JP2020111843A - 多孔質シート - Google Patents

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Kazufumi Kawahara
一文 河原
前川 知文
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Abstract

【課題】1)湿潤乾燥操作を繰り返しても透気抵抗度が大きく変化しない、2)異方性が小さい、という特徴を同時に満たすことが可能な、微細セルロース繊維を含む高目付、厚膜な多孔質シートを提供する。【解決手段】以下の(1)〜(6)の要件:(1)平均繊維径が2nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維で構成されていること、(2)目付10g/m2あたりの透気抵抗度が7000sec/100ml以下であること、(3)目付が10g/m2以上2000g/m2以下であること、(4)厚みが20μm以上5000μm以下であること、(5)湿潤乾燥前後の透気抵抗度の変化率が100%以下であること、(6)異方性指数(目付10g/m2あたりのシートの縦と横のDry強度比)が1.0以上2.0以下であること、を全て満たす多孔質シート。【選択図】なし

Description

本実施形態は、微細セルロース繊維を含む多孔質シートに関する。
近年、セルロース系繊維を高レベルで叩解、粉砕して、繊維径1μm以下まで微細化(フィブリル化)させた微細セルロース繊維が注目されている。繊維径がナノオーダーになることで比表面積が増大するため、例えば微細セルロース繊維シートに樹脂を含浸させた樹脂複合シートを作製した際、樹脂単独フィルムと比較し熱膨張係数が大幅に低下し、弾性率は増大する。
樹脂複合シートへの使用を考えた場合、微細セルロース繊維シートとしては多孔質体であることが好ましいが、微細セルロース繊維シートを多孔質化することは容易ではない。セルロース系繊維のフィブリル化は基本的に水を多量に含む状態で行われ、最終的に微細セルロース繊維が水中に分散したスラリーの形態で得られる。このスラリーを脱水・乾燥することで微細セルロース繊維シートを作製できる。しかし、1)繊維が高比表面積、2)繊維表面が親水的、3)表面張力の高い溶媒である水のため、乾燥に伴って著しい収縮が発生し、空気透過性のない緻密膜が形成する(角化現象)。そのため、微細セルロース繊維シートの多孔質化は当該分野における一つの重要な課題であり、これまでにも様々な手法が試みられてきた。
特許文献1には、水を含む状態の微細セルロース繊維シートを作製した後、表面張力の低い有機溶剤で置換し乾燥する方法が示されている。特許文献2には水よりも高沸点な有機溶剤を含むエマルジョンを微細セルロース繊維に添加して得た微細セルロース繊維スラリーを抄紙し、有機溶剤も含め乾燥する方法が示されている。
一方、特許文献3では平均繊維径430nmの微細セルロース繊維スラリーを抄紙し、乾燥する方法が示されている。特許文献4ではパルプから微細セルロース繊維を製造する際に疎水化剤を添加して繊維表面が疎水化された微細セルロース繊維を製造し、抄紙・乾燥する方法が示されている。
特開2006−193858号公報 特開2010−53461号公報 国際公開第2016/047764号 特開2016−160554号公報
特許文献1及び2に記載されるシートは、水溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールなどとの樹脂複合シート製造においては、水の揮発に伴うフィルムの乾燥収縮が大きく、樹脂複合シートの反りが発生するため寸法制御させる厳密な工程管理が必要となるという問題がある。すなわち、特許文献1及び2に記載される手法で得られた多孔質シートは、製造直後は多孔質であっても使用時に水でシートが濡れた後乾燥すると乾燥収縮が発生し、緻密化する。したがって、湿潤乾燥操作を経ても多孔質構造が変化しない、具体的には透気抵抗度が変化しないシートが求められる。
また、これらの手法は大量の有機溶剤を使用するため高コストになる他、排気ガス処理が必須であるため工業的生産や環境問題の観点で不利な手法である。したがって、製造プロセスの観点からも排気ガス処理が不要な完全水系での多孔質化が望まれる。
一方、特許文献3及び4に記載される方法は水系で微細セルロース繊維シートを多孔質化する方法であり、さらに得られたシートは湿潤乾燥操作を経ても透気抵抗度は変化しにくい。したがって、これらのシートをもとに製造される樹脂複合シートは反りが小さく、成形体製造の原料として好ましい。しかし、これらの複合樹脂フィルムは低目付、かつ、薄膜であるため、例えばミリメートルオーダーの厚みを要求される自動車用部品への展開を考えると、多数の複合樹脂フィルムを重ねて成形する必要があり、得られる成形体は高コストとなる。したがって、高目付、かつ、厚膜な多孔質シートが望まれていた。
しかし、元来微細セルロース繊維でのシート製造は一般的なパルプと比べ、1)濾水時間が長い、2)乾燥時間が長い、3)乾燥収縮によるシートの歪みが起きやすい等の特徴があり、この傾向は高目付、厚膜なシートになる程顕著となり、生産性が低下するこのような課題に対し、ある一定の生産性を確保するためには微細セルロース繊維の数平均繊維径を大きくする方法が挙げられる。しかし、数平均繊維径が大きくなった場合、得られるシートの微細セルロース繊維の配向が大きくなり、引張強度等の諸物性の異方性が大きくなる。その結果、得られる樹脂複合シートの引張弾性率や熱膨張係数等の諸物性の異方性が大きくなり、最終的に得られる樹脂成形体の異方性の悪化につながる。
本発明が解決しようとする課題は、1)湿潤乾燥操作を繰り返しても透気抵抗度が大きく変化しない、2)異方性が小さい、という特徴を同時に満たすことが可能な、微細セルロース繊維を含む高目付、厚膜な多孔質シート、及びこれを含む樹脂複合シートを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、本開示の構成によれば上記課題が解決しうることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。
[1] 以下の(1)〜(6)の要件:
(1)平均繊維径が2nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維で構成されていること、
(2)目付10g/m2あたりの透気抵抗度が7000sec/100ml以下であること、
(3)目付が10g/m2以上3000g/m2以下であること、
(4)厚みが20μm以上5000μm以下であること、
(5)湿潤乾燥前後の透気抵抗度の変化率が100%以下であること、
(6)異方性指数(シートの縦と横のDry強度比)が1.0以上2.0以下であること、
を全て満たす多孔質シート。
[2] 目付10g/m2あたりの水系Wet強度が0.3kg/15mm以上である上記態様1に記載の多孔質シート。
[3] 目付10g/m2あたりの非水系Wet強度が0.3kg/15mm以上である上記態様1又は2に記載の多孔質シート。
[4] 多孔質化剤を前記微細セルロース繊維質量の0.1質量%以上100質量%以下含む、上記態様1〜3のいずれかに記載の多孔質シート。
[5] 前記多孔質シート中央部の細孔の平均最大長径が10μm以下である、上記態様1〜4のいずれかに記載の多孔質シート。
[6] フィラー材を前記多孔質シート質量の1質量%以上50質量%以下含む、上記態様1〜5のいずれかに記載の多孔質シート。
[7] 多孔質化剤と、微細セルロース繊維と、水とを含むスラリーを調製する調製工程、
該スラリーを抄紙法又は塗工法により湿紙に形成する製膜工程、及び、
該湿紙を少なくとも乾燥させることによって多孔質シートを得る多孔質シート形成工程、を含む、上記態様1〜6のいずれかに記載の多孔質シートの製造方法。
[8] 前記スラリーがブロックポリイソシアネートをさらに含み、
前記多孔質シート形成工程が、前記湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理を含む、上記態様7に記載の多孔質シートの製造方法。
[9] 前記多孔質シート形成工程が、前記湿度を乾燥させた後に行われるカレンダー処理を含む、上記態様7又は8に記載の多孔質シートの製造方法。
[10] 上記態様1〜6のいずれかに記載の多孔質シートを含む、樹脂複合シート。
[11] 前記樹脂複合シートが樹脂として熱可塑性樹脂を含む、上記態様10に記載の樹脂複合シート。
[12] 前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリフェニレンエーテル系樹脂よりなる群から選ばれる、上記態様11に記載の樹脂複合シート。
[13] 上記態様10〜12のいずれかに記載の樹脂複合シートを含む、樹脂成形体。
本発明の一態様によれば、1)湿潤乾燥操作を繰り返しても透気抵抗度が大きく変化しない、2)異方性が小さい、という特徴を同時に満たすことが可能な、微細セルロース繊維を含む高目付、厚膜な多孔質シートが提供される。また本発明の一態様に係る多孔質シートを用いることで、異方性の小さな厚みの大きい樹脂複合シートを製造することが可能であり、さらに該樹脂複合シートから得られる樹脂成形体の異方性も抑制することが可能となる。このような異方性の小さな樹脂成形体は、例えば、自動車における外板のような線膨張係数の異なる複数の部材を組み合わせるような場合において、部品同士の干渉が小さくなるとともに、設計の自由度を向上でき好ましい。
多孔質シートの平均最大長径の算出方法を説明する図である。
以下、本発明を実施するための例示の実施形態(以下「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の多孔質シートは微細セルロース繊維で構成される。本開示で、「微細セルロース繊維」とは、数平均繊維径が2〜1000nmであるセルロース繊維を意味する。
典型的な態様において、微細セルロース繊維は、結晶構造がセルロースI型及び/又はII型を有する。セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型等が知られている。I型及びII型のセルロースは汎用されている一方、III型及びIV型のセルロースは実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。微細セルロース繊維として、樹脂複合シート化をする際の加熱での劣化のしにくさ、高い引張弾性率を有していることから、セルロースI型結晶がより好ましい。
結晶構造はグラファイトで単色化したCuKα(λ=0.15418nm)を用いた広角X線回折より得られる回折プロファイルより同定することが可能である。セルロースI型は2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の2箇所の位置にピークを有する。セルロースII型は2θ=10°〜19°に1つのピークと、2θ=19°〜25°に2つのピークとを有する。セルロースI型及びセルロースII型が混合した場合、2θ=10°〜25°の範囲で最大6本のピークが観測される。
本実施形態の微細セルロース繊維の結晶化度は、好ましくは50%以上である。結晶化度がこの範囲にあると、微細セルロース繊維自体の力学物性(特に強度及び寸法安定性)が高まるため、樹脂複合シートの強度及び寸法安定性が高くなる傾向にある。本実施形態の微細セルロース繊維の結晶化度は、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは65%であり、最も好ましくは70%である。微細セルロース繊維の結晶化度は高いほど好ましい傾向にあるので、上限は特に限定されないが、生産上の観点から99%が好ましい上限である。
結晶化度は、微細セルロース繊維がセルロースI型結晶(天然セルロース由来)である場合には、サンプルを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10〜30)からSegal法により、下記式(1)で求められる。
結晶化度(%)=[I(200)−I(amorphous)]/I(200)×100 式(1)
(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
また結晶化度は、微細セルロース繊維がセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 とから、下記式(2)によって求められる。
結晶化度(%) =h1 /h0 ×100 式(2)
微細セルロース繊維の重合度(DP)は、100以上12000以下であることが好ましい。重合度はセルロース分子鎖を形成する無水グルコース単位の繰返し数である。微細セルロース繊維の重合度が100以上であることで、微細セルロース繊維自体の引張破断強度及び弾性率が向上し、樹脂複合シートの高い引張破断強度及び熱安定性が発現するため好ましい。微細セルロース繊維の重合度に特に上限はないが、12000を超える重合度のセルロースは実質的に入手が困難であり、工業的な利用が難しい傾向がある。取扱性及び工業的実施の観点から、微細セルロース繊維の重合度は、150〜8000が好ましい。重合度は、まず、銅エチレンジアミン溶液を用いたセルロース希薄溶液の極限粘度(JIS P 8215:1998)を求めた後、セルロースの極限粘度と重合度DPとが下記式(3)の関係であることを利用して、重合度DPとして求められる。
極限粘度[η]=K×DPa (3)
ここでK及びaは高分子の種類によって決まる定数であり、セルロースの場合、Kは5.7×10-3、aは1である。
本実施形態の微細セルロース繊維は化学修飾されていてもよい。例えば、微細セルロース繊維の表面に存在する水酸基が酢酸エステル、硝酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル等にエステル化されたもの(エステル化微細セルロース繊維)、メチルエーテルを代表とするアルキルエーテル、カルボキシメチルエーテルを代表とするカルボキシエーテル、シアノエチルエーテル等にエーテル化されたもの(エーテル化微細セルロース繊維)、シランカップリング剤でシリルエーテル化されたもの(シリル化微細セルロース繊維)、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル)酸化触媒によって6位の水酸基が酸化され、カルボキシル基(酸型、塩型を含む)となったもの(カルボキシル化微細セルロース繊維)が挙げられる。化学修飾されることにより、樹脂と微細セルロース繊維との親和性が増し、多孔質シート、及びこれを含む樹脂複合シートの引張破断強度、熱安定性が向上する。かかる化学修飾としては、反応プロセスの簡略化の観点、および、微細セルロース繊維自体の耐熱性向上の観点から、好ましくはエステル化、より好ましくはアセチル化である。
化学修飾は微細セルロース繊維の一部(例えば、内部、表面のいずれか)、又は全部(例えば、内部及び表面の両方)で生じてよいが、化学修飾を微細セルロース繊維の一部のみで生じさせることで、微細セルロース繊維にセルロース骨格を残存させることができる。例えば、微細セルロース繊維の表面のみを化学修飾し、中心部にセルロース骨格を残存させることができる。微細セルロース繊維の一部が化学修飾されており、かつ該微細セルロース繊維が結晶構造(典型的にはI型及び/又はII型、好ましくはI型)を有する場合、セルロース由来の高い引張破断強度及び寸法安定性が保持されつつ、化学修飾による耐熱性の向上及び樹脂複合シートにおける樹脂と微細セルロース繊維の親和性の向上、多孔質シート、及びこれを含む樹脂複合シートの寸法安定性の向上を実現でき、より好ましい。
本実施形態の微細セルロース繊維は数平均繊維径が2nm以上1000nm以下、好ましくは10nm以上800nm以下、より好ましくは20nm以上500nm以下、さらに好ましくは20nm以上400nm以下、特に好ましく30nm以上300nm以下である。この範囲は、シートの強度及び寸法安定性の保持、微小かつ均一な孔径形成において有利である。微細セルロース繊維の数平均繊維径が2nm未満である場合、多孔質シート製造における乾燥工程において、微細セルロース繊維同士の凝集による角化が起きやすく、所望の多孔度の多孔質シートが得られない。一方、微細セルロース繊維の数平均繊維径が1000nm超の場合、樹脂と微細セルロース繊維の界面が少ないためフィラーとしての効果が小さく、多孔質シート、及びこれを含む樹脂複合シートの所望の引張破断強度及び熱安定性(具体的には、低い線熱膨張率、及び高温時の弾性保持)が得られない。
本実施形態の微細セルロース繊維の繊維径は、比表面積から算出される比表面積相当径を使用する。本開示で、比表面積相当径とは、窒素吸着によるBET法で得られる比表面積から算出される径である。
比表面積相当径は、微細セルロース繊維の水分散体をtBuOHで溶媒置換した後乾燥させて多孔質シートを作製し、当該多孔質シートを窒素吸着によるBET法を用いて測定して得られる比表面積から算出される。比表面積と比表面積相当経の関係は、微細セルロース繊維をi)微細セルロース繊維間の凝集が全く起こっていない理想状態であり、ii)セルロース密度がd(g/cm3)、径がD(nm)である円柱と仮定したとき、下記式(4)で表される。
比表面積(m2/g)=4000/(dD) 式(4)
そして、セルロース密度を1.50g/cm3とすると、比表面積相当径は下記式(5)で表される。
D(nm)=2667/比表面積(m2/g) 式(5)
微細セルロース繊維の数平均繊維長は特に限定されるものではないが、好ましくは200nm以上、より好ましくは500nm以上、さらに好ましくは1000nmである。
微細セルロース繊維の数平均繊維長(L)/数平均繊維径(D)の比(L/D)は、好ましくは30以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上、さらにより好ましくは300以上、最も好ましくは500以上であり、また好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下である。数平均繊維長(L)/数平均繊維径(D)の比L/Dが30以上であると、微細セルロース繊維が高度に絡み合い、得られるシートの自立性が高く、多孔質シートを容易に得ることができる。一方、5000以下であると、多孔質シートを連続的に製造したときに微細セルロース繊維の多孔質シート内での著しい配向が生じず、多孔質シート、及びこれを含む樹脂複合シートの引張破断強度や熱安定性の異方性が小さく、自動車部品等の用途において好ましい。
微細セルロース繊維のL/Dは、微細セルロース繊維の水分散液を高剪断ホモジナイザー(例えば日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×5分間で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、高分解能走査型顕微鏡(SEM)又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測して求める。具体的には、少なくとも100本の微細セルロース繊維が観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ100本の微細セルロース繊維の数平均繊維長及び数平均繊維径を計測する。この値から個々の微細セルロース繊維のL/Dを算出し、その平均値がL/Dとなる。
本実施形態の微細セルロース繊維は、一部に繊維径1μm〜30μmの太い幹から繊維径2〜1000nmの細い枝が分岐している枝分かれ構造を有する微細セルロース繊維が含まれることが、好ましい。
元来、微細セルロース繊維での厚膜シート製造は一般的なパルプと比べ、1)濾水時間が長い、2)乾燥時間が長い、3)乾燥収縮によるシートの歪みが起きやすい等の特徴があり、この傾向は高目付、厚膜なシートになる程顕著となり、生産性が低下する。このような課題に対し、ある一定の生産性を確保するためには微細セルロース繊維の数平均繊維径を大きくすることが求められる。
一方で、多孔質微細セルロース繊維シートが高比表面積であることは微細セルロース繊維複合化シートの引張破断強度や熱安定性を向上させる上で重要である。
したがって、前記の枝分かれ構造を有する微細セルロース繊維はこれらの課題を解決するに適している。
