JP2020132765A - シラノール組成物、硬化物、及び接着剤 - Google Patents

シラノール組成物、硬化物、及び接着剤 Download PDF

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Abstract

【課題】硬化した際に、接着力及び透明性に優れるシラノール組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される環状シラノール(A1):

(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。)を含有し、環状シラノール(A1)が、ケイ素上の有機基RとSiH基の立体配置に由来する4種の異性体である環状シラノール(B1)〜(B4)を含有する、シラノール組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、シラノール組成物、硬化物、及び接着剤に関する。
環状シラノールは、シロキサン結合によって環状構造を形成した骨格を有する化合物であり、かかる化合物を含む硬化性組成物(「シラノール組成物」ともいう。)は、発光ダイオード素子等の半導体素子の保護、封止、及び接着に使用される。また、環状シラノールは、発光ダイオード素子から発せられる光の波長を変更又は調整することができ、レンズ等の用途に用いられる。
近年、構造が精密制御された環状シラノールが報告されている。例えば、非特許文献1には、all−cis体のテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンが開示されている。
Inorganic Chemistry Vol.49, No.2, 2010, 572‐577.
しかしながら、非特許文献1に開示されているall−cis体のテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンを含む硬化性組成物を、保護、封止、及び接着をする対象物に塗布するとき、十分な接着力が生じないという課題がある。また、環状シラノール及びかかる環状シラノールを含む組成物をレンズ等の光学材料に適用する場合、環状シラノール及びかかる環状シラノールを含む組成物を硬化物としたときに透明性が必要とされる。
そこで、本発明は、接着力及び透明性に優れるシラノール組成物を提供することを目的とする。なお、ここでいう「接着力」とは、硬化した際の接着力をいい、「透明性」とは、組成物の形態における透明性と組成物が硬化した形態における透明性の双方を包含する。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、環状シラノールの各立体異性体の割合を特定範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
下記式(1)で表される環状シラノール(A1):
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。)を含有し、
前記環状シラノール(A1)が、下記式(2)〜(5)で表される環状シラノール(B1)〜(B4):
(式(2)〜(5)中、R1〜R4は、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。)を含有し、
前記環状シラノール(B1)〜(B4)の総量に対する前記環状シラノール(B1)、(B3)、及び(B4)の各割合(モル%)をそれぞれa、c、及びdとするとき、下記条件(x)、(y)及び(z):
(x)75≦a+c<100
(y)75≦c+d<100且つ25<d<100
(z)60≦c<100
からなる群より選択される少なくとも一つを満たす、シラノール組成物。
[2]
前記環状シラノール(B1)〜(B4)の総量に対する前記環状シラノール(B2)の割合(モル%)をbとするとき、下記条件(w):
(w)0<b≦20
を満たす、
[1]に記載のシラノール組成物。
[3]
3μmの厚みにおけるヘイズが、10%以下である、
[1]又は[2]に記載のシラノール組成物。
[4]
遷移金属を含有しない、
[1]〜[3]のいずれかに記載のシラノール組成物。
[5]
環状シラノール(A1)の脱水縮合物(A2)を含み、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定において、前記脱水縮合物(A2)の面積が、前記環状シラノール(A1)及び前記脱水縮合物(A2)の総面積に対して、0%超過50%以下である、
[1]〜[4]のいずれかに記載のシラノール組成物。
[6]
3μmの厚みにおける波長265nmの光透過率が、80%以上である、
[1]〜[5]のいずれかに記載のシラノール組成物。
[7]
溶媒を含む、
[1]〜[6]のいずれかに記載のシラノール組成物。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載のシラノール組成物の硬化物。
[9]
[1]〜[7]のいずれかに記載のシラノール組成物を含む、接着剤。
本発明によれば、接着力及び透明性に優れるシラノール組成物を提供することができる。
実施例1にて得られたシラノール組成物の立体異性体割合を算出する際に用いた1H−NMRスペクトルを示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(シラノール組成物)
本実施形態のシラノール組成物は、下記式(1)で表される環状シラノール(A1)を含有する。
式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。)を含有する。
環状シラノール(A1)は、下記式(2)〜(5)で表される環状シラノール(B1)〜(B4)を含有する。
式(2)〜(5)中、R1〜R4は、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。本実施形態の環状シラノールは、ケイ素上の有機基R1〜R4とヒドロキシ基の配置に由来する立体異性体を含む。本実施形態における環状シラノールのシス及びトランスとは、それぞれ、隣接する2つのヒドロキシ基又は隣接する2つのR1〜R4基のいずれかが環状シロキサン骨格に対し同じ配向であること(シス)、隣接する2つのヒドロキシ基又は隣接する2つのR基が環状シロキサン骨格に対し異なる配向であること(トランス)を指す。
