JP6931324B2 - 硬化物 - Google Patents

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Description

本発明は、硬化物に関する。
環状シラノールは、シロキサン結合によって環状構造を形成した骨格を有する化合物であり、当該環状シラノールを含む硬化性組成物は、従来から、発光ダイオード素子等の半導体素子の保護、封止、及び接着を行う材料として使用されている。また、環状シラノールは、発光ダイオード素子から発せられる光の波長を変更又は調整する機能を有しており、かかる機能を利用してレンズ等の材料として使用されている。
近年、構造が精密に制御された環状シラノールが報告されている。このような環状シラノールとして、all-trans体のテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
Inorganic Chemistry Vol.49, No.2,2010
しかしながら、非特許文献1に開示されているall-trans体のテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンを含む硬化性組成物は、保護、封止、及び接着をする対象物に塗布するときに十分な耐摩耗性を生じないという問題を有している。
また、前記環状シラノールや、当該環状シラノールを含む硬化性組成物をレンズや樹脂グレージング等の光学材料に適用する場合、厚膜化した際にクラックが生じる場合があるという問題を有している。
さらに、環状シラノールを硬化物としたときに高い耐摩耗性が必要とされる。
そこで本発明においては、耐摩耗性及び耐クラック性に優れた、環状シラノールを含む硬化性組成物を含有する硬化物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、環状シラノール及び当該環状シラノールの脱水縮合物を含む硬化性組成物を厚膜で硬化することにより、耐摩耗性及び耐クラック性に優れる硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
下記一般式(1)で表される環状シラノール(A1)と、
前記環状シラノールの脱水縮合物(A2)と、
を、含む硬化性組成物の硬化物であって、
膜厚20μm以上の硬化物。
Figure 0006931324
(一般式(1)中、Rは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2〜10の整数である。)
〔2〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定の微分分子量分布曲線において、
前記硬化性組成物の前記脱水縮合物(A2)のピーク面積が、前記環状シラノール(A1)及び前記脱水縮合物(A2)の総ピーク面積に対して、0%超50%以下である、前記〔1〕に記載の硬化物。
〔3〕
前記硬化性組成物において、下記一般式(2)で表される環状シラノールの割合が、前記一般式(1)で表される環状シラノールに対して0〜50%である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の硬化物。
Figure 0006931324
(一般式(2)中、Rは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基であり、nは、各々独立して2〜10の整数である。)
〔4〕
前記硬化性組成物において、
下記一般式(3)で表される環状シラノールの割合が、
前記一般式(1)で表される環状シラノールに対して0〜50%である、
前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の硬化物。
Figure 0006931324
(一般式(3)中、Rは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。)
〔5〕
前記硬化性組成物における遷移金属の割合が、1ppm未満である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一に記載の硬化物。
〔6〕
前記硬化性組成物が溶媒をさらに含む、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一に記載の硬化物。
本発明によれば、耐摩耗性及び耐クラック性に優れる硬化物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
〔硬化物〕
本実施形態の硬化物は、
下記一般式(1)で表される環状シラノール(A1)と、前記環状シラノールの脱水縮合物(A2)と、を含む硬化性組成物の硬化物であって、膜厚が20μm以上である。
Figure 0006931324
(一般式(1)中、Rは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2〜10の整数である。)
前記アリール基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
前記フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、以下の基が挙げられる。
CF3
CF3CF2
CF3CF2CF2
(CF32CF−
CF3CF2CF2CF2
HCF2CF2CF2CF2
(CF32CFCF2
前記非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基等が挙げられる。
前記一般式(1)中のRは、熱分解性の観点から、好ましくは非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜2のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1のアルキル基(例えば、非置換のメチル基)である。
