JP2020131590A - 画像形成方法、及び画像形成装置 - Google Patents

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拓也 齋賀
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【課題】本発明は、加熱乾燥を行った場合でも画像濃度とブロッキング性を向上することができる画像形成方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の画像形成方法は、カーボンブラック、樹脂及び有機溶剤を含有するインクを吐出し形成された画像を加熱乾燥する加熱乾燥工程と、前記加熱乾燥工程を行った画像を加熱加圧する加熱加圧工程とを有する画像形成方法であって、前記加熱乾燥工程における加熱温度TA、前記加熱加圧工程における加熱温度TB、前記水性インクの乾固物のガラス転移温度T1の関係がT1<TA≦TBであることを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
インクジェット記録方式は、他の記録方式に比べてプロセスが簡単で、かつフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られるという利点があることから普及し、パーソナルからオフィス用途、商業印刷や工業印刷の分野へと広がりつつある。このようなインクジェット記録方式では、色材として水溶性染料を用いた水系インク組成物が主に使用されているが、耐水性及び耐光性に劣るという欠点があるため、水溶性染料に代わる水不溶性の顔料を用いた顔料インクの開発が進められている。
オフィス用途のインクジェット印刷では、記録媒体として主に普通紙が使用され、高い画像濃度が要求されている。一般に、顔料インクを普通紙に印字した場合、顔料は紙表面に留まることなく紙中へ浸透するため、紙表面の顔料密度が低くなり、画像濃度が低下する。インク中の顔料濃度を高くすれば画像濃度は高くなるが、インクの粘度が増大し、吐出安定性が低下する。
また、商用印刷や工業印刷の分野では、より速い速度で、より高い解像度と鮮明度の画像を安定的に作成する技術が必要とされている。記録媒体としては、普通紙をはじめコート紙やアート紙、PETフィルム等の非浸透性フィルムなどが使用され、インクの記録媒体への高い対応性が要求されている。インクジェット記録方式において、普通紙へ印刷する場合に発生する紙カールを防止するために、或いはコート紙やアート紙へ印刷する場合に、インクの浸透性を上げて、乾燥を速めかつビーディングを防止するために、水性インク中に親水性の有機溶媒を加える方法がある。
また、前記インクジェット記録方式や筆記具に使用する水性顔料インクは、染料を水に溶解して調製する水性染料インクと異なり、水に溶解しない顔料を水中に長期間安定的に分散させる必要があるため、種々の顔料分散剤が開発されている。例えば、側鎖に芳香環を含むグラフトポリマーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献2にはナフチル基を有する共重合体を用いる方法が提案されている。
また、特許文献3には画像の擦過性の向上のため、加熱乾燥後に定着ローラーで加熱加圧処理を行う方法が提案されている。
従来のブラックインクは、印字直後に加熱乾燥を行うことで耐ブロッキング性を向上させていたが、画像濃度が著しく低下するという課題があった。
本発明は、加熱乾燥を行った場合でも画像濃度と耐ブロッキング性を向上することができる画像形成方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の画像形成方法は、カーボンブラック、樹脂及び有機溶剤を含有するインクを吐出し形成された画像を加熱乾燥する加熱乾燥工程と、前記加熱乾燥工程を行った画像を加熱加圧する加熱加圧工程とを有する画像形成方法であって、前記加熱乾燥工程における加熱温度TA、前記加熱加圧工程における加熱温度TB、前記インク乾固物のガラス転移温度T1の関係がT1<TA≦TBであることを特徴とする。
本発明により、加熱乾燥を行った場合でも画像濃度と耐ブロッキング性を向上することができる画像形成方法を提供することができる。
図1は、インクジェット記録装置の一例を示す斜視説明図である。 図2は、インクジェット記録装置におけるメインタンクの一例を示す斜視説明図である。 図3は、本発明に関わる画像形成装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明に係る画像形成方法及び画像形成装置について説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
本発明の実施形態は、下記(1)に係るものであるが、下記の(2)〜(10)も実施の形態として含む。
(1)カーボンブラック、樹脂及び有機溶剤を含有するインクを吐出し形成された画像を加熱乾燥する加熱乾燥工程と、前記加熱乾燥工程を行った画像を加熱加圧する加熱加圧工程とを有する画像形成方法であって、
