JP2020112096A - 排気ガス浄化装置の診断装置 - Google Patents

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吾朗 坪井
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一憲 平澤
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洋平 中野
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Abstract

【課題】SCR触媒43の劣化診断においてシアン酸やシアヌル酸による誤診断を抑制可能な、排気ガス浄化装置の診断装置を提供する。【解決手段】排気ガス浄化装置の診断装置は、尿素インジェクタ45と、SCR触媒43と、上流側NOxセンサSN5及び下流側NOxセンサSN6と、SCR触媒43の温度を検出又は推定する温度検出/推定手段と、尿素インジェクタ45の作動を制御しかつSCR触媒43の劣化診断を行う制御部とを備え、該制御部は、上記温度検出/推定手段により検出又は推定されたSCR触媒の温度と、尿素インジェクタ45から排気通路40に噴射供給された尿素の噴射供給速度とが、予め設定された診断制限条件を満たすか否かを判定して、該診断制限条件を満たす場合には、SCR触媒43の劣化診断を制限する。【選択図】図1

Description

本発明は、排気ガス浄化装置の診断装置に関する技術分野に属する。
従来より、エンジンの排気通路に尿素を噴射供給する尿素インジェクタと、該尿素インジェクタにより該排気通路に噴射供給された尿素から生成されるアンモニアの還元作用によって排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒(NOx選択還元触媒)とを備えた、エンジンの排気ガス浄化装置が知られている。
例えば特許文献1には、排気通路におけるSCR触媒よりも上流側及び下流側に、上流側NOxセンサ及び下流側NOxセンサをそれぞれ設け、上流側NOxセンサ及び下流側NOxセンサの検出値に基づいて、SCR触媒のNOx浄化率を算出し、この算出されたNOx浄化率に基づいて、SCR触媒の劣化診断を行うことが開示されている。
また、特許文献1には、SCR触媒の劣化診断においてSCR触媒からのアンモニアスリップによる誤診断を防止するために、排気通路におけるSCR触媒よりも下流側の部分に、アンモニア濃度を検出するアンモニアセンサを設け、このアンモニアセンサによるアンモニア検出値が所定の閾値よりも大きい場合には、SCR触媒の劣化診断を停止することが開示されている。
特開2018−131995号公報
本願発明者らは、SCR触媒の劣化診断について鋭意研究を重ね、その結果、誤診断の要因がアンモニアスリップ以外にもあることが判明した。
すなわち、通常は、尿素インジェクタにより排気通路に噴射供給された尿素は、気化された後、熱分解反応によってアンモニアとイソシアン酸とに分解され、そのイソシアン酸は、加水分解反応によってアンモニアと二酸化炭素とに分解される。
ところが、尿素インジェクタによる尿素の噴射供給速度が、その尿素からアンモニアへの反応速度(反応による尿素の減少速度)を上回ると、気化された尿素の一部は、イソシアン酸と反応してビウレットを生成する。ビウレットは、イソシアン酸と反応してシアヌル酸とアンモニアとを生成する。また、シアヌル酸は、イソシアン酸からも直接生成される。こうして生成されたビウレット及びシアヌル酸は、SCR触媒に吸着される。但し、ビウレット及びシアヌル酸は、アンモニアとは異なり、多孔質構造のゼオライト等の孔内部表面に担持された触媒金属に吸着されるのではなく、その孔の出入口を塞ぐように吸着される。そして、例えばエンジンの加速によって排気ガスの温度が高くなった場合、ビウレットは、分解されてシアン酸を生成し、このシアン酸がSCR触媒から流出して、下流側NOxセンサにおいて酸化によりNOxとされて、NOxとして検出される。また、排気ガスの温度が高くなった場合、シアヌル酸がSCR触媒から流出して、下流側NOxセンサにおいて酸化によりNOxとされて、NOxとして検出される。このようにシアン酸やシアヌル酸がNOxとして検出されると、下流側NOxセンサの検出値が上流側NOxセンサの検出値よりも高くなり、この結果、SCR触媒が劣化していると、誤診断してしまう。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、SCR触媒の劣化診断においてシアン酸やシアヌル酸による誤診断を抑制可能な、排気ガス浄化装置の診断装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明では、エンジンの排気通路に尿素を噴射供給する尿素インジェクタと、上記排気通路における上記尿素インジェクタよりも下流側の部分に設けられ、該尿素インジェクタにより該排気通路に噴射供給された尿素から生成されるアンモニアの還元作用によって排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、上記排気通路における上記SCR触媒よりも上流側及び下流側の部分にそれぞれ配設され、該上流側及び下流側の部分を流れる排気ガス中のNOxの濃度をそれぞれ検出する上流側NOxセンサ及び下流側NOxセンサと、上記尿素インジェクタの作動を制御するとともに、上記上流側NOxセンサ及び下流側NOxセンサの検出値から上記SCR触媒のNOx浄化率を算出して、該算出したNOx浄化率に基づいて、該SCR触媒の劣化診断を行う制御部と、を備えた、排気ガス浄化装置の診断装置を対象として、上記SCR触媒の温度を検出又は推定する温度検出/推定手段を更に備え、上記制御部は、上記温度検出/推定手段により検出又は推定された上記SCR触媒の温度と、上記尿素インジェクタから上記排気通路に噴射供給された尿素の噴射供給速度とが、予め設定された診断制限条件を満たすか否かを判定して、該診断制限条件を満たす場合には、上記劣化診断を制限するよう構成されている、という構成とした。
