JP2020128320A - マグネシア・スピネル質耐火物 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、水和反応を抑制でき、組織脆化を低減して耐摩耗性を向上できるマグネシア・スピネル質耐火物を提供することにある。【解決手段】本発明のマグネシア・スピネル質耐火物は、MgOを40〜60質量%含有する電融マグネシア・スピネル原料中のペリクレース粒表面の少なくとも一部がスピネルで被覆された組織を有する電融マグネシア・スピネル原料を10〜50質量%と、マグネシア質原料50〜90質量%を含有してなることを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、セメントロータリーキルンをはじめとする各種窯炉に用いることができるマグネシア・スピネル質耐火物に関するものである。
セメントロータリーキルンの内張り耐火物には、これまでマグネシア・クロム質耐火物が主に使用されてきたが、クロムフリー化の推進により、現在はマグネシア・スピネル質耐火物が主流となっている。マグネシア・スピネル質耐火物は耐食性と耐スポーリング性に優れており、クロム廃棄物の問題もないためセメントロータリーキルンのほか、製鋼用の二次精錬用容器等にも広く使用されている。
マグネシア・スピネル質耐火物として、例えば、特許文献1には、耐食性を低下させることなく耐スポーリング性に優れたスピネル含有耐火物を得るため、MgO55〜85%、Al2O315〜45%のMgOリッチ電融スピネルを5〜100%含有させたスピネル含有耐火物(請求項1);MgOリッチ電融スピネルの含有量が5%以上で100%未満であり、残部が塩基性原料とアルミナ微粉とからなる前記スピネル含有耐火物(請求項2)が開示されている。
また、特許文献2には、セメント焼成用キルンれんがなど耐消化性が要求される耐火物用の原料として、MgOが98〜29%、Al2O3が1〜70%、SiO2が0.1〜1.0%で、B2O3の重量%とCaO/SiO2モル比を特定の範囲としたスピネル・ペリクレーズ質クリンカーが開示されている。また、特許文献2の実施例および比較例のスピネル・ペリクレーズ質クリンカーのB2O3含有量は、0.005〜0.09%の範囲内にある。
さらに、特許文献3には、高温度域におけるMgOとCとの反応による組織劣化を抑制するため、MgO/Al2O3の重量比が50/50〜95/5で、MgOとAl2O3との合量が95重量%以上の電融マグネシア・スピネル原料であって、該電融マグネシア・スピネル原料であって、該電融マグネシア・スピネル原料に含有されるペリクレース粒の少なくとも一部がスピネルで被覆された構造を有することを特徴とする電融マグネシア・スピネル原料(請求項1);前記電融マグネシア・スピネル原料を10〜80重量%、黒鉛を3〜60重量%含有し、残部をマグネシア原料で構成することを特徴とするマグネシア・スピネル・カーボンれんが(請求項2)が開示されている。
従来のマグネシア・スピネル質耐火物は、保管中にマグネシアが大気中の水分と反応し膨張して亀裂が発生する、いわゆる「消化」と呼ばれる現象が発生することがある。また、セメントロータリーキルンは、産業廃棄物の処理装置としての重要性も高まっており、原燃料として装入される産業廃棄物に起因するサルファー成分により、内張り耐火物を構成するMgOリッチスピネル中のペリクレースが消失し、組織脆化が生じ摩耗損傷が増大する問題もある。
例えば、特許文献1に開示されているスピネル含有耐火物は、耐食性と耐スポーリング性には優れるものの、保管中にマグネシアが水和するという問題がある。
また、特許文献2に開示されたスピネル・ペリクレーズ質クリンカーは、その[0005]段落にも記載されているように、スピネルとペリクレーズを主構成鉱物として含む焼結体であり、電融マグネシア・スピネル原料とは組織が異なるものであり、CaO/SiO2のモル比と、B2O3並びにSiO2の含有量をコントロールして水和を抑制するものである。しかしながら、B2O3とSiO2は、組織を脆化させ耐用性を低下させるという問題がある。ここで、特許文献2のスピネル・ペリクレーズ質クリンカーでは、B2O3含有量がゼロの場合も含まれているが、この場合のCaO/SiO2モル比は0〜0.75の範囲内に限定されている。
さらに、特許文献3に開示された電融マグネシア・スピネル原料は、マグネシアとカーボンの酸化還元反応による揮発消失による損耗を低減することを目的とするものであるが、本発明者らの知見によれば、この電融マグネシア・スピネル原料は、MgO/Al2O3の重量比が50/50〜95/5の範囲内にあり、このMgO/Al2O3の重量比の全般にわたりペリクレースの水和反応を同レベルで抑制することができない。
