以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用温度推定装置70(図5に示す)を備えた車両用空調装置1の概略構成図である。この車両用空調装置1は、例えば自動車等の車両に搭載されるものであり、車室内の空気(内気)と車室外の空気(外気)との一方または両方を導入して温度調節した後、車室の各部に供給するように構成されている。車両の車室内には、図示しないが、運転席及び助手席からなる前席と、前席の後方に配設される後席とが設けられている。
尚、この実施形態では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとするが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、実際の使用状態や設置状態、組付状態を限定するものではない。
図1、図5に示すように、車両用空調装置1は、空調ケーシング30と制御装置(図5に示す)50と冷凍サイクル装置60と車両用温度推定装置70を備えている。空調ケーシング30は、例えば車室の前端部に配設されたインストルメントパネル(図示せず)の内部に収容されている。空調ケーシング30は、空気流れ方向上流側から下流側に向かって順に、送風ケーシング20と、温度調節部31と、吹出方向切替部40とを備えている。送風ケーシング20には、外気導入口2aと内気導入口2bとが形成されている。外気導入口2aは、例えば図示しないインテークダクトを介して車室外と連通しており、車室外の空気(外気)を導入するようになっている。内気導入口2bは、インストルメントパネルの内部で開口しており、車室内の空気(内気)を導入して車室内に循環させるようになっている。外気導入口2aから導入する外気の量が外気導入量となる。内気導入口2bから導入する内気の量が内気循環量となる。
送風ケーシング20の内部には、外気導入口2a及び内気導入口2bを開閉する内外気切替ダンパ6、7が配設されている。内外気切替ダンパ6、7は、内外気切替アクチュエータ9によって任意の回動角度となるように駆動される。これによりインテークモードが切り替えられる。内外気切替アクチュエータ9は、制御装置50によって後述するように制御されるものであり、従来から周知のトルク可変型の電動アクチュエータで構成されている。
図1に示すように、送風ケーシング20には、空調用機器としての送風機5が設けられている。送風機5が作動することによって送風ケーシング20の内部に空気が流通し、送風ケーシング20の下流側に設けられている温度調節部31に空調用空気が送風される。
温度調節部31は、内部に空気が流通するようになっており、送風ケーシング20から導入された空調用空気の温度調節を行うための部分である。温度調節部31の内部には、冷却用熱交換器32と加熱用熱交換器33とエアミックスダンパ34とが設けられている。冷却用熱交換器32と加熱用熱交換器33は、空調用機器である。
すなわち、温度調節部31の内部には、空気流れ方向上流側に冷風通路R1が形成され、この冷風通路R1に冷却用熱交換器32が収容されている。また、冷風通路R1の下流側は温風通路R2とバイパス通路R3とに分岐しており、温風通路R2に加熱用熱交換器33が収容されている。
冷却用熱交換器32は、冷凍サイクル装置60の冷媒蒸発器(エバポレータ)等で構成されている。この実施形態の説明では、冷却用熱交換器32を冷媒蒸発器(蒸発器)やエバポレータと言うこともある。また、加熱用熱交換器33は、例えば車両のエンジンルームに搭載されているエンジン(図示せず)の冷却水が供給されるヒータコア等で構成することができるが、これに限られるものではなく、例えば電気式ヒータ等、空気を加熱することができるものではあればよい。また、電気式ヒータを補助熱源として付加することもできる。
エアミックスダンパ34は、冷却用熱交換器32と加熱用熱交換器33の間に配設されており、温風通路R2の上流端とバイパス通路R3の上流端とを開閉するものである。エアミックスダンパ34は、例えば板状の部材で構成することができ、温度調節部31の側壁に対して回動可能に支持される回動軸(図示せず)を有している。エアミックスダンパ34は、エアミックスアクチュエータ35によって任意の回動角度となるように駆動される。エアミックスアクチュエータ35は、制御装置50によって制御されるものであり、トルク可変型の電動アクチュエータで構成されている。エアミックスダンパ34の回動軸と、エアミックスアクチュエータ35との間には、エアミックスアクチュエータ35から出力される力をエアミックスダンパ34の回動軸に伝達するリンク部材(図示せず)が配設されている。
エアミックスダンパ34が温風通路R2の上流端を全開にし、かつ、バイパス通路R3の上流端を全閉にすると、冷風通路R1で生成された冷風の全量が温風通路R2に流入して加熱されるので、吹出方向切替部40には温風が流入する。一方、エアミックスダンパ34が温風通路R2の上流端を全閉にし、かつ、バイパス通路R3の上流端を全開にすると、冷風通路R1で生成された冷風の全量がバイパス通路R3に流入するので、吹出方向切替部40には冷風が流入する。エアミックスダンパ34が温風通路R2の上流端及びバイパス通路R3の上流端を開く回動位置にあるときには、冷風及び温風が混合した状態で吹出方向切替部40に流入することになる。エアミックスダンパ34の回動位置によって吹出方向切替部40に流入する冷風量と温風量とが変更されて所望温度の調和空気が生成される。尚、エアミックスダンパ34は、上記した板状のダンパに限られるものではなく、冷風量と温風量とを変更することができる構成であればその構成はどのような構成であってもよい。例えばロータリダンパやフィルムダンパ、ルーバーダンパ等であってもよい。また、温度調節の構成は上記した構成でなくてもよく、冷風量と温風量とを変更することができる構成であればよい。
