以下、添付図面を参照して、排気システム、および排気装置制御方法の実施の形態について説明する。
最初に、排気システム1の構成について、添付図面を参照して説明する。
図1に示す排気システム1は、「排気システム」の一例であって、出願人が開示している前述の排気システムと同様にして、射出成型機、吸着保持装置および真空包装機などの各種排気対象Xから空気(「気体」の一例)を吸引して排気する(排気対象Xに対して真空圧を供給する)ことができるように構成されている。具体的には、排気システム1は、真空ポンプ2a〜2c(N=3台の「排気装置」の一例:以下、これらを区別しないときには「真空ポンプ2」ともいう)、インバータ回路3a〜3c(以下、これらを区別しないときには「インバータ回路3」ともいう)、接続用配管4、真空圧センサ5、制御部6および記憶部7を備えている。
真空ポンプ2は、「回転数に応じて排気対象からの排気能力が変化する可変型排気装置」の一例である「インバータ制御方式の真空ポンプ」であって、本例の排気システム1では、各真空ポンプ2が接続用配管4(「接続用配管」の一例)を介して排気対象Xに対して並列接続されている。この真空ポンプ2は、一例として、ベーンポンプ等のロータ方式のポンプ(回転式のポンプ)で構成されており、後述するように各インバータ回路3から供給される電力P2a〜P2c(以下、区別しないときには「電力P2」ともいう)の周波数に応じた回転数(回転速)で回転するモータを動力源として備えると共に、モータの動力出力軸と、ポンプ本体のインプットシャフトとが動力伝達機構(カップリングや、ベルト&プーリ等)を介して相互に接続されている。
つまり、本例の真空ポンプ2では、モータの回転数(動力出力軸の回転数)と、ポンプ本体のインプットシャフトの回転数(ロータの回転数)とが予め規定された比率で固定されており、モータの回転数の増減に応じてロータの回転数が変化することとなる。なお、以下の説明では、排気システム1の動作に関する理解を容易とするために、「真空ポンプ2に搭載されているモータにおける動力出力軸の回転数」を単に「真空ポンプ2の回転数」ともいう。この場合、本例の排気システム1は、一例として、作動用電力の定格周波数が60Hzのモータをそれぞれ備えると共に、回転数あたりの排気能力が互いに等しい真空ポンプ(排気能力が同じ真空ポンプ)で各真空ポンプ2が構成されている。また、真空ポンプ2は、モータの温度や、モータによって回転させられる機構部品における軸受部の温度などを検出する図示しない温度センサを備え、温度センサが検出した温度を特定可能なセンサ信号S2a〜S2c(以下、区別しないときには「センサ信号S2」ともいう)をインバータ回路3に出力する。
この場合、真空ポンプ2のような「可変型排気装置」は、所定の回転数を下回る動作状態において空気を十分に排気する(空気を吸引する)のが困難な状態となる。したがって、本例では、一例として、各真空ポンプ2に対して上記の定格周波数(60Hz)の電力P2を供給したときの回転数を上限の100.0%の回転数としたときに、その33.3%の回転数を下限として規定し、33.3%から100.0%の間の回転数で各真空ポンプ2を動作させるよう規定されている。なお、本例の排気システム1において採用されている各真空ポンプ2は、各回転数毎の「排気対象Xからの排気量」と「真空圧」との関係が、図4に示すような関係となるような排気能力を有している。
インバータ回路3は、制御部6と相俟って「制御部」を構成する。この場合、本例の排気システム1では、インバータ回路3aが制御部6からの制御信号S3a、および真空ポンプ2aからのセンサ信号S2aに基づいて特定される温度に応じて真空ポンプ2aに供給する電力P2aの周波数を変化させる。また、インバータ回路3bが制御部6からの制御信号S3bおよび真空ポンプ2bからのセンサ信号S2bに基づいて特定される温度に応じて真空ポンプ2bに供給する電力P2bの周波数を変化させる。さらに、インバータ回路3cが制御部6からの制御信号S3cおよび真空ポンプ2cからのセンサ信号S2cに基づいて特定される温度に応じて真空ポンプ2cに供給する電力P2cの周波数を変化させる。これにより、本例の排気システム1では、各真空ポンプ2が上記の33.3%から100.0%の間の任意の回転数で動作させられる(各真空ポンプ2の回転数が制御される)。
なお、定格周波数である60Hzの電力P2がインバータ回路3から供給されたときの回転数を100.0%の回転数として各真空ポンプ2を動作させる本例では、50Hzの電力P2を供給した真空ポンプ2が83.3%の回転数で動作し、40Hzの電力P2を供給した真空ポンプ2が66.7%の回転数で動作し、30Hzの電力P2を供給した真空ポンプ2が50.0%の回転数で動作すると共に、20Hzの電力P2を供給した真空ポンプ2が33.3%の回転数で動作することとなる。
この場合、この種の「排気システム」において採用されている「真空ポンプ」では、「電動機(モータ)」に対して供給される電力の周波数に応じて回転数が変化するため、所定の周波数の電力が供給された「真空ポンプ」は、「排気対象の真空圧」の高低によらず、その周波数に対応する回転数で動作することとなる。しかしながら、所定の周波数の電力を供給して所定の回転数で動作させる場合においても、供給する電力の電流値は、「排気対象の真空圧」に応じて相違する。
