JP2020122151A - 育児用調製粉乳に用いるための油脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、高濃度にDAG(ジアシルグリセロール)を含む油脂にはグリシドール脂肪酸エステルが含まれていることが報告されており、グリシドール脂肪酸エステルが体内で代謝されてグリシドールが生成した場合は、その発がん性や毒性が懸念されている。従って、食用油脂から3−MCPD、グリシドール及びそれらの脂肪酸エステルを低減することが望まれている。
特許文献1では、油脂をエステル交換してから酸性活性白土処理し、低い温度で脱臭することにより、3−MCPD及びグリシドール及びそれらの脂肪酸エステルを低減できることが記載されている。また特許文献1には、WHO/FAOの発表では、3−MCPDの一日許容摂取量(TDI)は2μg/kg(体重)とされ、体重60kgの成人では、一日平均油脂摂取量を12.5gとすると油脂中の3−MCPDの許容濃度は9.6ppmとなることが記載されている。同様に、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)のデータでは、グリシドールの仮想的ベンチマーク用量下限値(BMDL10)は4.06mg/kg(体重)とされ、食品安全委員会が指標とする暴露マージンを10000以上として計算すると、体重60kgの成人では、一日平均油脂摂取量を12.5gとすると、油脂中のグリシドールの許容濃度は2.0ppmとなることが記載されている。
特許文献2には、人乳類似油脂組成物として、特定の脂肪酸組成を有する油脂組成物を作成したことが開示されている。
また、特許文献3では、ランダム化パーム油またはランダム化パームオレイン油と他の油脂を組み合わせた油脂組成物が開示されており、乳児栄養食用の油脂組成物として用いることができることが記載されている。
特許文献1に記載されるようなエステル交換、酸性活性白土処理及び低温脱臭処理を行えば、3−MCPD、グリシドール及びそれらの脂肪酸エステルを低減することはできるが、パーム油をエステル交換することによって油脂組成物の融点が上昇し、低温で結晶が発生してしまうため、高温での流通を要する。
育児用調製粉乳に用いられる油脂組成物は、上述のとおりリノール酸やα−リノレン酸に一定の基準が定められており、又、母乳代替食品として、特許文献2に記載されるような特定の脂肪酸組成を有する必要がある。リノール酸やα−リノレン酸等の高度不飽和脂肪酸は一般的に酸化安定性が悪く、高温での流通により経時的に風味が劣化してしまう。このため、これらの油脂組成物は流通工程(タンク保存、ローリー車運搬)を低温で行っているが、この低温流通時に結晶が発生してしまうと、油脂組成物転送時(ローリー車⇔タンク)にストレーナーが詰まってしまい、転送ができないとの問題がある。育児用調製粉乳に用いられる油脂組成物は、低温での流通時に結晶が発生しない、保存安定性を有する必要がある。
ここで言う保存安定性とは、低温での流通時に結晶が発生せず、良好な風味を有することを意味する。
従って、本発明の課題は、3−MCPD及びグリシドール及びそれらの脂肪酸エステルの濃度が充分に低く、更に保存安定性に優れた、栄養学的に一定の基準を満たす育児用調製粉乳に用いられる油脂組成物を提供することである。
〔1〕育児用調製粉乳に用いるための、リノール酸及びα−リノレン酸を含む油脂組成物であって、35℃における固体油脂含有率が0.5%以下であり、3−モノクロロプロパン−1,2−ジオール(3−MCPD)濃度が0.33ppm以下でかつグリシドール濃度が0.07ppm以下である上記油脂組成物。
〔2〕パーム油およびその分別油から選択される第1油脂、及びパーム核油およびその分別油から選択される第2油脂を含む混合油脂のエステル交換油脂を含む、前記〔1〕記載の油脂組成物。
〔3〕前記エステル交換油脂を製造するための混合油脂中の第1油脂の量が、油脂組成物全質量に対して50質量%未満の量である、前記〔1〕または〔2〕に記載の油脂組成物。