本実施形態のシラノール組成物は、環状シラノール(B1)〜(B4)の総量に対する前記環状シラノール(B1)、(B3)、及び(B4)の各割合(モル%)をそれぞれa、c、及びdとするとき、下記条件(x)、(y)及び(z);
(x)75≦a+c<100
(y)75≦c+d<100且つ25<d<100
(z)60≦c<100
からなる群より選択される少なくとも一つを満たす。
本実施形態のシラノール組成物は、硬化した際に、接着力及び透明性に優れる。本実施形態のシラノール組成物が接着力及び透明性に優れる理由は、以下の理由が考えられる。
環状シラノール(B1)〜(B4)のそれぞれの結晶性が高く、シラノール組成物中に微結晶が析出することによって、シラノール組成物を塗布した接合面の平滑性が低下し十分な接着性が低下する。また、シラノール組成物における部分的な結晶質成分の存在により光の散乱が生じ、透明性が低下する。これに対し、本実施形態のシラノール組成物は、環状シラノール(B1)〜(B4)の割合が所定の条件を満たすことによって、非晶質となり、優れた接着性及び透明性が発現する。但し、以上の理由は、接着性及び透明性の発現機序を限定するものではない。
本実施形態における条件(x)は、接着性及び透明性に一層優れる観点から、75≦a+c≦95であることが好ましく、75≦a+c≦90であることがより好ましい。
本実施形態における条件(y)は、接着性及び透明性に一層優れる観点から、75≦c+d≦95且つ25<d≦95であることが好ましく、75≦c+d≦90且つ25<d≦90であることがより好ましい。
本実施形態における条件(z)は、接着性及び透明性に一層優れる観点から、60≦c≦95であることが好ましく、60≦c≦90であることがより好ましい。
条件(x)、(y)、及び(z)の少なくとも一つ満たすようにする方法としては、前述したように、例えば、環状シラノール(B2)の割合を制御する方法が挙げられる。シラノール(B2)の割合の制御は、後述するシラノール組成物の製造方法にて詳細を述べるが、例えば、特定の方法により得られた式(1)に示される環状シラノールの異性化を行うこと、シラノール(B2)の結晶を除去すること、又はそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。
本実施形態のシラノール組成物は、透明性の高いシラノール組成物を得る観点から、前記環状シラノール(B1)〜(B4)の総量に対する前記環状シラノール(B2)の割合(モル%)をbとしたとき、下記条件(w):0<b≦20を満たすことが好ましい。上記条件(w)は、0<b≦18であることがより好ましく、0<b≦15であることがさらに好ましい。
条件(w)を0<b≦20とする方法としては、上述したように、例えば、異性化反応の時間制御、又は再結晶操作によるシラノール(B2)の結晶除去、又はそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。
本実施形態のシラノール組成物におけるa、b、c、及びdは、1H−NMRから算出することができる。本実施形態のシラノール組成物に含まれる環状シラノール(A1)の1H−NMRを測定した場合、例えば、R1〜R4がいずれもメチル基の環状シラノール(A1)のメチル基水素のシグナルは、高磁場側から、all−cis型(B1)、trans−trans−cis型(B3)、trans−trans−cis型(B3)、cis−trans−cis型(B2)、all−trans型(B4)、trans−trans−cis型(B3)の順に、4種類の異性体の計6種類のピークが観測される。かかる水素の積分値から、前記環状シラノール(B1)〜(B4)のそれぞれの割合a、b、c、及びdを算出する。
本実施形態におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
本実施形態におけるフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルとしては、例えば、以下の基が挙げられる。
CF3−,
CF3CF2−,
CF3CF2CF2−,
(CF32CF−,
CF3CF2CF2CF2−,
HCF2CF2CF2CF2−,
(CF32CFCF2
本実施形態における非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル等が挙げられる。
本実施形態におけるR1〜R4基は、各々独立して、好ましくは非置換の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。
本実施形態のシラノール組成物は、3μmの厚みにおけるヘイズが10%以下であることが好ましい。シラノール組成物のヘイズが10%以下であることにより、硬化物としたときの透明性が一層高くなり、接着力に一層優れる傾向にある。上記ヘイズは、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、よりさらに好ましくは1%以下である。
シラノール組成物におけるヘイズを10%以下とする方法としては、例えば、式(1)で表される環状シラノール(A1)における異性体の割合を調整して結晶性の高い異性体の割合を低下させる方法や、組成物に含まれる金属量を抑える方法等が挙げられる。
シラノール組成物のヘイズは、具体的には、実施例に記載の方法によって測定することができる。
環状ヒドロシラン化合物の酸化によって環状シラノールを合成する際に金属触媒を用いた場合、金属触媒由来の遷移金属の残留が懸念される。このような遷移金属の残留は、例えば、紫外線等の高エネルギー光を照射した際に残留金属イオンの還元による着色の原因となる恐れがある。本実施形態のシラノール組成物は、後述する製造方法で説明するように遷移金属が残留しない方法、すなわち金属触媒を使用しない方法により製造することができる。そのため、低圧水銀ランプの照射等による着色を抑制できる傾向にある。
また、遷移金属は、一般的に吸光係数が大きいために、微量の残留金属イオンの存在は、シラノール組成物の光透過率の低下を引き起こす。本実施形態のシラノール組成物は、上述したように、遷移金属イオンの残留をなくすことにより(すなわち、シラノール組成物が、遷移金属を含有しないことにより)、光透過率の低下が抑制され、紫外領域の光透過性に優れる傾向にある。本実施形態のシラノール組成物は、3μmの厚みにおける波長265nmの光透過率が、好ましくは75%以上であり、より好ましくは78%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。シラノール組成物の光透過率の測定は、具体的には実施例に記載の方法によって行うことができる。