また、特許文献2に開示されたスピネル・ペリクレーズ質クリンカーは、その[0005]段落にも記載されているように、スピネルとペリクレーズを主構成鉱物として含む焼結体であり、電融マグネシア・スピネル原料とは組織が異なるものであり、CaO/SiO2のモル比と、B2O3並びにSiO2の含有量をコントロールして水和を抑制するものである。しかしながら、B2O3とSiO2は、組織を脆化させ耐用性を低下させるという問題がある。ここで、特許文献2のスピネル・ペリクレーズ質クリンカーでは、B2O3含有量がゼロの場合も含まれているが、この場合のCaO/SiO2モル比は0〜0.75の範囲内に限定されている。
さらに、特許文献3に開示された電融マグネシア・スピネル原料は、マグネシアとカーボンの酸化還元反応による揮発消失による損耗を低減することを目的とするものであるが、本発明者らの知見によれば、この電融マグネシア・スピネル原料は、MgO/Al2O3の重量比が50/50〜95/5の範囲内にあり、このMgO/Al2O3の重量比の全般にわたりペリクレースの水和反応を同レベルで抑制することができない。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、水和反応を抑制でき、組織脆化を低減して耐摩耗性を向上できるマグネシア・スピネル質耐火物を提供することにある。
本発明者らは、マグネシア・スピネル質耐火物の原料として特定のMgO含有量および組織を有する電融マグネシア・スピネル原料を使用すると、長期保管によっても「消化」現象が発生せず、サルファー等による組織脆化を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、MgOを40〜60質量%含有する電融マグネシア・スピネル原料中のペリクレース粒表面の少なくとも一部がスピネルで被覆された組織を有する電融マグネシア・スピネル原料を10〜50質量%と、マグネシア質原料50〜90質量%を含有してなることを特徴とするマグネシア・スピネル質耐火物にある。
本発明のマグネシア・スピネル質耐火物によれば、水和反応を抑制でき、組織脆化を低減でき、かつ耐摩耗性を向上することができるという効果を奏する。
本発明のマグネシア・スピネル質耐火物は、MgOを40〜60質量%含有する電融マグネシア・スピネル原料中のペリクレース粒表面の少なくとも一部がスピネルで被覆された組織を有する電融マグネシア・スピネル原料(以下、「スピネルコーティングペリクレース」と記載する)と、マグネシア質原料と、バインダーとを所定の配合割合で混練し、所定の形状に成形し、焼成することにより得られる焼成品である。
本発明のマグネシア・スピネル質耐火物に使用するスピネルコーティングペリクレースは、MgOを40〜60質量%、好ましくは45〜55質量%含有する。スピネルコーティングペリクレースのMgO含有量が40質量%未満であると、耐食性が低下するために好ましくない。また、スピネルコーティングペリクレースのMgO含有量が60質量%を超えるとペリクレースがスピネルコーティングペリクレースの粒表面に露出し易くなり、耐水和性、耐サルファー性が低下するために好ましくない。なお、スピネルコーティングペリクレースの残部は、不可避不純物を除いて主としてAl2O3から構成される。
本発明のマグネシア・スピネル質耐火物において、スピネルコーティングペリクレースの配合量は、10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%の範囲内である。ここで、スピネルコーティングペリクレースの配合量が10質量%未満であると、耐スポーリング性が低下するために好ましくない。また、スピネルコーティングペリクレースの配合量が50質量%を超えると、耐食性が低下するために好ましくない。
次に、本発明のマグネシア・スピネル質耐火物に使用するマグネシア質原料は、特に限定されるものではなく、市販されている天然マグネシア、焼結マグネシア、電融マグネシア等のマグネシアを主体としたものでMgO含有量が90質量%以上であればいずれのものも使用できる。また、これらの2種以上を併用することもできる。マグネシア質原料のMgO含有量が90質量%未満であると、耐食性が低下するために好ましくない。なお、MgO含有量が97質量%以上のものを使用することが好ましい。
上述のような原料から構成される本発明のマグネシア・スピネル質耐火物において、Al2O3含有量は、3〜25質量%、好ましくは10〜17質量%の範囲内とする。Al2O3含有量が3質量%未満であると、耐スポーリング性が低下するために好ましくない。また、Al2O3含有量が25質量%を超えると、耐食性が低下するために好ましくない。
