JP2020128048A - めっき付き樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】めっき付き樹脂成形品におけるめっきの剥離を抑制すること。【解決手段】ゴム及びポリマーを含有する混合材料40を材料とし、凸状をなす意匠部11を有する表面10fと前記表面10fに背向する裏面10bとを有する樹脂成形品10と、前記意匠部11上に形成されているめっき層20と、を有するめっき付き樹脂成形品1を製造する方法であって、前記樹脂成形品10の前記裏面10bのうち、前記意匠部11と対称な位置に、凸状をなすバランサー部12を設ける、めっき付き樹脂成形品1の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、めっき付き樹脂成形品の製造方法に関する。
樹脂成形品にめっき層を形成しためっき付き樹脂成形品は、めっき層に由来して意匠性に優れ、かつ、軽量化が可能であるために、近年、金属部材にかわり様々な分野で用いられている。
めっき付き樹脂成形品に用いられる樹脂材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂ともいう、以下、ABSと略する)が一般的である(例えば、特許文献1、2参照)。
ABSは、ゴム及びポリマーを含有する混合材料であり、アクリロニトリル及びスチレンを有するポリマーのマトリックス中にブタジエンゴムが点在する、所謂海島構造を有するとされている。このうちABSの表面にあるブタジエンゴムをエッチングにより除去すれば、ABSの表面には多数の孔が形成される。そして、多数の孔が形成されたABSの当該表面にめっき層を形成することで、孔に入り込んだめっき層によりアンカー効果が生じて、めっき層のABSからの剥離が抑制されるとされている。つまり、ABSは、上記のようにゴム及びポリマーを含有することに因り、めっき層との密着性に優れると考えられている。
特開2017−206752号公報 特開2018−507919号公報
本発明の発明者は、上記したようなゴム及びポリマーを含有する混合材料を用いて様々な形状の樹脂成形品を製造した。そして、これら様々な形状の樹脂成形品にめっき層を形成して、当該めっき層の剥離強度を調べた。その結果、発明者は、上記の混合材料を用いた樹脂成形品であっても、樹脂成形品の形状によっては、めっき層の剥離が生じる場合があることに気付いた。
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、めっき付き樹脂成形品におけるめっき層の剥離を抑制する技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明のめっき付き樹脂成形品の製造方法は、
ゴム及びポリマーを含有する混合材料を材料とし、凸状をなす意匠部を有する表面と前記表面に背向する裏面とを有する樹脂成形品と、
前記意匠部上に形成されているめっき層と、を有するめっき付き樹脂成形品を製造する方法であって、
前記樹脂成形品の前記裏面のうち、前記意匠部と対称な位置に、凸状をなすバランサー部を設ける方法である。
本発明の製造方法によると、めっき付き樹脂成形品におけるめっき層の剥離を抑制できる。
実施例1のめっき付き樹脂成形品を模式的に表す説明図である。 実施例1のめっき付き樹脂成形品を図1中のA−A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。 実施例1の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例2のめっき付き樹脂成形品を図1中のA−A位置と同位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。 実施例2の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例3の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例4の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例5のめっき付き樹脂成形品を模式的に表す説明図である。 実施例5の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例6の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例7の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例8の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例9の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例10の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例11の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例12の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例13の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 実施例14の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 比較例1の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。 キャビティ内における流体状の混合材料の挙動を説明する説明図である。 キャビティ内における流体状の混合材料の挙動を説明する説明図である。 キャビティ内における流体状の混合材料の挙動を説明する説明図である。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