したがって、シラノール組成物の光透過性を高くする観点及び低圧水銀ランプの照射等による着色を抑制する観点から、本実施形態のシラノール組成物中の遷移金属の割合は、シラノール組成物の全重量に対し、好ましくは1質量ppm未満であり、より好ましくは0.5質量ppm未満であり、さらに好ましくは0質量ppm(すなわち、シラノール組成物が、遷移金属を含有しない)である。遷移金属としては、例えば、パラジウム等が挙げられる。
本実施形態のシラノール組成物は、下記式(1)で表される環状シラノール(A1)を含み、さらに環状シラノール(A1)の脱水縮合物(A2)を含んでもよい。このとき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定において、前記脱水縮合物(A2)の面積が、前記環状シラノール(A1)及び前記脱水縮合物(A2)の総面積に対して、0%超過50%以下であることが好ましい。
式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物とは、式(1)で表される環状シラノールが有するシラノール基の少なくとも一つが、少なくとも一つの式(1)で表される別の環状シラノール分子における少なくとも一つのシラノール基と脱水縮合し、シロキサン結合を生成する反応により得られる化合物である。
式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物は、例えば、模式的に以下の式(7)で表すことができる。
式(7)中、4つのRは、各々独立して式(1)におけるR1〜R4のいずれかであり、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、mは、2以上の整数である。環状シラノールにおける脱水縮合するシラノール基は、いずれのシラノール基であってもよい。このとき、式(7)で表される脱水縮合物においては、2分子以上の環状シラノール構造間で2以上のシロキサン結合が形成されていてもよい。また、式(7)中のRの好ましい基としては、R1〜R4基と同様の好ましい基を挙げることができる。
式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物としては、具体的には、以下の化合物が挙げられる。ただし、式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物は以下の化合物に限定されるものではない。なお、以下の化合物における、環状シラノール骨格に対するヒドロキシ基(−OH)及びR基の配向は制限されない。また、以下の化合物におけるRは、各々独立して式(1)におけるR1〜R4のいずれかである。さらに、以下の化合物におけるRの好ましい基としては、R1〜R4基と同様の好ましい基を挙げることができる。
式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定によって算出した分子量が、好ましくは500〜1,000,000であり、より好ましくは500〜100,000であり、さらに好ましくは500〜10,000である。
本実施形態のシラノール組成物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定において、前記脱水縮合物(A2)の面積が、前記環状シラノール(A1)及び前記脱水縮合物(A2)の総面積に対して、0%超過50%以下であることが好ましい。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定により求められる各化合物の面積は、シラノール組成物中の各化合物の含有量を表す。
A2の面積が0%超過50%以下であることにより、シラノール組成物を製造する際に、粘度が高くなり過ぎず、有機溶媒や水を含むシラノール組成物から有機溶媒や水を除去しやすくなる傾向にある。A2の面積は、より好ましくは0%超過40%以下であり、さらに好ましくは0%超過25%以下である。
A2の面積、すなわちA2の含有量は、例えば、シラノール組成物の製造において、環状シラノール(B1)の酸による異性化によって環状シラノール(A1)を得るとき、異性化反応の酸の種類により制御することができる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるA1及びA2の面積、すなわち、A1及びA2の含有量の測定は、具体的には実施例に記載の方法によって行うことができる。
(シラノール組成物の製造方法)
本実施形態のシラノール組成物は、例えば、式(1)で表される環状シラノールに対して、水の存在下、酸を作用させることによって調製することができる。(1)に示される環状シラノールに酸を作用させると、異性化反応が進行して、環状シロキサン骨格のケイ素上の有機基Rとヒドロキシ基との位置関係が変化する。
上記酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、リン酸等の無機酸、又はトリフルオロメタンスルホン酸、酢酸等の有機酸を用いることができる。環状シラノールの脱水縮合の抑制及び立体異性体組成の制御の観点から、弱酸を用いることが好ましく、酢酸を用いることがより好ましい。
前記異性化反応により調製した環状シラノールには、いずれの単一異性体又は異性体混合物を用いた場合にも、上述した式(2)〜(5)で表されるall−cis型、cis−trans−cis型、trans−trans−cis型、all−trans型の環状シラノール(B1)〜(B4)が含まれる。
本実施形態のシラノール組成物の調製に用いる式(1)で表される環状シラノールは、例えば、塩基の存在下で、式(8)で表される単量体のトリアルコキシシランを加水分解させる工程を含む製造方法によって合成することができる。式(1)で表される環状シラノールを合成する方法は、前記加水分解して、式(9)で表される環状シラノールの金属塩を得た後に、酸で処理する工程を含むことが好ましい。式(8)で表される単量体のトリアルコキシシランから式(9)で表される環状シラノールの金属塩は、Inorganic Chemistry Volume 49, Issue 2, P572−577に記載の方法に基づき合成することができる。
