JP6393408B2 - セルロースフィルム、配線基板およびセルロースフィルムの製造方法 - Google Patents

セルロースフィルム、配線基板およびセルロースフィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロースフィルム、配線基板およびセルロースフィルムの製造方法に関する。
近年、セルロースを充填材として利用した複合体が提案されている。
この複合体には、セルロースの微細な繊維が含まれており、このセルロース繊維としては、例えば、セルロースのフィブリル状物質を機械的に微細化してなるセルロースミクロフィブリル等が挙げられる。
このような微細化セルロース繊維を配合した複合体は、機械的強度および透明性が高く、軽量で、熱膨張係数が小さいという特徴を有するものとなる。
そのため、光学分野、構造材料分野、建材分野、精密機械分野、半導体分野等の種々の分野において、プラスチックやガラスの代替材料として期待されている。
例えば、特許文献1には、「樹脂と繊維状フィラーとを含む複合体組成物であって、繊維状フィラーの平均繊維径が4〜1000nmであることを特徴とする複合体組成物。」が記載されており([請求項1])、この組成物を成形した厚みが10μm〜500μmの複合体として、湿度膨張係数が100ppm/湿度%以下の複合体が記載されている([請求項12][請求項15])。
特開2010−116477号公報
本発明者らは、特許文献1などに記載された従来公知の繊維複合材料について検討したところ、複合材料としてセルロース繊維を含有するフィルムを用いた場合には、高湿度環境下において、フィルムの面内の弾性率(以下、「面内弾性率」ともいう。)が低下し、靱性が劣る(破断伸度が小さくなる)ことを明らかとした。
そこで、本発明は、高湿度環境下においても、面内弾性率を維持し、靱性に優れるセルロースフィルム、配線基板およびセルロースフィルムの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、平均繊維径が所定の範囲にあるセルロース繊維を含有し、厚み方向の湿度膨張係数が特定の値を示すフィルムが、高湿度環境下においても、面内弾性率を維持し、靱性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] 平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維を含有し、厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHである、セルロースフィルム。
[2] セルロース繊維の平均繊維長が200〜1500nmである、[1]に記載のセルロースフィルム。
[3] セルロース繊維の含有量が5質量%以上である、[1]または[2]に記載のセルロースフィルム。
[4] セルロース繊維の少なくとも一部が、多環芳香族炭化水素で化学修飾されたセルロース繊維である、[1]〜[3]のいずれかに記載のセルロースフィルム。
[5] 更に、架橋剤を含有し、
架橋剤の含有量が、セルロース繊維の質量の0.1倍以上20倍以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のセルロースフィルム。
[6] 架橋剤が、水分散型で非カチオン性のポリイソシアネートである、[5]に記載のセルロースフィルム。
[7] 架橋剤が、水分散型で非カチオン性のブロックポリイソシアネートである、[5]に記載のセルロースフィルム。
[8] 厚みが10〜150μmである、[1]〜[7]のいずれかに記載のセルロースフィルム。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載のセルロースフィルムを有する基板と、基板上に設けられる配線回路とを有する、配線基板。
[10] 配線回路が、有機半導体を用いた回路である、[9]に記載の配線基板。
[11] [1]に記載のセルロースフィルムを作製するセルロースフィルムの製造方法であって、
平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維を含有するフィルムを製膜する製膜工程と、
製膜工程の後、フィルムに対して、セルロース繊維の質量に対して0.1倍以上20倍以下の水を含浸させた状態で、延伸処理を施し、セルロースフィルムを作製する延伸工程とを有する、セルロースフィルムの製造方法。
[12] [1]に記載のセルロースフィルムを作製するセルロースフィルムの製造方法であって、
平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維および分散媒体を含有する溶液を基材上に塗工し、塗膜を形成する塗工工程と、
塗工工程の後に、塗膜を乾燥させ、乾燥後の塗膜を基材から剥離する剥離工程と、
剥離工程の後に、剥離後の塗膜を加熱して架橋し、セルロースフィルムを作製する熱架橋工程とを有する、セルロースフィルムの製造方法。
[13] [1]に記載のセルロースフィルムを作製するセルロースフィルムの製造方法であって、
平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維および分散媒体を含有する溶液を基材上に塗工し、塗膜を形成する塗工工程と、
塗工工程の後に、塗膜を乾燥させてセルロースフィルムを作製する乾燥工程とを有し、
乾燥工程が、塗膜の端部における乾燥時間Aを、塗膜の中央部における乾燥時間Bの0.5倍以上0.95倍以下とする工程である、セルロースフィルムの製造方法。
ここで、塗膜の端部とは、塗膜の端から塗膜の一辺の長さの5%以上30%以下の幅を有する周縁領域をいい、塗膜の中央部とは、塗膜の端部以外の領域をいう。