前記加熱乾燥工程における加熱温度をTAとし、前記加熱加圧工程における加熱温度をTBとし、前記インクの乾固物のガラス転移温度をT1としたとき、TA、TB及びT1が以下に記載の関係式を満たすことを特徴とする画像形成方法。
1<TA≦TB
(2)前記加熱加圧工程における加熱温度TBとインク乾固物のガラス転移温度T1との関係がTB−T1≧50℃であることを特徴とする前記(1)に記載の画像形成方法。
(3)前記加熱乾燥工程における加熱温度TAと加熱加圧工程における加熱温度TBの関係がTB−TA≧20℃であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の画像形成方法。
(4)前記加熱乾燥工程における加熱温度TAが80℃以上であることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載の画像形成方法。
(5)前記加熱乾燥工程から加熱加圧工程に移行するまでの時間が1000ms以下であることを特徴とする前記(1)から(4)のいずれかに記載の画像形成方法。
(6)前記加熱加圧工程において、前記画像と接触して該画像を加熱加圧する部材を用い、前記部材の前記画像と接触する面がポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、ポリジメチルシロキサン樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)から(5)のいずれかに記載の画像形成方法。
(7)前記加熱加圧工程における加圧圧力が3kPa/cm2以上10kPa/cm2以下であることを特徴とする前記(1)から(6)のいずれかに記載の画像形成方法。
(8)前記インク乾固物のガラス転移温度T1が30℃以上であることを特徴とする前記(1)から(7)のいずれかに記載の画像形成方法。
(9)カーボンブラック、樹脂及び有機溶剤を含有するインクを吐出し形成された画像を加熱乾燥する加熱乾燥手段と、前記加熱乾燥を行った画像を加熱加圧する加熱加圧手段とを有する画像形成装置であって、
前記加熱乾燥手段および前記加熱加圧手段は、加熱温度を調整する制御部を有し、
前記加熱乾燥手段における加熱温度をTAとし、前記加熱加圧手段における加熱温度をTBとし前記インクの乾固物のガラス転移温度をT1としたとき、TA、TB及びT1が以下に記載の関係式を満たすことを特徴とする画像形成装置。
1<TA≦TB
(10)前記加熱加圧手段において、前記画像と接触して該画像を加熱加圧する部材を有し、前記部材の前記画像と接触する面がポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、ポリジメチルシロキサン樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする前記(9)に記載の画像形成装置。
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明に係る画像形成方法は、非吸収性又は低吸収性の記録媒体(以下、特に記載がなければ単に記録媒体と称する)に、カーボンブラック、樹脂及び有機溶剤を含有するインクを吐出し形成された画像に加熱乾燥を行う加熱乾燥工程と、前記加熱乾燥工程を行った画像を加熱加圧する加熱加圧工程と、を有するものであり、前記加熱乾燥工程における加熱温度をTAとし、前記加熱加圧工程における加熱温度をTBとし前記インクの乾固物のガラス転移温度をT1としたとき、TA、TB及びT1が以下に記載の関係式を満たす。
1<TA≦TB
本発明に係る画像形成装置は、カーボンブラック、樹脂及び有機溶剤を含有するインクを吐出し形成された画像を加熱乾燥する加熱乾燥手段と、前記加熱乾燥を行った画像を加熱加圧する加熱加圧手段とを有する画像形成装置であって、前記加熱乾燥手段および前記加熱加圧手段は、加熱温度を調整する制御部を有し、前記加熱乾燥手段における加熱温度をTAとし、前記加熱加圧手段における加熱温度をTBとし前記インクの乾固物のガラス転移温度をT1としたとき、TA、TB及びT1が以下に記載の関係式を満たす。
1<TA≦TB
本発明におけるインクを乾燥して得られるインク乾固物のガラス転移温度T1は、例えば、示差走査熱量計(TA−60WS及びDSC−60、株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。
具体的には、インクをシャーレに均一に広がるように入れ、40℃で1週間乾燥後、得られたインク膜を試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで、窒素雰囲気下、0℃から昇温速度10℃/minで150℃まで昇温し、その後、150℃から降温速度5℃/minで−80℃まで降温した後、更に昇温速度10℃/minで150℃まで昇温してDSC曲線を計測した。得られたDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時における変曲部からミッドポイント法で解析し、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
