JP6383561B2 - インサート成形品及び複合物品 - Google Patents
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Description
これらの文献において、加飾フィルムのベース樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、これらの混合樹脂等が用いられている。
本発明は、可撓性及び真空成形性に優れ、樹脂組成物からなる基部の表面に、他の部品と動的に接触した際に軋み音の発生を抑制する樹脂膜部の形成に好適なインサート成形用フィルム、並びに、これらの基部及び樹脂膜部を備える積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)を製造する方法を提供することを目的とする。
1.ゴム質重合体に由来する部分(a1)と、ビニル系樹脂に由来する部分(a2)とを含むゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂を含有し、且つ、JIS K 7121−1987に準ずる融点が0〜120℃の範囲にある熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とするインサート成形用フィルム。
2.上記ゴム質重合体が、エチレン・α−オレフィン系ゴムである上記1に記載のインサート成形用フィルム。
3.上記エチレン・α−オレフィン系ゴムが、JIS K 7121−1987に準ずる融点が0〜120℃の範囲にある共重合体である上記2に記載のインサート成形用フィルム。
4.厚さが50〜300μmである上記1乃至3のいずれか一項に記載のインサート成形用フィルム。
5.上記1乃至4のいずれか一項に記載のインサート成形用フィルムを射出成形用金型の内部に配置する工程、及び、上記射出成形用金型のキャビティに、樹脂組成物を射出する工程、を備えることを特徴とするインサート成形品の製造方法。
6.樹脂成形部と、該樹脂成形部の表面に接合された樹脂膜部とを備える積層物からなるインサート成形品であって、上記樹脂膜部が上記1乃至4のいずれか一項に記載のインサート成形用フィルムからなり、上記樹脂膜部が他の部品と接触する箇所に配置されることを特徴とするインサート成形品。
7.上記6に記載のインサート成形品と、該インサート成形品の樹脂膜部と接触する他の部品とを備えることを特徴とする複合物品。
また、JIS K 7121−1987に準ずる融点(以下、「Tm」と表記する)は、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度を読みとった値である。
上記ゴム質重合体は、25℃でゴム質であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。本発明においては、ジエン系重合体(以下、「ジエン系ゴム」という)及び非ジエン系重合体(以下、「非ジエン系ゴム」という)のいずれを用いてもよい。また、これらの重合体は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。α−オレフィンの炭素原子数は、耐衝撃性の観点から、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、更に好ましくは3〜8である。
また、上記態様において、上記熱可塑性樹脂(X)に対する、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来する部分及び他のゴムに由来する部分の合計量の割合、即ち、ゴム質重合体部(a1)の割合は、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果及び耐衝撃性の観点から、上記熱可塑性樹脂(X)を100質量%とした場合に、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは40〜85質量%、更に好ましくは55〜80質量%である。
上記ビニル系樹脂は、ビニル系単量体に由来する構造単位を含むビニル系(共)重合体であり、好ましくは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含むビニル系(共)重合体部である。即ち、好ましい態様において、上記樹脂部(a2)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の一種又は二種以上からなるビニル系(共)重合体部であってよいし、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の一種又は二種以上と、他のビニル系単量体に由来する構造単位の一種又は二種以上と、からなるビニル系(共)重合体部であってもよい。
尚、上記樹脂部(a2)を構成するビニル系樹脂に含まれる、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量の下限は、フィルムの剛性及び外観性の観点から、好ましくは50質量%、より好ましくは60質量%、更に好ましくは65質量%である。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記アミド基含有不飽和化合物としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン、4−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
本発明において、上記樹脂部(a2)を構成するビニル系樹脂が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位とを含むビニル系共重合体である場合、これらの構造単位の合計量は、フィルムの機械的強度及び耐薬品性の観点から、ビニル系共重合体の全量に対して、好ましくは70〜100質量%であり、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位及びシアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有割合は、機械的強度及び耐薬品性の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは55〜95質量%及び5〜45質量%、より好ましくは60〜90質量%及び10〜40質量%、更に好ましくは65〜80質量%及び20〜35質量%である。
本発明に係る熱可塑性樹脂(X)は、ゴム強化ビニル系樹脂であり、特に、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来する重合体部(以下、「エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体部」という)と、芳香族ビニル化合物に由来するビニル系(共)重合体部からなるビニル系樹脂部とを有する、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含むことが好ましい。
また、上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂と、ジエン系ゴムに由来する重合体部(以下、「ジエン系重合体部」という)と、芳香族ビニル化合物に由来するビニル系(共)重合体部からなるビニル系樹脂部とを有する、ジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂とを併用すると、インサート成形法により形成される樹脂膜部における耐衝撃性を更に向上させることができる。
