JP2010089359A - エンボス加飾一体成形品及びその製造方法 - Google Patents

エンボス加飾一体成形品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】薄くて軽量で、エンボス加飾され、デザイン多様性に優れ、且つ触感のよいエンボス加飾一体成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】表皮材20と射出成形により表皮材20と一体成形されたコア材10からなるエンボス加飾一体成形品1であって、表皮材20が、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とし、且つエンボス加飾されているエンボス加飾シートからなり、コア材10が、スチレン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とし、エンボス加飾一体成形品1における表皮材20表面の残留三次元表面粗さが4〜100μmの範囲である。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンボス加飾一体成形品及びその製造方法に関する。
表皮材とコア材との表皮一体成形品の製造方法としては、主に射出成形による表皮インサート一体成形法とコア材を成形した後に表皮を貼り付ける二段成形法が用いられているが、二段成形法は曲面の成形が困難であることや製造に手間がかかり生産性に劣ることなどから、近年は表皮インサート一体成形法(特許文献1)が主流となっている。
しかし、表皮インサート一体成形の場合、射出成形の際に高い熱と圧力が表皮材にかかるため、表皮材が変形したり、破損したりすることがあり、特にエンボス加飾などを施したシートを表皮材として用いた場合は、エンボス加飾が潰れ、凹凸のない、ノッペリとした触感のものしか得られない傾向がある。なお、表皮材の裏面に発泡層を形成した、発泡複合シートを用いることにより、ある程度エンボス加飾を保持して表皮一体成形品を製造できることが知られているが、発泡層を用いている為に厚さが厚くなり、端面のR部に対する追従性が失われるという問題がある。
一方、近年各種電子機器筐体などの表皮一体成形品においては、ますます薄肉化、軽量化の傾向が進行しており、表皮材の厚さもますます薄肉化が求められている。薄肉にするために、発泡層のない表皮材を使用する表皮一体成形品が検討されつつある。例えば、金型面からの工夫として、金型のキャビティ内表面にエンボス加工を施した金型を使用し、非加飾シートをセットしてコア材を射出し、コア材の熱でシートのエンボス加工を同時に行い、シート表面にエンボス加飾を施した表皮一体成形品を得ることが提案されている。この方法では表面に十分な凹凸があり高い外観意匠・触感を持つ表皮一体成形品を得られるものの、エンボスデザイン毎に高価な射出金型を用意する必要があるため、多様なエンボス加飾バリエーションに対応することは不可能で、多様な表皮一体成形品を得るにはコスト高となる。
また、昨今は各種電子機器筐体などの分野で、デザインバリエーションの多様化傾向が急速に進行しており、これに対応するために、転写箔やインサートフィルムを用いた表皮一体成形品が利用されている。しかしながら、転写箔やインサートフィルムを用いた表皮一体成形品は豊富なデザインバリエーションを実現できるが、表面に凹凸が少ないため、優れた外観意匠性・触感を得られないという課題があり、薄肉のエンボス加飾シートを用いた表皮一体成形品(エンボス加飾一体成形品)が求められている。
特開平9−183163
多様なエンボスバリエーションを持つエンボス加飾一体成形品を安価に供給するには、発泡層のないエンボス加飾シートからなる表皮材を使用して、射出成形によって一体成形することが求められるが、発泡層のない表皮材をインサートして射出成形すると、コア材となる溶融樹脂の熱・応力によって、表皮材となるエンボス加飾シートのエンボス凹凸が軟化して崩れたり、表皮材自体が変形したり、シートが破損したりして、所望の表面加飾を施したエンボス加飾一体成形品を得ることができない。特に、大型のノートパソコンの天板など、薄くて面積が大きく、やや深めの曲面を有する筐体を成形することは、極めて困難であった。
本発明は、上記従来の問題を解決するため、薄くて軽量で、エンボス加飾され、デザイン多様性に優れ、且つ触感のよいエンボス加飾一体成形品及びその製造方法を提供する。
本発明のエンボス加飾一体成形品は、表皮材と射出成形により前記表皮材と一体成形されたコア材からなるエンボス加飾一体成形品であって、前記表皮材が、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分し、且つエンボス加飾されているエンボス加飾シートからなり、前記コア材が、スチレン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とし、前記エンボス加飾一体成形品における表皮材表面の残留三次元表面粗さが4〜100μmの範囲であることを特徴とする。
本発明のエンボス加飾一体成形品の製造方法は、表皮材と射出成形により前記表皮材と一体成形されたコア材からなるエンボス加飾一体成形品の製造方法であって、前記表皮材が、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分し、且つエンボス加飾されているエンボス加飾シートからなり、前記エンボス加飾シートは、三次元表面粗さが4〜150μmであり、前記コア材が、スチレン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とし、前記射出一体成形の際、金型のゲート形状として、フィルムゲート又はファンゲートを用い、シリンダー温度を240〜280℃とし、ノズル温度を250〜290℃とし、射出圧力を120〜250MPaとし、且つ射出速度70〜200mm/秒で射出成形することにより、前記エンボス加飾一体成形品における表皮材表面の残留三次元表面粗さが4〜100μmの範囲であるエンボス加飾一体成形品を得ることを特徴とする。
本発明は、表皮材が、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分し、且つエンボス加飾されているエンボス加飾シートからなり、コア材が、スチレン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とする。よって、表皮材とコア材がともに非晶性ポリマーであり、比較的相溶性もよいことから、両層の界面には特殊な接着層を必要とせず一体成形が可能であり、エンボス加飾一体成形品の軽量化、薄肉化が可能となる。また、上記エンボス加飾一体成形品における表皮材表面の残留三次元表面粗さが4〜100μmの範囲であり、エンボス加飾シート素材の特徴をそのまま生かして意匠性に優れ、且つ触感に優れるエンボス加飾一体成形品を提供できる。また、本発明の製造方法は、前記エンボス加飾一体成形品を効率よく合理的に製造できる。