既述したように、本発明の発明者は、ゴム及びポリマーを含有する混合材料を用いた樹脂成形品であっても、樹脂成形品の形状によっては、めっき層の剥離が生じる場合があることに気付いた。
具体的には、本発明者は、凸状をなす意匠部を表面に有する樹脂成形品を成形し、当該意匠部上にめっき層を形成して、めっき付き樹脂成形品を製造した。そして、当該めっき付き樹脂成形品についてめっき層の剥離強度を評価した。すると、当該めっき付き樹脂成形品においては、めっき層とともに樹脂成形品の表層部分が剥離する現象がみられた。
本発明者は、当該剥離の原因を究明すべく鋭意研究を重ねて、この樹脂成形品においては、意匠部近傍の部分の強度が他の部分の強度よりも低くなっている可能性があることに想到した。そして、当該樹脂成形品の強度低下の生じる原因が、樹脂成形品の混合材料に含まれるゴムにあると考えた。
ゴム及びポリマーを含有する混合材料を材料とする樹脂成形品において、ゴム部分の強度は比較的低いが、ポリマー部分の強度は比較的高い。したがって、ゴムがポリマーのマトリックス中に充分に分散されていれば、隣り合うゴム同士がポリマーによって分断され、かつ、ポリマーのマトリックスによって樹脂成形品全体が補強されるために、樹脂成形品の全体としての強度は充分に高くなる。しかし、ゴムが偏在していたり、伸び変形したゴムが配向していたりする場合には樹脂成形品に強度低下が生じる場合がある。例えばゴムが配向している場合には、樹脂成形品の内部に低強度かつ歪んだゴムの層が形成され、当該ゴムの層を起点として樹脂成形品が凝集破壊し、その一部が他の部分から剥離する可能性がある。また、ABSのマトリックス中のゴムが扁平に歪んだ状態で配向していれば、上記したようにABSのエッチング及びめっきを経て得られためっき層に形成されるアンカーも又、扁平な浅い形状であると考えられる。当該形状のアンカーでは、充分な強度を確保できず、樹脂成形品とめっき層との密着性を高めるのが困難になる可能性がある。
発明者は、この考えをさらに進めて、上記した歪んだゴムの層が形成される理由が、樹脂成形品の成形時におけるキャビティ内での混合材料の流動状態にあると考えた。
樹脂成形品を成形する際には、図20に示すように、流体状の混合材料40がキャビティ35内を流動する。この混合材料40の流動先端部40t(所謂フローフロント)は、後側から混合材料40が供給されることで伸長する。このため、当該流動先端部40tにある混合材料40は、ゴム41の伸長が生じる等、他の位置にある混合材料40とは異なる挙動を示すと考えられる。
先ず、図20に示すように、樹脂成形品を成形するためのキャビティ35において、その容積が一定である区間では、流体状の混合材料40における流動先端部40tは、キャビティ35の略中央部を通る。したがってこの場合には、流動先端部40tにある混合材料がキャビティ35を区画する成形型の型面30f、30bに到達するまで要する時間は比較的長いといえる。また、この場合に型面30f、30bにまで到達する混合材料40は流動先端部40tから離れた位置にあり、当該位置にあるゴム41に作用する力は流動先端部40tにあるゴム41に作用する力に比べて緩和されるといえる。
したがって、流動先端部40tにおいて伸長したゴム41は、型面30f、30bに到達するまでにそのゴム弾性によって徐々に球状に戻り、その状態で混合材料40は型面30f、30bによって冷却され固められると考えられる。よってこの場合には、上記しためっき層のアンカー効果は充分に発揮されると考えられる。
ところで、キャビティ35が上記した凸状をなす意匠部を成形するための型面(意匠型面部31と称する)を有する場合、当該意匠型面部31の内側において、キャビティ35の容積は急激に増大する。このため当該意匠型面部31のある区間においては、混合材料40の流動先端部40tは、図21に示すように、この容積増大の影響を受け、意匠型面部31に近づくと考えられる。流動先端部40tが意匠型面部31に近づいていれば、流体状の混合材料40は当該意匠型面部31およびその近傍の型面30fに比較的短時間で到達すると考えられ、流体状の混合材料40は流動先端部40tに近い位置で意匠型面部31及びその近傍の型面31によって急激に冷却されると考えられる。つまりこの場合には、流動先端部40tにおいて伸長したゴム41が球状に戻る前に、混合材料40が冷却され固められてしまうと考えられる。したがって、樹脂成形品における凸状の意匠部の近傍では、ゴムが伸長した状態のままで存在したり、ゴムの配向や偏在が生じたりすると推測される。そしてその結果、樹脂成形品の表面近傍の部分において、凸状の意匠部の近傍には、比較的低強度の歪んだゴムの層が形成されると考えられる。
発明者は、上記の考えを基に、樹脂成形品の形状を工夫することで、成形時における混合材料40の流動先端部40tの位置をコントロールすることを志向した。具体的には、意匠型面部31による流動先端部40tへの影響を緩和することを目指して、図22に示すように、樹脂成形品の裏面を成形する成形型の裏型面30bのうち、意匠部を成形する凹状の意匠型面部31と対称な位置に、凸状をなすバランサー部を成形するための凹状のバランサー型面部32を設けた。樹脂成形品についていえば、樹脂成形品の裏面のうち、凸状をなす意匠部と対称な位置に、凸状をなすバランサー部を設けた。
後述する実施例の欄でも説明するが、こうすることで、実際に、めっき層の剥離強度が向上しためっき付き樹脂成形品を得ることができた。
以下、本発明のめっき付き樹脂成形品の製造方法、めっき付き樹脂成形品用成形型、及び、めっき付き樹脂成形品について説明する。なお、本明細書では、必要に応じて、本発明のめっき付き樹脂成形品の製造方法を本発明の製造方法と称し、本発明のめっき付き樹脂成形品用成形型を本発明の成形型と称する。
本発明の製造方法では、凸状をなす意匠部を有する表面と当該表面に背向する裏面とを有する樹脂成形品と、当該意匠部上に形成されているめっき層と、を有するめっき付き樹脂成形品を製造する方法である。本発明の製造方法において、樹脂成形品の材料としては、ゴム及びポリマーを含有する混合材料を用いる。