吹出方向切替部40は、温度調節部31で温度調節された調和空気が流通するとともに、温度調節された調和空気を車室の各部に供給するための部分である。吹出方向切替部40には、デフロスタ吹出口42と、ベント吹出口43と、ヒート吹出口45とが形成されている。デフロスタ吹出口42は、インストルメントパネルに形成されたデフロスタノズル41に接続されている。このデフロスタ吹出口42は、フロントウインドガラス(窓ガラス)Gの車室内面に調和空気を供給するためのものである。デフロスタ吹出口42の内部には、デフロスタ吹出口42を開閉するためのデフロスタダンパ42aが設けられている。
ベント吹出口43は、インストルメントパネルに形成されたベントノズル44に接続されている。ベントノズル44は、前席の乗員の上半身に調和空気を供給するためのものであり、インストルメントパネルの車幅方向中央部と、左右両側にそれぞれ設けられている。ベント吹出口43の内部には、ベント吹出口43を開閉するためのベントダンパ43aが設けられている。
ヒート吹出口45は、乗員の足元近傍まで延びるヒートダクト46に接続されている。ヒートダクト46は、乗員の足元に調和空気を供給するためのものである。ヒート吹出口45の内部には、ヒート吹出口45を開閉するためのヒートダンパ45aが設けられている。
デフロスタダンパ42a、ベントダンパ43a及びヒートダンパ45aは、吹出方向切替部40の側壁に対して回動可能に支持される回動軸(図示せず)を有している。デフロスタダンパ42a、ベントダンパ43a及びヒートダンパ45aは吹出方向切替アクチュエータ47によって駆動されて開閉動作する。吹出方向切替アクチュエータ47は、トルク可変型の電動アクチュエータで構成されている。デフロスタダンパ42a、ベントダンパ43a及びヒートダンパ45aの回動軸と、吹出方向切替アクチュエータ47との間には、吹出方向切替アクチュエータ47から出力される力をデフロスタダンパ42a、ベントダンパ43a及びヒートダンパ45aの回動軸に伝達するリンク部材(図示せず)が配設されている。
吹出方向切替アクチュエータ47は、制御装置50によって制御される。デフロスタダンパ42a、ベントダンパ43a及びヒートダンパ45aは、図示しないがリンクを介して連動するようになっており、例えば、デフロスタダンパ42aが開状態で、ベントダンパ43a及びヒートダンパ45aが閉状態となるデフロスタモード、デフロスタダンパ42a及びヒートダンパ45aが閉状態で、ベントダンパ43aが開状態となるベントモード、デフロスタダンパ42a及びベントダンパ43aが閉状態で、ヒートダンパ45aが開状態となるヒートモード、デフロスタダンパ42a及びベントダンパ43aが開状態で、ヒートダンパ45aが閉状態となるデフベントモード、デフロスタダンパ42a及びヒートダンパ45aが開状態で、ベントダンパ43aが閉状態となるバイレベルモード等の複数の吹出モードの内、任意の吹出モードに切り替えられる。
(送風ユニットの構成)
この実施形態では、送風ユニットが、内外気切替ダンパ6、7によって内気導入口2bのみを開く内気循環モード、外気導入口2aのみを開く外気導入モード、内気導入口2b及び外気導入口2aを開く内外気2層流モードの切替が可能になっているが、本発明は、内外気2層流モードを有さずに、内気循環モードと外気導入モードとに切り替えられる送風ユニットに適用することもできる。
図2〜4に示すように、送風ケーシング20には、送風機5が設けられている。送風機5は、上層送風用ファン(第1送風用ファン)3と、下層送風用ファン(第2送風用ファン)4と、上層送風用ファン3及び下層送風用ファン4を回転駆動するためのブロアモータ5bとを備えている。また、送風ケーシング20には、第1内外気切替ダンパ6と、第2内外気切替ダンパ7と、エアフィルタ8と、内外気切替アクチュエータ9(図2及び図3に示す)とが設けられている。上層送風用ファン3及び下層送風用ファン4と、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7と、エアフィルタ8とは、送風ケーシング20の内部に配設されている。
送風ケーシング20の上側に、前側及び後側内気導入口2b、2bと、外気導入口2aとが形成されている。内気導入口2bから車室内の空気(内気)を送風ケーシング2の内部に導入することが可能になっている。また、外気導入口2aは車体のカウル(図示せず)と接続されており、カウルを介して車室外と連通している。外気導入口2aから車室外の空気(外気)を送風ケーシング20の内部に導入することが可能になっている。
図4に示すように、送風ケーシング20の内部における内気導入口2bよりも下側には、上記フィルタ8が収容されている。フィルタ8は、板状に形成されており、水平方向に延びるように配置されている。フィルタ8の周縁部が送風ケーシング20の内部に設けられたフィルタ支持部2eによって支持されている。送風ケーシング20の後壁部には、上記フィルタ8を該送風ケーシング2に挿入するためのフィルタ挿入孔2fが形成されている。フィルタ挿入孔2fは、フィルタ8の後端部に設けられた蓋部8aによって閉塞されるようになっている。尚、フィルタ8は、例えば一般的な不織布等で構成することができる。