本発明において、エンボス加飾一体成形品とは、図1の本発明の一例のエンボス加飾一体成形品の断面模式図に示しているように、エンボス加飾シートを表皮材20として用い、前記表皮材20をエンボス加飾されてない面がコア材10となる樹脂に接するように射出成形金型内にセットし、表皮材20の裏面にコア材10を射出成形し、表皮材20とコア材10とを一体化した表皮一体成形品を意味する。
(表皮材)
上記表皮材は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とし、且つエンボス加飾されているエンボス加飾シートからなる。ここで、「主成分」とは、表皮材の樹脂成分全体に対して、50質量%以上含まれている樹脂成分をいう。
上記表皮材に用いるオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのオレフィン系ハードセグメントと、ブタジエン系、スチレン−ブタジエン系、エチレン−プロピレン系などのソフトセグメントとのブレンドを動的架橋してなる動的架橋オレフィン系樹脂(TPO)、PEやPPなどのオレフィン系ハードセグメントのモノマーとブタジエン系、スチレン−ブタジエン系、エチレン−プロピレン系などのソフトセグメントのモノマーを多段重合して得られるリアクターTPO、PEやPPなどのオレフィン系ハードセグメントである1種以上のポリマー、及びブタジエン系、スチレン−ブタジエン系、エチレン−プロピレン系などのソフトセグメントである1種以上のポリマーを物理的に分散させてなるブレンド型TPOなどが挙げられる。上記のTPOは、単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。ここで、ハードセグメントとは、樹脂的性質を備えるポリマー又はポリマー部分を意味し、ソフトセグメントとは、ゴム的性質を備えるポリマー又はポリマー部分を意味する。なお、以下においても同様である。
また、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメントとソフトセグメントの架橋度は特に限定されず、部分的に架橋されていてもよいし、ほぼ完全に架橋されていてもよいし、全く架橋されていなくてもよい。また、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーにおいて、上記ハードセグメントとソフトセグメントは、それぞれ、単一の種類であってもよく、二種類以上を組合せたものであってもよい。
上記表皮材に用いるスチレン系樹脂としては、例えば、ハードセグメントとしてポリスチレン成分を、ソフトセグメントとしてポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、水添(ブタジエン−イソプレン)共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などを組合せてなるスチレン系熱可塑性エラストマー;スチレンとアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ブタジエン、イソプレンなどのモノマーとの共重合樹脂、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン)樹脂、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート)樹脂、AES(アクリロニトリル−エチレン−スチレン)樹脂などのスチレン系樹脂、又はこれらのスチレン系樹脂の混合物などが挙げられる。
上記表皮材に用いる塩化ビニル(PVC)系樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂を主成分とし、必要に応じて、例えば、ABS樹脂、MBS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂などのスチレン系樹脂をブレンドした混合樹脂などが挙げられる。ここで、「主成分」とは、樹脂成分全体に対し、50質量%以上含まれている樹脂成分をいう。
上記表皮材に用いる塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーとは、ハードセグメントとしてPEを使用し、ソフトセグメントとして塩素化PE又は非晶性PEを使用してなる塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーであり、部分的に架橋されていてもよいし、ほぼ完全に架橋されていてもよいし、全く架橋されていなくてもよい。
上記の表皮材に用いる樹脂は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、PVC系樹脂及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーなどをそれぞれ単独の種類を用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。なお、上記表皮材に用いる樹脂としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー及び/又はスチレン系樹脂を用いることが好ましい。
また、上記表皮材に用いる樹脂には、一般的に熱可塑性樹脂に添加される公知の添加剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、充填材、着色剤などが目的に応じて任意に配合されていてもよいが、添加剤の配合にあたっては本発明の目的、効果を阻害しないように、添加剤の種類、配合量などを考慮する必要がある。また、樹脂に耐熱効果のある充填材を配合することにより、得られるシートの耐熱性を向上させることができるので、エンボス加工の精度が高まるとともに、厚さの薄いシートであっても後述する射出成形時のシートの破損及び凹凸の変形を防止することができる。そのような耐熱効果のある充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、タルクなどの微粒子材料が挙げられ、充填材の配合量は、樹脂に対して5〜10重量%が好ましい。