枝分かれ構造を有する微細セルロース繊維の存在の確認手法として、特に限定されるものではないが、例えば水又は水溶性有機溶媒に分散させた微細セルロース繊維を高剪断ホモジナイザー(例えば日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×5分間で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、親水化処理をしたSi基板上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、走査型顕微鏡(SEM)で2000倍の倍率(視野サイズは60μm×60μmとなる)で10視野観察する。10視野のうち、前記枝分かれ構造を有する微細セルロース繊維が1視野以上確認されることが好ましく、より好ましくは2視野以上、さらに好ましくは3視野以上である。
本実施形態の多孔質シートはシート目付Wが10g/m2以上3000g/m2以下、好ましくは41g/m2以上2000g/m2以下、より好ましくは100g/m2以上1000g/m2以下、さらに好ましくは200g/m2以上1000g/m2以下である。10g/m2以下であると厚みのある樹脂成形体製造において多数のシートを積層する必要があり、樹脂成形体が高コストになるため現実的でない。また、3000g/m2を超えると多孔質シート製造の抄紙工程において、濾水や乾燥に極めて時間を要するため、工業生産上、好ましくない。目付の評価は室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管したサンプルを20cm×20cmに裁断し(面積0.04m2)、質量W1(g)を計測し、下記式(6)より算出する。
目付W(g/m2)=W1/0.04 式(6)
本実施形態の多孔質シートは、厚みが20μm以上5000μm以下、好ましくは50μm以上3000μm以下、より好ましくは100μm以上2000μm以下、さらに好ましくは100μm以上1000μm以下である。50μmよりも薄いと多孔質シートをピンホール無く均一に製膜することが困難となる。一方、5000μmを超えると、多孔質シート製造の抄紙工程において、濾水や乾燥に極めて時間を要するため、工業生産上好ましくない。
厚みの測定方法は23℃、50%RHの環境で1日静置した多孔質シート(20cm×20cm)に対して、任意の10点を接触式膜厚計で測定し、その数平均値を厚み(μm)とする。
本実施形態の多孔質シートは目付10g/m2あたりの平均透気抵抗度が、7000sec/100ml以下であり、好ましくは1sec/100ml以上6000sec/100ml以下、より好ましくは1sec/100ml以上5000sec/100ml以下、さらに好ましくは10sec/100ml以上4000sec/100ml、さらにより好ましくは100sec/100ml以上3000sec/100ml、最も好ましくは200sec/100ml以上2000sec/100mlである。透気抵抗度が7000sec/100mlを超えるものは空孔率が低くなり、多孔質シート中への樹脂含浸が困難となり樹脂複合シートを作製できず、好ましくない。また、多孔質シートの性質上透気抵抗度は低い方が好ましいものの、ネットワークの微細性から透気抵抗度は1sec/100mlよりも小さなものは作り難いため、目付10g/m2あたりの平均透気抵抗度は1sec/100ml以上であることが好ましい。
透気抵抗度とは100mlの空気がシートを通過するのに要する時間であり、数値が大きいほど緻密といえる。測定には王研式透気抵抗試験機(例えば旭精工(株)製、型式EG01)を用いる。一つのシートサンプル(20cm×20cm)に対して異なる位置で10点の測定を室温で行い、その平均値を平均透気抵抗度(AR)とする。なお、この時、予め測定していた原紙(すなわち試験前のシート)の目付Wを用いて下記式(7)より10g/m2目付あたりの値として算出する。
目付10g/m2あたり透気抵抗度=AR/W×10 式(7)
本実施形態の多孔質シートは、湿潤乾燥操作前後での透気抵抗度変化率が小さく、多孔質保持性に優れる。具体的には湿潤乾燥操作前後での透気抵抗度の変化率が100%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。変化率が100%以上であると、例えば水溶性樹脂を多孔質シートに含浸させて樹脂複合シートを製造する際、樹脂複合シートの収縮が著しく、均一な膜厚の樹脂複合シート製造が困難であるため、好ましくない。一方、変化率の下限値は特になく、変化率は小さいほど好ましい。
湿潤乾燥操作とは、静置した多孔質シートに対しシート水分率が300質量%以上400質量%以下になるように水を均一に掛けた後、オーブンで乾燥する操作のことをいう。この操作前後でシートの透気抵抗度を測定し、その変化を透気抵抗度の変化率とする。なお、シート水分率は下記式(8)より初期シート質量W2及び湿潤シート質量W3を用いて算出する。
シート水分率=(W3−W2)/W2×100 式(8)
具体的な測定方法は、23℃、50%RHの環境で1日静置した多孔質シート(20cm×20cm)を5cm×5cmに裁断し、そこから5枚を選ぶ。この5枚のサンプルに対してそれぞれ1点ずつ透気抵抗度を測定し、その測定場所に印をつける。この透気抵抗度を初期透気抵抗度R1とし、5枚の平均値をAR1とする。つづいて、そのサンプルを金属プレート上に置き、霧吹きで水を万遍なくかけ、サンプル周囲に付着した水滴を拭き取る。この湿潤操作前後でのシート質量を測定し、式(8)に従いシート水分率を測定する。この時の水分率が300質量%以上400質量%以下である事を確認した後、80℃のオーブンにて1時間乾燥させ、印をつけた場所の透気抵抗度を再度測定した。この透気抵抗度を操作後透気抵抗度R2とし、5枚のサンプルの平均値をAR2とする。最終的に下記式(9)より透気抵抗度変化率(%)を算出する。
透気抵抗度変化率(%)=(AR2−AR1)/AR1×100 式(9)
本実施形態の多孔質シートは目付10g/m2あたりのDry強度が0.4kg/15mm以上が好ましく、0.5kg/15mm以上がより好ましく、0.6kg/15mm以上がさらに好ましい。0.4kg/15mm以上の場合、シート作製時の取り扱いが容易であり、特に連続生産においてシート乾燥・巻取工程において破断が発生しにくく好ましい。一方、本実施形態の多孔質シートのDry強度の上限値は特にないが、実現可能性の観点からは目付10g/m2あたり例えば10.0kg/15mm以下である。
Dry強度の測定方法としては、まず室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管したサンプル(20cm×20cm)の目付(W)を前記の手法で測定する。次に、15mm幅に裁断し、引張試験機を用いてチャック間距離100mm、引張速度10mm/minとして10点の引張強度を測定し、その平均値をDry強度(DS)とする。この時、予め測定していた原紙の目付(W)を用いて下記式(10)より10g/m2目付あたりの値(kgf/15mm)として算出する。
10g/m2目付あたりDry強度(kgf/15mm)=DS/W×10 式(10)
本実施形態の多孔質シートは異方性指数が2.0以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.3以下、さらにより好ましくは1.2以下、最も好ましくは1.1以下である。異方性指数は1.0以上であり、小さいほど好ましい。2.0よりも大きいと樹脂複合シートを製造した際の各種物性の異方性が大きくなり、最終的に樹脂成形体の異方性が大きく、好ましくない。
異方性指数とは目付10/m2あたりの多孔質シートの縦と横のDry強度の比であり(異方性指数が1.0以上になるようにより大きいDry強度を小さいDry強度で除する)、1.0の時に異方性が無い状態とし、1.0より大きいと異方性があるとみなす。なお異方性指数の測定に際し、上記の縦及び横の方向は、当該異方性指数の値が最も大きくなるように選択される。例えば連続抄紙の時には紙の進行方向に平行な紙の方向が「縦」、紙の進行方向に垂直な紙の方向が「横」となり、縦のDry強度が大きくなる。
本実施形態の多孔質シートは、目付10g/m2あたりの水系Wet強度が0.3kg/15mm以上であることが好ましく、0.4kg/15mm以上がより好ましく、0.5kg/15mm以上がさらに好ましい。0.3kg/15mm以上の場合、含浸する樹脂が水溶性であって水溶液として樹脂複合シート製造時に多孔質シートが破断しにくくなるため、使用及び製造が容易である。一方、本実施形態の多孔質シートの水系Wet強度の上限値は特にないが、実現可能性の観点からは目付10g/m2あたり例えば6.0kg/15mm以下である。
水系Wet強度の測定方法としては、まず室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管したサンプル(20cm×20cm)の目付(W)を上述の方法で測定する。次に、15mm幅に裁断し、15mm幅試験片中央50mmを水に10秒間浸漬させる。つづいて、横型引張試験機を用いてチャック間距離100mm(濡れた50mmが中央になるように配置)、引張速度10mm/minで10点の引張強度を濡れた状態で測定し、その平均値を水系Wet強度(WS)とする。この時、予め測定していた原紙の目付(W)を用いて下記式(11)より10g/m2目付あたりの値(kgf/15mm)として算出する。
10g/m2目付あたり水系Wet強度(kgf/15mm)=WS/W×10 式(11)
本実施形態の多孔質シートは、目付10g/m2あたりの非水系Wet強度が0.3kg/15mm以上であることが好ましく、0.4kg/15mm以上がより好ましく、0.5kg/15mm以上がさらに好ましい。0.3kg/15mm以上の場合、例えば含浸する樹脂及び溶媒が疎水性である樹脂複合シート製造時に多孔質シートが破断しにくくなるため、使用及び製造が容易である。一方、本実施形態の多孔質シートの非水系Wet強度の上限値は特にないが、実現可能性の観点からは目付10g/m2あたり例えば8.0kg/15mm以下である。なお、ここでいう非水系液体とはメチルセロソルブのことである。
非水系Wet強度の測定方法としては、水系Wet強度の測定方法の溶媒をメチルセロソルブに変更する以外は同じ方法を用いる。10点の引張強度の平均値を非水系Wet強度(NWS)とし、10g/m2目付あたり非水系Wet強度(kgf/15mm)は予め測定していた原紙の目付(W)を用いて下記式(12)より算出する。
10g/m2目付あたり非水系Wet強度(kgf/15mm)=NWS/W×10 式(12)
本実施形態の多孔質シートは、より好ましくは多孔質構造が均一である。具体的には、多孔質シートの断面SEM観察用サンプルを作製し、倍率5000倍でSEM観察を10視野行う。得られた10枚の断面SEM像より、それぞれ多孔質シート中央部の細孔の中で最も大きな長径を計測した後、10枚の平均値(平均最大長径)を算出する。この平均最大長径が小さいほど多孔質構造が均一であると見なすことができる。多孔質シート中央部とは、多孔質シート断面を厚み方向に4等分した時(表層部1−中央部1−中央部2−表層部2)、表層部1及び2を除いた部分を指す。4等分はシート左右端をそれぞれ4等分になるようマークし、お互いを結び、分割することで行う(図1参照)。例えば、多孔質シート厚みが20μmの場合、両側の表層部5μmを除いた10μmを多孔質シート中央部とする。
本実施形態の多孔質シートは平均最大長径が10μm以下、好ましくは8μm以下、より好ましくは6μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。平均最大長径が10μmを超えると、樹脂複合シート作製時に微細セルロース繊維を含まない樹脂の領域が増えるため、微細セルロース繊維複合化によって得られる低熱膨張化や高弾性率化等の効果が限定的となり好ましくない。
本実施形態の多孔質シートの空孔率は20%以上90%以下であることが好ましい。空孔率が20%以上であれば、多孔質とみなすことができ、樹脂が多孔質シート内に含浸可能である。一方、空孔率が90%以下であれば、多孔質シートに可とう性があり、樹脂複合シート製造が容易である。
空隙率とは多孔質シート中における空隙の体積率を意味する。空隙率は、多孔質シートの面積、厚み及び質量から、下記式(13)によって求めることができる。
空隙率(体積%)={(1−B/(M×A×t)}×100 式(13)
ここで、Aは多孔質シート面積(cm2)、tは厚み(cm)、Bは多孔質シート質量(g)、Mはセルロースの密度(本実施形態では1.5g/cm3)とする。
本実施形態の多孔質シートの比表面積は、好ましくは1m2/g以上500m2/g以下、より好ましくは1m2/g以上300m2/g以下、さらに好ましくは1m2/g以上200m2/g以下、さらにより好ましくは1m2/g以上100m2/g以下、特に好ましくは2m2/g以上90m2/g以下、最も好ましくは3m2/g以上80m2/g以下である。上記比表面積は、窒素ガス吸着法で測定したBET比表面積を意味する。多孔質シートの比表面積が1m2/g以上であれば、多孔質とみなすことができ、樹脂複合シート製造が可能になる。一方、500m2/g以下であれば、多孔質シートの製造が容易である。
本実施形態の多孔質シートは、1層以上の当該多孔質シート(微細セルロース繊維層として)と1層以上の基材シート層(以下、基材シートということもある。)とを有する多孔質積層シートの形態で提供されてもよい。典型的な態様において、基材シート層は多孔質である。例えば、基材シート層上に微細セルロース繊維層が配置された多孔質積層シート、微細セルロース繊維層が基材シート層に挟まれた3層以上からなる多孔質積層シート、基材シート層の両面に微細セルロース繊維層が配置された多孔質積層シートが挙げられる。また、多孔質積層シート中に2層以上の基材シート層、或いは、2層以上の微細セルロース繊維層が含まれる場合には、2種類以上の基材シート層、或いは、2種類以上の微細セルロース繊維層で構成されていても良い。
本実施形態の基材シートの形態はシート状で有ればよく、織物、編物、長繊維不織布、短繊維不織布、微多孔膜等の形態が挙げられる。
基材シートを構成する織物、編物、長繊維不織布、又は短繊維不織布の構成繊維としては特に限定されるものではないが、例えば、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、セルロース誘導体繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、これらの繊維の混紡糸等が挙げられる。また、これらの繊維は単独又は複数用いられても良い。
微多孔膜としては特に限定されるものではないが、再生セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
以下、本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートの製造方法の例について説明するが、特にこの方法に限定されるものではない。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートはシート中に多孔質化剤を含んでいても良い。多孔質シート中に含まれる多孔質化剤の量又は多孔質積層シート中に含まれる多孔質化剤の量はそれぞれ、多孔質シート中又は多孔質積層シート中の、微細セルロース繊維質量の0.1質量%以上100質量%以下が好ましく、0.1質量%以上50質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
通常、水と微細セルロース繊維のみからなる微細セルロース繊維スラリーを抄紙、乾燥させると緻密膜が形成する。これに対し、多孔質化剤を含むスラリーを抄紙、乾燥すると多孔質シートとなる。また、乾燥後も多孔質化剤がシート中に残存するため、湿潤乾燥操作を行っても透気抵抗度の上昇を抑えることができる。多孔質化剤の量が0.1質量%以上の場合、多孔質化剤量が十分であり、所望の透気抵抗度を良好に達成できる。100質量%以下の場合、細孔が多孔質化剤で埋まることによる透気抵抗度の上昇を回避でき、また、液体状の多孔質化剤がシートから染み出さず連続生産において好ましい。
多孔質化剤としては、微細セルロース繊維シートを多孔質化できる種々の化合物を使用でき、具体的には1)大気圧下での沸点が250℃以上、好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上であって、2)水に溶解しない化合物が好ましい。シート製造の乾燥工程の温度は通常250℃未満であり、多孔質化剤の沸点が大気圧下で250℃以上であれば、乾燥工程で気化しにくいため、排気設備等の導入が不要となり、連続生産における負荷を軽減できる。一方、沸点の上限は特にないが、実現可能性の観点からは例えば400℃以下であってよい。
ここでいう「水に溶解しない」とは、固形分1質量%にした多孔質化剤の水分散体が23℃において白濁している、又は、水層と油層に分離することを意味する。具体的には100mlガラスバイアルにイオン交換水99g、多孔質化剤(固形分100質量%)1gを添加した後、50℃に温調しながらマグネチックスターラー750rpmで1時間撹拌した後、23℃まで降温して撹拌を止めた状態での濁度及び外観から判断する。まず、目視において2層に分離しているかを確認し、2層に分離していれば「水に溶解しない」と判断する。また、2層に分離していない場合は濁度計を用いて濁度を測定し、濁度が1NTU以上の場合を「水に溶解しない」と判断する。濁度は1NTU以上が好ましく、3NTU以上がより好ましく、5NTU以上がさらに好ましく、10NTU以上が極めて好ましい。濁度の測定方法としては、濁度計(例えばTN100(Eutech製))を用い、測定バイアルに泡が入らないように10ml入れて測定する。なお、多孔質化剤の固形分が100質量%未満の場合は、最終の水分散体が1質量%となるようにイオン交換水の添加量を調整する。
微細セルロース繊維スラリー中においては、多孔質化剤はスラリー中で溶解しないため油滴として存在し、その油滴の周りを微細セルロース繊維が覆っていると思われる。そして、抄紙時に一部又は全ての油滴がシート上に残存し多孔質化すると考えられる。したがって、水中で液滴として存在しうること、すなわち水に溶解しないことが多孔質化剤として望まれる。この液滴としてはリン脂質のような水中で自己集合してベシクル構造を形成し、白濁するような形態でも使用することができる。また、静置すると完全に相分離するような場合であっても、ミキサー等で強撹拌することで液滴として存在できるため使用できる。さらに、水に溶解しない疎水的な化合物を界面活性剤等で強制乳化させ、水中でも安定した液滴であっても使用できる。一方、多孔質化剤が水に完全に溶解した場合、抄紙時にほとんどの多孔質化剤はろ液として流出するため、多孔質化剤が微細セルロース繊維に留まらず、多孔質化剤として良好に機能しない。
多孔質化剤としては、前記の特徴を備えている種々の化合物を使用できるが、炭化水素基又はパーフルオロアルキル基又はオルガノシロキサン構造の3種類のうち1種類以上を化合物の骨格中に含んでいると好ましく、中でも炭化水素基を含む化合物は樹脂複合体を製造する上で樹脂との親和性に優れるためより好ましい。化合物中に上記3種類のうち1種類だけが含まれていてもよく、2種類以上が同時に含まれていても良い。また、化合物は低分子化合物でも高分子化合物でも良い。
上記の炭化水素基としては、水に対する溶解性が低くかつ樹脂との親和性に優れるという観点で、炭素数が2〜40の基が好ましい。炭化水素基は、飽和又は不飽和の脂肪族基(直鎖状、分岐状若しくは脂環式)、芳香族基、又はこれらの組合せであってよい。
上記のパーフルオロアルキル基としては、水に対する溶解性が低くかつ樹脂との親和性に優れるという観点で、炭素数が、1〜10、例えば1〜8、特に1〜6、特別には4又は6である基が好ましく、例えば、−CF3、−CF2CF3、−CFCFCF、−CF(CF32、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF32、−C(CF33、−(CF24CF3、−(CF22CF(CF32、−CF2C(CF33、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF25CF3、−(CF23CF(CF32、−(CF24CF(CF32、−(CF27CF3、−(CF25CF(CF32、−(CF26CF(CF32、−(CF29CF3等が挙げられる。
上記のオルガノシロキサン構造としては、水に対する溶解性が低くかつ樹脂との親和性に優れるという観点で、平均組成が一般式(1):
1 aSiO(4-a)/2 (1)