前記インク乾固物のガラス転移温度T1は、耐ブロッキング性の観点から30℃以上であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
インク乾固物のガラス転移温度は、インクに含有される樹脂により調整することが可能である。また、樹脂のガラス転移温度は樹脂を構成するモノマーの種類、または、割合を変更することで調整が可能である。
(インク付与工程、インク付与手段)
前記インクを吐出して行う画像の形成は、インク付与工程により行うことができる。
インク付与工程は、インクジェット方式によりインクを吐出することが好ましく、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれのインク付与手段も用いることができる。
更に、この画像形成装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の画像形成装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
(加熱乾燥工程、加熱乾燥手段)
前記加熱乾燥工程に用いる加熱乾燥手段としては、ヒートローラー、赤外線乾燥装置、マイクロ波乾燥装置、温風装置、オーブン等が挙げられ、2種以上併用してもよい。
また、加熱乾燥温度TAとしては耐ブロッキング性の観点から前記水性インク乾固物のガラス転移温度T1よりも高い、即ちT1<TAであることが重要であり、さらにTAは80℃以上であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。い。
(加熱加圧工程、加熱加圧手段)
加熱乾燥により低下する画像濃度を向上させるという目的により、記録媒体へのインク付与と乾燥工程を行った後に加熱加圧を行う。
前記加熱乾燥工程から前記加熱加圧工程に移行するまでの時間は、加熱乾燥にて昇温された形成画像をそのまま加熱加圧することにより、加熱の効率が向上するため、1000ms以下とすることが好ましく、500ms以下とすることがより好ましい。
加熱乾燥工程から加熱加圧工程に移行するまでの時間は、加熱乾燥手段がオーブンの場合は、形成された画像を加熱乾燥手段で加熱乾燥し、加熱乾燥手段から取り出した時点を起点とし、画像が加熱加圧手段の加圧部に接触するまでの時間とする。また、加熱乾燥手段が温風乾燥等の非接触の加熱乾燥手段である場合は、記録媒体搬送方向最下流側の加熱乾燥手段端を画像が通過した時点を起点とし、また、加熱ドラム等の接触型の乾燥手段である場合は、接触した記録媒体が加熱乾燥手段から離れた時点を起点として、それぞれの起点から、画像が加圧部に接触するまでの時間を加熱乾燥工程から加熱加圧工程に移行するまでの時間とする。
加圧手段としては、例えば、搬送ローラー、ヒートローラー、ヒートプレス等が挙げられる。また、上記の他にも、記録媒体を巻き取ることで加圧してもよい。
加圧手段は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
これらの中でも、画像濃度の観点から画像と接触して該画像を加熱加圧する部材を用いることが好ましく、例えば、ヒートローラー及び加圧ローラーにて加熱加圧する工程を有することが好ましい。なお、加熱加圧部材の画像と接触する面としては、特に限定されるものではないが、加熱加圧部材へのインク付着抑制の観点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、ポリジメチルシロキサン樹脂等が好ましい。
前記加熱加圧工程における温度TBとしては、前記加熱乾燥工程における温度TAよりも高いことが好ましく、TAよりも20℃以上高い(TB−TA≧20℃)ことがより好ましい。さらに、TBは、インク乾固物のガラス転移温度T1よりも50℃以上高い(TB−T1≧50℃)ことがより好ましい。前記温度TBが前記乾燥工程における温度TAよりも高く、インク乾固物のガラス転移温度T1よりも50℃以上高いことで、形成画像の画像濃度と耐ブロッキング性をより向上することができる。
前記加熱加圧工程における圧力としては、0.1kg/cm2以上20kg/cm2以下が好ましく、3.0kg/cm2以上10.0kg/cm2以下がより好ましい。前記圧力が、3.0kg/cm2以上であると、画像濃度を十分に向上させることができ、10.0kg/cm2以下であると、未加圧画像が加圧部材にオフセットすることを防止できる。なお、前記圧力の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜、公知の装置を選択することができる。
本発明の画像形成装置の一例について図3を参照して説明する。