また、上記表皮材に用いる樹脂は、JIS K 7210に準じて測定したメルトフローレート(MFR;測定温度230℃、荷重10kg)が1.0〜20.0の範囲であることが好ましい。これは、エンボス加飾シートのメルトフローレートを上記範囲内にすることにより、下記のようにエンボス加工性、表皮材性能などを好適な範囲に維持することができるからである。
そして、上記表皮材となるエンボス加飾シートは、片面側にエンボス加工が施され、凹凸などのエンボス模様が付与されており、エンボス加工されている面がエンボス加飾一体成形品において表皮材の表面側となる(以下、エンボス加飾シートの表面側ともいう。)。上記エンボス加工は、特に限定されず、例えば、適当な温度に加熱されたシートにエンボスロール(例えば、シボロール)で圧力を加えて表面に凹凸の浮き彫り模様などのエンボス模様を付ける方法などにより行うことができる。また、シートの加熱温度は、シートの軟化温度以上であればよく、特に限定されないが、160〜220℃であることが好ましい。また、上記エンボス加飾シートの表面側には、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、さらに、表面処理、印刷、塗装、ハードコート処理などを施してもよい。また、上記エンボス加飾シートのエンボス加工されていない面(以下、エンボス加飾シートの裏面側ともいう。)には、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲内において、プライマー、粘着剤、接着剤、低融点樹脂などのバインダーが塗工されていてもよい。なお、上記において、エンボス加工や表面処理、印刷、塗装、ハードコート処理などは、特に限定されないが、合成樹脂からなるシートに用いる通常の方法で行うことができる。
上記エンボス加飾シートは、加熱による延伸性を有し、着色剤による着色を行うことができる。上記エンボス加飾シートの色彩を着色剤により変更することにより、コア材の色彩を変更することなく、エンボス加飾一体成形品の色彩を所望の色彩にすることができる。また、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲内において、上記エンボスシートの表面に印刷・塗装・コーティングを行うこともできる。なお、印刷・塗装は、特に限定されず、例えば、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷などの従来の方法で行うことができる。
上記エンボス加飾シートは、特に限定されず、例えば、上記のオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とする樹脂に、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて各種添加剤を配合して混合した後、溶融し、例えばカレンダー成形などによりシート状に圧延成形する。次いで、上記の圧延成形で得られたシートをエンボス加工することにより、三次元表面粗さ(Sa)が4〜150μmになるように片面に凹凸を付する。
上記エンボス加飾シートの厚さは、通常は0.1〜2.0mmであり、好ましくは0.2〜1.5mmである。エンボス加飾シートの厚さが、0.1〜2.0mmであることにより、溶融して流動してくるコア材の熱・応力に耐えるシートの抵抗力が好適な範囲に保たれ、一体成形がしやすくなる。なお、一体成形完了後のエンボス加飾一体成形品における表皮材の厚さも、0.1〜2.0mmであればよく、0.2〜1.5mmであることがさらに好ましい。
また、上記エンボス加飾シートの三次元表面粗さ(Sa)は、4〜150μmであればよく、4〜30μmであることがさらに好ましい。なお、本発明において、エンボス加飾シートの三次元表面粗さは、エンボス加飾シートの表面側の三次元表面粗さを意味する。三次元表面粗さ(Sa)が4〜150μmのエンボス加飾シートを用いることにより、触感に優れるエンボス加飾一体成形品にすることができる。本発明において、三次元表面粗さ(Sa)とは、縦10mm、横10mmのエンボス加飾シートを用い、エンボス加飾シートの表面側の少なくとも4方向の二次元粗さを、計測ピッチ20μm間隔で測定し、下記式(1)により算術平均粗さを求めるものである。
(数式1)
Figure 2010089359
但し、上記式(1)において、Z(x,y)は平均面をXY面、垂直方向をZ軸とし、測定した表面形状曲線Zを示し、dx及びdyは、それぞれx方向測定長及びy方向測定長を、Aは測定面積を示す。
上記三次元表面粗さ(Sa)は、二次元算術平均粗さ(Ra)を三次元に拡張したものであり、従来使用されている二次元表面粗さに比較して、面積に対する表面粗さを示すものであり、カレンダーシートなどの方向によるバラツキをなくした表面表現が可能であり、実体表面に則した表現が可能となる。
上記三次元表面粗さ(Sa)は、具体的には、接触式三次元表面粗さ計(小坂研究所株式会社製、“サーフコーダーSE−30K”)を用いて上記のように三次元表面粗さを測定し、三次元表面形状解析ソフト(三谷商事株式会社製、“サーフトップアイ”)により解析し、上記式(1)により求める。
上記エンボス加飾シートの凹凸面積比(Sdr)は、0.5以上であることが好ましく、0.7〜50であることがさらに好ましい。なお、本発明において、エンボス加飾シートの凹凸面積比はエンボス加飾シートの表面側の凹凸面積比を意味する。凹凸面積比(Sdr)が0.5以上であるエンボス加飾シートを用いることにより、触感が良好であり、意匠性に優れるエンボス加飾一体成形品にすることができる。本発明において、「凹凸面積比(Sdr)」とは、エンボス加飾シートの公称面積に対し、凹凸を加味した展開面積との間の増加割合を表現するもので、縦10mm、横10mmのエンボス加飾シートを試験片として用いて、4方向の二次元断面形状を、計測ピッチ20μm間隔で測定し、下記式(2)により求めるものである。
(数式2)
Figure 2010089359
但し、上記式(2)において、Z(x,y)は平均面をXY面、垂直面をZ軸とし、測定した表面形状曲線Zを示し、dx及びdyは、それぞれx方向測定長及びy方向測定長を、Aは測定面積を示す。
上記凹凸面積比(Sdr)は測定面積に対する界面の増加割合を示すパラメータで,表面形状の複雑さを表現可能である。
