JP2020118661A - 特定細胞の分画方法及び捕捉方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特定細胞(EpCAMを発現していないがん細胞を含む多くのがん細胞、末梢血幹細胞等)の分画及び捕捉が可能な特定細胞の分画方法及び捕捉方法を提供する。【解決手段】血液又は体液中に含まれる特定細胞の分画方法であって、前記血液又は前記体液を遠心分離により分画して前記血液又は前記体液中に含まれる特定細胞を回収し、前記遠心分離は、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いて行われる特定細胞の分画方法。【選択図】なし

Description

本発明は、血液及び体液中の特定細胞(血液又は体液中に存在するがん細胞、幹細胞等)を分画する方法、及び捕捉する方法に関する。
がん細胞が発生するとやがて、血液・体液中に出て来ることが知られており、血液中に出て来たがん細胞は、血中循環腫瘍細胞(CTC)と呼ばれている。そして、この血中循環腫瘍細胞を調べることによるがんの治療効果の確認、予後寿命、投与前の抗がん剤の効果予測、がん細胞の遺伝子解析を用いた治療方法の検討、等が期待されている。
しかしながら、血中循環腫瘍細胞は非常に数が少なく(数個〜数百個/血液1mL)、がん細胞を分画及び捕捉することが難しいという問題がある。
例えば、血中循環腫瘍細胞の捕捉技術として、Cell Searchシステムと呼ばれるものが知られているが、これは、抗原抗体反応(EpCAM抗体で捕捉)を用いる技術であるため、EpCAMを発現しているがん細胞しか捕捉できず、捕捉可能ながん細胞の種類に制限がある(特許文献1等参照)。
特表2005−523981号公報
本発明は、前記課題を解決し、特定細胞(EpCAMを発現していないがん細胞を含む多くのがん細胞、末梢血幹細胞等)の分画及び捕捉が可能な特定細胞の分画方法及び捕捉方法を提供することを目的とする。
本発明は、血液又は体液中に含まれる特定細胞の分画方法であって、前記血液又は前記体液を遠心分離により分画して前記血液又は前記体液中に含まれる特定細胞を回収し、前記遠心分離は、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いて行われる特定細胞の分画方法に関する。
前記特定細胞の分画方法において、前記遠心分離により分画し、形成された分画層と、前記分画層の上層及び下層とを回収し、回収する前記上層及び前記下層の厚みが前記分画層の厚みの2.0倍以下であることが好ましい。
前記特定細胞の分画方法において、前記遠心分離により分画し、形成された分画線又は分画層と、前記分画線又は前記分画層の上層及び下層とを回収し、回収する前記上層及び前記下層の厚みが5.0mm以下であることが好ましい。
前記特定細胞の分画方法において、前記遠心分離時に分離液を用いて分画することが好ましい。
前記特定細胞の分画方法において、前記分離液の密度が1.060〜1.115g/mLであることが好ましい。
前記特定細胞の分画方法において、前記分離液の密度が1.060〜1.085g/mLであることが好ましい。
前記特定細胞の分画方法において、前記容器は、内表面の少なくとも一部の水の接触角が30度以下であることが好ましい。
前記特定細胞の分画方法において、前記血液又は前記体液に溶血剤を混合させた後、前記遠心分離を施すことが好ましい。
前記特定細胞の分画方法において、前記血液又は前記体液中の血球細胞同士を凝集させた後、前記遠心分離を施すことが好ましい。
本発明はまた、血液又は体液中に含まれる特定細胞の捕捉方法であって、前記血液又は前記体液を遠心分離により分画して前記血液又は前記体液中に含まれる特定細胞を回収し、次いで、得られた回収液中に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉し、前記遠心分離は、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いて行われる特定細胞の捕捉方法に関する。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記遠心分離により分画し、形成された分画層と、前記分画層の上層及び下層とを回収し、次いで、得られた回収液中に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉し、回収する前記上層及び前記下層の厚みが前記分画層の厚みの2.0倍以下であることが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記遠心分離により分画し、形成された分画線又は分画層と、前記分画線又は前記分画層の上層及び下層とを回収し、次いで、得られた回収液中に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉し、回収する前記上層及び前記下層の厚みが5.0mm以下であることが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記遠心分離時に分離液を用いて分画することが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記分離液の密度が1.060〜1.115g/mLであることが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記分離液の密度が1.060〜1.085g/mLであることが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記容器は、内表面の少なくとも一部の水の接触角が30度以下であることが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記血液又は前記体液中に溶血剤を混合させた後、前記遠心分離を施すことが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記血液又は前記体液中の血球細胞同士を凝集させた後、前記遠心分離を施すことが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記血液又は前記体液を希釈した後、前記血液又は前記体液中の血球細胞同士を凝集させ、次いで、前記遠心分離を施すことが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記血液又は前記体液中の血球細胞同士を凝集させた後、希釈し、次いで、遠心分離を施すことが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記血球細胞同士を凝集させる方法が抗原抗体反応を用いる方法であることが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、特定細胞は、がん細胞であることが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記親水性ポリマー層は、下記式(I)で表されるポリマー及びポリ(メタ)アクリロイルモルホリンからなる群より選択される少なくとも1種の親水性ポリマーで形成されていることが好ましい。
Figure 2020118661
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rはアルキル基を表す。pは1〜8、mは1〜5、nは繰り返し数を表す。)
前記特定細胞の捕捉方法において、前記親水性ポリマー層は、下記式(II)で表される化合物及び(メタ)アクリロイルモルホリンからなる群より選択される少なくとも1種の親水性モノマーと、他のモノマーとの共重合体で形成されていることが好ましい。
Figure 2020118661
(式中、R、R、p、mは前記と同様。)