[式中、R1は、分子中で同一でも異なっていてもよく、水素原子、水酸基、炭素数1〜20の置換又は非置換の1価の炭化水素基、及び炭素数1〜20の置換又は非置換のアルコキシ基から選択され、aは、1.0〜3.0の自然数である。]
で表される構造が好ましい。
一般式(1)のR1は、水に対する溶解性が低くかつ樹脂との親和性に優れるという観点で、非置換の1価の炭化水素基であることが好ましいが、この場合の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピル等のアラルキル基をあげることができる。
1が、置換の1価の炭化水素基である場合の炭化水素の置換基の例としては、アミノ基、アミノアルキル基、ハロゲン原子、ニトリル基、ポリオキシアルキレン基等をあげることができる。アルコキシ基としては、炭素数1〜3のメトキシ基、エトキシ基、プロピル基を挙げることができる。
一般式(1)のaは、ポリシロキサンのケイ素原子に結合するR1の平均数を示すもので、1.0〜3.0である。平均組成が一般式(1)で表されるオルガノシロキサン分子構造は直鎖のみならず、分岐する構造を有していても良いが、好ましくは、直鎖型の構造を有するものである。多孔質化剤がオルガノシロキサンである場合の好ましい具体例として、トリメチルシロキシ末端ジメチルシリコーン、ヒドロキシ末端ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシロキサンを挙げることができ、トリメチルシロキシ末端ジメチルシリコーン、及びヒドロキシ末端ジメチルシリコーンが好ましい。
本実施形態の多孔質化剤は前記炭化水素基、パーフルオロアルキル基、及び/又はオルガノシロキサン構造を含む、ビニル系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマー及びスチレン系モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマー単位を含む高分子化合物であっても良く、高分子化合物骨格中に2種類以上のモノマー単位が同時に含まれていても良い。
炭化水素基を含むモノマーとして、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロデシルメチル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、芳香環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
パーフルオロアルキル基を含むモノマー及びオルガノシロキサン構造を含むモノマーとして、特に限定されないが、例えば、以下のものを例示できる。
CH2=CR'COOCH2CH2Rf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH2CH2CH3)CORf、
CH2=CR'COOCH(CH3)CH2Rf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH3)SO2Rf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH3)CORf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH2CH3)SO2Rf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH2CH3)CORf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH2CH2CH3)SO2Rf、
CH2=CR'COOCH(CH2Cl)CH2OCH2CH2N(CH3)SO2Rf。
[上記式中、R'は、水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基であり、Rfは、前記パーフルオロアルキル基又は前記オルガノシロキサン構造である。]
本実施形態の多孔質化剤は前述の炭化水素基、パーフルオロアルキル基、及び/又はオルガノシロキサン構造を化合物中に1つ以上含む両親媒性化合物であっても良い。両親媒性化合物とは分子骨格中に疎水ブロックと親水ブロックを同時に含む化合物のことを言う。疎水ブロックに相当する部分としては前記の炭化水素基、パーフルオロアルキル基、オルガノシロキサン構造及びこれらを含む高分子構造が挙げられる。親水ブロックに相当する部分としては親水性官能基を含む構造や親水性高分子構造が挙げられる。
なお、両親媒性化合物が高分子の場合、重合形態は特に限定されるものではないが、例えばブロック共重合体、グラジエント共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、テーパード共重合体、周期共重合体が挙げられる。中でもブロック共重合体及びグラフト共重合体は水中で自己乳化し、白濁しやすいため好ましい。
上記の親水性官能基としては、特に限定されないが、水酸基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基或いは、−OM、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、または−M2PO4で表される基(Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す)、1〜3級アミン及び4級アンモニウム塩(カウンターアニオンとして水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、硝酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート等)等が挙げられる。本実施形態の多孔質化剤は分子骨格中にこれらの親水基を1つ以上含んでいて良く、また、2種類以上の異なる親水基を同時に含んでいても良い。
上記の親水性高分子構造として、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリビニルピリジン、セルロース、デキストラン、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メチレンエーテル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)(メタ)アクリレート系モノマーの重合体等の重合体の構造が挙げられる。本実施形態の多孔質化剤は分子骨格中にこれらの親水性高分子構造を1つ以上含んでいて良く、また、2種類以上の異なる親水性高分子を同時に含んでいても良い。
(メタ)アクリレート系モノマーとして、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート;(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル(メタ)アクリレート等のグリコールエーテル系(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルグリシジルエーテル、(メタ)アクリロイロキシエトキシエチルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、及びそれらイソシアネートのε−カプロラクトンやメチルエチルケトオキシム、ピラゾール等でイソシアネートをブロックしてあるモノマー等のイソシアネート基含有(メタ)アクリレート;オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有環状(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート及びその4級アンモニウム型等が挙げられる。なお、上記における「ポリ」及び「(ポリ)」は、いずれもn=2以上を意味する。
本実施形態における炭化水素基を含む両親媒性化合物において、親水基としては大きく分けてイオン性基(アニオン性、カチオン性、両性)とノニオン性基の2種類が挙げられる。
アニオン性基及び炭化水素基を有する両親媒性化合物として、特に限定されないが、例えば以下の化合物が挙げられる。
(1)直鎖状又は分岐鎖状のアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(2)直鎖状又は分岐鎖状のアルカンスルホン酸塩。
(3)α−オレフィンスルホン酸塩。
(4)直鎖状又は分岐鎖状のアルキル硫酸塩又はアルケニル硫酸塩。
(5)アルキレンオキシドが平均0.5〜10モル付加された、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルエーテル硫酸塩又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を有するアルケニルエーテル硫酸塩;ただし、前記アルキレンオキシドとしては、好ましくは、炭素数2〜4のアルキレンオキシドのいずれか、又はエチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)とが混在したもの(モル比でEO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)が挙げられる。
(6)アルキレンオキシドが平均3〜30モル付加された、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルフェニルエーテル硫酸塩又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を有するアルケニルフェニルエーテル硫酸塩;ただし、前記アルキレンオキシドとしては、好ましくは、炭素数2〜4のアルキレンオキシドのいずれか、又はEOとPOとが混在したもの(モル比でEO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)が挙げられる。
(7)アルキレンオキシドが平均0.5〜10モル付加された、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルエーテルカルボン酸塩又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を有するアルケニルエーテルカルボン酸塩;ただし、前記アルキレンオキシドとしては、好ましくは、炭素数2〜4のアルキレンオキシドのいずれか、又はEOとPOとが混在したもの(モル比でEO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)が挙げられる。
(8)直鎖状又は分岐鎖状のアルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩等のアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩。
(9)飽和若しくは不飽和のα−スルホ脂肪酸塩又はそのメチル、エチル若しくはプロピルエステル塩。
(10)長鎖モノアルキルリン酸塩、長鎖ジアルキルリン酸塩又は長鎖セスキアルキルリン酸塩。
(11)ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンジアルキルリン酸塩又はポリオキシエチレンセスキアルキルリン酸塩。
(12)長鎖モノアルキルスルホン酸塩、長鎖ジアルキルスルホン塩又は長鎖セスキアルキルスルホン塩。
(13)直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有する脂肪酸及び塩。
(14)直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有する多価カルボン酸及び塩。
なお、カウンターカチオンとしてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アミン塩、アンモニウム塩等として用いることができる。なかでも、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
カチオン性基及び炭化水素基を有する両親媒性化合物として、特に限定されないが、例えば以下の化合物が挙げられる。
(1)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
(2)モノ長鎖アルキルトリ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
(3)トリ長鎖アルキルモノ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
ただし、上記の「長鎖アルキル」は炭素数5〜26、好ましくは8〜18のアルキル基を示す。
「短鎖アルキル」は、炭素数1〜4のアルキル基に加えて、フェニル基、ベンジル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基等を包含するものとする。また、炭素原子間にエーテル結合を有していてもよい。具体的には、炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基;ベンジル基;炭素数2〜4、好ましくは2〜3のヒドロキシアルキル基;炭素数2〜4、好ましくは2〜3のポリオキシアルキレン基が好適なものとして挙げられる。
両性基及び炭化水素基を有する両親媒性化合物として、特に限定されないが、例えば、イミダゾリン系、アミドベタイン系の化合物が挙げられる。具体的には、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、及びラウリン酸アミドプロピルベタインが好適なものとして挙げられる。
ノニオン性基及び炭化水素基を有する両親媒性化合物として、特に限定されないが、例えば、以下に示すものが挙げられる。
(1)炭素数6〜22、好ましくは炭素数8〜18の脂肪族アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドが平均1〜30モル、好ましくは5〜20モル付加された、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテル。この中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテルが好適なものとして挙げられる。
ここで使用される脂肪族アルコールとしては、第1級アルコール、及び第2級アルコールが挙げられ、第1級アルコールが好ましい。また、アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
(2)ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル。
(3)長鎖脂肪酸アルキルエステルのエステル結合間にアルキレンオキシドが付加された、例えば下記一般式(2)で表される脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート。
1CO(OA)qOR2 ・・・(2)
[式中、R1COは、炭素数6〜22、好ましくは8〜18の脂肪酸残基を示し;OAは、炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)の付加単位を示し;qはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、一般に3〜30、好ましくは5〜20の数である。R2は、炭素数1〜3の置換基を有していてもよい、炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。]
(4)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル。
(5)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル。
(6)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル。
(7)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油。
(8)グリセリン脂肪酸エステル。
(9)下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド
3a−A−〔(R3bO)p−R3c〕q (3)
[式中、R3aは、炭素数6以上18以下、好ましくは炭素数8以上16以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、R3bは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基を示し、R3cは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子を示し、pはアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって、好ましくは2以上100以下、より好ましくは5以上80以下、更に好ましくは5以上60以下、より更に好ましくは10以上60以下の数を示し、Aは−CONH−、−NH−、−CON<、又は−N<を示し、Aが−CONH−又は−NH−の場合qは1であり、Aが−CON<又は−N<の場合qは2である。]
(10)1つ以上の水酸基を有する1価アルコール又は多価アルコール
ノニオン性基及び炭化水素基を有する両親媒性化合物については、HLBが12未満であると水への溶解性が下がり、多孔質化剤として好適である。なお、上記の「HLB」とは、Griffinの方法により求められた値である(吉田、進藤、大垣、山中共編、「新版界面活性剤ハンドブック」,工業図書株式会社,1991年,第234頁参照)。
パーフルオロアルキル基を含む両親媒性化合物としては、特に限定されないが、例えば、親水基がアニオン性又はノニオン性の化合物が挙げられる。
アニオン性親水性基及びパーフルオロアルキル基を含む両親媒性化合物としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
ノニオン性親水性基及びパーフルオロアルキル基を含む両親媒性化合物としては、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、パーフルオロアルキルアルコキシレート等を挙げることができる。
具体例として、LE−604、LE−605、LINC−151−EPA(共栄社化学社製)、メガファック(登録商標)F171、172、173、F444、F477(DIC社製)、フロラード(登録商標)FC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG(登録商標)710、サーフロン(登録商標)S−382、SC−101、102、103、104、105(旭硝子社製)等を挙げることができる。
オルガノシロキサン構造を含む両親媒性化合物としては、特に限定されないが、オルガノシロキサンの末端或いは分子鎖中に親水基を導入したものが挙げられる。例えば、ポリオキシエチレン変性オルガノシロキサン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン変性オルガノシロキサン、ポリオキシエチレンソルビタン変性オルガノシロキサン、ポリオキシエチレングリセリル変性オルガノシロキサン等の親水基で変性されたオルガノシロキサン等が挙げられる。
具体例として、DBE−712、DBE−821(アヅマックス社製)、KF−6011、KF−6012、KF−6013、KF−6014、KF−6015、KF−6016、KF−6100(信越化学工業社製)、ABIL−EM97(ゴールドシュミット社製)、ポリフローKL−100、ポリフローKL−401、ポリフローKL−402、ポリフローKL−700(共栄社化学製)等を挙げることができる。
本実施形態における多孔質化剤としては、前述の、1)大気圧下での沸点が250℃以上であって、2)水に溶解しないという特性を有する紙用嵩高剤も用いることができる。例えば高級アルコールのアルキレンオキシド付加物(国際公開第WO98/03730号に記載)、多価アルコールが油脂、糖アルコール、糖等である多価アルコール型非イオン性界面活性剤(特開平11−200283号公報に記載)、脂肪酸のアルキレンオキシド付加物(特開平11−200284号公報に記載)、カチオン性化合物、アミン、アミンの酸塩(特開平11−269799号公報、特開2001-355197号公報に記載)、両性化合物(特開平11−269799号公報に記載)、多価アルコール脂肪酸エステル(特許第2971447号、特開平11−350380号公報に記載)、(A)オルガノシロキサン、(B)グリセリルエーテル、(C)アミド、(D)アミン、(E)アミン酸塩、(F)4級アンモニウム塩、(G)イミダゾール、(H)多価アルコールと脂肪酸のエステル、及び(I)多価アルコールと脂肪酸のエステル(特許第3283248号、特開2003-105685号公報等)、脂肪族カルボン酸とポリアミンとを反応させて得られるアミド化合物を尿素で架橋し、その後、アルキル化剤を反応させて得られる化合物、若しくは前記アミド化合物にアルキル化剤を反応させ、その後、尿素で架橋して得られる化合物(特開2005−60891号公報に記載)等が挙げられる。