本実施形態の硬化物に用いる硬化性組成物は、前記一般式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物(A2)を含む。
前記一般式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物とは、前記一般式(1)で表される環状シラノールが有するシラノール基の少なくとも一つが、少なくとも一つの前記一般式(1)で表される他の環状シラノール分子における少なくとも一つのシラノール基と脱水縮合し、シロキサン結合を生成する反応により得られる化合物である。
一般式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物は、例えば、下記の一般式(4)で表すことができる。
Figure 0006931324
一般式(4)中、Rは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基であり、mは、2以上の整数である。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、aとbとの合計は2〜10の整数である。
また、一般式(4)中、aが2以上かつbが1以上の整数、又は、aが1以上かつbが2以上の整数である場合、aの繰り返し数を有する−Si−O−単位と、bの繰り返し数を有する−Si−O−単位との順序は制限されず、ランダムである。すなわち、環状シラノールにおける脱水縮合するシラノール基は、いずれのシラノール基であってもよい。
さらに、一般式(4)で表される脱水縮合物には、mが2以上の整数であり、かつaが2以上の整数である場合、環状シラノール構造間で2以上のシロキサン結合が形成されていてもよい。すなわち、脱水縮合物(A2)は、2分子以上の環状シラノールの間において、2以上のシロキサン結合が形成されていてもよい。
一般式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物としては、具体的には、以下の化合物(I)〜(VI)が挙げられる。なお、一般式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物は、以下の化合物に限定されるものではない。
また、以下の化合物における、環状シラノール骨格に対するヒドロキシ基(−OH)及びR基の配向は特に制限されない。
Figure 0006931324
Figure 0006931324
Figure 0006931324
Figure 0006931324
Figure 0006931324
Figure 0006931324
一般式(1)で表される環状シラノールの脱水縮合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定によって算出した分子量が、好ましくは500〜1,000,000であり、より好ましくは500〜100,000であり、さらに好ましくは500〜10,000である。
ここで、前記分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定における微分分子量分布曲線から読み取った値を意味し、例えば、500〜1,000,000の場合、全ピーク面積の90%以上が、当該範囲に含まれることを意味する。分子量が1,000,000以下であると、ゲル化が起き難くなる傾向にある。
本実施形態の硬化物に用いる硬化性組成物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定の、微分分子量分布曲線において、前記脱水縮合物(A2)のピーク面積が、前記環状シラノール(A1)及び前記脱水縮合物(A2)の総ピーク面積に対して、0%超50%以下であることが好ましい。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定により求められる、微分分子量分布曲線における各化合物のピーク面積は、硬化性組成物中の各化合物の含有量を表す。
脱水縮合物(A2)のピーク面積が0%超50%以下であることにより、硬化性組成物を製造する際に、粘度が高くなり過ぎず、有機溶媒や水を含む硬化性組成物から有機溶媒や水を除去しやすくなる傾向にある。
脱水縮合物(A2)のピーク面積は、より好ましくは0%超40%以下であり、さらに好ましくは0%超25%以下である。
脱水縮合物(A2)のピーク面積、すなわち脱水縮合物(A2)の含有量は、例えば、硬化性組成物の製造において、ヒドロシラン化合物を酸化させて環状シラノールを得るとき、酸化反応後の精製により制御することができる。具体的には、溶媒留去を行う際に減圧度を高くする、留去温度を高くする、もしくは留去時間を長くする等の方法で重合を進めることによって、脱水縮合物(A2)の含有量を大きくすることができる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる微分分子量分布曲線の環状シラノール(A1)及び脱水縮合物(A2)のピーク面積、すなわち、環状シラノール(A1)及び脱水縮合物(A2)の含有量の測定は、具体的には実施例に記載の方法によって行うことができる。
本実施形態の硬化物に用いる硬化性組成物は、例えば、水又はアルコールの存在下で、ヒドロシラン化合物を酸化すること等によって調製することができる。
前記ヒドロシラン化合物は、水素を含有する有機シランオリゴマーであればいずれも使用することができ、市販品を使用することができる。
ヒドロシラン化合物としては、例えば、以下の一般式(5)で表される環状ヒドロシラン化合物が、好ましいものとして挙げられる。
Figure 0006931324
前記一般式(5)中、Rは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2〜10の整数である。
前記一般式(5)の環状ヒドロシラン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメチルテトラシクロシロキサン、ペンタメチルペンタシクロシロキサン、ヘキサメチルヘキサシクロシロキサン等が挙げられる。