具体的には、本例の排気システム1において採用されている真空ポンプ2は、一例として、各回転数毎の「真空ポンプ2に供給する電力P2の電流値」と「真空圧」との関係が、図5に示すような関係となるようなモータを備えて各真空ポンプ2が採用されている。なお、本例の真空ポンプ2において採用されているモータでは、同図に示すように、いずれの回転数においても、低真空圧のとき、および高真空圧のときに電流値が低く、中程度の真空圧のときに電流値が高くなるような特性を有しているが、真空値が高ければ高いほど電流値が高くなる特性や、真空値が高ければ高いほど電流値が低くなる特性のモータ(電動機)を備えたものも存在する。
また、インバータ回路3は、図1に示すように、各真空ポンプ2の動作状態を把握させるために、各真空ポンプ2に対して供給している電力P2の電流値を示す電流値データDaa〜Dac(以下、区別しないときには「電流値データDa」ともいう)、各真空ポンプ2の回転数を示す回転数データDra〜Drc(以下、区別しないときには「回転数データDr」ともいう)、および上記のセンサ信号S2a〜S2cに基づいて特定される温度を示す温度データDta〜Dtc(以下、区別しないときには「温度データDt」ともいう)などを制御部6に出力可能に構成されている。
接続用配管4は、排気対象Xに対して各真空ポンプ2を並列的に接続する圧力配管であって、本例の排気システム1では、この接続用配管4に真空圧センサ5が取り付けられている。なお、排気システム1の構成要素として接続用配管4を備えた排気システム1の構成に代えて、排気対象Xに接続された既存の圧力配管に各真空ポンプ2を接続して真空圧センサ5を配設する構成(「排気システム」の構成要素ではない「接続用配管」を使用する構成)を採用することもできる。真空圧センサ(真空度センサ)5は、「真空圧センサ」の一例であって、上記のように接続用配管4に配設されて接続用配管4内の真空圧(真空度)を検出し、検出した真空圧に応じたセンサ信号S5(「検出信号」の一例)を出力する。
制御部6は、前述したように、各インバータ回路3と相まって「制御部」を構成し、排気システム1を総括的に制御する。この制御部6は、後述するように、図2に示す排気量調整処理10を実行して、各インバータ回路3に対して制御信号S3a〜S3c(以下、区別しないときには「制御信号S3」ともいう)を出力することにより、接続用配管4内の真空圧が、予め設定された目標真空圧に対する許容範囲(一例として、設定された目標真空圧の±5.0%の範囲)内の真空圧となるように各真空ポンプ2を動作させる。
具体的には、制御部6は、真空圧センサ5から出力されるセンサ信号S5に基づいて接続用配管4内の真空圧を特定すると共に、予め設定された目標真空圧、およびセンサ信号S5に基づいて特定した真空圧に基づき、各真空ポンプ2をどのように動作させるかを特定(決定)する。
この際に、制御部6は、目標真空圧に対する許容範囲(「予め指定された圧力範囲」の一例)よりも高い真空圧に上昇したときに負荷が減少したと判別し、目標真空圧に対する許容範囲よりも低い真空圧に低下したときに負荷が増加したと判別する。また、制御部6は、負荷が減少したときに、各インバータ回路3に制御信号S3を出力して各真空ポンプ2の動作状態を変更して排気システム1全体としての空気の排気量を低減させると共に、負荷が増加したときに、各インバータ回路3に制御信号S3を出力して各真空ポンプ2の動作状態を変更して排気システム1全体としての空気の排気量を増加させることにより、接続用配管4内の真空圧を上記の真空圧範囲内の真空圧に維持する。
さらに、制御部6は、真空圧センサ5からのセンサ信号S5に基づいて特定される接続用配管4内の真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧で一定になったときに、各インバータ回路3から出力されている電流値データDaおよび回転数データDrに基づき、実質的に機能していない真空ポンプ2が存在するか否かを判別し、存在するときに、そのような真空ポンプ2を少なくとも1台停止させる。なお、制御部6による排気量調整処理10の具体的な内容については、後に詳細に説明する。また、制御部6は、各インバータ回路3から出力されている温度データDtに基づいて特定された温度が予め設定された温度を超えて高温となったとき(異常加熱したとき)などに各インバータ回路3を制御して真空ポンプ2を停止させる処理を行うが、この処理に関する説明を省略する。
記憶部7は、制御部6の動作プログラムや制御部6の演算結果、および後述の排気量調整処理10において制御部6が各インバータ回路3を介して真空ポンプ2を制御するための制御用データDcなどを記憶する。
次に、排気システム1による排気対象Xからの空気の排気処理(真空圧の供給処理)について、添付図面を参照して説明する。
この排気システム1による排気対象Xからの空気の排気に際しては、まず、図示しない操作部を操作して目標真空圧を設定する。この際に、本例の排気システム1では、一例として、60Hzの電力P2を供給した真空ポンプ2の回転数を100.0%とすると共に、100.0%の回転数で動作させた真空ポンプ2の到達可能真空圧(図4に示す真空圧a)を上限とし、かつその真空圧の50.0%の真空圧を下限とする圧力範囲内から任意の真空圧を指定して目標真空圧として設定することが可能となっている。この際には、一例として、図4に示す真空圧eを目標真空圧として設定する。
