以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1は、第1の実施形態の調光部材20を備えるサンバイザ10の正面図である。このサンバイザ10は、調光部材20と、調光部材20を支持する調光部材支持部10aと、調光部材支持部10aに設けられた入力部10b、制御部10c、電源部10d及び本体支持部10eとを有している。
調光部材20は、電圧印加によって透過率を調節可能な部材である。調光部材20は、板状に形成されている。調光部材20は、その表面に入射した可視光を遮蔽する遮光モードと、その表面に入射した可視光を透過する透過モードとをとることができる。また、調光部材20は、その表面に入射した可視光を遮蔽する遮光モードと、その表面に入射した可視光を透過する透過モードと、さらに、その表面に入射した可視光を反射する反射モードとをとるように構成することもできる。調光部材20を反射モードとすることにより、調光部材20をミラーとして使用することが可能となる。
入力部10bは、サンバイザ10の電源のオン/オフ及び調光部材20の遮光モード/透過モード/反射モードの切り替えなどを行うための入力を受けて、制御部10cに信号を送信する。制御部10cは、入力部10bなどのからの信号を受けて、調光部材20の駆動などのサンバイザ10の制御を行う。電源部10dは、電池、電源入力端子などで構成され、サンバイザ10の各部に電源を供給する。本体支持部10eは、サンバイザ10本体を支持するとともに、通常のサンバイザと同様に、サンバイザ10本体の手前方向への跳ね上げや、サンバイザ10本体の右手前方向への旋回を可能としている。
図2は、第1の実施形態のサンバイザ10が取り付けられている自動車1の正面図である。このサンバイザ10は、自動車1の内部であって、そのフロントウインドウ5と運転席(図示せず)との間に取り付けられている。サンバイザ10が自動車1に取り付けられる場合においては、サンバイザ10の入力部10b、制御部10c及び電源部10dは、その全て又は一部が、サンバイザ10の調光部材支持部10aではなく、自動車1に設けられていてもよい。
本発明の発明者は、調査研究の結果、調光部材20を自動車内などで利用する場合において、調光部材がその性能に影響を与える高温環境下に置かれうることを見いだし、その上で、そのような高温になりうる環境下での使用に適した調光部材20を発明した。
図3は、第1の実施形態の調光部材20の構成を示す斜視図である。調光部材20は、透明基材21と液晶パネルを有する積層体30(この「積層体」は、「調光セル」と称されることもある。)と透明基材22とを積層した構造を有しており、透明基材21,22と積層体30とは接合層23,24を介して接合されている。また、積層体30は、配線30cを有している。この配線30cは、制御部10c及び電源部10dに接続され、制御信号及び駆動電力を積層体30に提供する。
透明基材21,22は、透明な樹脂によって形成されており、ガラス転移温度の高い樹脂であるポリカーボネートを含んでいることが好ましく、ポリカーボネートによって形成されたものがさらに好ましい。
この「透明基材」における「透明」とは、透明基材を介して当該透明基材の一方の側から他方の側を透視し得る程度の透明性を有していることを意味しており、例えば、30%以上、より好ましくは70%以上の可視光透過率を有していることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
透明基材21,22は、JIS K7191(ISO75−1若しくはISO75−2)に準拠して1.80Mpaの荷重で測定した荷重撓み温度が85℃以上であるのが好ましく、120℃以上であるのがさらに好ましい。荷重撓み温度とは、試験法規格で定められた荷重を与えた状態で試料の温度を上げていったときに、撓みの大きさが試験法規格で定められた値になる温度である。この荷重撓み温度が85℃未満であると、高温環境下において、透明基材21,22の撓みによって、積層体30の液晶パネルに液晶ムラが生じやすくなり、好ましくない。荷重撓み温度を120℃以上とすると、液晶ムラの発生がより抑えられたものとなる。
透明基材21,22は、その厚みが、1mm以上、3.5mm以下とするのが好ましい。透明基材21,22の厚みは、強度及び光学特性に優れたものとするためには、1mm以上、5mm以下とするのが好ましい。しかし、透明基材21,22の厚みが3.5mmよりも大きいと、高温環境下において、透明基材21,22の熱応力緩和によって、積層体30の液晶パネルに液晶ムラが生じやすくなり、好ましくない。
透明基材21,22は、積層体30と貼り合わされる平坦な部分の反り量が、1.0mm以内であるのが好ましく、0.6mm以内であるのがさらに好ましい。この反り量は、透明基材21,22の反りの大きさを示す値であり、透明基材21,22の平坦な部分を水平面上に載置したときの透明基材21,22の該水平面と接する面とは反対側の面の該水平面からの高さの最大値と最小値との差に相当する値である。透明基材21,22の平坦部の反り量を1.0mm以内とすると、液晶ムラの発生がより抑えられたものとなる。
透明基材21,22は、その最大長さが500mm以下であるのが好ましく、450mm以下であるのがより好ましく、400mm以下であるのがさらに好ましい。この最大長さは、透明基材21,22が矩形形状のとき、その矩形形状の対角線の長さとなる。透明基材21,22の最大長さを500mm以下とすることにより、透明基材21,22の荷重撓みや反りの大きさを抑えることができる。
透明基材21,22は、射出成形により形成されたものであるのが好ましく、射出圧縮成形により形成されたものであるのがさらに好ましい。射出圧縮成形は、射出成形と圧縮成形とを組み合わせた成形方法であり、圧縮ストローク分だけ残した状態の金型に溶融樹脂を射出した後、圧縮成形を行うものである。透明基材21,22を射出圧縮成形により形成することにより、透明基材21,22の応力分布が均一となり、透明基材21,22の荷重撓みや反りの大きさを抑えることができる。
透明基材21,22は、ISO1133に準拠して温度300℃、荷重1.2kgfの条件で測定したメルトボリュームフローレイト(MVR:Melt Volume−flow Rate)が25cm3/10min以上のポリカーボネートによって形成されたものが好ましく、MVRが35cm3/10min以上のポリカーボネートによって形成されたものがさらに好ましい。射出成形時に流動性のMVRが25cm3/10min以上のポリカーボネートを用いると、射出成形時の応力が小さくなり、形成される透明基材21,22の反りの発生を抑えることができる。
接合層23,24は、光学的に透明であるOCA(Optical Clear Adhesive)又はOCR(Optical Clear Resin)などにより構成されている。また、接合層23,24は、界面における光の反射を低減するために、透明基材21,22と実質的に同じ屈折率を有していることが好ましい。この接合層23,24の厚みは、量産性、価格及び強度の点から、1000μm以下とするのが好ましい。
接合層を介して2つの剛性を有する部材を積層させる場合、接合層と剛性を有する部材との間に入り込んだ空気は、接合層と剛性を有する部材との間から抜けにくく、気泡として入り込んでしまう。そのため、例えば、図6の下から透明基板22、接合層24、積層体30、接合層23及び透明基板21の順に積層するとした場合において、接合層23が50μmより薄いと、積層された透明基材22、接合層24、積層体30及び接合層23の上に透明基材21を積層する際に、積層された透明基材22、接合層24、積層体30及び接合層23と透明基材22とが共に剛性を有することから、接合層23と透明基材21との間に気泡が入り込みやすくなる。
他方、透明基材22及び接合層24の上に積層体30を積層する際は、その間に空気が入り込んでも、剛性を有さない積層体30を湾曲させながら積層していくことで空気の排出を誘導することができる。したがって、この場合においては、接合層24は、50μmより薄くても、気泡は入り込みにくい。
図4は、第1の実施形態の積層体30の構成を示す斜視図である。第1の実施形態の積層体30は、電圧印加によって透過率を調節可能な液晶パネル(遮光/透過)40として構成されている。この液晶パネル(遮光/透過)40は、吸収型偏光板41と液晶セル45と吸収型偏光板42とを有している。
この液晶パネル(遮光/透過)40は、その表面に入射する可視光を遮蔽する遮光モードと、その表面に入射する可視光を透過する透過モードとをとることができる。また、この液晶パネル(遮光/透過)40は、遮光モードと透過モードとの間において、可視光の遮蔽率(吸収率)を連続的又は段階的に調整できるようになっている。
この構成においては、調光部材20を遮光モードにする場合には、液晶パネル(遮光/透過)40を遮光モードとする。調光部材20を透過モードにする場合には、液晶パネル(遮光/透過)40を透過モードとする。
