JP2018055808A - リチウムイオン二次電池および該リチウムイオン二次電池用の正極活物質 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ここで開示されるリチウムイオン二次電池用正極活物質は、リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質であって、少なくともリチウムとニッケルとを含む層状の結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物をコア粒子として備えており、コア粒子の表面の少なくとも一部に、リチウムとイットリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物から構成された被覆層が形成されている。
【選択図】なし
Description
特に、YまたはZrの溶出が生じた場合には、溶出したYまたはZrが負極側に泳動して負極の表面に還元析出することによって、抵抗が高いSEI(Solid Electrolyte Interphase)層が形成される場合がある。これによって、負極におけるリチウムイオンの吸蔵や放出が阻害され、充電時に金属リチウムが析出する恐れがある。
そして、ここで開示される正極活物質では、コア粒子の表面の少なくとも一部に、リチウムとイットリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物から構成された被覆層が形成されている。
さらに、ここで開示される正極活物質では、化学的に安定した被覆層によってコア粒子の表面が覆われているため、従来の技術のようにリチウム遷移金属複合酸化物であるコア粒子の結晶格子内にYまたはZrが存在している場合であっても、コア粒子からYまたはZrが溶出することを抑制して負極表面でのLi析出の発生を防止することができる。
かかる態様によれば、コア粒子の表面を適切に覆うことができる程度の被覆層が形成されているとともに、十分な充放電を実施できる程度のコア粒子が形成されているため、電池性能をより適切に向上させることができる。
ここで、ニッケルと、コバルトと、マンガンまたはアルミニウムとの合計モル数を100mol%としたときのイットリウムおよびジルコニウムのそれぞれの含有量が、
イットリウム:0.25〜1mol%
ジルコニウム:0.25〜1mol%である。
かかる態様によれば、十分で過不足ない量の被覆層が形成されているため、上記した種々の電池性能の向上をより適切に発揮することができる。
ここで開示される正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物からなるコア粒子と、該コア粒子の表面に形成された被覆層とを備えている。
Li1+mNipCoqMsYαZrβO2+δ (1)
上記した式(1)中のMは、Al、Mn、W、Cr、Fe、V、Mg、Si、Ti、Mo、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、Ce、CaおよびNaからなる群から選択される1種または2種以上の元素である。
また、上記した式(1)中のm、p、q、sは、それぞれ0≦m≦0.5、0<p<1、0≦q≦0.6、0≦s≦0.6、0.9≦p+q+s≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。そして、αおよびβは、それぞれ0<α≦0.1、0<β≦0.1である。
ここで開示される正極活物質は、少なくともLiとNiとを含む層状の結晶構造(典型的には、六方晶系に属する層状岩塩型構造)を有するリチウム遷移金属複合酸化物をコア粒子として備えている。
また、コア粒子を構成するリチウム遷移金属複合酸化物は、上記の通り、少なくともLiとNiとを含んでいればよく、さらに、Ni以外の遷移金属元素(すなわち、Coおよび上記式(1)中のMで表される金属元素)を一種または二種以上含んでいてもよい。このリチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、あるいはリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のような三元系リチウム含有複合酸化物などが挙げられる。
ここで開示される正極活物質では、上記したコア粒子の表面の少なくとも一部に、LiとYとZrとを含む複合酸化物(Li−Y−Zr−O系化合物)から構成された被覆層が形成されている。このLi−Y−Zr−O系化合物としては、Li1−aY1−bZrbO2+δ(ここで0≦a<1、0<b<0.5、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表される化合物、例えば、Li0.9Y0.9Zr0.1O2などが挙げられる。なお、被覆層を形成する化合物には、上記コア粒子に由来する他の金属元素が微量含まれていてもよい。
