ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)経路探索システムの構成:
(2)経路探索処理:
(3)他の実施形態:
(1)経路探索システムの構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる経路探索システムとして機能するナビゲーションシステム10の構成を示すブロック図である。ナビゲーションシステム10は、車両に備えられており、車両の経路を案内する機能を備えている。ナビゲーションシステム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20および記録媒体30を備え、GNSS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43,ユーザI/F部44に接続されている。
GNSS受信部41は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置であり、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在地を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在地を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の進行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43等は、車両の走行軌跡を特定するために利用され、本実施形態においては、車両の出発地と走行軌跡とに基づいて現在地が特定され、当該出発地と走行軌跡とに基づいて特定された車両の現在地がGNSS受信部41の出力信号に基づいて補正される。
ユーザI/F部44は、運転者の指示を入力し、また、運転者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネル方式のディスプレイやスイッチ等やスピーカー等を備えている。すなわち、ユーザI/F部44は画像や音声の出力部および利用者の指示を入力する入力部を備えている。
記録媒体30には予め地図情報30aが記録されている。地図情報30aは、道路区間の端点に対応するノードの位置、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、施設の位置や名称、属性等を示す施設データ等を含んでいる。
なお、リンクデータには、リンクデータが示す道路区間の道路種別、車線の数、車線の幅等を示す情報が対応づけられている。本実施形態において、道路種別は一般道路と有料道路(高速道路)に区別されている。一般道路は、さらに、細街路や国道などに細分化されている。また、有料道路は、さらに、従量料金の有料道路と均一料金の有料道路に細分化されている。さらに、本実施形態において施設データが示す施設には料金所が含まれている。本実施形態において料金所は、有料道路の出口、有料道路の入口、有料道路上で料金体系が変化する地点等に設置され得る。本実施形態においては、有料道路上に料金所が存在する場合に、料金所の位置を示す情報が施設データとして定義され、地図情報30aに含まれている。
制御部20は、図示しないナビゲーションプログラムの機能によりユーザI/F部44の入力部を介して運転者による目的地の入力を受け付け、車両の現在位置から目的地までの経路を探索する。また、制御部20は、当該ナビゲーションプログラムの機能により、車両の運転者に対して地図上の経路等を案内しながら目的地まで誘導する経路案内を行うことが可能である。
案内対象となる経路は、制御部20によって探索された経路であり、ナビゲーションプログラムは経路探索を行うための経路探索プログラム21を備えている。本実施形態において、制御部20は、経路探索プログラム21により所定のアルゴリズム(例えば、ダイクストラ法等)によって出発地から目的地までの経路探索を行う。
当該探索は、経路に含まれる道路の通過コストの和が最小になるように実施される。このような探索を実現するため、本実施形態において制御部20は、探索処理の過程で経路の候補となるリンク(道路区間)を選択し、そのリンクが経路となる場合の通過コストの和を取得する。そして、通過コストの和が最小になる経路が確定した場合にはその経路を採用し、出発地から目的地までの経路が確定した場合に経路の探索を終了する。むろん、通過コストは、探索処理が開始される前に予め計算され、地図情報30a等に含まれていても良い。