また、上記レドックス型重合開始剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
乳化重合により得られたラテックスに対しては、通常、凝固剤による樹脂成分の凝固が行われ、粉体等とされる。その後、水洗等によって精製し、乾燥して回収される。凝固に際しては、従来、公知の凝固剤が用いられ、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
グラフト率(%)={(S−T)/T}×100
上記式中、Sはゴム強化樹脂1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で1時間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化樹脂1グラムに含まれるエチレン・α−オレフィン系ゴム、ジエン系ゴム等のゴム質重合体の質量(g)である。ゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外分光分析、熱分解ガスクロマトグラフィー、CHN元素分析等により得ることができる。
尚、アセトン可溶分は、例えば、10グラムのゴム強化樹脂を、100〜200mlのアセトンに投入し、振とう機等を用いて、25℃で2〜3時間の振とうを行い、生成した不溶分及び可溶分を分離した後の可溶分である。
ゴム強化ビニル系樹脂を含むゴム強化樹脂をアセトンに投入し、遠心分離後に回収されたアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製し、ウベローデ粘度管のより、30℃で各濃度における溶液の還元粘度を測定し、極限粘度[η]を求める。
上記他の熱可塑性樹脂は、一種単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱可塑性樹脂組成物が他の熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量の上限は、上記熱可塑性樹脂(X)100質量部に対して、好ましくは80質量部、より好ましくは70質量部である。
その他、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等を用いることができる。
上記オレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、オレフィン共重合体ワックス(例えば、エチレン共重合体ワックス)等が挙げられ、これらは、部分酸化物であってもよい。尚、上記オレフィン系ワックスが共重合体である場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、4−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のオレフィンに由来する構造単位を二つ以上含む共重合体;オレフィンに由来する構造単位の少なくとも一つと、オレフィンと共重合可能な単量体(不飽和カルボン酸又はその酸無水物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等)に由来する構造単位とからなる共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体のいずれでもよい。
また、上記オレフィン系ワックスの粘度(140℃)は、離型性の観点から、好ましくは100〜10,000cps、より好ましくは100〜5,000cpsである。
上記変性シリコーンオイルとしては、アルキル変性シリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
上記積層物(軋み音低減化複合物、本発明のインサート成形品)5は、インサート成形用フィルムを射出成形用金型の内部に配置する工程(以下、「第1工程」という)、及び、上記射出成形用金型のキャビティに、樹脂組成物を射出する工程(以下、「第2工程」という)を備える方法により製造することができる(図1参照)。尚、第1工程は、図1(A)に示されるように、特定の形状に加工していないフィルムをそのまま(インサート成形用フィルム1)を用いる工程であってよいし、図1(B)に示されるように、未加工のインサート成形用フィルム1を、予め、別の工程に供して、所定の形状を有するフィルム構造体1aとした後、これを用いる工程であってもよい。
図3は、積層物5として、二箇所の凹部又は溝部を有し、これらを有する側の表面に樹脂膜部4を形成したものと、他の部品として、樹脂製の接続部材7とを用いてなる複合物15を示す。この図3においては、樹脂製の接続部材7が、積層物5における凹部又は溝部の樹脂膜部4と接触するように嵌合されているので、振動、ねじれ、衝撃等による軋み音発生の抑制効果を得ることができる。
インサート成形用フィルムの製造は、下記の原料を用いて調製された熱可塑性樹脂組成物のTダイ押出成形により行った。尚、樹脂成分等のグラフト率、極限粘度[η]等の測定は、上記記載の方法に準じて行った。
ゴム質重合体に由来する部分を含む熱可塑性樹脂として、下記の合成例1〜4で得られたエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(原料P1〜P4)と、下記の合成例5で得られたブタジエンゴム質重合体強化ビニル系樹脂(原料P5)とを用いた。
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)25部、スチレン11部、アクリロニトリル4部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部及びトルエン110部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.09部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。60分間重合した後、スチレン44部、アクリロニトリル16部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.86部を3時間かけて連続的に添加した。重合を開始して4時間経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は98%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料P1)を得た。この原料P1に含まれる上記グラフト樹脂におけるグラフト率は48%、未グラフトのビニル系共重合体(以下、「アセトン可溶分」ともいう。)の含有率は63%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.42dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P1のTmを測定したところ、40℃であった。
