、最終的には所定数のクラスタ、例えば、4つのクラスタを取得してもよい。これにより、複数の「住宅冷温熱保持能力」にそれぞれ対応する複数のクラスタを取得し(図3のステップS230)、クラスタ分けの結果が「住宅冷温熱保持能力推定モデル」として保存される。図5に示した例示的な具体例においては、冬場における空気調和機停止時でも「住宅冷温熱保持能力」としては、「冷えにくい」、「やや冷えにくい」、「やや冷えやすい」、および「冷えやすい」という4つのクラスタ[A]〜[D]に分類される。
前述した「住宅冷温熱保持能力推定モデル」の作成には機械学習などの人工知能(AI)技術を適用することができる。すなわち、データベースにおけるデータに対してクラスタを生成するように機械学習等を適用することができる。よって、住宅冷温熱保持能力推定モデルを用いて推定するAIを生成することができる。
なお、前述した例はユークリッド距離による重心法を用いて「住宅冷温熱保持能力推定モデル」を作成した例で説明したが、変形例として、機械学習において、他にユークリッド平方距離、標準化ユークリッド距離、ミンコフスキー距離、マハラノビスの距離などを用いてもよく、最短距離法、最長距離法、メジアン法、群平均法、ウォード法、可変法などを用いてもよい。
全ての空気調和機30の度数分布または対応するクラスタは、記憶装置11、モデル演算部12またはサーバ10内の他の記録媒体に保存されてもよい。モデル演算部12または予測演算部13が特定の空気調和機30の「住宅冷温熱保持能力」を取得しようとする場合には、保存された度数分布またはクラスタを読み出して用いることができる。
一方、新規の空気調和機30に対しては、モデル演算部12または予測演算部13が、図6に示された推定フローにしたがって、前述した「住宅冷温熱保持能力推定モデル」およびデータベースに保存された各種データに基づいて判断することができる。
新規の空気調和機30が運転を開始した後、当該新規の空気調和機30は、自身の運転記録を蓄積し始める。サーバ10はインターネットを介して新規の空気調和機30からもその運転記録などのデータを受信し、記憶装置11のデータベースに書き込んでいく。モデル演算部12および/または予測演算部13は、新規の空気調和機30について、データベースによって一定期間内の室内温度変化率を取得し(ステップS310)、新規の空気調和機30の室内温度変化率(正規化)の度数分布を作成する(ステップS320)。そして、新規の空気調和機30の度数分布、および、既に保存されている各住宅冷温熱保持能力に対応するクラスタ、すなわち、「住宅冷温熱保持能力推定モデル」によって、新規の空気調和機30の「住宅冷温熱保持能力」を推定する(ステップS330)。推定された新規の空気調和機30の「住宅冷温熱保持能力」は、データベースに保存される。
ステップS330において「住宅冷温熱保持能力」を推定するとき、図7に示したように、ユークリッド距離による重心法を用いて、各クラスタの重心との距離によって新規の空気調和機30の「住宅冷温熱保持能力」を判断してもよい。図7は、実施形態1において新規の空気調和機の「住宅冷温熱保持能力」を推定する場合の具体例を説明する図である。図7に示された新規の空気調和機30の場合は、クラスタ[A]の重心に最も近いため、当該新規の空気調和機30はクラスタAに所属させる。したがって、当該新規の空気調和機30の住宅冷温熱保持能力は、クラスタAに分類され、冬場において空気調和機停止時でも「冷えにくい」住宅であると推定される。
なお、図5の左上側の図表および図7の右側の図表において、横軸は、室内温度変化率の範囲の(−0.2,−0.3]であり、縦軸は、室内温度変化率の範囲の(−0.3,−0.4]であってその範囲に当てはまる空気調和機30の度数である。なお、ここでいう「度数」とは、図4Bとともに説明したように、その温度変化率の範囲に含まれる割合を表している。
なお、既存のデータが保存されているデータベースに対して、新規の空気調和機30からもたらされる新規データを加えて、クラスタ全体を再計算し、「住宅冷温熱保持能力推定モデル」を更新してもよい。
各クラスタに対して、モデル演算部12は、データベースに基づいて、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」をさらに作成する。「住宅冷温熱保持能力」が高い(例えば、クラスタ[A])住宅(部屋)においては、室内温度が変化しにくい。一方、「住宅冷温熱保持能力」が低い(例えば、クラスタ[D])住宅(部屋)においては、室内温度が変化しやすい。そのため、それぞれのクラスタ([A]〜[D])に対応する「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成してそれらに基づいて予測を行えば、予測の精度を向上させることができる。なお、モデル演算部12は1つの汎用の「室温変化予測モデル」を作成してよいが、予測の精度を向上させるためには、各クラスタに対して、空気調和機運転時(すなわち、空気調和機30の運転が継続しているとき)の「室温変化予測モデル」と、空気調和機停止時(すなわち、空気調和機30の運転が停止しているとき)の「室温変化予測モデル」と、空気調和機運転時の「消費電力予測モデル」と、を作成することが好ましい。後述する最適オン/オフ時刻を算出する際にも、汎用の「室温変化予測モデル」を利用して室温変化を算出してもよく、運転時と停止時とが分けられた「室温変化予測モデル」を利用して室温変化を算出してもよい。
[室温変化予測モデルおよび消費電力予測モデルの作成]
以下は、各クラスタ([A]〜[D])に対して、空気調和機運転時の「室温変化予測モデル」と、空気調和機停止時の「室温変化予測モデル」と、空気調和機運転時の「消費電力予測モデル」と、を作成する例を実施形態1の例示として説明する。なお、実施形態1においては、空気調和機停止時の「消費電力予測モデル」を作成することなく、空気調和機運転時の「室温変化予測モデル」と「消費電力予測モデル」とを作成して、空気調和機停止時の室温変化予測を行う。