一般的に、前記環状ヒドロシラン化合物は、ヒドロキシ又はアルコキシ官能基を有しないが、このような官能基は、酸化反応前に一定量含まれていてもよい。
ヒドロシラン化合物を酸化する方法としては、例えば、触媒及び/又は酸化剤を使用する方法等が挙げられる。
触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、Pd、Pt及びRh等の金属触媒が挙げられる。これらの金属触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの金属触媒は、担体に担持されていてもよい。
酸化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペルオキシド類等を使用することができる。ペルオキシド類としては、公知のものをいずれも使用することができ、例えば、ジメチルジオキシランのようなオキシラン類等が挙げられる。
ヒドロシラン化合物を酸化する方法としては、反応性、及び反応後の触媒除去が容易であるという観点から、Pd/カーボンを触媒として用いた酸化を行うことが好ましい。
水又はアルコールの存在下で、ヒドロシラン化合物を酸化することによって調製される環状シラノールは、環状構造であるために、原料のSiH基の水素原子のシス、トランスに由来する種々の異性体を含む。
前記一般式(5)で表される環状ヒドロシラン化合物は、クロロシランの加水分解や、ポリメチルシロキサンの平衡化重合反応により得られるが、シス、トランスに由来する異性体の割合を制御することは困難であるため、環状ヒドロシラン化合物中には様々なシス、トランスに由来した異性体が混在する。
前記環状ヒドロシラン化合物のシス及びトランスとは、それぞれ、隣接する2つのヒドロキシ基又は隣接する2つのR基が環状シロキサン骨格に対し同じ配向であることを「シス」といい、隣接する2つのヒドロキシ基又は隣接する2つのR基が環状シロキサン骨格に対し異なる配向であることを「トランス」という。
上述の酸化反応により製造した環状シラノールに含まれる異性体としては、下記一般式(2)で表されるall-cis型の環状シラノールが挙げられる。all-cis型の環状シラノールは、一般式(2)によって示されるように、全てのヒドロキシ基及びR基が、それぞれ環状シロキサン骨格に対し同じ向きで配置する。
Figure 0006931324
(一般式(2)中、Rは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基であり、nは、各々独立して2〜10の整数である。)
一般式(2)で表されるall-cis型の環状シラノールを含むことによって、酸化反応により環状ヒドロシラン化合物から合成した環状シラノールが白濁する傾向にある。この現象は、all-cis型の環状シラノールが結晶性を有するためであると考えられ、特に、保存中や、−30℃にて冷凍保管した場合に顕著である。結晶性が高い環状シラノールを除去することにより、硬化性組成物中で当該シラノールが結晶化して析出することを防ぎ、透明性の高い硬化性組成物や硬化物を得ることができる。
また、結晶性の高い環状シラノールを除去することにより、硬化性組成物の接着力が向上する。
透明性の高い硬化性組成物及び硬化物を得る観点から、前記一般式(2)で表される環状シラノールの割合は、前記一般式(1)で表される環状シラノールに対して、好ましくは0%〜50%であり、より好ましくは0%〜25%であり、さらに好ましくは0〜10%であり、さらにより好ましくは0%以上10%未満である。
前記一般式(2)で表される環状シラノールの割合を抑える方法としては、例えば、再結晶操作と結晶の除去とを組み合わせる方法等が挙げられる。
より具体的には、環状シラノールの合成で得られた生成物の良溶媒溶液に、貧溶媒を添加することにより、一般式(2)で表される環状シラノールが結晶として析出する。析出した一般式(2)で表される環状シラノールを除去し、可溶部の溶液を濃縮することにより、一般式(2)で表される環状シラノールの割合を抑制でき、透明性の高い硬化性組成物及び硬化物を得ることができる。
再結晶操作を行う際、透明性の高い硬化性組成物を得る観点から、冷却することが好ましく、冷却温度は10℃未満が好ましい。また、一般式(2)で表される環状シラノールの収量を向上させ、これを除去して最終的に透明度の高い硬化性組成物及び硬化物を得る観点から、析出工程における貧溶媒の量(体積)は、良溶媒の等量以上20倍以下が好ましい。
良溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、エチレングリコール、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの良溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
貧溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、ジクロロメタン、キシレン等が挙げられる。これらの貧溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(2)で表される環状シラノールの割合は、合成により得られた環状シラノールを1H NMR測定することより算出することができる。具体的には、1H NMR測定において、一般式(2)で表される環状シラノールが有するR基中の水素は、環状シラノールの他の異性体が有するR基中の水素に対して、最も高磁場側にて観測されるため、かかる水素の積分値から一般式(2)で表される環状シラノールの割合を算出することができる。
ヒドロシラン化合物の酸化を行う際に金属触媒を用いた場合、上述した再結晶操作により、不溶物残渣中に金属触媒中に含まれる遷移金属が残るため、結晶を除去する操作によって、ろ液中の遷移金属の割合を低減することができる。従って、一般式(2)で表される環状シラノールを除くための操作によって、金属触媒が残留することに由来するシラノールの着色を低減することも可能となる。