具体的には、コア粒子の表面に形成された被覆層によって粒子表面が安定化しているため、活物質と電解液との副反応が抑制される。さらに、この被覆層は、活物質粒子同士の粒界において粒子の膨張収縮による応力を緩和する緩衝層としても機能することができるとともに、活物質粒子の機械的強度を向上させて粒子の割れの発生を抑制することもできる。ここで開示される正極活物質は、これらの機能によってサイクル耐久性を従来の技術よりも大幅に向上させることができる。
イットリウム:0.25〜1mol%
ジルコニウム:0.25〜1mol%とすることが好ましい。
このような割合でZrとYとを含む正極活物質は、コア粒子の表面に十分で過不足ない量の被覆層を形成させることができるため、上記した種々の電池性能の向上の効果を十分に発揮することができる
ここで開示される正極活物質では、化学的に安定したLi−Y−Zr−O系化合物の被覆層がコア粒子の表面を覆っているため、結晶格子内にYまたはZrが存在しているリチウム遷移金属複合酸化物を用いているにも関わらず、YまたはZrが溶出して金属Li析出の原因となることを防止できる。
さらに、YまたはZrの溶出が防止されているため、電池の抵抗の低減とサイクル耐久性の向上といった効果を長期間維持することができる。
次に、ここで開示される正極活物質の製造方法について説明する。
コア粒子は、一般的なリチウムイオン二次電池用正極活物質と同様の工程を経て作製される。具体的には、Li以外の金属元素の供給源(原料)を所望の組成比となるように秤量して水系溶媒と混合することによって水性溶液を調製する。このLi以外の金属元素の供給源としては、ニッケル供給源(硫酸ニッケル(NiSO4)などのニッケルを含む化合物)を少なくとも使用し、さらに目的の組成に応じて他の金属元素の供給源(例えば、硫酸コバルトなどのコバルト供給源や、硫酸マンガンなどのマンガン供給源)等を使用し得る。
そして、得られた前駆体にリチウム供給源(炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウムなど)を所定量混合した後、酸化性雰囲気の下で700℃〜1000℃(例えば800℃)、5時間〜20時間(例えば10時間)の焼成処理を行う。これによって得られた焼成体を、解砕することにより、層状結晶構造を有したリチウム遷移金属複合酸化物からなるコア粒子が得られる。
次に、上記のようにして得られたコア粒子の表面の少なくとも一部に、Li−Y−Zr−O系化合物から構成された被覆層を形成する。以下、被覆層を形成する方法の一例を説明する。
先ず、ジルコニウム塩とイットリウム塩とを1:1の割合で混合した水溶液に、上記工程で得られたコア粒子を添加して混合液を調製する。このとき、Li以外の金属元素に対するZrとYの各々の割合が0.25mol%〜1.0mol%になるように、ジルコニウム塩、イットリウム塩およびコア粒子のそれぞれの量を調整する。
次に、調製した混合液を加熱して蒸発させることによって、コア粒子の表面にYとZrとを含む前駆体を作成する。このときの加熱温度は、例えば60℃に設定する。
次に、前駆体が表面に形成されたコア粒子を焼成する。具体的には、上記の構成で得られた粉体を400℃〜600℃(例えば500℃)の温度条件で3時間〜10時間(例えば5時間)焼成する。これによって、コア粒子表面のLiと前駆体中のYとZrとが反応してコア粒子の表面にLi−Y−Zr−O系化合物の被覆層が形成される。
また、このときに前駆体に含まれるYおよび/またはZrの一部がコア粒子に固溶して、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶格子内にYおよび/またはZrが存在するコア粒子が得られることがある。
次に、本発明の好適な一実施形態として、上記した正極活物質が正極に用いられたリチウムイオン二次電池を説明する。なお、以下では、捲回電極体を備えるリチウムイオン二次電池を例にして説明するが、本発明の使用態様を限定することを意図したものではない。例えば、本発明の正極活物質は、正極と負極を複数枚積層させた積層電極体に使用することもできる。
このケース50は、上端が開放された扁平なケース本体52と、その上端を塞ぐ蓋体54とから構成されている。蓋体54には、正極端子70および負極端子72が設けられている。図示は省略するが、正極端子70はケース50内で電極体の正極と電気的に接続されており、負極端子72は負極と電気的に接続されている。
次に、上記したケース50の内部に収容される電極体の構造について説明する。図2は本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体を模式的に示す斜視図である。