図8は、本発明の実施形態1における「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」の作成の概略を示すフローチャートである。モデル演算部12は記憶装置11のデータベースから一定期間内のデータを取得する(図8のステップS410)。例えば、暖房モードに対応する「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成する場合には、データベースから12月から2月までの特定の期間のデータのみを抽出して予測モデルの作成に利用してもよい。同様に、冷房モードに対応する「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成する場合には、7月から8月までの特定の期間のデータのみを抽出してもよい。
モデル演算部12は、機械学習などの人工知能技術を適用して「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成してよい。例えば、重回帰分析、勾配ブースティングまたはロジスティック回帰分析などによって、データベースから抽出したデータに基づいて、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成してもよい。
機械学習等における訓練用のデータ(教師データまたは訓練例などとも呼ばれる)を作成するために、モデル演算部12はタイムステップごとに抽出したデータを加工する(図8のステップS420)。本発明における「タイムステップ」とは、予測に使われる時間単位のことを意味し、例えば、5分間または10分間であり、以下の説明において「ステップ」と略す。例えば、予測演算部13が室温変化または消費電力を予測するときに、1つのステップを5分間とし、5分後の室温変化または消費電力を予測して、予測結果を用いて、さらに5分後の室温変化または消費電力を予測していく場合、モデル演算部12も5分間ごとのデータを用いて予測モデルを作成する。
実施形態1においては、1ステップ前のデータを用いて機械学習を行ってもよい。そのため、モデル演算部12は、それぞれの空気調和機30に対して、下記の変数のデータを取得して、タイムステップごとにデータを加工(計算)してもよい。
Ti(t):(現在のステップの設定温度)−(現在のステップの室内温度);空気調和機に対する現在の熱負荷を想定
Ti(t−1):(1ステップ前の設定温度)−(1ステップ前の室内温度);過去の影響を考慮
Th(t):(現在のステップの室内温度)−(現在のステップの室外温度);外気温度に対する熱負荷を想定
Th(t−1):(1ステップ前の室内温度)−(1ステップ前の室外温度);過去の影響を考慮
P(t):現在のステップの消費電力(電流値)
P(t−1):1ステップ前の消費電力(電流値)
S:機種情報に対応する変数
図9は、ある空気調和機30に関して、データベースから抽出されたデータ(検出時刻、設定温度、室外温度、室内温度、消費電力(ここでは電流値を使用)、住宅冷温熱保持能力などの例を示す図である。モデル演算部12はこれらのデータに基づいて、検出時刻の順に「17:05」、「17:10」、「17:15」等のそれぞれにおいて現在時刻(現在のステップ)として上記の変数を算出してもよい。例えば、ステップ「17:15」を現在時刻として算出すると、Ti(t)が[0度]であり、Ti(t−1)が[1度]であり、Th(t)が[18度]であり、Th(t−1)が[17度]であり、P(t)が[8A]であり、P(t−1)が[10A]となる。
機種情報は、例えば、対応する空気調和機30の型番または仕様により決定される。一般的に、型番を取得できれば、可能な運転モード、出力範囲、消費電力範囲、運転開始時消費電力の挙動などに関する情報も取得できる。異なる機種情報に関しては異なる変数を設定してもよく、機種情報に対応した複数の「室温変化予測モデル」または「消費電力予測モデル」を作成し予測してもよい。
次に、モデル演算部12は、取得したデータを場所情報、気象情報および「住宅冷温熱保持能力」と紐付ける(図8のステップS430)。場所情報は対応する空気調和機30の設置場所に関する情報であり、例えば、設置場所の郵便番号または、市町村情報、GPSによる位置情報である。気象情報は設置場所における気温、天候、湿度等であり、場所情報を用いて外部情報源40から取得できる。外部情報源40から取得する気温は室外温度として取り扱ってもよい。また、モデル演算部12は、当該空気調和機30の「住宅冷温熱保持能力」、例えば、図9に示されたように、対応するクラスタの情報を取得したデータと紐付けてデータベースに保存されるデータとして加えてもよい。
モデル演算部12は、ステップS430において紐付けられた「住宅冷温熱保持能力」によってデータを分離して(図8のステップS440)、分離したデータをモデリングし、各「住宅冷温熱保持能力」に対応する「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成する(図8のステップS450)。モデル演算部12は、それぞれのクラスタに対応するデータを分離して、それぞれのクラスタに対して、対応するデータのみを用いて、対応する「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成してもよい。図5および図7において例示した具体例において、クラスタ[A]〜[D]のそれぞれに対応する「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」が作成される。作成された「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」は、記憶装置11に保存される。