送風ケーシング20の内部におけるフィルタ8よりも上側には、区画壁部2gが設けられている。区画壁部2gは、上下方向に延びており、下端部に近づけば近づくほど後に位置するように若干傾斜している。送風ケーシング20の内部の上側には、区画壁部2gよりも前側に第1空気通路R1が形成され、区画壁部2gよりも後側に第2空気通路R2が形成されている。第1空気通路R1の前後方向の幅は、第2空気通路R2の前後方向の幅よりも広く設定されており、第1空気通路R1の断面積が第2空気通路R2の断面積よりも広くなっている。
第1空気通路R1の上流端部(上端部)は、前側の内気導入口2bと外気導入口2aとに連通している。また、第2空気通路R2の上流端部(上端部)は、後側の内気導入口2bと外気導入口2aとに連通している。第1空気通路R1及び第2空気通路R2は、共通の外気導入口2aに連通しているが、内気導入口については互いに別の内気導入口2b、2bに連通している。これにより、第1空気通路R1及び第2空気通路R2の両方に、内気と外気との導入が可能な構造になる。
第1内外気切替ダンパ6は、送風ケーシング20の内部において区画壁部2gよりも前側に配設されており、閉塞板部6aと軸部(回動軸)6bと端板部6cとを備えている。閉塞板部6aは、左右方向に延びている。軸部6bも左右方向に延びており、送風ケーシング20の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。端板部6cは、軸部6bの左右方向の両端近傍に設けられている。端板部6cは、軸部6bから径方向に延び、閉塞板部6aの左右両端部に連なっている。閉塞板部6aと軸部6bと端板部6cは一体成形されている。第1内外気切替ダンパ6は、軸部6bの中心線周りに回動することにより、図4に示す前に向けて回動した状態と、図示しないが後に向けて回動した状態とに切り替えられる。第1内外気切替ダンパ6が前に向けて回動した状態になると、前側の内気導入口2bを閉塞して外気導入口2aを開放するので、内気の流入が遮断されて外気が第1空気通路R1の上流部に導入される。一方、第1内外気切替ダンパ6が後に向けて回動した状態になると、前側の内気導入口2bを開放して外気導入口2aを閉塞するので、外気の流入が遮断されて内気が第1空気通路R1の上流部に導入される。
第2内外気切替ダンパ7は、送風ケーシング20の内部において区画壁部2gよりも後側に配設されており、第1内外気切替ダンパ6と同様に、閉塞板部7aと軸部(回動軸)7bと端板部7cとを備えている。第2内外気切替ダンパ7は、軸部7bの中心線周りに回動することにより、図4に示す後に向けて回動した状態と、図示しないが前に向けて回動した状態とに切り替えられる。第2内外気切替ダンパ7が後に向けて回動した状態になると、後側の内気導入口2bを閉塞して外気導入口2aを開放するので、内気の流入が遮断されて外気が第2空気通路R2の上流部に導入される。一方、第2内外気切替ダンパ7が前に向けて回動した状態になると、後側の内気導入口2bを開放して外気導入口2aを閉塞するので、外気の流入が遮断されて内気が第2空気通路R2の上流部に導入される。
第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7は、図2及び図3等に示す内外気切替アクチュエータ9によって駆動される。第1内外気切替ダンパ6の軸部6b及び第2内外気切替ダンパ7の軸部7bと、内外気切替アクチュエータ9との間には、リンク部材9aが配設されており、内外気切替アクチュエータ9から出力される力はリンク部材9aを介して第1内外気切替ダンパ6の軸部6b及び第2内外気切替ダンパ7の軸部7bに伝達される。
リンク部材9aは、円板状の部材であってもよいし、棒状の部材であってもよい。リンク部材9aは、例えば軸部6b、7bが挿入される挿入孔や挿入溝(共に図示せず)を有しており、軸部6b、7bが挿入孔や挿入溝に挿入された状態で係合し、力の伝達が可能になっている。リンク部材9aを使用した力の伝達構造は従来から周知である。また、リンク部材9aは例えば樹脂材で構成されている。
例えば、リンク部材9aを内外気切替アクチュエータ9によって回動させることにより、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7を連動させることができるようになっている。リンク部材9aを用いた第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7の連動構造については従来から周知の手法を利用することができるので、詳細な説明は省略する。
この実施形態では、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7を以下のように駆動する。すなわち、図4に示すように、第1内外気切替ダンパ6を前に向けて回動させるとともに第2内外気切替ダンパ7を後に向けて回動させる外気導入モードと、第1内外気切替ダンパ6を後に向けて回動させるとともに第2内外気切替ダンパ7を前に向けて回動させる内気循環モードと、第1内外気切替ダンパ6を前に向けて回動させるとともに第2内外気切替ダンパ7を前に向けて回動させる内外気2層流モードとの3つのモードのうち、任意のモードに切り替えることができるようになっている。