混合材料は、ゴム及びポリマーを含有すれば良く、ゴムの種類やポリマーの種類、各成分の含有割合等は特に問わない。混合材料としては、既述したABSや、ポリカーボネートとABSとの混合材料(所謂PC−ABS)、ABSのブタジエンゴムにかえてアクリルゴムを用いたアクリロニトリル−スチレン−アクリレート樹脂(所謂ASA)、ABSのブタジエンゴムにかえてエチレン系ゴムであるEPDMを用いたアクリロニトリル−エチレン−スチレン樹脂(所謂AES)等を例示することができる。
なお、混合材料に含有されるゴムの割合が高い程、上記したゴムに起因する樹脂成形品の強度低下の問題が生じ易くなると考えられるため、混合材料としてゴムの割合が高いものを用いる場合に、本発明の製造方法が特に有効だと考えられる。具体的には、混合材料におけるゴムの含有割合として、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上の各範囲を例示することができる。ゴムの含有割合に上限はないが、強いて挙げるとすると、70質量%以下、50質量%以下、30質量%以下の各範囲を例示することができる。
樹脂成形品は、表面と、裏面とを有するものであり、このうち表面には凸状をなす意匠部を有し、かつ、裏面には凸状をなすバランサー部を有する。意匠部は、樹脂成形品のうち表面側に形成され、表側に突出する部分ということができる。また、バランサー部は、樹脂成形品のうち裏面側に形成され、裏側に突出する部分ということができる。樹脂成形品の厚さ、意匠部の突出高さ及び数、並びに、バランサー部の突出高さ及び数は特に問わないが、樹脂成形品の厚さとして1〜7mmの範囲内、2〜5mmの範囲内を例示できる。また、意匠部及びバランサー部の突出高さとしては、0.1mm〜0.5mmの範囲内、0.1〜0.3mmの範囲内を例示できる。
なお、複数の意匠部を設ける場合、各意匠部の突出高さは異なっていても良いし同じでも良い。各意匠部の突出高さが異なる場合、そのバラツキとして、0.1mm以下、0.05mm以下、0.03mm以下、0.01mm以下の各範囲を例示できる。なお、当該突出高さのバラツキの下限値は0mm超の範囲であるが、バラツキはなくても良い。バランサー部についても同様である。
各意匠部の形状は異なっていても良いし同じでも良い。更に、同じ意匠部のなかに突出高さの異なる部分がある等、樹脂成形品の厚さ方向における意匠部の断面形状は一定でなくても良い。バランサー部についても同様である。
バランサー部は、意匠部と対称な位置に設けられれば良い。ここでいう対称な位置とは、樹脂成形品の表−裏方向において対称または略対称な位置にあることを意味し、当該位置の多少のズレは許容される。具体的には、意匠部の中心線とバランサー部の中心線とは、その距離が1mm以下となるように近接した位置にあるのが好ましく、当該中心の距離は1mm未満であるのがより好ましい。
なお、当該中心線は樹脂成形品の表−裏方向に延びる直線とし、意匠部及びバランサー部が偏心した形状である場合には、その重心を通り樹脂成形品の表−裏方向に延びる直線を当該中心線とする。意匠部の中心線とバランサー部の中心線とのより好ましい距離として、0.5mm以下、0.2mm以下、0.1mm以下の各範囲が挙げられる。意匠部及びバランサー部は、互いの中心線が同一直線上にあるのが特に好ましい。
意匠部を複数設ける場合、隣接する意匠部同士が近接していれば、複数の意匠部を一つの意匠部群とみなして上記の中心線を設定することができる。具体的には、隣接する意匠部同士の距離が0.5mm以下である複数の意匠部を、一つの意匠部群とみなし得る。バランサー部を複数設ける場合も同様である。
意匠部に対するバランサー部の大きさ及び数は特に問わない。例えば、バランサー部は1つの意匠部に対して1つのみを設けても良いし、1つの意匠部に対して複数を設けても良い。バランサー部の体積は意匠部の体積よりも小さくても良いし、意匠部の体積よりも大きくても良い。
好ましくは、バランサー部は1つの意匠部に対して1つ設けられ、かつ、バランサー部の体積は意匠部の体積と同程度であるのが良い。より具体的には、バランサー部の体積は意匠部の体積の50%以上であるのが好ましく、75%以上であるのがより好ましく、100%以上であるのが特に好ましい。バランサー部の体積を意匠部の体積よりも大きくするのも好ましい。例えば、バランサー部の体積の好ましい範囲として、意匠部の体積の100%超、120%以上、150%以上の各範囲を挙げることができる。
本発明の製造方法では、樹脂成形品の意匠部上にめっき層を形成する。めっき層は意匠部上に形成されれば良く、樹脂成形品の表面のうち意匠部以外の部分の上にも形成しても良い。めっき層は意匠部の一部の上に形成されれば良く、意匠部の上全体に形成されなくても良い。更に、めっき層は樹脂成形品の表面の上だけでなく裏面の上にも形成し得る。
めっき層は、樹脂成形品上に形成できるものであれば良く、例えば、無電解めっき層でも良いし、無電解めっき層とその上に形成された電解めっき層との複合層であっても良い。本発明の製造方法では、めっき層の種類や厚さ等は特に問わない。また、めっき層を形成する方法もまた、特に限定されず、公知の方法を用いれば良い。
本発明の成形型は、上記した本発明の製造方法に用い得る。本発明の成形型は、樹脂成形品の表面を成形する表型面と、裏面を成形する裏型面とを有する。表型面には、凸状の意匠部を成形するための凹状の意匠型面部があり、裏型面には、凸状のバランサー部を成形するための凹状のバランサー型面部がある。意匠型面部とバランサー型面部とは、上記した対称な位置にあれば良く、表型面と裏型面との距離、意匠型面部の深さ及び数、並びに、バランサー型面部の深さ及び数は特に問わない。表型面と裏型面との距離は、例えば、1〜7mmの範囲内、2〜5mmの範囲内にすることができる。また、意匠型面部の深さ、及び、バランサー型面部の深さとしては、0.1mm〜0.5mmの範囲内、0.1〜0.3mmの範囲内を例示できる。
複数の意匠型面部を設ける場合、各意匠型面部の深さは異なっていても良いし同じでも良い。バランサー型面部についても同様である。また、各意匠型面部や各バランサー型面部の深さが異なる場合のバラツキの好ましい範囲、及び当該バラツキの下限値は、意匠部やバランサー部の突出高さのバラツキと同様である。