また、空気調和機30が運転していたか否かによってさらにデータを分離してもよい。この場合においては、例えば、クラスタ[A]に対応する空気調和機30が運転していたときのデータのみを用いて、クラスタ[A]に対応する空気調和機30の運転時の「室温変化予測モデル」と「消費電力予測モデル」とを作成する。同様に、他のクラスタおよび運転状態(稼働状態)に応じて「室温変化予測モデル」または「消費電力予測モデル」を作成することができる。
本発明の実施形態1において、モデル演算部12は、現在のステップおよび1ステップ前の情報(室内温度、室外温度、消費電力)をモデリングにおける変数とする。すなわち、直近の過去情報が予測モデルの作成に参照される。
[室温変化予測モデル]
実施形態1の「室温変化予測モデル」で、重回帰分析を適用した場合の式は下記の式(2)の通りである。
式(2)において、Ti(t+1)は、現在のステップおよび1ステップ前の情報によって予測される1ステップ後の、設定温度から室内温度予測を引いた予測温度差である。他の変数の定義は前述した通りである。
モデル演算部12は、重回帰分析以外に、例えば、勾配ブースティングまたはロジスティック回帰分析などによって、分離されたデータを用いてそれぞれのクラスタに対応する予測モデルを決めてもよい。また、モデリングや分析の都合によって、これらの変数のうち、複数の変数を1つの変数にまとめてもよく、少なくとも1つの他の変数をさらに式に追加してもよい。
例えば、図10A、図10Bおよび図11は、空気調和機の運転(継続)時の「室温変化予測モデル」、空気調和機の運転停止時の「室温変化予測モデル」、および「消費電力予測モデル」における係数の一例を示す表である。図10A、図10Bおよび図11においては、機種情報に関する変数(係数Sに対応する変数)の代わりに、運転開始フラグ(係数gに対応するフラグ)、空気調和機の冷暖房能力を示す変数(係数h〜pに対応する変数)、および式の補整用として切片(係数zに対応する)が追加される。図10A、図10Bおよび図11において、係数g、h、i、j、k、l、m、n、o、pおよびzは、前述の変数に対応する係数を示している。なお、少なくとも1つの係数が定数であってもよい。
図10A、図10Bおよび図11においては、下記フラグ(変数)が用いられている。
start_flag:空気調和機の起動時の挙動を代表するフラグ
22_flag、25_flag、28_flag、36_flag、40_flag、56_flag、63_flag、71_flagおよび80_flag:最大出力が2.2kW、2.5kW、2.8kW、…、7.1kW、8.0kWの空気調和機の能力を代表するフラグ
切片:式の補整用
start_flagが1であれば、空気調和機30が起動されて最大出力で運転する起動状態であることを示し、0であれば、運転しているが起動状態でないことを示す。22_flagなどのフラグは空気調和機30の機種の出力を代表し、例えば、22_flagが1であれば、出力が2.2kWであることを示す。他のフラグにおいても同様の意味を示している。
例示として、図10Aに示した表において、クラスタCに対応する運転時の「室温変化予測モデル」は、下記の式(3)によって表現できる。
運転が停止している時、空気調和機30は室内温度に対して影響を与えないため、室内温度は主に室外温度に基づいて変化する。そのため、停止時の「室温変化予測モデル」は運転時の「室温変化予測モデル」より簡素化することができる。例えば、図10Bの表に示すように、Th(t)の係数a3、Th(t−1)の係数a4、および切片の係数zを用いて予測することが可能である。例示として、図10Bに示した表において、クラスタCに対応する停止時の「室温変化予測モデル」の一例としては、下記の式(4)によって表現できる。
[消費電力予測モデル]
モデル演算部12は、例えば、重回帰分析など「室温変化予測モデル」の作成と同様な手法によって「消費電力予測モデル」を作成してもよく、異なる手法によって作成してもよい。実施形態1において、重回帰分析を適用した場合の「消費電力予測モデル」の式は下記の式(5)の通りである。
式(5)において、P(t+1)は、現在のステップおよび1ステップ前の情報によって予測される1ステップ後の消費電力である。他の変数の定義は前述した通りである。
モデル演算部12は分離されたデータを用いて、それぞれのクラスタに対応する「消費電力予測モデル」の式の係数b1〜b7を決める。また、「室温変化予測モデル」の作成と同様に、モデリングや分析の都合によって、変数のうち、複数の変数を1つの変数にまとめてもよく、少なくとも1つの他の変数をさらに式に追加してもよい。
図11は、作成した運転時の消費電力予測モデルの係数の例示を示す表である。図11に示すクラスタCに対応する運転時の消費電力予測モデルの一例としては、下記の式(6)によって表現できる。
なお、運転が停止している時においては、勿論、消費電力が生じることがなく、予測する必要がない。
前述した通り、モデル演算部12は、図2のステップS130において「住宅冷温熱保持能力推定モデル」、それぞれのクラスタに対応する空気調和機運転時および空気調和機停止時の「室温変化予測モデル」、および、それぞれのクラスタに対応する「消費電力予測モデル」を作成する。
また、モデル演算部12は、精度向上のために、「住宅冷温熱保持能力推定モデル」、「室温変化予測モデル」、および/または「消費電力予測モデル」を定期的に、例えば、半年毎に、または季節ごとに、更新してもよい。推定されたそれぞれの空気調和機30に関する「住宅冷温熱保持能力」も定期的に更新されてもよい。
[最適オン/オフ時刻の算出]