外気導入モードでは、第1内外気切替ダンパ6が前に向けて回動するとともに第2内外気切替ダンパ7が後に向けて回動するので、第1空気通路R1及び第2空気通路R2には外気のみが導入される。内気循環モードでは、第1内外気切替ダンパ6が後に向けて回動するとともに第2内外気切替ダンパ7が前に向けて回動するので、第1空気通路R1及び第2空気通路R2には内気のみが導入される。内外気2層流モードでは、第1内外気切替ダンパ6が前に向けて回動するとともに第2内外気切替ダンパ7が前に向けて回動するので、第1空気通路R1には外気が導入され、第2空気通路R2には内気が導入される。内外気2層流モードは、暖房時に使用されるモードである。
内気循環モード、外気導入モード及び内外気2層流モードの切替は、従来から周知のオートエアコン制御によって行われる。内外気2層流モードにすることで、冬季には比較的乾燥した外気をデフロスト吹出口に供給してフロントウインドガラスの曇りを良好に晴らしながら、比較的暖かい内気をヒート吹出口に供給して暖房効率を向上させることができる。
送風ケーシング20の内気導入口2b及び外気導入口2aよりも下側には、上層送風用ファン3及び下層送風用ファン4が収容されるようになっている。図2及び図3に示すように、送風ケーシング20は、上層送風用ファン3が収容される上側スクロールケーシング21と、下層送風用ファン4が収容される下側スクロールケーシング22とに分割されている。また、送風ケーシング20の下部には、底壁部材23が設けられている。底壁部材23は、送風ケーシング20を構成する部材である。上側スクロールケーシング21、下側スクロールケーシング22及び底壁部材23によって送風ケーシング20が構成されている。さらに、送風ケーシング20の内部には、該送風ケーシング20の内部を上下方向に仕切る仕切板24が配設されており、この仕切板24も送風ケーシング20を構成する部材である。
上側スクロールケーシング21の上壁部には、送風ケーシング20の内部で開口するように、略円形の第1ベルマウス開口部21aが形成されている。第1ベルマウス開口部21aは、フィルタ8の下面と対向するように配置されており、第1空気通路R1と連通している。さらに、上側スクロールケーシング21の上壁部には、上方へ突出する突出壁部21bが設けられている。この突出壁部21bは、第1ベルマウス開口部21aの開口縁部よりも後に位置付けられており、左右方向に延びている。突出壁部21bの上端部は、区画壁部2gの下端部近傍に達している。突出壁部21b及び区画壁部2gにより、送風ケーシング20の内部における上側スクロールケーシング21よりも上側が、前後方向に仕切られて、突出壁部21b及び区画壁部2gよりも前側に第1空気通路R1が形成され、突出壁部21b及び区画壁部2gよりも後側に第2空気通路R2が形成されることになる。
第1空気通路R1は、第1ベルマウス開口部21aを介して上側スクロールケーシング21の内部と連通しており、この上側スクロールケーシング21の内部は第1空気通路R1の一部となっている。仕切板24よりも上方が第1空気通路R1とされている。上層送風用ファン3は、上側スクロールケーシング21の内部において第1空気通路R1に配設されている。第1送風用ファン3が上側スクロールケーシング21の内部で回転すると、第1送風用ファン3によって第1空気通路R1内の空気が空調用空気として送風される。
図2に示すように、上側スクロールケーシング21の左側壁部の前側には、上記空調ユニットに接続される上側空気吹出口21cが形成されている。上側空気吹出口21cには、第1空気通路R1の下流端が連通しており、第1空気通路R1内の空気は上側空気吹出口21cから上側スクロールケーシング21の外部に吹き出すようになっている。
図4に示すように、第2空気通路R2は、上側スクロールケーシング21の内部の後側を下方へ向けて延びており、第2空気通路R2の下端部は底壁部材23に達している。下側スクロールケーシング22の下壁部は底壁部材23から上方に離れており、下側スクロールケーシング22の下壁部と底壁部材23との間に、第2空気通路R2の下端部が位置している。下側スクロールケーシング22の下壁部には、略円形の第2ベルマウス開口部22aが形成されたベルマウス構成部材22bが設けられている。第2ベルマウス開口部22aは底壁部材23と対向するように配置されており、第2空気通路R2の下端部と連通している。第2ベルマウス開口部22aと第1ベルマウス開口部21aとは同心上に位置している。ベルマウス構成部材22bは、下側スクロールケーシング22の下壁部に形成された開口部22cの周縁部に嵌合するようになっている。
第2空気通路R2の下端部は、第2ベルマウス開口部22aを介して下側スクロールケーシング22の内部と連通しており、この下側スクロールケーシング22の内部は第2空気通路R2の一部となっている。仕切板24よりも下方が第2空気通路R2とされている。下層送風用ファン4は、下側スクロールケーシング22の内部において第2空気通路R2に配設されている。第2送風用ファン4が下側スクロールケーシング22の内部で回転すると、第2送風用ファン4によって第2空気通路R2内の空気が空調用空気として送風される。