上記エンボス加飾シートの高温引張強度、すなわち140℃における引張強度は、0.15〜1.5MPaの範囲が好ましい。ここで、「高温引張強度」は、JIS K 7161に準じて測定する、140℃におけるエンボス加飾シートからなる表皮材の引張強度をいい、コア材の射出成形時にエンボス加飾シートからなる表皮材が、溶融して破損しないための目安である。上記高温引張強度が0.15MPa以上であることにより、射出成形時のエンボス加飾シートの破損を防ぐことができ、それゆえ凹凸などのエンボス模様がつぶれることを防止できる。また、上記高温引張強度が1.5MPa以下であることにより、エンボス加飾シートの剛性が強過ぎず、エンボス加工時に所定のエンボスを容易に施すことが可能であり、射出成形においてコーナー部形状を容易に形成することができる。
上記エンボス加飾シートの高温50%モデュラス(高温引張弾性率)は、すなわち140℃における50%モデュラスは、0.1〜1.5MPaの範囲が好ましい。ここで、「高温50%モデュラス」は、JIS K 7161に準じて測定する、140℃においてエンボス加飾シートからなる表皮材を1.5倍に延伸した場合の引張弾性率をいい、射出成形時にエンボス加飾シートからなる表皮材が、溶融して流れて外観を損なわないための目安である。上記高温50%モデュラスが0.1MPa以上であることにより、射出成形時に表皮材が流動してコア材が表面に浮出るゲートダメージが発生することを防ぐことができる。また、高温50%モデュラスが1.5MPa以下であることにより、エンボス加工時に所定のエンボスを容易に施すことができ、射出成形においてコーナー部形状を容易に形成することができる。
上記エンボス加飾シートのJIS K 7210に準じて測定したメルトフローレート(測定温度230℃、荷重10kg)は、1.0〜20.0の範囲が好ましい。上記MFRは、コア材の射出成形時にエンボス加飾シートが、溶融して変形しないための目安であり、1.0以上であることにより、射出成形時にエンボス加飾シートが溶融変形することを抑えることができ、20.0以下であることにより、射出成形においてコーナー部形状を容易に形成することが可能となる。
(コア材)
上記コア材は、スチレン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とする。ここで、「主成分」とは、コア材の樹脂成分全体に対し、50質量%以上含まれている樹脂成分をいう。
上記コア材に用いるスチレン系樹脂としては、特に限定されず、従来のスチレン系樹脂を用いることができる。例えば、ブタジエン系のゴムラテックスに、アクリロニトリル、スチレン、メチルメタクリレート(MMA)などのモノマーをグラフト共重合して得られるABS樹脂、MBS樹脂、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS樹脂)などを単独又は二種以上組合せて用いることができる。また、ポリスチレン(PS)の連続層にゴム粒子を分散させてなるハイインパクトポリスチレン(HIPS)、エチレン−スチレンランダム共重合樹脂、スチレン−オレフィン系アロイなども使用できる。
上記コア材に用いるポリカーボネート系樹脂(PC樹脂)としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートエステル交換反応にて重合して得られる樹脂、塩化メチレンとビスフェノールAのアルカリ水溶液との2相間で重合して得られる樹脂、ピリジンとホスゲンの付加物を作りこれとビスフェノールAとの反応により重合してなる樹脂などのポリカーボネート系樹脂を用いることができる。また、これらのPC樹脂に必要に応じて、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、PO(ポリオレフィン)樹脂などを少量混合したものを使用することもできる。
上記コア材に用いるスチレン系樹脂及びPC樹脂は単独で用いてもよく、それらを組合せて用いてもよい。優れた耐熱変形性を有するエンボス加飾一体成形品が得られる。また、本発明のエンボス加飾一体成形品を電子機器筐体として用いる場合、コア材の材料としては、PC樹脂とABS樹脂との樹脂混合物を用いることが特に好ましい。電子機器筐体として要求される耐熱変形性などの性能が極めて優れるからである。なお、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂の混合割合は特に限定されるものではないが、質量比で、PC樹脂/ABS樹脂=90/10〜10/90であることが好ましい。耐熱変形性と流動性のバランスから、PC樹脂/ABS樹脂=80/20〜20/80であることが特に好ましい。
また、上記コア材に用いる樹脂には、一般的に熱可塑性樹脂に添加される公知の添加剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、充填材、着色剤などが目的に応じて任意に配合されていてもよいが、添加剤の配合にあたっては本発明の目的、効果を阻害しないように、添加剤の種類、配合量などを考慮する必要がある。
上記コア材のMFRは、射出成形時の流動性の目安であり、コア材のMFRは50〜200(測定温度260℃、荷重10kg)であることが好ましい。コア材のMFRが50以上であることにより、ショートショットなどの成形不良、ウェルドラインなどの外観不良や残留歪が大きくなってソリなどの成形不良が発生することを防止できる。一方、コア材のMFRが200以下であることにより、成形品の衝撃強度などが低下せず、耐熱性が低下するなどの不具合も生じない。なお、上記コア材の材料としてABS樹脂とPC樹脂との樹脂混合物を用いる場合は、これらの樹脂混合物のMFRが50〜200(測定温度260℃、荷重10kg)であることが好ましい。
本発明のエンボス加飾一体成形品は、上記の表皮材と射出成形により上記の表皮材と一体成形されたコア材からなる。上記のように、本発明のエンボス加飾一体成形品は、薄肉の非発泡エンボス加飾シートを表皮材として用いることにより、軽量化、薄肉化、デザインの多様化が可能となる。また、本発明のエンボス加飾一体成形品は、表皮材として特定粘度範囲(MFR)の樹脂シートと、コア材として特定粘度範囲の(MFR)の樹脂を組合せて用いることにより、凹凸などのエンボス模様の残留性を向上でき、大型成形品の成形が可能となる。