本実施形態の硬化物に用いる硬化性組成物の光透過性を高くする観点から、遷移金属の含有割合は、硬化性組成物の全質量に対し、10ppm未満であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましく、1ppm未満がさらにより好ましい。
遷移金属の割合は、具体的には、実施例に記載の方法によって測定することができる。
遷移金属としては、例えば、パラジウムが挙げられる。
ヒドロシラン化合物としてテトラメチルテトラシクロシロキサンを原料に用いて酸化した場合、得られるテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンは、all-cis型のテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、式(2−1)で表される環状シラノールと記載する場合がある。)が混在している。
これらの異性体中で、式(2−1)で表される環状シラノールは、結晶性を有し、反応溶液に良溶媒を用いた場合、貧溶媒を添加することにより結晶として析出する。
Figure 0006931324
前記式(2−1)中のRは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。
また、ヒドロシラン化合物としてテトラメチルテトラシクロシロキサンを原料に用いて酸化した場合、得られるテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンは、下記一般式(3)で表されるcis-trans-cis型のテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、一般式(3)で表される環状シラノールと記載する場合もある。)も混在している。
一般式(3)で表される環状シラノールもまた結晶性を有するため、反応溶液に良溶媒を用いた場合、貧溶媒を添加することにより結晶として析出する。
一般式(3)で表される環状シラノールを含むことにより、合成した環状シラノールが白濁する傾向にある。この現象は、cis-trans-cis型のテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンが結晶性を有するためであると考えられ、特に、保存中や、−30℃にて冷凍保管した場合に顕著である。
Figure 0006931324
前記一般式(3)におけるRは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。
透明性の高い硬化性組成物を得る観点から、前記一般式(3)で表される環状シラノールの割合は、前記一般式(1)で表される環状シラノールに対して、好ましくは0%〜50%であり、より好ましくは0%〜40%であり、さらに好ましくは0〜35%であり、さらにより好ましくは0%以上35%未満である。
前記式(2−1)及び一般式(3)で表される環状シラノールの割合を低減化する方法としては、上述と同様に、例えば、再結晶操作と結晶の除去とを組み合わせる方法等が挙げられる。
ヒドロシラン化合物としてテトラメチルテトラシクロシロキサンを原料に用いて酸化させた場合、得られるテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンの1H−NMRを測定した場合、6種類の異性体が観測される。R基中の水素は、高磁場側から、all-cis、trans-trans-cis、trans-trans-cis、cis-trans-cis、all-trans、trans-trans-cis型の順に観測されるため、かかる水素の積分値から、一般式(3)で表されるcis-trans-cis型の環状シラノール中の割合を算出することができる。
本実施形態の硬化物に用いる硬化性組成物は、上述したように、水又はアルコールの存在下で、ヒドロシラン化合物を酸化することによって環状シラノールを調製し、当該環状シラノールの合成で得られた生成物の良溶媒溶液に貧溶媒を添加することによる再結晶、ろ過を経て、ろ過により得られる可溶部の溶液を濃縮することにより、好適に製造される。
本実施形態の硬化性組成物の製造において、可溶部の溶液の濃縮は任意で行えばよく、可溶部の溶液そのものを硬化性組成物として使用してもよい。また、可溶部の溶液の濃縮では当該溶液に含まれるすべての溶媒を除去する必要はないため、本実施形態の硬化性組成物は、可溶部の溶液に含まれる溶媒の一部を留去して得られる粗濃縮物であってもよい。またさらに、本実施形態の硬化性組成物は、可溶部の溶液を濃縮した後に、溶媒で再希釈したものであってもよい。以上のように、本実施形態の好ましい態様の一つは、溶媒を含む硬化性組成物である。
本実施形態の硬化物に用いる硬化性組成物が溶媒を含む場合、当該硬化性組成物における溶媒の量は、特に制限されないが、硬化性組成物全量に対し、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。
溶媒の量の下限値は特に限定されないが、通常1質量%以上である。
本実施形態の硬化物に用いる硬化性組成物が溶媒を含む場合、当該溶媒としては、反応に使用した水やアルコール、再結晶時に使用した良溶媒及び貧溶媒等が挙げられる。溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、エチレングリコール、メチルエチルケトン、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、ジクロロメタン、キシレン等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
本実施形態の硬化物は、上述した硬化性組成物を硬化することにより得られる膜厚20μm以上の硬化物である。
本実施形態の硬化物は、硬化させること、すなわち、上述した硬化性組成物に含まれるシラノール基(−Si−OH)の脱水縮合反応により、シロキサン結合(−Si−O−Si−)を形成させることにより得られ、テトラヒドロフラン、トルエン等の溶媒に不溶なものである。
