以下、本発明について図面を参照しつつ説明する。図面では、外部との接続端子、通信処理回路等の図示を省略している。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態の積層アンテナの部分断面図である。本発明は、絶縁基体11上の両面に必要により接着層12を介して導電ペーストで形成した複数の配線パターン13がスルーホール15を有する絶縁コート層14を挟んで積層され、配線パターン13がスルーホール15を介して接続された積層アンテナである。本実施形態の積層アンテナ1を製造するには、絶縁基体11上の両面に接着層12を形成した後、それぞれの面に導電ペーストの印刷によって配線パターン13−1を形成し、スルーホール15−1を除いて配線パターン13−1を覆うように絶縁コート剤の印刷によって絶縁コート層14−1を形成し、絶縁コート層14−1の上に、導電ペーストの印刷によって配線パターン13−2を形成するが、配線パターン13−2の形成と共にスルーホール15−1に導電ペーストを充填することができ、配線パターン13−1と13−2とは電気的に接続される。配線パターン13−2の上には、さらに絶縁コート層と配線パターンを同様の方法で積層してアンテナコイル16Aと16Bを有する所定の構造の積層アンテナとする。本実施形態において、絶縁基体を樹脂フィルムとすれば、磁気的に結合した2つ以上の独立したアンテナが積層された積層アンテナとなり、磁性体とすれば、磁気的に遮蔽された2つ以上の独立したアンテナが積層された積層アンテナとなる。
図2は、本発明の一実施形態の積層アンテナの部分断面図である。本発明は、絶縁基体21にスルーホール20が形成され、絶縁基体21の一方の面に形成された配線パターン23−1と他方の面に形成された配線パターン23−1とがスルーホール20を介して接続されていてもよい。本実施形態の積層アンテナ2を製造するには、必要により接着層22を設けた絶縁基体21にスルーホールを形成し、その上に配線パターン23−1を形成するが、配線パターン23−1の形成と共にスルーホール20に導電ペーストを充填することができ、両面の配線パターン23−1同士が電気的に接続される。配線パターン23−1の上には、さらに絶縁コート層と配線パターンを同様の方法で積層してアンテナコイル26を有する所定の構造の積層アンテナとする。本実施形態において、絶縁基体が樹脂フィルムであれば、絶縁基体の両面に配置したコイルが接続されて一体のアンテナとなり、アンテナの小型化、高性能化が可能になる。
図3は、本発明の一実施形態の積層アンテナの部分断面図であり、図2に示した積層アンテナ2の片面に両面テープ38によって磁性体37が貼り付けられた構造を持つ積層アンテナ3である。貼り付けの便宜上、積層アンテナ2の貼り付け面の最外層にはコート層34−3を設けている。本実施形態によれば、本発明の積層アンテナを金属環境下でも使用可能である。
図4は、本発明の一実施形態の積層アンテナの部分断面図である。本実施形態の積層アンテナ4を製造するには、必要により接着層42を設けた絶縁基体41の片面に配線パターン43−1を形成し、さらに絶縁コート層と配線パターンを同様の方法で積層してアンテナコイル46を有する所定の構造の積層アンテナとする。本実施形態においては、基体の片面に印刷によって多層の配線を設けることができ、積層する配線間にフィルム等の基材を必要としないため、アンテナの小型化、高性能化が可能になり、基材にスルーホールを設ける工程も不要なので工数を削減できる。
図5は、本発明の積層アンテナの断面のSEM写真である。下から、磁性体(フェライト焼結体)、接着層、導電粒子が焼結した配線パターン、絶縁コート層、そして再び配線パターンの順に積層されている。
図6は本発明の積層アンテナの絶縁コート層の断面のSEM写真である。本写真の撮影においては、樹脂とコントラストの出ないゴム相の分布の観察のため、トルエンで表面をエッチングしゴム相を溶出している。ゴム相溶出後の空隙により、絶縁コート層に粒子状のゴム相が分散して存在していることが確認できる。
以下、各構成要素について詳細に説明する
本発明に係る積層アンテナは絶縁基体上に配線パターンと絶縁コート層が積層される。
まず、絶縁基体について述べる。
前記絶縁基体としては、アンテナ部品の薄型化の観点から形状はシート状であることが好ましく、所望の機能に応じて磁性体や樹脂フィルムなどを用いることができる。
本発明で用いる磁性体は、使用する周波数における透磁率実数部(μ’)が大きく、透磁率虚数部(μ”)が小さい軟磁性材料が好ましい。金属系軟磁性粉末を樹脂混合し、シート状に成形したものや、スピネル系磁性フェライトなどの焼結シート及び焼結シートに樹脂フィルムを貼り付けて可撓性を持たせた複合磁性シートが好ましい。RFIDなど13.56MHz付近の周波数帯で使用する場合、Ni−Znフェライト等が好ましい。
本発明では、配線パターンを熱処理して導電化することから、グリーンシート法によって得られたNi−Znフェライト系の焼結フェライトシートが好ましい。限定はされないが、シート厚みは50〜300μmが好ましい。
本発明で用いる樹脂フィルムは熱処理に耐えるものでなければならない。例えば、ポリイミド系樹脂シートあるいはフィルム、芳香族ポリアミド系樹脂シートあるいはフィルム、あるいはガラスエポキシ積層板等が挙げられ、中でもポリイミド系樹脂シートあるいはフィルムが望ましい。
ポリイミド系樹脂としてはポリイミド前駆体樹脂、溶剤可溶ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が挙げられる。ポリイミド系樹脂は通常の方法で重合することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶液中、低温で反応させポリイミド前駆体溶液を得る方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶液中で反応させ溶剤可溶性のポリイミド溶液を得る方法、原料としてイソシアネートを用いる方法、原料として酸クロリドを用いる方法などがある。