上記の構成により、SCR触媒の温度と尿素の噴射供給速度とが診断制限条件を満たす場合には、SCR触媒の劣化診断を制限するので、SCR触媒の劣化診断においてシアン酸やシアヌル酸による誤診断を抑制することができる。すなわち、診断制限条件として、尿素の噴射供給速度が、尿素からアンモニアへの反応速度(SCR触媒の温度が高くなるほど、大きくなる)を上回るような条件を予め設定しておくことで、SCR触媒の温度と尿素の噴射供給速度とが、シアン酸やシアヌル酸が生成されるような条件を満たす場合には、SCR触媒の劣化診断が制限される。したがって、シアン酸やシアヌル酸による誤診断を抑制することができる。
上記排気ガス浄化装置の診断装置において、上記制御部は、上記劣化診断を制限した場合において、上記温度検出/推定手段により検出又は推定された上記SCR触媒の温度が所定温度を超えたときには、上記劣化診断の制限を解除するよう構成されている、ことが好ましい。
すなわち、SCR触媒の温度が所定温度を超えたときには、SCR触媒に吸着されたシアン酸及びシアヌル酸の略全てがSCR触媒から放出されたと考えられ、このときに劣化診断の制限を解除しても、シアン酸やシアヌル酸による誤診断が生じることはない。したがって、シアン酸やシアヌル酸による誤診断を抑制しつつ、劣化診断の機会を増やすことができる。
上記排気ガス浄化装置の診断装置の一実施形態において、上記SCR触媒のアンモニア吸着量を推定する吸着量推定手段を更に備え、上記制御部は、上記吸着量推定手段により推定されるアンモニア吸着量が目標吸着量になるように、かつ、上記尿素インジェクタから上記排気通路に噴射供給される尿素の噴射供給速度が目標速度になるように、上記尿素インジェクタの作動を制御するよう構成されており、更に上記制御部は、上記目標速度を、上記目標吸着量と上記吸着量推定手段により推定されたアンモニア吸着量との差に応じて設定するよう構成されている。
このことで、目標吸着量とアンモニア吸着量との差が大きいと、通常、目標速度が大きくなって、シアン酸やシアヌル酸が生成される可能性が高くなる。この場合、SCR触媒の温度と尿素の噴射供給速度とが診断制限条件を満たすようになり、SCR触媒の劣化診断が制限され、よって、シアン酸やシアヌル酸による誤診断を抑制することができる。
上記一実施形態において、上記制御部は、上記目標吸着量を、上記温度検出/推定手段により検出又は推定された上記SCR触媒の温度に応じて設定するよう構成されていることが好ましい。
これにより、SCR触媒に吸着させることが可能な上限のアンモニア吸着量に対応して、目標吸着量を適切に設定することができる。
以上説明したように、本発明の排気ガス浄化装置の診断装置によると、SCR触媒の劣化診断においてシアン酸やシアヌル酸による誤診断を抑制することができる。
本発明の実施形態に係る排気ガス浄化装置の診断装置が適用されたエンジンの概略図である。 上記エンジンの制御系の構成を示すブロック図である。 ドージング制御の具体的手順を示すフローチャートである。 SCR触媒の温度を推定する手順を模式的に示す説明図である。 SCR触媒の温度とアンモニアの上限吸着量及び目標吸着量との関係を示すグラフである。 判定用マップを示す図である。 劣化診断部におけるSCR触媒の劣化診断動作を示すフローチャートである。 尿素から生成される物質の変遷過程を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る排気ガス浄化装置の診断装置が適用されたエンジン1の構成を示す。エンジン1は、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルディーゼルエンジンであって、エンジン本体1aと、エンジン本体1aにおける燃焼に必要な空気を供給する吸気システム3Sと、エンジン本体1aから排出された排気ガスを浄化して外部に排出する排気システム4S(排気ガス浄化装置)と、吸気システム3Sによって供給される空気(吸気)を圧縮しつつエンジン本体1aに送り出すターボ過給機60と、排気システム4Sを流通する排気ガスの一部を吸気システム3Sに還流するEGR装置70とを備えている。
エンジン本体1aは、内部に複数の気筒2(図1では1つの気筒2のみを示す)が形成されたシリンダブロック3と、該複数の気筒2の上部開口を閉塞するようにシリンダブロック3の上面に取り付けられたシリンダヘッド4と、各気筒2にそれぞれ往復動可能に挿入された複数のピストン5とを有している。複数の気筒2は、図1の紙面に垂直な方向に一列に並んでいる。すなわち、エンジン1は、直列多気筒エンジンである。尚、各気筒2の構造は同一であるため、以下では、基本的に1つの気筒2のみについて説明する。
ピストン5は、気筒2の内周面及びシリンダヘッド4と共に燃焼室6を区画する。燃焼室6には、後述する燃料噴射弁15からの噴射により、軽油を主成分とする燃料が供給される。そして、その供給された燃料が圧縮着火により燃焼(拡散燃焼)し、その燃焼による膨張力によってピストン5が押し下げられる。
ピストン5の下方には、エンジン本体1aの出力軸であるクランク軸7が設けられている。クランク軸7は、ピストン5とコネクティングロッド8を介して連結され、ピストン5の往復運動(上下運動)に応じて中心軸回りに回転駆動される。
シリンダブロック3には、クランク軸7の角度(クランク角)と、クランク軸7の回転速度(エンジン回転速度)とを検出するクランク角センサSN1が設けられている。シリンダヘッド4には、エンジン本体1a(シリンダブロック3及びシリンダヘッド4)の内部を流通する冷却水の温度を検出する水温センサSN2が設けられている。
シリンダヘッド4には、燃焼室6に開口する吸気ポート9及び排気ポート10と、吸気ポート9を開閉する吸気弁11と、排気ポート10を開閉する排気弁12と、吸気弁11及び排気弁12をクランク軸7の回転に連動して開閉駆動する動弁機構13,14とが設けられている。