本実施形態の硬化物は、上述した硬化性組成物に含まれる環状シラノールを重合することによって得られるが、この際、触媒非存在下で重合してもよく、触媒を添加して重合してもよい。
環状シラノールの重合に使用される触媒は、環状シラノールの加水分解及び縮合反応を促進させる作用をする。触媒としては、酸触媒又はアルカリ触媒を使用することができる。
酸触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、ホルム酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、オレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸酸、p−アミノ安息香酸、及びp−トルエンスルホン酸等が好適なものとして挙げられる。
アルカリ触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア水及び有機アミン等が好適なものとして挙げられる。
酸触媒及びアルカリ触媒は、それぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
触媒の添加量は、反応条件によって調節することができ、環状シラノールの水酸基1モルに対して、好ましくは0.000001〜2モルである。添加量が環状シラノールの水酸基1モルに対して2モル以下であると、反応速度が速くなりすぎることを抑制でき、分子量の調節を容易に行うことができゲルの発生を効果的に防止できる傾向にある。
硬化物を得る際に、酸触媒及びアルカリ触媒を利用することにより、硬化性組成物を段階的に加水分解及び縮合反応することができる。具体的には、硬化性組成物を酸で加水分解及び縮合反応を行った後、塩基で再び反応させたり、あるいは、塩基で先に加水分解及び縮合反応を行って、再び酸で反応させたりして、硬化物を得ることができる。また、酸触媒とアルカリ触媒とで各々反応させた後、縮合物を混合して硬化性組成物として使用することもできる。
硬化性組成物を硬化させる際には加熱してもよい。
硬化物を硬化させる際の温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは60〜250℃であり、より好ましくは80〜200℃である。
本実施形態の硬化物の膜厚は20μm以上であり、好ましくは40μm以上であり、より好ましくは80μm以上である。
硬化物の膜厚が20μm以上であることにより耐摩耗性に優れるという効果が得られる。
硬化物の膜厚は、後述する実施例に記載された方法に従って測定することができる。
本実施形態硬化物は耐摩耗性に優れており、テーパー摩耗試験後のΔHazeは、好ましくは21%以下であり、より好ましくは12%以下であり、さらに好ましくは7%以下であり、さらにより好ましくは5%以下である。
耐摩耗性は、実施例に記載されたテーパー摩耗試験に従って評価することができる。
ΔHazeの下限としては、特に限定されず低ければ低いほどよい。
〔用途〕
本実施形態の硬化物の好適な用途としては、接着剤が挙げられる。
具体的には、例えば、本実施形態の硬化物に用いる硬化性組成物を基材に塗布し、接着層を形成させ、硬化性組成物を含む接着層を硬化させることにより接着する。当該接着層が硬化物に相当する。
基材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス、シリコンウエハー、SiO2ウエハー、SiNウエハー、及び化合物半導体等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を用いて、本実施形態を、さらに具体的に説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例における硬化性組成物の、物性の測定方法、特性の評価方法は以下のとおりである。
(硬化性組成物の光透過率の測定)
硬化性組成物の光透過率は、硬化性組成物を石英ガラス間に塗布することにより測定用サンプルを作製し、評価した。
前記石英ガラスとしては、φ50mm−0.7mm厚の石英ガラス板を用いた。
環状シラノールの重合を抑制するために、−30℃の冷凍庫内で保管した硬化性組成物を、前記石英ガラス上にバーコーターNo.2を用いて4μm厚となるように塗布し、前記石英ガラス間に挟み込んだ。
塗布後、光透過率をコニカミノルタ社製、分光測色計CM−3600d(商品名)を用いて400−800nmの光透過率を測定した。
なお、ブランクとして、硬化性組成物を塗布しない石英ガラス板を用いた。
(一般式(1)で表される環状シラノール(A1)及び環状シラノールの脱水縮合物(A2)のGPCの微分分子量分布曲線によるピーク面積%の測定)
硬化性組成物0.03gに対して、1.5mLの割合でテトラヒドロフラン溶媒に溶解した溶液を測定試料とした。
この測定試料を用いて、東ソー社製HLC−8220GPCで測定した。
カラムは東ソー社製のTSKガードカラムSuperH−H、TSKgel SuperHM−H、TSKgel SuperHM−H、TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH1000を直列に連結して使用し、テトラヒドロフランを移動相として0.35ml/分の速度で分析した。
検出器はRIディテクターを使用し、American Polymer Standards Corporation製ポリメタクリル酸メチル標準試料(分子量:2100000、322000、87800、20850、2000、670000、130000、46300、11800、860)、及び1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子量240.5、東京化成製)を標準物質として数平均分子量及び重量平均分子量を求め、それぞれのピークの面積比を算出し、(A2)/〔(A1)+(A2)〕の面積比を算出した。