本発明によれば、高湿度環境下においても、面内弾性率を維持し、靱性に優れるセルロースフィルム、配線基板およびセルロースフィルムの製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の配線基板の一例である有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート−トップコンタクト型)の構造の断面を示す概略図である。 図2は、本発明の配線基板の一例である有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート−ボトムコンタクト型)の構造の断面を示す概略図である。 図3は、実施例で作製した有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート−ボトムコンタクト型)の構造の断面を示す概略図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[セルロースフィルム]
本発明のセルロースフィルムは、平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維を含有し、厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHである、セルロースフィルムである。
また、本発明のセルロースフィルムは、セルロース繊維の平均繊維長が200〜1500nmであるのが好ましい。
<平均繊維径>
セルロース繊維の平均繊維径とは、以下のように測定した値をいう。
セルロース繊維を含有するスラリーを調製し、このスラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)観察用試料とする。径の大きなセルロース繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)像を観察してもよい。
構成する繊維の大きさに応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍、50000倍および100000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。ただし、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、この直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の幅(繊維の短径)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維径を読み取る。
このように読み取った繊維径を平均して平均繊維径を求める。
<平均繊維長>
セルロース繊維の平均繊維長とは、以下のように測定した値をいう。
すなわち、セルロース繊維の繊維長は、上述した平均繊維径を測定する際に使用した電子顕微鏡観察画像を解析することにより求めることができる。
具体的には、上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の繊維長を読み取る。
こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維長を読み取る。
このように読み取った繊維長を平均して平均繊維長を求める。
<厚み方向の湿度膨張係数>
セルロースフィルムの厚み方向の湿度膨張係数は、以下のように測定した値をいう。
(1)セルロースフィルムを25℃30%RHで12時間以上調湿し、厚みを測定(T)する。
(2)セルロースフィルムを25℃70%RHで12時間以上調湿し、厚みを測定(T)する。
(3)下記式を用い、厚み方向の湿度膨張係数を求める。
厚み方向の湿度膨張係数(ppm/%RH)={(T−T)/T}×(1000000/40)
なお、上記式中の「40」は、測定した相対湿度の差(%)である。
本発明のセルロースフィルムは、上述した通り、平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維を含有し、厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHであることにより、高湿度環境下においても、面内弾性率を維持し、靱性が良好となる。
このように面内弾性率を維持し、靱性が良好となる理由は、詳細には明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
まず、セルロース繊維は、吸湿性が高く、高湿度環境下で湿気を吸湿すると、体積膨張する。
そのため、本発明では、平均繊維径を3〜50nmとし、厚み方向の湿度膨張係数を500〜8000ppm/%RHとすることにより、吸湿に伴う体積膨張を厚み方向で緩和させ、面内方向の体積膨張を低減させることができたと考えられる。
このことは、平均繊維径が3〜50nmの範囲外であり、かつ、厚み方向の湿度膨張係数が500ppm/%RH未満である比較例3および4が、面内の湿度寸法変化率が大きくなっていることからも推察することができる。
また、本発明のセルロースフィルムは、面内弾性率がより高くなり、靱性がより良好となる理由から、厚み方向の湿度膨張係数が、700〜5500ppm/%RHであるのが好ましく、1000〜5500ppm/%RHであるのがより好ましく、1500〜4000ppm/%RHであるのが更に好ましい。
以下に、本発明のセルロースフィルムに含まれるセルロース繊維および任意の架橋剤などについて詳述する。
〔セルロース繊維〕
本発明のセルロースフィルムに含まれるセルロース繊維とは、植物細胞壁の基本骨格などを構成するセルロースのミクロフィブリル、または、これを構成する繊維のことであり、平均繊維径(幅)が概ね100nm以下のいわゆるセルロースナノファイバー(CNF)をいう。
このようなセルロース繊維としては、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビートパルプ、ポテトパルプ、農産物残廃物、布、紙等に含まれる植物由来の繊維が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
木材としては、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等が挙げられる。