上記エンボス加飾一体成形品において、上記のとおり測定して求める表皮材表面の三次元表面粗さ及び凹凸面積比を、それぞれ、残留三次元表面粗さ、残留凹凸面積比とする。上記エンボス加飾一体成形品の表皮材表面の残留三次元表面粗さは4〜100μmであり、さらに好ましくは6〜70μmである、さらに特に好ましくは、6〜30μmである。上記残留三次元表面粗さが4〜100μmであれば、エンボス加飾一体成形品の触感が極めて優れるからである。また、上記残留凹凸面積比は0.5以上であり、0.7〜20であることが好ましい。上記残留凹凸面積比が0.5以上であれば、エンボス加飾一体成形品の触感が良好であり、意匠性にも優れるからである。
また、エンボス加飾シートの三次元表面粗さをSa1とし、エンボス加飾一体成形品の表皮材表面の残留三次元表面粗さをSa2とした場合、上記エンボス加飾一体成形品において、下記式(3)で示されるエンボス残留率は25%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。表皮材として用いるエンボス加飾シートのエンボス模様の再現性に優れるからである。
(数式3)
エンボス残留率(%)=(Sa2/Sa1)×100%
また、エンボス加飾シートの凹凸面積比をSdr1とし、エンボス加飾一体成形品の表皮材表面の残留凹凸面積比をSdr2とした場合、上記エンボス加飾一体成形品において、下記式(4)で示される凹凸残留率は20%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。表皮材として用いるエンボス加飾シートのエンボス模様の再現性に優れるからである。
(数式4)
凹凸残留率(%)=(Sdr2/SDr1)×100%
また、上記エンボス加飾一体成形品は、最大長径は、200mm以上であることが好ましく、200〜500mmであることがさらに好ましい。大型電子機器筐体などの大型表皮一体成形品の成形に有効であるからである。本発明において、「最大長径」とは、エンボス加飾一体成形品の大きさを表現するためのパラメータで、成形品を直線的に長さ計測した時の最大長径を意味する。例えば、エンボス加飾一体成形品が略方形である場合は、対角線長さが最大長径となる。ここで、「略方形」とは、外縁部の向き合った2辺がそれぞれ平行で且つ十分な長さの直線部分を有する形状を意味し、角部に丸みを持たせた形状を含み、具体的には、略正方形、略長方形、菱形、台形などが挙げられる。
以下、本発明のエンボス加飾一体成形品の製造方法について説明する。
本発明のエンボス加飾一体成形品の製造方法は、上記の表皮材に対して上記のコア材を射出成形により一体成形する製造方法であればよく、特に限定されない。例えば、先ず、エンボス加飾シートを、従来の真空成形、圧空成形、プレス成形などにより予備賦形する。次いで、エンボス加飾シートを、裏面側が射出成形されて上記コア材となる樹脂と接するような向きで射出成形金型に装着し、キャビティ空間内に上記コア材となる樹脂を射出成形し、上記表皮材と上記コア材を一体化してエンボス加飾一体成形品とする。又は、エンボス加飾シートを断続/連続的に、裏面側が射出成形されて上記コア材となる樹脂と接するような向きで射出成形金型のコア側に供給し、シート押え枠で固定した後、金型キャビティ空間内に上記のコア材となる樹脂を射出成形し、上記表皮材と上記コア材を一体化してエンボス加飾一体成形品としてもよい。その際、ゲート近傍のシートを吸引して、金型のコア側に接触させてもよい。
上記において、射出成形の際のゲート形状は、特に限定されるものではないが、薄肉製品のソリの防止やコア材の流動性の向上などの観点から、点ゲート、フィルムゲート、ファンゲートなどを用いることが好ましい。中でも、コア材の金型キャビティへの充填性などの観点から、金型キャビティへの開放口が、短径0.5〜2.5mm、長径20〜100mmの長方形形状となっているフィルムゲートあるいはファンゲートが特に好ましい。さらに、エンボス加飾一体成形品の最大長径が200mm以上の大型電子機器筐体などとして用いる大型のエンボス加飾一体成形品の成形には、短径 1.0〜2.5mm、長径30〜100mmのファンゲートを用いることが好ましい。
また、射出成形は、射出成形機を使用し、エンボス加飾シートを雌金型にセットし、雄雌金型を閉じ、金型間に形成された金型キャビティにコア材となる樹脂を射出して充填する。射出成形の際のシリンダー温度及びノズル温度は使用するコア材となる樹脂の種類にもよるが、例えば、シリンダー温度は240〜280℃、ノズル温度は250〜290℃であることが好ましい。
また、射出成形の際の射出速度は、70〜200mm/秒の範囲が好ましい。射出速度が70mm/秒未満であるとエンボスがつぶれるという不具合が生じる傾向があり、200mm/秒を超えるとバリを発生し易くなりトリミングが難しくなる傾向がある。特に、表皮材となるエンボス加飾シートのエンボスをそのまま残すという観点から、100〜130mm/秒の範囲がさらに好ましい。
また、射出成形の際の射出圧力は、120〜250MPaの範囲が好ましい。射出圧力が120MPa未満であるとショートショットになる傾向があり、250MPaを超えるとゲートダメージが発生する傾向がある。特に、表皮材となるエンボス加飾シートのエンボスをそのまま残すという観点から、180〜230MPaの範囲がさらに好ましい。
上記のように、本発明の製造方法によれば、特定のゲート形状、シリンダー温度、ノズル温度、射出速度、射出圧力などを組合せることにより、凹凸などのエンボス模様の残留性を向上でき、且つ大型表皮一体成形品の成形が可能となる。
また、本発明の製造方法によれば、表皮材としてエンボス加飾シートを用いることにより、射出成形金型として凹凸が付されたものを用いる必要がない。すなわち、表皮一体成形品の形状、大きさなどに合わせた射出成形金型に、凹凸を施す必要がないので効率的であり、金型の製造コストも低減することができる。
また、本発明の製造方法によれば、厚さが0.2〜1.5mmであり、140℃における高温引張強度が0.15〜1.5MPaのエンボス加飾シートを表皮材として用いることにより、射出成形時に表皮が破損することなく、薄い表皮で、大型のエンボス加飾一体成形品を得ることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
先ず、本実施例で用いた測定方法及び評価方法を説明する。
(三次元表面粗さ)
接触式三次元表面粗さ計(小坂研究所株式会社製、“サーフコーダーSE−30K”を用い、縦10mm、横10mmのエンボス加飾シート表面側の少なくとも4方向において、計測ピッチ20μm間隔で三次元表面粗さを測定し、三次元表面形状解析ソフト(三谷商事株式会社社製、“サーフトップアイ”)により解析し、上記式(1)によりエンボス加飾シートの三次元表面粗さ(Sa1)を求めた。
(残留三次元表面粗さ)