図5は、本発明の積層体30の別の実施形態の構成を示す斜視図である。後述の第3及び第4の実施形態の積層体30は、この構成を有するものである。この実施形態の積層体30は、液晶パネル(遮光/透過)40と液晶パネル(透過/反射)50とを積層した構造を有している。液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50は、共に、電圧印加によって透過率を調節可能となっている。
この液晶パネル(透過/反射)50は、反射型偏光板51と液晶セル55と吸収型偏光板52とを有している。液晶パネル(遮光/透過)40と液晶パネル(透過/反射)50とは、接合層60を介して接合した構造を有している。接合層60は、光学的に透明であるOCA、OCRなどにより構成されている。この接合層60の厚みは、量産性、価格及び強度の点から、2000μm以下とするのが好ましい。
液晶パネル(遮光/透過)40は、その表面に入射する可視光を遮蔽する遮光モードと、その表面に入射する可視光を透過する透過モードとをとることができる。また、この液晶パネル(遮光/透過)40は、遮光モードと透過モードとの間において、可視光の遮蔽率を連続的又は段階的に調整できるようになっている。
液晶パネル(透過/反射)50は、その表面に入射する可視光を透過する透過モードと、その表面に入射する可視光を反射する反射モードとをとることができる。また、この液晶パネル(透過/反射)50は、遮光モードと透過モードとの間において、可視光の反射率を連続的又は段階的に調整できるようになっている。
この構成においては、調光部材20を遮光モードにする場合には、液晶パネル(遮光/透過)40を遮光モードとし、液晶パネル(透過/反射)50を透過モードとする。調光部材20を透過モードにする場合には、液晶パネル(遮光/透過)40を透過モードとし、液晶パネル(透過/反射)50を透過モードとする。調光部材20を反射モードにする場合には、液晶パネル(遮光/透過)40を遮光モードとし、液晶パネル(透過/反射)50を反射モードとする。なお、調光部材20を反射モードにする場合は、液晶パネル(遮光/透過)40を透過モードとし、液晶パネル(透過/反射)50を反射モードとする構成も可能である。
この実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40は、VA(Virtical Alignment)方式の液晶を用い、2つの吸収型偏光板41,42をクロスニコルにより配置して、ノーマリーブラックのものとして構成しており、液晶パネル(透過/反射)50は、TN(Twisted Nematic)方式の液晶を用い、反射型偏光板51と吸収型偏光板52とをクロスニコルにより配置して、ノーマリーホワイトのものとして構成している。
しかし、本発明の液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50は、その構成に限定されない。液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50の液晶として、VA方式、TN方式、IPS(In Plane Switching)方式、FFS(Fringe Field Switching)方式又はGH(Guest Host)方式など任意のものを用いることができる。液晶パネル(遮光/透過)40は、2つの吸収型偏光板がパラレルニコルにより配置されたものであってもよく、また、1つのみの吸収型偏光板を有するものであってもよく、さらに、吸収型偏光板を有さないものであってもよい。液晶パネル(透過/反射)50は、反射型偏光板51及び吸収型偏光板52がパラレルニコルにより配置されたものであってもよい。また、本発明の調光部材は、3つ以上の液晶パネルを有するものであってもよい。
図6は、第1の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40の液晶セル45の構成を示す斜視図である。液晶パネル(透過/反射)50の液晶セル55も、液晶パネル(遮光/透過)40と同様の構成を有している。この液晶セル45は、ガラス基板451と透明電極453と配向膜455と液晶層457と配向膜456と透明電極454とガラス基板452とを積層した構成を有している。ガラス基板451,452は、ガラス以外の材料を用いて作製された基板、例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタラートなどの樹脂を用いて作製された基板とすることも可能である。
配向膜455,456は、一定方向に微細な溝のある膜であり、液晶をその溝に沿って配向させる機能を有する。この配向膜455,456は、ポリイミドなどによって構成されている。透明電極453,454は、液晶層457の液晶に電圧を印加するための電極であり、ITO(Indium Tin Oxide)などにより構成されている。
図7は、液晶層457の構成を示す概念斜視図であり、図8は、液晶層457の水平方向の断面図であり、図9は、液晶層457の垂直方向の断面図である。液晶層457は、液晶層を取り囲むように形成された壁状のシール部81を有している。このシール部81は、エポキシ樹脂などによって構成されている。
このシール部81と配向膜455,456とに囲まれた空間が、液晶が収容される液晶充填部80となる。液晶充填部80には、配向膜455,456を支持する複数の柱状スペーサ82が設けられている。配向膜455,456間の距離(図9のh)は、通常、1〜20μm、好ましくは、2〜10μmに設定される。
柱状スペーサ82は、上面と下面とを有する円柱状に形成されたものであり、その上面及び下面の少なくとも一方が配向膜455,456に固定されている。つまり、柱状スペーサ82は、液晶充填部80を区画する壁部である配向膜455,456に固定されている。また、柱状スペーサ82は、配向膜455,456ではなく、透明電極453,454に固定されていてもよい。この柱状スペーサは円柱状でなくてもよく、四角柱など任意の柱状の形態のものを利用できる。
柱状スペーサ82は、各種の樹脂材料によって構成することが可能である。例えば、一般的に使用されるネガ型感光性樹脂やポジ型感光性樹脂などが挙げられる。柱状スペーサ82の高さは、配向膜455,456間の距離(図9のh)と同程度であり、通常、1〜20μm、好ましくは、2〜10μmである。柱状スペーサ82の直径は、通常、10〜50μm程度、好ましくは、20〜40μm程度である。
柱状スペーサ82は、液晶充填部80を区画する壁部である配向膜455,456に固定されていることから、安定して配向膜455,456を支持することができる。さらに、柱状スペーサ82は、面によって配向膜455,456を支持することから、より安定して配向膜455,456を支持することができる。このように、柱状スペ−サ82は、配向膜455,456との密着力が高く、自動車などの乗り物において生じる振動によるギャップムラに強く、手で触れたときにおいてもギャップムラが発生しにくいという利点を有している。
図10は、液晶層457の別の構成を示す概念斜視図である。この構成において、液晶充填部80には、柱状スペーサではなく、配向膜455,456を支持する複数の接着ビーズスペーサ83が設けられている。
接着ビーズスペーサ83は、表層に熱可塑性樹脂が被覆されたものである。接着ビーズスペーサ83は、この表層の熱可塑性樹脂により、配向膜455と配向膜456とのうちの少なくとも一方に加熱接着されている。つまり、接着ビーズスペーサ83は、液晶充填部80を区画する壁部である配向膜455,456に固定されている。
接着ビーズスペーサ83は、液晶充填部80を区画する壁部である配向膜455,456に固定されていることから、配向膜455,456に固定されない通常のビーズスペーサとは異なり、安定して配向膜455,456を支持することができる。また、接着ビーズスペ−サ83は、配向膜455,456と接着していることから、自動車などの乗り物において生じる振動によるギャップムラに強いという利点を有している。
接着ビーズスペーサ83は、各種の樹脂材料によって構成することが可能である。例えば、アクリル系樹脂のコアに熱可塑性樹脂がコーティングされた材料などが挙げられる。接着ビーズスペーサ83の大きさは、配向膜455,456間の距離(図9のh)と同程度である。
液晶充填部80の液晶量は、充填される液晶の体積と液晶が充填される前の液晶充填部80のうちの液晶が充填されるべき領域の容積との比率が92%以上、100%以下となるようにするのが好ましい。積層体30を透明基材21,22に貼り合わせるときや、高温環境下において、液晶量が92%よりも少ないと、液晶抜けが発生しやすくなり、100%よりも多いと、四つ角などに液晶ムラが生じやすくなり、好ましくない。
充填される液晶の体積は、大気圧における液晶の体積である。液晶が充填される前の液晶充填部80のうちの液晶が充填されるべき領域の容積は、大気圧における液晶充填部80のうちの液晶が充填されるべき領域の容積であり、図8及び図9の例でいうと、(縦m×横n×高さh)−(スペ−サ82,83の体積)により算出される。充填される液晶の体積は、例えば、(液晶の重量)/(液晶の密度)により算出される。