また、シリンダヘッド4には、燃焼室6に上記燃料を噴射する燃料噴射弁15が設けられている。この燃料噴射弁15は、例えば、燃焼室6の天井面の中央部から放射状に燃料を噴射する多噴孔型の噴射弁である。尚、図示を省略するが、ピストン5の冠面には、燃料噴射弁15から噴射された燃料を受け入れるための凹部(キャビティ)が形成されている。
吸気システム3Sは、エンジン本体1aに導入される吸気が流通する吸気通路30を含む。吸気通路30の下流端(インテークマニホールド)は、吸気ポート9と連通するようにシリンダヘッド4の一側面に接続されている。吸気通路30には、吸気中の異物を除去するエアクリーナ31と、後述のターボ過給機60のコンプレッサ62と、コンプレッサ62により圧縮された吸気を冷却するインタークーラ32と、吸気の流量を調整する開閉可能なスロットル弁33と、各気筒2に吸気が均等に取り入れられるようにするためのサージタンク34とが、吸気通路30の上流側(エンジン本体1aから遠い側)からこの順に設けられている。
吸気通路30におけるエアクリーナ31よりも下流側の部分には、吸気通路30を通じてエンジン本体1aに導入される空気(新気)の流量を検出するエアフローセンサSN3が設けられている。また、サージタンク34には、その内部の吸気の圧力を検出する吸気圧センサSN4が設けられている。
排気システム4Sは、エンジン本体1aから排出される排気ガスが流通する排気通路40を含む。排気通路40の上流端(エキゾーストマニホールド)は、排気ポート10と連通するようにシリンダヘッド4の他側面に接続されている。この排気通路40には、排気ガスに含まれる各種の有害成分を浄化するための複数の触媒41〜44が設けられている。本実施形態では、酸化触媒41と、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)42と、SCR触媒43と、スリップ触媒44とが、排気通路40の上流側(エンジン本体1aに近い側)からこの順に設けられている。また、排気通路40におけるDPF42とSCR触媒43との間の部分には、尿素インジェクタ45とミキシングプレート47とが設けられている。
酸化触媒41は、排気ガス中のCO及びHCを酸化して無害化する(CO及びHOに変換する)ための触媒であり、例えば、多孔質性の担体と、当該担体に担持された白金やパラジウム等の触媒物質とを有している。DPF42は、排気ガス中のスート(煤)を捕集するためのフィルタである。このDPF42には、フィルタ再生時の高温条件下でスートを燃焼させるための白金等の触媒物質が含まれている。
尿素インジェクタ45は、尿素(本実施形態では、高純度の尿素を純水で水溶化してなる尿素水)を排気通路40内に噴射供給する噴射弁である。尿素インジェクタ45には、尿素水を供給する供給管46aの下流端が接続されている。供給管46aの上流端には、尿素水を貯留する尿素タンク46が接続されている。また、供給管46aには、尿素水を尿素インジェクタ45へ供給するポンプ46Pが設けられている。尿素インジェクタ45から排気通路40内に尿素水が噴射供給されると、この尿素水に含まれる尿素は、基本的に、熱分解反応によってアンモニアとイソシアン酸とに変換され、このイソシアン酸は、加水分解反応によってアンモニアに変換される(図8参照)。こうして生成されたアンモニアは、排気通路40における尿素インジェクタ45よりも下流側の部分に設けられたSCR触媒43に吸着される。
ポンプ46Pは、加圧式のポンプであり、加圧力を発生することで、供給管46aを通して、尿素タンク46に貯留された尿素水を尿素インジェクタ45へ供給する。尚、上記加圧力が停止されると、尿素インジェクタ45の内部及び供給管46a内に存在する尿素水は、尿素タンク46に引き戻される。すなわち、ポンプ46Pは、尿素インジェクタ45へ尿素水を供給するとともに、尿素インジェクタ45に一旦供給された尿素水を尿素タンク46へ回収する動作を実行可能である。
ミキシングプレート47は、排気通路40を前後に仕切る板状の部材であって、排気通路40における尿素インジェクタ45とSCR触媒43との間の部分に設けられている。ミキシングプレート47には、排気ガスの流れを攪拌するための複数の開口が形成されている。このようなミキシングプレート47は、尿素インジェクタ45から排気通路40に噴射供給された尿素水に含まれる尿素を均一に分散させつつ下流側(SCR触媒43)に送出する役割を果たす。
SCR触媒43は、排気ガス中のNOxを還元して浄化する(NOxをNやHOに変換する)ための触媒である。SCR触媒43は、上記の如く尿素から生成されたアンモニアを吸着しかつアンモニアの還元作用によってNOxを還元する触媒金属(本実施形態では、銅)を、多孔質構造のゼオライトの孔内部表面に担持させて構成されたものである。
スリップ触媒44は、SCR触媒43に吸着されずにスリップした(つまりNOxの還元に使われないまま下流側に流出した)アンモニアを酸化するための酸化触媒である。このスリップ触媒44としては、例えば酸化触媒41と同様の構造のものを用いることができる。
排気通路40におけるDPF42とSCR触媒43との間の部分(排気通路40におけるSCR触媒43及び尿素インジェクタ45よりも上流側の部分)には、排気ガスに含まれるNOxの濃度を検出する上流側NOxセンサSN5が設けられている。また、排気通路40におけるSCR触媒43とスリップ触媒44との間の部分(排気通路40におけるSCR触媒43よりも下流側の部分)には、排気ガスに含まれるNOxの濃度を検出する下流側NOxセンサSN6が設けられている。
また、排気通路40におけるNOxセンサSN5よりも下流側の部分であってSCR触媒43の直上流に位置する部分(ミキシングプレート47とSCR触媒43との間の部分)には、排気ガスの温度を検出する排気温センサSN7が設けられている。
本実施形態では、吸気の過給を行うターボ過給機60が設けられている。このターボ過給機60は、排気通路40を流通する排気ガスにより回転駆動されるタービン61と、このタービン61と連動して回転可能に設けられ、吸気通路30を流通する吸気を圧縮(過給)するコンプレッサ62とを有している。コンプレッサ62は、吸気通路30におけるエアクリーナ31とインタークーラ32との間の部分に配置され、タービン61は、排気通路40における酸化触媒41よりも上流側の部分に配置されている。排気通路40には、タービン61をバイパスするためのバイパス通路63が設けられており、このバイパス通路63には開閉可能なウェストゲート弁64が設けられている。