以下、最適オン/オフ時刻処理として、最適オン/オフ時刻算出要求に対して、サーバ10はデータベースおよび作成された各予測モデルに基づいて最適オン/オフ時刻の算出を行い、その最適オン/オフ時刻によって予測対象空気調和機32を制御する方法(図2のステップS140〜S180)について説明する。
図12は、実施形態1における最適オン/オフ時刻の算出の概略を示すフローチャートであり、図12のステップ510が図2のステップ150に対応し、図12のステップ520からステップS553が図2のステップ160に対応し、図12のステップ560が図2のステップ170に対応する。
使用者が情報端末20を介して、予測対象空気調和機32を運転開始する設定時刻(すなわち、オン時刻)または予測対象空気調和機32を運転停止する設定時刻(すなわち、オフ時刻)を設定することができ、オン時刻とオフ時刻とともに設定することもできる。例えば、使用者は、寝る前にコントローラを介して予測対象空気調和機32を手動でオンしてオフ時刻を設定することができ、また、外出しているときにスマートフォンのアプリケーションを介して家に設置された予測対象空気調和機32のオン時刻およびオフ時刻を設定することができる。エネルギーを節約するために、情報端末20または予測対象空気調和機32はサーバ10へ最適オン/オフ時刻算出要求を送信し、サーバ10はこの最適オン/オフ時刻算出要求を受信する(図2のステップS150、図12のステップ510)。最適オン/オフ時刻算出要求には、最適オン/オフ時刻算出処理に必要な情報が含まれ、例えば、対象空気調和機32の機器ID、設定時刻、設定温度などが含まれる。
情報端末20は、設定時刻を予測対象空気調和機32またはサーバ10に送信する端末送信部22と、予測対象空気調和機32またはサーバ10からのデータを受信する端末受信部24とを備える(図1参照)。さらに、情報端末20は、使用者に対して設定時刻を入力させるユーザインターフェイスと、入力したデータまたは受信したデータを表示する表示部とを備えてもよい。情報端末20は設定時刻または設定温度を直接的にサーバ10に送信してもよく、間接的に予測対象空気調和機32を介してサーバ10に送信してもよい。また、情報端末20において入力される設定温度は、予測対象空気調和機32の現在の設定温度と異なってもよい。
サーバ10は、予測対象空気調和機32または情報端末20から設定時刻および予測対象空気調和機32に関する各種データを受信するための第3サーバ受信部17を備えてもよい(図1参照)。なお、前述のように、サーバ10は、複数の空気調和機30からの各種データを受信するための第1サーバ受信部15と、外部情報源40からその地域の外気温度情報等を受信するための第2サーバ受信部16と、を備える構成であるが、第1サーバ受信部15と第2サーバ受信部16と第3サーバ受信部17とを1つの受信部として構成してもよい。
最適オン/オフ時刻算出要求を受信すると、サーバ10の予測演算部13は、例えば、対象空気調和機32の機器IDに基づいて対象空気調和機32の設置場所の住宅(部屋)に関する「住宅冷温熱保持能力」を取得し、記憶装置11に保存された、この「住宅冷温熱保持能力」に対応する「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」をさらに取得することができる。対象空気調和機32に対応する「住宅冷温熱保持能力」、「室温変化予測モデル」、「消費電力予測モデル」、データベースに保存されている各種データ、予測対象空気調和機32の機種情報、および必要であれば外部情報源40からの気象情報における室外温度予測のデータなどに基づいて、予測演算部13は室温変化を算出する(ステップ520)。
なお、特定された予測対象空気調和機32に対して最適オン/オフ時刻を算出するために、サーバ10においては、他の空気調和機30における運転記録情報などのデータを収集して新たに作成した予測モデルを用いてもよいが、データベースに保存されている既存のデータを利用して新たに予測モデルを作成して予測してもよく、既に作成されていた予測モデルにより予測してもよい。
図2に示したステップS160の最適オン/オフ時刻算出処理において、予測演算部13は記憶装置11から予測対象空気調和機32が設置された場所の住宅(部屋)の「住宅冷温熱保持能力」(クラスタ)または度数分布を読み出してもよい。また、例えば、当該「住宅冷温熱保持能力」が記憶装置11に保存されていない場合、予測演算部13は、予測対象空気調和機32が設置された場所の住宅(部屋)の「住宅冷温熱保持能力」を判断してもよい。予測対象空気調和機32に対応するクラスタまたは度数分布が保存されてない場合、予測対象空気調和機32を新規の空気調和機30として、例えば、図6および図7に示したように、新規の空気調和機30の「住宅冷温熱保持能力」の推定フローにしたがって推定してもよい。
続いて、予測演算部13は、予測対象空気調和機32のクラスタに基づいて、対応する「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を選択する。例えば、予測対象空気調和機32のクラスタがCである(設置場所が「やや冷えやすい」)と判断された場合には、クラスタCに対応する「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を選択する。
実施形態1においては、前述したように、例えば、予測対象空気調和機32がクラスタCである判断した場合には、クラスタCに対応するモデルの式(3)、式(4)、および式(6)が選択される。予測演算部13は、室温変化を算出するように、予測対象空気調和機32から受信したデータおよびデータベースに保存された予測対象空気調和機32の運転情報を予測モデルの式にそれぞれ代入する。