(遷移金属(Pd)の含有量の測定)
測定用試料としてのヒドロシロキサン酸化反応物にフッ硝酸を加えて密閉加圧酸分解した。
その後、測定用試料をテフロン(登録商標)ビーカーに移し、加熱乾固させた。その後、測定用試料に王水を加え、完全溶解した溶解液を20mLに定容し、ICP質量分析装置(Themo Fisher Scientifi社製 iCAP Qc)による試料中の金属割合の定量分析を行った。
(NMR測定)
日本電子株式会社製ECZ400S、プローブはTFHプローブを用いて、以下のようにしてNMR測定を行い、all-cis型、cis-trans-cis型の環状シラノールの割合を算出した。
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物0.1g、及び重アセトン1gを添加し、1H−NMRを測定した。
なお、重溶媒(重アセトン)の基準ピークを2.05ppmとし、積算回数は64回で測定を行った。
ヒドロシラン化合物としてテトラメチルテトラシクロシロキサンを原料に用いて酸化させた場合、得られるテトラヒドロキシテトラメチルテトラシクロシロキサンの1H−NMRでは、0.04−0.95ppmの領域に6種類の異性体に由来するSiに結合するメチル基のピークが観測された。
メチル基の水素は、高磁場側から、all-cis型(0.057ppm)、trans-trans-cis型(0.064ppm)、trans-trans-cis型(0.067ppm)、cis-trans-cis型(0.074ppm)、all-trans型(0.080ppm)、trans-trans-cis型(0.087ppm)の順に観測された。これらの水素の積分値から、前記一般式(2−1)で表されるall-cis型や、前記一般式(3)で表されるcis-trans-cis型の環状シラノールの割合を算出した。
また、ペンタメチルペンタシクロシロキサンやヘキサメチルヘキサシクロシロキサンを原料に用いて酸化させて得られる、ペンタヒドロキシペンタメチルペンタシクロシロキサンやヘキサヒドロキヘキサメチルヘキサシクロシロキサンの1H−NMRを測定したとき、all-cis体は最も高磁場に観測されるため、かかる水素の積分値から、前記一般式(2)で表されるall-cis型の環状シラノールの割合を算出した。
〔実施例1〕
(硬化性組成物の作製)
反応容器に、蒸溜水28g、テトラヒドロフラン(THF)(和光純薬製)960mL、Pd/C(10%)(エヌ・イー ケムキャット社製)3.7gを入れて混合した後、反応容器の温度を5℃に維持した。
前記反応容器に、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン81g(東京化成製、D4Hとも記載する。)を徐々に加え、2時間撹拌後、NMRにてSiH基が消失するまで前記Pd/C(10%)を1.8gずつ3回に分けて添加し、合計17時間反応を行った。
反応液を、日本電子製NMR(ECZ400S)を用いて反応液1質量%濃度の重アセトン溶液で1H NMRを測定し、4〜5ppmのSiH基の消失を確認した。
反応液に硫酸マグネシウム75gを添加し、5℃で30分撹拌後、濾過助剤として、セライトNo.545(和光純薬製)450gを、テトラヒドロフランを用いて漏斗へ充填した。続いて、反応液を、当該セライトを通過させ、テトラヒドロフラン1.5Lによってセライトを洗浄し、1,3,5,7−テトラヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、D4OHとも記載する。)含有THF溶液2057gを得た。
この溶液をエバポレーターで水浴15℃にて残量587(649mL)となるまで濃縮し、テトラヒドロフラン4.4Lとジクロロメタン217mLとの混合溶媒中へ投じた。混合液を5℃で4時間静置後、析出した不溶物を減圧濾過し、結晶固体を22g回収した。可溶部のろ液6169gを減圧下で濃縮し、D4OH濃縮物(なわち、ヒドロシロキサン酸化反応物)(89g)を得た。
さらに固形分濃度52質量%となるように2−プロパノールを加えることにより硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を用いて400〜800nmにおける光透過率を測定し、GPCの微分分子量分布曲線におけるピーク面積の測定を行った。
また、all-trans型及びcis-trans-cis型の環状シラノールの割合を1H NMRにより算出した。
(硬化物の作製、硬化物のクラックの有無確認、及び耐摩耗性評価)
10cm角、厚さ1ミリのポリカーボネート板(タキロン1600)にプライマーSHP470FT2050(モメンティブ製)をバーコーターNo.16(アズワン製)で塗布後、30℃30分、120℃30分オーブンで硬化し、2μmのプライマーを塗布したポリカーボネート板を得た。
前記ポリカーボネート板に、実施例1で作製した硬化性組成物を、バーコーターで80μm厚となるように、前記プライマーを塗布したポリカーボネート板に塗布した後、100℃で2時間、次いで120℃で2時間、オーブンにて硬化することにより板状の硬化物を得た。
得られた硬化物のクラックの有無を確認した。
得られた硬化物を、摩耗輪にCALIBRASE CS−10F(TABER INDUSTRIES製)を取り付けた101 TABER TYPE ABRASION TESTER(Yasuda製)を用いて、回転速度60rpmにて500回摩耗試験を行った。なお、すべてのサンプルは、摩耗試験を行う前に、摩耗輪をST−11 REFACEING STONE(TABER INDUSTRIES製)を用いて回転速度60rpmにて25回研磨を行った。摩耗試験後のサンプルを、HAZE METER NDH 5000SP(NIPPON DENSHOKU製)を用いて、耐摩耗試験前後のHazeを測定し、増加分(ΔHaze(%))を算出した。
(硬化物の膜厚)
塗布に用いたアズワン製のバーコーターを用いて、硬化物の膜厚(μm)を以下の式により求めた。
バーコーターNo.×1.75×硬化性組成物溶液の質量分率