通過コストの大きさは、種々の要素によって決められて良く、例えば、道路区間や交差点の通過しやすさに対応した値であり、有料道路における料金所の存在、有料道路において課される料金の多寡、道路区間の長さ、所要期間、渋滞度、進行方向、車線の数、接続する道路の数、交差点の有無、信号機の有無等によって決められて良い。また、有料道路をできる限り利用する有料優先や、有料道路をできるだけ利用しない一般優先などの各種の条件に基づいて通過コストの大きさを調整可能である。ここでは、簡単のため、有料優先の探索において、道路区間の通過コストが道路区間毎の距離によって取得され、距離(旅行時間であっても等価)による通過コストに随時他の要素による通過コストが加えられる構成を想定する。すなわち、本実施形態は、候補となっている経路の距離に基づいて取得された通過コストの和に対して、新たに候補となった道路区間の距離に基づいて取得された通過コストを加えていく構成である。本実施形態においては、これらの通過コストに加えてさらに、距離以外の要素を考慮した通過コストが取得され、和に算入される。
このような通過コストに基づいて経路を探索するため、経路探索プログラム21は、通過コスト取得部21a、経路探索部21bを備えている。通過コスト取得部21aは、車両の出発地と目的地との間に存在する道路の通過コストを取得する機能を制御部20に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能により、地図情報30aを参照し、候補となっている道路区間の情報に基づいて当該道路区間の通過コストを取得する。
経路探索部21bは、通過コストの和が最小になる経路を探索する機能を制御部20に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、出発地から目的地に向けて走行し得る道路区間を候補として取得する。候補となる道路区間の選定には各種の制限が考慮されて良く、例えば、メッシュによって選択し得る道路区間を制限するなど、各種の公知技術を採用可能である。
いずれにしても制御部20は、候補となった道路区間を探索済の経路に加えた場合の通過コストを算出する。すなわち、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能で取得された通過コストに基づいて、経路に含まれる道路区間の通過コストの総和を取得する。新たな道路区間が候補になった場合、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能で取得された通過コストを総和に算入する。そして、通過コストの総和が最小になる経路が確定したノードが現れると、制御部20は、当該ノードまでの経路を確定する。制御部20は、この処理を目的地まで繰り返すことによって出発地から目的地までの経路を探索する。
以上の処理において、全ての道路区間において共通して算入される通過コストは距離による通過コストである。すなわち、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能により、地図情報30aを参照し、候補となっている道路区間の距離に基づいて当該道路区間の通過コストを取得する。
本実施形態においては当該距離による通過コストに加えて、さらに、他の要素も考慮する。本実施形態において制御部20は、有料道路において課される料金の多寡、有料道路における料金所の存在に基づいて通過コストを取得する。すなわち、制御部20は、有料道路において課される料金が多いほど経路として選択されにくくするため、従量料金の有料道路が存在する場合、距離に応じた通過コストを上乗せする。
具体的には、制御部20は、地図情報30aを参照し、候補となっている道路区間が従量料金の有料道路であるか否か判定する。候補となっている道路区間が従量料金の有料道路である場合、制御部20は、地図情報30aを参照し、当該有料道路が経路として選択されている距離を取得し、当該距離が長いほど大きい通過コストとなるように通過コストを取得する。
取得された通過コストは、他の通過コストに上乗せされる。このように、従量料金の有料道路が存在する場合の通過コストは、有料道路であるか否かにかかわらず取得される通過コストと同様に、距離に基づいて取得される。しかし、従量料金の有料道路が存在する場合の通過コストは、有料道路であるか否かにかかわらず取得される通過コストに上乗せされるため、有料道路で課される料金が高くなるほど経路になりにくくすることができる。
また、制御部20は、地図情報30aを参照し、候補となっている道路区間上に有料道路の料金所が存在するか否かを判定する。料金所が存在する場合、制御部20は、予め決められた値(例えば、一定距離分に相当する通過コスト)を、距離に基づいて取得された通過コストに上乗せする。
以上のように料金所の存在を示す通過コストが取得される場合、有料道路の出口に存在する料金所を通過する場合の通過コストが通過しない場合の通過コストよりも大きくなるため、有料道路を一旦降り、次の入口で再度同一の有料道路に乗る経路が探索されにくくなる。有料道路を一旦降り、次の入口で再度同一の有料道路に乗る経路を走行するよりは、出入口で降りることなく同一の有料道路を走行する経路が好まれることが多い。従って、料金所の存在を示す通過コストを算入すると、利用者が好まない経路が探索される可能性を低減することができる。