次いで、操作部の操作によって排気処理を開始させる。この際に、制御部6は、まず、インバータ回路3aに制御信号S3aを出力して真空ポンプ2aに対して20Hzの電力P2aを供給させる(真空ポンプ2aを33.3%の回転数で動作させる)と共に、図2に示す排気量調整処理10を開始する。この場合、本例の排気システム1では、電力P2が供給されて動作を開始した真空ポンプ2からインバータ回路3に対してセンサ信号S2が繰り返し出力されると共に、このセンサ信号S2に基づいて特定される温度を示す温度データDtと、供給している電力P2の電流値を示す電流値データDaと、電力P2の周波数に対応する真空ポンプ2の回転数を示す回転数データDrとがインバータ回路3から制御部6に繰り返し出力されるが、以下、排気量調整処理10についての理解を容易とするために、真空ポンプ2からのセンサ信号S2の出力、インバータ回路3からの温度データDt、電流値データDaおよび回転数データDrの出力に関する説明を省略する。
この排気量調整処理10では、制御部6は、まず、真空圧センサ5から出力されるセンサ信号S5に基づいて接続用配管4内の真空圧を特定する(ステップ11)。次いで、制御部6は、特定した真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧であるか否かを判別する(ステップ12)。この際には、処理開始直後で接続用配管4内が大気圧と同程度の低い真空圧のため、制御部6は、センサ信号S5に基づいて特定した真空圧が目標真空圧に対する許容範囲よりも低い真空圧であると判別する。
したがって、制御部6は、インバータ回路3aに制御信号S3aを出力して真空ポンプ2aに対して供給する電力P2aの周波数を上昇させることで真空ポンプ2aの回転数を上昇させて(真空ポンプの動作状態の変更:ステップ13)、真空ポンプ2aによる排気対象Xからの排気量を増加させてステップ11に戻る。なお、処理開始直後の本例では、真空圧センサ5からセンサ信号S5に基づいて特定される真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧となるまで、上記のステップ11〜13の処理が繰り返し実行されて排気対象Xからの排気量が徐々に増加させられる。
具体的には、図3の左方に「排気量増加時(真空圧が低いとき)」の制御例として図示しているように、まず、真空ポンプ2aの回転数が33.3%から徐々に上昇させられて100.0%まで上昇したときに、33.3%の回転数で真空ポンプ2bの動作が開始される。この際には、33.3%の回転数で動作する真空ポンプ2bによる排気量を考慮して、真空ポンプ2aの回転数を66.7%(100.0%−33.3%の回転数)まで低下させる。これにより、排気システム1全体としての排気量が急激に上昇する事態が回避される。
また、真空ポンプ2aの回転数が66.7%から徐々に上昇させられて再び100.0%まで上昇したときには、33.3%の回転数で動作中の真空ポンプ2bの回転数が徐々に上昇させられる。さらに、真空ポンプ2bの回転数が100.0%まで上昇したときには、33.3%の回転数で真空ポンプ2cの動作が開始される。この際にも、33.3%の回転数で動作する真空ポンプ2cによる排気量を考慮して、真空ポンプ2bの回転数を66.7%まで低下させる。これにより、排気システム1全体としての排気量が急激に上昇する事態が回避される。
また、真空ポンプ2bの回転数が66.7%から徐々に上昇させられて再び100.0%まで上昇したときには、33.3%の回転数で動作中の真空ポンプ2cの回転数が徐々に上昇させられる。さらに、真空ポンプ2bの回転数が100.0%まで上昇したときには、真空圧センサ5からセンサ信号S5に基づいて特定される真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧となるまで、真空ポンプ2a〜2cの3台がそれぞれ100.0%の回転数で動作した状態が維持される。
なお、排気システム1、接続用配管4および排気対象X内の真空ラインの容積が小さく(例えば、接続用配管4の配管長さが短く)、かつ排気システム1の負荷が小さいとき(例えば、排気対象Xが可動していないとき)には、真空ポンプ2cの動作を開始させる以前(真空ポンプ2a,2bの2台が動作している状態)、または、真空ポンプ2bの動作を開始させる以前(真空ポンプ2aのみが動作している状態)において、センサ信号S5に基づいて特定される真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧となるが、制御部6による各真空ポンプ2の制御に関する理解を容易とするために、上記のように真空ポンプ2a〜2cの3台がそれぞれ100.0%の回転数で動作した状態となる以前に接続用配管4内の真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧に達しなかったものとする。また、上記の制御の例に代えて、排気システム1の起動時には、処理開始直後から複数台の真空ポンプ2を同時に動作開始させることもできるが、そのような制御の例に関する説明を省略する。
また、処理開始に先立って設定された目標真空圧が、真空圧eである本例では、例えば排気対象Xが未稼働状態で、負荷が小さいときに、上記のように真空ポンプ2a〜2cの3台がそれぞれ100.0%の回転数で排気対象Xから空気を排気することで、接続用配管4内の真空圧(真空圧センサ5からのセンサ信号S5に基づいて特定される真空圧)が真空圧eまで上昇する。また、100.0%の回転数で3台の真空ポンプ2を動作させ続けた場合には、接続用配管4内の真空圧が、各真空ポンプ2の100.0%の回転数における到達可能真空圧である真空圧aに向かって上昇し、目標真空圧である真空圧eよりも高い真空圧となる。したがって、3台の真空ポンプ2を100.0%の回転数で動作させ続けた際には、ステップ11においてセンサ信号S5に基づいて特定される接続用配管4内の真空圧が、目標真空圧に対する許容範囲よりも高い真空圧であると特定される(ステップ12)。