本発明においては、絶縁基体上の両面に配線パターンを形成する場合、絶縁基体にスルーホールを設けて、絶縁基体の一方の面に形成された配線パターンと他方の面に形成された配線パターンとがスルーホールを介して接続可能としてもよい。
次に、配線パターンについて述べる。
本発明において配線パターンは絶縁基体上、または絶縁コート層上に導電ペーストによって形成される。配線パターンは、アンテナを構成する配線であってもよく、スルーホールに充填され、あるいは端子を形成し、あるいは任意の場所にパターン状または面上に形成されるものであってもよい。
アンテナを構成する配線とは、アンテナコイルの全部または一部がある一平面に形成された配線であり、平面渦巻き状のコイルパターンであることが好ましい。各平面のコイルパターンは、他の平面のコイルと電気的に独立したアンテナコイルであってもよく、複数の平面に形成されたコイルが絶縁コート層に設けられたスルーホールを介して接続されたアンテナコイルであってもよいが、複数の平面渦巻き状のコイルパターンが絶縁コート層に設けられたスルーホールを介して接続されてアンテナコイルを形成していることが好ましい。また、1つの平面に複数のコイルが設けられ、それぞれが別のアンテナコイルを構成しても構わない。
配線パターンの厚みは、主に求める導電性から決められるが、0.05〜100μmであることが好ましい。配線パターンの厚みが0.05μm未満であると、十分な導電性が得られない可能性があり、100μmを超えると熱処理時にパターン中に残留していた溶剤の突沸によりパターンに欠陥ができている可能性があり、また、アンテナの薄型化の観点からも好ましくない。配線パターンの厚みは、より好ましくは0.2〜50μmである。十分に小さいコイル抵抗を得るために、配線パターンの厚みは5〜50μmが更により好ましい。
本発明で用いる導電ペーストは、導電性の合金粉末とバインダー樹脂とを主成分として溶剤中に分散させたものであり、配線パターンを印刷した後、熱処理によって焼結することで高い導電性を発現し、十分に小さい抵抗を示すものであれば特に限定するものではない。
導電ペーストに用いられる導電粒子として、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属が挙げられる。中でも、本発明で用いる導電ペーストを構成する導電粒子は銅または銅を主成分とする金属粒子であることが好ましく、銅の割合が80重量%以上の銅合金であってもよく、該銅粉末の表面が銀で被覆されたものであってもよい。該銅粉末への銀の被覆は完全に被覆しても、一部の銅を露出させて被覆したものでもよい。また、銅粉末はその粒子表面に導電性を損なわない程度の酸化被膜を有していてもよい。銅粉末の形状は、略球状、樹枝状、フレーク状等のいずれでも使用できる。銅粉末または銅合金粉末としては、湿式銅粉、電解銅粉、アトマイズ銅粉、気相還元銅粉等を用いることができる。
本発明で用いる導電ペーストは熱処理によって導電性を向上させるため、1μm以下の銅粉末を含むことが好ましい。本発明の実施形態で用いる銅粉末は平均粒径が0.01〜20μmである。銅粉末の平均粒径が20μmより大きいと、絶縁性基板に微細な配線パターンを形成することが困難になる。また、平均粒径が0.01μmより小さい場合には加熱処理時の微粒子間融着による歪の発生が大きくなり、基体との密着性が低下する。銅粉末の平均粒径は0.02μm〜15μmの範囲がより好ましく、更に好ましくは0.04〜4μm、更により好ましくは0.1〜2μmである。本発明で用いる銅粉末は平均粒径が0.01〜20μmであれば、異なる粒径の二種以上の銅粉末を混合して使用してもかまわない。特にスクリーン印刷用銅ペーストでは、流動特性の付与を目的とし、0.05〜0.5μmの粉と1〜10μmの粉とを混合して使用することが好ましく、1〜10μmサイズの非球状粒子を含有することがさらに好ましく、ミクロンサイズの非球状粒子の配合率は全銅粉の10〜60重量%がさらに好ましい。
導電ペーストの熱処理条件は、導電性の目標や金属粉末特性やバインダー樹脂により最適範囲は異なる。熱処理の温度は130℃以上、好ましくは250℃以上で、より好ましくは300℃以上である。熱処理の上限温度は用いる材料により異なるが、バインダー樹脂の劣化等から400℃以下がさらに好ましい。熱処理時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。熱処理方法としては、過熱水蒸気処理が加熱効率よく、高温での処理による密着性の低下を抑えることができ、好ましい。また、特に銅粉末表面の酸化物の還元にかかる処理時間を短くでき、充分に高い導電性を得るためにも過熱水蒸気処理が好ましい。過熱水蒸気処理とは熱、空気よりも熱容量、比熱が大きい、飽和水蒸気を更に加熱して温度を上げた水蒸気である。
本発明で用いる導電ペーストは高分子化合物をバインダー樹脂とする。高分子化合物をバインダー樹脂とする導電ペーストはポリマータイプ導電ペーストとして知られている。ポリマータイプ導電ペーストはバインダー樹脂によって、導電粒子の固着と基材との接着性を確保できるが、バインダー樹脂が導電粒子間の接触を阻害するため、導電性を悪化させる。しかし、導電粒子の比率を高め、バインダー樹脂比率を低減させると、基体との接着性の低下だけでなく、配線パターンの脆化や、耐屈曲性の悪化、耐久性の悪化も起り易くなる。したがって、本発明においては導電ペースト中の導電粒子の比率は90重要%〜98重量%が好ましい
