JP7257179B2 - 成形品 - Google Patents
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Description
低光沢性の成形品として、例えば特許文献1には、最表面が凹凸面であり、該凹凸面の算術平均粗さ(Ra)が0.1~0.7μmであるシートが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載のシートは、必ずしも低写像性を満足するものではない。
[1]表面に複数の凹部と複数の凸部とを有する成形品であって、
前記凹部の平均長径が50μm以上であり、
前記凸部の平均長径が2~35μmであり、
前記表面の算術平均粗さRaが0.60μm以上である、成形品。
[2]前記表面の展開面積比Sdrが0.10以上である、[1]の成形品。
[3]前記複数の凹部の少なくとも1つの中に、前記複数の凸部の少なくとも1つが存在している、[1]又は[2]の成形品。
以下、図1、2を参照しながら、本発明の成形品の一実施形態について説明する。
なお、図1、2において、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせてある。
ここで、「表面」とは、艶消し外観が求められる面のことである。「凹部」とは、前記表面のうち、平坦な面13を基準としたときに、この平坦な面(以下、「基準面」ともいう。)13よりも凹んでいる部分である。「凸部」とは、平坦な面13よりも突出している部分である。すなわち、成形品10の表面は、複数の凹部11及び複数の凸部12に加えて、平坦な面13を有する。
凹部11の平均長径は、レーザー顕微鏡により凹部11の長径r1を50点測定し、これらの値を平均したものである。
なお、凹部11の長径r1は、平坦な面13よりも凹んでいる部分の最大径である。
凹部11の平均深さは、レーザー顕微鏡により平坦な面13から凹部11の最低部11aまでの垂直距離h1を50点測定し、これらの値を平均したものである。
凸部12の平均長径は、レーザー顕微鏡により凸部12の長径r2を50点測定し、これらの値を平均したものである。
なお、凸部12の長径r2は、平坦な面13よりも突出している部分の最大径である。
凸部12の平均高さは、レーザー顕微鏡により平坦な面13から凸部12の最頂部12aまでの垂直距離h2を50点測定し、これらの値を平均したものである。
算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2013に準拠して測定される。
展開面積比Sdrは、成形品10の表面の展開面積(凹凸が反映された表面積)が、成形品10の表面の面積(凹凸が反映されていない面積)に対してどれだけ増大しているかを示す指標である。展開面積比Sdrは、ISO 25178-2:2012に準拠して測定される。
成形品10は、例えば以下に示す熱可塑性樹脂組成物を成形することで得られる。
成形方法としては、公知の成形方法を利用でき、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。これらの中でも、複数の凹部11の少なくとも1つの中に、複数の凸部12の少なくとも1つが存在している成形品10が容易に得られる観点から、射出成形が好ましい。
成形品10を射出成形で製造する場合、凹部11の長径r1は流動方向における凹部11の長さであり、射出速度が速くなるほど凹部11は細長くなる、すなわち長径r1が大きくなる傾向にある。なお、図1中の矢印Fは射出成形における流動方向である。
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、艶消し剤(B)とを含むことが好ましい。
酸基変性ゴムは、未変性ゴムと酸基含有化合物を共重合することで得られる。
酸基変性SAN樹脂は、SAN樹脂に(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸のいずれかを付加反応させることで得られる。具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸のいずれかと、アクリロニトリルと、スチレンとを重合することで得られる。
なお、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
エポキシ変性ゴムは、未変性ゴムとエポキシ基含有化合物を共重合することで得られる。
エポキシ変性SAN樹脂は、エポキシ基含有単量体と、アクリロニトリルと、スチレンとを重合することで得られる。エポキシ基含有単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
アクリル系架橋粒子は、架橋剤の存在下で、アクリル系単量体を重合することで得られる。アクリル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらアクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤としては、例えばメタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4-ブチレングリコールジエステルなどが挙げられる。これら架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、アクリル系単量体を重合する際には、アクリル系単量体と共重合可能な単量体(他の単量体)を併用してもよい。他の単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等シアン化ビニル化合物などが挙げられる。これら他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
艶消し剤(b2)の平均粒子径は、レーザー顕微鏡等の粒度分布測定器を用いて体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値(体積平均粒子径)である。市販の艶消し剤(b2)を用いる場合は、カタログ値を用いてもよい。
任意成分としては、例えば酸化防止剤、光安定剤等、可塑剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、帯電防止剤、難燃剤、無機充填剤、金属粉末などが挙げられる。これら任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる各成分を混合・混練する方法は特に制限はなく、一般的な混合・混練方法を何れも採用することができ、例えば、軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、混練ロール等にて混練した後、ペレタイザ等で切断しペレット化する方法などが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物の製造は、回分式、連続式のいずれで行ってもよい。また、各成分の混合順序についても特に制限はなく、全ての成分が十分に均一に混合されればよい。