図3における画像形成装置は、給紙装置102、記録媒体110、インクジェット記録部101、用紙搬送部112及び114、インクが付与された記録媒体の加熱乾燥部103、加熱乾燥された記録媒体の加熱加圧部104、ヒートローラー131A及び131B、温風装置132A、加圧ローラー133、巻取り装置105にて構成されている。
前記記録媒体110は、インクジェット記録部101からインクが付与されることで、画像が記録される。
前記加熱乾燥部103は、加熱乾燥手段としてヒートローラー131Aと温風装置132Aを有する。この装置によれば、インクを付与された記録媒体は、ヒートローラー及び温風装置による伝熱により、水分および有機溶剤が蒸発し、乾燥される。乾燥手段としてはこれに限らず、赤外線乾燥装置、マイクロ波乾燥装置などを適用することもでき、それぞれを組み合わせるなどしてもよい。
前記加熱加圧部104は、加熱加圧手段としてヒートローラー131Aと加圧ローラー133を有し、ヒートローラー131Aと加圧ローラー133の間を記録媒体110が通過することで加熱加圧が行われる。
加熱加圧されたた記録媒体110は、巻取り装置105により巻き取られる。
加熱乾燥部103および前記加熱加圧部104は、加熱温度を調整する制御部を有し、加熱乾燥工程における加熱温度TA、加熱加圧工程における加熱温度TBと、インクの乾固物のガラス転移温度T1が以下に記載の関係式を満たす。
1<TA≦TB
<インク>
以下、インクに用いる水、カーボンブラック、樹脂及び有機溶剤、添加剤等について説明する。
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
前記水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
<カーボンブラック>
前記カーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が15nm以上40nm以下、BET法による比表面積が50m2/g以上300m2/g以下、DBP吸油量が40mL/100g以上150mL/100g以下、揮発分が0.5%以上10%以下、pHが2以上9以下を有するものが好ましい。
また、得られる画像の発色性の点から、自己分散顔料を用いてもよく、アニオン性自己分散顔料が好ましい。前記アニオン性自己分散顔料とは、顔料表面に直接又は他の原子団を介してアニオン性官能基を導入することにより分散安定化させた顔料をいう。
分散安定化させる前の顔料としては、例えば、国際公開第2009/014242号パンフレットに列挙されているような、従来公知の様々な顔料を用いることができる。
なお、アニオン性官能基とは、pH7.0において半数以上の水素イオンが解離する官能基をいう。アニオン性官能基の具体例としては、カルボキシル基、スルホ基、及びホスホン酸基等を挙げることができる。中でも、得られる画像の光学濃度を高める点から、カルボキシル基又はホスホン酸基が好ましい。
顔料の表面にアニオン性官能基を導入する方法としては、例えば、カーボンブラックを酸化処理する方法が挙げられる。
酸化処理方法の具体例としては、次亜塩素酸塩、オゾン水、過酸化水素、亜塩素酸塩、又は硝酸等により処理する方法や、特許第3808504号公報、特表2009−515007号公報、及び特表2009−506196号公報に記載されているようなジアゾニウム塩を用いる表面処理方法が挙げられる。
また、表面に親水性の官能基が導入された市販の顔料としては、例えば、CW−1、CW−2、CW−3(以上、オリヱント化学工業社製);CAB−O−JET200、CAB−O−JET300、CAB−O−JET400(キャボット社製)等が挙げられる。
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、インク中の固形分の粒径の最大頻度が最大個数換算で20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
本発明のインクは、普通紙やコート紙などへの浸透性と濡れ性を高めて、更にビーディングの発生を抑制するために、界面活性剤を含有することが好ましい。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S−1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
Figure 2020131590
(但し、一般式(S−1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業株式会社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2〜16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4〜16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F−1)及び一般式(F−2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
Figure 2020131590