紙としては、例えば、脱墨古紙、段ボール古紙、雑誌、コピー用紙等が挙げられる。
パルプとしては、例えば、植物原料を化学的もしくは機械的に又は両者を併用してパルプ化することで得られるケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、セミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が挙げられる。
上記セルロース繊維は、化学修飾および/または物理修飾を施して機能性を高めたものであってもよい。
ここで、化学修飾としては、例えば、カルボキシ基、アセチル基、硫酸基、スルホン酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基などを付加させることなどが挙げられる。
また、上記セルロース繊維は、厚み方向の湿度膨張係数を上述した範囲(500〜8000ppm/%RH)内に調整することが容易となる理由から、少なくとも一部が、多環芳香族炭化水素で化学修飾されたセルロース繊維であることが好ましい。これは、多環芳香族が平面構造を取りやすく、多環芳香族炭化水素で化学修飾されたセルロース繊維が、フィルム面内に平行で並びやすくなるためと考えられる。
多環芳香族炭化水素としては、例えば、アズレン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、サポタリンなどの2環芳香族炭化水素;アセナフテン、アセナフチレン、アントラセン、フルオレン、フェナレン、フェナントレンなどの3環芳香族炭化水素;ベンズ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フルオレン、ベンゾ[c]フェナントレン、クリセン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、トリフェニレンなどの4環芳香族炭化水素;ベンゾピレン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]ピレン、ベンゾ[a]フルオランテン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ジベンズ[a,h]アントラセン、ジベンズ[a,j]アントラセン、ペンタセン、ペリレン、ピセン、テトラフェニレンなどの5環芳香族炭化水素;アンタントレン、1,12−ベンゾペリレン、サーキュレン、コランニュレン、コロネン、ジコロニレン、ジインデノペリレン、ヘリセン、ヘプタセン、ヘキサセン、ケクレン、オバレン、ゼトレンなどの6環以上の芳香族炭化水素;等が挙げられる。
これらのうち、2〜4環芳香族炭化水素であるのが好ましく、3環芳香族炭化水素であるのがより好ましくり、フルオレンであるのが更に好ましい。
また、化学修飾は、通常の方法を採ることができる。すなわち、セルロースを化学修飾剤と反応させることによって化学修飾することができる。必要に応じて、溶媒、触媒を用いたり、加熱、減圧等を行ったりしてもよい。
化学修飾剤の種類としては、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬、アルコール、イソシアナート、アルコキシシラン、オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸としては、例えば、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、ペンタン酸等が挙げられる。
また、多環芳香炭化水素の場合は、種々の官能基を多環芳香炭化水素に導入し、これとセルロース繊維の水酸基やカルボキシル基と反応させることができる。多環芳香炭化水素に官能基を導入する方法としては、国際公開第2011/148914号に記載のような水酸基を導入する方法、特開2014−218645号公報に記載のようにカルボン酸基を導入する方法、特許第5581180号に記載のようなエポキシ基を導入する方法を利用できる。
また、化学修飾を行った後には、反応を終結させるために水で充分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、後で着色の原因になったり、樹脂と複合化する際に問題となったりすることがある。水で充分に洗浄した後、さらにアルコール等の有機溶媒で置換することが好ましい。この場合、セルロースをアルコール等の有機溶媒に浸漬しておくことで置換される。
これらの化学修飾の量(修飾量)は、セルロース繊維の結晶性を乱し、セルロースフィルムの靭性がより向上する理由から、セルロース繊維のグルコピラノースユニット数の5%以上50%以下が好ましく、10%以上45%以下がより好ましく、15%以上40%以下が更に好ましい。
なお、このような化学修飾したセルロース繊維は、全量を目標修飾量にしたものを調製してもよく、高修飾量のものを調製し、低修飾量または未修飾セルロースと混合し平均修飾量を調製することも好ましい。
一方、物理修飾としては、金属やセラミック原料を、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどの物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、無電解メッキや電解メッキなどのメッキ法などにより表面被覆させる方法が挙げられる。
本発明においては、上記セルロース繊維の平均繊維径は、3〜50nmであり、3〜30nmであるのが好ましく、3〜20nmであるのがより好ましい。
セルロース繊維の平均繊維径が3nm以上であると、後述する延伸工程の際に水の含浸が良好となるためセルロース繊維がフィルムの全領域で面内方向に配向しやすくなり、セルロース繊維の平均繊維径が50nm以下であると、延伸工程におけるセルロース繊維の破断を抑制することができ、厚み方向の湿度膨張係数を上述した範囲(500〜8000ppm/%RH)内に調整することができる。