上述のような原料から構成される本発明のマグネシア・スピネル質耐火物は、慣用の方法により製造することができる。例えば、バインダーとしては、公知・慣用の有機バインダーまたは無機バインダーを使用することができる。有機バインダーとしては、例えば、ピッチ、フェノール樹脂、糖蜜、パルプ廃液、デキストリン、メチルセルロース類、ポリビニルアルコール等を、無機バインダーとしては、例えば、けい酸ナトリウム、けい酸カリウム、苦汁(MgCl2)、アルミン酸ソーダ、りん酸アルミニウム等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
上述のような原料とバインダーからなる混練物の成形には、例えば、衝撃圧プレスであるフリクションプレス、スクリュープレスあるいはハイドロスクリュープレス等、静圧プレスである油圧プレスやトグルプレス等を使用することができる。さらに、ランマープレスや振動プレス、CIPと呼ばれる成形機でも成形することもできる。これらの成形機には、真空脱気装置や温度制御装置(加温や冷却もしくは保温)等を付ける場合もある。成形機による成形圧力や締め回数は、成形される煉瓦の大きさ、原料の種類、配合量、バインダーの種類、配合量、成形温度、成形機の種類や規模等により勘案されるものである。
上記混練物を所定の形状に成形した後、焼成することにより本発明のマグネシア・スピネル質耐火物を得ることができる。このときの加熱機としては電気加熱式、ガス加熱式、オイル加熱式などのバッチ式単独窯、例えばシャトルキルンやカーベルキルン等、連続式であればトンネル窯等が最適である。もちろん、温度が十分に調整可能で均質加熱ができる加熱炉であればどのような形式の物でも使用できる。なお、焼成温度は、1400℃〜2000℃未満の範囲内が望ましい。焼成温度が1400℃未満では充分に焼結せず、2000℃以上となると、焼成中にれんがが変形するなどの問題が発生するため好ましくない。より好ましくは、焼成温度は、1500℃〜1800℃の範囲内である。
表1に使用したマグネシア質原料、表2に使用したスピネルコーティングペリクレースA〜Eの化学組成をそれぞれ示す。また、表3、表4には、マグネシア質原料とスピネルコーティングペリクレースの配合割合並びに得られたマグネシア・スピネル質耐火物の評価試験結果を示す。
マグネシア質原料と、スピネルコーティングペリクレースA〜Eを所定の割合で配合した後、バインダーとして糖蜜を外掛けで3質量%添加した配合物を混練し、得られた混練物を油圧プレスで成形圧力118MPaで20回加圧し、115×65×80mmの直方体形状に成形した。成形後、200℃で24時間乾燥し、次いで、電気加熱式の箱型電気炉を用いて所定の温度まで5℃/分で昇温、10時間保持した後、5℃/分で500℃まで冷却し、その後自然放冷して供試体を得た。
次に、得られた供試体について、以下のようにして諸特性を評価した:
「耐スポーリング性」は、供試体を一辺50mmの立方体形状に加工し、1200℃で15分間加熱→3分間水冷→12分間空冷を1サイクルとし、割れるまでのサイクル数で評価したものである。回数が多いものほど耐スポーリング性に優れることを示す。なお、10回未満を「×」、10〜15回を「○」、16回を超えるものを「◎」とした;
「耐食性」は、酸素−プロパンバーナー加熱による回転ドラム侵食試験で評価したものである。試験条件は、温度1750℃、5時間で、侵食剤には市販のポルトランドセメントを用い、1時間毎に新しいものに取り換えた。試験終了後、供試体を切断して侵食量を測定し、比較品1のマグネシア・スピネル質耐火物を100とした耐食性指数で評価し、80%未満を「×」、80〜90%未満を「△」、90〜95%未満を「○」、95%以上を「◎」とした;
「耐サルファー性」は、るつぼに侵食材(K2SO4とカーボンブラックの混合物)を入れ、その上に供試体を載置し、1300℃で2時間加熱し、加熱終了後、供試体を切断し、変質層厚みを測定し、比較品1のマグネシア・スピネル質耐火物の変質層厚みを100とする指数で表し、指数が90未満を「◎」、90〜100を「○」、100を超えたものを「×」と評価した;
「耐水和性は、オートクレーブ試験で評価したものである。試験条件は、0.3MPa(ゲージ圧)で3時間とした。試験終了後、形状を維持しているものを「◎」、崩壊したものを「×」と評価した。