EGR装置70は、排気通路40と吸気通路30とを接続するEGR通路71と、EGR通路71に設けられたEGRクーラ72及びEGR弁73とを有している。EGR通路71は、排気通路40におけるタービン61よりも上流側の部分と、吸気通路30におけるスロットル弁33とサージタンク34との間の部分とを互いに接続している。EGRクーラ72は、例えばエンジン本体1aの冷却水を利用した熱交換器であって、EGR通路71を通じて排気通路40から吸気通路30に還流される排気ガス(EGRガス)を冷却する。EGR弁73は、EGR通路71におけるEGRクーラ72よりも下流側(吸気通路30に近い側)の部分に設けられ、EGR通路71を流通するEGRガスの流量を調整する。
図2に示すように、エンジン1は、エンジン本体1aの運転を制御するECU(Engine ControlUnit)100を備えている。ECU100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラ(プロセッサ)であって、コンピュータプログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)と、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてコンピュータプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力バスと、を備えている。尚、ECU100は、単一のプロセッサで構成されている必要はなく、電気的に互いに接続された複数のプロセッサを含んでいてもよい。例えば、ECU100は、主にエンジン本体1aの運転制御のための第1のプロセッサと、尿素インジェクタ45の作動制御やSCR触媒43の劣化診断等のための第2のプロセッサとを含んでいてもよい。
ECU100には、各種センサによる検出情報が入力される。具体的には、ECU100は、上述したクランク角センサSN1、水温センサSN2、エアフローセンサSN3、吸気圧センサSN4、上流側NOxセンサSN5、下流側NOxセンサSN6、及び排気温センサSN7と電気的に接続されている。これらのセンサSN1〜SN7によって検出された各種情報、すなわち、クランク角及びエンジン回転速度、エンジン水温、吸気流量、吸気圧(過給圧)、SCR触媒43よりも上流側及び下流側における排気ガス中のNOx濃度、並びに排気ガスの温度の情報が、それぞれ信号としてECU100に入力される。
下流側NOxセンサSN6は、第1キャビティと第2キャビティとを有する。第1キャビティで、排気ガス中のHCやCOが酸化されて、NOx以外の気体が取り除かれ、第1キャビティを通過したNOxが、次の第2キャビティで窒素に還元される。このとき、第2キャビティ内では、NOxに由来する酸素が発生する。このように第2キャビティで発生する、NOxに由来の酸素の濃度を検出することで、NOxの濃度が検出される。このように上流側NOxセンサSN5及び下流側NOxセンサSN6では、最初にNOx以外の気体が酸化されるので、アンモニア等も酸化されてNOxとして検出されることになる。本実施形態では、上流側NOxセンサSN5は、下流側NOxセンサSN6と同様の構成のものである。
また、本実施形態では、図2に示すように、上記車両の走行速度を検出する車速センサSN8、上記車両を運転するドライバーにより操作されるアクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサSN9、及び、外気温を検出する外気温センサSN10による検出情報もECU100に入力される。
ECU100は、センサSN1〜SN10からの入力情報に基づいて、種々の判定を行うとともに、エンジン1の各デバイスの制御量を計算する。すなわち、ECU100は、計算した制御量に係る制御信号を、燃料噴射弁15、スロットル弁33、尿素インジェクタ45、ポンプ46P、ウェストゲート弁64、EGR弁73、及び後述の警報ランプ110に出力する。
ECU100内には、主制御部101と、SCR状態推定部102と、ドージング制御部103と、劣化診断部104とが設けられている。主制御部101、SCR状態推定部102、ドージング制御部103、及び劣化診断部104はそれぞれ、上記メモリに記憶されているコンピュータプログラムに従って、ECU100に入力される上記情報(信号)を上記CPUで処理して、後述の如く動作する。ECU100(特にドージング制御部103及び劣化診断部104)は、尿素インジェクタ45の作動を制御するとともにSCR触媒43の劣化診断を行う制御部として機能する。
主制御部101は、エンジン本体1aの燃焼室6内での燃焼を制御する。例えば、主制御部101は、クランク角センサSN1により検出されるエンジン回転速度と、アクセル開度センサSN9の検出値(アクセル開度)から特定されるエンジン負荷(要求トルク)と、エアフローセンサSN3により検出される吸気流量と、に基づいて、燃料噴射弁15からの燃料の噴射量及び噴射タイミングを決定し、その決定に従って燃料噴射弁15を制御する。
また、主制御部101は、上記エンジン回転速度、上記エンジン負荷等に基づいて目標過給圧を設定するとともに、吸気圧センサSN4により検出される吸気圧(過給圧)がこの目標過給圧に一致するように、ウェストゲート弁64の開度を制御する。さらに、主制御部101は、EGR率(気筒2に導入される全ガスに対するEGRガスの割合)の目標値である目標EGR率を、上記エンジン回転速度、上記エンジン負荷等に基づいて設定し、この目標EGR率が実現されるようにスロットル弁33及びEGR弁73の各開度を制御する。