室温変化および消費電力の算出が必要である期間について、1つの実施例において、オン時刻のみが設定された場合、予測演算部13は現在の時刻からオン時刻後の第1所定期間までの予測期間における室温変化および消費電力を算出(予測)してもよい。一方、オフ時刻のみが設定された場合、またはオン時刻とオフ時刻がともに設定された場合、予測演算部13は現在の時刻からオフ時刻後の第2所定期間までの予測期間における室温変化および消費電力を算出してもよい。第1所定期間と第2所定期間とは同じ期間であってもよく、異なる期間でもよい。例えば、第1所定期間と第2所定期間としては、5分間、10分間などの一定期間であってもよく、予測対象空気調和機32の機種または「住宅冷温熱保持能力」に応じて異なる期間であってもよい。
予測モデルの式の選択および代入は、予測期間における運転モードによってもよい。例えば、予測期間が現在の時刻からオン時刻後の第1所定期間までの期間であって、現在の運転が停止している場合、現在の時刻からオン時刻までについては(運転)停止時の予測モデル(例えば、式(4))を選択し、オン時刻から第1所定期間が終わるまでの期間については、運転時の予測モデル(例えば、式(3)、(6))を選択する。
また、オン時刻とオフ時刻がともに設定されており、予測期間が現在の時刻からオフ時刻後の第2所定期間までの期間である場合において、例えば、現在の運転が停止している状態のとき、現在の時刻からオン時刻までについては停止時の予測モデルを選択し、オン時刻からオフ時刻までについては運転時の予測モデルを選択し、オフ時刻から第2所定期間が終わるまでの期間については停止時の予測モデルを選択してもよい。
実施形態1において、室温変化および消費電力を予測するために、最初は、現在の時刻を現在のステップ(t)として、予測対象空気調和機32の現在室内温度等のデータ、およびデータベースに保存された1ステップ前の室内温度等のデータに基づいて、図8のステップS420に示すように、タイムステップ毎にデータを加工して各変数の値を得る。
予測対象空気調和機32の現在の運転モードがオンである場合、予測演算部13は空気調和機運転時の「室温変化予測モデル」(例えば、式(3))および「消費電力予測モデル」(例えば、式(6))を選択し、各変数の値をこれのモデルに代入する。まずは、1ステップ後、例えば、10分後の室内温度予測を設定温度から減算した予測温度差Ti(t+1)(すなわち、室温変化)、および1ステップ後の予測消費電力P(t+1)を算出する。
次に、算出された1ステップ後の予測温度差Ti(t+1)と予測消費電力P(t+1)、および現在室内温度などのデータに基づいて、2ステップ後の設定温度から室内温度予測を減算した予測温度差Ti(t+2)および2ステップ後の予測消費電力P(t+1)を算出する。すなわち、前のステップの算出結果を用いて、次のステップの予測値を算出する。したがって、(n+1)ステップ後の室温変化および消費電力の予測は、重回帰分析を適用した場合、下記の「室温変化予測モデル」の式(7)および「消費電力予測モデル」の式(8)によって算出可能である。
前述した「室温変化予測モデル」の式(7)および「消費電力予測モデル」の式(8)から分かるように、室温変化および消費電力の予測を行うために、1〜nステップ後の室外温度の予測が必要となる。実施形態1においては、サーバ10の第2サーバ受信部16が外部情報源40から、予測対象空気調和機32の設置場所に対応する気象情報の室外温度予測データを受信する構成としてもよい。例えば、第2サーバ受信部16を介して、サーバ10は、外部情報源40から、予測対象空気調和機32の設置場所における10分後、30分後、1時間後、3時間後などの気象情報の室外温度予測データを取得してもよい。サーバ10における予測演算部13は、取得した室外温度予測データを1〜nステップ後の室外温度の変数として式に代入することができる。
空気調和機運転時の「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を相互に利用することによって、予測演算部13は、予測期間において予測対象空気調和機32の運転時の室内温度予測(室温変化)を算出することができる。
予測対象空気調和機32の現在の運転モードがオフである場合、予測演算部13は停止時の「室温変化予測モデル」(例えば、式(4))を選択し、停止時の室温変化を予測する。なお、運転が停止している時は、勿論、消費電力が生じない。
予測演算部13は、例えば、式(4)に示したような「室温変化予測モデル」に基づいて、空気調和機停止時の室温変化を算出するとき、未来の室外温度のデータを用いる必要がある場合には、前述したように外部情報源40からの気象情報の室外温度予測を取得してもよい。
なお、予測精度を高めるために、2ステップ前、またはさらに前のステップの室内温度、室外温度、または消費電力などのデータを参照する予測モデルを作成し利用してもよい。
また、実施形態1の変形例としては、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を簡略化して、それぞれの予測モデルに対応するルックアップテーブルを作成してもよい。図2に示したステップS160の最適オン/オフ時刻算出処理において、実際に予測する際には、例えば、現在室内温度、室外温度予測などのデータに基づいて、ルックアップテーブルを照合することによって、室内温度予測および消費電力を判断してもよい。
このように、予測演算部13は最適オン/オフ時刻算出要求に対して、予測対象空気調和機32の「住宅冷温熱保持能力」、「室温変化予測モデル」、および「消費電力予測モデル」に基づいて、設定時刻に対応する予測期間における室温変化を算出することができる。
続いて、最適オン/オフ時刻演算部18は最適オン/オフ時刻算出要求に対して、室温変化および設定時刻に基づいて、予測対象空気調和機32の設置場所における快適指標が所定範囲で維持するような最適オン/オフ時刻を算出する。