図11は、ODF方式による液晶の充填方法を示す概念図である。ODF方式は、ガラス基板452及び透明電極454の上に配向膜456、シール部81及びスペーサ82,83を形成した後、インクジェットやディスペンス塗布によって液晶85を塗布し、その後、その上に、真空環境下において、配向膜455、透明電極453及びガラス基板451を貼り合わせることにより、液晶充填部80に液晶85を充填する。ここで、スペーサ82,83の形成は、柱状スペーサ82の場合は、フォトリソグラフィ技術などにより行われ、接着ビーズスペーサ83の場合は、散布及び加熱接着により行われる。
このODF方式は、インクジェットやディスペンス塗布により液晶を塗布するので、液晶量の制御が容易であり、液晶量が100%未満であるときの制御もしやすいという利点を有している。また、ODF方式は、製造タクトがよく、液晶の塗布の際に多面取りも可能であるという利点を有している。但し、ODF方式は、真空注入方式と比較して、設備投資費用が高額となる。
図12は、真空注入方式による液晶の充填方法を示す概念図である。真空注入方式においては、最初に、ガラス基板452及び透明電極454の上に配向膜456と欠損部81aを有するシール部81とを形成した後、その上に、接着ビーズスペーサ83を散布した配向膜455、透明電極453及びガラス基板451を貼り合わせる。次に、加熱により、接着ビーズスペーサ83を配向膜455,456に加熱接着させる。その後、シール部81の欠損部81aを真空環境下において液晶85に浸した後に気圧を大気圧に戻すことにより、シール部81の欠損部81aから液晶85が液晶充填部80に進入し、それにより、液晶充填部80に液晶85を充填する。
この真空注入方式は、液晶量の制御が難しく、特に液晶量を100%未満とする制御が難しい。また、真空注入方式は、ODF方式と比較して、製造タクト悪く、液晶の注入時に多面取りができない。しかし、真空注入方式は、ODF方式と比較して、設備投資費用が低額であるとの利点を有している。
このように、液晶充填部80に設けるスペーサとしては、配向膜455,456との密着性の大きい柱状スペーサ82が好ましく、液晶充填部80への液晶の充填の方式としては、液晶量の制御の容易さなどの観点から、ODF方式とするのが好ましい。しかしながら、液晶充填部80のスペーサとして接着ビーズスペーサ83を採用し、また、液晶充填部80への液晶の充填の方式として真空注入方式を採用したとしても、本発明の要件を充足する限りにおいては、本発明の効果を得ることが可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
サンプル1から21として、液晶の充填方式、液晶充填部80のスペ−サの種類、液晶充填部80の液晶量、透明基材21,22の線膨張係数、透明基材21,22の荷重撓み温度及び透明基材21,22の厚みのうちの少なくとも1つがそれぞれ異なる調光部材20を用意した。
調光部材20の大きさは、89×330mmとした。透明基材21,22は、ポリカーボネート及びアクリル樹脂を含む樹脂で構成し、その線膨張係数及び荷重撓み温度は、市販されているポリカーボネート及びアクリル樹脂の選択、及び、ポリカーボネートとアクリル樹脂の含有量を調整することにより調整した。積層体30の液晶パネル40としては、全体の厚さが4.35mmであり、液晶層457の厚さが5μmである液晶パネルを用いた。接合層23,24は、OCAで構成し、その厚さは250μmとした。
液晶充填部80の液晶量は、大気圧における充填された液晶の体積と、大気圧における液晶が充填される前の液晶充填部80のうちの液晶が充填されるべき領域の容積との比率で示している。
線膨張係数は、JIS K7197に準拠して測定したものである。荷重撓み温度は、JIS K7191(ISO75−1若しくはISO75−2)に準拠して、1.80Mpaの荷重で測定したものである。
各サンプルについて、調光部材20が製造された直後、すなわち後述する耐熱試験前に、液晶ムラ又は液晶抜けが発生しているかを、目視及び拡大鏡を用いて観察することにより確認した。また、調光部材20が高温環境下において用いられる可能性があることを想定して、調光部材20を恒温槽にて80℃の条件で400時間保管する耐熱試験を行い、耐熱試験後に液晶ムラ又は液晶抜けが発生しているかを、目視及び拡大鏡を用いて観察することにより確認した。
表1は、サンプル1から15の結果を示したものである。これらのサンプルは、液晶がODF方式で充填され、液晶充填部に柱状スペーサを有するものである。
透明基材21,22の線膨張係数が7.5×10−5/Kよりも大きく、透明基材21,22の撓み温度が85℃よりも低いサンプル9及び10において、耐熱試験後の液晶ムラの発生が確認された(判定「×」)。透明基材21,22の厚みが3.5mmよりも大きいサンプル14及び15において、耐熱試験後の液晶ムラの発生が確認された。液晶量が100%よりも多いサンプル1及び2において、実用上許容できる程度の耐熱試験前の四つ角の液晶ムラの発生が確認され(判定「△」)、液晶量が92%よりも少ないサンプル8において、実用上許容できる程度の耐熱試験前の液晶抜けの発生が確認された(判定「△」)。サンプル3から7及び11から13においては、液晶ムラ又はドット抜けの発生は確認されなかった(判定「○」)。
この結果から、液晶がODF方式で充填され、液晶充填部80に柱状スペーサ82を有する調光部材20においては、高温環境下での液晶ムラの発生を抑制するために、透明基材21,22の厚みを3.5mm以下とし、透明基材21,22の線膨張係数を7.5×10−5/K以下とし、透明基材21,22の荷重撓み温度を85℃以上とするのが好ましいことが理解される。さらに、液晶ムラと液晶抜けの発生を抑制するために、液晶量を92%以上、100%以下とするのがさらに好ましいことが理解される。
表2は、サンプル16から21の結果を示したものである。これらの実施例は、液晶が真空注入方式で充填され、液晶充填部80に柱状スペーサ、ビーズスペ−サ又は接着ビーズスペーサを有するものである。
液晶量が100%よりも多いサンプル16、18及び20において、耐熱試験前の四つ角に実用上許容できる程度の液晶ムラの発生が確認された(判定「△」)。スペーサとしてビーズスペーサを用いたサンプル19において、耐熱試験におけるビーズ流動にともなう実用上許容できる程度の液晶ムラが観察された(判定「△」)。スペーサとして柱状スペーサ又は接着ビーズスペーサを用いたサンプル17及び21においては、液晶ムラ又はドット抜けの発生は確認されなかった(判定「○」)。
この結果から、液晶が真空注入方式で充填されたものであっても、透明基材21,22の厚みを3.5mm以下とし、透明基材21,22の線膨張係数を7.5×10−5/K以下とし、透明基材21,22の荷重撓み温度を85℃以上とすることで、液晶ムラの発生を実用上許容できる程度に抑制できることが理解される。さらに、スペーサとして柱状スペーサ又は接着ビーズスペーサを用いることで、高温環境下における液晶ムラの発生をさらに抑制できることが理解される。
次に、サンプル22から52として、液晶の充填方式、液晶充填部80のスペ−サの種類、液晶充填部80の液晶量、透明基材21,22の線膨張係数、透明基材21,22の荷重撓み温度、最大長さ及び透明基材21,22の厚みのうちの少なくとも1つがそれぞれ異なる調光部材20を用意した。
サンプル22から40の透明基材21,22は、ポリカーボネート及びアクリル樹脂によって形成されたものである。そのうち、サンプル22から35、39及び40は、ISO1133に準拠して温度300℃、荷重1.2kgfの条件で測定されたMVRが29cm3/10minのものであり、サンプル36は、MVRが28cm3/10minのものであり、サンプル37及び38は、MVRが26cm3/10minのものである。サンプル41から43の透明基材21,22は、ポリカーボネート及びアクリル樹脂によって形成されたものであって、MVRが26cm3/10minのものである。サンプル44及び45の透明基材21,22は、ポリカーボネートによって形成されたものであって、MVRが26cm3/10minのものである。サンプル46から52の透明基材21,22は、ポリカーボネートによって形成されたものであって、MVRが25cm3/10minのものである。
各サンプルについて、サンプル1から21よりも客観的な評価基準を設定して評価を行った。具体的には、耐熱試験後の液晶ムラ部と通常部との全光線透過率の差が1%以下である場合に、液晶ムラなしの「A」判定とし、耐熱試験後の液晶ムラ部と通常部との全光線透過率の差が1%より大きく5%以下である場合に、液晶ムラほぼなしの「B」判定とし、耐熱試験後の液晶ムラ部と通常部との全光線透過率の差が5%より大きい場合に、液晶ムラありの「C」判定とした。全光線透過率は、JIS K 7361に従って測定される。
表3は、サンプル22から40の結果を示したものである。これらのサンプルは、透明基材21,22の最大長さを除き、サンプル1から19と同様の構成を有している。サンプル22から29は、サンプル1から8に対応し、サンプル30から33は、サンプル16から19に対応し、サンプル34から40は、サンプル9から15に対応している。