〔4〕油脂組成物全質量に対し、リノール酸を5.0〜32.0質量%の量で含み、かつα−リノレン酸を0.8質量%以上の量で含む、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の油脂組成物。
〔5〕前記エステル交換油脂を製造するための混合油脂が、第1油脂及び第2油脂以外の一または複数の油脂を含む、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の油脂組成物。
〔6〕前記エステル交換油脂以外の一または複数の他の油脂を含む、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の油脂組成物。
〔7〕200℃以上230℃以下で脱臭処理されている、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の油脂組成物。
〔8〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の油脂組成物を含む、育児用調製粉乳。
〔9〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の油脂組成物の製造方法であって、下記工程を含む方法:
(i)パーム油およびその分別油から選択される第1油脂、パーム核油およびその分別油から選択される第2油脂、及び任意に含まれる第1油脂及び第2油脂以外の第3油脂を混合して混合油脂を作成し、前記混合油脂をエステル交換してエステル交換油脂を作成する工程、及び
(ii)前記エステル交換油脂、あるいは前記エステル交換油脂と他の任意の油脂を含む混合油脂を作成し、前記油脂を脱色処理する工程、及び
(iii)前記油脂を200℃以上230℃以下で脱臭処理する工程。
更に、混合油脂によるエステル交換油脂の使用により、育児用調製粉乳のための油脂組成物として保存安定性に優れている。
本発明の油脂組成物は育児用調製粉乳に用いられる。
育児用調製粉乳とは、母乳の代替品として用いられる粉乳であり、出来る限り母乳の成分に近似させることが多い。ヒトの乳汁の主な成分としては、蛋白質、脂肪、糖質などがあり、脂肪には、乳児の発育に必要なリノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸等の必須脂肪酸が一定量含まれている。
消費者庁では、乳児用調製粉乳たる表示の許可基準では、100kcal当たりの組成として、脂質が4.4〜6.0g、リノール酸が0.3〜1.4gであり、α−リノレン酸が0.05g以上であることを示している。本発明における「育児用調製粉乳に用いられる油脂組成物」とは、このような栄養基準を満たすための油脂組成物を意味している。
油脂中のリノール酸及びα−リノレン酸の量は様々な測定方法があるが、本明細書では、基準油脂分析法(2.4.2.2−2013 脂肪酸組成 FID昇温ガスクロマトグラフ法)により測定した値を用いる。
油脂組成物中のリノール酸及びα−リノレン酸の比(リノール酸/α−リノレン酸)は、栄養学的な観点から、5〜15の範囲であることが好ましい。
好ましい組み合わせとしては、例えば、パーム油またはその分別油及びパーム核油またはその分別油を組み合わせて、更に他の油脂を組み合わせてもよい。
パーム油の分別油とは、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクション等のパーム油の分別により得られる油脂を意味する。好ましくは、パームオレイン、パームダブルオレインが挙げられる。
パーム核油の分別油とは、パーム核オレイン、パーム核ステアリン等のパーム核油の分別により得られる油脂を意味する。好ましくは、パーム核オレインが挙げられる。
本発明において、パーム油およびその分別油から選択される油脂のみのエステル交換油脂を含む油脂組成物を用いた場合には3−MCPD濃度を充分に低下することはできるが、保存安定性が悪くなる。このため、パーム油およびその分別油から選択される油脂とパーム核油およびその分別油から選択される油脂の混合油脂のエステル交換油脂とすることにより、3−MCPD濃度を育児用調製粉乳として充分に安全なレベルに低下することができ、保存安定性も優れた油脂を得ることができる。