バランサー型面部の中心線と、意匠型面部の中心線とは、その距離が1mm以下となるように近接した位置にあるのが好ましく、当該中心線の距離は1mm未満であるのがより好ましい。当該中心線は、成形型の表−裏方向に延びる直線であり、意匠型面部及びバランサー型面部が偏心した形状である場合には、その重心を通り成形型の表−裏方向に延びる直線を当該中心線とする。意匠型面部の中心線とバランサー型面部の中心線との好ましい距離として、0.5mm以下、0.2mm以下、0.1mm以下の各範囲が挙げられる。意匠型面部及びバランサー型面部もまた、互いの中心線が同一直線上にあるのが特に好ましい。
意匠型面部やバランサー型面部を複数設ける場合、上記の意匠部やバランサー部を複数設ける場合に準じて、複数の意匠型面部を一つの意匠型面部群とみなしたり、複数のバランサー型面部を1つのバランサー型面部群とみなして上記の中心線を設定することができる。
バランサー型面部の大きさもまた特に問わないが、バランサー型面部の容積は意匠型面部の容積と同程度であるのが好ましい。具体的には、バランサー型面部の容積は意匠型面部の容積の50%以上であるのが好ましく、75%以上であるのがより好ましく、100%以上であるのが特に好ましい。バランサー型面部の容積を意匠型面部の容積よりも大きくするのも好ましく、例えば、バランサー型面部の容積の好ましい範囲として、意匠型面部の容積の100%超、120%以上、150%以上の各範囲を挙げることができる。
上記した本発明の製造方法及び本発明の成形型で得られる本発明のめっき付き樹脂成形品は、樹脂成形品とめっき層とを有する。このうち樹脂成形品は、上記した意匠部及びバランサー部を有する。意匠部及びバランサー部の好ましい位置関係及び寸法は上述したとおりである。
なお、本発明は、めっき層を形成するための樹脂成形品の発明と捉えることもできる。この場合、本発明の樹脂成形品は、ゴム及びポリマーを含有する混合材料を材料とし、凸状をなす意匠部を有する表面と前記表面に背向する裏面とを有し、
前記裏面のうち、前記意匠部と対称な位置に、凸状をなすバランサー部が設けられている、樹脂成形品、ということができる。
以下、具体例を挙げて本発明の製造方法、成形型及びめっき付き樹脂成形品を説明する。
(実施例1)
図1は実施例1のめっき付き樹脂成形品を模式的に表す説明図である。図2は実施例1のめっき付き樹脂成形品を図1中のA−A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。図3は実施例1の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。
以下、実施例において、表、裏とは、図1に示す表、裏を意味する。
先ず実施例1のめっき付き樹脂成形品を説明する。
図1に示すように、めっき付き樹脂成形品1は、樹脂成形品10と、めっき層20とを有する。
樹脂成形品10は、ABSを材料とする。樹脂成形品10は、表面10fと裏面10bとを有し、このうち表面10fには凸状をなす意匠部11が設けられている。裏面10bには、意匠部11と対称な位置に、凸状をなすバランサー部12が設けられている。意匠部11とバランサー部12とは表−裏方向に対称な同形状であり、互いに表−裏方向に対称に配置されている。意匠部11の体積とバランサー部12の体積とは同じであり、意匠部11の中心線11cとバランサー部12の中心線12cとは図2に示すように同一直線上にある。
めっき層20は、樹脂成形品10の表面10f上に、意匠部11を含む当該表面10fの全面にわたって形成されている。めっき層20は無電解めっきにより形成された金属の層である。
実施例1のめっき付き樹脂成形品1において、樹脂成形品10の厚さL1は5mmであり、意匠部11の突出高さL2は0.25mmであり、意匠部11の幅L3は50mmであった。また、バランサー部12の突出高さL4は0.25mmであり、バランサー部12の幅L5は50mmであった。なお、樹脂成形品10の厚さL1とは、樹脂成形品10の表面10fと裏面10bとの距離の最大値を意味し、実施例1のめっき付き樹脂成形品1においては、意匠部11の突出端部からバランサー部12の突出端部までの距離である。
実施例1の成形型及び製造方法及を説明する。
実施例1の成形型3は、図3に示すように、樹脂成形品10の表面10fを成形するための表型面30fと、樹脂成形品10の裏面10bを成形するための裏型面30bとを有する。表型面30fは、意匠部11を成形するための凹状の意匠型面部31を有し、裏型面30bは、バランサー部12を成形するための凹状のバランサー型面部32を有する。表型面30fを有する表型3fと、裏型面30bを有する裏型3bとを組み合わせることで、キャビティ35が区画形成され、当該キャビティ35に流体状の混合材料40を注入し、その後、当該混合材料40を冷却して硬化させることで、樹脂成形品10が成形される。樹脂成形品10の表面10f上に、無電解めっきによりめっき層20を形成することで、実施例1のめっき付き樹脂成形品1が得られる。当該めっき層20は、表面10fの一部である意匠部11上にも形成される。
なお、無電解めっきに際しては、樹脂成形品10の表面10fの一部及び裏面10bに、必要に応じてマスキングを行っても良い。
図3に示すように、実施例1の成形型3において、意匠型面部31及びバランサー型面部32は、表−裏方向に対称な同形状であり、互いに表−裏方向に対称に配置されている。意匠型面部31の容積V1及びバランサー型面部32の容積V2は同じであり、意匠型面部31の中心線31c及びバランサー型面部32の中心線32cは、図3に示すように同一直線上にある。
なお、実施例1の成形型3における表型面30fと裏型面30bとの距離L11は、上記した樹脂成形品10の厚さL1と等しく、意匠型面部31の深さL12は意匠部11の突出高さL2と等しく、意匠型面部31の幅L13は意匠部11の幅L3と等しい。また、バランサー型面部32の深さL14はバランサー部12の突出高さL4と等しく、バランサー型面部32の幅L15はバランサー部12の幅L5と等しい。これは、以下の実施例及び比較例についても同様であるため、以下、樹脂成形品10及びめっき付き樹脂成形品1の寸法については必要に応じて割愛する。