前記特定細胞の捕捉方法において、前記親水性ポリマー層の厚みが10〜800nmであることが好ましい。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記親水性ポリマー層表面にフィブロネクチンが吸着されていることが好ましい。
本発明によれば、血液又は体液中に含まれる特定細胞の分画方法であって、前記血液又は前記体液を遠心分離により分画して前記血液又は前記体液中に含まれる特定細胞を回収し、前記遠心分離は、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いて行われる特定細胞の分画方法等であるので、特定細胞(EpCAMを発現していないがん細胞を含む多くのがん細胞等)を効果的に分画できる。従って、例えば、血液又は体液中からがん細胞等の特定細胞を充分に分画できる。
また、本発明によれば、血液又は体液中に含まれる特定細胞の捕捉方法であって、前記血液又は前記体液を遠心分離により分画して前記血液又は前記体液中に含まれる特定細胞を回収し、次いで、得られた回収液中に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉し、前記遠心分離は、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いて行われる特定細胞の捕捉方法等であるので、特定細胞(EpCAMを発現していないがん細胞を含む多くのがん細胞等)を効果的に捕捉でき、また、赤血球、白血球、血小板等の血球細胞の粘着・接着を抑制できる。従って、例えば、血液又は体液中からがん細胞等の特定細胞を選択的に捕捉できる。
血液又は体液に遠心分離を施す前後を示す模式図の一例である。 親水性ポリマー層が形成されたウェルを有するマルチウェルプレートの模式図の一例である。
本発明の特定細胞の分画方法は、血液又は体液中に含まれる特定細胞の分画方法であって、前記血液又は前記体液を遠心分離により分画して前記血液又は前記体液中に含まれる特定細胞を回収し、前記遠心分離は、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いて行われる特定細胞の分画方法である。
また本発明の特定細胞の捕捉方法は、血液又は体液中に含まれる特定細胞の捕捉方法であって、前記血液又は前記体液を遠心分離により分画して前記血液又は前記体液中に含まれる特定細胞を回収し、次いで、得られた回収液中に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉し、前記遠心分離は、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いて行われる特定細胞の捕捉方法である。
すなわち、先ず、体等から採取した血液又は体液を、遠心分離処理を施して分画する際に、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いて遠心分離することで、採取した血液又は体液に比べ、血球細胞の濃度が減少し、特定細胞が濃縮された試料を分画すると共に、次いで、作製(分画)された試料を親水性ポリマー層に接触させることで、試料中のがん細胞等の特定細胞を該ポリマー層に捕捉する方法である。これにより、赤血球、血小板等の血球細胞の分画・分離が良好になると同時に、容器へのがん細胞等の特定細胞の吸着も抑制され、特定細胞のロス(分画・分離および濃縮の操作に使う容器への特定細胞の吸着などによるロス)が減少する。よって、血球細胞等による細胞接着抑止効果が減じ、親水性ポリマーに対する特定細胞の本来の接着能力が発揮されるので、がん細胞等の特定細胞の捕捉性が大きく向上すると共に、血球細胞の捕捉性が低下し、分画・分離および濃縮の操作でのがん細胞のロスがあり、血球細胞が多い状態では到底発揮し得ないがん細胞の選択的な捕捉効果を奏する。
例えば、先ず、採取した血液又は体液に対して、前記所定の容器を用いた遠心分離処理を施すことで、血液又は体液中の赤血球、白血球、血小板等の血球細胞等を分画・分離(除去)した後、作製されたこれらの濃度が減少し、特定細胞のロスが抑えられた試料を親水性ポリマー層に接触させることにより、特定細胞を選択的に捕捉できる。従って、血液又は体液中のがん細胞等が親水性ポリマー層に、効果的に捕捉される。そして、捕捉されたがん細胞等の数を測定することで、血液又は体液中のがん細胞等の数が判り、がん治療効果の確認等を期待できる。また、捕捉したがん細胞等を培養し、その培養した細胞で抗がん剤等の効き目を確認することで、抗がん剤等の投与前に、体外で抗がん剤等の効き目を確認できると同時に、抗がん剤等の選定にも役立つ。更に、捕捉したがん細胞等を培養し、その培養した細胞で、がん細胞等の各種解析(遺伝子解析、病理解析等)にも使用できる。
前記特定細胞の分画方法及び捕捉方法は、血液又は体液中に含まれる特定細胞を分画する方法、及び分画した特定細胞を捕捉する方法である。特定細胞としては、がん細胞(EpCAMを発現していないがん細胞を含む任意のがん細胞、末梢血幹細胞)等が挙げられる。がん細胞としては、血中循環腫瘍細胞(CTC)等が挙げられる。
前記特定細胞の分画方法及び捕捉方法では、血液又は体液に、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いた遠心分離を施し、特定細胞が分画される。
低タンパク質吸着層は、タンパク質の吸着性が低い層であれば特に限定されず、例えば、低タンパク質吸着性ポリマーにより形成される層等が挙げられる。具体的には、アルカリ金属含有モノマー(分子中にアルカリ金属を含むモノマー)、双性イオン性モノマー(双性イオン性基含有化合物:永久陽電荷の中心及び陰電荷の中心を有する化合物)などの低タンパク質吸着性モノマーを重合して得られた低タンパク質吸着性ポリマーにより形成される低タンパク質吸着層等を好適に使用できる。これらのモノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、モノマーがアルカリ金属含有モノマー、双性イオン性モノマーに同時に該当する場合、いずれのモノマーにも含まれる。
アルカリ金属含有モノマーとしては、アクリル酸アルカリ金属塩(アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウムなど);メタクリル酸アルカリ金属塩(メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウムなど);イタコン酸アルカリ金属塩(イタコン酸ナトリウム、イタコン酸カリウムなど);3−ビニルプロピオン酸アルカリ金属塩(3−ビニルプロピオン酸ナトリウム、3−ビニルプロピオン酸カリウムなど);ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸カリウムなど);2−スルホエチル(メタ)アクリレートアルカリ金属塩(2−スルホエチル(メタ)アクリル酸ナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリル酸カリウムなど);3−スルホプロピル(メタ)アクリレートアルカリ金属塩(3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸ナトリウム、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸カリウムなど);2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸カリウムなど);スチレンスルホン酸アルカリ金属塩(スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸カリウムなど);などが挙げられる。なかでも、3−スルホプロピルメタクリル酸カリウムが好ましい。