上記と同様にし、エンボス加飾一体成形品の縦10mm、横10mmの表皮材表面の三次元表面粗さを求めて成形品の残留三次元表面粗さ(Sa2)とした。
(凹凸面積比)
縦10mm、横10mmのエンボス加飾シートを用い、接触式三次元表面粗さ計(小坂研究所株式会社製、“サーフコーダーSE−30K”)により、計測ピッチ20μm間隔で三次元形状を測定し、凹凸を加味した表面の展開面積と表面の公称面積を測定し、三次元表面形状解析ソフト(三谷商事株式会社社製、“サーフトップアイ”)により解析し、上記式(2)によりエンボス加飾シートの凹凸面積比(Sdr1)を求めた。
(残留凹凸面積比)
上記と同様にし、エンボス加飾一体成形品の表皮材表面の凹凸面積比を求め、成形品の残留凹凸面積比(Sdr2)とした。
(高温引張強度)
JIS K 7161に準じ、140℃におけるエンボス加飾シートの引張試験を行ない、最大応力から高温引張強度を求めた。
(高温引張弾性率)
JIS K 7161に準じ、140℃におけるエンボス加飾シートの引張試験を行ない、1.5倍に延伸した際の引張応力から高温引張弾性率を求めた。
(MFR)
JIS−K−7210に準じ、表皮材のMFRは、測定温度230℃、荷重10kgの条件で測定し(以下において、MFR230とも記す。)、コア材のMFRは、測定温度260℃、荷重10kgの条件で測定した(以下において、MFR260とも記す。)。
(エンボス残留率)
上記において測定した三次元表面粗さ及び残留三次元表面粗さを用い、上記式(3)により算出した。
(凹凸残留率)
上記において測定した凹凸面積比及び残留凹凸面積比を用い、上記式(4)により算出した。
(表皮外観)
エンボス加飾一体成形品のゲート部の表面状態を目視で観察し、コア材による変色が認められる程度を下記の基準で評価し、B以上を合格とする。
A 十分な表面凹凸が残り、表面変色は全く観察されない。
B 表面凹凸はやや浅くなっているが、コア材の色調は観察されない。
C 表皮材が薄く残っているが、コア材の色調が透けて観察される。
D コア材が表面に突き抜けて観察されており、表皮材が破れている。
(表面ウェルド)
エンボス加飾一体成形品の表面状態を目視で観察し、表皮上に現われたウェルドラインの程度を下記の基準で評価し、B以上を合格とする。
A コア材表面(成形品裏面)にも、成形品表面にも全くラインが観察されない。
B コア材表面(成形品裏面)には薄くラインがあるが、成形品表面には全く観察されない。
C コア材表面(成形品裏面)にラインがあり、成形品表面にも薄く観察される。
D コア材表面(成形品裏面)に明瞭なラインがあり、成形品表面にも明瞭に観察される。
(触感)
エンボス加飾一体成形品の表面を手で触り、すべすべ感の有無を下記の基準で評価し、B以上を合格とする。
A サラサラ感が十分あり、触った指先が滑らかに滑る。
B サラサラ感は十分あるが、触った指先がわずかに滑らない。
C サラサラ感が少なく、触った指先がやや滑らない。
D サラサラ感が全くなく、触った指先がほとんど滑らない。
(実施例1)
ABS樹脂(旭化成株式会社製“スライタック321”;MFR230=9.2)100重量部に紫外線吸収剤(アデカ株式会社製“アデカスタブLA−36”)0.3重量部、充填剤(ケーシー工業株式会社製“タルペット60IP”)10重量部を配合し、ミキシングロールにて混練し、カレンダーにて厚さ約0.45mmのカレンダーシートを得た。次いで、該シートを190℃に温調したシボロールに通し、厚さ約0.4mmのエンボス加飾シートを得た。
次に、上記エンボス加飾シートを最大長径が500mmの筐体用雌金型のシート取り付け枠に挿み、雄金型で閉じてキャビティ空間を形成し、そのキャビティ空間にPC/ABS混合樹脂(帝人化成株式会社製“マルチロンTN−7000F”;MFR260=150;PC樹脂/ABS樹脂混合質量比80/20)を射出・充填した。射出成形機は、日本製鋼所製“J450E−C3”を使用し、シリンダー温度260℃、ノズル温度270℃、射出圧力150MPa、射出速度200mm/秒の成形条件にて成形し、エンボス加飾一体成形品を得た。なお、ゲートは、1.2mm×60mmのフィルムゲートを用いた。
(比較例1)
実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾シートを得て、射出速度を65mm/秒にした以外は、実施例1と同様の成形条件にて成形し、比較例1のエンボス加飾一体成形品を得た。
(比較例2)
実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾シートを得て、射出圧力を270MPaにした以外は、実施例1と同様の成形条件にて成形し、比較例2のエンボス加飾一体成形品を得た。
(比較例3)
シボロールを変更して製造した、三次元表面粗さ0.81μm、凹凸面積比0.11のエンボス加飾シートを用いた以外は、実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾一体成形を行ない、比較例3のエンボス加飾一体成形品を得た。
(比較例4)
シボロールを変更して製造した、三次元表面粗さ150.9μm、凹凸面積比5.61のエンボス加飾シートを用いた以外は、実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾一体成形を行ない、比較例4のエンボス加飾一体成形品を得た。
得られた実施例1及び比較例1〜4のエンボス加飾一体成形品を、上記の測定方法及び評価方法にて測定・評価し、その結果を下記表1に示した。また、実施例1及び比較例1〜4のエンボス加飾一体成形品の製造に用いた、それぞれのエンボス加飾シートの三次元表面粗さ、凹凸面積比、高温引張強度、高温引張弾性率も、下記表1に示した。
Figure 2010089359
表1の実施例1と比較例1及び2の結果の比較から、エンボス加飾一体成形品の残留三次元表面粗さが4μm以上の時には、エンボス加飾一体成形品の触感、表皮外観、表面ウェルドが極めて良好なものが得られることが判る。また、射出速度が70mm/秒以下になると残留三次元表面粗さを4μm以上に維持することが難しく好ましくなく、同様に射出圧力が250MPaを超えると残留三次元表面粗さを4μm以上に維持することが難しく好ましくないことが判る。また、表1の実施例1と比較例3の結果の比較から、エンボス加飾シートの三次元表面粗さが4μm未満のものを用いると、エンボス加飾一体成形品の残留三次元表面粗さを4μm以上に維持することが困難で、触感も不良となり好ましくないことが判る。さらに、表1の実施例1と比較例4の比較から、極端に凹凸の大きい、三次元表面粗さが150μmを超えるエンボスシートを用いると残留三次元表面粗さが100μmを超え、触感などが劣るエンボス加飾一体成形品になることが判る。