式(8)中、Rは、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルである。Ra、Rb、及びRcは、各々独立して、有機基であれば特に制限されず、好ましくは非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルである。
式(9)中、R1〜R4は各々独立して、Rと同義であり、Mは各々独立して、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、及びセシウムイオン等からなる群より選択されるいずれかである。
加水分解に用いるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物はいずれも使用することができるが、反応後の再結晶による精製が容易であるとの観点から、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いることが好ましい。
前記式(9)で表される環状シラノールの金属塩は、適切な酸を作用させることにより中和反応によって、式(1)で表される環状シラノールとなる。中和反応に用いる酸としては、例えば、塩酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を使用することができるが、生成した環状シラノールの脱水縮合を抑制する観点から、酢酸を用いることが望ましい。本実施形態のシラノール組成物の製造方法では、式(9)で表される環状シラノールの金属塩を出発物として用い、酸を作用させて、式(1)で表される環状シラノールへの誘導と、異性化反応とを一挙に行ってもよい。
式(3)で表されるcis−trans−cis型の環状シラノール(B2)は、シラノール組成物を白濁させる傾向にある。この現象は、cis−trans−cis型の環状シラノール(B2)が高い結晶性を有するためであると考えられ、特に、−30℃程度にて冷凍保管した場合に顕著である。結晶性が高いシラノール(B2)を除去することにより、透明性及び接着力に優れるシラノール組成物を得ることができる。
前記異性化反応においては、転化する酸の量と反応時間の制御によって、環状シラノール(B2)の量を低く抑えるように調整できる。具体的な制御の方法としては、環状シラノール(B1)に、0.1〜3.0mol/L、好ましくは0.8〜2.0mol/Lの酢酸水溶液を0.5〜10当量、好ましくは1.0〜3.0当量作用させると、時間経過とともにシラノール組成物に占める環状シラノール(B1)の割合aは減少していき、環状シラノール(B3)の割合cが増加していく。反応開始3.5時間後には割合aと割合cはほぼ等しくなり、5時間後には割合aは30%程度まで減少する。
また、環状シラノール(B4)に対して酢酸水溶液を同様に作用させた場合には、割合dの減少とともに、割合cが増加する。環状シラノール(B3)に対して同様に酢酸水溶液を作用させた場合には、割合cの減少とともに、割合a及び割合b及び割合dが増加する。
透明性の高いシラノール組成物を得る観点から、環状シラノール(B2)の割合を少なく抑えることが好ましい。環状シラノール(B2)の割合を抑える方法としては、例えば、異性化反応の時間制御、又は再結晶操作によるシラノール(B2)の結晶除去、又はそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。より具体的には、環状シラノールの異性化反応において環状シラノール(B2)の生成量が少ない段階、あるいは環状シラノール(B2)を出発原料に用いた場合は異性化反応が十分に進行し、その割合が減少した段階で反応を停止した上で、得られた生成物の良溶媒溶液に、貧溶媒を添加及び冷却することにより、環状シラノール(B2)が結晶として析出する。析出した環状シラノール(B2)を除去し、可溶部の溶液を濃縮することにより、シラノール組成物中の環状シラノール(B2)の割合を抑え、透明性の高いシラノール組成物を得ることができる。
再結晶操作を行う際、透明性の高いシラノール組成物を得る観点から、冷却温度は10℃未満が好ましい。また、環状シラノールの収量向上の観点から、貧溶媒の量(体積)は、良溶媒の等量以上、20倍以下が好ましい。
良溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、エチレングリコール、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの良溶媒は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
貧溶媒としては、例えば、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、ジクロロメタン、キシレン等が挙げられる。これらの貧溶媒は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のシラノール組成物の調製に用いる環状シラノールは、前記方法以外にも、例えば、水又はアルコールの存在下で、Pd/炭素等を用いて式(10)に示されるヒドロシラン化合物を酸化させる方法によっても合成できる。
上記の方法によって合成された式(10)で表される環状ヒドロシラン化合物についてもケイ素上の有機基RとSiH基の配置に由来する式(11)〜(14)で表される4種類の立体異性体が混在する。例えば、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンについて、Organometallics 1984, Vol.3, No.7, pp1070−1075.には、1H−NMRを測定において、式(11)〜(14)に対応する化合物がそれぞれ11%、27%、52%、11%存在すると算出している。
環状ヒドロシラン化合物の酸化反応によって環状シラノールを調製する場合、酸化生成物のシラノール組成物における前記環状シラノール(B1)〜(B4)の割合は前記式(10)で表される環状ヒドロシラン化合物中の式(11)〜(14)で表される各立体異性体存在比を反映した値となる。例えば、水の存在下、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンをPd/炭素を用いて酸化して得られるシラノール組成物について1H−NMRを測定すると、前記環状シラノール(B1)〜(B4)の割合はそれぞれ9%、25%、51%、15%と算出され、原料の環状ヒドロシラン化合物由来の立体異性体存在比を反映した組成となる。