〔実施例2〕
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン81gに替えて、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン81g(Gelest社製、D5Hとも記載する。)を用いた。その他の条件は、〔実施例1〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔実施例3〕
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン81gに替えて、1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン81g(Gelest社製の製品を単蒸留したもの、D6Hとも記載する。)を用いた。その他の条件は、〔実施例1〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔実施例4〕
前記〔実施例1〕と同様の方法により得られたD4OH濃縮物の濃縮前溶液に、前記〔実施例1〕で得られた結晶固体を、濃縮後のD4OH濃縮物において、all-cisD4OH,cis-trans-cisD4OHの割合がそれぞれ10%、及び35%になるように添加した。
添加後の溶液を濃縮し、硬化性組成物を得、さらに、前記〔実施例1〕と同様の方法により硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔実施例5〕
硬化物の膜厚を40μmとした。その他の条件は、前記〔実施例1〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔実施例6〕
硬化物の膜厚を40μmとした。その他の条件は、前記〔実施例2〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔実施例7〕
硬化物の膜厚を40μmとした。その他の条件は、前記〔実施例3〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔実施例8〕
硬化物の膜厚を40μmとした。その他の条件は、前記〔実施例4〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔実施例9〕
硬化物の膜厚を20μmとした。その他の条件は、前記〔実施例1〕と同様の方法により硬化組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔実施例10〕
硬化物の膜厚を20μmとした。その他の条件は、前記〔実施例2〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔実施例11〕
硬化物の膜厚を20μmとした。その他の条件は、前記〔実施例3〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔実施例12〕
硬化物の膜厚を20μmとした。その他の条件は、前記〔実施例4〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔比較例1〕
硬化物の膜厚を4μmとした。その他の条件は、前記〔実施例1〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔比較例2〕
硬化物の膜厚を4μmとした。その他の条件は、前記〔実施例2〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔比較例3〕
硬化物の膜厚を4μmとした。その他の条件は、前記〔実施例3〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔比較例4〕
硬化物の膜厚を4μmとした。その他の条件は、前記〔実施例4〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔比較例5〕
(硬化性組成物の作製)
反応容器に、蒸溜水28g、テトラヒドロフラン(和光純薬製)960mL、Pd/C(10%)(エヌ・イー ケムキャット社製)3.7gを入れて混合した後、反応容器の温度を5℃に維持した。
前記反応容器に1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン81g(東京化成製、D4Hとも記載する。)を徐々に加え、2時間撹拌後、NMRにてSiH基が消失するまで前記Pd/C(10%)1.8gずつ3回に分けて添加し、合計17時間反応を行った。
反応液を、日本電子製NMR(ECZ400S)を用いて反応液1質量%濃度の重アセトン溶液で1H NMRを測定し4〜5ppmのSiH基の消失を確認した。
反応液に硫酸マグネシウム75gを添加し、5℃で30分撹拌後、濾過助剤としてセライトNo.545(和光純薬製)450gを、テトラヒドロフランを用いて漏斗へ充填した。続いて、反応液を、当該セライトを通過させ、テトラヒドロフラン1.5Lによってセライトを洗浄し、1,3,5,7−テトラヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン(以下、D4OHとも記載する。)含有THF溶液2057gを得た。この溶液をエバポレーターで水浴15℃にて残量587(649mL)となるまで濃縮し、テトラヒドロフラン4.4Lとジクロロメタン217mLとの混合溶媒中へ投じた。混合液を5℃で4時間静置後、析出した不溶物を減圧濾過し、結晶固体を22g回収した。可溶部のろ液6169gを減圧下で濃縮し、ヒドロシロキサン酸化反応物である硬化性組成物(89g)を得た。
得られた硬化性組成物を用いて400〜800nmにおける光透過率を測定し、GPCによるピーク面積の測定を行った。また、all-trans型及びcis-trans-cis型の環状シラノールの割合を1H NMRにより算出した。