このサンプル22から40の結果は、サンプル1から19と同様の傾向を示すものとなっている。
表4は、サンプル41から46の結果を示したものである。これらのサンプルは、透明基材21,22の線膨張係数が6.9×10−5/Kであって、透明基材21,22の撓み温度がそれぞれ異なるものとなっている。
透明基材21,22の撓み温度が85℃以上、120℃未満のサンプル41から44において、液晶ムラほぼなしの「B」判定となっており、撓み温度が120℃以上であるサンプル45及び46において、液晶ムラなしの「A」判定となっている。
この結果から、透明基材21,22の荷重撓み温度を120℃以上とすることで、液晶ムラの発生がより抑えられることが理解される。
表5は、サンプル47から52の結果を示したものである。これらのサンプルは、透明基材21,22の線膨張係数が6.9×10−5/K、撓み温度が125℃であって、透明基材21,22の最大長さがそれぞれ異なるものとなっている。
透明基材21,22の最大長さ500mmより大きいサンプル48において、液晶ムラありの「C」判定となっており、最大長さ500mm以下のサンプル47及び49から52において、液晶ムラほぼなしの「B」判定又は液晶ムラなしの「A」判定となっている。また、同じ「A」判定であっても、最大長さが小さいサンプルほど、耐熱試験後の液晶ムラ部と通常部との全光線透過率の差が小さく、つまり、液晶ムラが抑えられたものとなっていることが観察された。
この結果から、透明基材21,22の最大長さを500mm以下とすることで、液晶ムラの発生がより抑えられることが理解される。
次に、サンプル53から57として、透明基材21,22をそれぞれMVRの異なるポリカーボネートで形成した調光部材20を用意した。これらのサンプルは、液晶の充填方式をODF方式、液晶充填部80のスペ−サの種類を柱状スペーサ、液晶充填部80の液晶量を92%、透明基材21,22の線膨張係数を6.9×10−5/K、荷重撓み温度を125℃、最大長さを499mm、厚みを3.5mmとしたものである。
これらのサンプルについて、透明基材21,22の反り量を測定するとともに、サンプル22から52と同様に液晶ムラの観察を行った。透明基材21,22の反り量は、透明基材21,22を水平面に載置した上で、透明基材21,22の該水平面と接する面とは反対側の面の該水平面からの高さをレーザ変位計で計測することにより測定した。また、レーザ変位計による測定は、透明基材21,22の該水平面と接する面とは反対側の面を縦横2cm間隔でサンプリングすることにより行い、最も大きな値と最も小さな値との差を反り量とした。ポリカーボネートのMVRは、ISO1133に準拠して温度300℃、荷重1.2kgfの条件で測定されたものである。
表6は、サンプル53から57の結果を示したものである。
ポリカーボネートのMVRが25cm3/10min以上のサンプル54において、液晶ムラほぼなしの「B」判定となっており、MVRが35cm3/10min以上のサンプル53において、液晶ムラなしの「A」判定となっている。
この結果から、透明基材21,22を形成するポリカーボネートのMVRを25cm3/10min以上とすることで、液晶ムラの発生がより抑えられることが理解される。
以上、第1の実施形態の透明基材21,22及び調光部材20は、自動車内などの比較的高温になりうる環境下での使用に適したものとなる。
上述のサンプルは積層体30として1つの液晶パネル40を有するものであるが、積層体30として2つの液晶パネル40,50を用いたものであっても同様の結果が得られる。
次に、本発明の第2の実施形態の調光部材20について説明する。なお、この実施形態における調光部材20の構成は、基本的に、第1の実施形態の調光部材20と同じである。
図13は、第2の実施形態の調光部材20を備えるサンバイザ10の正面図である。このサンバイザ10は、調光部材20と、調光部材20を支持する調光部材支持部10aと、調光部材支持部10aに設けられた入力部10b、制御部10c、電源部10d及び本体支持部10eとを有している。さらに、サンバイザ10は、調光部材20の少なくとも一部の領域に設けられた情報表示部20aと、調光部材支持部10aに設けられた表示情報受信部10fとを有している。
この調光部材20は、主に、図13の奥から手前方向へ入射した可視光を遮蔽するように構成されている。本件明細書においては、調光部材20及びそれらの構成部材の図13における手前側を正面側とし、それらの図13における奥側を背面側とする。つまり、この調光部材20は、主に、背面側の表面に入射した可視光を遮蔽するように構成されている。
調光部材20は、電圧印加によって透過率を調節可能な部材である。調光部材20は、板状に形成されている。調光部材20は、背面側及び正面側の表面に入射した可視光を遮蔽する遮光モードと、背面側及び正面側の表面に入射した可視光を透過する透過モードとをとることができる。図14は、第2の実施形態の調光部材20の遮光モード/透過モードの切り替えを示す概念図である。この実施形態においては、さらに、この遮光モードと透過モードとの間において、可視光の遮蔽率を連続的又は段階的に調整できるようになっている。
入力部10bは、サンバイザ10の電源のオン/オフ、調光部材20の遮光モード/透過モードの切り替え、調光部材20の遮蔽率の調整、及び、情報表示部20aの表示設定などを行うための入力を受けて、制御部10cに信号を送信する。制御部10cは、入力部10b及び表示情報受信部10fなどのからの信号を受けて調光部材20の駆動などのサンバイザ10の制御を行う。電源部10dは、電池、電源入力端子などで構成され、サンバイザ10の各部に電源を供給する。
本体支持部10eは、サンバイザ10本体を支持するとともに、通常のサンバイザと同様に、サンバイザ10本体の手前方向への跳ね上げや、サンバイザ10本体の右手前方向への旋回を可能としている。図15は、図13のサンバイザ10を手前方向へ跳ね上げた状態を示した正面図であり、図16は、図13のサンバイザ10を右手前方向へ旋回させた状態を示した正面図である。サンバイザ10を右手前方向へ旋回させた状態を示した図16においては、調光部材20の背面側が図の手前側に位置している。
調光部材20の情報表示部20aは、任意の文字、図形又は模様を表示する。この情報表示部20aに表示する文字、図形又は模様の情報としては、時刻、気温、湿度、天気、調光部材20のモード、電池残量、ナビ情報及び渋滞情報などが考えられる。表示情報受信部10fは、情報表示部20aに表示する情報を受信する。この表示情報受信部10fは、それ自体が情報を取得する時計、温度計又は湿度計などとして構成されていてもよい。
図17は、第2の実施形態のサンバイザ10が取り付けられている自動車1の正面図である。このサンバイザ10は、自動車1の内部であって、そのフロントウインドウ5と運転席(図示せず)との間に取り付けられており、調光部材20の正面側が運転席に対向し、その背面側がフロントウインドウ5に対向している。
また、このサンバイザ10を運転席側から右手前方向へ旋回させると、調光部材20の正面側が自動車1のサイドウインドウ(図示せず)に対向し、その背面側が運転席に対向するようになる。このように、調光部材20の正面側がサイドウインドウに対向する場合には、調光部材20は、通常時とは異なり、その正面側から背面側に入射する可視光を遮蔽するために用いられることになる。
サンバイザ10が自動車1に取り付けられる場合においては、サンバイザ10の入力部10b、制御部10c、電源部10d及び表示情報受信部10fは、その全て又は一部が、サンバイザ10の調光部材支持部10aではなく、自動車1に設けられていてもよい。
図18は、第2の実施形態の調光部材20の構成を示す斜視図である。調光部材20は、透明基材21と積層体30と透明基材22とを積層した構造を有しており、透明基材21,22と積層体30とは接合層23,24を介して接合されている。また、積層体30は、配線30cを有している。この配線30cは、制御部10c及び電源部10dに接続され、制御信号及び駆動電力を積層体30に提供する。
透明基材21,22は、樹脂によって形成されており、ガラス転移温度の高い樹脂であるポリカーボネートを含んでいることが好ましい。この透明基材21,22の厚みは、強度及び光学特性に優れたものとするため、1mm以上、5mm以下とするのが好ましい。
また、この「透明基材」における「透明」とは、透明基材を介して当該透明基材の一方の側から他方の側を透視し得る程度の透明性を有していることを意味しており、例えば、30%以上、より好ましくは70%以上の可視光透過率を有していることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
接合層23,24は、光学的に透明であるOCA(Optical Clear Adhesive)又はOCR(Optical Clear Resin)などにより構成されている。また、接合層23,24は、界面における光の反射を低減するために、透明基材21,22と実質的に同じ屈折率を有していることが好ましい。この接合層23,24の厚みは、量産性、価格及び強度の点から、1000μm以下とするのが好ましい。
