JP2020123538A - 全固体電池 - Google Patents
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Abstract
Description
本開示の全固体電池について、一実施形態である全固体電池100を参照しつつ説明する。
全固体電池100は正極集電体10、正極層20、固体電解質層30、負極層40、負極集電体50をこの順で備えている。「この順で備え」とは、各層がこの順番に配置された形態であり、各層間に他の層が配置される形態を妨げない。言い換えると、各層が直接的にこの順で配置された形態のほか、各層間に他の層が配置され、間接的にこの順で配置された形態を含む。
図1に全固体電池100の概略断面図を示した。
正極層20は少なくとも正極活物質を含む。正極活物質としては、層状正極活物質とスピネル型正極活物質とを含む。図2に正極層20に着目した拡大断面図を示した。
図2に示したとおり、正極層20は第1の正極層21と該第1の正極層21及び正極集電体10の間に配置される第2の正極層22とを備えている。そして、第1の正極層21はスピネル型正極活物質よりも層状正極活物質を多く含み、第2の正極層22は層状正極活物質よりもスピネル型正極活物質を多く含むことを特徴としている。
ただし、本開示の全固体電池において、正極層は正極集電体側から固体電解質層側に向かって第2の正極層、第1の正極層をこの順で備えていればよい。言い換えると、本開示の全固体電池において、正極層は2層以上であってもよく、正極集電体と第2の正極層の間、第2の正極層と第1の正極層との間、第1の正極層と固体電解質層との間に、他の層を備えていてもよい。
スピネル型正極活物質としては、LiMn2O4、LiCoMnO4、LiNixMn2−xO4(0≦x≦0.5)(本明細書において、x=0.5のものを「LNMO」ということがある。)等を挙げることができる。好ましくはLNMOである。
まず、正極層に上記の第2の正極層のみを用いた場合を考える。図3上部に第2の正極層に着目した断面図を、下部にスピネル型正極活物質(LNMO)の電位カーブ(縦軸:電位、横軸:容量)を示した。これは後述の比較例1を表している。なお、図3下部において丸で示した箇所と、図3の上下部の図の関係を示す矢印は、下記を視覚的に説明するために便宜的に付したものである。以下の図4、5も同様である。
図3のとおり、LNMOは高SoCである正極活物質と低SoCである正極活物質との電位差が小さい。そのため、固体電解質層側の正極活物質が優先的に反応し続ける。その結果、固体電解質層側の正極活物質が高SoCとなり、電位が立ち上がることで上限電圧に達する。一方で、正極集電体側の正極活物質は低SoCのままである。そのため、スピネル型正極活物質のみを用いた正極層は反応ムラが大きく、十分にエネルギーを取り出せない問題がある。
図4のとおり、NCMはSoCに対する電位スロープが大きいため、厚み方向(積層方法)の充電ムラが小さい。ただし、層状正極活物質(NCM)はスピネル型正極活物質(LNMO)に比べて抵抗が大きいため、短時間の出力が不利になる問題がある。
なお、第1の正極層21と第2の正極層22と配置順を逆にした場合では、上記の効果を奏さない。固体電解質層側では特に反応にムラが起こりやすくなるため、第1の正極層21と第2の正極層22と配置順を逆にすると、反応ムラの大きいスピネル型正極活物質が、反応ムラが起こりやすい固体電解質層側に配置されることとなり、充電エネルギー密度がさらに取得し難くなるからである。
このような重量比率は、正極断面のSEM−EDX画像から、それぞれの正極活物質粒子を判断し、その面積比を混合粒子体積比とみなし、次いで真密度から算出することができる。
固体電解質層30は、少なくとも固体電解質を含む。固体電解質層30には、固体電解質に加えて、任意にバインダーを含ませることができる。固体電解質は無機固体電解質が好ましい。有機ポリマー電解質と比較してイオン伝導度が高いためである。また、有機ポリマー電解質と比較して、耐熱性に優れるためである。好ましい無機固体電解質としては、例えば、ランタンジルコン酸リチウム、LiPON、Li1+XAlXGe2−X(PO4)3、Li−SiO系ガラス、Li−Al−S−O系ガラス等の酸化物固体電解質;Li2S−P2S5、Li2S−SiS2、LiI−Li2S−SiS2、LiI−Si2S−P2S5、Li2S−P2S5−LiI−LiBr、LiI−Li2S−P2S5、LiI−Li2S−P2O5、LiI−Li3PO4−P2S5、Li2S−P2S5−GeS2等の硫化物固体電解質を例示することができる。特に、硫化物固体電解質が好ましく、Li2S−P2S5を含む硫化物固体電解質がより好ましく、Li2S−P2S5−LiI−LiBrを含む硫化物固体電解質がさらに好ましい。バインダーは上述したバインダーと同様のものを適宜選択して用いることができる。固体電解質層30における各成分の含有量は従来と同様とすればよい。固体電解質層30の形状も従来と同様とすればよい。特に、全固体電池100を容易に構成できる観点から、シート状の固体電解質層が好ましい。この場合、固体電解質層30の厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