双性イオン性モノマーとしては、カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタインなどが挙げられる。また、下記式(1)で示される化合物も挙げられ、なかでも、下記式(2)で表される化合物が好適である。
Figure 2020118661
(式中、R11は−H又は−CH、Xは−O−、NH−又はN−、mは1以上の整数、Yは双性イオン性基又はハロゲン基(Cl、Br、Fなど)を表す。)
式(1)において、R11は−CH、Xは−O−、mは1〜10の整数が好ましい。Yで表される双性イオン性基において、カチオンとしては、テトラアルキルアンモニウムなどの第四級アンモニウム、アニオンとしては、カルボン酸、スルホン酸、ホスフェートなどが挙げられる。
Figure 2020118661
(式中、R11は−H又は−CH、p及びqは1以上の整数、Y及びYは反対の電荷を有するイオン性官能基を表す。)
式(2)において、pは2以上の整数が好ましく、2〜10の整数がより好ましい。qは1〜10の整数が好ましく、2〜4の整数がより好ましい。また、好ましいR11は前記と同様である。Y及びYは、前記カチオン、アニオンと同様である。
前記双性イオン性モノマーの好適な代表例としては、下記式(2−1)〜(2−4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2020118661
(式中、R11は水素原子又はメチル基、p及びqは1〜10の整数を示す。)
Figure 2020118661
(式中、R11は水素原子又はメチル基、p及びqは1〜10の整数を示す。)
Figure 2020118661
(式中、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数1〜6の炭化水素基、p及びqは1〜10の整数を示す。)
Figure 2020118661
(式中、R11は水素原子又はメチル基、R13、R14及びR15は、同一若しくは異なって炭素数1又は2の炭化水素基、p及びqは1〜10の整数を示す。)
上記式(2−1)で表される化合物としては、ジメチル(3−スルホプロピル)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アンモニウムベタインなど;式(2−2)で表される化合物としては、ジメチル(2−カルボキシエチル)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アンモニウムベタインなど;式(2−3)で表される化合物としては、ジメチル(3−メトキシホスホプロピル)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アンモニウムベタインなど;式(2−4)で表される化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなど;が挙げられる。また、双性イオン性モノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホベタインなども挙げられる。なかでも、生体適合性が高い、タンパク吸着性が低いという観点から、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)が好ましい。
低タンパク質吸着性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、低タンパク質吸着性の観点から、好ましくは10000〜200000、より好ましくは10000〜150000である。なお、本明細書において、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
前記遠心分離に使用される容器は、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成されている。低タンパク質吸着層の膜厚は、好ましくは20〜10000nm、より好ましくは50〜800nm、更に好ましくは50〜500nmである。上記範囲内に調整することで、良好なタンパク質に対する低吸着性が得られる。また、低タンパク質吸着層は内表面に多く形成されていることが好ましく、全内面に低タンパク質吸着層が形成されていることが好適である。
低タンパク質吸着層は、例えば、(1)低タンパク質吸着性ポリマーを各種溶剤に溶解・分散した低タンパク質吸着性ポリマー溶液・分散液を、容器内部に注入し、所定時間保持、乾燥する方法、(2)該低タンパク質吸着性ポリマー溶液・分散液を容器内表面に塗工(噴霧)する方法、等、公知の手法により、容器内表面の全部又は一部に低タンパク質吸着性ポリマー溶液・分散液をコーティングすることで、低タンパク質吸着性ポリマーにより形成される低タンパク質吸着層が形成される。
溶剤、注入方法、塗工(噴霧)方法などは、従来公知の材料及び方法を適用できる。
(1)、(2)の保持、乾燥時間は、容器の大きさ、導入する液種、等により適宜設定すれば良い。保持時間、乾燥温度及び時間は、適宜選択可能である。
溶剤としては、低タンパク質吸着性ポリマーの溶解が可能なものであれば特に限定されず、使用する親水性ポリマーに応じて適宜選択すれば良い。例えば、水、有機溶媒、これらの混合溶媒が挙げられ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が列挙される。
遠心分離に用いる容器(内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器)は、特定細胞の回収性の観点から、該容器の内表面の少なくとも一部の水の接触角が30度以下であることが好ましく、より好ましくは20度以下、更に好ましくは10度以下である。
なお、水の接触角は、容器の内表面に蒸留水2μlを滴下し、30秒後の接触角をθ/2法(室温)で測定することで測定できる。
遠心分離は、公知の方法を採用でき、例えば、公知の遠心分離装置で実施できる。
遠心分離は、遠心力200〜3000G(×G)の条件下で実施することが好ましい。200G以上であると、血球細胞の分離が良くなると同時に、特定細胞のロス(赤血球等と同じ分画に入るなどによるロス)が減るため、特定細胞の選択的な捕捉効果を奏する。一方、3000G以下であると、特定細胞へのストレスが抑制され、本来の細胞の性質が維持される。より好ましくは300〜2800G、更に好ましくは400〜2500Gである。
遠心分離の時間、温度は、血球細胞の分離性等の観点から、適宜設定すれば良く、例えば、1〜120分(好ましくは1〜60分)、2〜40℃(好ましくは3〜30℃)の条件で実施すれば良い。
遠心分離では、遠心分離時に分離液を用いて分画することが好ましい。これにより、特定細胞(がん細胞等)等を含む単核球層、赤血球等を含む層、等に好適に分画できる。
密度勾配遠心法に用いられる分離液は、血液中の細胞の分画に適した比重を有し、また細胞を破壊することのない浸透圧及びpHを有するよう調製したものであればよい。媒体としては、密度勾配遠心分離法に使用可能な媒体を使用できる。分離液は、20℃での比重が1.060〜1.115g/mLであることが好ましい。また、分離液のpHは、4.5〜7.5が好ましい。
代表的な媒体(分離液)としては、スクロース、フィコール(スクロースとエピクロロヒドリンの共重合物)、パーコール(ポリビニルピロリドンの被膜を有するコロイド状シリカ製品)が挙げられる。フィコールは、Ficoll−Paque PLUS(ファルマシアバイオテク(株))、Histopaque−1077(シグマ アルドリッチ ジャパン(株))、リンフォプレップ(Lymphoprep)(ニコメッド、オスロ(ノルウェー))等;パーコールは、Percoll(シグマ アルドリッチ ジャパン(株))等;の製品が市販されている。