「耐スポーリング性」は、供試体を一辺50mmの立方体形状に加工し、1200℃で15分間加熱→3分間水冷→12分間空冷を1サイクルとし、割れるまでのサイクル数で評価したものである。回数が多いものほど耐スポーリング性に優れることを示す。なお、10回未満を「×」、10〜15回を「○」、16回を超えるものを「◎」とした;
「耐食性」は、酸素−プロパンバーナー加熱による回転ドラム侵食試験で評価したものである。試験条件は、温度1750℃、5時間で、侵食剤には市販のポルトランドセメントを用い、1時間毎に新しいものに取り換えた。試験終了後、供試体を切断して侵食量を測定し、比較品1のマグネシア・スピネル質耐火物を100とした耐食性指数で評価し、80%未満を「×」、80〜90%未満を「△」、90〜95%未満を「○」、95%以上を「◎」とした;
「耐サルファー性」は、るつぼに侵食材(K2SO4とカーボンブラックの混合物)を入れ、その上に供試体を載置し、1300℃で2時間加熱し、加熱終了後、供試体を切断し、変質層厚みを測定し、比較品1のマグネシア・スピネル質耐火物の変質層厚みを100とする指数で表し、指数が90未満を「◎」、90〜100を「○」、100を超えたものを「×」と評価した;
「耐水和性は、オートクレーブ試験で評価したものである。試験条件は、0.3MPa(ゲージ圧)で3時間とした。試験終了後、形状を維持しているものを「◎」、崩壊したものを「×」と評価した。
本発明品1〜3は、スピネルコーティングペリクレースCを本発明の範囲内で変化させたもの、本発明品4および5は、マグネシア質原料の種類を変化させたもの、本発明品6および7は、焼成温度を変化させたもの、本発明品8および9は、スピネルコーティングペリクレースの種類を変化させたものである。本発明品は、何れも耐スポーリング性、耐食性を維持し、耐消化性が良好であった。
比較品1は、スピネルコーティングペリクレースCの含有量が本発明の範囲を下回るものであり、耐スポーリング性が低下した。比較品2は、スピネルコーティングペリクレースCの含有量が本発明の範囲を上回るものであり、耐食性が低下した。比較品3は、焼成温度が1350℃の場合であり、耐食性が低下していた。比較品4は、焼成温度が2000℃の場合であり、耐スポーリング性が低下していた。比較品5は、スピネルコーティングペリクレースの組成が本発明の範囲を外れるものであり、耐スポーリング性、耐食性が低下していた。比較品6も同様にスピネルコーティングペリクレースの組成が本発明の範囲を外れるものであり、耐サルファー性、耐水和性が低下していた。
以上の結果から、本発明によるマグネシア・スピネル質耐火物の優位性は明らかである。
Claims (1)
- MgOを40〜60質量%含有する電融マグネシア・スピネル原料中のペリクレース粒表面の少なくとも一部がスピネルで被覆された組織を有する電融マグネシア・スピネル原料を10〜50質量%と、マグネシア質原料50〜90質量%を含有してなることを特徴とするマグネシア・スピネル質耐火物。
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JP2019022335A JP2020128320A (ja) | 2019-02-12 | 2019-02-12 | マグネシア・スピネル質耐火物 |
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Cited By (1)
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CN116332660A (zh) * | 2023-03-29 | 2023-06-27 | 巩义通达中原耐火技术有限公司 | 一种增强挂窑皮性能的方镁石-尖晶石原料及其制备方法 |
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2019
- 2019-02-12 JP JP2019022335A patent/JP2020128320A/ja active Pending
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CN116332660A (zh) * | 2023-03-29 | 2023-06-27 | 巩义通达中原耐火技术有限公司 | 一种增强挂窑皮性能的方镁石-尖晶石原料及其制备方法 |
CN116332660B (zh) * | 2023-03-29 | 2024-03-12 | 巩义通达中原耐火技术有限公司 | 一种增强挂窑皮性能的方镁石-尖晶石原料及其制备方法 |
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