さらに、2つの接合層23,24のうちの一方の厚さは、50μm以上とするのが好ましい。接合層を介して2つの剛性を有する部材を積層させる場合、接合層と剛性を有する部材との間に入り込んだ空気は、接合層と剛性を有する部材との間から抜けにくく、気泡として入り込んでしまう。
そのため、例えば、図18の下から透明基材22、接合層24、積層体30、接合層23及び透明基材21の順に積層するとした場合において、接合層23が50μmより薄いと、積層された透明基材22、接合層24、積層体30及び接合層23の上に透明基材21を積層する際に、積層された透明基材22、接合層24、積層体30及び接合層23と透明基材22とが共に剛性を有することから、接合層23と透明基材21との間に気泡が入り込みやすくなる。
他方、透明基材22及び接合層24の上に積層体30を積層する際は、その間に空気が入り込んでも、剛性を有さない積層体30を湾曲させながら積層していくことで空気の排出を誘導することができる。したがって、この場合においては、接合層24は、50μmより薄くても、気泡は入り込みにくい。
図19は、第2の実施形態の積層体30の構成を示す斜視図である。この実施形態の積層体30は、電圧印加によって透過率を調節可能な液晶パネル(遮光/透過)40として構成されている。この液晶パネル(遮光/透過)40は、背面側及び正面側の表面に入射する可視光を遮蔽する遮光モードと背面側及び正面側の表面に入射する可視光を透過する透過モードとをとることができる。また、この液晶パネル(遮光/透過)40は、遮光モードと透過モードとの間において、可視光の遮蔽率を連続的又は段階的に調整できるようになっている。
調光部材20を遮光モードにする場合には、液晶パネル(遮光/透過)40を遮光モードとする。調光部材20を透過モードにする場合には、液晶パネル(遮光/透過)40を透過モードとする。
この液晶パネル(遮光/透過)40は、吸収型偏光板41と液晶セル45と吸収型偏光板42とを積層した構造を有しており、電圧印加等の電子制御によって液晶セル45の液晶の配向状態を変化させることで2つの吸収偏光板41,42の間を進む光の偏光状態を制御する。これにより、2つの吸収型偏光板41,42の間を進む可視光の透過率を調節することができる。すなわち、液晶パネル(遮光/透過)40による遮光又は遮蔽は、光の吸収により実現されている。
図20は、第2の実施形態の調光部材20の調光のメカニズムを示す概念斜視図である。この実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40は、VA(Virtical Alignment)方式の液晶を用い、2つの吸収型偏光板41,42をそれぞれの透過軸が互いに直交するクロスニコルにより配置したものである。
液晶パネル(遮光/透過)40は、液晶セル45に電圧印加がなされていない初期状態においては、一方の吸収型偏光板41,42を透過して水平方向又は垂直方向に偏光した光がそのままその偏光方向と直交する透過軸を有する他方の吸収型偏光板42,41に到達することから、可視光を遮断する。つまり、液晶パネル(遮光/透過)40は、いわゆる、ノーマリーブラックのものである。
調光部材20をサンバイザなどのような光の遮蔽を主な用途とする製品に用いる場合においては、電源の入っていない初期状態においても通常のサンバイザなどと同様の効果を有するようにするために、液晶パネル(遮光/透過)40をノーマリーブラックのものとするのが好ましい。
また、観察者に対向することの多い液晶パネル(遮光/透過)40の正面側の吸収偏光板42は、その透過軸が垂直になるように配置するのが好ましい。これは、一般的に、観察者が着用しうる偏光サングラスの透過軸が垂直になるように設定されているためである。
液晶セル45に電圧印加がなされると、一方の吸収型偏光板41,42を透過して2つの吸収型偏光板41,42の間を進む光の偏光状態が変化し、その光が他方の吸収型偏光板42,41を透過するようになる。ここで、印加電圧をゼロから連続的又は段階的に増加させると、2つの吸収型偏光板41,42の間を進む光の偏光状態も連続的又は段階的に変化し、その結果、液晶パネル(遮光/透過)40の遮蔽率は、連続的又は段階的に減少することになる。
このように、第2の実施形態の調光部材20の液晶パネル(遮光/透過)40は、電圧印加がなされていないときに遮光モードをとり、一定の電圧印加がなされているときに透過モードをとる。つまり、第2の実施形態の調光部材20は、液晶パネル(遮光/透過)40に電圧印加がなされていないときに遮光モードをとり、液晶パネル(遮光/透過)40に一定の電圧印加がなされているときに透過モードをとる。
第2の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40は、VA方式の液晶を用い、2つの吸収型偏光板をクロスニコルにより配置した構成のものであるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。液晶として、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In Plane Switching)方式、FFS(Fringe Field Switching)方式又はGH(Guest Host)方式のものを用いることもできる。2つの吸収型偏光板は、それぞれの透過軸が平行であるパラレルニコルにより配置されたものであってもよい。また、例えばGH方式を採用する場合には、少なくとも1面の吸収型偏光板を有するものであってもよく、さらに、吸収型偏光板を有さないものであってもよい。
ただし、第2の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40のように、VA方式の液晶を用い、2つの吸収型偏光板をクロスニコルにより配置した構成を有するものは、サンバイザなどのような光の遮蔽を主な用途とする製品における利用に好ましいノーマリーブラックとすることができ、さらに、比較的簡易に製造することができるという利点を有している。
図21は、第2の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40の液晶セル45の構成を示す斜視図である。この液晶セル45は、ガラス基板451と透明電極453と配向膜455と液晶層457と配向膜456と透明電極454とガラス基板452とを積層した構成を有している。
ガラス基板451,452は、ガラス以外の材料を用いて作製された基板、例えば、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリウレタン、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリアミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、COP(シクロオレフィンポリマー)などの樹脂を用いて作製された基板とすることも可能である。配向膜455,456は、一定方向に微細な溝のある膜であり、液晶をその溝に沿って配向させる機能を有する。この配向膜455,456は、ポリイミドなどによって構成されている。透明電極453,454は、液晶層457の液晶に電圧を印加するための電極であり、ITO(Indium Tin Oxide)などにより構成されている。
図22は、第2の実施形態の液晶セル45の透明電極454の配置を示す正面図である。この実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40は、独立して電圧印加を制御可能な複数の画素を含んでいる。すなわち、複数の画素は、互いから独立して電圧印加を制御され、互いから独立して透過率を調節され得る。図示された例において、透明電極454は、独立して電圧印加することができる複数の領域に分割されている。そして、各領域に対応して、画素が形成されている。すなわち、各領域が、画素を画成している。
とりわけ図示された例では、調光部材20は情報表示部20aを含んでおり、この情報表示部20aに対応する領域に、複数の画素により文字、図形又は模様を表示する画素表示部40aを有している。透明電極454は、画素表示部40a以外の領域では、ベタ電極454aとして構成されており、画素表示部40aでは、複数のセグメント電極454bとして構成されている。したがって、画素表示部40a以外の領域が一つの画素を形成し、更に、画素表示部40a内に複数の画素が設けられているとも言える。一方、この透明電極454と液晶層457及び配向膜455,456を挟んで対向する透明電極453は、画素表示部40aも含むすべての領域で、1つのベタ電極(いわゆる共通電極)として構成されている。
液晶パネル(遮光/透過)40の画素表示部40a以外の領域は、スタティック方式により駆動するように構成されている。この実施形態においては、画素表示部40a以外の領域の透明電極454は、1つのベタ電極454aとして構成されているが、複数の領域に分割し、その分割された領域ごとに駆動するように構成してもよい。