実施形態1において、快適指標とは、使用者が予測対象空気調和機32の設置場所に特定時間にいるときの快適性を示す指標であり、例えば、予測温冷感申告(Predicted Mean Vote、PMV)指数、予測不快者率(Predicted Percentage of Dissatisfied、PPD)または標準有指数効温度(standard new effective temperature、SET*)などを用いてもよい。例えば、PMVは熱的中立に近い状態の人体の温冷感を予測する指標である。PMV指数の定義によると、人体の熱的快適感に影響する要素は、室温、平均放射温度、相対湿度、平均風速の4つの物理的要素と、在室者の着衣量、作業量の2つの人間側の要素とが関係する。PMV理論は、これらの要素に関して、複合効果をどのように評価するかについての理論である。PMV指数は、PMV理論の快適方程式にこれらの6つの要素を代入すると、人間がそのときに暖かいと感じるか、寒いと感じるかを「7段階評価尺度による数値」で表している。例えば、0であるPMV指数は「中立」(最も快適)であることを示し、+1であるPMV指数は「やや暖かい」ことを示し、−3であるPMV指数は「寒い」ことを示す。
省エネルギーのために、予測対象空気調和機32の設定温度からやや快適でない方向へ調整し、予測対象空気調和機32の運転を弱めることにより、消費電力を抑えることが考えられる。そこで、省エネルギーおよび快適性維持を両立させるために、使用者に不快を感じさせないように、できれば使用者に調整を気づかせないように、その調整を一定の範囲内に抑えることが好ましい。一例として、快適指標がPMV指数である場合、快適指標が維持される所定範囲は、設定温度に対応するPMV指数±0.5と設定されている。それは、ISOの標準において、PMV指数が±0.5以内、不快者率10%以下となるような温熱環境を推奨しているからである。他の種類の快適指標に対しても、使用者に不快を感じさせないような快適範囲を規定してもよい。
なお、設定温度によっては、快適範囲が異なる場合があるため、設定温度に対応して快適範囲を異なるように設定してもよい。また、使用者それぞれの快適範囲が異なる可能性があるため、快適範囲を当該予測対象空気調和機32の設定時に設定可能に構成してもよい。
以下は、PMV指数を快適指標とし、PMV指数が±0.5以内の範囲を快適範囲とする実施例を用いて最適オン/オフ時刻算出処理について説明する。PMV指数の計算において6つの要素が使われているが、そのうち、空気調和機30によって最も調整しやすいのは室温である。例えば、空気調和機30が運転を停止している場合(運転停止モード)と比べて、冷房モードで運転して室温が1℃変化すると、下記表1のようにPMV指数に影響する。しかしながら、表1から分かるように、冷房モードから運転を停止させて、25℃の室温が26℃となり1℃増加させても、快適指標が±0.5以内の快適範囲内にある。すなわち、25℃の設定温度に対して、少なくとも25℃から26℃までは快適温度と言える。
他の例として、空気調和機30が運転を停止している場合(運転停止モード)と比べて、暖房モードで運転して室温が6℃変化すると、下記表2のようにPMV指数に影響する。しかしながら、表2から分かるように、暖房モードから運転を停止させて、室温が22℃から16℃となり6℃下降しても、快適指標が±0.5以内の快適範囲内にある。すなわち、22℃の設定温度に対して、少なくとも16℃から22℃までは快適温度と言える。
予測対象空気調和機32の設置場所における快適指標を所定範囲(快適範囲)内に維持するためには、最適オン/オフ時刻演算部18はオン時刻およびオフ時刻に対して異なる演算方法でそれぞれに対応する最適オン/オフ時刻を算出することができる。このため、まず設定時刻がオン時刻またはオフ時刻であるかを判断する(ステップ530)。すなわち、最適オン/オフ時刻演算部18は設定時刻に対応する対象空気調和機32の運転モードを判断する。注意すべきは、前述したように、ステップS520においても必要を応じて、対象空気調和機32の現在の運転モードまたは予測期間における運転モードを確認することである。
設定時刻がオフ時刻である場合、最適オン/オフ時刻演算部18は設定温度に基づいて、快適指標が所定範囲(快適範囲)内に維持される快適温度(第1快適温度)を決定する(ステップ541)。第1快適温度は前述した快適範囲内にあって、かつ、できるだけ設定温度から離れる温度である。例えば、22℃の設定温度が設定された暖房モードの場合、16℃から22℃までが快適範囲内であるが、できるだけ省エネルギー化を図るために第1快適温度は快適範囲における最低温度の16℃と決定する。同様に、25℃の設定温度が設定された冷房モードの場合、第1快適温度は26℃(快適範囲における最高温度)と決定する。予測対象空気調和機32が冷房モードである場合、第1快適温度が予測対象空気調和機32の設定温度より高く、予測対象空気調和機32が暖房モードである場合、第1快適温度が予測対象空気調和機32の設定温度より低い。このように第1快適温度を決めることより、予測対象空気調和機32を早めに運転を停止してエネルギーを節約することができる。
続いて、最適オン/オフ時刻演算部18は、設定されたオフ時刻まで室内温度を快適範囲内に維持できる最適オフ時刻を算出し(ステップ542)、設定されたオフ時刻より事前停止期間だけ早い時刻を最適オフ時刻として決定する(ステップ543)。すなわち、設定されたオフ時刻に到達するまで快適指標が快適範囲内に維持できれば、予測対象空気調和機32の運転を早めに停止することが可能となる。最適オン/オフ時刻演算部18は算出した温度変化を用いて、予測対象空気調和機32の運転を停止してから、何分経過するまで室内温度が快適範囲内に維持できるかを算出する。例えば、予測対象空気調和機32の設置場所の「住宅冷温熱保持能力」に応じた室温変化によって、予測対象空気調和機32の運転を停止してから10分間が経過したとき、室温が25℃から26℃(快適範囲の最高温度:第1快適温度)になると算出した場合、最適オン/オフ時刻演算部18は10分間を事前停止期間として、設定されたオフ時刻より10分間前の時刻を最適オフ時刻として事前停止期間を決定する。