分離液の密度(20℃)は、特定細胞の回収性の観点から、1.060〜1.115g/mLであることが好ましく、1.060〜1.085g/mLであることがより好ましい。
前記特定細胞の分画方法の好適な態様としては、(1)前記遠心分離により分画し、形成された分画層と、前記分画層の上層及び下層とを回収し、回収する前記上層及び前記下層の厚みが前記分画層の厚みの2.0倍以下である方法、(2)前記遠心分離により分画し、形成された分画線又は分画層と、前記分画線又は前記分画層の上層及び下層とを回収し、回収する前記上層及び前記下層の厚みが5.0mm以下である方法、等が挙げられる。
また前記特定細胞の捕捉方法としては、(3)前記遠心分離により分画し、形成された分画層と、前記分画層の上層及び下層とを回収し、次いで、得られた回収液中に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉し、回収する前記上層及び前記下層の厚みが前記分画層の厚みの2.0倍以下である方法、(4)前記遠心分離により分画し、形成された分画線又は分画層と、前記分画線又は前記分画層の上層及び下層とを回収し、次いで、得られた回収液中に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉し、回収する前記上層及び前記下層の厚みが5.0mm以下である方法、等が挙げられる。
図1は、血液又は体液に遠心分離を施す前後を示す模式図の一例である。図1(a)は遠心分離前の模式図の一例であり、内表面に低タンパク質吸着層18が形成された遠心容器(遠沈管)11内に、分離液12、試料(血液若しくは体液又はその希釈液)13が入れられている。一方、図1(a)に遠心分離処理を施した後の状態を示す模式図の一例が図1(b)である。図1(b)は、内表面に低タンパク質吸着層18が形成された遠心容器(遠沈管)11内において、特定細胞を含む分画層又は分画線14(単核球層)、分画層又は分画線14上に上層15(「上澄み(血小板を含む上澄み)」とも称する)、分画層又は分画線14下に下層16(「沈み(分離液を含む沈み)」とも称する)、下層16下に赤血球を含む層17、がそれぞれ分画されている状態を示している。
前記(1)、(3)の態様では、遠心分離により図1(b)のように分画した後、特定細胞を含む分画層又は分画線14(単核球層)と、上層15(上澄み)のうち、分画層又は分画線14との界面から上層方向(図1(b)の上側方向)に分画層14の厚みhの最大2.0倍までの厚さの部分(厚み2.0h以下)と、下層16(沈み)のうち、分画層又は分画線14との界面から下層方向(図1(b)の下側方向)に分画層14の厚みhの最大2.0倍までの厚さの部分(厚み2.0h以下)とを回収する。
前記(2)、(4)の態様では、遠心分離により図1(b)のように分画した後、特定細胞を含む分画層又は分画線14(単核球層)と、上層15(上澄み)のうち、分画層又は分画線14との界面から上層方向(図1(b)の上側方向)の最大5.0mmまでの厚みの部分(厚み5.0mm以下)と、下層16(沈み)のうち、分画層又は分画線14との界面から下層方向(図1(b)の下側方向)の最大5.0mmまでの厚みの部分(厚み5.0mm以下)とを回収する。
このような遠心分離による分画、前記回収により、遠心分離では完全には分画されない特定細胞についても、単核球層の上層及び下層の所定部分から回収され、特定細胞をロスなく回収できるようになる。従って、赤血球や血小板が分離、除去され、がん細胞等の特定細胞の濃度を高めた試料を作製できる。
前記(1)、(3)の態様では、回収する上層(上澄み)及び下層(沈み)の厚みは、分画層の厚みの2.0倍以下であるが、特定細胞の捕捉性の観点から、好ましくは1.5倍以下、より好ましくは1.2倍以下である。下限は、特定細胞の回収性の観点から、0.1倍以上が好ましく、0.3倍以上がより好ましい。
前記(2)、(4)の態様では、回収する上層(血小板を含む上澄み)及び下層(分離液を含む沈み)は5.0mm以下であるが、特定細胞の捕捉性の観点から、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。下限は、特定細胞の回収性の観点から、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましい。
前記特定細胞の分画方法は、回収する分画中の赤血球をより少なくする点から、血液又は体液中に溶血剤を混合(添加)させた後、遠心分離を施すことが好ましい。溶血剤は、物理的又は化学的に赤血球に作用し、赤血球を溶解する試薬である。溶血剤としては、従来使用されているものを使用でき、例えば、塩化アンモニウム、合成界面活性剤及びアルコールが挙げられる。
前記特定細胞の分画方法は、血液又は体液中の血球細胞同士を凝集させた後、遠心分離を施すこと、すなわち、遠心分離前に、先ず血液又は体液中の血球細胞同士を凝集させることが好ましい。血球細胞同士を凝集させる方法は、このような凝集が可能な方法であれば、特に限定されないが、なかでも、抗原抗体反応を利用する方法を好適に使用できる。具体的には、血球凝集反応等の凝集反応法を好適に利用できる。
このような凝集工程で、血液又は体液に血球凝集反応を利用して細胞同士を凝集させると、その後、作製された凝集物を含むサンプルに遠心分離処理を施した際に、血球細胞を含む凝集物が除去される。従って、親水性ポリマー層に対し、サンプル中に高濃度で残存する特定細胞(がん細胞等)を効果的に捕捉できる。
血球細胞同士の凝集には、例えば、赤血球及び白血球凝集抗体試薬(赤血球及び白血球凝集抗体組成物)を好適に使用できる。遠心分離処理時に、比重ががん細胞等の特定細胞に近い一部の白血球の分離が悪くなるが、上記抗体組成物を用いて抗原抗体反応を利用し、赤血球と白血球を結合・凝集させると、特定細胞と比重の異なる赤血球、血小板等だけでなく、白血球と特定細胞の分離も良好になり、特定細胞の接着・捕捉性を向上できる。
なお、前記血球細胞同士の凝集前に、血液又は体液を希釈し、次いで、遠心分離を施してもよい。希釈方法としては、ヒト血液のpH(約7.4)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の緩衝溶液や、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)等の液体培地、を用いる方法があり、具体的には、採取した血液又は体液に緩衝溶液を加えて希釈することや、液体培地に採取した血液又は体液を加えて希釈することができる。希釈により、採取した血液又は体液に比べて、たんぱく質濃度を減少させることができる。
また、前記血球細胞同士の凝集後に、血液又は体液を希釈し、次いで、遠心分離を施してもよい。希釈方法は同様の方法を採用できる。
前記特定細胞の捕捉方法では、既述の特定細胞の分画方法で分画した回収液(分画液)に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉させる。
親水性ポリマー層(親水性ポリマーにより形成される層)は、所定の基材に形成できる。
基材としては、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のアクリル樹脂(ポリアクリル樹脂)、シクロオレフィン樹脂(ポリシクロオレフィン)、カーボネート樹脂(ポリカーボネート)、スチレン樹脂(ポリスチレン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリジメチルシロキサン、ソーダ石灰ガラス、ほうケイ酸ガラス等のガラス、等が挙げられる。なかでも、親水性ポリマーのコーティングには、構成材料の親水性が高い方が好ましく、ポリアクリル樹脂やソーダ石灰ガラスが好ましい。
親水性ポリマー層(親水性ポリマーにより形成される層)の膜厚は、好ましくは10〜800nm、より好ましくは30〜550nm、更に好ましくは50〜400nmである。上記範囲内に調整することで、良好なタンパク質や細胞に対する低吸着性、がん細胞に対する選択的捕捉性が得られる。