液晶パネル(遮光/透過)40の画素表示部40aは、アクティブマトリックス方式により駆動するように構成されている。そのため、画素表示部40aにある複数のセグメント電極454bのそれぞれに、TFT(Thin Film Transistor)などのアクティブ素子454b−1が配置されている。
図23は、透明電極454の配置の別の例を示す正面図である。この例のように、画素表示部40aの表示を、セグメント方式ではなく、多数のドット電極454cが整列して敷き詰められたドットマトリックス方式とすることもできる。このドットマトリックス方式の場合においては、多数のドット電極454cのそれぞれにTFTなどのアクティブ素子が配置されることになる。
第2の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40の画素表示部40aはアクティブマトリックス方式により駆動するように構成されたものであるが、本発明の実施形態は、この構成に限定されない。液晶パネル(遮光/透過)40の画素表示部40aを、スタティック方式又は単純マトリックス方式で駆動するように構成することもできる。この場合には、各セグメント又はドットにTFTなどのアクティブ素子を配置する必要はない。また、単純マトリックス方式の場合には、透明電極453を1つのベタ電極として構成するのではなく、画素表示部40aに対応する領域の透明電極454,453の形状を適切に設定することになる。
ただし、構造の単純化、表示むら、視野角拡大応答速度の高速化等の利点から、第1の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40のように、各セグメント又は各ドットにTFTなどのアクティブ素子を配置し、アクティブマトリックス方式により駆動するように構成するのが好ましい。
図24は、第2の実施形態の調光部材20の情報表示部20aにおける情報表示パターンを示す正面図である。図24の上段は、遮光モードにおける情報表示パターンを示し、下段は、透過モードにおける情報表示パターンを示している。また、図24の左列は、調光部材20の正面側から見た情報表示パターンを示し、右列は、調光部材20の背面側からみた情報表示パターンを示している。
遮光モードにおいては、調光部材20は、液晶パネル(遮光/透過)40の文字、図形又は模様(以下、「文字等」という。)の部分のみを透過モードとすることによって、その正面側及び背面側に、透過文字、透過図形及び透過模様(以下、「透過文字等」という。)を表示する。
透過モードにおいては、調光部材20は、液晶パネル(遮光/透過)40の文字等の部分のみを遮光モードとすることで、その正面側及び背面側に、遮光文字、遮光図形及び遮光模様(以下、「遮光文字等」という。)を表示する。
背面側の文字等は、正面側の文字等を左右反転したものとなっている。また、遮光モードと透過モードの中間のモードにおいては、透過文字等と遮光文字等との両方を表示することが可能である。また、セグメント電極454b又はドット電極454cへの印加電圧を調整することで、遮光文字等の濃度を連続的又は段階的に調整することも可能である。
このように、第2の実施形態の調光部材20は、意匠性に富んだ情報表示が可能となっている。
次に、本発明の第3の実施形態の調光部材20について説明する。
第3の実施形態の調光部材20は、背面側及び正面側の表面に入射した可視光を遮蔽する遮光モードと、背面側及び正面側の表面に入射した可視光を透過する透過モードと、さらに、背面側の表面に入射した可視光を遮蔽し正面側の表面に入射した可視光を反射する反射モードとをとることができる。そのため、第3の実施形態の調光部材20は、その積層体30の構成において、第2の実施形態とは異なっている。それ以外の第3の実施形態の構成は、基本的に、第2の実施形態と同じである。
図25は、第3の実施形態の調光部材20の遮光モード/透過モード/反射モードの切り替えを示す概念図である。調光部材20を反射モードとすることにより、調光部材20をミラーとして使用することが可能となる。
図26は、第3の実施形態の積層体30の構成を示す斜視図である。この実施形態の積層体30は、液晶パネル(遮光/透過)40と液晶パネル(透過/反射)50とを積層した構造を有している。液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50は、共に、電圧印加によって透過率を調節可能となっている。このうち、液晶パネル(透過/反射)50は、電圧印加によって第1透明基材及び第2透明基材の間を進む可視光のうち少なくとも一方向に進む光の反射率を調節可能となっている。
より具体的には、液晶パネル(遮光/透過)40は、背面側及び正面側の表面に入射する可視光を遮蔽する遮光モードと背面側及び正面側の表面に入射する可視光を透過する透過モードとをとることができる。また、この液晶パネル(遮光/透過)40は、遮光モードと透過モードとの間において、可視光の遮蔽率(吸収率)を連続的又は段階的に調整できるようになっている。
液晶パネル(透過/反射)50は、背面側及び正面側の表面に入射する可視光を透過する透過モードと、背面側の表面に入射する可視光を遮蔽し正面側の表面に入射する可視光を反射する反射モードとをとることができる。また、この液晶パネル(透過/反射)50は、遮光モードと透過モードとの間において、可視光の反射率を連続的又は段階的に調整できるようになっている。
調光部材20を遮光モードにする場合には、液晶パネル(遮光/透過)40を遮光モードとし、液晶パネル(透過/反射)50を透過モードとする。調光部材20を透過モードにする場合には、液晶パネル(遮光/透過)40を透過モードとし、液晶パネル(透過/反射)50を透過モードとする。調光部材20を反射モードにする場合には、液晶パネル(遮光/透過)40を遮光モードとし、液晶パネル(透過/反射)50を反射モードとする。
なお、調光部材20を反射モードにする場合において、液晶パネル(遮光/透過)40を透過モードとすることも可能であるが、第2の実施形態のように液晶パネル(遮光/透過)40がノーマリーブラックのものである場合は、液晶パネル(遮光/透過)40を遮光モードとするのが好ましい。
液晶パネル(遮光/透過)40は、第1の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40と同じ構造のものであり、吸収型偏光板41と液晶セル45と吸収型偏光板42とを積層した構造を有している。液晶パネル(透過/反射)50は、反射型偏光板51と液晶セル55と吸収型偏光板52とを積層した構造を有している。そして、液晶パネル(遮光/透過)40と液晶パネル(透過/反射)50とは、接合層60を介して接合した構造を有している。接合層60は、光学的に透明であるOCA、OCRなどにより構成されている。この接合層60の厚みは、量産性、価格及び強度の点から、2000μm以下とするのが好ましい。
図27は、第3の実施形態の調光部材20の調光のメカニズムを示す概念斜視図である。
この実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40は、VA方式の液晶を用い、2つの吸収型偏光板41,42をクロスニコルにより配置したものである。液晶パネル(遮光/透過)40は、液晶セル45に電圧印加がなされない初期状態においては、一方の吸収型偏光板41,42を透過して水平方向又は垂直方向に偏光した光がそのままその偏光方向と直交する透過軸を有する他方の吸収型偏光板42,41に到達することから、可視光を遮断する。つまり、この液晶パネル(遮光/透過)40は、いわゆる、ノーマリーブラックのものである。
また、液晶パネル(透過/反射)50は、TN方式の液晶を用い、反射型偏光板51と吸収型偏光板52とをクロスニコルにより配置したものである。この液晶パネル(透過/反射)50は、液晶セル55に電圧印加がなされていない初期状態においては、一方の反射型偏光板51又は吸収型偏光板52を透過して水平方向又は垂直方向に偏光した光がその偏光方向を90度回転させた状態でその回転後の偏光方向と平行な透過軸を有する他方の吸収型偏光板52又は反射型偏光板51に到達することから、可視光を透過する。つまり、この液晶パネル(透過/反射)50は、いわゆる、ノーマリーホワイトのものである。
調光部材20をサンバイザなどのような光の遮蔽を主な用途とする製品に用いる場合においては、電源の入っていない初期状態においても通常のサンバイザなどと同様の効果を有するようにするために、液晶パネル(遮光/透過)40をノーマリーブラックのものとし、液晶パネル(透過/反射)50をノーマリーホワイトのものとするのが好ましい。
そして、液晶パネル(遮光/透過)40を透過した可視光が液晶パネル(透過/反射)を透過することができるように、液晶パネル(遮光/透過)40の吸収型偏光板42と液晶パネル(透過/反射)50の反射型偏光板51とは、その透過軸が互いに平行になるように配置されている。