図2に示すように、下側スクロールケーシング22の左側壁部の前側には、上記空調ユニットに接続される下側空気吹出口22cが形成されている。下側空気吹出口22cは、上側空気吹出口21cの真下に位置している。下側空気吹出口22cには、第2空気通路R2の下流端が連通しており、第2空気通路R2内の空気は下側空気吹出口22cから下側スクロールケーシング22の外部に吹き出すようになっている。
底壁部材23は、下側スクロールケーシング22の下端部を覆うように形成され、該下端部を覆うカバー状の部材である。底壁部材23の周縁部は、下側スクロールケーシング22の下端部の周縁部に嵌合するように形成されており、底壁部材23の周縁部と、下側スクロールケーシング22の下端部の周縁部との間から空気が漏れないようになっている。
底壁部材23には、ブロアモータ5bがモータ取付部材5aを介して取り付けられている。モータ取付部材5aは、底壁部材23に固定されている。このモータ取付部材5aにブロアモータ5bが取り付けられている。ブロアモータ5bは、回転軸5cを有している。回転軸5cは、上方へ突出するように設けられており、第1ベルマウス開口部21a及び第2ベルマウス開口部22aと同心上に配置されている。回転軸5cの上端部は、第2ベルマウス開口部22aよりも上方に位置している。
回転軸5cには、第1送風用ファン3及び第2送風用ファン4が固定されており、第1送風用ファン3及び第2送風用ファン4と回転軸5cとは一体に回転するようになっている。したがって、ブロアモータ5bに電圧が印加されると、回転軸5cの回転力が第1送風用ファン3及び第2送風用ファン4に伝達されて該第1送風用ファン3及び第2送風用ファン4が第1空気通路R1及び第2空気通路R2内でそれぞれ回転する。ブロアモータ5bには、制御装置50が接続されており、ブロアモータ5bは制御装置50によって所望の回転数となるように電圧が印加される。
(冷凍サイクル装置60の構成)
図1に示すように、冷凍サイクル装置60は、可変容量圧縮機61と、可変容量圧縮機61から吐出された冷媒を蒸発させる上記冷却用熱交換器32と、可変容量圧縮機61及び冷却用熱交換器32の間に配設される膨脹弁62と、車室外に配設される凝縮器63とを備えている。可変容量圧縮機61、冷却用熱交換器32、膨脹弁62及び凝縮器63は、冷媒配管64によって接続されており、冷凍サイクル装置60の内部を冷媒が循環するようになっている。また、上記制御装置50は、冷凍サイクル装置60を構成する部材とすることができるし、車両用温度推定装置70を構成する部材とすることもできる。この実施形態では、冷凍サイクル装置60が、車両に搭載される車両用空調装置1の一部として使用される場合について説明する。
可変容量圧縮機61は、単位時間当たりの冷媒吐出量を変化させることができるように構成された容量可変機構を備えており、制御装置50から出力された制御信号によって容量を変化可能になっている。この容量可変機構は従来から周知の機構である。容量可変機構が例えば電磁弁等を含む機構によって構成される場合には、制御装置50から出力された制御信号によって可変容量圧縮機61から吐出される単位時間当たりの冷媒吐出量を変化させることができる。単位時間当たりの冷媒吐出量は、容量可変機構へ出力される制御信号によって任意の量に変化させることができ、例えば、ほぼ0%から100%の範囲でほぼ無段階に変化させることができるように構成されている。また、可変容量圧縮機61の制御値は、可変容量圧縮機61の最大能力に対する出力の比率とすることができ、例えば、デューティ比である。
制御装置50による冷凍サイクル装置60の制御は従来から周知の手法を使用することができ、基本的には、目標蒸発器出口温度を演算し、この目標蒸発器出口温度及び蒸発器出口温度との温度偏差に応じた制御を行うように構成されている。過渡期のように強い冷房が要求されている場合には、単位時間当たりの冷媒吐出量を多くするように制御信号が出力され、安定期のように弱い冷房が要求されている場合には、単位時間当たりの冷媒吐出量を少なくするように制御信号が出力される。また、エバ後温度センサ54で検出された蒸発器出口温度と、後述する温度推定手段50dで推定された蒸発器入口温度とを利用して、単位時間当たりの冷媒吐出量を制御するように構成されている。
冷凍サイクル装置60の内部を循環する冷媒は、可変容量圧縮機61によって圧縮された後、膨脹弁62に流入して気液二相状態に減圧される。膨脹弁62によって減圧された冷媒は冷却用熱交換器32に流入して外部を通過する空調用空気と熱交換することで蒸発した後、凝縮器63に流入する。凝縮器63を通過して外気と熱交換した冷媒は可変容量圧縮機61に流入して圧縮される。
また、可変容量圧縮機61は車両のエンジンEによって駆動される。すなわち、エンジンEの出力軸にはプーリE1が設けられており、このプーリE1と、可変容量圧縮機61の入力軸に設けられたプーリ61aとには、伝導ベルトE2が巻き掛けられている。エンジンEが運転状態になると、プーリE1、伝導ベルトE2及びプーリ61aを経て可変容量圧縮機61の入力軸に回転力が入力される。
可変容量圧縮機61の圧縮機構とプーリ61aとの間には電磁クラッチ61b(図5に示す)等からなる断続機構を設けることができる。電磁クラッチ61bは、制御装置50によって制御され、可変容量圧縮機61を作動させる必要がある場合にのみ接続状態となり、それ以外の場合には断状態となる。この電磁クラッチ61bは省略してもよい。
(各種センサ類)