第1油脂と第2油脂の比は、20/80〜80/20であることが好ましく、30/70〜70/30であることが更に好ましく、40/60〜60/40であることがより更に好ましい。
第3油脂としては、リノール酸及びα−リノレン酸が許可基準の範囲に入れば制限はなく、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ヒマワリ油、サフラワー油、エゴマ油、アマニ油、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイック菜種油等の液油が挙げられる。好ましくは、大豆油、菜種油である。
本発明の油脂組成物の全質量に対し、上記エステル交換油脂は、50〜100質量%含まれることが好ましく、60〜100質量%含まれることが更に好ましい。
本発明の油脂組成物が上述したエステル交換油脂を含む態様において、油脂組成物の製造方法は、下記工程を含む方法である。
(i) パーム油およびその分別油から選択される第1油脂、パーム核油およびその分別油から選択される第2油脂、及び任意に含まれる第3の油脂を混合して混合油脂を作成し、前記混合油脂をエステル交換してエステル交換油脂を作成する工程、及び
(ii) 前記エステル交換油脂、あるいは前記エステル交換油脂と他の任意の油脂を含む混合油脂を作成し、前記油脂を脱色処理する工程、及び
(iii) 前記脱色処理油脂を200℃以上230℃以下で脱臭処理する工程。
本発明の製造方法におけるエステル交換方法としては、当業者に公知のいずれの方法により行ってもよいが、金属触媒による化学的エステル交換反応法で行うことが好ましい。
まずは、常法に従って金属触媒存在下、好ましくはナトリウムメチラートの存在下で、エステル交換反応率が90%以上となるよう化学的エステル交換反応を行う。エステル交換反応は、減圧下で50〜120℃程度の温度での加熱下攪拌することにより行われる。また、通常、エステル交換反応の反応時間は10分〜60分であるが、本発明では、エステル交換反応率が90%以上となるようエステル交換反応を10分以上行う必要があり、好ましくは20〜60分間程度である。その後反応を停止させるために水を加えるが、更にクエン酸水溶液を添加してもよい。
触媒は、例えばエステル交換を行う原料油脂質量に対して0.1〜2質量%程度の範囲において使用してもよい。
工程(1)で得られたエステル交換油脂を常法に従って脱色処理する。脱色処理に用いる吸着剤としては、好ましくは酸性活性白土を使用し、より好ましくは活性炭を併用する。効率よく、短時間で脱色処理を行うために、90〜120℃程度の温度に加熱し且つ減圧下(一般に6.7kPa以下)で混合攪拌を行うことが好適であり、処理量などによって異なるが、一般に30分間程度、混合攪拌を行えばよい。
該脱臭工程は、温度条件(200〜230℃)以外に特に制限はなく、食用油脂の脱臭に通常用いられている減圧水蒸気蒸留脱臭法でよい。
一方、脱臭温度が230℃を超えると、グリシドールが増加するので好ましくない。特に、260℃以上にするとこれらの成分が著しく増加するので極めて好ましくない。
上記の製造方法により得られる油脂組成物は、脱臭工程の後においても3−MCPD及びグリシドール及びそれらの脂肪酸エステル濃度が低く、3−MCPD濃度を0.33ppm以下、グリシドール濃度を0.07ppm以下まで低減され、かつ風味も良好である。
なお、油脂組成物中には、3−MCPD及びグリシドールはそれぞれ3−MCPD脂肪酸エステル及びグリシドール脂肪酸エステルの形態で存在しているが、本明細書では、これらを3−MCPD及びグリシドールとして測定した値を用いて、油脂組成物中の「3−MCPD濃度」、「グリシドール濃度」と表現している。
本発明の育児用調製粉乳は、上述した本発明の油脂組成物を含み、その他、育児用調製粉乳に含まれる任意の成分を含む。
任意の成分としては、例えば、たんぱく源、炭水化物源、ビタミン、ミネラル及びその他滋養要素等が挙げられる。
本発明の油脂組成物は、育児用調製粉乳中に、例えば10〜30質量%含有させることができるがこれに限定されるものではない。