(実施例2)
実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾シートを得て、射出速度を75mm/秒にした以外は、実施例1と同様の成形条件にて成形し、実施例2のエンボス加飾一体成形品を得た。
(実施例3)
実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾シートを得て、射出圧力を125MPaにした以外は、実施例1と同様の成形条件にて成形し、実施例3のエンボス加飾一体成形品を得た。
(実施例4)
実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾シートを得て、射出圧力を240MPaにした以外は、実施例1と同様の成形条件にて成形し、実施例4のエンボス加飾一体成形品を得た。
(実施例5)
実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾シートを得て、シリンダー温度を280℃、ノズル温度を290℃にした以外は、実施例1と同様の成形条件にて成形し、実施例5のエンボス加飾一体成形品を得た。
(実施例6)
実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾シートを得て、シリンダー温度を240℃、ノズル温度を250℃にした以外は、実施例1と同様の成形条件にて成形し、実施例6のエンボス加飾一体成形品を得た。
(実施例7)
シボロールを変更して製造した、三次元表面粗さ12.85μm、凹凸面積比8.96のエンボス加飾シートを用いた以外は、実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾一体成形を行ない、実施例7のエンボス加飾一体成形品を得た。
得られた実施例2〜7のエンボス加飾一体成形品を、上記の測定方法及び評価方法にて測定・評価し、その結果を下記表2に示した。また、実施例2〜7のエンボス加飾一体成形品の製造に用いた、それぞれのエンボス加飾シートの三次元表面粗さ、凹凸面積比、高温引張強度、高温引張弾性率も、下記表2に示した。
Figure 2010089359
表2の実施例2〜7の結果の比較から、シリンダー温度が240〜280℃、ノズル温度が250〜290℃、射出圧力が120〜250Mpa、射出速度が70〜200mm/秒であると残留三次元表面粗さを4μm以上に維持することが容易であり、エンボス加飾一体成形品の触感、表面外観、表面ウェルドが良好なものが得られることが判る。また、表1及び表2の実施例1、2と比較例1の結果の比較から、射出速度を小さくすると、残留三次元表面粗さ、残留凹凸面積比、触感などが低下する傾向があることが判る。また、表1及び表2の実施例1、3と比較例2の結果の比較から、射出圧力を小さくすると、残留三次元表面粗さ、残留凹凸面積比、触感、表面ウェルドが低下する傾向があり、射出圧力を高くすると、表皮外観が極端に劣る傾向があることが判る。また、表2の実施例1、5、6の結果の比較から、成形温度を高くすると表皮外観が劣る傾向があり、成形温度を低くすると表面ウェルドが劣る傾向があることが判る。
(実施例8)
TPO樹脂(三井化学株式会社製“ミラストマー8030”;MFR230=7.2)100重量部に紫外線吸収剤(アデカ株式会社製“アデカスタブLA−36”)0.3重量部、充填剤(ケーシー工業株式会社製“タルペット60IP”)10重量部を配合し、ミキシングロールにて混練し、カレンダーにて厚さ約0.45mmのカレンダーシートを得た。次いで、該シートを190℃に温調したシボロールに通し、厚さ約0.4mmのエンボス加飾シートを得た。
次に、上記エンボス加飾シートを最大長径が500mmの筐体用雌金型のシート取り付け枠に挿み、雄金型で閉じてキャビティ空間を形成し、そのキャビティ空間にPC/ABS混合樹脂(帝人化成株式会社製“マルチロンTN−7000F”;MFR260=150;PC樹脂/ABS樹脂混合質量比80/20)を射出・充填した。射出成形機は、日本製鋼所製“J450E−C3”を使用し、シリンダー温度260℃、ノズル温度270℃、射出圧力150MPa、射出速度200mm/秒の成形条件にて成形し、エンボス加飾一体成形品を得た。なお、ゲートは、1.2mm×60mmのフィルムゲートを用いた。
(実施例9)
実施例8と全く同様の操作にて、エンボス加飾シートを得、射出・充填するPC/ABS混合樹脂を帝人化成株式会社製“マルチロンT−3714(MFR260=66;PC樹脂/ABS樹脂混合質量比50/50)”に変更した以外は、実施例8と同様の成形条件にて成形し、実施例9のエンボス加飾一体成形品を得た。
(比較例5)
シボロールを変更して製造した、三次元表面粗さ1.16μm、凹凸面積比0.18のエンボス加飾シートを用いた以外は、実施例8と全く同様の操作にて、エンボス加飾一体成形を行い、比較例5のエンボス加飾一体成形品を得た。
(比較例6)
射出・充填するPC/ABS混合樹脂をPP樹脂(日本ポリプロ株式会社製“ノバテックPP MA3”;MFR=70)に変更した以外は、実施例1と全く同様の操作にて、エンボス加飾シートを得、実施例1と同様に成形し、比較例6のエンボス加飾一体成形品を得た。
(比較例7)
PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂フィルム(株式会社カネカ製“サンデュレンSD009”;MFR230=5.6)を用い、該フィルムシートを190℃に温調したシボロールに通し、厚さ約0.4mmのエンボス加飾シートを得た。
次に、上記エンボス加飾シートを最大長径が500mmの筐体用雌金型のシート取り付け枠に挿み、雄金型で閉じてキャビティ空間を形成し、そのキャビティ空間にPC/ABS混合樹脂(帝人化成株式会社製“マルチロンTN−7000F”;MFR260=150;PC樹脂/ABS樹脂混合質量比80/20)を射出・充填した。射出成形機は、日本製鋼所製“J450E−C3”を使用し、シリンダー温度260℃、ノズル温度270℃、射出圧力150MPa、射出速度200mm/秒の成形条件にて成形し、エンボス加飾一体成形品を得た。なお、ゲートは、1.2mm×60mmのフィルムゲートを用いた。
(比較例8)
PET樹脂フィルム(東洋紡株式会社製“コスモシャインA4100”)を用い、該フィルムシートを190℃に温調したシボロールに通し、厚さ約0.4mmのエンボス加飾シートを得た。