この際に、制御部6は、インバータ回路3cに制御信号S3cを出力して真空ポンプ2cに対して供給する電力P2cの周波数を下降させることで真空ポンプ2cの回転数を下降させて(真空ポンプの動作状態の変更:ステップ13)、真空ポンプ2cによる排気対象Xからの排気量を減少させてステップ11に戻る。次いで、真空圧センサ5からセンサ信号S5に基づいて特定される真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧となるまで、上記のステップ11〜13の処理が繰り返し実行されて排気対象Xからの排気量が徐々に減少させられる。
具体的には、図3の右方に「排気量低減時(真空圧が高いとき)」の制御例として図示しているように、まず、真空ポンプ2cの回転数が100.0%から徐々に下降させられて、回転数の下限値である33.3%まで下降したときに、真空ポンプ2cの回転数が33.3%の状態に維持されると共に、真空ポンプ2bの回転数が100.0%から徐々に下降させられる。また、真空ポンプ2bの回転数が66.7%まで下降したときには、真空ポンプ2cが停止させられると共に、33.3%の回転数で動作していた真空ポンプ2cの停止による排気量の減少を考慮して、真空ポンプ2bの回転数を100.0%に上昇させる。これにより、排気システム1全体としての排気量が急激に下降する事態が回避される。
さらに、真空ポンプ2bの回転数が100.0%から徐々に下降させられて、回転数の下限値である33.3%まで下降したときに、真空ポンプ2bの回転数が33.3%の状態に維持されると共に、真空ポンプ2aの回転数が100.0%から徐々に下降させられる。また、真空ポンプ2aの回転数が66.7%まで下降したときには、真空ポンプ2bが停止させられると共に、33.3%の回転数で動作していた真空ポンプ2bの停止による排気量の減少を考慮して、真空ポンプ2aの回転数を100.0%に上昇させる。これにより、排気システム1全体としての排気量が急激に下降する事態が回避される。
また、真空ポンプ2aの回転数が100.0%から徐々に下降させられて、回転数の下限値である33.3%まで下降したときには、センサ信号S5に基づいて特定される接続用配管4内の真空圧が、33.3%で回転させた状態の真空ポンプ2aの到達可能真空である真空圧eとなる。したがって、制御部6は、ステップ11において特定した接続用配管4内の真空圧が、設定されている目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧であると判別し(ステップ12)、複数台の真空ポンプ2が動作中であるか否かを判別する(ステップ13)。
この際には、真空ポンプ2aの1台だけが動作中のため、制御部6は、ステップ11に戻ってセンサ信号S5に基づく接続用配管4内の真空圧の特定を実行する。この後、負荷が大きくなって排気対象Xから多くの空気を排気する必要が生じるまで、上記のステップ11〜14の処理が繰り返し実行される。これにより、真空ポンプ2aの1台が33.3%の回転数で継続して排気処理を行い、接続用配管4内の真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧(本例では、真空圧e)の状態が維持される。
一方、上記の例とは異なり、図4に示す真空圧eよりも高い真空圧が目標真空圧として設定されることもある。具体的には、一例として、真空ポンプ2を83.3%の回転数で動作させた際の到達真空圧である真空圧bが目標真空圧として設定されたものとする。このような状態で操作部の操作によって排気処理の開始が指示されたときに、制御部6は、前述の制御例と同様にして、まず、真空ポンプ2aの回転数を徐々に上昇させ、真空ポンプ2aに加えて真空ポンプ2bの動作を開始して、その回転数を徐々に上昇させ、かつ真空ポンプ2a,2bに加えて真空ポンプ2cの動作を開始して、その回転数を徐々に上昇させる。これにより、真空ポンプ2a〜2cの3台がそれぞれ100.0%の回転数で動作した状態となる。
また、100.0%の回転数で3台の真空ポンプ2を動作させ続けた場合には、接続用配管4内の真空圧が、各真空ポンプ2の100.0%の回転数における到達可能真空圧である真空圧aに向かって上昇し、目標真空圧である真空圧bよりも高い真空圧となる。したがって、3台の真空ポンプ2を100.0%の回転数で動作させ続けた際には、ステップ11においてセンサ信号S5に基づいて特定される接続用配管4内の真空圧が、目標真空圧に対する許容範囲よりも高い真空圧であると特定される(ステップ12)。
この際には、目標真空圧を真空圧eに設定した前述の例のときと同様にして、まず、真空ポンプ2cの回転数が100.0%から徐々に下降させられて33.3%の状態が維持されると共に、真空ポンプ2bの回転数が100.0%から徐々に下降させられ、真空ポンプ2bの回転数が66.7%まで下降したときに、真空ポンプ2cが停止させられると共に、真空ポンプ2bの回転数を100.0%に上昇させられる。次いで、真空ポンプ2bの回転数が100.0%から徐々に下降させられて33.3%の状態が維持されると共に、真空ポンプ2aの回転数が100.0%から徐々に下降させられる。