負極層40は、少なくとも負極活物質を含む。負極層40には、負極活物質に加えて、任意に固体電解質、バインダー及び導電剤等を含ませることができる。負極活物質は公知の負極活物質を用いればよい。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合は、負極活物質としてSiやSi合金や酸化ケイ素等のシリコン系活物質;グラファイトやハードカーボン等の炭素系活物質;チタン酸リチウム等の各種酸化物系活物質;金属リチウムやリチウム合金等を用いることができる。負極層40に含まれ得る固体電解質は無機固体電解質が好ましい。有機ポリマー電解質と比較してイオン伝導度が高いためである。また、有機ポリマー電解質と比較して、耐熱性に優れるためである。好ましい無機固体電解質としては、例えば、ランタンジルコン酸リチウム、LiPON、Li1+XAlXGe2−X(PO4)3、Li−SiO系ガラス、Li−Al−S−O系ガラス等の酸化物固体電解質;Li2S−P2S5、Li2S−SiS2、LiI−Li2S−SiS2、LiI−Si2S−P2S5、Li2S−P2S5−LiI−LiBr、LiI−Li2S−P2S5、LiI−Li2S−P2O5、LiI−Li3PO4−P2S5、Li2S−P2S5−GeS2等の硫化物固体電解質を例示することができる。特に、硫化物固体電解質が好ましく、Li2S−P2S5を含む硫化物固体電解質がより好ましく、Li2S−P2S5−LiI−LiBrを含む硫化物固体電解質がさらに好ましい。負極層40に含まれ得るバインダーとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、ブチレンゴム(IIR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。負極層40に含まれ得る導電剤としてはアセチレンブラックやケッチェンブラック、気相法炭素繊維(VGCF)等の炭素材料やニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。負極層40における各成分の含有量は従来と同様とすればよい。負極層40の形状も従来と同様とすればよい。特に、全固体電池100を容易に構成できる観点から、シート状の負極合材層が好ましい。この場合、負極層40の厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上150μm以下であることがより好ましい。ただし、負極の容量が正極の容量よりも大きくなるように、負極層40の大きさ(面積や厚み)を決定することが好ましい。
正極集電体10及び負極集電体50は、金属箔や金属メッシュ等により構成すればよい。特に金属箔が好ましい。正極集電体10及び負極集電体50を構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。特にCu、Alが好ましい。正極集電体10及び負極集電体50は、その表面に、抵抗を調整するための何らかのコート層を有していてもよい。正極集電体10及び負極集電体50の各々の厚みは特に限定されるものではない。例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
なお、以下に記載の非極性溶媒はヘプタン若しくは酪酸ブチル、又はこれらの混合物である。
<実施例1>
(正極の作製)
活物質(LNMO)及び硫化物固体電解質(LiI−Li2O−Li2S−P2S5)を重量比率が85:15となるように秤量した。また、活物質100部に対してバインダー(PVDF)が1.5部、導電助材(VGCF)が3.0部となるように秤量した。そして、非極性溶媒を用いて、秤量したこれらの固形分率が63wt%となるように混合し、超音波ホモジナイザーを用いて1分間に亘って混練することにより、正極層用スラリー1を作製した。作製した正極層用スラリー1をアルミニウム箔(正極集電体)に塗工し、加熱乾燥した。
そして、得られた積層体を25℃、線圧1ton/cmでプレスして、正極集電体、正極層を積層した正極を得た。
活物質(チタン酸リチウム:LTO)及び硫化物固体電解質(LiI−Li2O−Li2S−P2S5)を重量比率が58:42となるように秤量した。また、活物質100部に対してバインダー(PVDF)が1.5部、導電助材(VGCF)が5.0部となるように秤量した。そして、非極性溶媒を用いて、秤量したこれらの固形分率が63wt%となるように混合し、超音波ホモジナイザーを用いて1分間に亘って混練することにより、負極層用スラリー1を作製した。作製した負極層用スラリー1をNi箔(負極集電体)に塗工し、加熱乾燥した。そして、得られた積層体を25℃、線圧1ton/cmでプレスして、負極集電体、負極層を積層した負極を得た。