実施例1の成形型3を用いた実施例1の製造方法によると、バランサー型面部32を設けることによって、樹脂成形品10における意匠部11及びその近傍の部分の強度を向上させることができ、めっき層20の剥離が抑制されためっき付き樹脂成形品1を得ることができる。また、実施例1のめっき付き樹脂成形品1は、樹脂成形品10における意匠部11及びその近傍の部分の強度に優れ、めっき層20の剥離が抑制されたものである。
(実施例2)
実施例2のめっき付き樹脂成形品は、バランサー部の位置および大きさ以外は、実施例1と概略同じである。また、実施例2の製造方法及び成形型は、バランサー型面部の位置および形状以外は実施例1と概略同じである。
図4は実施例2のめっき付き樹脂成形品を図1中のA−A位置と同位置で切断した様子を模式的に説明する説明図であり、図5は実施例2の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。
実施例2のめっき付き樹脂成形品1において、バランサー部12は、意匠部11の外縁に沿って、意匠部11を裏側から縁取るような狭幅形状を有する。断面図である図4においてはバランサー部12は2つあるように見えるが、実際には、一筆書き状(閉環状)に連続している。
したがって、図5に示すように、実施例2の成形型3におけるバランサー型面部32は、意匠型面部31の外縁に沿って、意匠型面部31を裏側から縁取るような狭幅形状を有する。そして、断面図である図5においてはバランサー型面部32は2つあるように見えるが、実際には、一筆書き状に連続している。
図4に示すようにバランサー部12の体積は意匠部11の体積よりも小さく、図5に示すようにバランサー型面部32の容積V2は意匠型面部31の容積V1よりも小さい。図4に示すようにバランサー部12の中心線12cは、意匠部11の中心線11cと同一直線上にある。図5に示すようにバランサー型面部32の中心線32cは意匠型面部31の中心線31cと同一直線上にある。
なお、既述したように、実施例2のめっき付き成形品におけるバランサー部12は一筆書き状に連続しているため、断面図である図4においてはバランサー部12は2つあるように見えるが、その中心線は中心線12cのみである。さらに、実施例2の成形型3におけるバランサー型面部32についても同様に、その中心線は中心線32cのみである。
実施例2の成形型3を用いた実施例2の製造方法によっても、樹脂成形品10における意匠部11及びその近傍の部分の強度を向上させることができ、めっき層20の剥離が抑制されためっき付き樹脂成形品1を得ることができる。また、実施例2のめっき付き樹脂成形品1もまた、樹脂成形品10における意匠部11及びその近傍の部分の強度に優れ、めっき層20の剥離が抑制されたものである。
(実施例3)
実施例3のめっき付き樹脂成形品は、バランサー部の位置および大きさ以外は、実施例2と概略同じである。また、実施例3の製造方法及び成形型は、バランサー型面部の位置および形状以外は実施例2と概略同じである。
図6は実施例3の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。以下、成形型及び製造方法を中心に実施例3を説明する。
図6に示すように、実施例3の成形型3におけるバランサー型面部12は、実施例2の成形型3におけるバランサー型面部12の一部のみを残し、他の部分を取り去ったものである。具体的には、実施例3の成形型3におけるバランサー型面部12は、意匠型面部31のうち混合材料40の流動方向における上流側に位置する部分を、裏側から縁取るような狭幅形状を有する。
バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積よりも小さい。また、バランサー型面部32の中心線32cは、意匠型面部31の中心線31cよりも、混合材料40の流動方向における上流側にある。
実施例3の成形型3を用いた実施例3の製造方法によっても、樹脂成形品10における意匠部11及びその近傍の部分の強度を向上させることができ、めっき層20の剥離が抑制されためっき付き樹脂成形品1を得ることができる。また、実施例3のめっき付き樹脂成形品1もまた、樹脂成形品10における意匠部11及びその近傍の部分の強度に優れ、めっき層20の剥離が抑制されたものである。
(実施例4)
実施例4のめっき付き樹脂成形品は、意匠部及びバランサー部を多数有するものであり、意匠部やバランサー部の形状及び数以外は、実施例1と概略同じである。実施例4の製造方法及び成形型もまた、意匠型面部及びバランサー型面部の形状及び数以外は、実施例1と概略同じである。
図7は実施例4の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。以下、成形型及び製造方法を中心に実施例4を説明する。
図7に示すように、実施例4の成形型3は1つの意匠型面部群31gと、1つのバランサー型面部群32gとを有する。意匠型面部群31gは凹状をなす多数の意匠型面部31で構成され、バランサー型面部群32gは略柱状をなす多数のバランサー型面部32で構成される。意匠型面部群31gに含まれる各意匠型面部31の形状は各々異なり、隣り合う意匠型面部31同士は互いに近接している。バランサー型面部群32gに含まれる各バランサー型面部32の形状もまた各々異なり、隣り合うバランサー型面部32同士もまた互いに近接している。意匠型面部群31gは、凹状をなし形状の異なる多数の意匠型面部31が密集してなることで、皮革のようなシボ状が反転したようにみえる。バランサー型面部群32gについても同様である。
バランサー型面部群32gの容積は意匠型面部群31gの容積と略同じである。また、バランサー型面部群32gの中心線32cは、意匠型面部群31gの中心線31cと同一直線上にある。
実施例4の成形型3を用いた実施例4の製造方法によっても、樹脂成形品10における意匠部11及びその近傍の部分の強度を向上させることができ、めっき層20の剥離が抑制されためっき付き樹脂成形品1を得ることができる。また、実施例4のめっき付き樹脂成形品1もまた、樹脂成形品10における意匠部11及びその近傍の部分の強度に優れ、めっき層20の剥離が抑制されたものである。