さらに、真空ポンプ2aの回転数が83.3%まで下降したときには、ステップ11においてセンサ信号S5に基づいて特定される接続用配管4内の真空圧が、目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧となる(「検出信号に基づいて特定される接続用配管内の真空圧が予め指定された圧力範囲内で一定となったとき」との状態の一例:ステップ12)。この際に、出願人が開示している排気システムのように接続用配管4内の真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧であるか否かだけに基づいて各真空ポンプ2の動作状態を制御する構成・方法では、真空ポンプ2aが83.3%の回転数で動作し、かつ真空ポンプ2bが33.3%の回転数で動作しているこの状態(2台の真空ポンプ2が動作している状態)が維持される。
一方、本例の排気システム1では、上記のように、ステップ12において接続用配管4内の真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧であると判別した後に、制御部6は、複数台の真空ポンプ2(本例では、真空ポンプ2a,2b)が動作中であると判別し(ステップ14)、動作中の真空ポンプ2のその時点における動作状態を特定する(ステップ15)。具体的には、制御部6は、このステップ15の処理として、真空ポンプ2の回転数と、真空ポンプ2に対して供給されている電力P2の電流値(「動作中の可変型排気装置による排気対象からの気体の排気量および動作中の可変型排気装置の回転数に応じて変化する予め規定されたパラメータ」の一例)とを「真空ポンプ2の動作状態」として特定する。
この際に、制御部6は、回転数データDraに基づき、真空ポンプ2aが83.3%の回転数で動作中であると特定すると共に、回転数データDrbに基づき、真空ポンプ2bが33.3%の回転数で動作中であると特定する。また、制御部6は、電流値データDaaに基づき、真空ポンプ2aに対して供給されている電力P2の電流値が図5に示す電流値Bbであると特定すると共に、電流値データDabに基づき、真空ポンプ2bに対して供給されている電力P2の電流値が同図に示す電流値Beであると特定する。
次いで、制御部6は、特定した各真空ポンプ2の回転数、および各真空ポンプ2に対して供給している電力P2の電流値に基づき、排気対象Xからの空気の排気量が予め規定された排気量以下となる「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2が存在するか否かを判別する(ステップ16)。
この場合、図4に示すように、33.3%の回転数で動作中の真空ポンプ2bの到達真空度は、83.3%の回転数で動作中の真空ポンプ2aの到達真空度であって目標真空度である真空度bよりも低い真空度eとなっている。したがって、真空ポンプ2bは、接続用配管4内の真空度が、33.3%の回転数での動作時における到達可能真空度よりも高い真空度bとなっていることで、排気対象Xからの排気量が極く少量(実質的には、ほぼゼロ)となっている。なお、本例の排気システム1では、一例として、排気対象Xからの排気量が同図における排気量A以下となる動作状態を「排気能力低下状態」と規定し、上記のように、実質的な排気処理に寄与していない真空ポンプ2を停止させる構成が採用されている。この場合、「排気能力低下状態」とする排気量(上記の例における「排気量A」)については、図示しない操作部の操作によって任意に変更することが可能となっている。
また、本例の排気システム1における真空ポンプ2では、図4に示すように、100.0%の回転数で動作している状態では、真空圧Aa以上の真空圧で排気対象Xからの排気量が排気量A以下となり、83.3%の回転数で動作している状態では、真空圧Ab以上の真空圧で排気対象Xからの排気量が排気量A以下となり、66.7%の回転数で動作している状態では、真空圧Ac以上の真空圧で排気対象Xからの排気量が排気量A以下となり、50.0%の回転数で動作している状態では、真空圧Ad以上の真空圧で排気対象Xからの排気量が排気量A以下となり、かつ33.3%の回転数で動作している状態では、真空圧Ae以上の真空圧で排気対象Xからの排気量が排気量A以下となる。
さらに、本例の排気システム1における真空ポンプ2では、図5に示すように、100.0%の回転数で真空圧Aa以上の真空圧で動作しているときに供給される電力P2の電流値が電流値Ca以下となり、83.3%の回転数で真空圧Ab以上の真空圧で動作しているときに供給される電力P2の電流値が電流値Cb以下となり、66.7%の回転数で真空圧Ac以上の真空圧で動作しているときに供給される電力P2の電流値が電流値Cc以下となり、50.0%の回転数で真空圧Ad以上の真空圧で動作しているときに供給される電力P2の電流値が電流値Cd以下となり、33.3%の回転数で真空圧Ae以上の真空圧で動作しているときに供給される電力P2の電流値が電流値Ce以下となる。
なお、真空ポンプ2の回転数と、供給している電力P2の電流値と、真空ポンプ2による排気量との関係については、一例として、それらの関係を特定可能な制御用データDcが記憶部7に記憶されている。したがって、制御部6は、ステップ15で特定した真空ポンプ2a,2bの動作状態(回転数、および供給されている電力P2の電流値)と、記憶部7から読み出した制御用データDcとに基づき、真空ポンプ2a,2bが「排気能力低下状態」で動作中であるか否かを判別する。