本実施形態における多孔質化剤は単独でも、或いは、2種類以上を混合して使用しても良い。さらに、周知一般のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等により乳化分散されても良い。
本実施形態における多孔質化剤の融点は特に限定はされないが、50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下であると、スラリー添加時に温和な加温で液体として扱えるため、製造上好適である。融点とは、JIS K 0064−1992「化学製品の融点及び溶融範囲測定方法」に記載されている融点測定法によって測定された値である。
多孔質シート及び多孔質積層シート中に多孔質化剤、より具体的には炭化水素基、パーフルオロアルキル基、及び/又はオルガノシロキサン構造が含まれていることは、シートそのものを固体NMRやFT−IR等の分光法や熱分解GC−MSやTOF−SIMSのような質量分析法により直接的分析する方法で確認できる。また、アセトンやジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の溶剤で多孔質シート及び多孔質積層シートを洗浄し、洗浄液中に溶出した多孔質化剤を溶液NMR、FT−IR、LC−MS、GC−MS等で分析することもできる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートの微細セルロース繊維層は紙力増強剤や湿潤紙力増強剤、ラテックス等のバインダーを含んでもよい。バインダーとしての効果に優れる点でポリウレタンが好適である。
ポリウレタンはポリイソシアネート化合物を主剤とし、ポリオール化合物等の活性水素を有する化合物(活性水素化合物)を硬化剤とした樹脂である。
ポリイソシアネート化合物は少なくとも2個以上のイソシアネート基を含有するものであれば特に制限されない。ポリイソシアネートの基本骨格としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、ポリイソシアネート誘導体等が挙げられる。中でも、黄変性が少ないという観点から脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートがより好ましい。
芳香族ポリイソシアネートの原料としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートの原料としては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記のポリイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体、5量体、7量体等)の他に、ポリイソシアネートを活性水素含有化合物の1種類又は2種類以上と反応させて得られた化合物が挙げられる。その化合物はアロファネート変性体(例えば、ポリイソシアネートと、アルコール類との反応より生成するアロファネート変性体等)、ポリオール変性体(例えば、ポリイソシアネートとアルコール類との反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)等)、ビウレット変性体(例えば、ポリイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体等)、ウレア変性体(例えば、ポリイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体等)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、ポリイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン等)、カルボジイミド変性体(ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体等)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体等が挙げられる。
活性水素含有化合物として、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを含む1〜6価の水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、カルボキシル基含有化合物等が挙げられる。また、空気中或いは反応場に存在する水や二酸化炭素等も含まれる。
1〜6価のアルコール(ポリオール)としては、例えば、非重合ポリオールと重合ポリオールがある。非重合ポリオールとは重合を履歴しないポリオールであり、重合ポリオールはモノマーを重合して得られるポリオールである。
非重合ポリオールとしてはモノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等が挙げられる。モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i―ブタノール、s−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−ノナノール、2−エチルブタノール、2,2−ジメチルヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、フロログルシン、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。また、テトラオール類としては、例えば、ペンタエリトリトール、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
重合ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸の単独又は混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオールや、多価アルコールを用いてε−カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等の複合金属シアン化合物錯体等を使用して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム或いはブロック付加して得られるポリエーテルポリオール類や、エチレンジアミン類等のポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類が挙げられる。これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等も挙げられる。
前記多価アルコール化合物としては、
1)例えばジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、
2)例えばエリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物、
3)例えばアラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、
4)例えばトレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類、
5)例えばラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類、
6)例えばスタキオース等の四糖類、
等がある。
アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル等、グリセリンのアクリル酸モノエステル若しくはメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル若しくはメタクリル酸モノエステル等、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル等の群から選ばれた単独又は混合物を必須成分とし、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド、及びメタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独又は混合物の存在下、又は非存在下において重合させて得られるアクリルポリオールが挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。更に、炭素数50以下のモノアルコール化合物である、イソブタノール、n−ブタノール、2エチルヘキサノール等を併用することができる。
アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜20のモノハイドロカルビルアミン[アルキルアミン(ブチルアミン等)、ベンジルアミン及びアニリン等]、炭素数2〜20の脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジエチレントリアミン等)、炭素数6〜20の脂環式ポリアミン(ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数2〜20の芳香族ポリアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン及びジフェニルメタンジアミン等)、炭素数2〜20の複素環式ポリアミン(ピペラジン及びN−アミノエチルピペラジン等)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)、ジカルボン酸と過剰のポリアミンとの縮合により得られるポリアミドポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ヒドラジン(ヒドラジン及びモノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド(コハク酸ジヒドラジッド及びテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン(ブチルグアニジン及び1−シアノグアニジン等)及びジシアンジアミド等が挙げられる。
チオール基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜20の1価のチオール化合物(エチルチオール等のアルキルチオール、フェニルチオール及びベンジルチオール)及び多価のチオール化合物(エチレンジチオール及び1,6−ヘキサンジチオール等)等が挙げられる。
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、1価のカルボン酸化合物(酢酸等のアルキルカルボン酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸)及び多価のカルボン酸化合物(シュウ酸やマロン酸等のアルキルジカルボン酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等)等が挙げられる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートは、それぞれ、ポリウレタン固形分質量比率が微細セルロース繊維質量100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上100質量%以下、より好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは1質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上30質量%以下である。微細セルロース繊維は比表面積が大きい為、上記質量比率が0.5質量%未満では繊維表面を全面ポリウレタンで被覆することが容易ではなく、水系Wet強度又は非水系Wet強度が低くなる傾向がある。一方、100質量%以下であれば、微細セルロース繊維の周りが過剰にポリウレタンで被覆されることを防止し、高い耐熱性や加飾性等のセルロースが本来持つ性質を良好に維持できる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートにおいては、シート中の微細セルロース繊維とポリウレタンとが化学的に結合されていることが好ましい。化学的な結合とは共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合等であって、特に限定されるものではないが、共有結合が好ましい。例えば、微細セルロース繊維表面に多数存在する水酸基との反応によるウレタン結合や微量に存在するカルボキシル基との反応によるアミド尿素結合等が挙げられる。さらに、前記の化学修飾セルロース繊維についても活性水素を有する官能基が繊維表面に存在すれば共有結合を形成可能である。活性水素を有する官能基としては、例えば水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等が挙げられる。化学的な結合が微細セルロース繊維に対し3次元で形成されることでシートのDry強度、水系Wet強度及び非水系Wet強度が向上する。
化学的な結合が形成されていることは、固体NMRやFT−IR、X線光電子分光法等の分光法やTOF−SIMSのような質量分析法により直接的に確認できる。また、アセトンやジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の溶剤で多孔質シートを洗浄し、洗浄液中にポリウレタンが溶出していないことで化学的な結合が形成されていると間接的に見做すこともできる。ポリウレタンの溶出による分析方法には、燃焼イオンクロマトグラフ法や、溶液NMR、ICP、液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、質量分析、FT−IR、CHN分析等を選択すればよい。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートがポリウレタンを含む場合、当該ポリウレタンの分布状態は特に限定されないが、ポリウレタンが多孔質シート中又は多孔質積層シートの微細セルロース繊維層中に均一に分布していることが好ましい。ポリウレタンが均一に分布することでシートの水系Wet強度及び非水系Wet強度が均一になるため、樹脂含浸による樹脂複合シートを連続製造する際に、シート破断の回数を減らすことができる。なお、多孔質シート及び微細セルロース繊維層において、ポリウレタンが均一に分布しているとは、ポリウレタンがシート内で平面方向及び厚み方向の両者で均一に分布していることを意味する。
具体的には、シート平面方向でのポリウレタンの分布の均一性は、多孔質シート及び多孔質積層シートの微細セルロース繊維層の任意の点でのポリウレタン量(P1)とセルロース量(C1)の比(P1/C1)が一定であることをいう。ここで、一定とは、20cm×20cmのシートで任意の4か所におけるP1/C1のバラツキが50%以下の変動係数であることをいう。
シート厚み方向でのポリウレタンの分布の均一性は、多孔質シート及び多孔質積層シートの微細セルロース繊維層を厚み方向に3等分したときの上部、中部及び下部のポリウレタン量とセルロース量との比が同じであることをいう。ここで、同じとは、20cm×20cmのシートで任意の4か所における上部のP1/C1の平均、中部のP1/C1の平均、下部のP1/C1の平均を算出したときに、これら3つの平均値の間でのバラツキが50%以下の変動係数であることをいう。
シート平面方向及びシート厚み方向でのポリウレタンの分布において、上記変動係数はそれぞれ50%以下であることが好ましい。変動係数が50%超の場合、同量のポリウレタンを均一に含むシートと比べ、水系Wet強度、及び非水系Wet強度が低い傾向がある。なお、変動係数とは相対的なばらつきを表す値であり、下記式(14)より算出できる。
変動係数(CV)=(標準偏差/相加平均)×100 式(14)
ポリウレタン量とセルロース量の比は、例えば国際公開第WO2015/008868号に記載のスパッタエッチングを伴うTOF−SIMSによる3次元組成分析から求められる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シート中のポリウレタンはブロックポリイソシアネートを原料としても良い。ブロックポリイソシアネートとは、(1)上述したポリイソシアネート及びポリイソシアネート誘導体等のポリイソシアネート化合物を基本骨格とする、(2)ブロック剤によってイソシアネート基がブロックされている、(3)常温では活性水素を有する官能基とは反応しない、(4)解離温度以上の熱処理により、ブロック基が脱離し活性なイソシアネート基が再生され、活性水素を有する官能基と反応し結合を形成する。又は、一態様において、多孔質シート及び多孔質積層シートは、それぞれ、ブロックポリイソシアネートを含む。
ブロック基を有さない通常のイソシアネート化合物は、水と容易に反応するためスラリー(例えば抄紙スラリー又は塗工スラリー)中に添加することはできない。しかしながら、ブロックポリイソシアネートは、スラリー中で水と反応しないためスラリーに添加することが可能である。さらに、ブロック剤の解離温度未満で湿紙を乾燥することで、イソシアネート化合物の湿紙中の水との反応を防ぐことができる。そして、最終的に乾燥したシートをブロック剤の解離温度以上で熱処理することで、ブロックポリイソシアネートは自身の硬化と共に、微細セルロース繊維や多孔質積層シートの基材シート表面に存在する活性水素を有する官能基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基等)と効果的に共有結合を形成する。
ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものである。このブロック基は常温において安定であるが、熱処理温度(通常約100〜約250℃)に加熱した際、ブロック剤が脱離し遊離イソシアネート基を再生しうるものである。
このような要件を満たすブロック剤としては、以下のものを例示できる。
(1)メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール類、
(2)アルキルフェノール系:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類であって、例えばn−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類、
(3)フェノール系:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等、
(4)活性メチレン系:マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、
(5)メルカプタン系:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、
(6)酸アミド系:アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、
(7)酸イミド系:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、
(8)イミダゾール系:イミダゾール、2−メチルイミダゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール等、
(9)尿素系:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、
(10)オキシム系:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、
(11)アミン系:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等、