なお、実施例4の成形型3では、表型面30fの一部に反転シボ状をなす意匠型面部群31gが形成され、成形型3の表型面30fにおけるその他の部分は平坦面である。成形多画3の裏型面30bについても同様に、裏型面30bの一部に反転シボ状をなすバランサー型面部群32gが形成され、その他の部分は平坦面である。しかし、本発明の成形型及び製造方法においては、表型面30fの全面が上記の反転シボ状をなしても良い。この場合には、多数の意匠型面部31が表型面30fの全面にわたって設けられたものとみなし得る。同様に、裏型面30bの全面が上記の反転シボ状をなしても良い。
このような場合にも、バランサー型面部32を設けることによって、上記した実施例と同様の効果を奏し得る。
(実施例5)
実施例5のめっき付き樹脂成形品は、バランサー部の形状以外は実施例1と概略同じである。実施例5の製造方法及び成形型もまた、バランサー型面部の形状以外は実施例1と概略同じである。
図8は実施例5のめっき付き樹脂成形品を模式的に表す説明図である。図9は実施例5の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図である。
図8に示すように、実施例5のめっき付き樹脂成形品1は、複数のリブ120r及び複数のリブ121rが格子状に一体化されてなるバランサー部12を有する。複数のリブ120rは互いに平行でありかつ略等間隔に配置されている。複数のリブ121rもまた互いに平行でありかつ略等間隔に配置されている。バランサー部12は意匠部11の裏面において、意匠部11と対称な位置に設けられている。図8に示すように、リブ120rとリブ121rとは互いに略直交する方向に延び、このうちリブ120rは、図9に示す混合材料40の流動方向に略直交する方向に延びる。したがって、成形型3のバランサー型面部32のうちリブ120rを成形するためのリブ型面部320rもまた、混合材料40の流動方向に略直交する方向に延びる。
バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積と略同じである。また、意匠部11の中心線(図略)とバランサー部12の中心線(図略)とは同一直線上にあり、意匠型面部31の中心線31cとバランサー型面部32の中心線32cともまた同一直線上にある。
実施例5の成形型3を用いた実施例5の製造方法によっても、樹脂成形品10における意匠部11及びその近傍の部分の強度を向上させることができ、めっき層20の剥離が抑制されためっき付き樹脂成形品1を得ることができる。また、実施例5のめっき付き樹脂成形品1もまた、樹脂成形品10における意匠部11及びその近傍の部分の強度に優れ、めっき層20の剥離が抑制されたものである。
(実施例6)
実施例6のめっき付き樹脂成形品における樹脂成形品は、平板の表面に突起状の意匠部を設け、裏面に突起状のバランサー部を設けたテストピースである。実施例6の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図を図10に示す。
実施例6の成形型3において、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積と同じである。詳しくは、バランサー型面部32の深さL14及び意匠型面部31の深さL12はともに0.25mmである。バランサー型面部32の幅L15及び意匠型面部31の幅L13はともに0.5mmである。なお、実施例6の成形型3においても、意匠型面部31の中心線31cとバランサー型面部32の中心線32cとは同一直線上にある。
実施例6の製造方法では、上記の実施例6の成形型3を用い、実施例1と同様に、めっき付き樹脂成形品を製造した。
(実施例7)
実施例7の製造方法及び成形型は、バランサー型面部の寸法以外は実施例6の製造方法及び成形型と概略同じである。実施例7の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図を図11に示す。
実施例7の成形型3において、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積よりも小さい。詳しくは、バランサー型面部32の深さL14及び意匠型面部31の深さL12はともに0.25mmである。バランサー型面部32の幅L15は0.25mmであり、意匠型面部31の幅L13すなわち0.5mmの50%である。したがって、バランサー型面部32の容積もまた意匠型面部31の容積の50%である。なお、実施例7の成形型3においても、意匠型面部31の中心線31cとバランサー型面部32の中心線32cとは同一直線上にある。
(実施例8)
実施例8の製造方法及び成形型は、バランサー型面部の寸法以外は実施例6の製造方法及び成形型と概略同じである。実施例8の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図を図12に示す。
実施例8の成形型3において、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積よりも大きい。詳しくは、バランサー型面部32の深さL14及び意匠型面部31の深さL12はともに0.25mmである。バランサー型面部32の幅L15は0.75mmであり、意匠型面部31の幅L13すなわち0.5mmの150%である。したがって、バランサー型面部32の容積もまた意匠型面部31の容積の150%である。なお、実施例8の成形型3においても意匠型面部31の中心線31cとバランサー型面部32の中心線32cとは同一直線上にある。
(実施例9)
実施例9の製造方法及び成形型は、バランサー型面部の寸法以外は実施例6の製造方法及び成形型と概略同じである。実施例9の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図を図13に示す。