(硬化物の作製、硬化物のクラックの有無確認、及び耐摩耗性評価)
10cm角、厚さ1ミリのポリカーボネート板(タキロン1600)にプライマーSHP470FT2050(モメンティブ製)をバーコーターNo.16(アズワン製)で塗布後、30℃30分、120℃30分オーブンで硬化し、2μmのプライマーを塗布したポリカーボネート板を得た。
前記ポリカーボネート板に、比較例5で作製した硬化性組成物を、バーコーターで4μm厚となるように、前記プライマーを塗布したポリカーボネート板に塗布した後、100℃で2時間、次いで120℃で2時間、オーブンにて硬化することにより板状の硬化物を得た。
得られた硬化物のクラックの有無を確認した。
得られた硬化物を、摩耗輪にCALIBRASE CS−10F(TABER INDUSTRIES製)を取り付けた101 TABER TYPE ABRASION TESTER(Yasuda製)を用いて、回転速度60rpmにて500回摩耗試験を行った。なお、すべてのサンプルは、摩耗試験を行う前に、摩耗輪をST−11 REFACEING STONE(TABER INDUSTRIES製)を用いて回転速度60rpmにて25回研磨を行った。テーバー摩耗試験後のサンプルを、HAZE METER NDH 5000SP(NIPPON DENSHOKU製)を用いて、耐摩耗試験前後のHazeを測定し、増加分(ΔHaze(%))を算出した。
(硬化物の膜厚)
塗布に用いたアズワン製のバーコーターを用いて、硬化物の膜厚(μm)を以下の式により求めた。
バーコーターNo.×1.75×硬化性組成物溶液の質量分率
〔比較例6〕
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン81gに替えて、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン81g(Gelest社製、D5Hとも記載する)を用いた。その他の条件は、〔比較例5〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
〔比較例7〕
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン81gに替えて、1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン81g(Gelest社製の製品を単蒸留したもの、D6Hとも記載する)を用いた。その他の条件は、〔比較例5〕と同様の方法により硬化性組成物及び硬化物を得、物性の測定及び特性の評価を行った。
実施例1〜12及び比較例1〜7で得られた硬化性組成物及び硬化物の物性の測定結果及び特性の評価結果を表1、表2に示す。
Figure 0006931324
Figure 0006931324
本発明の硬化物は、発光ダイオード素子等の半導体素子の保護、封止、及び接着や、発光ダイオード素子から発せられる光の波長の変更又は調整、並びに、レンズ等の分野において産業上の利用可能性を有する。さらに、本発明の硬化物は、レンズ材料、光学デバイス、光学部品用材料、ディスプレイ材料等の各種の光学用材料、電子デバイス、電子部品用絶縁材料、コーティング材料等の分野において産業上の利用可能性を有する。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で表される環状シラノール(A1)と、
    前記環状シラノールの脱水縮合物(A2)と、
    を、含む硬化性組成物の硬化物であって、
    膜厚20μm以上の硬化物。
    Figure 0006931324
    (一般式(1)中、Rは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2〜10の整数である。)
  2. ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定の微分分子量分布曲線において、
    前記硬化性組成物の前記脱水縮合物(A2)のピーク面積が、前記環状シラノール(A1)及び前記脱水縮合物(A2)の総ピーク面積に対して、0%超50%以下である、請求項1に記載の硬化物。
  3. 前記硬化性組成物において、下記一般式(2)で表される環状シラノールの割合が、前記一般式(1)で表される環状シラノールに対して0〜50%である、請求項1又は2に記載の硬化物。
    Figure 0006931324
    (一般式(2)中、Rは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、非置換の直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基であり、nは、各々独立して2〜10の整数である。)
  4. 前記硬化性組成物において、
    下記一般式(3)で表される環状シラノールの割合が、
    前記一般式(1)で表される環状シラノールに対して0〜50%である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化物。
    Figure 0006931324
    (一般式(3)中、Rは、各々独立して、水素、フッ素、アリール基、ビニル基、アリル基、フッ素で置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル、又は、非置換の直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基である。)
  5. 前記硬化性組成物における遷移金属の割合が、1ppm未満である、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化物。
  6. 前記硬化性組成物が溶媒をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化物。
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