本発明で用いる導電ペーストに使用される溶剤は、バインダー樹脂を溶解するものであえば有機化合物であっても水であってもよい。溶媒は、導電ペースト中で銅粉末を分散させる役割に加えて、分散体の粘度を調整する役割がある。有機溶媒の例として、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、アミド等が挙げられる。
本発明で用いる導電ペーストに使用されるバインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドあるいはアクリル等の樹脂が挙げられる。樹脂は主鎖にエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、イミド結合等を有するものが、銅粉末の安定性から、好ましい。
本発明で用いる導電ペーストの各成分の割合は導電粒子を100重量部に対し、溶剤5〜400重量部、バインダー樹脂0.5〜20重量部の範囲が好ましい。導電ペースト中のバインダー樹脂量が銅粉末を100重量部に対し0.5重量部未満の場合、基体との密着性の低下が顕著になり、好ましくない。一方、バインダー樹脂量が20重量部を超えると導電粒子間の接触機会の減少により、導電性を確保できない。バインダー樹脂はより好ましくは1〜6重量部であり、さらに好ましくは2〜5重量部である。
また、本発明で用いる導電ペーストでは、全不揮発分中の導電粒子の割合(導電粒子含有比率)が94重量%以上であることが好ましく、より好ましくは96重量%以上である。ここで、不揮発分とは、導電ペーストのうち揮発性の溶剤以外の成分であり、導電粒子、バインダー樹脂、フィラー、硬化剤、分散剤等である。全不揮発分中の導電粒子の割合を多くすることで、導電性を高めることができる。全不揮発分中の導電粒子の割合が94重量%未満では、導電性の向上効果が乏しい。全不揮発分中の導電粒子の割合の上限は使用するバインダー樹脂により異なるが99重量%が好ましく、より好ましくは98重量%である。
全不揮発分中の導電粒子の割合を多くしたときには、少量のバインダー樹脂でバインダー樹脂に必要な機能を出させるため、バインダー樹脂は分子量が高い程好ましい。バインダー樹脂の種類により望ましい分子量は異なるが、ポリエステル、ポリウレタンあるいはポリカーボネートでは数平均分子量は1万以上、望ましくは2万以上である。バインダー樹脂の分子量の上限は、分散体の粘度等から50万程度である。
導電粒子は導電ペースト中で、良好な分散状態を保持することが、良好な導電性を発現するために必要である。少量のバインダー樹脂でバインダー樹脂に必要な機能を出させるためには、バインダー樹脂としては、スルフォン酸塩基やカルボン酸塩基等の金属への吸着能力のある官能基を含有するポリマーを含有することが望ましい。
スルフォン酸塩基を含有することはバインダー樹脂中の硫黄含有量で表し、バインダー樹脂中の硫黄含有量が0.05〜3重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1重量%である。カルボン酸塩基は元のカルボン酸基として、バインダー樹脂1トン当たり30〜500モル含まれていることが好ましく、より好ましくは50〜200モルである。
本発明で用いる導電ペーストには、必要に応じ、硬化剤を配合しても良い。本発明に使用できる硬化剤としてはフェノール樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、オキセタン化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。硬化剤の使用量はバインダー樹脂の1〜50重量%の範囲が好ましく、1〜20重量%の範囲がより好ましい。
本発明で用いる導電ペーストは、分散剤を配合してもかまわない。分散剤としてはステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、燐酸エステル、スルフォン酸エステル等が挙げられる。分散剤の使用量はバインダー樹脂の0.1〜10重量%の範囲が好ましい。
導電ペーストを得る方法としては、粉末を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、導電粒子とバインダー樹脂溶液、必要により追加の溶媒からなる混合物を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法等で分散を施せばよい。これらの分散手段のうち、複数を組み合わせて分散を行うことも可能である。これらの分散処理は室温で行ってもよく、分散体の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。
次に、絶縁コート層について述べる。
本発明において、絶縁コート層は複数の配線パターン間に絶縁コート剤によって形成される層であり、ゴム相を含む樹脂の硬化物によってなる。絶縁コート層にはスルーホールが設けられており、配線パターンがスルーホールを介して接続されている。
本発明で設けられる絶縁コート層の厚みは多層回路基板を組み込んだ製品の仕様から決められるが、絶縁性、耐久性等から溶剤を蒸発させた乾燥後の厚みで25μm以下の範囲で用いることができる。絶縁コート層の厚みが25μmを超えると非コート部との段差が大きくなり、絶縁コート層上に形成される配線パターンに段差部でひび割れが発生する場合がある。絶縁コート層の厚みは好ましくは5〜23μmであり、より好ましくは8〜20μmであり、更に好ましくは10〜18μmである。絶縁コート層の厚みが5μm未満では絶縁性が不安定な場合があり、また高温多湿下での耐久性に劣る可能性がある。なお、絶縁コート層の厚みは配線パターンのない平坦部で測定する。配線パターン上の絶縁コート層はコート剤のダレによって平坦部に比べて薄くなることがあるが、前述の厚みで絶縁コート層を形成すれば、上下の配線パターン間も充分に絶縁される。