具体的には、制御部6は、33.3%の回転数で動作中の真空ポンプ2bについては、インバータ回路3bから供給している電力P2bの電流値Beが上記の電流値Ceよりも低いため、排気対象Xからの排気量が排気量Aよりも少量となる「排気能力低下状態」で動作中であると判別する(「排気能力低下状態で動作中の可変型排気装置が存在するとき」との状態の一例:ステップ16)。また、制御部6は、83.3%の回転数で動作中の真空ポンプ2aについても、インバータ回路3aから供給している電力P2aの電流値Bbが上記の電流値Cbよりも低いため、「排気能力低下状態」で動作中であると判別する(「排気能力低下状態で動作中の可変型排気装置が存在するとき」との状態の他の一例:ステップ16)。
次いで、動作中の真空ポンプ2a,2bの双方が「排気能力低下状態」で動作中であると判別した制御部6は(「排気能力低下状態で動作中の可変型排気装置が複数台存在し、かつ排気能力低下状態で動作中の各可変型排気装置のなかに回転数が他の可変型排気装置の回転数とは相違する可変型排気装置が存在するとき」との状態の一例)、33.3%の回転数で動作中の真空ポンプ2b(「排気能力低下状態で動作中の各可変型排気装置のなかで回転数が最も高い可変型排気装置を除く可変型排気装置」の一例)を停止させる。
具体的には、制御部6は、インバータ回路3bに対して制御信号S3bを出力して真空ポンプ2bに対する電力P2bの出力を停止させることにより、真空ポンプ2bを停止させる(「少なくとも1台の排気装置の動作を継続させつつ、排気能力低下状態で動作中の可変型排気装置を少なくとも1台停止させる」との処理の一例:ステップ17)。これにより、停止させた真空ポンプ2bに対して供給していた電力P2bの分だけ、排気システム1の消費電力が低減される。
この場合、上記の制御例とは相違するが、上記のステップ17において、真空ポンプ2a(「排気能力低下状態で動作中の各可変型排気装置のなかで回転数が最も高い可変型排気装置」の一例)を停止させたときには、33.3%の回転数で動作中の真空ポンプ2bによる到達可能真空圧が、目標真空圧(本例では、真空圧b)に対する許容範囲の真空圧よりも低い真空圧eのため、接続用配管4内の真空圧を目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧に維持することができなくなる。
このような構成を採用することもできるが、上記のステップ17において、83.3%の回転数で動作中の真空ポンプ2aの動作を継続させ、33.3%の回転数で動作中の真空ポンプ2bを停止させた本例では、真空ポンプ2aを83.3%の回転数で動作させた状態を維持させることにより、接続用配管4内の真空圧が、目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧である真空圧bの状態が維持される。
この後、負荷が増加して排気対象Xから多くの空気を排気する必要がある状態に移行するまでは、真空ポンプ2aを83.3%の回転数で動作させているだけで、ステップ11において特定される接続用配管4内の真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧であると判別され(ステップ12)、真空ポンプ2aの一台だけが動作中であると判別されて(ステップ14)、ステップ11に戻る一連の処理が繰り返し実行される。
なお、センサ信号S5に基づいて特定される接続用配管4内の真空圧に応じた各真空ポンプ2の回転数の変更や動作台数の変更に関する基本的な制御の手順(ステップ11〜13の各処理の手順)は、図3に示す制御の手順の例に限定されない。例えば、出願人が前述の特許文献に開示している排気システムおよびその制御方法の各実施の形態の制御手順と同様の手順を採用して各真空ポンプ2の動作状態を変更することができる。
この場合、前述の特許文献に出願人が最初の実施例として開示している制御の例と同様に動作中の真空ポンプ2の回転数を互いに同じ回転数とする制御手順を採用したときに、上記の例のように目標真空圧を図4に示す真空圧bに設定した場合には、真空ポンプ2a〜2cの3台が83.3%の回転数でそれぞれ動作している状態で接続用配管4内の真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧bとなる。しかしながら、接続用配管4内の真空圧が真空圧bの状態で各真空ポンプ2a〜2cを83.3%の回転数で動作させても、各真空ポンプ2a〜2cの各々の排気量は、排気量Aを大きく下回る状態となる。
この際には、前述の例と同様にして、各真空ポンプ2の回転数、および電力P2の電流値に基づき、真空ポンプ2a〜2cのすべてが「排気能力低下状態」であると判別される(「排気能力低下状態で動作中の可変型排気装置が複数台存在する」との状態の他の一例)。このような状態では、前述の例とは異なり、「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2a〜2cのすべての回転数が同じ回転数となっている。したがって、各真空ポンプ2のうちの「動作状態とする優先順位」を低く設定されている真空ポンプ2を停止させる。
この際に、「動作状態とする優先順位」として、真空ポンプ2a、真空ポンプ2bおよび真空ポンプ2cの順が設定されていたときには、まず、「排気能力低下状態」の真空ポンプ2a〜2cのうちの真空ポンプ2cを停止させると共に、真空ポンプ2a,2bを83.3%の回転数で継続動作させる(「少なくとも1台の排気装置の動作を継続させつつ、排気能力低下状態で動作中の可変型排気装置を少なくとも1台停止させる」との処理の他の一例)。次いで、真空ポンプ2cの停止後も「排気能力低下状態」である真空ポンプ2a,2bのうちの真空ポンプ2bを停止させると共に、真空ポンプ2aを83.3%の回転数で継続動作させる(「少なくとも1台の排気装置の動作を継続させつつ、排気能力低下状態で動作中の可変型排気装置を少なくとも1台停止させる」との処理のさらに他の一例)。