また、観察者に対向する液晶パネル(透過/反射)50の正面側の吸収偏光板52と液晶パネル(遮光/透過)40の背面側の吸収偏光板41とは、ともに、その透過軸が垂直になるように配置されている。これは、一般的に、観察者が着用しうる偏光サングラスの透過軸が垂直になるように設定されているためである。
液晶パネル(遮光/透過)40の液晶セル45に電圧印加がなされると、一方の吸収型偏光板41,42を透過して2つの吸収型偏光板41,42の間を進む光の偏光状態が変化し、その光が他方の吸収型偏光板42,41を透過するようになる。ここで、印加電圧をゼロから連続的又は段階的に増加させると、2つの吸収型偏光板41,42の間を進む光の偏光状態も連続的又は段階的に変化し、その結果、液晶パネル(遮光/透過)40の遮蔽率は、連続的又は段階的に減少することになる。すなわち、液晶パネル(遮光/透過)40による遮光又は遮蔽は、光の吸収により実現されている。
また、液晶パネル(透過/反射)50の液晶セル55に一定の電圧印加がなされると、反射型偏光板51又は吸収型偏光板52を透過して水平方向又は垂直方向に偏光した光がそのままその偏光方向と直交する透過軸を有する他方の吸収型偏光板52又は反射型偏光板51に到達するようになる。そのため、液晶パネル(透過/反射)50の背面側の表面に入射して反射型偏光板51を透過した可視光は、吸収型偏光板52に吸収されることになる。他方、液晶パネル(透過/反射)50の正面側の表面に入射して吸収型偏光板52を透過した可視光は、反射型偏光板51によって反射され、その後、吸収型偏光板52を透過して、液晶パネル(透過/反射)50の正面側の表面から出射されることになる。すなわち、液晶パネル(透過/反射)50による遮光又は遮蔽は、吸収型偏光板52での光の吸収および反射型偏光板51での反射により実現されている。
このように、第3の実施形態の調光部材20の液晶パネル(遮光/透過)40は、電圧印加がなされていないときに遮光モードをとり、一定の電圧印加がなされているときに透過モードをとり、液晶パネル(透過/反射)50は、電圧印加がなされていないときに透過モードをとり、一定の電圧印加がなされているときに反射モードをとる。つまり、第3の実施形態の調光部材20は、液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50に電圧印加がなされていないときに遮光モードをとり、液晶パネル(遮光/透過)40に一定の電圧印加がなされ、液晶パネル(透過/反射)50に電圧印加がなされていないときに透過モードをとり、液晶パネル(遮光/透過)40に電圧印加がなされておらず、液晶パネル(透過/反射)50に一定の電圧印加がなされているときに反射モードをとる。
第3の実施形態の積層体30においては、液晶パネル(遮光/透過)40として、VA方式の液晶を用い、2つの吸収型偏光板41,42をクロスニコルにより配置したものを採用し、液晶パネル(透過/反射)50として、TN方式の液晶を用い、反射型偏光板51と吸収型偏光板52とをクロスニコルにより配置したものを採用しているが、本発明の実施形態は、この構成に限定されない。
液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50の液晶として、VA方式、TN方式、IPS方式、FFS方式又はGH方式など任意のものを用いることができる。液晶パネル(遮光/透過)40は、2つの吸収型偏光板がパラレルニコルにより配置されたものであってもよく、また、1つのみの吸収型偏光板を有するものであってもよく、さらに、吸収型偏光板を有さないものであってもよい。液晶パネル(透過/反射)50は、反射型偏光板51及び吸収型偏光板52がパラレルニコルにより配置されたものであってもよい。
ただし、第3の実施形態の積層体30のように、液晶パネル(遮光/透過)40として、VA方式の液晶を用い、2つの吸収型偏光板41,42をクロスニコルにより配置したものを採用し、液晶パネル(透過/反射)50として、TN方式の液晶を用い、反射型偏光板51と吸収型偏光板52とをクロスニコルにより配置したものを採用したものは、液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50をそれぞれノーマリーブラック及びノーマリーホワイトとすることができ、また、積層体30の正面側及び背面側の最外層に配置される吸収型偏光板41,52の透過軸をともに垂直とすることができ、さらに、比較的簡易に製造することができるという利点を有している。
図28は、第3の実施形態の液晶パネル(透過/反射)50の液晶セル55の構成を示す斜視図である。この液晶セル55は、第2の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40の液晶セル45の構成と同様、ガラス基板551と透明電極553と配向膜555と液晶層557と配向膜556と透明電極554とガラス基板552とを積層した構成を有している。第3の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40の液晶セル45の構成は、第2の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40の液晶セル45の構成と同じである。
図22は、第3の実施形態の液晶セル45,55の透明電極454,554の配置を示す正面図である。液晶パネル(遮光/透過)40の液晶セル45の透明電極453,454及び液晶パネル(透過/反射)50の液晶セル55の透明電極553、554は、ともに、第2の実施形態の液晶パネル(遮光/透過)40の液晶セル45の透明電極454と同じ構成を有している。
したがって、液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50は、独立して電圧印加を制御可能な複数の画素を含んでいる。すなわち、複数の画素は、互いから独立して電圧印加を制御され、互いから独立して透過率を調節され得る。液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50の透明電極は、独立して電圧印加することができる複数の領域に分割されている。そして、各領域に対応して、画素が形成されている。すなわち、各領域が、画素を画成している。とりわけ図示された例において、液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50は、調光部材20の情報表示部20aに対応する領域に画素表示部40a,50aを有している。
液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50の画素表示部40a,50a以外の領域は、スタティック方式により駆動するように構成されている。液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50の画素表示部40a,50aには、各セグメント又はドットにTFTなどのアクティブ素子454b−1,554b−1が配置され、アクティブマトリックス方式により駆動するように構成されている。そして、液晶パネル(遮光/透過)40及び液晶パネル(透過/反射)50は、それぞれ独立して駆動することができるように構成されている。
図29は、第3の実施形態の調光部材20の情報表示部20aにおける情報表示パターンを示す正面図である。図29の上段は、遮光モードにおける情報表示パターンを示し、中段は、透過モードにおける情報表示パターンを示し、下段は、反射モードにおける情報表示パターンを示している。また、図29の左列は、調光部材20の正面側から見た情報表示パターンを示し、右列は、調光部材20の背面側からみた情報表示パターンを示している。
遮光モードにおいては、調光部材20は、液晶パネル(遮光/透過)40の文字等の部分のみを透過モードとすることによって、その正面側及び背面側に、透過文字等を表示し、液晶パネル(透過/反射)50の文字等の部分のみを反射モードとすることによって、その正面側のみに、反射文字、反射図形及び反射模様(以下「反射文字等」という。)を表示する。
透過モードにおいては、調光部材20は、液晶パネル(遮光/透過)40の文字等の部分のみを遮光モードとすることで、その正面側及び背面側に、遮光文字等を表示し、液晶パネル(透過/反射)50の文字等の部分のみを反射モードとすることによって、その正面側に、反射文字等を表示し、その背面側に遮光文字等を表示する。
反射モードにおいては、調光部材20は、液晶パネル(透過/反射)50の文字等の部分のみを透過モードとすることによって、その正面側のみに、遮光文字等を表示し、液晶パネル(遮光/透過)40の文字等の部分のみを透過モードとするとともに、液晶パネル(透過/反射)50の文字等の部分のみを透過モードとすることによって、正面側及び背面側に、透過文字等を表示する。
背面側の文字等は、正面側の文字等を左右反転したものとなっている。また、遮光モードと透過モードとの間のモードにおいては、透過文字等と遮光文字等と反射文字等とを表示することが可能である。また、セグメント電極454b又はドット電極454cへの印加電圧を調整することで、遮光文字等の濃度を連続的又は段階的に調整することも可能である。