本発明における絶縁コート層は、絶縁コート層を挟んで上下に積層された配線パターンを接続する場合、パターン印刷でスルーホール部を設ける。スルーホール部への銅ペーストの充填を配線パターンの印刷時に同時に行えるように、スルーホール部の体積を小さくすることが好ましい。スルーホール部の直径が100〜1000μmの範囲であれば、絶縁コート層の厚みが25μm以下の場合、スルーホール部への銅ペーストの充填が印刷と同時にできる。スルーホール部の直径と厚みが上記の範囲ではスルーホール部への銅ペーストの充填工程を新たに設けることは必ずしも必要としない。
本発明で設けられる絶縁コート層は導電層との接着性や耐熱性が優れているため、絶縁コート層上に設けられた配線パターンの焼結による絶縁破壊の防止に有効である。
本発明で用いる絶縁コート剤はゴム相を含有する樹脂組成物である。
本発明で用いる絶縁コート剤には、ゴム相を添加する。ゴム相は絶縁コート層の硬化時や絶縁コート層上に形成された配線パターンの焼結時に発生する内部応力を緩和する働きがある。また、ゴム相は、特に配線パターン上に絶縁コート層を形成した上にさらに配線パターンを形成する場合において、配線パターンの焼結時に発生する絶縁コート層と既設の配線パターンとの熱機械特性の違いにより発生する歪を緩和し、上の配線パターンが断線することを防ぐ働きがある。また、ゴム相は、絶縁コート層の上に形成した配線パターンの熱処理における体積収縮によって絶縁コートと配線パターン界面に生じる歪を緩和し、配線パターンの剥離を防ぐ働きがある。これらの働きは、配線パターンの2層目よりも3層目、更に上の層においてより顕著であり、ゴム相が存在することで熱処理によって繰り返し配線パターンを焼結しても断線や短絡の無い積層アンテナを製造することができる。
また、本発明の絶縁コート層は、ゴム相が絶縁コート内に分散することで靱性を改善し、例えば基材の折れや割れを防止することができる。よって、ゴム相は絶縁コート層の強靭性や耐熱性の向上にも有効である。
ゴム相の構成としてはポリブタジエン、ポリスチレンブタジエン、ポリアクリロニトリルブタジエン、ポリアクリル酸エステル、シリコーンゴム等が挙げられる。ゴム相はコート剤の溶剤や他成分に溶解しないか、乾燥後や硬化後にゴム相が相分離する物から選ばれる。このようなゴム相の形態としては、塗工前のコート剤においては液状ゴムの形態であって、硬化時に相分離してゴム相を形成するものがあげられ、例えばカルボキシル基末端ブタジエンニトリルゴム(CTBN)やポリブタジエン、シリコーンゴムブロックとその両端に親エポキシのブロックポリマーからなるブロックポリマー等があげられる。別の形態としては、ブロッキング防止のために、微粒子がコアシェル構造を有し、コアには架橋ゴム、シェルにはたとえば多官能アクリルで硬化させた高いガラス転移温度を持つアクリル等のコアシェル微粒子あるいは、架橋等のアンチブロッキング処理を施したゴム成分から構成されるものが好ましく、さらに好ましくはエポキシ樹脂にあらかじめ単分散したゴム粒子をポリエステル樹脂と混合することが好ましい
本発明における絶縁コート剤に用いるゴム相は、平均粒径が0.05〜5μmであることが好ましい。ゴム相の含有率はポリエステルを100重量部とすると5〜50重量部、好ましくは15〜30重量部である。5重量部未満では耐熱性や物性の向上が不十分であり、50重量部を超えると物性の低下や層間接着性の悪化が見られることがある。
本発明で用いる絶縁コート剤に含まれる樹脂の主成分は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
ポリエステル樹脂としては、酸価が樹脂1トン当たり、好ましくは800〜2500当量の高酸化ポリエステルであることが好ましく、より好ましくは1000〜2300当量である。
また、ポリエステル樹脂の好ましい分子量は数平均分子量で5000〜30000である。
ポリエステル樹脂としては、ポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールとテトラカルボン酸二無水物との反応物が好ましい。ポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールとテトラカルボン酸二無水物との反応物とは、数平均分子量が好ましくは500〜5000、より好ましくは700〜2000のポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールの水酸基とテトラカルボン酸二無水物基との反応により、エステル結合とカルボン酸基の生成を伴う鎖延長反応の生成物である。ポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールの分子量、該ジオール化合物の水酸基とテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との比率等により分子量や酸価が決まる。酸価を高めるため、エチレングリコールやネオペンチルグリコール等のグリコールをジオール化合物の一部として使ってもかまわない。該ジオール化合物の水酸基に対して、酸無水物基をやや過剰の条件で反応させ、所定の分子量になった後、末端の酸無水物基を1級アミノ化合物で反応停止してもかまわない。
本発明で用いる絶縁コート剤はカルボン酸基とエポキシ基の反応により架橋構造を形成するものであることが好ましい。カルボン酸基はポリエステル中に存在するが、原料として用いるエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールの分子量が500以上あることにより架橋点の集中を防ぐことができ、架橋物の歪が減少でき、絶縁コート層の耐熱性と物性の向上に寄与する。