実施例9の成形型3において、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積よりも小さい。詳しくは、バランサー型面部32の深さL14は0.125mmであり、意匠型面部31の深さL12すなわち0.25mmの50%である。バランサー型面部32の幅L15及び意匠型面部31の幅L13はともに0.5mmである。したがって、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積の50%である。なお、実施例9の成形型3においても意匠型面部31の中心線31cとバランサー型面部32の中心線32cとは同一直線上にある。
(実施例10)
実施例10の製造方法及び成形型は、バランサー型面部の寸法以外は実施例6の製造方法及び成形型と概略同じである。実施例10の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図を図14に示す。
実施例10の成形型3において、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積よりも大きい。詳しくは、バランサー型面部32の深さL14は0.375mmであり、意匠型面部31の深さL12すなわち0.25mmの150%である。バランサー型面部32の幅L15及び意匠型面部31の幅L13はともに0.5mmである。したがって、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積の150%である。なお、実施例10の成形型3においても意匠型面部31の中心線31cとバランサー型面部32の中心線32cとは同一直線上にある。
(実施例11)
実施例11の製造方法及び成形型は、バランサー型面部の寸法以外は実施例6の製造方法及び成形型と概略同じである。実施例11の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図を図15に示す。
実施例11の成形型3において、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積と同じである。詳しくは、バランサー型面部32の深さL14は0.125mmであり、意匠型面部31の深さL12すなわち0.25mmの50%である、バランサー型面部32の幅L15は1.0mmであり、意匠型面部31の幅L13すなわち0.5mmの200%である。なお、実施例11の成形型3においても意匠型面部31の中心線31cとバランサー型面部32の中心線32cとは同一直線上にある。
(実施例12)
実施例12の製造方法及び成形型は、バランサー型面部の寸法以外は実施例6の製造方法及び成形型と概略同じである。実施例12の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図を図16に示す。
実施例12の成形型3において、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積と同じである。詳しくは、バランサー型面部32の深さL14は0.5mmであり、意匠型面部31の深さL12すなわち0.25mmの200%である。バランサー型面部32の幅L15は0.25mmであり、意匠型面部31の幅L13すなわち0.5mmの50%である。なお、実施例12の成形型3においても意匠型面部31の中心線31cとバランサー型面部32の中心線32cとは同一直線上にある。
(実施例13)
実施例13の製造方法及び成形型は、バランサー型面部の位置以外は実施例6の製造方法及び成形型と概略同じである。実施例13の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図を図17に示す。
実施例13の成形型3において、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積と同じである。詳しくは、バランサー型面部32の深さL14及び意匠型面部31の深さL12はともに0.25mmであり、バランサー型面部32の幅L15及び意匠型面部31の幅L13はともに0.5mmである。なお、実施例13の成形型3においては、バランサー型面部32の中心線32cは、意匠型面部31の中心線31cに対して、混合材料40の流動方向の上流側に位置する。つまり、キャビティ35に注入された混合材料40は、先ず、バランサー部12を成形するためのバランサー型面部32に到達し、次いで、意匠部11を成形するための意匠型面部31に到達する。意匠型面部31の中心線31cとバランサー型面部32の中心線32cとの距離は、1mmである。
(実施例14)
実施例14の製造方法及び成形型は、バランサー型面部の位置以外は実施例6の製造方法及び成形型と概略同じである。実施例14の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図を図18に示す。
実施例14の成形型3において、バランサー型面部32の容積は意匠型面部31の容積と同じである。詳しくは、バランサー型面部32の深さL14及び意匠型面部31の深さL12はともに0.25mmであり、バランサー型面部32の幅L15及び意匠型面部31の幅L13はともに0.5mmである。実施例14の成形型3においては、バランサー型面部32の中心線32cは、意匠型面部31の中心線31cに対して、混合材料40の流動方向の下流側に位置する。つまり、キャビティ35に注入された混合材料40は、先ず、意匠部11を成形するための意匠型面部31に到達し、次いで、バランサー部12を成形するためのバランサー型面部32に到達する。意匠型面部31の中心線31cとバランサー型面部32の中心線32cとの距離は、1mmである。
(実施例15)
実施例15の製造方法は、混合材料としてPC−ABSを用いたこと以外は、実施例6の製造方法と概略同じである。実施例15の成形型は実施例6の成形型と概略同じである。
(比較例1)
比較例1の製造方法及び成形型は、バランサー型面部を有さないこと以外は、実施例6の製造方法及び成形型と概略同じである。比較例1の製造方法及び成形型を模式的に説明する説明図を図19に示す。