パームオレイン20kgを、4kPa、90℃の減圧下で30分脱水後、パームオレイン100質量部に対してナトリウムメチラート(商品名:ソジウムメチラート、日本曹達社製)を0.12質量部添加し、4kPa、90℃の減圧下で30分間、化学的エステル交換反応を行った。パームオレイン100質量部に50質量部の水を加えて軽く混合し、化学的エステル交換反応を停止した。70℃で30分間静置し、セッケン分を除去した。その後4kPa、90℃の減圧下で30分脱水した。以上のようにして、製造例1のエステル交換油脂を作成した。
表1の記載に従った組成の油脂を製造例1と同様の条件でエステル交換を行って、製造例2のエステル交換油脂を作成した。
表1の記載に従った組成の油脂を製造例1と同様の条件でエステル交換を行って、製造例3のエステル交換油脂を作成した。
表1の記載に従った組成の油脂を製造例1と同様の条件でエステル交換を行って、製造例4のエステル交換油脂を作成した。
製造例2のエステル交換油脂67質量部、大豆油21質量部及び菜種油12質量部を混合し、油脂100部に酸性活性白土(商品名:ガレオンアースV2、水澤化学工業製)を2.0質量部添加し、常圧下で、90℃、60分間脱色処理を行った。酸性活性白土は、ろ紙(商品名:東洋ろ紙No.2、アドバンテック製)及びろ過助剤(商品名:シリカ#600H、中央シリカ株式会社製)を用いて減圧ろ過により取り除き脱色油を得た。この脱色油15kgを210℃、75分、真空度0.4kPa以下、吹込み水蒸気量3.0%(対油重量%)の条件で脱臭処理を行い、脱臭油を得た。
表2の記載に従った組成の油脂を実施例1と同様の条件で脱色、脱臭を行って、各油脂組成物を製造した。
「DFG Standard Methods Section C−Fats C−IV 18(10)」に従って測定した。
1.標準溶液
下記標準原液及び溶液は全て溶媒としてトルエンを用いた。
1)3−MCPD−1,2−パルミトイルエステル(和光純薬製、≧98%)
3−MCPD−1,2−パルミトイルエステル標準原液(約1000ppm)
3−MCPD−1,2−パルミトイルエステル標準溶液(約40ppm)
2)d5−3−MCPD−1,2−パルミトイルエステル(和光純薬製、≧98%)
*サロゲートとして使用
d5−3−MCPD−1,2−パルミトイルエステル標準原液(約1000ppm)
d5−3−MCPD−1,2−パルミトイルエステル標準溶液(約40ppm)
3)グリシジルステアレート(TCI製、96%≧)
グリシジルステアレート標準原液(約1000ppm)
グリシジルステアレート標準溶液(約40ppm)
1)超純水
2)トルエン(関東化学製、残農用、5000倍濃縮)
3)t-ブチルメチルエーテル(t-BME) (関東化学製、残農用、5000倍濃縮)
4)メタノール(関東化学製、残農用、5000倍濃縮)
5)ヘキサン(関東化学製、残農用、5000倍濃縮)
6)酢酸エチル(関東化学製、残農用、5000倍濃縮)
7)ジエチルエーテル(関東化学製、残農用、5000倍濃縮)
8)イソオクタン
9)ナトリウムメトキシド
10)ナトリウムメトキシド-メタノール溶液(25g/L):0.25gをメタノールで10mLに定溶〈*用事調製(水分により分解しやすいので長期保存は不可)〉
11)塩化ナトリウム(関東化学製、特級)
12)塩化ナトリウム溶液(NaCl 200g/L溶液):塩化ナトリウム 50gを超純水で溶解し250mLとする
13)臭化ナトリウム(関東化学製、特級)
14)臭化ナトリウム水溶液(NaBr 600g/L溶液)
15)硫酸(25%、6N):硫酸(96%、36N)を6倍に希釈
ex)超純水50mLに硫酸(96%、36N)を10mL加えた後60mLに定容
16)酸性塩化ナトリウム水溶液(200g/L):塩化ナトリウム水溶液1Lに硫酸(25%)35mLを加える
ex)塩化ナトリウム水溶液20mL+硫酸(25%)700μL
17)酸性臭化ナトリウム水溶液(塩化物を含まない食塩水):臭化ナトリウム水溶液(600g/L)1Lに硫酸(25%)35mLを加える
ex)臭化ナトリウム水溶液20mL+硫酸(25%)700μL
18)フェニルボロン酸(PBA,フェニルほう酸)
19)誘導体化試薬:フェニルボロン酸をジエチルエーテルに溶解し、沈殿のある飽和状態〈*用事調製〉