本発明における絶縁コート剤に用いるポリエステルは、架橋によるカールの発生の低減や接着性の保持のために、ガラス転移温度は40℃以下が好ましく、30℃以下であることより好ましい。ガラス転移温度の下限は、硬化物の物性から−30℃が好ましく、より好ましくは−20℃である。
ポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールとテトラカルボン酸二無水物との反応は、溶融状態で行ってもよいが、有機溶剤中で3級アミノ化合物の存在下で行うことが好ましい。
ポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールとテトラカルボン酸二無水物との反応に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、水素添加ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフォン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物が望ましい。テトラカルボン酸二無水物は単一種類でも混合して用いてもかまわない。
本発明で用いる絶縁コート剤には、さらに、板状無機フィラー、フュームドシリカおよびエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
板状無機フィラーにより絶縁コート層の力学的補強効果や耐熱性の向上が得られる。板状無機フィラーとフュームドシリカとを併用することにより、フュームドシリカ表面のシラノール基と板状無機フィラーとの相互作用により弾性率、引張り強さ、靭性、耐熱性がさらに向上する。
板状無機フィラーの粒径は10〜0.1μmの範囲が好ましく、アスペクト比は5.0以上、好ましくは10.0以上である。板状無機フィラーとしてはタルク、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカ、板状アルミナ等が挙げられ、タルク、マイカ、カオリンが望ましい。板状無機フィラーの添加量はポリエステルを100重量部とすると10〜100重量部、好ましくは30〜80重量部の範囲である。
また、フュームドシリカは絶縁コート層の物性の向上以外に、絶縁コートの流動性の改善に寄与し、ダレ防止機能を付与できる。フュームドシリカの粒径は50nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm以下である。フュームドシリカの添加量は、ポリエステルを100重量部とすると0.5〜8重量部、好ましくは2〜5重量部の範囲である。
板状無機フィラーやフュームドシリカの添加量が上記の範囲より少ない場合には力学的補強効果が劣り、上記の範囲より多いと絶縁コート層の層間接着性が悪化することがある。また、フュームドシリカの添加量が上記の範囲をこえると、絶縁コートのレベリング剤を最適化しても、流動性が悪くなりコート後の面荒れがひどくなることがある。
エポキシ樹脂は一分子中に2個以上のエポキシ基を持つ樹脂であり、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型およびオレフィン酸化型のエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂の添加量は本発明で用いられるポリエステルの酸価の当量から当量の2倍までの範囲で用いることが好ましく、ポリエステルの酸価に対して当量以下のエポキシ量では未反応のカルボン酸による加水分解により、絶縁コート層の長期耐久性が劣る場合があり、ポリエステルの酸価の2倍当量を超えると、架橋密度が低下し耐熱性が劣る場合がある。また、エポキシ樹脂とカルボキシル基の反応を促進する触媒を加えてもかまわない。触媒としては、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、フォスフィン化合物等が挙げられる。
次に、本発明に係る積層アンテナの製造方法について述べる。
本発明に係る積層アンテナは、絶縁基体上に導電ペーストの印刷により配線パターンを形成し、絶縁コート剤の印刷により前記配線パターン上にスルーホールとなる開口部を有する絶縁コート層のパターンを形成し、前記絶縁コート層上に導電ペーストの印刷によりスルーホールの充填を含む配線パターンの形成を行うことによって製造できる。
本発明で用いる導電ペーストは導電性を高めるため、ペースト中のバインダー成分の比率を少なくすることが好ましい。そのため、絶縁基体に直接導電ペーストを印刷すると、接着性が不十分となる場合がある。そこで、絶縁基体との接着性を付与するためには、絶縁基体上に接着層を設け、それを介して配線パターンを形成することが好ましい。また本発明に用いられる接着層は、加熱処理により十分な接着強度を維持するという特徴を有する。
接着層に用いられる樹脂としては、絶縁基体との接着性が優れたものから選ばれ、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、芳香族ポリエ−テル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等が挙げられる。樹脂中にエステル結合、イミド結合、アミド結合等を有するものが、接着層の耐熱性、基体との接着性から望ましい。接着層には硬化剤を含有することも、接着層の耐熱性、絶縁基体との接着性から望ましい。硬化剤としてはフェノール樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、オキセタン化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。硬化剤の使用量は接着層中の樹脂重量の1〜50重量%の範囲が好ましい。