これらのブロック剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本実施形態のブロックポリイソシアネートは微細セルロース繊維スラリー中に均一に混合して使用するため、それ自身が水分散体として安定した形態であり、かつ、微細セルロース繊維等との混合時も安定していることが好ましい。ブロックポリイソシアネート水分散体は、ブロックポリイソシアネートに親水性化合物を直接結合させ乳化させた化合物(自己乳化型)であっても、界面活性剤等で強制乳化させた化合物(強制乳化型)であってもよい。それぞれの方法で得られたエマルジョンは、どちらも表面にアニオン性、ノニオン性、カチオン性のいずれかの親水基が露出している。
自己乳化型ブロックポリイソシアネートはブロックポリイソシアネート骨格にアニオン性基又はノニオン性基又はカチオン性基を有する活性水素基含有化合物を結合させたものである。
アニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、1つのアニオン性基を有し、かつ、2つ以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。より具体的には、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸等のジヒドロキシルカルボン酸、例えば、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸等のジアミノカルボン酸、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸及び/又は無水フタル酸とのハーフエステル化合物等を挙げることができる。
また、スルホン酸基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。
また、リン酸基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェート等を挙げることができる。
また、ベタイン構造含有基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、N−メチルジエタノールアミン等の3級アミンと1,3−プロパンスルトンとの反応によって得られるスルホベタイン基含有化合物等を挙げることができる。
また、これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させることによってアルキレンオキシド変性体としてもよい。
また、これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
ノニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、ノニオン性基として通常のアルコキシ基を含有しているポリアルキレンエーテルポリオール等が使用される。通常のノニオン性基含有ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール等も使用される。
高分子ポリオールとしては、数平均分子量500〜10,000、特に500〜5,000のものが好ましく使用される。
カチオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、ヒドロキシル基又は1級アミノ基のような活性水素含有基と3級アミノ基を有する脂肪族化合物、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン等が挙げられる。また、3級アミンを有するN,N,N−トリメチロールアミン、N,N,N−トリエタノールアミンを使用することもできる。なかでも、3級アミノ基を有し、かつイソシアネート基と反応性のある活性水素を2個以上含有するポリヒドロキシ化合物が好ましい。
また、これらカチオン性基を有する活性水素基含有化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させることによってアルキレンオキシド変性体としてもよい。また、これらカチオン性基を有する活性水素基含有化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
カチオン性基はアニオン性基を有する化合物で中和することで、塩の形で水中に分散せやすくすることもできる。アニオン性基とは、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が、スルホン基を有する化合物としては、例えば、エタンスルホン酸等が、隣酸基を有する化合物としては、例えば隣酸、酸性隣酸エステル等が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物が好ましく、更に好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸である。中和する場合のブロックポリイソシアネートに導入されたカチオン性基:アニオン性基の当量比率は1:0.5〜1:3であり、好ましくは1:1〜1:1.5である。また、導入された三級アミノ基は、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等で四級化することもできる。
本実施形態でブロックポリイソシアネートと上記親水基導入を目的とした活性水素基含有化合物とを反応させる際の比率は、イソシアネート基/活性水素基の当量比が好ましくは1.05〜1000、より好ましくは2〜200、さらに好ましくは4〜100の範囲である。当量比が1.05以上である場合、親水性ポリイソシアネート中のイソシアネート基含有率が低くなり過ぎないため、ブロックポリイソシアネートの硬化速度が良好であるとともに硬化物の脆弱化が起きにくく、加えて微細セルロース繊維との架橋点が少なくなり過ぎず、多孔質シート及び多孔質積層シートの水系Wet強度及び非水系Wet強度が良好である。当量比が1000以下である場合、界面張力を下げる効果が大きく、親水性が良好に発現される。なお、本実施形態で1分子中にイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物と活性水素基含有化合物とを反応させる方法としては、両者を混合させて、通常のウレタン化反応を行う方法を例示できる。
強制乳化型ブロックポリイソシアネートは、周知一般のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等によりブロックポリイソシアネートが乳化分散された化合物である。中でもアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤はコストも低く、良好な乳化が得られるので好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩系化合物、アルキルサルフェート系化合物、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、1級〜3級アミン、ピリジニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ハロゲン化アルキル4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
これらの乳化剤を使用する場合の使用量は、特に制限を受けず任意の量を使用することができるが、ブロックポリイソシアネートの質量を1としたときの質量比で、0.01以上である場合、良好な分散性が得られ、0.3以下である場合、耐水性、機能化剤固定性等の物性を良好に維持できるため、0.01〜0.3が好ましく、0.05〜0.2がより好ましい。
なお、上記ブロックポリイソシアネート水分散体は、自己乳化型及び強制乳化型ともに水以外の溶剤を好ましくは20質量%まで含むことができる。この場合の溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等を挙げることができる。これら溶剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、23℃での水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、具体的には、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
上記、ブロックポリイソシアネート水分散体の平均分散粒子径は1〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは10〜500nm、さらに好ましくは10〜200nmである。
上記ブロックポリイソシアネート水分散体の表面はアニオン性、ノニオン性、カチオン性のいずれであってもよいが、より好ましくはカチオン性である。その理由は、抄紙スラリーを製造する段階で、希薄な微細セルロース繊維スラリー(固形分濃度0.01〜0.5質量%)中でブロックポリイソシアネート水分散体(固形分濃度0.0001〜0.5質量%)を効果的に微細セルロース繊維に吸着させるうえで、静電相互作用を利用することが有効であるからである。一般的なセルロース繊維表面はアニオン性(蒸留水中ゼータ電位−30〜−20mV)であることが知られている(非特許文献1 J.Brandrup(editor) and E.H.Immergut(editor)“Polymer Handbook 3rd edition”V−153〜V−155参照)。したがって、ブロックポリイソシアネート水分散体表面はカチオン性であることがより好ましい。ただし、ノニオン性であってもエマルジョンの親水基のポリマー鎖長や剛直性等によっては十分に微細セルロース繊維に吸着させることは可能である。さらに、アニオン性のような静電反発により吸着がより困難な場合であっても、一般的に周知なカチオン性吸着助剤を用いることで、微細セルロース繊維上に吸着させることができる。カチオン性吸着助剤として、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基、ピリジニウム、イミダゾリウム、及び四級化ピロリドンを有するポリマーが挙げられ、具体的にはカチオン化澱粉、カチオン性ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、ポリエチレンイミン、キトサン等の水溶性のカチオン性ポリマー等が挙げられる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートの微細セルロース繊維層がポリウレタンを含む場合、水系Wet強度及び非水系Wet強度が強化され、水中及び有機溶剤中でのシートの使用がより容易になる。さらに、本実施形態において多孔質化剤とポリウレタンとを併用する場合、湿潤乾燥操作を行っても多孔質が良好に保持される。ポリウレタン単独使用では、水系Wet強度及び非水系Wet強度は強化されるが、湿潤乾燥操作での多孔質の保持が困難である傾向があるが、多孔質化剤をさらに用いることでこれらの両立が容易になる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートの微細セルロース繊維層は、それぞれ、無機粒子、高分子粒子、無機繊維及び高分子繊維からなる群から選択される1種以上のフィラー材を含んでも良い。
無機粒子としては特に限定されないが、例えば金、銀、銅、鉄、亜鉛、錫、ニッケル、チタンや各種合金(例えばステンレス)等の化学的に安定な金属粒子、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化錫、酸化銅、酸化銀、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子、チタン酸バリウム等の複合金属酸化物粒子、窒化アルミニウム等の金属窒化物粒子、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、ゼオライト、マイカ、スメクタイト等のシリカ系粒子、活性炭やグラファイト、カーボンナノチューブ等の炭素系粒子を挙げることができる。
高分子粒子としては特に限定されないが、例えばスチレン−ブタジエン系(SB)ラテックス、アクリル系ラテックス、各種ゴム系ラテックス、ポリ塩化ビニリデン系ラテックス、ウレタン系ラテックスをはじめとする各種ラテックスの他に、ポリオレフィン系粒子、ポリメチルメタクリレート系粒子、ポリアミド系粒子、ポリエステル系粒子、全芳香族ポリアミド系粒子、ポリイミド系粒子、ポリカーボネート系粒子、結晶セルロースのようなセルロース系粒子、ポリアセタール系粒子等を挙げることができる。
無機繊維としては特に限定されないが、例えば後述する分散媒体に溶解しない繊維であって、ガラス繊維、金属繊維や高分子繊維を焼成、炭化させて得られるカーボンナノチューブなどの炭素系繊維を挙げることができる。
高分子繊維としては特に限定されないが、例えば各種合繊(ポリエステル、ナイロン、ポリアクリロニトリル、セルロースアセテート、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリケトン、全芳香族ポリアミド、ポリイミド等)、天然繊維(綿、絹、羊毛等)、或いは再生セルロース繊維を叩解、或いは高圧ホモジナイザー等による微細化処理により高度にフィブリル化させた微細繊維、各種ポリマーを原料としてエレクトロスピニング法によって得られる微細繊維、各種ポリマーを原料としてメルトブロウン法によって得られる微細繊維等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中でも、特に全芳香族ポリアミドであるアラミド繊維を高圧ホモジナイザーにより微細化した微小繊維状アラミド、ティアラ(登録商標)(ダイセル化学工業(株)製)は、平均繊維径0.2〜0.3μm、平均繊維長500〜600μmとされ、アラミド繊維の高耐熱性、高い化学的安定性により繊維状フィラーとして好適に使用することができる。
本実施形態の多孔質シート中に含まれるフィラー材は多孔質シート質量の1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上40質量%以下がより好ましく、1質量%以上30質量%以下がさらに好ましく、1質量%以上10質量%以下がさらにより好ましい。
本実施形態の多孔質積層シート中に含まれるフィラー材は多孔質積層シート質量の0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
また、多孔質シート及び多孔質積層シート中の微細セルロース繊維層に含まれるフィラー材は、微細セルロース繊維の体積100体積%に対して1体積%以上100体積%以下が好ましく、1体積%以上50体積%以下がより好ましく、1体積%以上20体積%以下がさらに好ましい。
微細セルロース繊維とフィラー材とは断面SEM観察において電子密度差に起因したコントラストにより見分けることができる。これを利用し、具体的には、多孔質積層シートの断面SEM観察用サンプルを作製し、微細セルロース繊維層のSEM観察を倍率5000倍で3視野行う。得られた断面SEM像の画像解析により、微細セルロース繊維とフィラー材のそれぞれの面積(A1、A2、μm2)を求め、下記式(15)より微細セルロース繊維に対するフィラー材の体積比率を算出し、3視野の平均を採用する。
微細セルロース繊維に対するフィラー材の体積比率(%)=A2/A1×100 式(15)
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートは、填料、紙力増強剤、サイズ剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、硫酸バンド、湿潤紙力増強剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤など公知の抄紙用材料を、本実施形態の目的とする効果を損なわない範囲で適宜使用することが可能である。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートの製造方法としては、抄紙法及び塗工法が好ましい。抄紙法は、典型的には、(1)セルロース繊維の微細化による微細セルロース繊維製造工程、(2)該微細セルロース繊維を含む抄紙スラリーの調製工程、(3)該抄紙スラリーをろ過(すなわち脱水)して湿紙を形成する抄紙工程、及び(4)該湿紙を乾燥し乾燥シートを得る乾燥工程を含む。また、塗工法は、典型的には、上記(1)及び(2)と同様の工程により塗工スラリーを調製する工程、(3)該塗工スラリーを支持体に塗工して塗工フィルムを形成する塗工工程、及び(4)該塗工フィルムを乾燥させる乾燥工程を含む。この場合、基材シートを上記支持体として用いてよい。以下に本実施形態の微細セルロース繊維を含む抄紙スラリー又は塗工スラリーの調製方法、及び抄紙法による多孔質シート及び多孔質積層シートの形成方法について説明する。
本実施形態は、本開示の多孔質シートの製造方法であって、多孔質化剤と、微細セルロース繊維と、水とを含むスラリーを調製する調製工程、該スラリーを抄紙法又は塗工法により(例えば抄紙法により脱水することによって)湿紙を形成する製膜工程、及び、該湿紙を少なくとも乾燥させることによって多孔質シートを得る多孔質シート形成工程、を含む、方法を提供する。
本実施形態はまた、本開示の多孔質積層シートの製造方法であって、多孔質化剤と、微細セルロース繊維と、水とを含むスラリーを調製する調製工程、該スラリーを、基材シート上で抄紙法又は塗工法により(例えば抄紙法により脱水することによって)多層湿紙を形成する製膜工程、及び、該多層湿紙を少なくとも乾燥させることによって多孔質積層シートを得る多孔質積層シート形成工程、を含む、方法を提供する。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートを構成する微細セルロース繊維としては、1)バクテリア類の産生する微細セルロース繊維、2)エレクトロスピニング法により得られた再生セルロース又はセルロース誘導体の微細セルロース繊維、3)セルロースミクロフィブリルの集束体である天然セルロース繊維又は再生セルロース繊維又はセルロース誘導体繊維を微細化処理することで得られるミクロフィブリル化セルロース、等を使用できる。コストや品質管理の面からミクロフィブリル化セルロースが好ましい。
ミクロフィブリル化セルロースの原料として、動物由来のセルロース繊維(ホヤセルロース等)、高等植物由来のセルロース繊維、再生セルロース繊維、化学的に合成されたセルロース誘導体繊維が挙げられる。
高等植物由来のセルロース繊維として、例えば、木材種(広葉樹又は針葉樹)から得られる木材パルプ、非木材種(竹、麻系繊維、バガス、ケナフ、リンター等)から得られる非木材パルプ、及びこれらの精製パルプ(精製リンター等)等が使用できる。非木材パルプとしては、コットンリンターパルプを含むコットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、ワラ由来パルプ等を使用できる。コットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、及びワラ由来パルプは各々、コットンリント、コットンリンター、麻系のアバカ(例えば、エクアドル産又はフィリピン産のもの)、ザイサル、バガス、ケナフ、竹、ワラ等が挙げられる。これらの原料は蒸解処理による脱リグニン等の精製工程や漂白工程を経て、精製パルプとして提供されるが、目的に応じてパルプ中の残存リグニン量及びヘミセルロース量は変えることができる。
再生セルロース繊維として、例えば、レーヨン、キュプラ、リヨセル、テンセル等が挙げられる。
セルロース誘導体繊維として、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース等の無機酸エステル;硝酸酢酸セルロース等の混酸エステル;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロースが挙げられる。
これらの繊維は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
本実施形態の微細セルロース繊維は、セルロース繊維原料前処理工程、叩解処理工程、必要に応じて微細化工程を経ることが好ましい。前処理工程においては、100〜150℃の温度での水中含浸下でのオートクレーブ処理、化学処理、酵素処理等、又はこれらの組み合わせによって、セルロース繊維原料を微細化し易い状態にしておくことを目的とする。