1)パスツールピペット
2)メスシリンダー 25mL、50mL、100mL
3)メスフラスコ 5mL、10mL
4)ピペットマン P−5000、P−1000、P−200
5)スクリューバイアル(ガラス製、1.5mL容)
6)シリンジ
7)フィルター(疎水性)
1)試料100 mg(±0.5mg)を1.5mLスクリューバイアルに採取した。
2)サロゲートとしてd5−3−MCPD−1,2−パルミトイルエステル標準溶液(約50ppm)を100μL、t-ブチルメチルエーテルを100μL添加し攪拌した。
※コンタミ確認のため、3−MCPD等が検出しない試料(ex.エクストラバージンオリーブ油)を分析した。また、スパイク試料にはサロゲートとともに3−MCPD−1,2−パルミトイルエステル標準溶液(約40ppm)を100μL添加し回収率を確認した。
3)ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を200μL加え、攪拌した後、常温で3.5〜5.5分反応させた。
4)反応を止めるため、分析[A]には酸性塩化ナトリウム水溶液を600μL、分析[B]には酸性臭化ナトリウム水溶液を600μL加えた。
5)ヘキサン600μLを加え攪拌した後、5分以上静置し、ヘキサン層を除去する。再びへキサン600μLを加え、同操作を繰り返した。
6)ジエチルエーテル/酢酸エチル(6:4)混液を600μL加え、攪拌した後、硫酸ナトリウム(無水)入りのバイアルに溶媒層を回収した。同操作を更に2回繰り返した。
7)PBA溶液を100μL添加し誘導体化した後、窒素ガスを吹き付け乾固させた。
8)イソオクタン1mLで再溶解し、フィルターろ過した後、GC/MSにて測定を行った。
装置:GC/MS(Agilent製5975C/7890A)
カラム:DB−17MS,内径0.25mm×30m,膜厚 0.25μm
注入量:2μL
注入口温度:240℃
スプリットレス時間:1.5分
スプリット流量:20mL/min
キャリアガス:ヘリウム,1.2mL/min,定流量
オーブン温度:85℃(0.5min)→6℃/min→150℃→12℃/min→180℃→25℃/min→280℃(7min)
イオン化:EI(positive)
測定イオン:3−MCPD m/z=147(定量用)、146・196・198(確認用)
3−MCPD−d5 m/z=150(サロゲート)、149・201・203(確認用)
イオン源温度:250℃
四重極:150℃
[内部標準法]
サロゲートとして添加したd5−3−MCPD−1,2−パルミトイルエステルをd5−3−MCPD濃度に換算し、3−MCPDの面積値をサロゲートの面積値で割った面積比にサロゲート濃度を乗じて3−MCPD濃度を算出した。
定量値=サロゲート濃度×3−MCPD面積値/サロゲート面積値
上記で得られた定量値を試料採取量で除して、試料中濃度を求めた。
3−MCPD量[ppm]=定量値[μg/L]/試料採取量[mg]
※分析[A]では3−MCPD―FS量、分析[B]ではグリシドールを除去した3−MCPD量が求められる。
分析[A]・分析[B]それぞれの測定結果より、3−MCPD―FS量より3−MCPD量を減じ、グリシドール変換係数を乗じてグリシドール量を算出した。
グリシドール量[ppm]=(3−MCPD―FS量[A] − 3−MCPD量[B])×グリシドール変換係数t
グリシドールから3−MCPDへの変換係数は塩化物存在下[A]で検量線を作成して算出される。コンタミしていない油脂試料にグリシドール(グリシドールエステルとして)を複数濃度添加し、分析[A]に従って処理した。結果として得られる検量線y=mx+nの傾きの逆数はグリシドール変換係数tと等しい。
グリシドール変換係数t=1/m
1.500mLのガラスビーカーに油脂組成物450gを投入し、密閉(ラップ)をした。
2.500mLガラスビーカーに入れた油脂組成物を、各温度帯(30℃、35℃)に設定された恒温槽に保存した。
3.保存開始から3日、1週間、2週間、3週間での結晶の有無を目視にて確認した。
表2において、「○」は全く結晶が見えないことを意味する。「×」は結晶が目視で認められたことを意味する。