以上説明した本発明の成形品は、上述した特定の表面構造を有するので、低光沢性及び低写像性に優れる。すなわち、本発明の成形品は蛍光灯の光や外光などの映り込みによる像が不鮮明であり、艶消し外観に優れた艶消し成形品である。
以下の例における各種測定・評価方法と、各成分は以下の通りである。
<表面構造の測定>
レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、「VK-X1000」)を用いて成形品の表面を観察し、凹部及び凸部の長径をそれぞれ50点測定し、その平均値を求めた。また、凹部の深さ及び凸部の高さをそれぞれ50点測定し、その平均値を求めた。また、JIS B 0601:2013に準拠して算術平均粗さRaを測定し、ISO 25178-2:2012に準拠して展開面積比Sdrを測定した。
また、成形品の表面に凹部及び凸部が形成されている場合を「凹凸」とし、凹部のみが形成されている場合を「凹」とし、「凸部のみが形成されている場合を「凸」とした。
デジタル変角光沢計(スガ試験機株式会社製、「UGV-5D」)を使用して、JIS Z 8741で定義される、入射角60°における成形品の表面の光沢度(Gs)を測定した。光沢度が低いほど、低光沢性に優れる、すなわち艶消し外観として優れる。
写像性測定装置(スガ試験機株式会社製、「ICM-1DP型」)を使用して、スリット間隔1mm、反射角度60°の条件で成形品の表面の鮮映度を測定した。鮮映度が小さいほど、低写像性に優れる、すなわち艶消し外観として優れる。
<熱可塑性樹脂(A-1)>
アクリロニトリル27部及びスチレン73部を公知の懸濁重合により重合し、AS樹脂を得た。得られたAS樹脂0.2gをN,N-ジメチルホルムアミドの100mLに溶解した溶液について、25℃における還元粘度を測定したところ、0.61dl/gであった。
得られたAS樹脂を熱可塑性樹脂(A-1)として用いた。
ポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン株式会社製、「アクリペットVH5」)を熱可塑性樹脂(A-2)として用いた。
<艶消し剤(B-1)>
蒸留水150部に高分子分散剤としてアルケニルコハク酸カリウム0.003部、硫酸ナトリウム0.5部を反応釜に仕込み攪拌した。これにメタクリル酸3.0部、アクリロニトリル24.2部、スチレン72.8部、t-ドデシルメルカプタン0.25部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.18部の混合物を加え懸濁液状にした後、昇温し、内温が77℃になった時点で重合を開始した。重合発熱ピークを温度計にて確認した後、内温95℃の状態で120分保持した。その後、冷却し、得られたスラリー状の生成物を濾過した後、水洗、乾燥させてビーズ状のメタクリル酸変性SAN樹脂を得た。
得られたメタクリル酸変性SAN樹脂を艶消し剤(B-1)として用いた。
メタクリル酸3.0部をグリシジルメタクリレート3.0部に変更した以外は、艶消し剤(B-1)と同様にして、ビーズ状のエポキシ変性SAN樹脂を得た。
得られたエポキシ変性SAN樹脂を艶消し剤(B-2)として用いた。
艶消し剤(B-3)~(B-8)として、以下の化合物を用いた。なお、艶消し剤(B-3)~(B-7)の平均粒子径はカタログ値である。
・艶消し剤(B-3):架橋アクリル単分散粒子(綜研化学株式会社製、「MX-500」、平均粒子径5μm)。
・艶消し剤(B-4):架橋アクリル単分散粒子(綜研化学株式会社製、「MX-1000」、平均粒子径10μm)。
・艶消し剤(B-5):架橋アクリル単分散粒子(綜研化学株式会社製、「MX-3000」、平均粒子径30μm)。
・艶消し剤(B-6):架橋スチレン多分散粒子(綜研化学株式会社製、「SGP-150C」、平均粒子径55μm)。
・艶消し剤(B-7):架橋アクリル多分散粒子(綜研化学株式会社製、「MR-1HG」、平均粒子径1μm)。
・艶消し剤(B-8):ジエン系ゴム変性共重合体(ゼオン化成株式会社製、「レビタルマットエース AM808」)。
表1、2に示す種類と量の熱可塑性樹脂(A)及び艶消し剤(B)を、ヘンシェルミキサを用いて混合した。得られた混合物を、スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX-30α型二軸押出機」)を用い、250℃の条件で溶融混練した。これにより得た溶融混練物を冷却後、ペレタイザを用いてペレット化して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。なお、表1、2中の空欄は、その成分が配合されていないことを示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機(株式会社日本製鋼所製)を用いて成形して、100mm四方、厚み3mmの試験片(成形品)を作製した。
得られた成形品について、表面構造を測定し、低光沢性及び低写像性を評価した。これらの結果を表1、2に示す。
これに対し、表2に示すように、各比較例の成形品では低光沢性及び低写像性のいずれかが不充分であった。具体的には、比較例1~4、9の成形品は、表面に凹部又は凸部が形成されておらず、低光沢性及び低写像性の少なくとも一方が不充分であった。比較例5~7の成形品は、算術平均粗さRaが低いため、低光沢性及び低写像性の少なくとも一方が不充分であった。比較例8の成形品は、表面に凹部及び凸部が形成されていないため、低光沢性及び低写像性が不充分であった。
11 凹部
11a 最低部
12 凸部
12a 最頂部
13 平坦な面(基準面)
r1 長径
r2 長径
h1 垂直距離
h2 垂直距離
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂(A)と艶消し剤(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物の成形物であり、表面に複数の凹部と複数の凸部と平坦な面とを有する成形品であって、
前記凹部は、前記平坦な面よりも凹んでいる部分であり、
前記凸部は、前記平坦な面よりも突出している部分であり、
前記凹部の平均長径が50~500μmであり、
前記凸部の平均長径が2~35μmであり、
前記表面の算術平均粗さRaが0.60~20.00μmである、成形品。 - 前記表面の展開面積比Sdrが0.10~2.00である、請求項1に記載の成形品。
- 前記複数の凹部の少なくとも1つの中に、前記複数の凸部の少なくとも1つが存在している、請求項1又は2に記載の成形品。
- 前記艶消し剤(B)は、前記凹部の形成に寄与する艶消し剤(b1)と、前記凸部の形成に寄与する艶消し剤(b2)とを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形品。
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