上記一般式(F−1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0〜10の整数が好ましく、nは0〜40の整数が好ましい。
Figure 2020131590
上記一般式(F−2)で表される化合物において、YはH、又はCm2m+1でmは1〜6の整数、又はCH2CH(OH)CH2−Cm2m+1でmは4〜6の整数、又はCp2p+1でpは1〜19の整数である。nは1〜6の整数である。aは4〜14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、キャプストーンFS−30、FS−31、FS−3100、FS−34、FS−35(いずれも、Chemours社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)、ユニダインDSN−403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS−3100、FS−34、FS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF−151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN−403Nが特に好ましい。
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
本発明のインクには、前記その他の成分として、例えば、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などを必要に応じて含有することが好ましい。
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE−80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は同装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
<前処理液>
前処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布しても良いし、インク像が形成された領域のみに塗布しても良い。
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
<記録媒体>
記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
(インク収容容器)
本発明のインク収容容器は、インクを収容するインク収容部を備えたインク収容容器であって、前記インク収容部に収容されたインクが、本発明のインクである。前記インクを容器中に収容し、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有する。
前記容器には特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク収容部などを少なくとも有するもの、などが好適である。
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(調製例)
<顔料分散液の調製>
以下の処方の材料を混合し、更にディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.3mmのジルコニアボール)で7時間循環分散させて顔料分散液を得た(顔料固形分15質量%)。
・カーボンブラック(NIPEX90、オリオンエンジニアドカーボンズ社製):
15質量部
・アニオン性界面活性剤(パイオニンA−51−B、竹本油脂社製): 2質量部
・イオン交換水: 83質量部
(製造例1)
<アクリルシリコーン樹脂粒子Aの製造>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた300mLのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、アクアロンHS−10(不飽和炭素を持つ反応性乳化剤、第一工業製薬株式会社製、成分100質量%)2.3g、及びイオン交換水70gを加え混合し、70℃に昇温した。 昇温後、反応開始剤であるペルオキソ二硫酸アンモニウム0.14gを加え、5分間後にメタクリル酸メチル60g、メタクリル酸2エチルヘキシル26g、ビニルトリエトキシシラン6.9g、アクアロンHS−10(不飽和炭素を持つ反応性乳化剤、第一工業製薬株式会社製、成分100質量%)1.4g、及びイオン交換水50gを混合し、3時間かけて滴下を行った。
その後、80℃で2時間加熱熟成を行った後、常温(25℃)まで冷却し、アンモニア水でpHを7〜8に調整し、固形分濃度40質量%の製造例1のアクリルシリコーン樹脂粒子A240gを作製した。
(製造例2)
<アクリルシリコーン樹脂粒子Bの製造>
製造例1において、メタクリル酸メチル45g、メタクリル酸2エチルヘキシル41gへと変更した点以外は、製造例1と同様にしてアクリルシリコーン樹脂粒子Bを作製した。