設定時刻がオン時刻である場合、最適オン/オフ時刻演算部18は設定温度に基づいて、快適指標が所定範囲(快適範囲)内となる快適温度(第2快適温度)を決定する(ステップ551)。予測対象空気調和機32が冷房モードである場合、第2快適温度が予測対象空気調和機32の設定温度より高く、予測対象空気調和機32が暖房モードである場合、第2快適温度が予測対象空気調和機32の設定温度より低い。このように第2快適温度を決めることにより、予測対象空気調和機32を早めに運転を開始してオン時刻に到達するまでに予測対象空気調和機32の設置場所における快適性を保持することができる。
続いて、最適オン/オフ時刻演算部18は、室温変化に基づいて、室内温度を快適範囲となる予備作動期間を算出し(ステップ552)、設定されたオン時刻より予備作動期間だけ早い時刻を最適オン時刻とする(ステップ553)。すなわち、設定されたオン時刻に室内温度が快適範囲となるように、設定されたオン時刻より予備作動期間だけ早く時刻に最適オン時刻が決定される。設定されたオン時刻に快適指標が快適範囲内にあればよいため、決定された最適オン時刻においては設定温度とは異なっている。最適オン/オフ時刻演算部18は算出した温度変化を用いて、予測対象空気調和機32の運転を開始してから、何分経過したときに室内温度が快適温度(快適範囲内)に到達するかを算出する。例えば、予測対象空気調和機32の設置場所の「住宅冷温熱保持能力」に応じた室温変化によって、予測対象空気調和機32の運転を開始してから5分間が経過したとき、室温が現在温度の33℃から25℃(快適範囲の最高温度:第2快適温度)になると算出した場合、最適オン/オフ時刻演算部18は5分間を予備運転期間として、設定されたオフ時刻より5分間前の時刻を最適オン時刻として予備運転期間を決定する。
変形例として、最適オン/オフ時刻演算部18は室温変化および快適指標の計算式に基づいて快適指標変化(すなわち、快適指標の推移予測)を算出し、快適指標変化に基づいて事前停止期間および/または予備運転期間を算出してもよい。
実施形態1の空気調和機においては、最適オン/オフ時刻算出処理を行うことにより、室温変化および設定されたオン/オフ時刻に基づいて、対象となる予測対象空気調和機32が設置された部屋に関して、快適指標が所定範囲内に維持できる最適オン/オフ時刻を算出し、算出した最適オン/オフ時刻による駆動制御により、使用者が設定したオン/オフ時刻において使用者が快適と感じる予測対象空気調和機30の運転開始および/または運転停止が行われる。
サーバ10は、前述の図12に示したステップにより、室温変化および設定されたオン/オフ時刻に基づいて、快適指標が所定範囲内に維持できる最適オン/オフ時刻を算出することができる。算出された最適オン/オフ時刻は、サーバ10のサーバ送信部14により予測対象空気調和機32に送信される(図2のステップS170、図12のステップS560)。なお、サーバ10は最適オン/オフ時刻を直接的に予測対象空気調和機32に送信してもよく、情報端末20を介して間接的に予測対象空気調和機32に送信してもよい。予測対象空気調和機32が最適オン/オフ時刻を受信すると、使用者が設定したオン/オフ時刻において設置場所(部屋)の快適性を保持するように最適オン/オフ時刻にしたがって予測対象空気調和機32の駆動制御が実行される。
上記のようにオンまたはオフの設定時刻より前に予測対象空気調和機32の運転開始または運転停止を行う場合には、室内温度予測において多少のずれが生じるため、補整処理を行って対応することが可能である。
実施形態1におけるサーバ10は、記憶装置11、モデル演算部12、予測演算部13、サーバ送信部14、第1サーバ受信部15、第2サーバ受信部16、第3サーバ受信部17または最適オン/オフ時刻演算部18の構成要素の機能を実行するために、CPUなどのプロセッサに対応する処理回路を備えてもよい。すなわち、サーバ10における記憶装置11、モデル演算部12、予測演算部13、サーバ送信部14、第1サーバ受信部15、第2サーバ受信部16、第3サーバ受信部17または最適オン/オフ時刻演算部18は、ハードウェアとして実行されてもよく、ソフトウェアのモジュールとして実行されてもよい。また、サーバ10におけるそれぞれの構成要素は、単独に実行されてもよく、複数の構成要素がまとめられて実行されてもよい。
また、サーバ10における記憶装置11は、各種データを記憶する記憶装置であり、サーバ10に内蔵されてもよく、サーバ10に対して無線または有線で通信可能な外部装置に設けられてもよい。例えば、記憶装置11は、サーバ10内部のメモリであってもよく、サーバ10と無線通信または有線通信で接続された大容量ストレージ装置であってもよい。
情報端末20は、サーバ10と同様に、情報端末20における各構成要素を実行するために、CPUなどのプロセッサに対応する処理回路および記憶装置を備えてもよい。
前述した最適オン/オフ時刻算出処理は、予測対象空気調和機32の使用者に察知されていないバックグラウンド処理であってもよく、算出した最適オン/オフ時刻、および/または最適オン/オフ時刻の制御によって節約される電力もしくは電気料金を情報端末20などを介して使用者に表示する構成としてもよい。