しかし、特定の場合には、利用者が好まない経路が探索される場合があった。図2Aは、出発地S周辺の道路を模式的に示す図である。図2Aにおいては、有料道路を太線、有料道路以外の無料道路を細線で示している。また、経路を一点鎖線または破線で示している。さらに、図2Aにおいては、有料道路の入口をI1,I2、出口をO、料金所をT1,T2で示している。
この例において、入口I1には料金所T1が存在し、出口Oと入口I2の間に料金所T2が存在する。このような料金所T2は、料金所T2の前後で料金体系が切り替わる際に設置され得る。この例において、出発地Sから入口I1を通過して有料道路Expに進入する経路が探索され、この後、図2Aの右上方面に存在する目的地(図示せず)に向かう経路が探索される場合を想定する。
この場合においては、図2に示すように入口I1の後に出口O、料金所T2、入口I2が存在するため、出口Oで有料道路Expを降りれば料金所T2の通過コストが算入されない。このため、出口Oで有料道路Expを降り、入口I2で再度有料道路Expに進入する、破線の矢印で示すような経路が探索され得る。このように有料道路Expを降りる経路において、有料道路を降りた後に走行する無料道路が短ければ、一般的には利用者に好まれない経路である。
そこで、本実施形態においては、無料区間の通過コストを調整することにより、有料道路の間に無料道路を走行する経路が探索される際に、経路に含まれ得る無料道路を調整する。具体的には、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能により、探索済の経路において有料道路の後に無料道路が連続しており、無料道路の次に有料道路に進入する経路を探索する場合、無料道路の情報に基づいて決められる通過コストを取得する。なお、以後においては、当該通過コストを乗り継ぎコストと呼ぶ。
例えば、図2Aに示す例において、有料道路Expの道路区間Le1を出口Oから退出し、破線の矢印で示された無料道路である道路区間L1〜L3を通る経路が候補として探索済である場合、探索済の経路において有料道路の後に無料道路が連続している状態である。この場合に、入口I2から有料道路Expに進入して有料道路Expの道路区間Le4を候補とする場合、無料道路の次に有料道路に進入する経路を探索することになる。この場合に、制御部20は、無料道路である道路区間L1〜L3に基づいて取得される乗り継ぎコストを、経路の通過コストの和に対して算入する。当該算入される乗り継ぎコストは、有料区間の間に含まれ得る無料区間を調整するためのコストである。
本実施形態において乗り継ぎコストは無料道路の距離に応じて大きくなり、ある距離以上では一定の上限値となる。
すなわち、制御部20は、探索済の経路において有料道路の後に無料道路が連続しており、無料道路の次に有料道路に進入する経路を探索する場合、地図情報30aを参照して当該無料道路の距離を取得する。そして、制御部20は、予め決められた距離と乗り継ぎコストとの対応関係に基づいて乗り継ぎコストの値を取得する。
図2Bは、当該通過コストを乗り継ぎコストの例を示す図である。図2Bにおいては、無料区間の距離が0〜4kmまでであれば距離とともに直線的に乗り継ぎコストが増加し、距離が4km以上になると一定の上限値となる。この構成によれば、有料道路を一旦降りて無料道路を走行し、その後有料道路に戻る経路は、無料区間の距離が特定の値を超えなければ無料道路の距離が大きいほど選択されにくくなる。従って、図2Aに示す例において、有料道路Expの道路区間Le1、無料道路である道路区間L1〜L3、有料道路Expの道路区間Le4の順で走行する経路は探索されにくくなる。
本実施形態においては、出口Oと入口I2までの区間で料金所T2を通過しながら有料道路を走行する際の通過コストが、無料道路である道路区間L1〜L3における乗り継ぎコストよりも小さくなるように乗り継ぎコストが設定されている。すなわち、無料道路である道路区間L1〜L3の距離がある程度大きくなると、料金所T2を通過する際の通過コストよりも乗り継ぎコストが大きくなるように設定されている。このため、図2Aに示す例において、有料道路Expの道路区間Le1、無料道路である道路区間L1〜L3、有料道路Expの道路区間Le4の順で走行する経路は探索結果として採用されず、有料道路Expから降りずに入口I2に達する経路が探索される。以上のように、本実施形態においては、有料道路の間に存在する無料道路に対して乗り継ぎコストを設定するため、当該無料道路が経路に含まれやすくなるか否かを調整することができる。
(2)経路探索処理:
次に、図3に示すフローチャートに基づいて車両における経路探索処理を詳細に説明する。ユーザI/F部44の入力部を操作して利用者が経路探索処理の開始を指示すると、制御部20は、図3に示す経路探索処理を開始する。経路探索処理が開始されると、制御部20は、経路探索部21bの機能により、目的地を取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、経路探索部21bの機能により、ユーザI/F部44の出力部を制御して施設を入力させるためのインタフェースを表示させ、当該インタフェースを介した利用者による目的地の指定を受け付ける。そして、制御部20は、地図情報30aを参照し、利用者が指定した目的地を取得する。
次に、制御部20は、経路探索部21bの機能により、出発地を取得する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、GNSS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在地を取得し、出発地と見なす。以後、制御部20は、ステップS110〜S155において、探索済の経路の端点であるノードに接続された道路区間を順次選択し、選択された道路区間の通過コストを経路の通過コストの和に算入する処理を繰り返すことで経路を探索する。なお、通過コストの取得順序(乗り継ぎコスト、従量区間分の通過コスト、料金所に対応した通過コスト、他の要素に対応した通過コストの取得順序)は、以下の例示に限定されず、種々の順序であって良い。
この処理を行うため、制御部20は、経路探索部21bの機能により、通過コストの和が最小の経路から延びる道路区間を選択する(ステップS110)。すなわち、経路探索の過程では、探索済の経路が候補として複数個生じ得る。制御部20は、経路探索部21bの機能により、探索済の経路の通過コストの総和が最小である経路の端点に相当するノード(初回は出発地に相当するノード)を選択し、当該ノードから辿ることが可能な隣接ノードを特定し、これらのノードをつなぐ道路区間を選択する。
例えば、図2Aに示す例において有料道路Expの道路区間Le1までの道路区間が探索済であり、出口O以後の経路が探索される場面でステップS110が実行される場合を想定する。この場合、探索済の経路は出発地Sから入口I1までの道路区間、道路区間Le1と辿る経路のみであり、総和が最小の経路は1個である。従って、この場合、出口以後の道路区間Le2および道路区間L1が選択される。
次に、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能により、ステップS110で新たに選択された道路区間が2回目以降の有料道路であるか否かを判定する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、ステップS110で取得された道路区間の道路種別を特定する。道路種別が有料道路であった場合、制御部20は、探索済の経路を参照し、ステップS110で選択された道路区間(有料道路)よりも前に無料道路が存在し、さらにその前に有料道路が存在する場合に、道路区間が2回目以降の有料道路であると判定する。むろん、これらの判定は、種々のロジックで行われて良く、経路探索の過程で有料道路の数や無料道路の数、距離等をカウントアップしていき、その結果に基づいて判定しても良い。
ステップS115において2回目以降の有料道路であると判定された場合、制御部20は、無料区間の距離に応じた乗り継ぎコストを和に算入する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能により、地図情報30aに基づいて、ステップS110で選択された道路区間に対して進行方向後方側に接続された無料道路の距離を取得する。また、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能により、図2Bに示すような距離と乗り継ぎコストの関係に基づいて乗り継ぎコストを取得する。そして、制御部20は、経路探索部21bの機能により、当該乗り継ぎコストを、探索済の経路の通過コストの和に加える。一方、ステップS115において2回目以降の有料道路であると判定されない場合、制御部20は、ステップS120をスキップする。
例えば、図2Aに示す例において、出口O以後に無料道路である道路区間L1〜L3を通り入口I2に到達する経路が探索済である場合を想定する。この場合においてステップS110で道路区間Le4が選択された状態でステップS115が実行されると、道路区間Le4が有料道路であり、その直前の道路区間L1〜L3が無料区間であり、その前の道路区間Le1が有料道路であることから、制御部20は2回目以降の有料道路であると判定する。この結果、制御部20は、ステップS120において道路区間L1〜L3の距離に応じた乗り継ぎコストを取得し、経路の通過コストの和に算入する。