接着層には、複素環中に窒素を含む複素環化合物および/またはヒドラジド化合物を含有してもよい。複素環中に窒素を含む複素環化合物やヒドラジド化合物は、銅箔や銅粉末の防錆剤として用いられることがあるが、本発明においては、これらの化合物は熱処理により、銅粉末含有塗膜と強固な密着性を発揮する。窒素を含む複素環化合物やヒドラジド化合物は銅に対する親和性が高く銅表面に強く吸着する。絶縁基体との接着性に優れる接着層中に存在する、窒素を含む複素環化合物やヒドラジド化合物を銅粉末表面に吸着させるにはエネルギーを与えることが必要で、加熱処理が有効であり、過熱水蒸気処理が最も熱効率が高い。
複素環中に窒素を含む複素環化合物としては、例えば、ピリジン、オキサゾール、イソキノリン、インドール、チアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ビピリジル、ピラゾール、ベンゾチアゾール、ピリミジン、プリン、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾグアナミン等、あるいはこれらの構造異性体も挙げられる。これらはアルキル基、フェニル基、フェノール基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、チオール基、芳香環などの置換基を有してもよい。また、これらは芳香環や複素環と縮合してもよい。これらの中で、イミダゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物が望ましい。
ヒドラジド化合物はヒドラジンあるいはその誘導体とカルボン酸が縮合した構造を有する化合物であり、例えば、サリチル酸ヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、サリチル酸ヒドラジドとドデカンジカルボン酸の縮合物等が挙げられる。
本発明の接着層には、接着層樹脂100重量部に対し複素環中に窒素を含む複素環化合物および/またはヒドラジド化合物を1〜30重量部の範囲で含有することが望ましい。接着層用樹脂100重量部に対し、複素環中に窒素を含む複素環化合物および/またはヒドラジド化合物が、1重量部未満の場合、銅粉末含有層との密着性が不十分な場合があり、30重量部を超える場合は接着層の物性の低下が見られることがある。
絶縁基体上に接着層を形成するには、接着層を構成する樹脂をフィルムやシートに塗布あるいは印刷する場合に用いられる一般的な方法を用いることができる。例えばスクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、ロールコート法、ダイコート法、ペーストジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法等が挙げられる。印刷あるいは塗布により形成された塗膜から加熱あるいは減圧等により溶剤を蒸発させることにより、接着層を形成することができる。接着層は絶縁基体上に全面的に設けられたものでも、部分的に設けられたものでもよく、少なくとも配線パターンを形成する部分に設けられていることが望ましい。
本発明で絶縁基体上に形成される接着層は厚みが25μm以下、特に20μm以下が望ましい。特に絶縁基体を磁性体とする場合にはアンテナ性能の観点より磁性体がコイル線路と近接することが望ましく、そのため、接着層は厚みが25μm以下であることが好ましい。また、接着性の観点から、接着層の厚みが25μmを超えると、熱処理で起こる銅粉末の焼結歪等により、密着性が低下することがある。また、厚みが0.01μm未満では熱処理によるバインダー樹脂の分解などにより密着性の低下が大きくなる場合がある。
また、接着層は硬化後の加熱減量が、25重量%以下であることが好ましい。ただし、ここで硬化後の加熱減量とは300℃過熱水蒸気雰囲気下、10分の条件で硬化させた後の加熱減量を示す。加熱減量が25重量%より多いと、導電ペーストを熱処理する工程において、接着層の分解または炭化により接着性を保持することができない。なお、加熱減量の下限値は0.01重量%程度である。
液状の導電ペーストを用いて、絶縁基体上に、必要により接着層を介して、配線パターンを形成するには、導電ペーストをフィルムやシートに塗布あるいは印刷する場合に用いられる一般的な方法を用いることができる。例えばスクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、ロールコート法、ダイコート法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法、ディスペンサー等が挙げられる。中でも本発明において十分に小さいコイル抵抗を得るためには、積層アンテナの配線パターン形成の方法としてはスクリーン印刷法、ディスペンサー法等が好ましい
印刷あるいは塗布により形成されたパターンから加熱あるいは減圧等により溶剤を蒸発させることにより、配線パターンを形成することができる。一般的に、導電ペーストの場合、この段階での配線パターンは1Ω・cm以上の比抵抗で、導電回路として必要な導電性は得られていないため、熱処理により導電化する必要がある。
熱処理前の配線パターンの厚みは、主に求める導電性から決められるが、導電ペーストに含まれていた溶剤を蒸発させた乾燥後の厚みが0.05〜100μmであることが好ましい。熱処理前の配線パターンの厚みが0.05μm未満であると、熱処理を施しても十分な導電性が得られない可能性があり、100μmを超えるとパターン中に溶剤が残留する可能性がある。残留した溶剤は熱処理中に突沸する可能性があり、その場合、パターンに欠陥ができることがある。熱処理前の配線パターンの厚みは、より好ましくは0.2〜50μmである。十分に小さいコイル抵抗を得るために、熱処理前の配線パターンの厚みは5〜50μmが更により好ましい。