次に、上記エンボス加飾シートを最大長径が500mmの筐体用雌金型のシート取り付け枠に挿み、雄金型で閉じてキャビティ空間を形成し、そのキャビティ空間にPC/ABS混合樹脂(帝人化成株式会社製“マルチロンTN−7000F”;MFR260=150;PC樹脂/ABS樹脂混合質量比80/20)を射出・充填した。射出成形機は、日本製鋼所製“J450E−C3”を使用し、シリンダー温度260℃、ノズル温度270℃、射出圧力150MPa、射出速度200mm/秒の成形条件にて成形し、エンボス加飾一体成形品を得た。なお、ゲートは、1.2mm×60mmのフィルムゲートを用いた。
得られた実施例8、9及び比較例5〜8のエンボス加飾一体成形品を、上記の測定方法及び評価方法にて測定・評価し、その結果を下記表3に示した。また、実施例8、9及び比較例5〜8のエンボス加飾一体成形品の製造に用いた、それぞれのエンボス加飾シートの三次元表面粗さ、凹凸面積比、高温引張強度、高温引張弾性率も、下記表3に示した。
Figure 2010089359
表3の実施例8、9と比較例5〜8の結果の比較から、エンボス加飾シートにTPO樹脂を用いてもエンボス加飾一体成形品の残留三次元表面粗さが4μm以上の時には、成形品の触感が極めて良好なものが得られることが判る。また、エンボス加飾シートにPMMA樹脂やPET樹脂を用いると残留三次元表面粗さを4μm以上に維持することが難しく好ましくないことが判る。さらに、表1及び表3実施例1と実施例8の結果の比較から、表皮にABSを使用する方が触感が優れる傾向があり、表3の実施例8と実施例9の結果の比較から、コア材のMFRが低いと表面ウェルドが劣る傾向があることが判る。
本発明のエンボス加飾一体成形品は、例えば、家庭電化製品、OA機器、車両機器など製品に適用することができる。
本発明の一例のエンボス加飾一体成形品の断面模式図である。
符号の説明
1 エンボス加飾一体成形品
10 コア材
20 表皮材
21 エンボス加工面

Claims (11)

  1. 表皮材と射出成形により前記表皮材と一体成形されたコア材からなるエンボス加飾一体成形品であって、
    前記表皮材が、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とし、且つエンボス加飾されているエンボス加飾シートからなり、
    前記コア材が、スチレン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とし、
    前記エンボス加飾一体成形品における表皮材表面の残留三次元表面粗さが4〜100μmの範囲であることを特徴とするエンボス加飾一体成形品。
  2. 前記エンボス加飾一体成形品における表皮材表面の残留凹凸面積比が0.5以上である請求項1に記載のエンボス加飾一体成形品。
  3. 前記表皮材に用いる樹脂のMFR(メルトフローレート;測定温度230℃、荷重10kg)が1.0〜20.0である請求項1又は2に記載のエンボス加飾一体成形品。
  4. 前記コア材に用いる樹脂が、ABS樹脂とポリカーボネート樹脂との樹脂混合物であり、前記樹脂混合物のMFR(測定温度260℃、荷重10kg)が50〜200である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンボス加飾一体成形品。
  5. 前記エンボス加飾一体成形品における表皮材の厚さが0.2〜1.5mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンボス加飾一体成形品。
  6. 前記エンボス加飾一体成形品は、略方形であり、対角線長さが200mm以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンボス加飾一体成形品。
  7. 表皮材と射出成形により前記表皮材と一体成形されたコア材からなるエンボス加飾一体成形品の製造方法であって、
    前記表皮材が、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とし、且つエンボス加飾されているエンボス加飾シートからなり、
    前記エンボス加飾シートは、三次元表面粗さが4〜150μmであり、
    前記コア材が、スチレン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を主成分とし、
    前記射出一体成形の際、金型のゲート形状として、フィルムゲート又はファンゲートを用い、シリンダー温度を240〜280℃とし、ノズル温度を250〜290℃とし、射出圧力を120〜250MPaとし、且つ射出速度70〜200mm/秒で射出成形することにより、
    前記エンボス加飾一体成形品における表皮材表面の残留三次元表面粗さが4〜100μmの範囲であるエンボス加飾一体成形品を得ることを特徴とするエンボス加飾一体成形品の製造方法。
  8. 前記表皮材となるエンボス加飾シートの三次元表面粗さをSa1とし、エンボス加飾一体成形品の表皮材表面の残留三次元表面粗さをSa2とした場合、(Sa2/Sa1)×100%で示されるエンボス残留率が40〜99%である請求項7に記載のエンボス加飾一体成形品の製造方法。
  9. 前記表皮材となるエンボス加飾シートは、厚さが0.2〜1.5mmであり、140℃における引張強度が0.15〜1.5MPaであり、140℃における50%モデュラスが0.10〜1.5MPaである請求項7又は8に記載のエンボス加飾一体成形品の製造方法。
  10. 前記表皮材となるエンボス加飾シートの表面の凹凸面積比が0.5以上であり、エンボス加飾一体成形品における表皮材表面の残留凹凸面積比が0.5以上であり、且つエンボス加飾シートの表面の凹凸面積比をSdr1とし、エンボス加飾一体成形品の表皮材表面の残留凹凸面積比をSdr2とした場合、(Sdr2/Sdr1)×100%で示される凹凸残留率が40〜99%である請求項7〜9のいずれか1項に記載のエンボス加飾一体成形品の製造方法。
  11. 前記表皮材に用いる樹脂のMFR(メルトフローレート;測定温度230℃、荷重10kg)が1.0〜20.0であり、前記コア材に用いる樹脂はABS樹脂とポリカーボネート樹脂との樹脂混合物であり、且つ前記コア材に用いる樹脂混合物のMFR(測定温度260℃、荷重10kg)が50〜200である請求項7〜10のいずれか1項に記載のエンボス加飾一体成形品の製造方法。
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