化学処理はアニオン基又はカチオン基をミクロフィブリルに導入する手法である。これらの官能基の存在により、静電反発及び浸透圧効果が発現し、高圧ホモジナイザーのような高エネルギーを要する微細化装置を使用することなく、少ないエネルギーで微細セルロース繊維を得ることができる。
アニオン化剤としては、複数のカルボキシル基を有するカルボン酸又はその無水物、或いはそれらの塩、リン原子を含むオキソ酸又はその塩、オゾン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル等が挙げられる。
カチオン化剤としては、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライド又はそのハロヒドリン型の化合物が挙げられる。
酵素処理は、セルラーゼ等によって主にアモルファス部のセルロースを分解する処理である。
これらの前処理は、微細化処理の負荷を軽減するだけでなく、セルロース繊維を構成するミクロフィブリルの表面や間隙に存在するリグニンやヘミセルロース等の不純物成分を水相へ排出し、その結果、微細セルロース繊維のα−セルロース純度を高める効果もあるため、多孔質シート及び多孔質積層シートの耐熱性の向上に有効である。
叩解処理工程においては、原料パルプを好ましくは0.5質量%以上4質量%以下、より好ましくは0.8質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上2.5質量%以下の固形分濃度となるように水に分散させ、ビーターやコニカルリファイナー、ディスクリファイナー(ダブルディスクリファイナー)のような叩解装置でフィブリル化を高度に促進させる。処理条件によっては極めて高度な叩解(フィブリル化)が進行するので、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件を緩和でき、有効な場合がある。
微細セルロース繊維の製造には、所望の数平均繊維径に応じて、上述した叩解工程に引き続き、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダー等による微細化処理を施すことが好ましい。この際の水分散体中の固形分濃度は、上述した叩解処理に準じ、好ましくは0.5質量%以上4質量%以下、より好ましくは0.8質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上2.5質量%以下である。この範囲の固形分濃度の場合、詰まりが発生せず、しかも効率的な微細化処理が達成できる。
使用する高圧ホモジナイザーとしては、例えば、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモジナイザー等を挙げることができる。超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)ナノマイザー、(株)スギノマシンのアルティマイザー等の高圧衝突型の微細化処理機を挙げることができる。グラインダー型微細化装置としては、(株)栗田機械製作所のピュアファインミル、増幸産業(株)のスーパーマスコロイダーに代表される石臼式摩砕型を挙げることができる。なお、これらの以外の装置であっても、ほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば使用しても構わない。
なお、本実施形態では、上記の原料の異なる微細セルロース繊維や微細化度の異なる微細セルロース繊維、表面を化学処理された微細セルロース繊維を2種類以上、任意の割合で混合して用いても良い。
本実施形態の抄紙スラリー調製工程において、スラリーに含まれる微細セルロース繊維は抄紙スラリー質量の0.01質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下がさらに好ましい。0.01質量%以上である場合、濾水時間が長くなりすぎず、生産性が良好であると同時に、膜質均一性が良好であり好ましい。また、2.0質量%以下である場合、分散液の粘度が上がり過ぎないため、均一に製膜することが容易であり好ましい。
また、塗工スラリー調整工程においては、75質量%以上99.5質量%以下が好ましく、80質量%以上99.0質量%以下がより好ましく、85質量%以上98.0質量%以下がさらに好ましい。75質量%以上99.5質量%以下である場合、塗工スラリーの成膜がしやすい粘度であるため、膜質均一性が良好であり、好ましい。
抄紙スラリー調整工程において、添加する多孔質化剤はスラリー質量の0.0001質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.0005質量%以上1.0質量%以下がさらに好ましい。0.0001質量%以上の場合、多孔質化剤がその種類にもよるが概ね良好な溶解度を有することができるため、多孔質化の効果が大きい。2.0質量%以下の場合はスラリー粘度が上昇しすぎず、撹拌による泡の生成が抑えられ、均質な製膜が容易になる。
また、塗工スラリー調製工程においては、添加する多孔質化剤量はスラリー質量の0.005質量%以上25.0質量%以下が好ましく、0.01質量%以上20.0質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上15.0質量%以下がさらに好ましく、0.05質量%以上10.0質量%以下が特に好ましい。
多孔質化剤をスラリー中に均一に分散するための混合装置として、アジテーター、ホモミキサー、パイプラインミキサー、ブレンダーのようなカッティング機能をもつ羽根を高速回転させるタイプの分散機や高圧ホモジナイザー等が挙げられる。泡が生成せずに、微細セルロース繊維と多孔質化剤が均一に分散する限りにおいて撹拌装置は特に限定されない。特に、多孔質化剤が水中で自己乳化する場合、或いは既に乳化されている場合はアジテーターのような低せん断な撹拌装置でも構わない。一方、多孔質化剤が水中で相分離し、乳化しない場合はホモミキサーや高圧ホモジナイザーのような強せん断な混合手法がより好ましい。
抄紙スラリー又は塗工スラリーには、水分散性ブロックポリイソシアネートや前記公知の抄紙用材料、フィラー材を、本実施形態の目的とする効果を損なわない範囲で適宜使用することが可能であり、抄紙スラリー中の0.0001質量%以上10.0質量%以下の範囲で任意に変えることができる。また、塗工スラリー中においても0.005質量%以上25.0質量%以下の範囲で任意に変えることができる。
なお、多孔質化剤及びブロックポリイソシアネート等の他の添加物の添加の順序は本実施形態の目的とする効果を損なわない限りにおいて、特に限定されるものではない。
抄紙スラリー又は塗工スラリーには、シートの多孔質化を促進させる目的で、有機溶剤を本実施形態の目的とする効果を損なわない範囲で適宜使用することが可能であり、抄紙スラリー中の0.0001質量%以上10.0質量%以下の範囲で任意に変えることができる。また、塗工スラリー中においても0.005質量%以上25.0質量%以下の範囲で任意に変えることができる。
有機溶媒としては特に制限はないが、水溶性であると均一なスラリーが得られるため、好ましい。また、有機溶媒の沸点が100℃以上であると、乾燥時に有機溶媒が水よりも多孔質シート内に残存しやすいため、より空孔率の高い多孔質シートが得られるため、好ましい。疎水性の有機溶媒についても、エマルジョンのような形態でスラリー中に均一に存在できる形態とすることで、使用することができる。
本実施形態の抄紙工程においては、抄紙スラリーを通水性の基材上でろ過することにより湿紙を形成する。
この抄紙工程では、抄紙スラリーから水を脱水し、微細セルロース繊維が留まるようなフィルターや濾布(製紙の技術領域ではワイヤーとも呼ばれる)を使用する操作であればどのような装置を用いてもよい。
抄紙機としては、傾斜ワイヤー式抄紙機、長網式抄紙機、円網式抄紙機のような装置を用いると好適に欠陥の少ない多孔質シートを得ることができる。抄紙機は連続式であってもバッチ式であっても目的に応じて使い分ければよい。
連続抄紙機のワイヤーパートにおけるジェットワイヤー比は、好ましくは0.10〜2.0であり、より好ましくは0.5〜1.8、さらに好ましくは0.8〜1.5である。ジェットワイヤー比を上記の範囲内とすることにより、異方性指数を2.0以下に調整することが容易となる。
本実施形態の塗工工程においては、スプレーコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、含浸コーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター等を用い、調製した塗工スラリーを通水性の基材上或いは無孔質フィルム上に塗工することで湿紙を得ることができる。通水性基材を用いた場合は後述する抄紙におけるサクション工程やプレス工程と同じ、又は、それに類する手法により、湿紙の脱水の程度を制御し、好ましくは固形分濃度が6質量%以上25質量%以下、より好ましくは固形分濃度が8質量%以上20質量%以下の範囲に調整する。
抄紙工程はワイヤー又は濾布を用いて抄紙スラリー中に分散している微細セルロース繊維等の軟凝集体を濾過する工程であるため、ワイヤー又は濾布の目のサイズが重要である。本実施形態においては、本質的には、抄紙スラリー中に含まれる微細セルロース繊維等を含む水不溶性成分の歩留まり割合が例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%で抄紙することのできるような任意のワイヤー又は濾布を使用できる。
但し、微細セルロース繊維等の歩留まり割合が70質量%以上であっても濾水性が高くないと抄紙に時間がかかり、著しく生産効率が悪くなるため、大気圧下25℃でのワイヤー又は濾布の水透過量が、好ましくは0.005ml/(cm2・sec)以上、より好ましくは0.01ml/(cm2・sec)以上であると、生産性の観点からも好適な抄紙が可能となる。上記水不溶成分の歩留まり割合が70質量%以上である場合、生産性が良好であり、用いるワイヤーや濾布内に微細セルロース繊維等の水不溶性成分が目詰まりする現象や、製膜後の多孔質シートの剥離性の悪化を回避できる。
大気圧下でのワイヤー又は濾布の水透過量は次のように評価する。バッチ式抄紙機(例えば、熊谷理機工業社製の自動角型シートマシーン)に評価対象となるワイヤー又は濾布を設置し、ワイヤーの場合はそのまま、濾布の場合は、80〜120メッシュの金属メッシュ(濾水抵抗がほとんど無いものとして)上に濾布を設置し、抄紙面積がx(cm2)の抄紙機内に十分な量(y(ml)とする)の水を注入し、大気圧下で濾水時間を測定する。濾水時間がz(sec)であった場合の水透過量を、y/(x・z)(ml/(cm2・s))と定義する。
本実施形態のワイヤー又は濾布の例として、SEFAR社(スイス)製のTETEXMONODLW07−8435−SK010(PET製)、敷島カンバス社製NT20(PET/ナイロン混紡)、TT30(PET製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態の抄紙工程による脱水では高固形分化が進行し、抄紙スラリーの微細セルロース繊維濃度よりも高い濃縮組成物の湿紙を得る。湿紙の固形分率は、抄紙のサクション圧(ウェットサクションやドライサクション)やプレス工程によって脱水の程度を制御し、好ましくは固形分濃度が6質量%以上25質量%以下、より好ましくは固形分濃度が8質量%以上20質量%以下の範囲に調整する。湿紙の固形分率が6質量%以上の場合、湿紙としての自立性が良好で、工程上問題が生じ難い。また、湿紙の固形分率が25質量%以下となる濃度まで脱水する場合、微細セルロース繊維のワイヤー又は濾布への顕著な貫入が生じず、シートに凹凸が転写されたり、ワイヤー又は濾布の目詰まりが発生したりする問題を回避できる。
本実施形態の多孔質積層シートの製造においては、この抄紙の際に基材シートをワイヤー又は濾布上に置いて抄紙を行うことで多層湿紙を得ることができる。又、塗工法においては塗工スラリーを塗工する通水性の基材として、多孔質積層シートの基材シートを用いることで多層湿紙を得ることができる。
基材シートは透気抵抗度が100sec/100ml以下、かつ、厚みが1μm以上1000μm以下であることが好ましい。透気抵抗度の測定方法は前記多孔質シートでの透気抵抗度の測定方法に準じる。厚みの測定方法は23℃、50%RHの環境で1日静置した多孔質積層シート(20cm×20cm)に対して、卓上オフライン接触式膜厚計(例えば山文電気製のTOF―5R01)を用い、150mmの長さを0.1mmピッチで1回ずつ測定し、その数平均値を膜厚(μm)とする。
本実施形態の基材シート表面は親水的であると好ましい。基材シート表面が親水的であると、多孔質積層シートの接着性に優れ、また抄紙法で多孔質積層シートを製造する際の濾水性が向上するため好ましい。親水性官能基としては特に限定されないが、水酸基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基或いは、−OM、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、又は−M2PO4で表される基(Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す)、1〜3級アミン及び4級アンモニウム塩が挙げられる。
また、基材シート表面には活性水素を有する官能基の導入がなされていても良い。基材シート表面の官能基が活性水素を有する官能基であると、ポリウレタンによる化学的な結合を形成でき、ポリウレタンを介して基材シートと多孔質シートが強固に接着されるため好ましい。ここでいう活性水素を有する官能基とは、例えば水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等のことを言い、水酸基の場合はウレタン結合、カルボキシル基の場合はアミド尿素結合等が形成される。
親水的表面を有した、或いは、活性水素基を有した基材シートとしては、セルロースやナイロンのように元々その性質を有した基材シートを選択でき、又は、抄紙前にコロナ放電処理やプラズマ処理を実施し、シート表面の親水化や活性水素を有する官能基の形成を行って得た基材シートを使用することもできる。
前記湿紙に対し有機溶媒を塗布又は湿紙を有機溶媒に浸漬させ、含まれる水を有機溶媒に置換しても良い。有機溶媒に置換することで多孔質化をより促進することができる。有機溶媒としては特に制限はないが、水溶性であると水との置換が速やかに起きるため、好ましい。また、有機溶媒の沸点が100℃以上であると、乾燥時に有機溶媒が水よりも多孔質シート内に残存しやすいため、より空孔率の高い多孔質シートが得られるため、好ましい。疎水性の有機溶媒についても、水溶性の有機溶媒で一度置換した後であれば、使用することができる。
本実施形態の乾燥工程においては、上述した抄紙工程及び塗工工程で得た湿紙又は多層湿紙を加熱し、水を蒸発させることにより、多孔質シートを得ることができる。乾燥方法は特に限定されるものではないが、湿紙をワイヤー又はろ布と共に乾燥する方法、ワイヤー又はろ布から湿紙を剥離して湿紙単体で乾燥する方法のどちらであっても良い。また、塗工で製造された湿紙は、通水性基材や無孔質フィルムと共に乾燥する方法、通水性基材や無孔質フィルムから塗工シートを剥離して塗工シート単体で乾燥する方法のどちらで乾燥しても良い。乾燥機としては、ドラムドライヤーやピンテンターのような幅を定長とした状態で、水を乾燥させ得るタイプの定長乾燥型の乾燥機を使用すると、透気抵抗度の低い多孔質シート又は多孔質積層シートを安定に得ることができるため好ましい。乾燥温度は条件に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは45℃以上250℃以下、より好ましくは60℃以上200℃以下、さらに好ましくは80℃以上200℃以下の範囲である。乾燥温度が45℃以上の場合には、多くの場合で水の蒸発速度が比較的速いため、生産性を良好に確保でき好ましく、250℃以下の乾燥温度とすると、多孔質化剤が熱変性を起こしてしまうケースを回避でき、また、エネルギー効率が良好で低コストとなるため好ましい。
好ましい態様においては、スラリーがブロックポリイソシアネートをさらに含み、多孔質シート形成工程又は多孔質積層シート形成工程が、湿紙又は多層湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理を含む。すなわち、ブロックポリイソシアネートを用いた場合、湿紙又は多層湿紙の乾燥によって得た乾燥シートを熱キュア処理(加熱処理)することにより、シート内に含まれるブロックポリイソシアネートのブロック基の解離、それに続く微細セルロース繊維との化学的な結合が形成される。また、多孔質積層シートにおいては、該ブロックポリイソシアネートにより基材シートと微細セルロース繊維との架橋も同時に進行する。
熱キュア処理には、対流伝熱、伝導伝熱、放射伝熱等を利用した既知の方法を採用することができ、熱風や赤外線、熱接触による加熱を用いることができる。均一かつ短時間での加熱処理の観点から、加熱ローラーへの接触加熱が好ましい。シートへ引火する熱エネルギー量はロール温度、ロール径、送り速度等によって調整できる。
ブロックポリイソシアネートは常温において安定であるが、ブロック剤の解離温度以上に熱処理することでブロック基が解離してイソシアネート基が再生し、活性水素を有する官能基との化学的な結合が形成できる。加熱温度は用いられるブロック剤により異なるが、例えば80℃以上300℃以下、好ましくは100℃以上280℃以下、より好ましくは120℃以上250℃以下の範囲で、ブロック基の解離温度以上に加熱する。ブロック基の解離温度未満の場合は、イソシアネート基が再生しないため架橋化が起きない。また、300℃以下の温度で加熱すると微細セルロース繊維やブロックポリイソシアネートの熱劣化、及びこれによる着色を回避でき好ましい。
加熱時間は、下限を例えば1秒以上とし、上限は例えば10分以下、好ましくは5分以下、より好ましくは3分以下、さらに好ましくは1分以下である。加熱温度がブロック基の解離温度より十分に高い場合は、加熱時間をより短くすることができる。また、加熱温度が200℃以上の場合、5分超の加熱を行うとシート内の水分が極端に減少するため、5分以内の加熱とすることが、加熱直後のシートの脆化を回避し、取扱い性を容易にする点で好ましい。
好ましい態様においては、多孔質シート形成工程又は多孔質積層シート形成工程が、湿紙又は多層湿紙を乾燥させた後に行われるカレンダー処理を含む。すなわち、乾燥によって得た乾燥シートに、カレンダー装置によってカレンダー処理(平滑化処理)を施してもよい。カレンダー処理を経ることにより表面が平滑化された多孔質シート又は多孔質積層シートを得ることができる。カレンダー装置としては単一プレスロールによる通常のカレンダー装置の他に、これらが多段式に設置された構造をもつスーパーカレンダー装置を用いてもよい。これらの装置、及びカレンダー処理時におけるロール両側それぞれの材質(材質硬度)や線圧を目的に応じて選定すればよい。
ブロックポリイソシアネートを用いた多孔質シート又は多孔質積層シートの製造において熱キュア処理を行う場合、カレンダー処理は、乾燥と熱キュア処理との間に行う他に、乾燥及び熱キュア処理の後に行っても良く、熱カレンダー処理によって熱キュア処理とカレンダー処理(平滑化処理)とを同時に行っても良い。好ましい態様においては、多孔質積層シート形成工程において、多層湿紙を乾燥させること、熱キュア、及びカレンダー処理をこの順で行う。熱キュア処理及びカレンダー処理の組合せを含む方法によって多孔質シートを製造することは、目付10g/m2あたりの水系Wet強度0.3kg/15mm以上、及び/又は目付10g/m2あたりの非水系Wet強度0.3kg/15mm以上を有する多孔質シートの製造において特に有利である。
本発明の一態様は、前述の多孔質シートを含む(具体的には多孔質シートと樹脂とを含む)樹脂複合シート、及び前述の多孔質積層シートを含む樹脂複合シート、並びにこれを含む樹脂成形体を提供する。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、ゴム等を用いることができる。典型的な態様においては、樹脂複合シート中に多孔質シートが含まれ、多孔質シートの空孔内も樹脂で充填されている。好ましい態様においては、樹脂複合シートの樹脂が熱可塑性樹脂から成る。