SCR状態推定部102は、SCR触媒43の状態を推定する。SCR状態推定部102は、後に詳細に説明するように、SCR触媒43の温度及びアンモニア吸着量を推定する。したがって、SCR状態推定部102は、SCR触媒43の温度を推定する温度推定手段を構成するとともに、SCR触媒43のアンモニア吸着量を推定する吸着量推定手段を構成することになる。
ドージング制御部103は、尿素インジェクタ45からの尿素水(尿素)の噴射動作の制御であるドージング制御を行う。ドージング制御部103は、後に詳細に説明するように、SCR状態推定部102により推定されるアンモニア吸着量が目標吸着量になるように、かつ、尿素インジェクタ45から排気通路40に噴射供給される尿素の噴射供給速度が目標速度になるように、尿素インジェクタ45の作動を制御する。
劣化診断部104は、上流側NOxセンサSN5及び下流側NOxセンサSN6の検出値からSCR触媒43のNOx浄化率(実浄化率)を算出して、該算出したNOx浄化率に基づいて、SCR触媒43の劣化診断を行う。本実施形態では、劣化診断部104は、理論浄化率も算出して、実浄化率/理論浄化率が所定値を下回ったときに、SCR触媒43が劣化していると判断する。
実浄化率は、
実浄化率=1−(下流側NOx濃度/上流側NOx濃度)
から算出する。
理論浄化率は、上流側NOxセンサSN5の検出値、排気ガスの流量、及び排気ガスの温度から、これらと浄化率との関係を予め実験により定めた浄化率マップ(上記メモリに記憶されている)に従って算出する。排気ガスの流量は、例えば、エアフローセンサSN3により検出される吸気流量やEGR弁73の開度等から推定することができる。排気ガスの温度は、例えば、SCR触媒43に近い位置に配置されている排気温センサSN6による検出値を用いることができる。
劣化診断部104は、SCR触媒43が劣化していると判断した場合、上記車両のドライバーが視認可能な位置(例えばインストルメントパネルにおける計器類が配置された部分)に設けられた警報ランプ110が点灯するように、警報ランプ110に制御信号を出力する。
次に、図3〜図5を参照して、ドージング制御部103によるドージング制御について詳細に説明する。ドージング制御部103は、SCR状態推定部102により推定されたSCR触媒43の温度に応じて、SCR触媒43のアンモニア吸着量の目標値である目標吸着量(図5のQa)を設定する。アンモニアの目標吸着量Qaは、上限吸着量Qxよりも小さい値に設定される。上限吸着量Qxとは、SCR触媒43に吸着させることが可能な上限のアンモニア吸着量であり、飽和吸着量とも呼ばれるものである。SCR触媒43は、その内部温度が高くなるほどアンモニアを吸着し難くなるという性質がある。このため、図5に示すように、上限吸着量Qxのラインは、全体として、高温側(右側)ほど吸着量が少なくなる(右下がりの)傾向を有している。上限吸着量Qxを越える領域は、アンモニアがSCR触媒43をスリップして排気通路40の下流側に流出するアンモニアスリップ領域となる。
上記のような上限吸着量Qxの傾向に合わせて、アンモニアの目標吸着量Qaは、基本的に、SCR触媒43の温度Ts(SCR温度Tsともいう)が高いほど低下する可変的な値に設定される。目標吸着量Qaは、上限吸着量Qx以下の領域で、SCR触媒43において所要のNOx浄化を行い得る適正なアンモニア吸着量である。SCR温度Tsと目標吸着量Qaとの関係を図5のように定めた吸着量マップが、上記メモリに記憶されている。
ドージング制御部103は、SCR状態推定部102により推定されたSCR触媒43の温度から、上記吸着量マップに従って目標吸着量Qaを設定する。そして、ドージング制御部103は、SCR状態推定部102により推定されるアンモニア吸着量が目標吸着量Qaになるように、尿素インジェクタ45の作動を制御する。すなわち、ドージング制御部103は、SCR状態推定部102により推定されるアンモニア吸着量が目標吸着量Qaになるように、尿素水の噴射供給量を決定し、その決定に従って尿素インジェクタ45の作動を制御する。また、ドージング制御部103は、尿素インジェクタ45から排気通40に噴射供給される尿素の噴射供給速度が目標速度になるように、尿素インジェクタ45の作動を制御する。尿素の噴射供給速度(単位:mg/s)は、尿素インジェクタ45から排気通40に噴射供給される尿素水中の尿素の濃度及び尿素水の噴射供給速度から求めることができる。尿素水の噴射供給速度(単位:mg/s)は、上記決定した尿素水の噴射供給量(単位:mg)を、噴射し終えるまでの時間で割ることで求めることができる。さらに、ドージング制御部103は、上記目標速度(単位:mg/s)を、目標吸着量QaとSCR状態推定部102により推定されたアンモニア吸着量(後述の現アンモニア吸着量Qc)との差(目標吸着量Qaから現アンモニア吸着量Qcを引いた値)に応じて設定する。
図3は、ドージング制御の具体的手順を示すフローチャートである。尚、このフローチャートのステップS1及びS3は、SCR状態推定部102において実行され、残りのステップが、ドージング制御部103において実行される。
最初のステップS1で、SCR状態推定部102は、SCR触媒43の温度Tsを推定する。尚、SCR触媒43の温度Tsは、典型的には、SCR触媒43の担体の温度、つまり床温のことである。
図4は、上記ステップS1においてSCR触媒43の温度Ts(SCR温度Ts)を推定する手順を模式的に示す図である(図4では、SCR触媒43のことを単にSCRと略記している)。SCR状態推定部102は、まず、排気温センサSN6により検出されるSCR触媒43の直前の排気ガスの温度と排気ガスの流量とに基づいて、SCR触媒43への入熱量を算出する。上述の通り、排気ガスの流量は、エアフローセンサSN3により検出される吸気流量やEGR弁73の開度等から推定することができる。
また、SCR状態推定部102は、車速センサSN8により検出される車速と、外気温センサSN10により検出される外気温とに基づいて、SCR触媒43からの放熱量を算出する。