なお、塗工の際に、正負極の容量比が1:1となるように調整した。
固体電解質層(LiI−Li2O−Li2S−P2S5)を挟んで正極及び負極が対向するように積層した後、線圧5tonでプレスすることにより、実施例1に係る全固体電池を得た。
正極のLNMOの混合粒子重量比が表1の値となるように、二層塗工を調整して正極層を作製した以外は、実施例1に係る全固体電池の作製方法と同様に作製し、実施例2〜5に係る全固体電池を得た。
正極層を上記第1の正極スラリーのみを用いて作製した以外は、実施例1に係る全固体電池の作製方法と同様に作製し、比較例1に係る全固体電池を得た。
正極層を上記第2の正極スラリーのみを用いて作製した以外は、実施例1に係る全固体電池の作製方法と同様に作製し、比較例2に係る全固体電池を得た。
(正極の作製)
活物質(LNMO)とバインダー(PVDF)と導電助材(VGCF)とを、活物質100部に対してバインダーが1.5部、導電助材が3.0部となるように秤量した。そして、非極性溶媒を用いて、秤量したこれらの固形分率が63wt%となるように混合し、超音波ホモジナイザーを用いて1分間に亘って混練することにより、正極層用スラリー3を作製した。作製した正極層用スラリー3をアルミニウム箔(正極集電体)に塗工し、加熱乾燥した。
得られた積層体を空隙が20vol%となるようにプレスし、正極集電体、正極層を積層した正極を得た。
活物質(LTO)とバインダー(PVDF)と導電助材(VGCF)とを、活物質100部に対してバインダーが1.5部、導電助材が5.0部となるように秤量した。そして、非極性溶媒を用いて、秤量したこれらの固形分率が63wt%となるように混合し、超音波ホモジナイザーを用いて1分間に亘って混練することにより、負極層用スラリー2を作製した。作製した負極層用スラリー2をNi箔(負極集電体)に塗工し、加熱乾燥した。そして、得られた積層体を25℃、線圧1ton/cmでプレスして、負極集電体、負極層を積層した負極を得た。
ポリマー製(ポリプロピレン又はポリカーボネート)のセパレータを挟んで正極及び負極が対向するように積層した後、電解液(1.0M LiPF6、EC(エチレンカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート)=1:1)を注入し、封止することで比較例3に係る電池を得た。
以下により作製した正極を用いた以外は、比較例3の電池の作製方法と同様の方法で作製し、比較例4に係る電池を得た。
活物質(LNMO)とバインダー(PVDF)と導電助材(VGCF)とを、活物質100部に対してバインダーが1.5部、導電助材が3.0部となるように秤量した。そして、非極性溶媒を用いて、秤量したこれらの固形分率が63wt%となるように混合し、超音波ホモジナイザーを用いて1分間に亘って混練することにより、正極層用スラリー3を作製した。作製した正極層用スラリー3をアルミニウム箔(正極集電体)に塗工し、加熱乾燥した。
得られた積層体を空隙が20vol%となるようにプレスし、正極集電体、正極層を積層した正極を得た。
25℃の恒温槽内で、上記により作製した電池を3.5Vまで1/10CでCCCV充電(1/500 Cut)を行い、それぞれの電池の充電容量を得た。また、重量当たりの容量と平均電圧の積から充電エネルギー密度を算出した。
次に、電池をSoC50%に調整し、10sec定電力放電を行い、1.5Vカットまでの10sec放電出力値を得た。なお、10sec定電力放電は、それぞれの電池に合わせて条件を設定した。
また、実施例1〜5、比較例1〜2のLNMO比率と充電エネルギー密度比率又は10sec放電出力値比率との関係について、図6に示した。
実施例1〜3では10sec放電出力値はそれほど低下していないが、LNMO比率が0.7未満となると、急激に10sec放電出力値が低下している。このことから、LNMO比率が0.7未満になるとNCMの性質が強く現れ始めると考えられる。これは、LNMO比率が0.7未満になると充電エネルギー密度が低下し始めたこととも一致する。
よって、充電エネルギー密度を向上させるとともに、短時間出力の低下を抑制するためには、LNMO比率が0.7以上1未満であることが良いことがわかる。
20 正極層
21 第1の正極層
22 第2の正極層
30 固体電解質層
40 負極層
50 負極集電体
100 全固体電池
Claims (1)
- 正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、負極集電体をこの順で備えた全固体電池において、
前記正極層は、層状正極活物質とスピネル型正極活物質とを含み、
前記正極層は、第1の正極層と該第1の正極層及び前記正極集電体の間に配置される第2の正極層とを備え、
前記第1の正極層は前記スピネル型正極活物質よりも前記層状正極活物質を多く含み、
前記第2の正極層は前記層状正極活物質よりも前記スピネル型正極活物質を多く含む、
全固体電池。
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