本発明では配線パターンを130℃以上での熱処理により導電化して導電層とすることが好ましく、より好ましくは250℃以上で熱処理する。熱処理方法としては加熱効率、安全性、経済性さらに得られる導電性等から過熱水蒸気処理が好ましい。過熱水蒸気処理とは熱処理する熱源として、空気よりも熱容量、比熱が大きい過熱水蒸気を用いるもので、過熱水蒸気とは飽和水蒸気を更に加熱して温度を上げた水蒸気である。過熱水蒸気処理条件は多くの要因により変動するが、一般的には、過熱水蒸気処理の温度は300℃以上、好ましくは320℃以上が望ましい。過熱水蒸気処理時間は10秒〜10分、好ましくは20秒〜5分である。加熱方式としての過熱水蒸気処理は加熱効率がよいため処理時間を短くできるため、高温での処理による接着性の低下を抑えることができるため特に好ましい。
配線パターン上に絶縁コート剤によって絶縁コート層を形成するには、樹脂をフィルムやシートに塗布あるいは印刷する場合に用いられる一般的な方法を用いることができる。例えばスクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、ロールコート法、ダイコート法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法等が挙げられる。印刷あるいは塗布により形成された塗膜から加熱あるいは減圧等により溶剤を蒸発させることにより、絶縁コート層を形成することができる。
絶縁コート層にスルーホールを設けるには、例えばスクリーン印刷によって絶縁コート層を設ける場合、スルーホール部分にマスクをした版を用いて印刷すればよい。スクリーン印刷により絶縁コート層にスルーホールを設ける場合前述のフュームドシリカが、ダレ防止剤として働くが、必要に応じてそのほかのレオロジーコントロール剤として、例えば高級脂肪酸アマイド等を添加してもよい。
また、絶縁コート層の印刷面の平滑化のために、アクリルポリマーやビニルエーテル系ポリマー等のレベリング剤を添加してもよい。
本発明で設けられる絶縁コート層は絶縁コート剤の塗布乾燥後、硬化処理をすることが望ましい。硬化処理としては、120℃以上の熱処理によって行うことができ、過熱水蒸気処理が熱処理効率や既設の配線パターンの酸化が防止できることから望ましい。過熱水蒸気処理条件は多くの要因により変動するが、一般的には、過熱水蒸気処理の温度は150℃以上、好ましくは200℃以上が望ましい。過熱水蒸気処理時間は10秒〜10分、好ましくは20秒〜5分である。加熱方式としての過熱水蒸気処理は加熱効率がよいため処理時間を短くできるため、高温での処理による接着性の低下を抑えることができるため特に好ましい。
本発明においては、絶縁基体上に配線パターンの形成と絶縁コート層の形成とを繰り返すことで、層間が充分に絶縁されて配線パターンが積層される。最外層はIC実装やその他の目的のための配線パターンとしてもよく、絶縁コート層としてもよい。配線パターン間をスルーホールによって接続することによって、所望の設計のアンテナコイル及び配線を得ることができ、積層アンテナが製造される。
上述の方法で製造した積層アンテナは、絶縁基体の種類に係わらず、そのままアンテナとして機能するが、金属環境下での使用においては磁性体との積層が必要となるため、絶縁基体として樹脂フィルムを用いた場合には、積層アンテナを磁性体に貼り付けることも可能である。積層アンテナを磁性体に貼り付ける場合、フィルム用接着剤の形態としては、フィルムおよび/または磁性体の表面に直接接着層を公知の方法で形成してもよいし、基材の両面に接着層を形成したいわゆる両面接着フィルムを介して接着してもよい。フィルム用接着層は、例えばアクリロニトリルブタジエンゴム/フェノール樹脂、アクリロニトリルブタジエンゴム/エポキシ樹脂/フェノール樹脂、アクリロニトリルブタジエンゴム/エポキシ樹脂、エポキシ樹脂/ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂/アクリル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等が用いられる。
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定や使用材料は以下の方法によって測定、あるいは製造したものである。
導電ペーストは、共重合ポリエステル(東洋紡社製RV290)の溶液(エチルカルビトールの35重量%溶液)1.14部と銅粉末(平均粒径0.15μm) 9.6部とエチルカルビトールアセテート0.25部を3本ロールで分散したものを用いた。
絶縁コート剤は、表1に示す樹脂を用い、表2に示す組成で配合した。
樹脂は、数平均分子量2000のポリエステル樹脂(東洋紡社製「RV−220」)のイソホロン溶液と旭化成社製ポリカーボネートジオール「デュラノールT−5651」、反応触媒としてトリエチルアミンを含有する溶液にピロメリット酸二無水物(PMDA)を加え、80℃で6時間反応させ、表1に記載した組成のポリエステル樹脂を得た。
板状無機フィラーとしてイメリス社製カオリン「エカライトED」(平均粒径0.32μm)、フュームドシリカとしてトクヤマ社製「レオロシールPM−20」(平均粒径12μm)を選び、3本ロールでポリエステル樹脂またはポリウレタン樹脂に分散した。得られた分散体に、ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂にブタジエンゴム系コアシェルタイプゴム粒子を分散したカネカ社製「カネエースMX−154」またはエポキシ樹脂(EXA−835LV:DIC社製ビスフェノールF型エポキシ)を配合した。