図19に示すように、比較例1の成形型3は意匠型面部31を有するもののバランサー型面部32を有さない。したがって、当該成形型3で成形される比較例1のめっき付き樹脂成形品1もまた、意匠部11を有するもののバランサー部12を有さない。比較例1の成形型3における意匠型面部31の容積は、実施例6の成形型3における意匠型面部31の容積と同じである。意匠型面部31の深さL12及び幅L13もまた、実施例6の成形型3における意匠型面部31の深さL12及び幅L13と等しい。
(比較例2)
比較例2の製造方法は、混合材料としてPC−ABSを用いたこと以外は、比較例1の製造方法と概略同じである。比較例2の成形型は比較例1の成形型と概略同じである。
(剥離強度の評価)
実施例6〜実施例15、比較例1及び比較例2のめっき付き樹脂成形品につき、JIS H 8630:2006の附属書1に準拠して密着力試験を行った。詳しくは、当該試験においては、各めっき付き樹脂成形品のめっき層について、意匠部上に形成された部分と、意匠部以外の表面上に形成された部分と、の2箇所で密着力を測定した。結果を表1に示す。以下、必要に応じて、意匠部上に形成されためっき層を意匠めっき層と称し、意匠部以外の表面上に形成されためっき層を一般めっき層と称する。
Figure 2020128048
表1に示すように、比較例1のめっき付き樹脂成形品では、一般めっき層は密着力が高く剥離強度に優れていたものの、意匠めっき層は一般めっき層に比べて密着力が低く、剥離強度に劣っていた。比較例1のめっき付き樹脂成形品につき、剥離した意匠めっき層を観察したところ、意匠部の一部が意匠めっき層とともに脱落していた。この結果から、比較例1のめっき付き樹脂成形品では、樹脂成形品の強度は意匠部において他の部分よりも低くなっていると推測される。
これに対して、実施例6のめっき付き樹脂成形品では、意匠めっき層の密着力は一般めっき層と同程度であったため、実施例6のめっき付き樹脂成形品においては、意匠めっき層の剥離強度が向上しているといえる。実施例6のめっき付き樹脂成形品と比較例1のめっき付き樹脂成形品との製造方法の違いは成形型におけるバランサー型面部の有無のみであるため、意匠型面部とともにバランサー型面部を有する成形型を用いて成形することで、意匠部に起因する樹脂成形品の強度低下を抑制できるといい得る。
また、表1に示すように、実施例6〜実施例14の各めっき付き樹脂成形品は、何れも、比較例1のめっき付き樹脂成形品に比べて、意匠めっき層の密着力に優れていた。また、実施例15のめっき付き樹脂成形品は、比較例2のめっき付き樹脂成形品に比べて、意匠めっき層の密着力に優れていた。この結果から、成形型にバランサー型面部を設ければ、意匠部に起因する樹脂成形品の強度低下を抑制できるといい得る。
また、実施例6〜実施例12の各めっき付き樹脂成形品の密着力を比較すると、意匠部を有する樹脂成形品の強度向上のためには、成形型におけるバランサー型面部の容積を意匠型面部の容積以上にするのが好ましいこともわかる。
実施例6のめっき付き樹脂成形品の密着力と実施例13及び実施例14のめっき付き樹脂成形品の密着力とを比較すると、成形型におけるバランサー型面部の中心線と意匠型面部の中心線とが同一直線上にある場合には、当該中心線が同一直線上にない場合に比べて、意匠部を有する樹脂成形品の強度が向上するといい得る。
更に、実施例13及び実施例14のめっき付き樹脂成形品の密着力を比較すると、成形型におけるバランサー型面部の中心線と意匠型面部の中心線とは同一直線上になくても良いが、この場合、バランサー型面部の中心線は意匠型面部の中心線よりも混合材料の流動方向の上流側に位置するのが好ましいこともわかる。
実施例6、実施例15、比較例1及び比較例2のめっき付き樹脂成形品の密着力を比較すると、混合材料がABSであってもPC−ABSであっても、成形型にバランサー型面部を設けることで、意匠部に起因する樹脂成形品の強度低下を抑制できることがわかる。
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
1:めっき付き樹脂成形品 10:樹脂成形品
10f:樹脂成形品の表面 10b:樹脂成形品の裏面
11:意匠部 12:バランサー部
20:めっき層 3:成形型
30f:表型面 30b:裏型面
31:意匠型面部 32:バランサー型面部
40:混合材料

Claims (6)

  1. ゴム及びポリマーを含有する混合材料を材料とし、凸状をなす意匠部を有する表面と前記表面に背向する裏面とを有する樹脂成形品と、
    前記意匠部上に形成されているめっき層と、を有するめっき付き樹脂成形品を製造する方法であって、
    前記樹脂成形品の前記裏面のうち、前記意匠部と対称な位置に、凸状をなすバランサー部を設ける、めっき付き樹脂成形品の製造方法。
  2. 前記バランサー部の体積を、前記意匠部の体積以上にする、請求項1に記載のめっき付き樹脂成形品の製造方法。
  3. ゴム及びポリマーを含有する混合材料を材料とし、凸状をなす意匠部を有する表面と前記表面に背向する裏面とを有する樹脂成形品と、
    前記意匠部上に形成されているめっき層と、を有するめっき付き樹脂成形品を製造するための成形型であって、
    前記表面を成形する表型面と、前記裏面を成形する裏型面と、を有し、
    前記表型面は、凹状をなし前記意匠部を成形する意匠型面部を有し、
    前記裏型面は、前記意匠型面部と対称な位置に、凹状をなすバランサー型面部を有する、めっき付き樹脂成形品用成形型。
  4. 前記バランサー型面部の容積を、前記意匠型面部の容積以上にする、請求項3に記載のめっき付き樹脂成形品用成形型。
  5. ゴム及びポリマーを含有する混合材料を材料とし、凸状をなす意匠部を有する表面と前記表面に背向する裏面とを有する樹脂成形品と、
    前記意匠部上に形成されているめっき層と、を有し、
    前記樹脂成形品の前記裏面のうち、前記意匠部と対称な位置に、凸状をなすバランサー部が設けられている、めっき付き樹脂成形品。
  6. 前記バランサー部の体積は、前記意匠部の体積以上である、請求項5に記載のめっき付き樹脂成形品。
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