このように、第3の実施形態の調光部材20は、意匠性に富んだ情報表示が可能となっている。また、第3の実施形態の調光部材20は、周囲の環境に応じて視認しやすい表示方法を選択することが可能となっている。
次に、本発明の第4の実施形態の調光部材20について説明する。
第4の実施形態の調光部材20は、夜間などの暗い場所において情報表示部20aに表示される情報を視認しやすくするための構成を備えたものである。
図30は、第4の実施形態の調光部材20を備えるサンバイザ10の正面図である。このサンバイザ10は、調光部材支持部10aに設けられた発光部材70と調光部材20に設けられた光拡散部90とを有している。それ以外の構成は、第2又は第3の実施形態の調光部材20を備えるサンバイザ10と同じである。
発光部材70は、透明基材22の面内方向に可視光を発する部材であり、発光ダイオード(LED)等の光源により構成される。発光部材70としては、情報表示部20a及び画素表示部40a、50aのみを照らすようにするために、指向性を有するLEDが好ましい。なお、発光部材70は、透明基材21の面内方向に可視光を発する部材でもよく、また、透明基材22及び透明基材21の面内方向に可視光を発する部材でもよい。発光部材70は、調光部材支持部10aにより隠蔽されていることが好ましい。
光拡散部90は、発光部材70から発せられた可視光を拡散するように構成された調光部材20内の領域である。
調光部材20の光拡散部90に対応する領域におけるJIS K 7105に従って測定されるヘイズの値は、表示される情報の視認性の観点から、5%以上であることが好ましく、7%以上であることがさらに好ましい。但し、昼間の透明性の観点から、調光部材20の光拡散部90に対応する領域におけるヘイズの値は、20%以下であることが好ましい。このヘイズの値は、JIS K 7105に従って測定される。
情報表示部20a及び画素表示部40a、50aにおける表示の明るさは、情報表示部20a及び画素表示部40a、50aにおける表示の視認性、並びに、夜間における信号機や標識の視認性の観点から、表示部分の明るさが200cad以上、且つ、非表示部分の明るさが100cad以下であることが好ましい。また、夜間に外の風景を認識できるようにするため、表示部分のみ光っているのが好ましい。そのため、情報表示部20a及び画素表示部40a、50aにおける表示の輝度比、つまり、情報表示時における非表示部の輝度値を情報表示部20a及び画素表示部40a、50aにおける最大輝度値で割った値(非表示部の輝度値/最大輝度値)は、0.5以下であることが好ましく、0.15以下であることがさらに好ましい。この輝度値は、例えば、均一に発光するバックライト上に調光部材を設置し、コニカミノルタ製CS−150で焦点ブレのない高さで測定される。
図31A及び図31Bは、発光部材70、情報表示部20a及び光拡散部90のより好ましい配置を示すサンバイザの正面図である。図31Aに示す例では、発光部材70は、調光部材支持部10aにおける調光部材20の上方に位置する部分に配置されており、図31Bに示す例では、発光部材70は、調光部材支持部10aにおける調光部材20の側方に位置する部分に配置されている。
図31A及び図31Bに示す例では、調光部材20の情報表示部20a及び光拡散部90は、発光部材70から情報表示部20a及び光拡散部90へ向かう方向において、調光部材20における調光部材支持部10a側の領域に設けられている。より具体的には、情報表示部20a及び光拡散部90は、調光部材20における、調光部材支持部10aから調光部材20の長さ(発光部材70から情報表示部20a及び光拡散部90へ向かう方向における長さ)の50%以内の領域に配置されている。これにより、情報表示時における表示部分及び非表示部分の輝度をより適切なものとすることができる。
図32は、光拡散部90を透明基材22の背面側表面に設けた凹凸部91により構成した例を示す断面図である。発光部材70から発せられた可視光は、透明基材22の表面に設けられた凹凸部91により拡散され、情報表示部20a及び画素表示部40a、50aの周辺を照らすことになる。これにより、情報表示部20a及び画素表示部40a、50aに表示される情報を視認しやすくすくなる。
この凹凸部91の形状及び大きさは、情報表示部aの周辺をぼんやりと照らすことができるように調整される。夜間の自動車内で利用されることを想定すると、情報表示部20a及び画素表示部40a、50aの周辺を明るくしすぎるのは、自動車外の環境の視認性が悪化することから、好ましくない。この観点から、凹凸部91は、一例として、半円形状又はプリズム形状(三角形)として、その高さ又は深さを、5〜2000μm、好ましくは、10〜1000μm、そのピッチを、5〜2000μm、好ましくは、10〜1000μmとすることが考えられる。なお、凹凸部91は、透明基材22の正面側表面に設けてもよく、透明基材21の正面側表面又は背面側表面に設けてもよい。
図33は、この凹凸部91を透明基材22の外気と接する面に設けた例を示す断面図である。このように、凹凸部91を透明基材22の外気と接する面(具体的には、透明基材22の正面側表面又は透明基材21の背面側表面)に設けた構成は、その外気と透明基材21、22との間の大きな屈折率差によって可視光が拡散されやすいものとなり、好ましい。
図34は、光拡散部90を透明基材22に散乱材92を添加することにより構成した例を示す断面図である。光拡散部90は、透明基材21,22内に分散された散乱材92を有している。発光部材70から発せられた可視光は、透明基材22に添加された散乱材92により拡散され、情報表示部20a及び画素表示部40a、50aの周辺を照らすことになる。
散乱材92としては、ビーズ、硫化亜鉛粉末、シリカ粉末、アクリル樹脂粉末等の粉末材料、ウレタン樹脂ビーズ、シリコン樹脂ビーズ、ガラスビーズ等の粒状物質などの光を散乱する効果を有する適宜の部材を用いることができる。この散乱材は、大きさは1〜1000μmとするのが好ましい。なお、散乱材92は、透明基材21に添加してもよい。
図35は、光拡散部90を接合層24に散乱材92を添加することにより構成した例を示す断面図である。光拡散部90は、接合層24内に分散された散乱材92を有している。この例のように、散乱材92を接合層24に添加することもできる。なお、散乱材92は、接合層23に添加してもよい。
図36は、光拡散部90を透明基材22の正面側に拡散フィルム93を貼り付けることにより構成した例を示す断面図である。発光部材70から発せられた可視光は、透明基材22の正面側に貼り付けられた拡散フィルム93により拡散され、情報表示部20a及び画素表示部40a、50aの周辺を照らすことになる。
拡散フィルム93としては、光を拡散する樹脂がコーティングされた樹脂フィルム、散乱材が添加された樹脂フィルム、表面に散乱材が接着された樹脂フィルム、表面に微細な凹凸が設けられた樹脂フィルムなどを用いることができる。なお、拡散フィルム93は、透明基材21の背面側に貼り付けてもよい。
図37は、光拡散部90を透明基材22の背面側に拡散フィルム93を貼り付けることにより構成した例を示す断面図である。この例のように、拡散フィルム93を透明基材22の背面側に貼り付けることもできる。なお、拡散フィルム93は、透明基材21の正面側に貼り付けてもよい。
図38は、光拡散部90を透明基材22の正面側に積層体30から離間した光拡散部94aを有する導光板84を設けることにより構成した例を示す断面図である。この例のように、積層体30から離間して、光拡散部94aを有する導光板94が設けられ、発光ダイオード等の発光部材70が、導光板94の側面に対向して配置されるようにしてもよい。
この例において、発光部材70から射出した光は、導光板94の側面から当該導光板94内に入射する。この光は、導光板の一対の主面での反射、とりわけ全反射により、導光板94内を導光される。そして、導光板94内を進む光は、画素表示部40a、50aに対向する領域と重なる領域に設けられた光拡散部94aで拡散されることで、導光板94から出射して画素表示部40a、50aを照明するようになる。
以上、第2、第3及び第4の実施形態の調光部材は、より機能的であり且つ意匠性に富んだものとなる。
なお、第1から第4の実施形態の調光部材20は自動車1に取り付けられるサンバイザ10に備えられるものであるが、本発明の実施形態は、これに限定されない。本発明の調光部材20を備えたサンバイザ10は自動車1に取り付けられるものでなくてもよい。また、本発明の調光部材20は、サンバイザ10に備えられるものに限定されず、任意の調光装置に備えることが可能である。
この調光部材は、自動車のフロントウインドウ、サイドウインドウ及びリアウインドウなどの車載用ウインドウ、並びに、建物の窓ガラスの一部として組み込むことも可能である。図39は、本発明の調光部材20を自動車1のフロントウインドウ5の一部として組み込んだ例を示す正面図である。この実施形態においては、フロントウインドウ5の運転席側に調光部材20が貼り付けられている。さらに、この調光部材は、自動車以外の移動体、例えば飛行機、船舶、電車、車両等にも適用可能である。