本実施形態における電極体は、図2に示すように、長尺シート状の正極10と負極20を長尺シート状のセパレータ40とともに積層して捲回することによって作製された扁平形状の捲回電極体80である。
図2における正極10は、長尺シート状の正極集電体12の両面に、正極活物質を含む正極活物質層14を塗工することによって形成される。なお、正極10の幅方向の一方の側縁部には、正極活物質層14が塗工されていない正極活物質層非形成部16が形成されており、この正極活物質層非形成部16が上記正極端子70(図1参照)と電気的に接続される。
これによって、上記したように、作製したリチウムイオン二次電池のLi析出耐性やサイクル耐久性を向上させるとともに、電池抵抗を低減させることができる。
その他、正極活物質層に使用され得る材料としては、バインダ(結着剤)として機能し得る各種のポリマー材料が挙げられる。このバインダには、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などのポリマーを好ましく採用することができる。あるいは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリル酸(PAA)等を用いてもよい。
負極20についても、正極10と同様に、長尺シート状の負極集電体22の両面に負極活物質を主成分とする負極活物質層24が形成されている。そして、負極20の幅方向の一方の側縁部に負極活物質層非形成部26が形成されており、この負極活物質層非形成部26が負極端子72(図1参照)と電気的に接続されている。
好適例として、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、カーボンナノチューブ、或いはこれらを組み合わせた構造を有するもの等の炭素材料が挙げられる。エネルギー密度の観点から、これらの中でも黒鉛系材料(天然黒鉛(石墨)や人造黒鉛等)を好ましく用いることができる。
また、負極活物質は、上記した炭素系材料に限定されず、例えば、Li4Ti5O12等のリチウムチタン複合酸化物、リチウム遷移金属複合窒化物等のリチウム遷移金属複合酸化物を用いることもできる。
セパレータ40は、上記した正極10と負極20との間に介在するように配置されている。このセパレータ40には、微小な孔を複数有する所定幅の帯状のシート材が用いられる。例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造のシート材或いは積層構造のシート材を用いることができる。また、かかるシート材の表面には、絶縁性を有する粒子の層をさらに形成してもよい。この絶縁性を有する粒子としては、絶縁性を有する無機フィラー(例えば、金属酸化物、金属水酸化物などのフィラー)、或いは、絶縁性を有する樹脂粒子(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの粒子)などが挙げられる。
また、上記した捲回電極体80とともにケース50に収納される電解液(非水電解液)としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。
かかる非水電解液は、典型的には、非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有している。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等からなる群から選択された一種または二種以上を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF6,LiBF4,LiAsF6,LiCF3SO3,LiC4F9SO3,LiN(CF3SO2)2,LiC(CF3SO2)3等のリチウム塩を用いることができる。一例として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(例えば体積比3:4:3)にLiPF6を約1mol/Lの濃度で含有させた非水電解液が挙げられる。
上記した各部材を用いてリチウムイオン二次電池を構築するに際しては、先ず、ケース本体52の内部に捲回電極体80を収容するとともに、非水電解液をケース本体52内に配置(注液)する。その後、蓋体54に設けられた各々の電極端子70、72を、捲回電極体80の正極活物質層非形成部16と負極活物質層非形成部26に接続した後、蓋体54によってケース本体52上端の開口部を封止する。これによってリチウムイオン二次電池100が構築される。
このような構造を有した正極活物質は、上記したように、Li析出耐性の向上、サイクル耐久性の向上、電池抵抗の低減などの種々の電池性能を向上させることができるため、従来よりも高性能なリチウムイオン二次電池を構築することができる。