そして、SCR状態推定部102は、上記のように算出されたSCR触媒43に対する入熱量及び放熱量と、予め記憶されているSCR触媒43の熱容量とに基づいて、SCR温度Tsを算出(推定)する。SCR温度Tsは、入熱量が大きいか又は放熱量が小さいほど高い値とされ、入熱量が小さいか又は放熱量が大きいほど低い値とされる。ここで、SCR触媒43からの放熱量は、車速が高いほど大きいものとして扱うことができる。これは、車速が高いほどSCR触媒43に吹き当たる走行風が増えて放熱が促進されるからである。逆に、放熱量は、車速が低いほど小さくなるので、SCR温度Tsは、車速が低いほど高いと推定されることになる。
次のステップS2で、ドージング制御部103は、SCR触媒43に吸着させるべきアンモニアの目標吸着量Qaを設定する。具体的には、ドージング制御部103は、上記ステップS1で推定されたSCR温度Tsから、SCR温度Tsと目標吸着量Qaとの関係を定めた上記吸着量マップに従って目標吸着量Qaを設定する。
上記のように、アンモニアの目標吸着量Qaは、SCR温度Tsが高いほど低下する(逆にSCR温度Tsが低いほど高くなる)。但し、このように温度に依存して目標吸着量Qaが変化するのは、図5に示すように、SCR温度Tsが所定の温度範囲(T1よりも高くかつT2よりも低い範囲)に属しているときだけである。SCR温度Tsが温度T1以下となる低温側の範囲では、目標吸着量Qaが一定値Q1に設定され、温度T2以上となる高温側の範囲では、目標吸着量Qaが一律にゼロに設定される。尚、低温側(Ts≦T1)で目標吸着量Qaが一定値Q1とされるのは、Q1程度のアンモニアが吸着されていればNOxの浄化性能が十分に良好になるので、吸着量をQ1よりも更に増やす必要がないからである。
続いて、ステップS3において、SCR状態推定部102は、現時点でSCR触媒43に吸着されているアンモニアの量である現アンモニア吸着量Qcを推定する。現アンモニア吸着量Qcは、これまでの尿素水の噴射供給量の履歴から求めることができる。すなわち、尿素水の噴射供給量の履歴から求められる各時点のアンモニア供給量から、SCR触媒43での各時点のアンモニア消費量(各時点毎にステップS4で算出される)を差し引いた分が、SCR触媒43に都度蓄積されることになるので、この蓄積分を時間ごとに積算したものを現アンモニア吸着量Qcとして算出することができる。
次いで、ステップS4において、ドージング制御部103は、SCR触媒43において消費されるアンモニアの量であるアンモニア消費量Wを推定する。アンモニア消費量Wは、上流側NOxセンサSN5により検出される排気ガス中のNOx濃度と、上記の如く演算により推定される排気ガスの流量(エアフローセンサSN3により検出される吸気流量やEGR弁73の開度等から求められる値)とに基づいて、推定される。すなわち、これらNOx濃度と排気ガスの流量とから、SCR触媒43に流入するNOxの量を算出し、この算出されたSCR触媒43へのNOxの流入量に基づいて、SCR触媒43でNOx還元のために消費されるアンモニアの量、つまりアンモニア消費量Wを推定する。
次のステップS5において、ドージング制御部103は、目標吸着量Qa、現アンモニア吸着量Qc、及びアンモニア消費量Wに基づいて、SCR状態推定部102により推定されるアンモニア吸着量(現アンモニア吸着量Qc)が目標吸着量Qaになるように、尿素インジェクタ45から排気通路40に噴射供給すべき尿素水の噴射供給量を決定する。尿素水の噴射供給量は、目標吸着量Qaと現アンモニア吸着量Qcとの差(Qa−Qc)が大きいほど、また、アンモニア消費量Wが多いほど、大きい値として決定される。
続いて、ステップS6において、ドージング制御部103は、尿素インジェクタ45から排気通路40に噴射供給される尿素の上記目標速度を設定する。本実施形態では、目標速度は、上記ステップS2で設定された目標吸着量Qaと上記ステップS3で推定された現アンモニア吸着量Qcとの差(Qa−Qc)に応じて設定する。目標速度は、目標吸着量Qaと現アンモニア吸着量Qcとの差(Qa−Qc)が大きいほど、大きい値として設定される。
次いで、ステップS7において、ドージング制御部103は、尿素インジェクタ45から排気通路40に噴射供給される尿素水の噴射供給量が、上記ステップS5で決定された噴射供給量になるように、かつ、尿素インジェクタ45から排気通路40に噴射供給される尿素の噴射供給速度が、上記ステップS6で設定された目標速度になるように、尿素インジェクタ45に対して制御信号を出力して、尿素水を噴射供給させる。また、ドージング制御部103は、尿素インジェクタ45からこのような尿素水の噴射供給が可能なように、ポンプ46Pの作動も制御する。
ここで、図8に示すように、尿素インジェクタ45から排気通路40に噴射供給された尿素水中の尿素(液体)は、気化された後、熱分解反応によってアンモニアとイソシアン酸とに分解され、そのイソシアン酸は、加水分解反応によってアンモニアと二酸化炭素とに分解される。このようにしてアンモニアが生成されて、このアンモニアが、多孔質構造のゼオライトの孔内部表面に担持された触媒金属に吸着される。
しかし、尿素インジェクタ45による尿素の噴射供給速度が、その尿素からアンモニアへの反応速度(反応による尿素の減少速度)を上回ると、気化された尿素の一部は、以下の式のように、イソシアン酸と反応してビウレットを生成する。
NHCONH+HNCO→NHCONHCONH
ビウレットは、以下の式のように、イソシアン酸と反応してシアヌル酸とアンモニアとを生成する(図8では、当該反応でアンモニアが生成されることは記載していない)。尚、シアヌル酸は、2種類の互変異性体が存在する(図8参照)。
NHCONHCONH+HNCO→(HNCO)+NH
また、シアヌル酸は、以下の式のように、イソシアン酸からも直接生成される(図8の破線の矢印参照)。
3HNCO→(HNCO)
こうして生成されたビウレット及びシアヌル酸は、SCR触媒43に吸着される。但し、ビウレット及びシアヌル酸は、アンモニアとは異なり、多孔質構造のゼオライトの孔内部表面に担持された触媒金属に吸着されるのではなく、その孔の出入口を塞ぐように吸着される。