親水性ポリマーは、親水性を有するものを適宜選択できる。例えば、1種又は2種以上の親水性モノマーの単独重合体及び共重合体、1種又は2種以上の親水性モノマーと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。前記単独重合体、共重合体としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロイルモルホリン、ポリメタクリロイルモルホリン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド等が挙げられる。
前記共重合体における親水性モノマーは、親水性基を有する各種モノマーを使用できる。親水性基は、例えば、アミド基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、アミド基、オキシエチレン基等、公知の親水性基が挙げられる。
親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリルアミド、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体((メタ)アクリロイルモルホリン等)、などが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−メトキシエチルアクリレートが特に好ましい。
前記共重合体における他のモノマーは、親水性ポリマーの作用効果を阻害しない範囲内で適宜選択すれば良い。例えば、スチレン等の芳香族モノマー、酢酸ビニル、温度応答性を付与できるN−イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。
なかでも、親水性ポリマーとしては、下記式(I)で表されるポリマー及びポリ(メタ)アクリロイルモルホリンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
Figure 2020118661
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rはアルキル基を表す。pは1〜8、mは1〜5、nは繰り返し数を表す。)
前記式(I)で表されるポリマーとして、例えば、下記式(I−1)で表されるポリマーを好適に使用できる。
Figure 2020118661
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rはアルキル基を表す。mは1〜5、nは繰り返し数を表す。)
のアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。なかでも、Rは、メチル基又はエチル基が特に好ましい。pは、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。mは、1〜3が好ましい。n(繰り返し単位数)は、15〜1500が好ましく、40〜1200がより好ましい。
また、親水性ポリマーとして、下記式(II)で表される化合物及び(メタ)アクリロイルモルホリンからなる群より選択される少なくとも1種の親水性モノマーと、他のモノマーとの共重合体も好適に使用できる。
Figure 2020118661
(式中、R、R、p、mは前記と同様。)
前記式(II)で表される化合物としては、例えば、下記式(II−1)で表される化合物を好適に使用できる。
Figure 2020118661
(式中、R、R、mは前記と同様。)
親水性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、がん細胞に対する選択的吸着性・接着性の観点から、好ましくは8000〜150000、より好ましくは10000〜60000、更に好ましくは12000〜50000である。なお、本明細書において、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
親水性ポリマー層の表面の少なくとも一部(一部又は全部)は、水の接触角が30〜75度であることが好ましく、35〜75度であることがより好ましく、35〜70度であることが更に好ましい。所定の水の接触角を有する場合、本発明の効果が良好に得られる。
親水性ポリマー層は、(1)親水性ポリマーを各種溶剤に溶解・分散した親水性ポリマー溶液・分散液を、基材表面(基材凹部)に注入し、所定時間保持、乾燥する方法、(2)該親水性ポリマー溶液・分散液を基材表面に塗工(噴霧)する方法、等、公知の手法により、基材表面の全部又は一部に親水性ポリマー溶液・分散液をコーティングすることで、親水性ポリマーにより形成されるポリマー層が形成された基材を製造できる。そして、親水性ポリマー層が形成された基材に、必要に応じて他の部品を追加することで、特定細胞の捕捉が可能な装置を製造できる。
溶剤、注入方法、塗工(噴霧)方法などは、従来公知の材料及び方法を適用できる。
(1)、(2)の保持、乾燥時間は、基材の大きさ、導入する液種、等により適宜設定すれば良い。保持時間は、5分〜10時間が好ましく、10分〜5時間がより好ましく、15分〜2時間が更に好ましい。乾燥は、室温(約23℃)から80℃で行うことが好ましく、室温から50℃で行うことがより好ましい。また、減圧して乾燥しても良い。更に、保持して一定時間後、適宜、余分な親水性ポリマー溶液・分散液を排出し、乾燥してもよい。
溶剤としては、親水性ポリマーの溶解が可能なものであれば特に限定されず、使用する親水性ポリマーに応じて適宜選択すれば良い。例えば、水、有機溶媒、これらの混合溶媒が挙げられ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が列挙される。
親水性ポリマー層表面にフィブロネクチンが吸着されていることが好ましい。
該親水性ポリマー層の表面に更にフィブロネクチンが吸着させているため、これに前記回収液(分画液)を接触させることで、がん細胞等の特定細胞が親水性ポリマー層に、より多く吸着・接着される。
親水性ポリマー層にフィブロネクチンを吸着させる方法は特に限定されず、公知の方法を適用できる。例えば、親水性ポリマー層にフィブロネクチンの緩衝溶液(リン酸緩衝生理食塩水PBS等)を公知の方法で接触させ、所定温度で所定時間放置し、必要に応じて洗浄する方法、等で吸着させることができる。温度、時間は適宜設定すればよく、例えば、10〜60℃、0.1〜24時間程度で実施できる。
親水性ポリマー層上にフィブロネクチンを吸着させるという点から、フィブロネクチン濃度を、好ましくは0.5〜500μg/ml、より好ましくは1〜250μg/mlに調整した溶液、分散液等を用いることが好適である。上記範囲内の濃度に調整することで、がん細胞等の特定細胞について優れた捕捉性が得られる。
前記特定細胞の捕捉方法では、血液又は体液に遠心分離処理を施し、分画して得られた試料(回収液、血球細胞濃度が低下した試料)を、親水性ポリマー層が形成された基材に接触させることで、試料中の特定細胞を捕捉できる。試料と親水性ポリマー層の接触方法は特に限定されず、接触可能な任意の手法を採用でき、例えば、試料の注入、塗工(噴霧)等が挙げられる。
試料と親水性ポリマー層とを接触させることで、試料に含まれる特定細胞が親水性ポリマー層に捕捉されると共に、血球細胞等の吸着が抑制される。そのため、例えば、試料を接触させた後に所定時間保持し、次いで、洗浄することで、特定細胞を選択的に親水性ポリマー層に捕捉できる。そして、捕捉された特定細胞の数を測定することで、採取した血液又は体液中の特定細胞数が判り、がん治療効果の確認等が期待される。