図5に示すように、車両用空調装置1は、例えば、外気温度センサ(外気温度検出手段)51、内気温度センサ(内気温度検出手段)52、日射量センサ(日射量検出手段)53、エバ後温度センサ54、空調操作スイッチ55、冷却水温センサ56及び車速センサ57等を備えている。外気温度センサ51、内気温度センサ52、日射量センサ53、エバ後温度センサ54、冷却水温センサ56及び車速センサ57は、制御装置50に接続され、制御装置50へ信号を出力している。また、空調操作スイッチ55は制御装置50に接続されており、乗員による操作状態を制御装置50が検出できるようになっている。外気温度センサ51、内気温度センサ52、日射量センサ53、冷却水温センサ56及び車速センサ57は、車両用温度推定装置70の一構成要素とすることができる。
外気温度センサ51は、例えば車室外において車両前部や側部等に配設されており、車両の周囲の空気温度(外気温度)を検出するものである。内気温度センサ52は、例えば車室内においてインストルメントパネルの近傍等に配設されており、車室内の空気温度(内気温度)を検出するものである。日射量センサ53は、例えば車室内においてインストルメントパネルの近傍等に配設されており、車室に照射される日射量を検出するものである。
内気温度センサ52、外気温度センサ51及び日射量センサ53は、乗員が感じる冷熱に関連する情報を検出することができるものである。すなわち、内気温度センサ52から出力される内気温度は、乗員の雰囲気温度と略等しい温度であり、内気温度が高いということは乗員が暖かいと感じ、内気温度が低いということは乗員が寒いと感じる。また、外気温度センサ51から出力される外気温度が高いと乗員が暖かいと感じ、外気温度が低いと乗員が寒いと感じる。さらに、日射量センサ53から出力される日射量が多いと乗員が暖かいと感じ、日射量が少ないと乗員が寒いと感じる。また、同様に、内気温度センサ52、外気温度センサ51及び日射量センサ53に基づいてリンク部材9aの雰囲気温度状態を推定することもできる。
エバ後温度センサ54は、冷却用熱交換器32の空気流れ方向下流側に配設されており、冷却用熱交換器32の表面温度を検出するものである。エバ後温度センサ54は、冷却用熱交換器32から流出する空気の温度である蒸発器出口温度を検出する蒸発器出口温度検出手段としても機能する。エバ後温度センサ54と冷却用熱交換器32の空気流れ方向下流側の面とは接触または接近しているので、エバ後温度センサ54によって冷却用熱交換器32の空気流れ方向下流側の面の温度、即ち、冷却用熱交換器32から流出する空気の温度を検出することが可能になる。
空調操作スイッチ55は、例えばインストルメントパネル等に配設されており、例えば、空調装置1のON/OFFの切替スイッチ、送風量を増減させる風量切替スイッチ、車室の温度を設定する温度設定スイッチ、内気循環、外気導入及び内外気混入モードを切り替える内外気切替スイッチ、オートエアコン制御とするか否かを選択するオートスイッチ、吹出方向を切り替える吹出モード切替スイッチ、デフロスタスイッチ等で構成されている。
冷却水温センサ56は、車両に搭載されているエンジンEの冷却水温を検出するためのセンサである。冷却水温センサ56は、例えばエンジンEの冷却水通路に臨むように配設されており、エンジンEの冷却水温を直接検出することができるようになっている。尚、冷却水温センサ56は、エンジンEの冷却水温を間接的に検出し、検出値を補正するようにしてもよい。
車速センサ57は、車両の速度を検出するためのセンサである。車速センサ57としては、例えば車両の変速機の出力軸の回転速度や、車輪の回転速度を検出可能なセンサを挙げることができ、このセンサから出力されるパルス信号に基づいて車両の速度を検出することができる。車速センサ57は、車両が停止状態(車速が0km/h)にあるか、低速走行状態(車速が例えば10km/h未満)にあるか、通常走行状態(車速が例えば10km/h以上)にあるかを判断するためのセンサとして利用することができる。判断基準となる車速は任意に設定することができる。
(制御装置50による制御内容)
制御装置50は、上記センサ51〜54、56、57やその他のセンサから出力される信号(出力値)と、空調操作スイッチ55の操作状態とに基づいて、内外気切替アクチュエータ9、エアミックスアクチュエータ35、吹出方向切替アクチュエータ47、ブロアモータ5b及び冷凍サイクル装置60を制御する。
すなわち、空調操作スイッチ55のオートスイッチによってオートエアコン制御が選択された場合には、車室外の温度、車室内の温度、日射量、エンジン冷却水温度、冷却用熱交換器32の表面温度、設定温度等に基づいて、車室内に供給する調和空気の目標吹出温度を決定するとともに、この目標吹出温度となるようにエアミックスダンパ34の開度を演算し、エアミックスダンパ34がこの開度となるようにエアミックスアクチュエータ35を制御してエアミックスダンパ34を回動させる。これにより、調和空気の温度が目標吹出温度となる。
また、制御装置50は、冷房時には吹出モードが主にベントモードとなるように吹出方向切替アクチュエータ47を制御し、暖房時には吹出モードが主にヒートモードとなるように吹出方向切替アクチュエータ47を制御する。また、冷房時や暖房時であっても弱めの場合には、バイレベルモードやデフベントモードとなるように吹出方向切替アクチュエータ47を制御する。さらに、空調操作スイッチ55が有するデフロスタスイッチがONにされると、吹出モードがデフロスタモードとなるように吹出方向切替アクチュエータ47を制御する。