以上の処理によれば、出口O以後に無料道路である道路区間L1〜L3を通り入口I2に到達する経路における通過コストの和が最小でなくなり、有料道路を継続して利用する経路(すなわち、出口O以後に道路区間Le2、Le3を通る経路)の通過コストの和が最小となる可能性が生じる。すなわち、ステップS110では通過コストの和が最小の経路から伸びる道路区間が選択されるため、道路区間L1〜L3を通り入口I2に到達する経路の次の経路として、ステップS110において道路区間Le4が選択された段階においては、道路区間L1〜L3を通り入口I2に到達する経路の通過コストの和が最小である。
従って、この段階では、出口O以後に道路区間Le2、Le3を通る経路の通過コストの和の方が大きい。しかし、ステップS115を経てステップS120が実行されると、道路区間L1〜L3の距離に応じた乗り継ぎコストが和に算入される。このため、当該乗り継ぎコストの和の算入により、出口O以後に道路区間Le2、Le3を通る経路の通過コストの和の方が小さくなり得る。このため、出口O以後に道路区間Le2、Le3を通る経路が最終的に経路として確定される可能性が生じる。
次に、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能により、ステップS110で新たに選択された道路区間が従量区間であるか否かを判定する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、ステップS110で新たに選択された道路区間に対して従量料金の有料道路であることを示すリンクデータが対応づけられている場合に、当該道路区間が従量区間であると判定する。
ステップS130において、道路区間が従量区間であると判定された場合、制御部20は、従量区間の距離に対応した通過コストを従量区間分として和に算入する(ステップS135)。すなわち、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能により、地図情報30aに基づいて、ステップS110で選択された道路区間の距離を取得する。また、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能により、従量区間の距離が大きくなるほど大きくなる通過コストを従量区間分として取得する。なお、本実施形態において受領区間分の通過コストは、距離が大きくなるほど大きくなり、上限はない。そして、制御部20は、経路探索部21bの機能により、当該従量区間分の通過コストを、探索済の経路の通過コストの和に加える。一方、ステップS130において道路区間が従量区間であると判定されない場合、制御部20は、ステップS135をスキップする。
例えば、図2Aに示す例において、出口O以後に無料道路である道路区間L1〜L3を通り入口I2に到達する経路が探索済であり、この先の有料道路の道路区間Le4が従量区間である場合を想定する。この場合においてステップS110で道路区間Le4が選択された状態でステップS130が実行されると、制御部20は、道路区間Le4が従量区間であると判定する。この結果、制御部20は、ステップS135において道路区間Le4の距離に応じた通過コストを取得し、経路の通過コストの和に算入する。以上の処理によれば、従量料金がかさむ有料道路が経路として選択されにくくなるようにすることができる。なお、従量区間分の通過コストは、無料道路、有料道路に関わらず距離に応じて設定される通過コストとは別個のコストである。
次に、制御部20は、通過コスト取得部21aの機能により、ステップS110で新たに選択された道路区間に料金所が存在するか否かを判定する(ステップS140)。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、ステップS110で新たに選択された道路区間上に料金所が存在するか否か判定する。
ステップS140において、料金所が存在すると判定された場合、制御部20は、料金所に対応した通過コストを和に算入する(ステップS145)。すなわち、制御部20は、料金所の通過コストとして予め決められた値を取得し、探索済の経路の通過コストの和に加える。一方、ステップS140において、料金所が存在すると判定されない場合、制御部20は、ステップS145をスキップする。以上の処理によれば、料金所を通過しない経路が探索されやすくなる。
次に、制御部20は、他の要素に対応した通過コストを和に算入する(ステップS150)。例えば、制御部20は、地図情報30aを参照し、ステップS110で選択された道路区間の距離に対応した通過コストを取得し、探索済の経路の通過コストの和に算入する。当該道路区間の距離に対応した通過コストは、ステップS120で取得される乗り継ぎ通過コストやステップS135で取得される従量区間分の通過コストとは別個のコストである。通過コストの要素としては、他にも種々の要素が存在して良く、例えば、渋滞度や交差点の有無等が考慮されて良い。