以下、本発明に関する試験例を説明するが、試験例の説明は本発明を限定することを意図したものではない。
試験例1〜試験例10の各々で異なる正極活物質を用いて正極を作製し、当該正極を用いて評価試験用のリチウムイオン二次電池を構築した。
(a)試験例1〜試験例7の正極活物質の作製
表1に示すように、試験例1ではZrやYが含まれていないリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM活物質)を正極活物質として作製し、試験例2〜4ではZrを含むNCM活物質を作製し、試験例5〜7ではYを含むNCM活物質を作製した。
なお、試験例2〜4では、硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとの水性溶液に、表1中の「Zr添加量」に示す量のZrを添加することによってZrを含むNCM活物質を作製した。また、試験例5〜7では、表1中の「Y添加量」に示す量のYを添加することによってYを含むNCM活物質を作製した。なお、表1中の「Zr添加量」と「Y添加量」は、正極活物質全体に含まれるLi以外の金属元素の合計モル数を100mol%とした場合のモル比を示している。
試験例8〜10では、上記した試験例1と同様の手順を経てNCM活物質を作製し、このNCM活物質をコア粒子として、該コア粒子の表面にYおよびZrを含む被覆層を形成することによって正極活物質を作製した。
次に、調製した混合液を60℃に加熱して蒸発させた後、450℃で5時間焼成することによって、コア粒子であるNCM活物質の表面にLi−Y−Zr−O系化合物の被覆層が形成された正極活物質を作製した。
評価試験用のリチウムイオン二次電池を構築する手順について具体的に説明する。
上記した通り、試験例1〜10の各々で異なる正極活物質の粉末を用意し、分散媒(NMP:Nメチルピロリドン)と、バインダ(PVDF)と、導電助剤(アセチレンブラック)と、分散剤とを混合して正極活物質層用のペーストを作成した。このとき、固形分が50wt%になるように各々の材料を秤量し、プラネタリーミキサーを用いて混合した。なお、このペーストに含まれる正極活物質と導電助剤とバインダの質量比は90:6:4に設定した。
試験例1〜10のいずれにおいても、平均粒子径20μmの天然黒鉛系材料(グラファイト)を負極活物質として使用して負極を作成した。具体的には、負極活物質と、バインダ(SBR:スチレンーブタジエン共重合体)と、増粘剤(CMC)とを分散溶媒(水)に混合させて負極活物質用のペーストを作成した。そして、この負極活物質用のペーストをシート状の負極集電体(銅箔)の両面に塗布し、乾燥させた後にプレスすることによりシート状の負極を作製した。なお、上記した負極活物質用のペーストにおける負極活物質とSBRとCMCの混合割合は98:1:1に調整した。
次に、上記した正極と負極をシート状のセパレータを介して積層させた後、積層体を捲回させて扁平状の捲回電極体を作製した。そして、作製した捲回電極体をケースの外部端子と接続した後、電解液とともにケース内に収容して密閉することにより評価試験用のリチウムイオン二次電池を構築した。なお、電解液としては、ECとDMCとEMCとを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に支持塩としてのLiPF6を約1mol/リットルの濃度で含有させた非水電解液を使用した。
本試験例においては、試験例1〜試験例10の評価試験用のリチウムイオン二次電池に対して(a)Li析出耐性評価試験、(b)サイクル耐久性評価試験、(c)電池抵抗評価試験の3項目の評価試験を行った。
なお、本試験例においては、各々の評価試験を行う前に、評価対象のリチウムイオン二次電池の活性化処理を行った。具体的には、電流値を1/3Cに設定した定電流充電で4.2Vまで充電した後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行って満充電状態とした。そして、電流値を1/3Cに設定した定電流放電を3Vまで行って、このときの容量を初期容量とした。なお、この活性化処理における温度は25℃に設定した。
本評価においては、試験例1〜10のリチウムイオン二次電池のLi析出耐性を評価するために「規格化限界電流値」を測定した。
具体的には、各試験例のリチウムイオン二次電池を−10℃の温度条件下に配置し、1C相当の電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、1Cの電流値で3Vまで定電流放電を行う充放電サイクルを1サイクルとし、この充放電サイクルを50サイクル行った後、各々の電池を分解して負極上に金属Liが析出しているか否かを調べた。