(製造例3)
<アクリルシリコーン樹脂粒子Cの製造>
製造例1において、メタクリル酸メチル75g、メタクリル酸2エチルヘキシル11gへと変更した点以外は、製造例1と同様にしてアクリルシリコーン樹脂粒子Cを作製した。
<インクGJ−1の作製>
以下に示す処方の材料を混合攪拌し、次いで、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過することでインクGJ−1を作製した。なお、
[インク処方]
・イオン交換水: 32.9質量部
・2,3−ブタンジオール(bp:183℃): 20.0質量部
・エチレングリコール−n−ヘキシルエーテル(bp:208℃):15.0質量部
・アクリルシリコーン樹脂粒子A: 10.0質量部
・前記顔料分散液: 20.0質量部
・界面活性剤[CH3(CH2)12O(CH2CH2O)3CH2COOH]: 2.0質量部
・防腐防黴剤(プロキセルLV、アビシア社製): 0.1質量部
・合計: 100質量部
<インクGJ−2の作製>
インクGJ−1の作製において、アクリルシリコーン樹脂粒子Aをアクリルシリコーン樹脂粒子Bに変えた以外は、インクGJ−1の作製と同様にしてインクGJ−2を作製した。
<インクGJ−3の作製>
インクGJ−1の作製において、アクリルシリコーン樹脂粒子Aをアクリルシリコーン樹脂粒子Cに変えた以外は、インクGJ−1の作製と同様にしてインクGJ−3を作製した。
次に、作製したインクGJ−1〜GJ−3の各インクについて、以下のようにして、水性インク乾固物ガラス転移温度(Tg)を測定した。
<インク乾固物のガラス転移温度(Tg)>
インク乾固物のガラス転移温度の測定は、示差走査熱量計(TA−60WS及びDSC−60、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
まず、直径50mmのテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製シャーレにインク4gを均一に広がるように入れ、40℃で1週間乾燥後、得られたインク膜から5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで、窒素雰囲気下、0℃から昇温速度10℃/minで150℃まで昇温し、その後、150℃から降温速度5℃/minで−80℃まで降温した後、更に昇温速度10℃/minで150℃まで昇温してDSC曲線を計測した。得られたDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時における変曲部からミッドポイント法で解析し、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
前記の方法にて測定した、インクGJ−1〜インクGJ−3の水性インク乾固物のガラス転移温度(Tg)は以下のような結果であった。
・インクGJ−1乾固物のガラス転移温度(Tg):40℃
・インクGJ−2乾固物のガラス転移温度(Tg):70℃
・インクGJ−3乾固物のガラス転移温度(Tg): 0℃
(実施例1)
23℃、50%RH環境下で、インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSiO GX5000)にインクGJ−1を充填し、Microsoft Word2000(Microsoft社製)で作成した64pointのJIS X 0208(1997),2223の一般記号が記載されているチャートを、コート紙(ルミアートグロス紙、紙厚90g/m2、STORA ENSO社製)に打ち出した後、100℃のオーブンにて1分間加熱乾燥を行った。加熱乾燥後、オーブンから取り出した時点から500ms後に、画像面と接触する面が140℃に調温された直径85mmのPFA製ローラー(インクヒートローラ)と、裏面から圧力5kPa/cm2にて加圧する加圧ローラとを有する加熱加圧手段を用いて加熱加圧を行うことで、評価画像を作製した。
なお、印字モードは、プリンタ添付のドライバで普通紙のユーザー設定より「普通紙−標準はやい」モードを「色補正なし」に改変したモードを使用した。
なお、上記JIS X 0208(1997),2223は、外形が正四方形であって、記号全面がインクにより塗りつぶされている記号である。
(実施例2〜8)
実施例1において、表1に示すインク、加熱乾燥工程における温度、加熱加圧工程における温度及び圧力にしたがい、実施例2〜8の評価画像を作製した。
(比較例1〜3)
実施例1において、表1に示す加熱乾燥工程における温度、加熱加圧工程における温度及び圧力にしたがい、比較例1〜3の評価画像を作製した。
次に、作製した実施例1〜8及び比較例1〜3のそれぞれ画像の評価項目、評価方法について以下に示す。結果を表1に示す。
(画像濃度)
作製した画像印字面の前記記号部を、X−Rite938(エックスライト社製)により測色し、下記の評価基準で評価した。