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)10部、スチレン13.2部、アクリロニトリル4.8部、tert−ドデシルメルカプタン0.7部及びトルエン100部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.11部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。70分間重合した後、スチレン52.8部、アクリロニトリル19.2部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.42部を3時間30分かけて連続的に添加した。重合を開始して4時間30分経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は97%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料P2)を得た。この原料P2に含まれる上記グラフト樹脂におけるグラフト率は52%、アセトン可溶分の含有率は85%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.25dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P2のTmを測定したところ、40℃であった。
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)50部、スチレン7.3部、アクリロニトリル2.7部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部及びトルエン220部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.07部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。60分間重合した後、スチレン29.3部、アクリロニトリル10.7部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.25部を2時間30分かけて連続的に添加した。重合を開始して3時間30分経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は98%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料P3)を得た。この原料P3に含まれる上記グラフト樹脂におけるグラフト率は40%、アセトン可溶分の含有率は30%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.40dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P3のTmを測定したところ、40℃であった。
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)50部、スチレン7.3部、アクリロニトリル2.7部、tert−ドデシルメルカプタン0.3部及びトルエン220部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.07部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。60分間重合した後、スチレン29.3部、アクリロニトリル10.7部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.25部を2時間30分かけて連続的に添加した。重合を開始して3時間30分経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は98%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料P4)を得た。この原料P4に含まれる上記グラフト樹脂におけるグラフト率は25%、アセトン可溶分の含有率は38%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.35dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P4のTmを測定したところ、40℃であった。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水42部、ロジン酸カリウム0.35部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、平均粒子径300nmのポリブタジエンゴム(ゲル含有率80%)32部を含むラテックス80部、平均粒子径600nmのスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(スチレン単位量30%)8部を含むラテックス19部、スチレン14部及びアクリロニトリル6部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達したところで、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.3部を、イオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。
30分間重合させた後、イオン交換水45部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部及びクメンハイドロパーオキサイド0.1部を、3時間かけて連続的に添加した。その後、更に1時間重合を継続し、反応系に、2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。
次いで、反応生成物を含むラテックスに、硫酸水溶液を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料P5)を得た。この原料P5に含まれるスチレン・ブタジエンゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)におけるグラフト率は55%、未グラフトの(共)重合体(アセトン可溶分)の含有率は38%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.45dl/gであった。尚、この原料P5のTmは観測されなかった。
ゴム質重合体に由来する部分を含まない熱可塑性樹脂として、下記のアクリロニトリル・スチレン共重合体(原料Q1〜Q3)を用いた。
(1)原料Q1
アクリロニトリル単位及びスチレン単位の割合が、それぞれ、27%及び73%であり、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が、0.30dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体
(2)原料Q2
アクリロニトリル単位及びスチレン単位の割合が、それぞれ、27%及び73%であり、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が、0.45dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体
(3)原料Q3
アクリロニトリル単位及びスチレン単位の割合が、それぞれ、27%及び73%であり、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が、1.20dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体
三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート「NOVAREX7022PJ」(商品名)を用いた。粘度平均分子量(Mv)は、18,700であり、MFR(温度240℃、荷重10kg)は、18g/10分である。