尚、シアヌル酸の一部は、イソシアン酸と反応することにより、アンメリド、アンメリンという化合物を経てメラミンを徐々に生成する。このメラミンからアンモニアが徐々に生成される。
上記のようにビウレット及びシアヌル酸がSCR触媒43に吸着された状態で、例えばエンジン本体1aの加速によって排気ガスの温度が高くなった場合(SCR温度Tsが第1所定温度(186℃〜189℃)よりも高くなった場合)、ビウレットは、分解されてシアン酸を生成し、このシアン酸がSCR触媒43から流出して、下流側NOxセンサSN6において酸化によりNOxとされて、NOxとして検出される。また、SCR温度Tsが、第1所定温度よりも高い第2所定温度(320℃〜360℃)よりも高くなった場合、シアヌル酸がSCR触媒43から流出して、下流側NOxセンサSN6において酸化によりNOxとされて、NOxとして検出される。このようにシアン酸やシアヌル酸がNOxとして検出されると、下流側NOxセンサSN6の検出値が上流側NOxセンサSN5の検出値よりも高くなる。この結果、実浄化率は負の値になって、実浄化率/理論浄化率が所定値を下回ることになる。これにより、劣化診断部104は、SCR触媒43が劣化していると判断することになり、誤診断してしまうことになる。
上記のように尿素の噴射供給速度が尿素からアンモニアへの反応速度を上回る場合としては、以下のような場合が考えられる。例えば、SCR温度Tsが、アンモニアの目標吸着量Qaが0に近くなるような温度(T2に近い温度)であるとき(例えば、エンジン本体1aが加速された直後やDPF42のフィルタ再生直後)に、エンジン本体1aの運転を停止したとする。このとき、現アンモニア吸着量Qcも、0に近い値となっている。その後、SCR温度Tsが低下した状態で、エンジン本体1aを再始動すると、目標吸着量Qaが大きい値に設定されるので、目標吸着量Qaと現アンモニア吸着量Qcとの差(Qa−Qc)が大きくなって、目標速度が大きくなる。これにより、ビウレット及びシアヌル酸が生成されて、SCR触媒43に吸着されることになる。そして、エンジン本体1aの加速によって排気ガスの温度が高くなってSCR温度Tsが第1所定温度又は第2所定温度よりも高くなると、SCR触媒43の劣化診断においてシアン酸やシアヌル酸による誤診断が生じることになる。
そこで、上記のような誤診断を抑制するために、予め診断制限条件を設定しておき、劣化診断部104は、SCR状態推定部102により推定されたSCR温度Tsと、尿素インジェクタ45から排気通路40に噴射供給された尿素の噴射供給速度とが、その診断制限条件を満たすか否かを判定して、該診断制限条件を満たす場合には、上記劣化診断を制限する(本実施形態では、劣化診断を停止する)。診断制限条件を満たさない場合には、上記劣化診断を制限しない(本実施形態では、劣化診断を実行する)。
本実施形態では、図6に示すような、診断制限条件を満たすか否かを判定するための判定用マップが、上記メモリに記憶されている。この判定用マップは、SCR温度Ts及び尿素の噴射供給速度によって定められており、境界線Lによって2つの領域(領域A及び領域B)に分けられている。境界線Lよりも大きい領域Aは、尿素の噴射供給速度が尿素からアンモニアへの反応速度を上回る領域であって、上記診断制限条件を満たす領域である。境界線L以下の領域Bは、尿素の噴射供給速度が上記反応速度以下となる領域であって、上記診断制限条件を満たさない領域である。SCR温度Tsが高いほど上記反応速度が大きくなるので、境界線Lは、SCR温度Tsが高いときには、SCR温度Tsが低いときに比べて尿素の噴射供給速度が大きくなるようにされる。尚、図6の判定用マップでは、境界線Lは、SCR温度Tsが高いほど尿素の噴射供給速度が大きくなる直線とされているが、これに限らず、例えば、曲線であってもよく、階段状に変化するものであってもよい。
劣化診断部104は、SCR状態推定部102により推定されたSCR温度Tsと、尿素インジェクタ45から排気通路40に噴射供給された尿素の噴射供給速度とを、上記判定用マップに当てはめて、領域A及び領域Bのいずれの領域に属するかを判定し、領域Aに属する場合には、診断制限条件を満たすと判定する一方、領域Bに属する場合には、診断制限条件を満たさないと判定する。
劣化診断部104は、上記劣化診断を制限(停止)した場合において、SCR状態推定部102により推定されたSCR温度Tsが第3所定温度を超えたときには、上記劣化診断の制限を解除する。上記第3所定温度は、シアン酸及びシアヌル酸の略全てがSCR触媒43から放出されたと考えらる温度であって、上記第2所定温度と略同じであるか、又は、第2所定温度よりも僅かに大きい温度である。
図7は、劣化診断部104におけるSCR触媒43の劣化診断動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS11で、ドージング制御部103から、尿素インジェクタ45からの尿素の噴射供給速度(尿素水の噴射供給速度であってもよく、上記目標速度であってもよい)を入手するとともに、SCR状態推定部102から、推定されたSCR温度Tsを入手する。
次のステップS12で、ステップS11で入手した尿素の噴射供給速度及びSCR温度Tsを、上記判定用マップに当てはめて、上記診断制限条件を満たすか否かを判定する。このステップS12の判定がNOである場合には、ステップS13に進んで、診断実行フラグが立っているか否かを判定する。この診断実行フラグは、上記診断制限条件を満たさなければSCR触媒43の劣化診断を許容するフラグであって、例えば上流側NOxセンサSN5及び下流側NOxセンサSN6が共に活性化されている等といった条件が満たされているときに、診断実行フラグが立つようになっている。
上記ステップS13の判定がNOである場合には、上記ステップS12に戻る一方、ステップS13の判定がYESである場合には、ステップS14に進んで、SCR触媒43の劣化診断を実行し、しかる後に劣化診断動作を終了する。
一方、ステップS12の判定がYESである場合には、ステップS15に進んで、SCR触媒43の劣化診断を停止し、次のステップS16で、SCR温度Tsが上記第3所定温度よりも高いか否かを判定する。