Pd/炭素等を用いてヒドロシラン化合物を酸化させる方法により得られた式(1)で表される環状シラノールから、条件(x)、(y)及び(z)を満たすように上記立体異性体存在比を調整することも可能であるが、式(9)で示される環状シラノールの金属塩を中間体として用いる上述の方法では、環状シラノール(B2)の割合を抑えることを容易に行うことができ、より効率的に本実施形態のシラノール組成物を製造することができる。また、式(9)で示される環状シラノールの金属塩を中間体とする製造方法では、遷移金属触媒を使用する必要がなく、遷移金属も残留しないため、低圧水銀ランプの照射等による着色を抑制できる。
本実施形態のシラノール組成物は、上述したように、環状シラノールに対して酸を作用させて異性化させ、さらにシラノール組成物の良溶媒溶液に貧溶媒を添加することによる再結晶、ろ過を経て、ろ過により得られる可溶部の溶液を濃縮することにより、好適に製造される。
本実施形態のシラノール組成物の製造において、可溶部の溶液の濃縮は任意で行えばよく、可溶部の溶液そのものをシラノール組成物として使用してもよい。また、可溶部の溶液の濃縮では当該溶液に含まれるすべての溶媒を除去する必要はないため、本実施形態のシラノール組成物は、可溶部の溶液に含まれる溶媒の一部を留去して得られる粗濃縮物であってもよい。またさらに、本実施形態のシラノール組成物は、可溶部の溶液を濃縮した後に、溶媒で再希釈したものであってもよい。以上のように、本実施形態の好ましい態様の一つは、溶媒を含むシラノール組成物である。
溶媒を含むシラノール組成物における溶媒の量は、特に制限されないが、シラノール組成物全量に対し、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。溶媒の量の下限値は特に限定されないが、通常1質量%以上である。
溶媒を含むシラノール組成物における溶媒としては、反応に使用した水及び/又はアルコール、再結晶時に使用した良溶媒及び貧溶媒等が挙げられる。溶媒としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、エチレングリコール、メチルエチルケトン、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、ジクロロメタン、キシレン等が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独であってもよく、二種以上の組み合わせであってもよい。
(硬化物)
本実施形態の硬化物は、本実施形態のシラノール組成物を硬化することにより得られる。すなわち、本実施形態の一つは、本実施形態のシラノール組成物の硬化物である。
本実施形態の硬化物は、硬化させること、すなわち、本実施形態のシラノール組成物に含まれるシラノール基(−Si−OH)の脱水縮合反応により、シロキサン結合(−Si−O−Si−)を形成させることにより得られる。また、本実施形態の硬化物は、テトラヒドロフラン、トルエン等の溶媒に不溶なものである。
本実施形態の一つは、本実施形態のシラノール組成物を硬化させる方法である。環状シラノールは、触媒非存在下で重合してもよく、触媒を添加して重合してもよい。
環状シラノールの重合に使用される触媒は、環状シラノールの加水分解及び縮合反応を促進させる作用をする。触媒としては、酸触媒又はアルカリ触媒を使用することができる。
酸触媒としては、特に制限はないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、ホルム酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、オレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、p−アミノ安息香酸、及びp−トルエンスルホン酸等が好適に挙げられる。
アルカリ触媒としては、特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア水及び有機アミン等が好適に挙げられる。また、無機塩基が使用される場合には、金属イオンを含まない絶縁膜を形成するための組成物が使用される。
酸触媒及びアルカリ触媒は、それぞれ、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
触媒の添加量は、反応条件によって調節することができ、環状シラノールの水酸基1モルに対して、好ましくは0.000001〜2モルである。添加量が環状シラノールの水酸基1モルに対して2モルを超える場合には、低濃度でも反応速度が非常に速いため分子量の調節が難しく、ゲルが発生しやすい傾向にある。
硬化物を得る際に、シラノール組成物を酸触媒及びアルカリ触媒を利用することにより、段階的に加水分解及び縮合反応することができる。具体的には、シラノール組成物を酸で加水分解及び縮合反応を行った後、塩基で再び反応させたり、あるいは、塩基で先に加水分解及び縮合反応を行って、再び酸で反応させたりして、硬化物を得ることができる。また、酸触媒とアルカリ触媒とで各々反応させた後、縮合物を混合してシラノール組成物として使用することもできる。
(シラノール組成物を硬化させる方法)
本実施形態のシラノール組成物を硬化させるとき、加熱してもよい。硬化物を硬化させるときの温度は、特に制限はないが、硬化物としての形態を維持するため、好ましくは60〜250℃であり、より好ましくは80〜200℃である。本実施形態の一つは、本実施形態のシラノール組成物を加熱硬化させる方法であって、硬化温度が、60〜250℃である、方法である。
本実施形態のシラノール組成物を硬化させる方法では、硬化物としての形態を維持するため、10分〜48時間熱硬化させることが好ましい。
(接着剤)
本実施形態のシラノール組成物は、接着剤として使用することができる。したがって、本実施形態の一つは、本実施形態の組成物を含む接着剤である。本実施形態のシラノール組成物を基材に塗布し、接着層を形成させ、シラノール組成物を含む接着層を硬化させることにより接着する。基材としては、ガラス、シリコンウエハー、SiO2ウエハー、SiNウエハー、化合物半導体等が挙げられる。