前記特定細胞捕捉方法は、例えば、基材として、シングルウェル(シャーレ)、マルチウェルプレート、スライドチャンバー等を用い、必要に応じて他の部品を追加した装置を使用して実施できる。図2は、マルチウェルプレート2の一例を示している。
図2(a)(b)のマルチウェルプレート2は、特定細胞を捕捉する目的で使用される器具で、いわゆるマトリクス状にウェル21が配置されたマルチウェルプレート2である。マルチウェルプレート2は、円形に開口された複数のウェル21を有している。ウェル21は、採取した血液又は体液に遠心分離処理を施して分画することで得られた赤血球、白血球、血小板等の濃度を減少させた試料を注入する凹部であり、注入した試料を検査に供することにより、採取した血液又は体液をそのまま検査に供するケースに比べ、特定細胞を効果的に捕捉できる。従って、血液又は体液中の特定細胞の有無の確認、特定細胞数の計測、特定細胞の培養、薬の効き目の確認・選定を実施できる。
図2では、一例として、4行6列の24個のウェル21を有する24ウェルプレートを示しているが、マルチウェルプレート2は、ウェル21を少なくとも2つ以上有していれば良く、ウェル21の個数は任意である。24ウェルプレートの他には、ウェル21が、6個、96個、384個等の汎用マルチウェルプレートでも良い。
ウェル21は非貫通孔であり、マルチウェルプレート2の表面に開口されている。ウェル21には、開口から、血液又は体液に遠心分離処理を施し、分画して得られた試料が注入される。また、特定細胞の存在を確認した場合、特定細胞を培養するための培養液を注入することも可能である。
ウェル21の開口の直径R、深さDは、特に限定されず、通常のマルチウェルプレート2のR、Dを採用できる。図2では、マルチウェルプレート2の表面及び裏面に対して、ウェル21の内側面が略垂直であるが、ウェル21は、内側面が傾斜し、開口から底面にかけて窄まる形状でも良い。また、内側面が傾斜し、開口から底面にかけて拡がる形状でも良い。
図2では、ウェル21は円形に開口しているが、ウェル21の開口形状は任意であり、四角形等、任意の形状に開口したものでもよい。
マルチウェルプレート2は、複数のウェル21が分離可能なものも使用できる。複数のウェルを有する場合、特定細胞数計測用ウェルと、特定細胞培養用ウェルとに分離使用でき、例えば、計測用ウェルで特定細胞の存在の有無を確認した上で、存在が確認された場合に培養用ウェルで特定細胞を培養し、その細胞で薬の効き目を確認できる。なお、スライドチャンバーは、チャンバーが1個以上10個以下のものが好適である。
シングルウェル(シャーレ)、マルチウェルプレート2及びスライドチャンバーにおいて、ウェル21の内側面は、少なくとも一部に親水性ポリマー層が形成されていることが好ましい。図2(b)は、ウェルの底面及び側面の一部に親水性ポリマー層22が形成されている例を示している。
ウェル及びチャンバーの構成材料としては、細胞の観察では透明性が高いものがよく、例えば、前述の基材の材料を使用できる。
親水性ポリマー層22が形成されたウェル21内に、血液又は体液に遠心分離処理を施して分画し、得られた試料(回収液または回収物を液体培地などに懸濁させた懸濁液)を導入すると、これらに含まれる特定細胞が親水性ポリマー層22に捕捉されると共に、血球細胞等の吸着が抑制される。そのため、試料の導入後に所定時間保持し、次いで、洗浄することで、特定細胞を選択的に親水性ポリマー層22に捕捉できる。
前記特定細胞の捕捉方法を用いることで、例えば、特定細胞(EpCAMを発現していないがん細胞も含む多くのがん細胞等)を捕捉できる。また、血液又は体液中から特定細胞を充分に捕捉できると共に、他のタンパク質や細胞の粘着・接着を抑制できるので、特定細胞の選択的な捕捉が可能となる。
前記特定細胞の捕捉方法において、前記親水性ポリマー層に、予め、血球細胞等を除去した試料(回収液または回収物を液体培地などに懸濁させた懸濁液)を接触させることが好適である。これにより、がん細胞等の特定細胞の選択的捕捉性をより高めることができる。血球細胞等の除去方法としては、前述の遠心分離の他に、膜分離法等、公知の方法も採用できる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下の特定細胞の分画方法及び特定細胞の捕捉方法を実施した。なお、実施例a及び比較例a(特定細胞の分画方法)の結果を表1、実施例A〜C及び比較例A(特定細胞の捕捉方法)の結果を表2、実施例1〜4及び比較例1−1〜1−3、2〜5(特定細胞の分画方法及び特定細胞の捕捉方法)の結果を表3に示した。
〔特定細胞の分画方法〕
(実施例a)
染色をしたヒト結腸癌由来上皮細胞(HT−29)を全血に500000個/血液1mLになる様に懸濁させた(スパイク血)。これに等量のリン酸バッファー溶液を入れて希釈した(希釈スパイク血)。次に、たんぱく質をほとんど吸着しないポリマーであるポリMPC(MPCとメタクリル酸ブチル共重合体)でコーティングした15mLの遠心分離管に、分離液(LymphoPrep:密度1.077±0.001g/mL)を入れて、その上に上記希釈スパイク血を入れて、800G20分(室温:約23℃)の条件で遠心分離を行った。そして、単核球層(分画層、分画線)を分画(回収)した。尚、血液、溶液を計量・排出・注入時に使うピペットチップは、内面をたんぱく質をほとんど吸着しないポリマーである前記ポリMPCでコーティングしたものを使用した。この分画(回収)した溶液中のHT−29細胞数を血球計算盤でカウントして、回収溶液中の細胞数を計算し、仕込み細胞数との比率を計算して細胞回収率(%)を算出した。
(比較例a)
実施例aで分画時にポリMPCをコーティングしていない遠心管及びピペットチップを使用したこと以外は同様にして、細胞回収率(%)を算出した。
(実施例1)
染色をしたヒト結腸癌由来上皮細胞(HT−29)を全血に10000個/血液1mLになる様に懸濁させた(スパイク血)。これに等量のリン酸バッファー溶液を入れて希釈した(希釈スパイク血)。次に、たんぱく質をほとんど吸着しないポリマーであるポリMPC(MPCとメタクリル酸ブチル共重合体)でコーティングした15mLの遠心分離管に、分離液(LymphoPrep:密度1.077±0.001g/mL)を入れて、その上に上記希釈スパイク血を入れて、800G20分(室温:約23℃)の条件で遠心分離を行った。そして、単核球層(分画層、分画線)と、単核球層の厚みの2.0倍分の厚みの単核球層の直上の上澄み(上層)と、単核球層の厚みの2.0倍分の厚みの単核球層の直下の沈み(下層)とを分画(回収)した。尚、血液、溶液を計量・排出・注入時に使うピペットチップは、内面をたんぱく質をほとんど吸着しないポリマーである前記ポリMPCでコーティングしたものを使用した。この分画(回収)した溶液中のHT−29細胞数を血球計算盤でカウントして、回収溶液中の細胞数を計算し、仕込み細胞数との比率を計算して細胞回収率(%)を算出した。
(比較例1−1)
実施例1で分画時にポリMPCをコーティングしていない遠心管及びピペットチップを使用したこと以外は同様にして、細胞回収率(%)を算出した。
(比較例1−2)
比較例1−1で分画の仕方を、単核球層だけを分画した以外は同様にして、細胞回収率(%)を算出した。
(比較例1−3)
比較例1−1で分画の仕方を、単核球層と単核球層の厚みの4.0倍分の厚みの単核球層の直上の上澄み(上層:厚み8.0mm)と単核球層の厚みの4.0倍分の厚みの単核球層の直下の沈み(下層:厚み8.0mm)を分画した以外は同様にして、細胞回収率(%)を算出した。
(実施例2)
実施例1で分画の仕方を、単核球層と単核球層の厚みの1.0倍分の厚みの単核球層の直上の上澄み(上層)と単核球層の厚みの1.0倍分の厚みの単核球層の直下の沈み(下層)を分画した以外は同様にして、細胞回収率(%)を算出した。
(比較例2)
実施例2で分画時にポリMPCをコーティングしていない遠心管及びピペットチップを使用したこと以外は同様にして、細胞回収率(%)を算出した。
(実施例3)