上記ステップS16の判定がNOである場合には、上記ステップS15に戻る一方、ステップS16の判定がYESである場合には、上記ステップS13に進む。
したがって、劣化診断部104は、上記劣化診断動作によって、尿素の噴射供給速度及びSCR温度Tsが上記診断制限条件を満たす(つまり、尿素の噴射供給速度が尿素からアンモニアへの反応速度を上回る)場合には、SCR触媒43の劣化診断を制限(停止)する。このように尿素の噴射供給速度が尿素からアンモニアへの反応速度を上回ってシアン酸及びシアヌル酸が生成されるような条件を満たす場合には、劣化診断を停止することで、シアン酸やシアヌル酸による誤診断を抑制することができる。
劣化診断部104は、上記劣化診断を停止した場合において、SCR温度Tsが第3所定温度を超えたときには、劣化診断の停止を解除して、診断実行フラグが立っていさえすれば、劣化診断を実行する。このようにSCR触媒43の温度が第3所定温度を超えたときには、SCR触媒43に吸着されたシアン酸及びシアヌル酸の略全てがSCR触媒43から放出されたと考えられ、このときに劣化診断の制限を解除しても、シアン酸やシアヌル酸による誤診断が生じることはない。
劣化診断部104は、劣化診断の実行により、実浄化率/理論浄化率が上記所定値以上である場合には、SCR触媒43が劣化していないと判断して、警報ランプ110を消灯状態にする。一方、劣化診断部104は、実浄化率/理論浄化率が上記所定値よりも小さい場合には、SCR触媒43が劣化していると判断して、警報ランプ110を点灯状態にする。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、SCR触媒43の温度を、SCR状態推定部102において推定するようにしたが、これに代えて、SCR触媒43に温度センサ(温度検出手段)を設けて、この温度センサにより、SCR触媒43の温度を検出するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、劣化診断部104は、尿素の噴射供給速度及びSCR温度Tsが診断制限条件を満たす場合には、SCR触媒43の劣化診断を停止するようにしたが、これに限らず、例えば、SCR触媒43が劣化していると判断するための、実浄化率/理論浄化率についての閾値である上記所定値の値を小さい値(負の値であってもよい)に変更することで、劣化診断を制限するようにしてもよい。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
本発明は、上流側NOxセンサ及び下流側NOxセンサの検出値からSCR触媒のNOx浄化率を算出して、該算出したNOx浄化率に基づいて、該SCR触媒の劣化診断を行う制御部を備えた、排気ガス浄化装置の診断装置に有用である。
1 エンジン
4S 排気システム(排気ガス浄化装置)
40 排気通路
43 SCR触媒
45 尿素インジェクタ
100 ECU(制御部)
102 SCR状態推定部(温度推定手段)(吸着量推定手段)
103 ドージング制御部
104 劣化診断部
SN5 上流側NOxセンサ
SN6 下流側NOxセンサ

Claims (4)

  1. エンジンの排気通路に尿素を噴射供給する尿素インジェクタと、
    上記排気通路における上記尿素インジェクタよりも下流側の部分に設けられ、該尿素インジェクタにより該排気通路に噴射供給された尿素から生成されるアンモニアの還元作用によって排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、
    上記排気通路における上記SCR触媒よりも上流側及び下流側の部分にそれぞれ配設され、該上流側及び下流側の部分を流れる排気ガス中のNOxの濃度をそれぞれ検出する上流側NOxセンサ及び下流側NOxセンサと、
    上記尿素インジェクタの作動を制御するとともに、上記上流側NOxセンサ及び下流側NOxセンサの検出値から上記SCR触媒のNOx浄化率を算出して、該算出したNOx浄化率に基づいて、該SCR触媒の劣化診断を行う制御部と、を備えた、排気ガス浄化装置の診断装置であって、
    上記SCR触媒の温度を検出又は推定する温度検出/推定手段を更に備え、
    上記制御部は、上記温度検出/推定手段により検出又は推定された上記SCR触媒の温度と、上記尿素インジェクタから上記排気通路に噴射供給された尿素の噴射供給速度とが、予め設定された診断制限条件を満たすか否かを判定して、該診断制限条件を満たす場合には、上記劣化診断を制限するよう構成されていることを特徴とする排気ガス浄化装置の診断装置。
  2. 請求項1記載の排気ガス浄化装置の診断装置において、
    上記制御部は、上記劣化診断を制限した場合において、上記温度検出/推定手段により検出又は推定された上記SCR触媒の温度が所定温度を超えたときには、上記劣化診断の制限を解除するよう構成されていることを特徴とする排気ガス浄化装置の診断装置。
  3. 請求項1又は2記載の排気ガス浄化装置の診断装置において、
    上記SCR触媒のアンモニア吸着量を推定する吸着量推定手段を更に備え、
    上記制御部は、上記吸着量推定手段により推定されるアンモニア吸着量が目標吸着量になるように、かつ、上記尿素インジェクタから上記排気通路に噴射供給される尿素の噴射供給速度が目標速度になるように、上記尿素インジェクタの作動を制御するよう構成されており、
    更に上記制御部は、上記目標速度を、上記目標吸着量と上記吸着量推定手段により推定されたアンモニア吸着量との差に応じて設定するよう構成されていることを特徴とする排気ガス浄化装置の診断装置。
  4. 請求項3記載の排気ガス浄化装置の診断装置において、
    上記制御部は、上記目標吸着量を、上記温度検出/推定手段により検出又は推定された上記SCR触媒の温度に応じて設定するよう構成されていることを特徴とする排気ガス浄化装置の診断装置。
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