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂;ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂等のニトリル系樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアミド;ポリウレタン;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸等のポリ(メタ)アクリレート樹脂;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;液晶ポリマー;シリコーン樹脂;アイオノマー;セルロース(木材パルプ、綿等の天然セルロース;ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン及びテンセル等の再生セルロース);ニトロセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。ブレンドする場合のブレンド比は各種用途に応じて適宜選択されればよい。
熱可塑性樹脂の中でも、100℃〜350℃の範囲内に融点を有する結晶性樹脂、又は、100〜250℃の範囲内にガラス転移温度を有する非晶性樹脂、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリフェニレンエーテル系樹脂及びこれらの2種以上の混合物が好ましく挙げられ、取り扱い性及びコストの観点からより好ましくはポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。
ここでいう結晶性樹脂の融点とは、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、23℃から10℃/分の昇温速度で昇温していった際に現れる吸熱ピークのピークトップ温度を指し、吸熱ピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側の吸熱ピークのピークトップ温度を指す。この時の吸熱ピークのエンタルピーは、10J/g以上であることが望ましく、より望ましくは20J/g以上である。また測定に際しては、サンプルを一度融点+20℃以上の温度条件まで加温し、樹脂を溶融させたのち、10℃/分の降温速度で23℃まで冷却したサンプルを用いることが望ましい。
ここでいう非晶性樹脂のガラス転移温度とは、動的粘弾性測定装置を用いて、23℃から2℃/分の昇温速度で昇温しながら、印加周波数10Hzで測定した際に、貯蔵弾性率が大きく低下し、損失弾性率が最大となるピークのピークトップの温度をいう。損失弾性率のピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側のピークのピークトップ温度を指す。この際の測定頻度は、測定精度を高めるため、少なくとも20秒に1回以上の測定とすることが望ましい。また、測定用サンプルの調製方法については特に制限はないが、成形歪の影響をなくす観点から、熱プレス成形品の切り出し片を用いることが望ましく、切り出し片の大きさ(幅及び厚み)はできるだけ小さい方が熱伝導の観点より望ましい。
熱可塑性樹脂として好ましいポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα−オレフィン類)やアルケン類をモノマー単位として重合して得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等に例示されるエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等に例示されるポリプロピレン系(共)重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等に代表されるエチレン等α−オレフィンの共重合体等が挙げられる。
ここで最も好ましいポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられる。特に、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下であるポリプロピレンが好ましい。MFRの下限値は、より好ましくは5g/10分であり、さらにより好ましくは6g/10分であり、最も好ましくは8g/10分である。また、上限値は、より好ましくは25g/10分であり、さらにより好ましくは20g/10分であり、最も好ましくは18g/10分である。MFRは、組成物の靱性向上の観点から上記上限値を超えないことが望ましく、組成物の流動性の観点から上記下限値を超えないことが望ましい。
また、セルロースとの親和性を高めるため、酸変性されたポリオレフィン系樹脂も好適に使用可能である。この際の酸としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸及び、これらの無水物、並びにクエン酸等のポリカルボン酸から、適宜選択可能である。これらの中でも好ましいのは、変性率の高めやすさから、マレイン酸又はその無水物である。変性方法については特に制限はないが、過酸化物の存在下又は非存在下で融点以上に加熱して溶融混練する方法が一般的である。酸変性するポリオレフィン樹脂としては前出のポリオレフィン系樹脂はすべて使用可能であるが、ポリプロピレンが中でも好適に使用可能である。酸変性されたポリプロピレンは、単独で用いても構わないが、樹脂全体としての変性率を調整するため、変性されていないポリプロピレンと混合して使用することがより好ましい。この際のすべてのポリプロピレンに対する酸変性されたポリプロピレンの割合は、0.5質量%〜50質量%である。より好ましい下限は、1質量%であり、更に好ましくは2質量%、更により好ましくは3質量%、特に好ましくは4質量%、最も好ましくは5質量%である。また、より好ましい上限は、45質量%であり、更に好ましくは40質量%、更により好ましくは35質量%、特に好ましくは30質量%、最も好ましくは20質量%である。樹脂とセルロースとの界面強度を維持するためには、下限以上が好ましく、樹脂としての延性を維持するためには、上限以下が好ましい。
酸変性されたポリプロピレンのISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)は、セルロース界面との親和性を高めるため、50g/10分以上であることが好ましい。より好ましい下限は100g/10分であり、更により好ましくは150g/10分、最も好ましくは200g/10分である。上限は特にないが、機械的強度の維持から500g/10分である。MFRをこの範囲内とすることにより、セルロースと樹脂との界面に存在しやすくなるという利点を享受できる。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアミド系樹脂の例示としては、ラクタム類の重縮合反応により得られるポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12や、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1−6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、m−キシリレンジアミン等のジアミン類と、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4ジカルボン酸等、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸等のジカルボン酸類との共重合体として得られるポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド2M5,T、ポリアミドMXD,6、ポリアミド6、C、ポリアミド2M5,C及び、これらがそれぞれ共重合された共重合体、一例としてポリアミド6,T/6,I等の共重合体が挙げられる。
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12といった脂肪族ポリアミドや、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,Cといった脂環式ポリアミドがより好ましい。
ポリアミド系樹脂の末端カルボキシル基濃度には特に制限はないが、下限値は、20μモル/gであると好ましく、より好ましくは30μモル/gである。また、その末端カルボキシル基濃度の上限値は、150μモル/gであると好ましく、より好ましくは100μモル/gであり、更に好ましくは80μモル/gである。
ポリアミド系樹脂において、全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])は、0.30〜0.95であることがより好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらにより好ましくは0.40であり、最も好ましくは0.45である。またカルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらにより好ましくは0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、微細セルロースの組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られる組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
ポリアミド系樹脂の末端基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミドの重合時に所定の末端基濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ 酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコール等の末端基と反応する末端調整剤を重合液に添加する方法が挙げられる。
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格等の点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及び安息香酸からなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましく、酢酸が最も好ましい。
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン及びこれらの任意の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格等の点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンからなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましい。
これら、アミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。それらの末端基の濃度を求める方法として、具体的に、特開平7−228775号公報に記載された方法が推奨される。この方法を用いる場合、測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が有用である。また、1H−NMRの積算回数は、十分な分解能を有する機器で測定した際においても、少なくとも300スキャンは必要である。そのほか、特開2003−055549号公報に記載されているような滴定による測定方法によっても末端基の濃度を測定できる。ただし、混在する添加剤、潤滑剤等の影響をなるべく少なくするためには、1H−NMRによる定量がより好ましい。
ポリアミド系樹脂は、濃硫酸中30℃の条件下で測定した固有粘度[η]が、0.6〜2.0dL/gであることが好ましく、0.7〜1.4dL/gであることがより好ましく、0.7〜1.2dL/gであることが更に好ましく、0.7〜1.0dL/gであることが特に好ましい。好ましい範囲、その中でも特に好ましい範囲の固有粘度を有する上記ポリアミドを使用すると、樹脂複合シート中への含浸性を大幅に高め、樹脂複合シート製造が容易になるという効用を与えることができる。
本開示において、「固有粘度」とは、一般的に極限粘度と呼ばれている粘度と同義である。この粘度を求める具体的な方法は、96%濃硫酸中、30℃の温度条件下で、濃度の異なるいくつかの測定溶媒のηsp/cを測定し、そのそれぞれのηsp/cと濃度(c)との関係式を導き出し、濃度をゼロに外挿する方法である。このゼロに外挿した値が固有粘度である。
これらの詳細は、例えば、Polymer Process Engineering(Prentice−Hall,Inc 1994)の291ページ〜294ページ等に記載されている。
このとき濃度の異なるいくつかの測定溶媒の点数は、少なくとも4点とすることが精度の観点より望ましい。このとき、推奨される異なる粘度測定溶液の濃度は、好ましくは、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dLの少なくとも4点である。
熱可塑性樹脂として好ましいポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETと称することもある)、ポリブチレンサクシネート(脂肪族多価カルボン酸と脂肪族ポリオールとからなるポリエステル樹脂(以下、単位PBSと称することもある)、ポリブチレンサクシネートアジペート(以下、単にPBSAと称することもある)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、単にPBATと称することもある)、ポリヒドロキシアルカン酸(3−ヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂。以下、単にPHAと称することもある)、ポリ乳酸(以下、単にPLAと称することもある)、ポリブチレンテレフタレート(以下、単にPBTと称することもある)、ポリエチレンナフタレート(以下、単にPENと称することもある)、ポリアリレート(以下、単にPARと称することもある)、ポリカーボネート(以下、単にPCと称することもある)等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でより好ましいポリエステル系樹脂は、PET、PBS、PBSA、PBT、PENが挙げられ、更に好ましくは、PBS、PBSA、PBTが挙げられる。
また、ポリエステル系樹脂は、重合時のモノマー比率や末端安定化剤の添加の有無や量によって、末端基を自由に変えることが可能であるが、該ポリエステル系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30〜0.95であることがより好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらにより好ましくは、0.40であり、最も好ましくは0.45である。また、カルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらにより好ましくは、0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、微細セルロースの組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られる組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアセタール系樹脂には、ホルムアルデヒドを原料とするホモポリアセタールと、トリオキサンを主モノマーとし、1,3−ジオキソランをコモノマー成分として含むコポリアセタールが一般的であり、両者とも使用可能であるが、加工時の熱安定性の観点から、コポリアセタールが好ましく使用できる。特に、コモノマー成分(例えば1,3−ジオキソラン)由来構造の量としては0.01〜4モル%の範囲内がより好ましい。コモノマー成分由来構造の量の好ましい下限量は、0.05モル%であり、より好ましくは0.1モル%であり、さらにより好ましくは0.2モル%である。また好ましい上限量は、3.5モル%であり、さらに好ましくは3.0モル%であり、さらにより好ましくは2.5モル%、最も好ましくは2.3モル%である。
押出加工や成形加工時の熱安定性の観点から、下限は上述の範囲内とすることが望ましく、機械的強度の観点より、上限は上述の範囲内とすることが望ましい。
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで変性した油変性レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、フェノキシ樹脂、尿素(ユリア)樹脂、メラミン樹脂などのトリアジン環含有樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ノルボルネン系樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。ブレンドする場合のブレンド比は各種用途に応じて適宜選択されればよい。
[光硬化性樹脂]
光硬化性樹脂の具体例としては、特に制限されるものではないが、公知一般の(メタ)アクリレート樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、反応機構により、概ね光により発生したラジカルによりモノマーが反応するラジカル反応型と、モノマーがカチオン重合するカチオン反応型とに分類される。ラジカル反応型のモノマーには、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物(例えばある種のビニルエーテル)等が該当する。カチオン反応型としては、エポキシ化合物、ある種のビニルエーテル等が該当する。なお、例えば、カチオン反応型として用いることができるエポキシ化合物は、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の両者のモノマーとなり得る。
(メタ)アクリレート化合物とは、(メタ)アクリレート基を分子内に一つ以上有する化合物を指す。(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
ビニル化合物としては、ビニルエーテル、スチレン及びスチレン誘導体、ビニル化合物等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。スチレン誘導体としては、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。ビニル化合物としては、トリアリルイソイシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
さらに、光硬化性樹脂の原料として、いわゆる反応性オリゴマーを用いてもよい。反応性オリゴマーとしては、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、ウレタン結合、及びエステル結合から選ばれる任意の組合せを同一分子内に併せ持つオリゴマー、例えば、(メタ)アクリレート基とウレタン結合とを同一分子内に併せ持つウレタンアクリレート、(メタ)アクリレート基とエステル結合とを同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート、エポキシ樹脂から誘導され、エポキシ基と(メタ)アクリレート基とを同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート、等が挙げられる。
光硬化性樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。ブレンドする場合のブレンド比は各種用途に応じて適宜選択されればよい。
[エラストマー(ゴム)]
エラストマー(すなわちゴム)の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、改質天然ゴム(エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム、脱タンパク天然ゴム等)、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらのゴムは、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。ブレンドする場合のブレンド比は各種用途に応じて適宜選択されればよい。
[添加剤]