実施例1で分画の仕方を、単核球層と単核球層の直上の5.0mmの上澄み(上層)と単核球層の直下の5.0mmの沈み(下層)を分画した以外は同様にして、細胞回収率(%)を算出した。
(比較例3)
実施例3で分画時にポリMPCをコーティングしていない遠心管及びピペットチップを使用したこと以外は同様にして、細胞回収率(%)を算出した。
(実施例4)
実施例1で、作成したスパイク血に、スパイク血量の1/20の量の赤血球・白血球凝集抗体試薬であるRosetteSep Human CD45 Depletion Cocktail(STEM CELL Technologies 社製)を、加えて、室温で20分放置して、凝集させた。これに等量のリン酸バッファー溶液を入れて希釈した(希釈スパイク血)以外は同様にして、細胞回収率(%)を算出した。
(比較例4)
実施例4で分画時にポリMPCをコーティングしていない遠心管及びピペットチップを使用したこと以外は同様にして、細胞回収率(%)を算出した。
〔特定細胞の捕捉方法〕
(実施例A)
AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を用いて、2−メトキシエチルアクリレートを80℃で6時間熱重合し、ポリ2−メトキシエチルアクリレートを作製した(分子量Mn:約15000、Mw:約50000)。そして、得られたポリ2−メトキシエチルアクリレートの0.25%メタノール溶液を作製した。
ガラス製のスライドチャンバーに、作製したポリ2−メトキシエチルアクリレート溶液(0.25質量%)を注入し、乾燥することで、親水性ポリマー層を作製した。
更に、ポリ2−メトキシエチルアクリレートがコーティングされた部分(親水性ポリマー層)にフィブロネクチンを吸着させた。具体的にはフィブロネクチンのPBS溶液(リン酸緩衝生理食塩水)200μg/mlを作製し、注入し、40℃1時間放置した後、PBS溶液で洗浄することで医療用検査装器具を製造した。
染色をしたヒト結腸癌由来上皮細胞(HT−29)を全血に100個/血液1mLになる様に懸濁させた(スパイク血)。これに等量のリン酸バッファー溶液を入れて希釈した(希釈スパイク血)。次に、たんぱく質をほとんど吸着しないポリマーであるポリMPC(MPCとメタクリル酸ブチル共重合体)でコーティングした15mLの遠心分離管に、分離液(LymphoPrep:密度1.077±0.001g/mL)を入れて、その上に上記希釈スパイク血を入れて、800G20分(室温:約23℃)の条件で遠心分離を行った。そして、単核球層(分画層、分画線)を分画(回収)した。尚、血液、溶液を計量・排出・注入時に使うピペットチップは、内面をたんぱく質をほとんど吸着しないポリマーである前記ポリMPCでコーティングしたものを使用した。この分画(回収)した回収溶液に、リン酸バッファー(PBS)溶液を添加して、遠心分離を再度行い、濃縮を行った。遠心分離後の最下層にできた塊をFBS(ウシ胎児血清)10%添加液体培地(最初の全血量と同じ液量)で懸濁させた。この懸濁液を用いて、チャンバーに1ml注入し、37℃で1時間接着させた。その後、PBS溶液で未接着の細胞を洗浄した。また、溶液を遠心分離・計量・排出・注入時に使う遠心管及びピペットチップは、内面をたんぱく質をほとんど吸着しないポリマーであるポリMPCでコーティングしたものを使用した。次いで、蛍光顕微鏡で接着したがん細胞数をカウントした。接着した細胞数と仕込み細胞数との比率を計算して、細胞捕捉率(%)を算出した。
(実施例B)
前記ガラス製のスライドチャンバーに、作製したポリ2−メトキシエチルアクリレート溶液(0.25質量%)を注入し、乾燥することで、親水性ポリマー層を作製し、フィブロネクチンの吸着を行わなかったことに変更した以外は実施例Aと同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(実施例C)
前記ガラス製のスライドチャンバーに、作製したポリ2−メトキシエチルアクリレート溶液(0.35質量%)を注入することに変更した以外は実施例Aと同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(比較例A)
前記特定細胞の分画方法の比較例aで分画・分離した回収溶液に変更した以外は実施例Aと同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(実施例1)
AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を用いて、2−メトキシエチルアクリレートを80℃で6時間熱重合し、ポリ2−メトキシエチルアクリレートを作製した(分子量Mn:約15000、Mw:約50000)。そして、得られたポリ2−メトキシエチルアクリレートの0.25%メタノール溶液を作製した。
ガラス製のスライドチャンバーに、作製したポリ2−メトキシエチルアクリレート溶液(0.25質量%)を注入し、乾燥することで、医療用検査装器具を製造した。
前記特定細胞の分画方法の実施例1で分画・分離した回収溶液に、リン酸バッファー(PBS)溶液を添加して、遠心分離を再度行い、濃縮を行った。遠心分離後の最下層にできた塊をFBS(ウシ胎児血清)10%添加液体培地(最初の全血量と同じ液量)で懸濁させた。この懸濁液を用いて、チャンバーに1ml注入し、37℃で1時間接着させた。その後、PBS溶液で未接着の細胞を洗浄した。次いで、蛍光顕微鏡で接着したがん細胞数をカウントした。接着した細胞数と仕込み細胞数との比率を計算して、細胞捕捉率(%)を算出した。
(比較例1−1)
前記特定細胞の分画方法の比較例1−1で分画・分離した回収溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(比較例1−2)
前記特定細胞の分画方法の比較例1−2で分画・分離した回収溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(比較例1−3)
前記特定細胞の分画方法の比較例1−3で分画・分離した回収溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(実施例2)
前記特定細胞の分画方法の実施例2で分画・分離した回収溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(比較例2)
前記特定細胞の分画方法の比較例2で分画・分離した回収溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(実施例3)
前記特定細胞の分画方法の実施例3で分画・分離した回収溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(比較例3)
前記特定細胞の分画方法の比較例3で分画・分離した回収溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(実施例4)
前記特定細胞の分画方法の実施例4で分画・分離した回収溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(比較例4)
前記特定細胞の分画方法の比較例4で分画・分離した回収溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、細胞捕捉率(%)を算出した。
(比較例5)
前記特定細胞の分画方法の比較例1−2と同様にして分画・分離した回収溶液に、リン酸バッファー(PBS)溶液を添加して、遠心分離を再度行い、濃縮を行った。遠心分離後の最下層にできた塊をFBS(ウシ胎児血清)10%添加液体培地(最初の全血量と同じ液量)で懸濁させた。この懸濁液を用いて、ポリ2−メトキシエチルアクリレートでコーティングしていないガラス製のスライドチャンバーに1ml注入し、37℃で1時間接着させた。その後、PBS溶液で未接着の細胞を洗浄した。次いで、蛍光顕微鏡で接着したがん細胞数をカウントした。接着した細胞数と仕込み細胞数との比率を計算して、細胞捕捉率(%)を算出した。