図13は、温度変化および消費電力の推移の一例を示す波形図である。図13に示す例において、一点鎖線600の直線が設定温度を示しており、この例では25℃である。この場合の最適温度における最高臨界温度が25.5℃(ΔT≦+0.5℃)である。運転開始(オン)および運転停止(オフ)の設定時刻に対して、最適オン/オフ時刻演算部18は、予測対象空気調和機32に対応する「住宅冷温熱保持能力」、「室温変化予測モデル」、および「消費電力予測モデル」に基づいて、運転開始の最適オン時刻および運転停止の最適オフ時刻を算出し、算出された最適オン時刻(Ton2)および最適オフ時刻(Toff2)で予測対象空気調和機32に対する空調温度制御および空調時間制御を行う。
図13の波形図において、実施形態1の最適オン/オフ時刻算出処理を行って予測対象空気調和機32に対する空調温度制御および空調時間制御を行ったときの室温の変化を太い実線610で示し、そのときの消費電力の変化を太い破線710で示す。また、図13の波形図において、「住宅冷温熱保持能力」などを考慮していない従来の空調制御を行ったときの室温の変化の一例を細い実線620で示し、そのときの消費電力の変化を細い破線720で示す。
図13の波形図に示すように、算出された最適オン時刻(Ton2)はオン設定時刻(Ton)より早い時刻であり、この最適オン時刻(Ton2)で予測対象空気調和機32の運転が開始されている。オン設定時刻(Ton)に対して、最適オン/オフ時刻演算部18は予測対象空気調和機32に対応する「住宅冷温熱保持能力」、「室温変化予測モデル」、および「消費電力予測モデル」に基づいて、最適オン時刻を精確に算出できるため、使用者の快適性を保持しつつエネルギーの節約を行うことができる。図13の波形図に示すように、算出した予備運転期間(「Ton2」−「Ton」)が比較的短い時間である。「住宅冷温熱保持能力」などを考慮していない従来の空調制御におけるオン時刻(Ton1)は、使用者の快適性を確実に確保することを担保するために、早めの運転開始を行っている。このため、最適オン/オフ時刻算出処理を行って算出した最適オン時刻(Ton2)は、従来の空調制御におけるオン時刻(Ton1)より遅い時刻となり、無駄なエネルギーの消費を無くすことができる。
また、算出された最適オフ時刻(Toff2)に関しても、オフ設定時刻(Toff)より早い時刻であり、この最適オフ時刻(Toff2)で予測対象空気調和機32の運転が停止されている。「住宅冷温熱保持能力」などを考慮していない従来の空調制御においては、オフ設定時刻(Toff)で空気調和機の運転を停止しているため、最適オフ時刻(Toff2)による運転制御は従来に比べて早い時刻で運転が停止される。図13の波形図における室温および消費電力の変化から理解できるように、予測対象空気調和機32に対して最適オフ時刻で早めに運転を停止させて、節電しても、設定時刻における室温による快適指標が快適範囲に維持されており、使用者を不快に感じさせることがない。このため、最適オン/オフ時刻算出処理により算出された最適オフ時刻(Toff2)による運転制御は、省エネルギーの観点において優れた効果を奏するものである。
一方、「住宅冷温熱保持能力」などを考慮していない従来の空気調和機に対する運転制御はオフの設定時刻に運転を停止させている。このため、図13の波形図に示すように、細い実線620で示す室温の変化、および細い破線720で示す消費電力の変化から理解できるように、省エネルギーの観点では問題を有しており、無駄なエネルギーを消費している。
なお、実施形態1の空気調和機においては、予測対象空気調和機32の運転を停止させるときには、機器に対するダメージを与えないように、急激な運転停止ではなく、運転動作を徐々に弱めてから停止させる制御を行ってもよい。
前述した実施形態1において説明したように、本発明の空気調和機の最適オン/オフ時刻算出処理を実行するサーバおよび最適オン/オフ時刻算出処理システムにおいては、空気調和機が設置された住宅(部屋)に対して使用者が設定したオン/オフ時刻に関して最適な空調温度制御および空調時間制御を行うことが可能となる。本発明においては、省エネルギーおよび使用者の快適性維持を両立させるという新しい機能を提供している。本発明によれば、空気調和機の設置場所の「住宅冷温熱保持能力」、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」などに基づいて、室温変化を予測し、使用者の快適性を損なわない、かつ、できるだけ運転時間を短縮することができる最適オン/オフ時刻を自動的に算出することが可能となる。
また、本発明においては、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を作成するとき、および、「室温変化予測モデル」および「消費電力予測モデル」を利用して予測対象空気調和機による運転状況による室温変化と消費電力を予測するとき、機械学習などの人工知能技術によって、空気調和機の使用者の使用習慣に適合した最適なモデルを作成し、精確に予測することができる。
本発明によれば、予測対象空気調和機の設置場所の住宅(部屋)に関する「住宅冷温熱保持能力」に基づいて予測するため、室温変化の予測精度が高いものとなる。また、本発明によれば、予測モデルの作成においては、過去から現在に至るまでの室内温度、室外温度および消費電力の推移を参考しているため、予測精度をさらに向上させることができるものとなる。
なお、「住宅冷温熱保持能力推定モデル」、「室温変化予測モデル」、「消費電力予測モデル」、および/または推定された「住宅冷温熱保持能力」のそれぞれのデータを定期的に更新することにより、常に最新で正確なデータに基づいた予測を行うことができる。
以上は本発明の具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されるものではない。本発明は図面および前述した具体的な実施形態において前述された内容を含むが、本発明がそれらの内容に限定されるものではない。本発明の機能および構造原理から逸脱しない変更は特許請求の範囲内のものである。