本発明を実施例及び比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定されるものではない。本発明及び以下の実施例、比較例により得られるシラノール組成物の、物性の測定方法、特性の評価方法は以下のとおりである。
(溶媒を含むシラノール組成物における環状シラノール及びその脱水縮合物の質量パーセント濃度の算出)
日本電子株式会社製ECZ400S、プローブはTFHプローブを用いて、以下のようにしてNMR測定を行うことによって、溶媒を含むシラノール組成物における環状シラノール及びその脱水縮合物の質量パーセント濃度を算出できる。
シラノール組成物が、例えば、テトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサン及びその脱水縮合物のイソプロパノール溶液の場合は、テトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサン及びその脱水縮合物のイソプロパノール溶液0.1gに重アセトン1gを添加したサンプルを用いて、1H−NMRを測定した。なお、重溶媒の基準ピークを2.05ppmとし、積算回数は64回で測定を行った。
テトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサン及びその脱水縮合物の質量パーセント濃度は近似的に以下式にて算出できる。
テトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサン及びその脱水縮合物の質量パーセント濃度(%)=(−0.1−0.3ppmの領域のSiに結合するメチル基のピーク積分比/12×304.51)/{(−0.1−0.3ppmの領域のSiに結合するメチル基のピーク積分比/12×304.51)+(3.7−4.1ppmの領域のイソプロパノールの炭素に結合する水素のピーク積分値/1×60.1)}
なお、前記式中、304.51はテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンの分子量、60.1はイソプロパノールの分子量を意味する。
(ヘイズの測定)
ヘイズは濁度計NDH5000W(日本電色工業製)を用い、JISK7136に基づき測定を行った。以下に具体的操作を示す。
シラノール組成物のヘイズは素ガラス基板5cm×5cm×0.7mm厚(テクノプリント社製)にシラノール組成物42wt%イソプロパノール溶液をバーコーターNo.40(アズワン製)にて塗布後、60℃1時間にて減圧下で乾燥し、ヘイズを測定した。なお、ヘイズ測定のブランクは素ガラス基板5cm×5cm×0.7mm厚(テクノプリント社製)のみを用いた。
硬化物のヘイズはシラノール組成物のヘイズ測定で作製したサンプルを常圧にて100℃2時間加熱することにより得られたサンプルを用いて測定した。
(膜厚の測定)
膜厚はヘイズの測定用に作製したサンプルを表面形状測定機計(製造所名:(株)小坂研究所型式:ET4000AK31製)にて測定し、膜厚を算出した。
(シラノール組成物の265nmにおける光透過率の測定)
光透過率は分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ製)を用い、測定を行った。以下に具体的操作を示す。
シラノール組成物の265nmにおける光透過率は、シラノール組成物10wt%イソプロパノール溶液について、石英ガラスセル10×4×45H(東京硝子器械社製)を用いて測定した。なお、光透過率のブランクは石英ガラスセル10×4×45H(東京硝子器械社製)のみを用いた。
1H−NMR測定を用いた環状シラノールの立体異性体割合の算出)
日本電子株式会社製ECZ400S、プローブはTFHプローブを用いて、以下のようにしてNMR測定を行った。
得られたシラノール組成物0.1gに重アセトン1gを添加し、1H−NMRを測定した。なお、重溶媒の基準ピークを2.05ppmとし、積算回数は64回で測定を行った。
ヒドロシラン化合物としてテトラメチルテトラシクロシロキサンを原料に用いて酸化させた場合、得られるテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンの1H−NMRでは、0.04−0.95ppmの領域に4種類の異性体に由来する6種類のSiに結合するメチル基のピークが観測された。
メチル基の水素は、高磁場側から、all−cis型(0.057ppm)、trans−trans−cis型(0.064ppm)、trans−trans−cis型(0.067ppm)、cis−trans−cis型(0.074ppm)、all−trans型(0.080ppm)、trans−trans−cis型(0.087ppm)の順に観測された。Delta5.2.1(日本電子製)を用いて前記6つのピークに関してローレンツ変換による波形分離を行い、これらの水素のピーク強度から、環状シラノールのそれぞれの立体異性体割合を算出した。
(各立体異性体の調製)
・all−cis体(環状シラノール(B1))
Inorganic Chemistry Volume 49, Issue 2, P572−577に記載の合成法に従って合成した。
・cis−trans−cis体(環状シラノール(B2))European Polymer Journal 2012, Vol.48, 1073−1081に記載の合成法に従って合成した。
・all−trans体(環状シラノール(B4))
比較例6にて作製したシラノール10wt%のテトラヒドロフラン及びジクロロメタン混合溶液をさらに濃縮し、シラノール20wt%となるまで濃縮した溶液を用いて、液体クロマトグラフィーを用いて立体異性体の分取を行った。
<液体クロマトグラフィーの条件>
装置 GLサイエンス製液体クロマトグラフィー
ポンプ :PU715
カラムオーブン :CO705
フラクションコレクター :FC204YMC−PackSIL−06 φ30mm×250mm
溶離液 :Cyclohexane/EtOAc =60/40
流速 :40mL/min
注入量 :5mL
温度 :40℃
検出 :得られたフラクションをELSD測定にて評価し、検出した。
得られたall−trans体の溶離液を静置することでall−trans体の結晶が得られたため、濾別により回収した。
・trans−trans−cis体(環状シラノール(B3))
all−trans体と同様の方法にて得られた溶離液を濃縮後イソプロパノールに置換することで得た。
(環状シラノール(A1)及び脱水縮合物(A2)のGPCによる面積%の測定)