いずれにしても、以上の処理によって、ステップS110で選択された道路区間を含む経路の通過コストの和が算定されると、制御部20は、経路探索部21bの機能により、探索が終了したか否かを判定する(ステップS155)。すなわち、ステップS110で選択された道路区間を含む経路の通過コストの和が算定されることにより、目的地までの経路であって、通過コストの和が最小である経路が確定している場合、制御部20は、当該通過コストの和が最小である経路を探索結果として取得する。ステップS155で探索が終了したと判定されない場合、制御部20は、ステップS110以降の処理を繰り返す。すなわち、新たな道路区間を選択しなおして通過コストの取得および和への算入を繰り返す。
以上のような処理によれば、有料道路の間に無料道路を走行する経路において、無料道路の距離に応じた乗り継ぎコストが算入されるため、図2Aに示すような例において、出口Oで一旦有料道路を降り、無料道路を走行した後に再度有料道路に戻る経路が探索されにくくなる。乗り継ぎコストは、距離に応じて値が増加するため、特に、有料道路の間で走行する無料道路の距離がある程度長い場合には、当該無料道路を利用する経路は選択されにくくなる。
一方、乗り継ぎコストは、距離に応じて値が増加するため、有料道路の間で走行する無料道路の距離が非常に短い場合、当該無料道路を利用する経路が選択される可能性に大きな影響を与えにくい。図4Aは、このような例を示す図である。図4Aにおいても、有料道路を太線、無料道路を細線で示しており、探索され得る経路を矢印で示している。また、有料道路の入口I1〜I3が示されている。
有料道路の間において無料道路を利用する際の乗り継ぎコストが距離によらず、例えば、一定値として定義されていると、有料道路の間において無料道路を利用する経路は、当該無料道路の距離が短くても、原則として避けるようにして探索が行われる。従って、出発地Sから目的地Gに向かう経路として、有料道路である道路区間Le1,Le3の間に無料道路である道路区間L3を通る経路が探索される可能性は非常に低くなる。
すなわち、出発地Sから無料道路である道路区間L1,L2を通り、その後、有料道路である道路区間Le2,Le3を通る経路の方が、有料道路である道路区間Le1,Le3の間に無料道路である道路区間L3を通る経路よりも通過コストの和が小さくなり得る。このため、出発地Sから無料道路である道路区間L1,L2を通り、その後、有料道路である道路区間Le2,Le3を通るような、非常に長い回り道をする経路が探索されてしまう可能性が高くなる。このような、過度の回り道は、一般的な利用者には好まれない。
しかし、本実施形態において乗り継ぎコストは距離に応じて値が増加し、無料道路の距離が短ければ乗り継ぎコストも相対的に小さい。従って、図4Aに示す例において、有料道路である道路区間Le1,Le3の間に無料道路である短い道路区間L3を通る経路が探索される可能性を高めることができる。
さらに、本実施形態にかかる乗り継ぎコストは、距離に応じて値が増加するものの、距離が特定の値を超えると上限値に達し、距離が増加しても乗り継ぎコストは増加しない。このため、有料道路の間に無料道路が存在する経路が実質的に選択されなくなるような状況が発生することを防止することができる。すなわち、乗り継ぎコストが距離に応じて増加し、上限がない場合、有料道路の間に長い無料道路が存在する経路の通過コストの和が他の経路よりも大きくなり、有料道路の間に長い無料道路が存在する経路が実質的に選択されない状況になり得る。
図4Bはこのような例を示す図である。図4Bにおいても、有料道路を太線、無料道路を細線で示しており、探索され得る経路を矢印で示している。また、有料道路の入口I1〜I3が示されている。出発地S直後の道路区間L1の次に有料道路である道路区間Le1、無料道路である道路区間L2、有料道路である道路区間Le2の順に走行する経路を想定する。この場合、無料道路である道路区間L2の乗り継ぎコストが距離に応じて増加し、上限がないと、無料道路である道路区間L2が長い場合には経路になる可能性が極めて低くなる。
従って、この場合、出発地S直後の道路区間L3の次に有料道路である道路区間Le3〜Le6を走行する経路が探索され得る。しかし、本実施形態においては、乗り継ぎコストに上限値が設定してあるため、有料道路の間に長い距離のある無料道路が含まれている経路が探索対象から除外されない状態となる。
そして、本実施形態の場合、有料道路が従量料金である場合、従量区間の距離に応じて通過コストが上乗せされる。従って、図4Bに示すように、有料道路である道路区間Le3〜Le6が従量区間である場合、道路区間Le3〜Le6の距離が長くなるほど大きくなる通過コストが従量区間分の通過コストとして和に算入される。この結果、道路区間Le3〜Le6の距離が長くなるほど、出発地Sの直後に道路区間L3を通過し、その次に有料道路である道路区間Le3〜Le6を走行する経路は探索されにくくなる。従って、無料道路である道路区間L2の距離と、有料道路である道路区間Le3〜Le6とに応じ、後者の距離が長くなるほど後者が経路とされにくくなるような状況で経路探索を行うことができる。従って、従量区間の通過コストと、乗り継ぎコストとを調整することにより、経路に含まる道路区間を種々のニーズに応じて調整することが可能である。