本実施形態の樹脂複合シートは、その性能を向上させるために、必要に応じて添加剤をさらに含んでも良い。添加剤としては特に限定されないが、例えば分散安定剤;微細セルロース以外の高耐熱性の有機ポリマーからなる微細繊維フィラー成分(例えば、アラミド繊維のフィブリル化繊維又は微細繊維);相溶化剤;可塑剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;ゼオライト、セラミックス、タルク、シリカ、金属酸化物、金属粉末等の無機化合物;着色剤;香料;顔料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;紫外線分散剤;消臭剤等が挙げられる。任意の添加剤の樹脂複合シート中の含有割合は、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で適宜選択されるが、例えば0.01〜50質量%、又は0.1〜30質量%であってよい。
樹脂複合シート総質量に対する微細セルロース繊維質量比率は樹脂複合シート質量に対し1質量%以上80質量%以下、好ましくは5質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上60質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以上60質量%以下である。樹脂複合シートの溶融時の流動性と機械的特性とのバランスの観点から、微細セルロース量を上述の範囲内とすることが望ましい。
本実施形態の樹脂複合シートは、低い線膨張性を示すことが可能である。具体的には、本実施形態の樹脂複合シートの温度範囲0℃〜60℃における線膨張係数は、好ましくは80ppm/k以下、より好ましくは70ppm/k以下、さらに好ましくは60ppm/k以下、さらに好ましくは55ppm/k以下、特に好ましくは50ppm/k以下、最も好ましくは45ppm/k以下である。線膨張係数は、低いほど好ましいが、樹脂複合シートの製造容易性の観点から、例えば10ppm/k以上、又は15ppm/k以上であってよい。
樹脂複合シートのCTEの測定方法として、樹脂複合シートを精密カットソーにて縦4mm、横4mmでサンプル片を切り出し、測定温度範囲−10℃〜80℃で測定し、0℃〜60℃の間での膨張係数を算出する。
本実施形態の樹脂複合シートのCTEの縦横比(異方性)は好ましくは0.5以上1.5以下、より好ましくは0.6以上1.4以下、さらに好ましくは0.7以上1.3以下、さらにより好ましくは0.8以上1.2以下、特に好ましくは0.9以上1.1以下、最も好ましくは0.95以上1.05以下である。樹脂成形体を製造し他素材の部品と接合した際の歪が起きにくいという観点から、CTEの縦横比が0.5以上1.5以下であることが望ましい。
本実施形態の樹脂複合シートの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば樹脂が熱可塑性樹脂である場合は以下のような操作によって製造することができる。なお下記のような方法において、本開示の多孔質シートに代えて本開示の多孔質積層シートを用いることも好ましい。
(A)液状の熱可塑性樹脂前駆体を多孔質シートに含浸させて、該前駆体を重合させる方法。
(B)熱可塑性樹脂前駆体を含む溶液を多孔質シートに含浸又は塗布した後、加熱プレス等で密着させ、重合させる方法。
(C)熱可塑性樹脂の溶融体を多孔質シートに含浸し、加熱プレス等で密着させる方法。
(D)溶媒に溶解させた熱可塑性樹脂液を多孔質シートに含浸又は塗布した後、乾燥し、加熱プレス等で密着させる方法。
(E)多孔質シートを熱可塑性樹脂フィルムに挟み、加熱プレス等で溶融させて多孔質シートに含浸させる方法。
(F)多孔質シートと熱可塑性樹脂フィルムとを交互に配置し、加熱プレス等で溶融させて複数の多孔質シートに含浸させる方法。
又、例えば、樹脂が熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂である場合は以下のような操作によって製造することができる。
(A)液状の熱硬化性樹脂前駆体又は光硬化性樹脂前駆体を多孔質シートに含浸させて、該前駆体を重合させる方法。
(B)熱硬化性樹脂前駆体又は光硬化性樹脂前駆体を含む溶液を多孔質シートに含浸又は塗布した後、乾燥させて、重合させる方法。
本実施形態の樹脂複合シートは、目的とする樹脂成形体の形状や成形法に合わせて任意の形状に加工することができる。1枚単独、或いは所望の厚さとなるように積層することができ、積層枚数を調節することで、成形体の厚みや強度を調整することができる。
成形する工程は、特に制限されるものではないが、プレス成形する工程、真空成形する工程及び圧空成形する工程から選択される少なくとも1工程であることが好ましい。また、これらの成形工程は複数の成形工程を組み合わせたものでも良く、複数の工程を同時に実施し、一工程としても良い。
なお、樹脂が熱硬化性樹脂及又は硬化性樹脂である場合においては、重合を制限し未硬化又は半硬化のプリプレグと呼ばれるシートを製造した上で、プリプレグを単層又は積層にして、加圧及び加熱して樹脂を硬化及び成形させる方法を用いてもよい。熱及び圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等が挙げられるが、これらの成形方法に限定されない。
本実施形態の樹脂複合シートは、種々の形状の成形体に成形できる。成形体は用途によってどのような形状であってもよく、三次元の立体形状でも、シート状、フィルム状又は繊維状でも構わない。また、成形体の一部(例えば数箇所)を加熱処理する事により溶融させ、例えば樹脂又は金属の基板に接着して用いても構わない。成形体は、樹脂又は金属の基板に塗布された塗膜であってもよく、基板との積層体を形成してもよい。また、シート状、フィルム状又は繊維状の成形体につき、アニール処理、エッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理、シボ転写、切削、表面研磨などの二次加工を行っても構わない。
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明する。なお、物性の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)微細セルロース繊維の数平均繊維径
微細セルロース繊維の数平均繊維径はtert−ブタノール置換により得られた多孔質サンプルを比表面積測定することで求めた。まず、微細セルロース繊維スラリーの遠心分離により濃縮物を得た(固形分率5質量%以上)。続いて、微細セルロース繊維0.5gを含む該濃縮物を濃度が0.2質量%となるように、該濃縮物をtert−ブタノール中に分散させ、さらに超音波分散等で凝集物が無い状態まで分散処理を行った。得られたtert−ブタノール分散液100gをろ紙(5C, アドバンテック, 直径90mm)上で濾過を行い、フィルター上に形成された湿紙を150℃にて乾燥させ、多孔質サンプルを得た。このシートの透気抵抗度がシート目付10g/mあたり100sec/100ml以下のものを多孔質サンプルとし、測定した。
23℃、50%RHの環境で1日静置した多孔質サンプルの目付W(g/m)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)を用いて透気抵抗度R(sec/100ml)を測定した。この時、下記式(16)に従い、10g/m2目付あたりの値を算出した。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=R/W×10 式(16)
つづいて、比表面積・細孔分布測定装置(Nova−4200e, カンタクローム・インスツルメンツ社製)にて、多孔質サンプル約0.2gを真空下で120℃、2時間乾燥を行った後、液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を相対蒸気圧(P/P)が0.05以上0.2以下の範囲にて5点測定した後(多点法)、同装置プログラムによりBET比表面積(m/g)を算出した。得られたBET比表面積を下記式(17)に代入し、微細セルロース繊維の数平均繊維径を算出した。
D(nm)=2667/BET比表面積(m2/g) 式(17)
(2)目付
室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管した多孔質シートを20cm×20cmに裁断し(面積0.04m2)、質量W1(g)を計測し、下記式(18)より算出した。
目付W(g/m2)=W1/0.04 式(18)
(3)厚み
23℃、50%RHの環境で1日静置した多孔質シート(20cm×20cm)、Mitutoyo製の膜厚計(Model ID−C112XB)で合計10点の膜厚を測定し、その平均値を膜厚(μm)とした。
(4)目付10g/m2あたり透気抵抗度
23℃、50%RHの環境で1日静置した多孔質シート(20cm×20cm)に対して目付(W)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)を用いて、10点測定し、その平均値を平均透気抵抗度AR(sec/100ml)とした。この時、下記式(19)に従い、10g/m2目付あたりの値を算出した。なお、本装置で測定できる透気抵抗度の上限は100万sec/100mlであり、上限を超えた値については100万sec/100mlとして計算を行った。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=AR/W×10 式(19)
(5)湿潤乾燥前後の透気抵抗度変化率
23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプル(20cm×20cm)を5cm×5cmに裁断し、そこから5枚を選んだ。この5枚のサンプルに対してそれぞれ1点ずつ透気抵抗度を測定し、その測定場所に印をつけた。この透気抵抗度を初期透気抵抗度R1とし、5枚の平均値をAR1とした。つづいて、そのサンプルを金属プレート上に置き、霧吹きで水を万遍なくかけ、サンプル周囲に付着した水滴を拭き取った。この湿潤操作前後でのシート質量を測定しシート水分率を測定した。この時のシート水分率が300質量%以上400質量%以下である事を確認した後、80℃のオーブンにて1時間乾燥させ、印をつけた場所の透気抵抗度を再度測定した。この透気抵抗度を操作後透気抵抗度R2とし、5枚のサンプルの平均値をAR2(sec/100ml)とした。最終的に下記式(20)より湿潤乾燥前後の透気抵抗度変化率(%)を算出した。湿潤乾燥前後の透気抵抗度変化率が100%以上の場合は×、100%未満の場合は○とした。
湿潤乾燥前後の透気抵抗度変化率(%)=(AR2−AR1)/AR1×100 式(20)
なお、シート水分率は多孔質シートの場合、下記式(21)を用い初期多孔質シート質量W2(g)及び湿潤後多孔質シート質量W3(g)より算出した。
シート水分率=(W3−W2)/W2×100 式(21)
(6)異方性指数
抄紙機械での製造時に紙の進行方向に平行な紙の方向を「縦」、紙の進行方向に垂直な紙の方向を「横」として多孔質シートのサンプリングを行った。室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管した多孔質シート(20cm×20cm)から縦方向と横方向の15mm幅試験片を作製し、株式会社島津製作所のオートグラフを用いてチャック間距離100mm、引張速度10mm/minとして10点のDry強度を測定し、その平均値をDry強度とした。得られたDry強度より、異方性指数を下記式(22)算出した。
異方性指数 = Dry強度(縦)/Dry強度(横) 式(22)
(7)CTEの縦横比
室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管した樹脂複合シートからサンプル片を4mm×4mmで2枚切り出し、TA Instruments製の熱機械分析装置Q400で多孔質シートの縦及び横それぞれの方向について温度範囲−10〜80℃で測定し、0℃〜60℃のCTEを算出した。得られたCTEより、CTEの縦横比を下記式(23)より算出した。
CTEの縦横比 = CTE(縦)/CTE(横) 式(23)
<製造例1>
微細セルロース繊維スラリーを下記の方法で製造した。
日本紙パルプ商事(株)より入手したコットンリンターパルプを10質量%となるように水に浸漬させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行った。得られた膨潤パルプは水洗し、水を含む精製パルプを得た。つづいて、精製パルプを固形分1.5質量%となるように水中に分散させて、ディスクリファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで該水分散体を20分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で徹底的に叩解を行い、微細セルロース繊維スラリーA(固形分濃度:1.5質量%)を得た。該微細セルロース繊維スラリーAの多孔質サンプルより算出された微細セルロース繊維の数平均繊維径は53nmであった。
<製造例2>
抄紙スラリーを下記の方法で製造した。抄紙スラリーの組成を表1に示す。
微細セルロース繊維スラリーA(固形分率:1.5質量%)100質量部を撹拌タンクに入れ、固形分濃度0.5質量%まで希釈し、多孔質化剤E103の1質量%水溶液を0又は15質量部添加し、10分間撹拌することで抄紙スラリーを得た。なお、多孔質化剤は水に溶解しないため、滴下する直前にラインミキサーで10分間撹拌した上で激しく振とうした上で抄紙スラリー中に添加した。
E103:エマルゲン103、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB8.1、花王社製
[実施例1〜5、比較例1〜2]
<多孔質シート>
多孔質シートは下記の方法で製造した。多孔質シートの物性を表1に示す。
抄紙スラリーを傾斜ワイヤー型抄紙機にて抄紙し、湿潤シートを得た。該湿潤シートは、ドラムドライヤーにて温度80℃で乾燥して多孔質シートS1〜S5及びR1〜R2を得た。所望の目付及び異方性指数となるよう、抄紙スラリー濃度、J/W比(微細セルロース繊維原料ジェットとワイヤーとの速度比)及び傾斜角度を変えて抄紙を行った。
S1〜S5は異方性指数が1.22〜1.49と異方性は小さい一方、R1は2.2と比較的大きかった。多孔質化剤を用いないR2は10g/mあたりの透気抵抗度が20000sec/100mlと高い緻密膜であった。
<樹脂複合シート>
樹脂複合シートは下記の方法で製造した。樹脂複合シートの製造条件及びシート物性を表1に示す。
多孔質シートS1〜S5及びR1〜R2を1質量部とした時、2質量部相当のナイロン6フィルム(宇部興産製1013Bを用いてTダイで製膜したもの)2枚の間に多孔質シートを挟み、250℃の温度で真空熱プレスをプレス面圧X MPaの条件で、10分実施した。異方性の小さな多孔質シートS1〜S5を用いた樹脂複合シートのCTE縦横比は0.50以上であるのに対し、異方性の大きな多孔質シートR1では0.50以下となり、樹脂複合シートの異方性も大きかった。多孔質シートではないR2を用いた樹脂複合シートは樹脂が多孔質シート内部に浸透せず、微細セルロース繊維の高比表面積を利用することができないため、CTE自体が大きかった。
本実施形態の多孔質シートはろ過フィルターや細胞培養基材、全熱交換機用素子、各種機能紙、吸収材料、医療材料用の支持体等の材料、繊維強化プラスチックの支持体として適用できる。特に、熱硬化性化合物や光硬化性化合物、これらの化合物を熱硬化又は光硬化した樹脂、熱可塑性樹脂を含浸させて製造した樹脂複合シートは、例えば電子材料分野において、プリント配線基板、絶縁フィルム、コア材に好適に使用できる。また、鋼板、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックの代替としても好適に使用できる。具体的には、産業用機械部品(例えば電磁機器筐体、ロール材、搬送用アーム、医療機器部材など)、一般機械部品、自動車部品(具体的には、フェンダー、フロントバンパー、リアバンパー、ドアモジュール、ルーフ、フード、バックドアモジュール、アンダーボディ―パネル、シャーシ等に好適に用いることができる。)、鉄道・車両等部品、船舶部材(例えば船体、座席など)、航空関連部品(例えば、胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席、内装材など)、宇宙機、人工衛星部材(モーターケース、主翼、構体、アンテナなど)、電子・電気部品(例えばパーソナルコンピュータ筐体、携帯電話筐体、OA機器、AV機器、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品など)、建築・土木材料(例えば、鉄筋代替材料、トラス構造体、つり橋用ケーブルなど)、生活用品、スポーツ・レジャー用品(例えば、ゴルフクラブシャフト、釣り竿、テニスやバトミントンのラケットなど)、風力発電用筐体部材等、また容器・包装部材、例えば、燃料電池に使用されるような水素ガスなどを充填する高圧力容器用の材料、透明材料(例えば、自動車や建物のガラス、OA機器やAV機器のディスプレイのカバーガラスなど)となり得る。

Claims (13)

  1. 以下の(1)〜(6)の要件:
    (1)平均繊維径が2nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維で構成されていること、
    (2)目付10g/m2あたりの透気抵抗度が7000sec/100ml以下であること、
    (3)目付が10g/m2以上3000g/m2以下であること、
    (4)厚みが20μm以上5000μm以下であること、
    (5)湿潤乾燥前後の透気抵抗度の変化率が100%以下であること、
    (6)異方性指数(目付10g/mあたりのシートの縦と横のDry強度比)が1.0以上2.0以下であること、
    を全て満たす多孔質シート。
  2. 目付10g/m2あたりの水系Wet強度が0.3kg/15mm以上である請求項1に記載の多孔質シート。
  3. 目付10g/m2あたりの非水系Wet強度が0.3kg/15mm以上である請求項1又は2に記載の多孔質シート。
  4. 多孔質化剤を前記微細セルロース繊維質量の0.1質量%以上100質量%以下含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質シート。
  5. 前記多孔質シート中央部の細孔の平均最大長径が10μm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質シート。
  6. フィラー材を前記多孔質シート質量の1質量%以上50質量%以下含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質シート。
  7. 多孔質化剤と、微細セルロース繊維と、水とを含むスラリーを調製する調製工程、
    該スラリーを抄紙法又は塗工法により湿紙に形成する製膜工程、及び、
    該湿紙を少なくとも乾燥させることによって多孔質シートを得る多孔質シート形成工程、を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多孔質シートの製造方法。
  8. 前記スラリーがブロックポリイソシアネートをさらに含み、
    前記多孔質シート形成工程が、前記湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理を含む、請求項7に記載の多孔質シートの製造方法。
  9. 前記多孔質シート形成工程が、前記湿度を乾燥させた後に行われるカレンダー処理を含む、請求項7又は8に記載の多孔質シートの製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の多孔質シートを含む、樹脂複合シート。
  11. 前記樹脂複合シートが樹脂として熱可塑性樹脂を含む、請求項10に記載の樹脂複合シート。
  12. 前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリフェニレンエーテル系樹脂からなる群から選ばれる、請求項11に記載の樹脂複合シート。
  13. 請求項10〜12のいずれか一項に記載の樹脂複合シートを含む、樹脂成形体。
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