シラノール組成物0.03gに対して、1.5mLの割合でテトラヒドロフランに溶解した溶液を測定試料とした。
この測定試料を用いて、東ソー社製HLC−8220GPCで測定した。
カラムは東ソー社製のTSKガードカラムSuperH−H、TSKgel SuperHM−H、TSKgel SuperHM−H、TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH1000を直列に連結して使用し、テトラヒドロフランを移動相として0.35ml/分の速度で分析した。
検出器はRIディテクターを使用し、American Polymer Standards Corporation製ポリメタクリル酸メチル標準試料(分子量:2100000、322000、87800、20850、2000、670000、130000、46300、11800、860)、及び1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子量240.5、東京化成製)を標準物質として、数平均分子量及び重量平均分子量を求め、p=0及び、p≧1のピークを特定し、環状シラノール(A1)及び脱水縮合物(A2)それぞれのピークの面積比を算出した。
(接着力の確認)
シラノール組成物のヘイズ測定で作製したサンプルの上に、T−3000−FC3マニュアルダイボンダー(TRESKY製)を用いて直径2ミリの半球石英レンズを荷重400g3秒で乗せた。その後、常圧下、100℃2時間加熱した後に、得られた半球レンズが載ったガラスを横から押し、接着の有無を確認した。
(低圧水銀ランプ照射前後の変色の有無の確認)
シラノール組成物のヘイズ測定で作製したサンプルに対して、低圧水銀ランプを搭載したセン特殊光源社製UVオゾン照射装置を用いて6時間照射を行い、照射前後での変色の有無を確認した。
[実施例1]
反応容器に、all−cis型の1,3,5,7−テトラヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、D4OHとも記載する)0.3g、テトラヒドロフラン(以下、THFと記載する。富士フイルム和光純薬製)8mLを入れて混合した。なお、all−cis型の1,3,5,7−テトラヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサンは、Inorganic Chemistry Volume 49, Issue 2, P572−577に記載の方法に基づき調製した。前記反応容器に1mol/L酢酸水溶液2mL(富士フイルム和光純薬製)を添加し、室温で3.5時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して中和した後、分液漏斗を用いて有機層を回収し、回収した有機層を飽和食塩水で2回洗浄した。洗浄後の有機層に硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、ひだ折りろ紙を用いて硫酸マグネシウムを濾別した。ろ液をエバポレーターで濃縮し、D4OH濃縮物2gを得た。
さらに、イソプロパノール(富士フイルム和光純薬製)を添加し、再度濃縮を行い、所定の濃度のシラノール組成物(イソプロパノール溶液)を作製した。
得られたシラノール組成物を用いて前記(ヘイズの測定)の方法にしたがってヘイズを測定し、GPCの微分分子量分布曲線におけるピーク面積の測定を行った。また、環状シラノールの立体異性体割合を1H−NMR測定により算出した。図1に1H−NMRスペクトルを示す。
[実施例2]
all−cis型のD4OHの代わりに、trans−trans−cis型のD4OHを原料に用い、反応時間を1時間としたこと以外は、実施例1と同様にしてシラノール組成物を作製した。
[実施例3]
all−cis型のD4OHの代わりに、all−trans型のD4OHを原料に用い、反応時間を2時間としたこと以外は、実施例1と同様にしてシラノール組成物を作製した。
[実施例4]
反応容器に、all−cis型の1,3,5,7−テトラヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、D4OHとも記載する)0.3g、THF(富士フイルム和光純薬製)8mLを入れて混合した。前記反応容器に1mol/L酢酸水溶液2mL(富士フイルム和光純薬製)を添加し、室温で3.5時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して中和した後、分液漏斗を用いて有機層を回収し、回収した有機層を飽和食塩水で2回洗浄する。洗浄後の有機層に硫酸マグネシウムを添加し、ひだ折りろ紙を用いて硫酸マグネシウムを濾別した。ろ液をエバポレーターで濃縮し、D4OH濃縮物(THF溶液)2gを得た。
続いて、この濃縮物をTHF14mLとジクロロメタン1mLとの混合溶媒中へ投じた。混合液を5℃で4時間静置後、析出した不溶物を減圧濾過して除いた。エバポレーターを用いて、ろ液をシラノール組成物10wt%のTHF溶液となるまで濃縮した。さらに、イソプロパノールを添加し、再度濃縮を行い、所定の濃度のシラノール組成物(イソプロパノール溶液)を作製した。
得られたシラノール組成物を用いてヘイズ等の物性を評価した。また、環状シラノールの立体異性体割合を1H−NMR測定により算出した。
[実施例5]
all−cis型のD4OHの代わりに、European Polymer Journal 2012, Vol.48, 1073−1081.に記載の方法に倣って合成したcis−trans−cis型のD4OHを原料に用い、1mol/L酢酸を5mL使用し、反応時間を1時間としたこと以外は、実施例4と同様にしてシラノール組成物を作製した。
[実施例6]
all−cis型のD4OHの代わりに、trans−trans−cis型のD4OHを原料に用い、反応時間を1時間としたこと以外は、実施例4と同様にしてシラノール組成物を作製した。
[実施例7]
all−cis型のD4OHの代わりに、all−trans型のD4OHを原料に用い、反応時間を2時間としたこと以外は、実施例4と同様にしてシラノール組成物を作製した。
[実施例8]