これにより、3台の真空ポンプ2a〜2cを83.3%の回転数で動作させていた状態から、真空ポンプ2b,2cが停止させられて真空ポンプ2aの1台だけが83.3%の回転数で動作した状態となり、接続用配管4内の真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧となる状態が維持される。なお、上記のように、真空ポンプ2cを停止させ、その後に真空ポンプ2bを停止させる制御に代えて、「排気能力低下状態」の真空ポンプ2a〜2cのうちの任意の2台(例えば真空ポンプ2b,2c)を同時に停止させる制御を行うこともできる。このような制御を行った場合にも、真空ポンプ2aの1台だけが83.3%の回転数で動作した状態となり、接続用配管4内の真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧となる状態が維持される。
このように、この排気システム1および排気装置制御方法では、複数台の真空ポンプ2を動作させた状態において、真空圧センサ5からのセンサ信号S5に基づいて特定される接続用配管4内の真空圧が予め指定された圧力範囲内で一定となったときに、動作中の真空ポンプ2による排気対象Xからの空気の排気量および動作中の真空ポンプ2の回転数に応じて変化する「予め規定されたパラメータ」と、真空ポンプ2の回転数とに基づき、排気対象Xからの空気の排気量が予め規定された排気量以下となる「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2が存在するか否かを判別すると共に、「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2が存在するときに、少なくとも1台の真空ポンプ2の動作を継続させつつ、「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2を少なくとも1台停止させる。
したがって、この排気システム1および排気装置制御方法によれば、複数の真空ポンプ2が動作している状態でそれらの真空ポンプ2のうちのいずれか(または、すべて)が、排気対象Xからの空気の排気量が極く少量の「排気能力低下状態」のときに、真空ポンプ2が1台だけ動作している状態、または、動作中の真空ポンプ2のすべてが「排気能力低下状態」と判別されない状態となるまで、実質的には機能していない不要な真空ポンプ2が停止されるため、停止させた真空ポンプ2に対して供給していた電力P2の分だけ、排気システム1の消費電力を低減することができる。これにより、排気システム1のランニングコストを一層低減することができる。
また、この排気システム1および排気装置制御方法によれば、真空ポンプ2が動力源として備えているモータに供給する電力P2の電流値を「予め規定されたパラメータ」として「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2が存在するか否かを判別することにより、真空ポンプ2が「排気能力低下状態」で動作中か否かを比較的簡易な構成で取得可能な情報(本例では、電流値)に基づいて特定することができるため、排気システム1の製造コスト(導入コスト)の高騰を招くことなく、排気システム1の消費電力を低減することができる。
さらに、この排気システム1および排気装置制御方法では、「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2が複数台存在し、かつ「排気能力低下状態」で動作中の各真空ポンプ2のなかに回転数が他の真空ポンプ2の回転数とは相違する真空ポンプ2が存在するときに、「排気能力低下状態」で動作中の各真空ポンプ2のなかで回転数が最も高い真空ポンプ2を除く真空ポンプ2のうちの少なくとも1台停止させる。
したがって、この排気システム1および排気装置制御方法によれば、「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2が複数台存在する状況下において、「排気能力低下状態」で動作中の各真空ポンプ2のなかで回転数が最も高い真空ポンプ2を停止させる構成・方法とは異なり、「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2を少なくとも1台停止させた際に、動作中の真空ポンプ2の回転数を上昇させたり、停止中の真空ポンプ2の動作を再開させたりすることなく、「排気能力低下状態」で動作中の各真空ポンプ2のなかで回転数が最も高い真空ポンプ2の動作状態(回転数)を維持するだけで、その回転数で動作中の真空ポンプ2の到達可能真空圧である目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧を維持することができる。
なお、「排気システム」の構成、および「排気装置制御方法」の具体的な内容は、上記の排気システム1の構成、および排気システム1における各真空ポンプ2a〜2cの制御方法の例に限定されない。例えば、「真空ポンプ2におけるモータ(動力源)に供給している電力P2の電流値」と「真空ポンプ2におけるモータ(動力源)の回転数」とに基づいて「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2が存在するか否かを判別する構成の排気システム1およびその制御方法を例に挙げて説明したが、「動作中の可変型排気装置に供給している電力の電流値」以外の各種のパラメータを「予め規定されたパラメータ」として取得して、排気能力低下状態で動作中の可変型排気装置が存在するか否かを判別する構成・制御方法を採用することができる。