4.保存開始から3日、1週間、2週間、3週間での風味を確認した。
表2において、「○」は初期風味から変化がないことを意味する。「×」は初期風味から変化があることを意味する。
脂肪酸組成を基準油脂分析法(2.4.2.2−2013 脂肪酸組成 FID昇温ガスクロマトグラフ法)により分析した。
融点を基準油脂分析法(3.2.2.2−2013 融点(上昇融点))により分析した。
固体油脂含有率を基準油脂分析法(2.2.9−2013 固体脂含量(NMR法))により分析した。
実施例1〜6の油脂はいずれも35℃における固体油脂含有率が0.5%以下でありかつ3−MCPD及びグリシドール濃度がそれぞれ0.33ppm以下及び0.07ppm以下であった。これらの油脂組成物は、30℃で3日間、35℃で3週間以上結晶が発生せず、保存安定性に優れたものであった。
これに対し、実施例1と同じ原料油脂組成であるがエステル交換を行っていない比較例2の油脂組成物は35℃における固体含有率が0.5%以下であり、30℃及び35℃において3週間結晶が発生しておらず、保存安定性は優れていたが、3−MCPDが許容濃度を大きく上回るものであった。また、実施例1と同じ原料油脂組成であるが、パームオレイン油のみエステル交換を行った比較例1の油脂組成物は、3−MCPD及びグリシドール濃度がそれぞれ0.33ppm以下及び0.07ppm以下であった。この油脂組成物の35℃における固体油脂含有率は0.6%であり、35℃において1週間で結晶が発生しており、保存安定性に優れていないものであった。
Claims (9)
- 育児用調製粉乳に用いるための、リノール酸及びα−リノレン酸を含む油脂組成物であって、35℃における固体油脂含有率が0.5%以下であり、3−モノクロロプロパン−1、2−ジオール(3−MCPD)濃度が0.33ppm以下でかつグリシドール濃度が0.07ppm以下である、上記油脂組成物。
- パーム油およびその分別油から選択される第1油脂、及びパーム核油およびその分別油から選択される第2油脂を含む混合油脂のエステル交換油脂を含む、請求項1記載の油脂組成物。
- 前記エステル交換油脂を製造するための混合油脂中の第1油脂の量が、油脂組成物全質量に対して50質量%未満の量である、請求項1または2に記載の油脂組成物。
- 油脂組成物全質量に対し、リノール酸を5.0〜32.0質量%の量で含み、かつα−リノレン酸を0.8質量%以上の量で含む、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の油脂組成物。
- 前記エステル交換油脂を製造するための混合油脂が、第1油脂及び第2油脂以外の一または複数の第3油脂を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の油脂組成物。
- 前記エステル交換油脂以外の一または複数の他の油脂を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の油脂組成物。
- 200℃以上230℃以下で脱臭処理されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の油脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の油脂組成物を含む、育児用調製粉乳。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の油脂組成物の製造方法であって、下記工程を含む方法:
(i)パーム油およびその分別油から選択される第1油脂、パーム核油およびその分別油から選択される第2油脂、及び任意に含まれる第1油脂及び第2油脂以外の第3油脂を混合して混合油脂を作成し、前記混合油脂をエステル交換してエステル交換油脂を作成する工程、及び
(ii)前記エステル交換油脂、あるいは前記エステル交換油脂と他の任意の油脂を含む混合油脂を作成し、前記油脂を脱色処理する工程、及び
(iii)前記油脂を200℃以上230℃以下で脱臭処理する工程。
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