[評価基準]
<画像濃度>
A:2.10以上
B:2.00以上2.10未満
C:1.90以上2.00未満
D:1.90未満
<ブロッキング>
作製した画像印字面の前記記号部に、白紙のコート紙(ルミアートグロス紙、紙厚90g/m2、STORA ENSO社製)を重ね、1kgの荷重を加えて24時間放置後、下記基準により、耐ブロッキング性を評価した。なお、○以上が許容範囲である。
[評価基準]
A:隣接面を容易に引き剥がせ、かつ白紙側への転写がない
B:隣接面を容易に引き剥がせるが、僅かに白紙側への転写がある
C:隣接面に粘着があり、白紙側への転写が見られる
D:隣接面に粘着があり、白紙側への転写が著しい
Figure 2020131590
表1の結果から、加熱乾燥工程における温度TAと加熱加圧工程におけるTBと水性インク乾固物のガラス転移温度T1の関係が、T1<TA≦TBを満たしている実施例1〜6は、比較例1〜3に比べて、画像濃度及び耐ブロッキング性に優れていることがわかった。
(図1、図2について)
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
(図3について)
101 インクジェット記録部
102 給紙装置
103 加熱乾燥部
104 加熱加圧部
105 巻取り装置
110 記録媒体
112、114 用紙搬送部
131A、131B ヒートローラー
132A 温風装置
133 加圧ローラー
特開2011−105866号公報 米国特許出願公開第2016/0017075号明細書 特開2010−240862号公報

Claims (10)

  1. カーボンブラック、樹脂及び有機溶剤を含有するインクを吐出し形成された画像を加熱乾燥する加熱乾燥工程と、前記加熱乾燥工程を行った画像を加熱加圧する加熱加圧工程とを有する画像形成方法であって、
    前記加熱乾燥工程における加熱温度をTAとし、前記加熱加圧工程における加熱温度をTBとし、前記インクの乾固物のガラス転移温度をT1としたとき、TA、TB及びT1が以下に記載の関係式を満たすことを特徴とする画像形成方法。
    1<TA≦TB
  2. 前記加熱加圧工程における加熱温度TBとインク乾固物のガラス転移温度T1との関係がTB−T1≧50℃であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
  3. 前記加熱乾燥工程における加熱温度TAと加熱加圧工程における加熱温度TBの関係がTB−TA≧20℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
  4. 前記加熱乾燥工程における加熱温度TAが80℃以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像形成方法。
  5. 前記加熱乾燥工程から加熱加圧工程に移行するまでの時間が1000ms以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成方法。
  6. 前記加熱加圧工程において、前記画像と接触して該画像を加熱加圧する部材を用い、前記部材の前記画像と接触する面がポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、ポリジメチルシロキサン樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像形成方法。
  7. 前記加熱加圧工程における加圧圧力が3kPa/cm2以上10kPa/cm2以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像形成方法。
  8. 前記インク乾固物のガラス転移温度T1が30℃以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の画像形成方法。
  9. カーボンブラック、樹脂及び有機溶剤を含有するインクを吐出し形成された画像を加熱乾燥する加熱乾燥手段と、前記加熱乾燥を行った画像を加熱加圧する加熱加圧手段とを有する画像形成装置であって、
    前記加熱乾燥手段および前記加熱加圧手段は、加熱温度を調整する制御部を有し、
    前記加熱乾燥手段における加熱温度をTAとし、前記加熱加圧手段における加熱温度をTBとし前記インクの乾固物のガラス転移温度をT1としたとき、TA、TB及びT1が以下に記載の関係式を満たすことを特徴とする画像形成装置。
    1<TA≦TB
  10. 前記加熱加圧手段において、前記画像と接触して該画像を加熱加圧する部材を有し、前記部材の前記画像と接触する面がポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、ポリジメチルシロキサン樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
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