この場合、「排気能力低下状態」で動作中の「可変型排気装置」は、「接続用配管」内の真空圧が目標真空圧に対する許容範囲内の真空圧(ある程度高い真空圧)となっている状態、すなわち、非常に高い負荷が加わる状態で動作させられることとなる。このため、「排気能力低下状態」で動作中の「可変型排気装置」では、動力源(モータ等)や機構部品の温度が、「排気能力低下状態」ではない通常状態での動作中よりも高温となる。したがって、「可変型排気装置の温度」を「予め規定されたパラメータ」として参照することにより、「可変型排気装置」が「排気能力低下状態」で動作中であるか否かを判別することができる。
この場合、前述の排気システム1では、モータの温度や、軸受部の温度などを示すセンサ信号S2が真空ポンプ2からインバータ回路3に出力され、インバータ回路3が、センサ信号S2に基づく温度データDtを生成して制御部6に出力する構成が採用されている。これにより、前述の排気システム1では、制御部6が、インバータ回路3から取得した温度データDtに基づき、真空ポンプ2の温度(この例では、モータの温度や、軸受部の温度など)を特定することが可能となっている。
したがって、前述の排気量調整処理10におけるステップ15において、電流値データDaの取得、および取得した電流値データDaに基づく電力P2の電流値の特定の処理に代えて、温度データDtの取得、および取得した温度データDtに基づく真空ポンプ2の温度の特定の処理を実行すると共に、ステップ16において、真空ポンプ2の回転数、および電力P2の電流値に基づく判別の処理に代えて、真空ポンプ2の回転数、および真空ポンプ2の温度に基づく判別処理を実行することで、前述の例と同様にして、動作中の真空ポンプ2が「排気能力低下状態」であるか否かを特定し、「排気能力低下状態」のときには、少なくとも1台の真空ポンプ2を停止させることができる。
このように、真空ポンプ2の温度を「予め規定されたパラメータ」として「排気能力低下状態」で動作中の真空ポンプ2が存在するか否かを判別する排気システム1および排気装置制御方法によれば、真空ポンプ2が「排気能力低下状態」で動作中か否かを比較的簡易な構成で取得可能な情報(本例では、電流値)に基づいて特定することができるため、排気システム1の製造コスト(導入コスト)の高騰を招くことなく、排気システム1の消費電力を低減することができる。
また、上記の「電力の電流値」や「可変型排気装置の温度」に代えて、「可変型排気装置における吸気の温度(吸気口から吸気される気体の温度)」、「可変型排気装置における排気の温度(排気口から排気される気体の温度)」、および「可変型排気装置における吸気の温度と排気の温度との差温」などの「気体の温度」や、「可変型排気装置における吸気量(吸気口から吸気される気体の体積:接続用配管内の真空圧に応じた真空圧の吸気の体積)」、および「可変型排気装置からの排気量(排気口から排気される気体の体積:大気圧下での気体の体積)」などの「可変型排気装置による排気対象からの気体の排気量」などを「予め規定されたパラメータ」として取得して「可変型排気装置」が「排気能力低下状態」で動作中であるか否かを判別する構成・制御方法を採用することもできる。
さらに、「排気システム」を構成する「排気装置」の台数は、排気システム1のようなN=3台に限定されず、N=2台、または、N=4台以上の複数台を備えて「排気システム」を構成することができる。また、N=3台の「排気装置」のすべてを「可変型排気装置」である真空ポンプ2で構成した例について説明したが、N台の「排気装置」のうちの少なくとも1台が「可変型排気装置」であれば、他の「排気装置」については、「排気対象Xからの排気能力が変化しない固定型排気装置」で構成することもできる。
さらに、「可変型排気装置」の一例として、インバータ制御方式のモータを動力源とする真空ポンプ2を採用してインバータ回路3から供給する電力の周波数を変更することで各真空ポンプ2の回転数を制御する構成・方法を例に挙げて説明したが、例えば、供給電力の電圧に応じて回転数が変化するモータを動力源とする電圧可変制御型の「可変型排気装置」を採用して、その「排気装置」に供給する電力の電圧を変化させることで回転数を制御する構成・方法を採用したり、供給電力の電流に応じて回転数が変化するモータを動力源とする電流可変制御型の「可変型排気装置」を採用して、その「排気装置」に供給する電力の電流を変化させることで回転数を制御する構成・方法を採用したりすることもできる。
また、ロータ方式の真空ポンプ2を備えて構成した例について説明したが、ピストン&シリンダ方式の「排気装置」(往復動型の「排気装置」を備えて構成することもできる。なお、ピストン&シリンダ方式の「排気装置」では、ピストンが連結されているクランク軸の回転数が「排気装置の回転数」に相当する。加えて、モータ(電動機)を動力源として備えた真空ポンプ2等を「排気装置」として備えた構成、およびその制御方法について説明したが、「内燃機関」や「蒸気タービン」を動力源とする「排気装置」を備えて「排気システム」を構成して、それらの「排気装置」を制御して「排気対象」から気体(空気等)を排気することもできる。