反応容器に、all−cis型の1,3,5,7−テトラヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、D4OHとも記載する)0.3g、THF(富士フイルム和光純薬製)8mLを入れて混合した。前記反応容器に1mol/L酢酸水溶液5mL(富士フイルム和光純薬製)を添加し、室温で1時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して中和した後、分液漏斗を用いて有機層を回収し、回収した有機層を飽和食塩水で2回洗浄する。洗浄後の有機層に硫酸マグネシウムを添加し、ひだ折りろ紙を用いて硫酸マグネシウムを濾別した。ろ液をエバポレーターで濃縮し、D4OH濃縮物(THF溶液)2gを得た。
続いて、この濃縮物をTHF14mLとジクロロメタン(富士フイルム和光純薬製)1mLとの混合溶媒中へ投じた。混合液を5℃で4時間静置後、析出した不溶物を濾過して除いた。エバポレーターを用いて、ろ液をシラノール組成物10wt%のTHF溶液となるまで濃縮した。さらに、イソプロパノール(富士フイルム和光純薬製)を添加し、再度濃縮を行い、所定の濃度のシラノール組成物(イソプロパノール溶液)を作製した。
得られたシラノール組成物を用いてヘイズ等の物性を評価した。また、環状シラノールの立体異性体割合を1H−NMR測定により算出した。さらに、得られた硬化組成物に対して低圧水銀ランプを6時間照射し、変色の有無を確認した。
[比較例1]
前記(各立体異性体の調製)にて調製したall−cis体(環状シラノール(B1))を用いて、濃度5%のシラノール組成物(イソプロパノール溶液)を調製し、シラノール組成物とした。
[比較例2]
前記(各立体異性体の調製)にて調製したcis−trans−cis体(環状シラノール(B2))を用いて、濃度5%のシラノール組成物(イソプロパノール溶液)を調製し、シラノール組成物とした。
[比較例3]
前記(各立体異性体の調製)にて調製したall−trans体(環状シラノール(B4))を用いて、濃度5%のシラノール組成物(イソプロパノール溶液)を調製し、シラノール組成物とした。
[比較例4]
前記(各立体異性体の調製)にて調製したtrans−trans−cis体(環状シラノール(B3))を用いて、濃度5%のシラノール組成物(イソプロパノール溶液)を調製し、シラノール組成物とした。
[比較例5]
D4OH含有THF溶液の濃縮物を、THFとジクロロメタンの混合溶媒中へ投じ、混合液を5℃で4時間静置後、析出した不溶物をろ過して除くという再結晶操作を行わなかったこと以外は、実施例8と同様の実験を行った。
[比較例6]
(シラノール組成物の調製)
D4OH含有THF溶液の濃縮物を、THFとジクロロメタンの混合溶媒中へ投じ、混合液を4℃で1時間冷却するという再結晶操作を行わなかったこと以外は、European Polymer Journal 2012, Vol.48, P1073−1081に記載の方法に従って合成した。得られたシラノール組成物を用いてヘイズ等の物性を評価した。また、得られた硬化組成物に対して低圧水銀ランプを6時間照射し、変色の有無を確認した。
実施例及び比較例で得られたシラノール組成物及び硬化物の物性及び評価結果を表1及び表2に示す。
本発明のシラノール組成物は、発光ダイオード素子等の半導体素子の保護、封止、及び接着や、発光ダイオード素子から発せられる光の波長の変更又は調整、並びに、レンズ等の分野において産業上の利用可能性を有する。さらに、本発明のシラノール組成物は、レンズ材料、光学デバイス、光学部品用材料、ディスプレイ材料等の各種の光学用材料、電子デバイス、電子部品用絶縁材料、コーティング材料等の分野において産業上の利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. 下記式(1)で表される環状シラノール(A1):
    (式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。)を含有し、
    前記環状シラノール(A1)が、下記式(2)〜(5)で表される環状シラノール(B1)〜(B4):
    (式(2)〜(5)中、R1〜R4は、各々独立して、フッ素原子、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。)を含有し、
    前記環状シラノール(B1)〜(B4)の総量に対する前記環状シラノール(B1)、(B3)、及び(B4)の各割合(モル%)をそれぞれa、c、及びdとするとき、下記条件(x)、(y)及び(z):
    (x)75≦a+c<100
    (y)75≦c+d<100且つ25<d<100
    (z)60≦c<100
    からなる群より選択される少なくとも一つを満たす、シラノール組成物。
  2. 前記環状シラノール(B1)〜(B4)の総量に対する前記環状シラノール(B2)の割合(モル%)をbとするとき、下記条件(w):
    (w)0<b≦20
    を満たす、
    請求項1に記載のシラノール組成物。
  3. 3μmの厚みにおけるヘイズが、10%以下である、
    請求項1又は2に記載のシラノール組成物。
  4. 遷移金属を含有しない、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のシラノール組成物。
  5. 環状シラノール(A1)の脱水縮合物(A2)を含み、
    ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定において、前記脱水縮合物(A2)の面積が、前記環状シラノール(A1)及び前記脱水縮合物(A2)の総面積に対して、0%超過50%以下である、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載のシラノール組成物。
  6. 3μmの厚みにおける波長265nmの光透過率が、80%以上である、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のシラノール組成物。
  7. 溶媒を含む、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載のシラノール組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のシラノール組成物の硬化物。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のシラノール組成物を含む、接着剤。
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