例えば冬季に長時間放置された車両で暖房を行う場合や、夏季で長時間放置された車両で冷房を行う場合には、目標吹出温度と内気温度との差が大きくなる。このような場合には、制御装置50は、風量が多くなるようにブロアモータ5bを制御するが、乗員が風量切替スイッチを操作して好みの風量にすることもできるようになっている。また、オートエアコン制御では、目標吹出温度と内気温度との差が小さくなるにつれて風量が少なくなるようにブロアモータ5bを制御する。ブロアモータ5bの制御は印加電圧の変更によって行われるが、これに限られるものではなく、ブロアモータ5bの回転数を変更できればよい。
また、制御装置50は、車両用温度推定装置70の一構成要素である送風量推定手段50aを備えている。車両用温度推定装置70は、車両用空調装置1が有する冷却用熱交換器32に流入する空気の温度である蒸発器入口温度を推定するための装置である。送風量推定手段50aは、冷却用熱交換器32に送風される送風量を推定するための部分であり、具体的には、ブロアモータ5bに印加される電圧を検出し、この電圧に基づいて冷却用熱交換器32に送風される送風量を推定する。ブロアモータ5bに印加される電圧が高ければ高いほど冷却用熱交換器32に送風される送風量が多いと推定し、ブロアモータ5bに印加される電圧が低ければ低いほど冷却用熱交換器32に送風される送風量が少ないと推定する。また、送風量推定手段50aは、ブロアモータ5bの回転数を検出することによって冷却用熱交換器32に送風される送風量を推定するように構成してもよい。
また、制御装置50は、車両用温度推定装置70の一構成要素である内気循環率算出手段50bを備えている。内気循環率算出手段50bは、車両用空調装置1のデフロスタ吹出口42、ベント吹出口43及びヒート吹出口45から吹き出す合計の吹出空気量(全空気量)に対する内気の割合である内気循環率を算出する部分である。内気循環率算出手段50bは、内外気切替ダンパ6、7の開度(内外気切替アクチュエータ9による回動量)を検出することで、内気循環率を算出している。具体的には、外気導入モードでは内気が送風ケーシング20及び空調ケーシング30に導入されないので内気循環率を0%とし、内気循環モードでは外気が送風ケーシング20及び空調ケーシング30に導入されないので内気循環率を100%とする。内外気二層流モードでは、内外気切替ダンパ6、7の開度に応じて送風ケーシング20及び空調ケーシング30に導入される内気の量と外気の量とが変化するが、事前に実験等によって内外気切替ダンパ6、7の開度と、送風ケーシング20及び空調ケーシング30に導入される内気の量との関係、内外気切替ダンパ6、7の開度と、送風ケーシング20及び空調ケーシング30に導入される外気の量との関係を得ておけば、内外気切替ダンパ6、7の現在開度を検出することで、内気循環率を1%〜99%の間で規定することができる。また、内気循環率は、線形補間によっても得ることができる。
また、制御装置50は、車両用温度推定装置70の一構成要素である運転状態判断手段50cを備えている。運転状態判断手段50cは、外気温度センサ51で検出された外気温度と、外気温度を遅延処理した外気遅延処理後温度と、冷却水温センサ56で検出された冷却水温とに基づいて車両の運転状態を判断する部分である。外気遅延処理後温度は、以下の式によって算出することができる。
外気遅延処理後温度(℃)=1−10^(−経過時間/時定数)
図6に示すように、時定数τは遅延データ変化値が外気推定温度計算値の変化値の90%になる時間であり、例えば、30秒とすることができる。図6中、TEAMB INPUTは、外気推定温度計算値であり、TEAMBは、外気推定温度である。
図7に第1判断条件を示している。運転状態判断手段50cは、外気温度センサ51で検出された外気温度(外気温度生値)から外気温度(ヒーコン表示値)を差し引いた値を計算し、その値が2.5℃と3.0℃を境にして、2.5℃よりも高い側から2.5℃に達すると、車両の運転状態が冷間状態であると判断し、3.0℃よりも低い側から3.0℃に達すると、車両の運転状態が暖機状態であると判断する。この判断は、最終判断結果ではなく、一次的な判断結果であり、第1判断条件に基づく判断結果は運転状態判断手段50cの内部で保持される。判断基準及び判定手法は一例であり、これに限られるものではない。「冷間状態」とは、エンジンE等が十分に暖まっていない状態であり、「暖機状態」とは、エンジンE等が十分に暖まっている状態である。
図8に第2判断条件を示している。運転状態判断手段50cは、冷却水温センサ56で検出された冷却水温が、ヒーコン表示値に40℃を加えた温度未満、かつ、冷却水温センサ56で検出された冷却水温が65℃未満の場合には、車両の運転状態が冷間状態であると判断する。一方、運転状態判断手段50cは、冷却水温センサ56で検出された冷却水温が、ヒーコン表示値に40℃を加えた温度以上、かつ、冷却水温センサ56で検出された冷却水温が65℃以上の場合には、車両の運転状態が暖機状態であると判断する。この判断は、最終判断結果ではなく、一次的な判断結果であり、第2判断条件に基づく判断結果は運転状態判断手段50cの内部で保持される。第1判断条件に基づく判断と、第2判断条件に基づく判断との判断の順番は問わない。