実施例1〜14及び比較例1〜3
原料〔P〕、〔Q〕及び〔R〕を用い、表1及び表2に記載の割合で、ヘンシェルミキサーにて混合した後、この混合物を、日本製鋼社製2軸押出機「TEX44αII」(型式名)に供給して溶融混練(シリンダー設定温度:200℃〜250℃)し、熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを得た。
そして、このペレットを、フィルム成形機に配設された、Tダイ(ダイ幅;1600mm、リップ間隔1mm)を備える、スクリュー径115mmの押出機に供給して、Tダイから、樹脂温度240℃の溶融樹脂を吐出させ、軟質フィルムとした。その後、この軟質フィルムをエアーナイフによりキャストロール(ロールの表面温度;90℃)に面密着させ、表1及び表2に示す肉厚となるように運転して、冷却固化したインサート成形用フィルムを得た。
尚、上記溶融樹脂の温度は、熱電対式温度計を用いて測定した。また、インサート成形用フィルムの厚さは、シックネスゲージ(型式「ID−C1112C」、ミツトヨ社製)を用い、フィルム製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で厚さを測定し、その平均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算から除去した。
2−1.製膜性
上記のようにして測定したフィルムの各点における厚さの高低差により、製膜性を判定した。
◎:差が20μmであり、製膜性に優れる
○:差が20μm以上30μm未満であり製膜性が良好である
△:差が30μm以上40μm未満であり製膜性にやや劣る
×:差が40μm以上であり製膜性に劣る
インサート成形用フィルムを、70mm(MD)×25mm(TD)の大きさに切り出し、射出成形機の金型内に固定し、その後、金型を閉じ、240℃で溶融させた耐熱ABS樹脂「テクノMUH E1500」(テクノポリマー社製)を射出し、複合物を成形した。次いで、金型から複合物を取り出し、温度23℃、湿度50%で24時間状態調節後、90度剥離試験(MD方向のフィルムの引張速度:1mm/秒)に供し、インサート成形用フィルムの部分と、射出樹脂成形部との密着性を、下記基準により評価した。
○:インサート成形用フィルムの部分が樹脂成形部と剥がれずフィルムが破断した
△:インサート成形用フィルムの部分が樹脂成形部と接着面で僅かに剥離するが途中でフィルムが破断した
×:インサート成形用フィルムの部分が樹脂成形部と接着面で剥離しフィルムが破断しなかった
インサート成形用フィルムを、100mm(MD)×100mm(TD)の大きさに切り出し、MD方向の対称軸に沿って折り曲げた後、TD方向の対称軸に沿って折り曲げた。次いで、このように折り曲げた状態のフィルムを、JIS Z0237に準拠して手動式圧着ロール(2,000g)を用い、5mm/秒の速度で各折り目上を2往復させた後、折り目を広げて元の状態に戻し、折り目を目視にて観察し、下記基準で判定した。折り目が割れていないものが可撓性に優れる。
○:折り目が割れておらず、再度折り曲げて広げても折り目が割れなかった
△:折り目が割れていないが、再度折り曲げて広げたら折り目が割れた
×:折り目が割れた
インサート成形用フィルムを、300mm(MD)×210mm(TD)の大きさに切り出し、図5(IV)に示す成形品を、図4に示す真空成形用型8を備える成光産業社製小型真空成形機「300X」を用いて作製した。図4に示す真空成形用型8は、高さが45mmであり、底面の大きさが150mm×150mmであり、上面の大きさが140m×140mmであり、上面の中央には、100mm×100mmの大きさであって、深さ20mmの凹部が形成されており、全体に渡って微細な貫通孔を有する。
上記の大きさのインサート成形用フィルムを、真空成形用型8の上面から上方に、40mmの間隔をもって固定した(図5(I))。その後、予め、450℃に加熱したヒーター(図示せず)を用いて、インサート成形用フィルムを、その周縁側から加熱した。次いで、真空成形用型8を上方に移動させて、上面と、インサート成形用フィルムとを接触させた(図5(II))。その後、真空成形用型8の底面側より減圧し、インサート成形用フィルムを真空成形用型8の凹部の内表面に密着させ、真空成形を実施した(図5(III))。次いで、真空成形用型8を脱型して、図5(IV)に示す成形品を得た。真空成形用型8の凹部への追従性を目視観察し、下記基準で評価した。
○:真空成形用型8の凹部への追従性が良好であり、しわが観察されなかった
×:しわが観察された
スティックスリップ試験は、ジグラー(ZIEGLER)社製スティックスリップ試験機「SSP−02」(型式名)に、上記試験体18と、AES樹脂「テクノAESW210」(テクノポリマー社製)若しくはABS/PCアロイ「エクセロイCK20」(テクノポリマー社製)からなる試験片20(60mm×100mm×4mm)、PMMA「アクリプレン」(三菱レイヨン社製、60mm×100mm×80μm)又はPET「テイジンテトロンフィルム」(帝人デュポンフィルム社製、60mm×100mm×50μm)からなるフィルムを、図7に示すようにセットし、両者を3回擦り合わせて、異音リスク指数を測定した。測定条件は、温度:23℃、湿度:50%RH、荷重:40N、速度:10mm/秒、振幅:20mmである。異音リスク指数が小さいほど、軋み音の発生リスクが低くなる。尚、比較例3では、TmのないPMMAからなるフィルム同士を擦り合わせた。また、各表において、「−」で示したところは、実験を行っていないことを示す。
一方、本発明の構成を有する組成物を用いた実施例1〜14は、可撓性及び真空成形性に優れ、軋み音が発生しにくい構成を有することが明らかである。
1a:所定形状のフィルム構造体
2:樹脂成形部形成用原料
3:樹脂成形部
4:樹脂膜部
5:積層物(インサート成形品又は軋み音低減化複合物)
7:接続部品
11:射出成形用金型(雄型)
12:射出成形用金型(雌型)
13:吸引孔
14:樹脂成形部形成用原料の導入口
15:複合物
16:支持体
18:軋み音評価用試験体
20:軋み音評価用ステージ
Claims (5)
- 樹脂成形部と、該樹脂成形部の表面に接合された樹脂膜部とを備える積層物からなるインサート成形品であって、
前記樹脂膜部がゴム質重合体に由来する部分(a1)と、ビニル系樹脂に由来する部分(a2)とを含むゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂を含有し、且つ、JIS K 7121−1987に準ずる融点が0〜120℃の範囲にある熱可塑性樹脂組成物からなるインサート成形用フィルムからなり、前記樹脂膜部が他の部品と接触する箇所に配置されることを特徴とするインサート成形品。 - 前記ゴム質重合体が、エチレン・α−オレフィン系ゴムである請求項1に記載のインサート成形品。
- 前記エチレン・α−オレフィン系ゴムが、JIS K 7121−1987に準ずる融点が0〜120℃の範囲にある共重合体である請求項2に記載のインサート成形品。
- 前記インサート成形用フィルムの厚さが50〜300μmである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインサート成形品。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインサート成形品と、該インサート成形品の樹脂膜部と接触する他の部品とを備えることを特徴とする複合物品。
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