接着層用の組成物として、ポリアミドイミド溶液(東洋紡社製HR−11NN)100部に硬化剤としてフェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製jER(登録商標)152)15部、硬化触媒としてトリフェニルフォスフィン(TPP)3部、添加剤として2−フェニルイミダゾール10部、希釈溶剤としてテトラヒドロフラン200部を混合した。
(加熱減量の測定)
上記の接着層用組成物を厚さ10μmのフィルム状に成型し、幅10mm、長さ10mmに切断した試験片について、300℃過熱水蒸気雰囲気下、10分間加熱し、加熱後の加熱減量を測定し、(加熱前の重量−加熱後の重量)/加熱前の重量×100で算出した。加熱減量は1.8重量%であった。
(実施例1)
絶縁コート剤として表2に示すコート剤1を用いて、次の手順で絶縁基体の片面上に4ターンの平面コイルを4層積層し、4層全てが直列に接続された構造の積層アンテナを得た。
接着層用の組成物をカネカ社製ポリイミドフィルム「カプトンEN厚み5μm」の片面に乾燥後の厚みで0.5μmになるように塗布し、200℃で5分間乾燥・熱処理して接着層を設けた絶縁基体を得た。次に、接着層上にスクリーン印刷によりに渦巻き状の配線パターンを導電ペーストで印刷し、100℃、10分間仮乾燥したのち、過熱水蒸気下で350℃、2分熱処理して厚み25μmの配線パターンを得た。熱処理後の配線パターン上にスルーホール部をマスクしたスクリーン印刷により絶縁コート層パターンを絶縁コート剤で印刷し、100℃、10分間仮乾燥したのち、過熱水蒸気下で350℃、2分熱処理して厚み15μmの絶縁コート層を得た。得られた絶縁コート層上に渦巻き状の配線パターンをスルーホール充填を同時に行いながら導電ペーストで印刷し、100℃、10分間仮乾燥したのち、過熱水蒸気処理下で350℃、2分熱処理して厚み25μmの配線パターンを得た。熱処理後の配線パターン上に、順に、前述と同様の方法で絶縁コート層と配線パターンとを印刷、乾燥、熱処理を行って繰り返し形成した。最後に絶縁コート層上に配線パターンをスルーホール充填を同時に行いながら導電ペーストで印刷し、100℃、10分間仮乾燥したのち、過熱水蒸気下で350℃、2分熱処理して厚み25μmのIC実装用の配線パターンとし、積層アンテナを得た。
(比較例1)
厚み35μmの銅箔を厚み25μmのPETに厚み20μmの接着層を介して積層したFCCLを使用して、実施例1、2で積層した配線パターンの4倍の面積を持つアンテナを通常のフォトレジストを用いたエッチング工程により形成した。
(比較例2)
表2に示す絶縁コート剤2を用いて、実施例1と同様に実施した。
(交信特性の測定)
積層アンテナの片面にICチップ(NXP社製ICチップI CODE SLI)を実装し、共振周波数調整用のコンデンサを並列に接続して、共振周波数を13.56MHzになるよう調整した状態で、リーダライタ(タカヤ製TR3−C201)で交信距離を比較評価した。その結果を表3に示す。
実施例1のアンテナは、アンテナ配線パターンを4層積層した構造になるため、比較例1のアンテナの4分の1の面積で、比較例1と同等の交信距離が得られた。比較例2のアンテナは、印刷積層した場合に配線パターンにクラックやにじみ等が生じて、アンテナ回路がショートしており、積層アンテナとして共振周波数が設計値の13.56MHzから大きく外れており、読み取りが出来なかった。
(温度サイクル試験)
交信できた積層アンテナ100個をJIS規格(JIS C 60068−2−14)に基づいて温度サイクル試験を実施した。
温度サイクル試験を125℃30分保持、−40℃30分保持、各保持温度間は5分で行い、100サイクル後の交信特性を評価した。全ての積層アンテナが100サイクル後も交信可能であった。
(実施例2)
絶縁コート剤として表2に示すコート剤1を用いて、次の手順で絶縁基体の両面にそれぞれ4ターンの平面渦巻き状のコイルを2層積層し、2層ずつ直列に接続された構造の積層アンテナを製造した。
絶縁基体である磁性体として、Ni−Zn−Cuフェライト粉末(戸田工業(株)製FRX−950)をグリーンシート法により920℃で2時間焼結した焼結フェライトシートを用いた。焼結フェライトシートは周波数13.56MHzの複素比透磁率実数部μ’が150,透磁率虚数部μ”が3、厚さ150μmである。接着剤用の組成物を焼結フェライトシートの両面に乾燥後の厚みで3μmになるように塗布し、200℃で5分間乾燥・熱処理して接着層を設けた絶縁基体を得た。次に、絶縁基体の一方の接着層上にスクリーン印刷により厚み25μmの渦巻き状の配線パターンを導電ペーストで印刷し、100℃、10分間仮乾燥し、他方の接着層上にも同様に配線パターンを印刷仮乾燥したのち、過熱水蒸気下で350℃、2分熱処理した。熱処理後の一方の配線パターン上にスルーホール部をマスクしたスクリーン印刷により厚み15μmの絶縁コート層パターンを絶縁コート剤で印刷し、100℃、10分間仮乾燥し、他方の配線パターン上にも同様に絶縁コート層パターンを印刷仮乾燥したのち、過熱水蒸気下で350℃、2分熱処理した。得られた一方の絶縁コート層上に渦巻き状の配線パターンをスルーホール充填を同時に行いながら導電ペーストで印刷し、100℃、10分間仮乾燥し、他方の絶縁コート層上にも同様に配線パターンを印刷仮乾燥したのち、過熱水蒸気処理下で350℃、2分熱処理した。熱処理後の各配線パターン上に、順に、前述と同様の方法で絶縁コート層を印刷、乾燥、熱処理を行って形成した。最後に一方の絶縁コート層上にIC実装用の配線パターンをスルーホール充填を同時に行いながら導電ペーストで印刷し、100℃、10分間仮乾燥し、他方の絶縁コート層上にも同様に配線パターンを印刷仮乾燥したのち、過熱水蒸気下で350℃、2分熱処理して積層アンテナを得た。片側のアンテナ側から読み取りテストを行った場合、1つのアンテナのみを読み取ることができ、磁性体により磁気的に遮蔽されていることが確認出来た。