図9は、運転状態判断手段50cが行う最終的な判断条件を示すものである。第1判断条件に基づく判断によって冷間状態であると判断され、かつ、第2判断条件に基づく判断によっても冷間状態であると判断された場合には、車両が冷間状態であると判断し、その判断結果を出力する。一方、第1判断条件に基づく判断及び第2判断条件に基づく判断のうち、少なくとも一方で暖機状態であると判断されると、車両が暖機状態であると判断し、その判断結果を出力する。
運転状態判断手段50cは、車速センサ57で検出された車両の速度に基づいて車両の運転状態を判断するようにしてもよい。例えば、車速センサ57で検出された車両の速度が0km/hのときには、車両が停止状態であると判断することができ、車速センサ57で検出された車両の速度が10km/h未満のときには、車両が低速走行状態であると判断することができ、車速センサ57で検出された車両の速度が10km/h以上のときには、車両が通常走行状態であると判断することができる。
また、制御装置50は、車両用温度推定装置70の一構成要素である温度推定手段50dを備えている。温度推定手段50dは、外気温度センサ51で検出された外気温度と、ヒーコン表示値と、内気温度センサ52で検出された温度と、内気循環率算出手段50bで検出された内気循環率とに基づいて蒸発器入口温度を推定するとともに、運転状態判断手段50cにより判断された車両の運転状態に応じて蒸発器入口温度の推定方法を複数通りの中から任意の1つに変更するように構成されている。
温度推定手段50dは以下に示す式に基づいて蒸発器入口温度を推定する。
蒸発器入口温度(℃)=内気推定温度(℃)×内気循環率(%)
+外気推定温度(℃)×(100%−内気循環率(%))
ここで、内気推定温度(℃)は以下に示す式に基づいて算出される。
内気推定温度(℃)=内気温度センサ52で検出された温度+2℃
外気推定温度(℃)は温度推定用テーブルの計算値を遅延処理してできた温度である。
図9に示すように、車両の運転状態が冷間状態であると判断される場合には、図10に示すTable1を用いて蒸発器入口温度推定を行う。Table1の左端の欄は、外気温度生値が記載される欄であり、0℃〜70℃まで記載してある。Table1の上端の欄は、ヒーコン表示値が記載される欄であり、0℃〜50℃まで5℃刻みで記載してある。外気温度生値と、ヒーコン表示値とに基づいて、Table1に記載してある温度を蒸発器入口温度として読み込み、この温度を蒸発器入口温度の推定値とする。
また、図9に示すように、車両の運転状態が暖機状態であると判断される場合には、図11に示すTable2を用い、図12に示す送風量補正を行うことで、蒸発器入口温度を推定する。Table2の左端の欄及び上端の欄は、Table1と同じである。外気温度生値と、ヒーコン表示値とに基づいて、Table2に記載してある温度を蒸発器入口温度(補正前)として読み込む。
また、図12に示す送風量補正用グラフの横軸は、ブロアモータ5bへの印加電圧であり、縦軸は補正係数である。基本的には、印加電圧が大きくなればなるほど、即ち、送風量が多くなればなるほど補正係数が大きくなる。印加電圧が第1の所定値以下の低送風量領域では、補正係数が0で固定される。また、印加電圧が第1の所定値よりも大きな第2の所定値以上の送風量領域では、補正係数が1.2で固定される。補正係数は一例であり、異なる値であってもよい。
図12に示す送風量補正用グラフで得られた補正係数を、Table2から読み込んだ値に乗じて得られた値を、蒸発器入口温度の推定値とする。したがって、温度推定手段50dは、送風量推定手段50aで推定された送風量に基づいて蒸発器入口温度を推定するように構成されている。
また、温度推定手段50dは、車両の速度を検出する車速センサ57で検出された車両の速度に基づいて蒸発器入口温度を推定するように構成されていてもよい。車両が停止状態と、低速走行状態と、通常走行状態とで異なる補正係数を設定し、この補正係数をTable2から読み込んだ値に乗じて得られた値を、蒸発器入口温度の推定値とする。
また、温度推定手段50dは、車両のエンジンの冷却水温を検出する冷却水温センサ56で検出された冷却水温に基づいて蒸発器入口温度を推定するように構成されていてもよい。冷却水温によって異なる補正係数を設定し、この補正係数をTable2から読み込んだ値に乗じて得られた値を、蒸発器入口温度の推定値とする。
また、温度推定手段50dは、日射量を検出する日射量センサ53で検出された日射量に基づいて蒸発器入口温度を推定するように構成されていてもよい。日射量によって異なる補正係数を設定し、この補正係数をTable2から読み込んだ値に乗じて得られた値を、蒸発器入口温度の推定値とする。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、既存の外気温度センサ51及び内気温度センサ52の検出温度を用いるとともに、内気循環率を用いることで蒸発器入口温度の推定が可能になるので、蒸発器入口温度を検出するための温度センサが不要になる。蒸発器入口温度の推定の際、車両の運転状態に応じて蒸発器入口温度の推定方法が変更されるので、車両の運転状態に適した推定方法になる。よって、蒸発器入口温度の推定値の精度が高まる。これにより、車両用空調装置1の制御が適切になされるようになり、乗員の快適性を向上できる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。