そして、金属Liの析出が見られなかった場合には、上記した充放電サイクルにおける電流値を0.2C刻みで大きくして試験を繰り返し行い、金属Liの析出が確認された際の電流値を「規格化限界電流値」とした。
結果を表1に示す。なお、表1中の「規格化限界電流値」は、試験例1の測定結果を100とした対数で示している。
本評価においては、試験例1〜10のサイクル耐久性を評価するために「サイクル後の容量維持率」を測定した。
具体的には、各試験例のリチウムイオン二次電池を60℃の温度条件下に配置し、2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、2Cの電流値で3Vまで定電流放電を行う充放電サイクルを1サイクルとし、この充放電サイクルを500サイクル行った。
そして、各々の電池の容量を測定し、上記した初期容量を100とした場合の測定結果の割合を「サイクル後容量維持率」とした。結果を表1に示す。
本評価においては、各試験例の電池抵抗を評価するために「規格化抵抗値」を測定した。
具体的には、先ず、各々の評価試験用の電池の開放電圧を、SOC(State of Charge)の56%に相当する3.70Vに調整した。そして、各々の電池を25℃の温度条件下に配置し、端子間電圧が3.00Vになるまで定電流放電を行った。そして、放電開始から5秒目の時点での端子間電圧と電流値を測定し、測定結果に基づいて算出した抵抗値を「規格化抵抗値」とした。
算出結果を表1に示す。なお、表1中の「規格化抵抗値」は、試験例1の測定結果を100とした対数で示している。
Li析出耐性評価試験の結果(表1中の規格化限界電流値)を見ると、ZrやYが結晶格子内に存在している試験例2〜7では、ZrやYが添加されていない試験例1に比べて規格化限界電流値が低下しており、負極表面での金属Liの析出が発生しやすくなっていた。一方、ZrとYの両方を含む被覆層を形成した試験例8〜10では、規格化限界電流値が試験例1と同程度になっており、ZrやYを添加しているにもかかわらず、金属Liの析出が抑制されていた。
次に、コア粒子に使用するリチウム遷移金属複合酸化物を変更しても、上記した試験Aと同等の効果が得られるか否かについて調べるために試験Bを行った。
試験Bにおいては、コア粒子としてLiNi1/3Co1/3Al1/3O2で表わされるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(NCA活物質)を用いたことを除いて、試験Aと同じ条件で試験を行った。試験結果を表2に示す。
このことから、コア粒子としてNCA活物質を用いた場合であっても、YとZrとを含む被覆層を形成することによって、Li析出耐性の向上、サイクル耐久性の向上、電池抵抗の低減という従来よりも優れた電池性能を有するリチウムイオン二次電池を構築できることが確認できた。
12 正極集電体
14 正極活物質層
16 正極活物質層非形成部
20 負極
22 負極集電体
24 負極活物質層
26 負極活物質層非形成部
40 セパレータ
50 ケース
52 ケース本体
54 蓋体
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
100 リチウムイオン二次電池
Claims (4)
- リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質であって、
少なくともリチウムとニッケルとを含む層状の結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物をコア粒子として備えており、
前記コア粒子の表面の少なくとも一部に、リチウムとイットリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物から構成された被覆層が形成されている、リチウムイオン二次電池用正極活物質。 - 前記コア粒子を100wt%としたときの前記被覆層の重量比が0.005wt%〜0.1wt%である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- リチウムと、ニッケルと、コバルトと、マンガンまたはアルミニウムとを含み、且つ、イットリウムとジルコニウムの両方を含んだ正極活物質であって、
ここで、前記ニッケルと、前記コバルトと、前記マンガンまたは前記アルミニウムとの合計モル数を100mol%としたときの前記イットリウムおよび前記ジルコニウムのそれぞれの含有量が、
イットリウム:0.25〜1mol%
ジルコニウム:0.25〜1mol%である、請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を備える、リチウムイオン二次電池。
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