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、有料道路の間に無料道路を通過する経路において無料道路の情報に基づく通過コストを和に算入する限りにおいて、各種の態様を採用可能である。例えば、ナビゲーションシステム10は、車両に備えられていても良いし、可搬型の端末等であっても良い。さらに、図1に示すシステムがより多数のシステムで構成されても良い。例えば、ナビゲーションシステム10の機能の一部(通過コストを取得する機能等)がサーバ等の他のシステムで構成されても良い。
また、ナビゲーションシステム10を構成する各部(通過コスト取得部21a、経路探索部21b)の少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在していても良い。例えば、GNSS受信部41等の信号に基づいて車両の現在地を取得する機能は、制御部20以外のECU等で実現されても良い。また、上述の実施形態の一部の構成が省略される構成や、処理が変動または省略される構成も想定し得る。
通過コスト取得部は、車両の出発地と目的地との間に存在する道路の通過コストを取得することができればよい。すなわち、通過コスト取得部は、出発地と目的地との間で候補となる道路の通過コストを取得することができればよい。通過コストは、その大きさによって道路が経路として採用されやすいか否かを示していれば良く、種々の態様で定義されて良い。すなわち、通過コストは区間毎に定義されても良いし、距離に応じて定義されても良い。
むろん、通過コストとなり得る要素としては、種々の要素を採用可能であり、道路の距離に応じて通過コストが増大する構成の他、渋滞度、道路幅、車線数、道路属性、車両の走行履歴などに応じて通過コストの大きさが調整される構成であって良い。また、探索済の経路に応じて通過コストが変化しても良く、有料道路、無料道路、有料道路が連続する場合以外にも、経路に応じて通過コストが変化して良い。なお、ここで、探索済とは、経路の候補として選択されているが確定していない道路と、経路として確定している道路とのいずれをも含み得る。
有料道路、無料道路、有料道路が連続する際の無料道路について、無料道路の情報に基づいて決められる通過コストは、無料道路の距離に応じて大きくなる以外にも種々の構成が採用されてよい。例えば、渋滞度、道路幅、車線数、道路属性、車両の走行履歴などに応じて通過コストの大きさが調整される構成であって良い。
なお、有料道路、無料道路、有料道路が連続する場合における無料道路の通過コストは、通常の通過コストより大きく、または小さくなっていることが好ましい。すなわち、有料道路や無料道路について通過コストを算出する際に道路の距離に応じて通過コストが決定される場合、この通過コストと別個に有料道路、無料道路、有料道路が連続する場合における無料道路の通過コストが算入されなければ、有料道路、無料道路、有料道路が連続する場合に特別に付与される通過コストとして意味をなさない。
有料道路の距離に応じて大きくなる通過コストについても同様である。すなわち、当該通過コストは、従量料金の有料道路において使用距離が増加すると料金が増加するため、当該料金を模した通過コストとなればよい。従って、有料道路、無料道路にかかわらず、距離が増加することによって通過コストを大きくする構成が採用されているのであれば、これに対して、従量料金の有料道路の距離に応じた通過コストがさらに加えられるように構成されていれば良い。
経路探索部は、通過コストの和が最小になる経路を探索することができればよい。従って、上述のダイクストラ法以外にも、A*アルゴリズムや各種の経路探索アルゴリズムを利用可能である。また、経路探索部は、各種の手法で定義される通過コストを、探索済の経路の通過コストの和に算入することができればよい。和に参入するタイミングは種々のタイミングであって良い。
無料道路の距離に応じて変化する通過コストは、上述の実施形態のように距離とともに直線的に上昇し、その後、一定の上限値となる構成に限定されない。例えば、無料道路の距離に応じて通過コストが曲線的に変化する構成や、距離に応じて通過コストが段階的に変化する構成や、これらの組み合わせが採用されていてもよい。なお、距離とともに通過コストが増加し続け、上限がないような構成である場合、有料道路の間に長い距離のある無料道路が実質的に選択されなくなるが、通過コストに上限がある場合、無料道路が実質的に選択されなくなることを防止することができる。
さらに、本発明のように、有料道路の間に無料道路を通過する経路において無料道路の情報に基づく通過コストを和に算入する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のようなシステムで実現される方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。