〔親水性ポリマー層(コーティング層)の膜厚〕
医療用検査器具の親水性ポリマー層の膜厚は、親水性ポリマー層の断面を、TEMを使用し、加速電圧15kV、10000倍で測定(撮影)した。
〔水の接触角〕
医療用検査器具の親水性ポリマー層の表面に蒸留水2μlを滴下し、30秒後の接触角をθ/2法(室温)で測定した。
なお、実施例4で使用した遠心分離管を切り出して、内表面の接触角を測定した結果、接触角は18.3度であった。
Figure 2020118661
Figure 2020118661
Figure 2020118661
血液又は体液に内表面に低タンパク質吸着層を形成した容器を用いた遠心分離処理を施し、試料を分画・分離することで、細胞回収率が高くなった。
また、分画した回収液を用いて、親水性ポリマー層(コーティング層)に接触させることで、がん細胞等の特定細胞が選択的に捕捉され、特定細胞の細胞捕捉率が増加した。
11 遠心容器
12 分離液
13 試料
14 分画層又は分画線
15 分画層又は分画線の上層(上澄み)
16 分画層又は分画線の下層(沈み)
17 赤血球を含む層
18 低タンパク質吸着層
2 マルチウェルプレート
21 ウェル
22 親水性ポリマー層

Claims (26)

  1. 血液又は体液中に含まれる特定細胞の分画方法であって、
    前記血液又は前記体液を遠心分離により分画して前記血液又は前記体液中に含まれる特定細胞を回収し、
    前記遠心分離は、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いて行われる特定細胞の分画方法。
  2. 前記遠心分離により分画し、形成された分画層と、前記分画層の上層及び下層とを回収し、
    回収する前記上層及び前記下層の厚みが前記分画層の厚みの2.0倍以下である請求項1記載の特定細胞の分画方法。
  3. 前記遠心分離により分画し、形成された分画線又は分画層と、前記分画線又は前記分画層の上層及び下層とを回収し、
    回収する前記上層及び前記下層の厚みが5.0mm以下である請求項1記載の特定細胞の分画方法。
  4. 前記遠心分離時に分離液を用いて分画する請求項1〜3のいずれかに記載の特定細胞の分画方法。
  5. 前記分離液の密度が1.060〜1.115g/mLである請求項4記載の特定細胞の分画方法。
  6. 前記分離液の密度が1.060〜1.085g/mLである請求項4記載の特定細胞の分画方法。
  7. 前記容器は、内表面の少なくとも一部の水の接触角が30度以下である請求項1〜6のいずれかに記載の特定細胞の分画方法。
  8. 前記血液又は前記体液に溶血剤を混合させた後、前記遠心分離を施す請求項1〜7のいずれかに記載の特定細胞の分画方法。
  9. 前記血液又は前記体液中の血球細胞同士を凝集させた後、前記遠心分離を施す請求項1〜8のいずれかに記載の特定細胞の分画方法。
  10. 血液又は体液中に含まれる特定細胞の捕捉方法であって、
    前記血液又は前記体液を遠心分離により分画して前記血液又は前記体液中に含まれる特定細胞を回収し、次いで、得られた回収液中に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉し、
    前記遠心分離は、内表面の少なくとも一部に低タンパク質吸着層が形成された容器を用いて行われる特定細胞の捕捉方法。
  11. 前記遠心分離により分画し、形成された分画層と、前記分画層の上層及び下層とを回収し、次いで、得られた回収液中に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉し、
    回収する前記上層及び前記下層の厚みが前記分画層の厚みの2.0倍以下である請求項10記載の特定細胞の捕捉方法。
  12. 前記遠心分離により分画し、形成された分画線又は分画層と、前記分画線又は前記分画層の上層及び下層とを回収し、次いで、得られた回収液中に含まれる特定細胞を親水性ポリマー層に捕捉し、
    回収する前記上層及び前記下層の厚みが5.0mm以下である請求項10記載の特定細胞の捕捉方法。
  13. 前記遠心分離時に分離液を用いて分画する請求項10〜12のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
  14. 前記分離液の密度が1.060〜1.115g/mLである請求項13記載の特定細胞の捕捉方法。
  15. 前記分離液の密度が1.060〜1.085g/mLである請求項13記載の特定細胞の捕捉方法。
  16. 前記容器は、内表面の少なくとも一部の水の接触角が30度以下である請求項10〜15のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
  17. 前記血液又は前記体液中に溶血剤を混合させた後、前記遠心分離を施す請求項10〜16のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
  18. 前記血液又は前記体液中の血球細胞同士を凝集させた後、前記遠心分離を施す請求項10〜17のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
  19. 前記血液又は前記体液を希釈した後、前記血液又は前記体液中の血球細胞同士を凝集させ、次いで、前記遠心分離を施す請求項10〜18のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
  20. 前記血液又は前記体液中の血球細胞同士を凝集させた後、希釈し、次いで、遠心分離を施す請求項10〜18のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
  21. 前記血球細胞同士を凝集させる方法が抗原抗体反応を用いる方法である請求項18〜20のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
  22. 特定細胞は、がん細胞である請求項10〜21のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
  23. 前記親水性ポリマー層は、下記式(I)で表されるポリマー及びポリ(メタ)アクリロイルモルホリンからなる群より選択される少なくとも1種の親水性ポリマーで形成されている請求項10〜22のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
    Figure 2020118661
    (式中、Rは水素原子又はメチル基、Rはアルキル基を表す。pは1〜8、mは1〜5、nは繰り返し数を表す。)
  24. 前記親水性ポリマー層は、下記式(II)で表される化合物及び(メタ)アクリロイルモルホリンからなる群より選択される少なくとも1種の親水性モノマーと、他のモノマーとの共重合体で形成されている請求項10〜22のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
    Figure 2020118661
    (式中、R、R、p、mは前記と同様。)
  25. 前記親水性ポリマー層の厚みが10〜800nmである請求項10〜24のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
  26. 前記親水性ポリマー層表面にフィブロネクチンが吸着されている請求項10〜25のいずれかに記載の特定細胞の捕捉方法。
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