また、本発明においては、上記セルロース繊維の平均繊維長は、セルロース繊維同士の絡み合いを抑制し、セルロース繊維がフィルムの全領域で面内方向に配向しやすくなり、その結果、厚み方向の湿度膨張係数を上述した範囲(特に、1000〜5500ppm/%RH)内に調整しやすくなり、高湿度環境下における面内弾性率の低下をより抑制し、靱性もより良好となる理由から、200〜1500nmであるであるのが好ましく、300〜1200nmであるのがより好ましく、400〜800nmであるがの更に好ましい。
上記セルロース繊維の調製方法は特に限定されず、機械的または化学的に解砕する方法が好ましい。
機械的に解砕する方法としては、例えば、セルロース繊維含有材料の水懸濁液やスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸又は多軸混練機、ビーズミル等により機械的に摩砕または叩解することにより解繊する方法が挙げられる。機械処理法として、例えば、特許第5500842号公報、特許第5283050号公報、特許第5207246号公報、特許第5170193号公報、特許第5170153号公報、特許第5099618号公報、特許第4845129号公報、特許第4766484号公報、特許第4724814号公報、特許第4721186号公報、特許第4428521号公報、国際公開第11/068023号、特許第5477265号公報、特開2014−84434号公報などが挙げられる。
一方、化学的に解砕する方法としては、例えば、セルロース系原料を、N−オキシル化合物と、臭化物および/またはヨウ化物の存在下で、酸化剤を用いて酸化し、さらに酸化されたセルロースを湿式微粒化処理して解繊し、ナノファイバー化することにより製造することができる。化学処理法として、例えば、特許第5381338号公報、特許第4981735号公報、特許第5404131号公報、特許第5329279号公報、特許第5285197号公報、特許第5179616号公報、特許第5178931号公報、特許第5330882号公報、特許第5397910号公報などに記載された方法が挙げられる。
本発明においては、セルロースフィルムに含まれるセルロース繊維の含有量は、高湿度環境下における面内弾性率の低下をより抑制し、また、面内の湿度寸法変化率も小さくすることができる理由から、セルロースフィルムの全質量に対して5質量%以上であるのが好ましく、10〜70質量%であるのが好ましく、20〜50質量%であるのがより好ましい。
〔架橋剤〕
本発明のセルロースフィルムは、上述したセルロース繊維とともに架橋剤を含有しているのが好ましい。
架橋剤としては、例えば、カルボジイミド基、オキサゾリン基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、ジビニルスルホン、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリンなどの反応性官能基を有する化合物が挙げられる。
エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリシトール、ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、イソシアネート基を有する化合物(イソシアネート化合物)としては、例えば、イソシアネート基を2つ以上有する多官能のイソシアネートであるポリイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネートの基本骨格としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。中でも、黄変性が少ないという観点から脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
芳香族ポリイソシアネートの原料としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートの原料としては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
また、イソシアネート化合物は、上述したポリイソシアネートの誘導体であってもよく、例えば、上述したポリイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体、5量体、7量体等)と、1種類又は2種類以上の活性水素含有化合物とを反応させて得られた化合物が挙げられる。
上記化合物としては、アロファネート変性体(例えば、ポリイソシアネートと、アルコール類との反応より生成するアロファネート変性体等)、ポリオール変性体(例えば、ポリイソシアネートとアルコール類との反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)等)、ビウレット変性体(例えば、ポリイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体等)、ウレア変性体(例えば、ポリイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体等)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、ポリイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン等)、カルボジイミド変性体(ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体等)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体等が挙げられる。
また、上記化合物を生成するための活性水素含有化合物としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを含む1〜6価の水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、カルボキシル基含有化合物等が挙げられる。なお、空気中または反応場に存在する水や二酸化炭素等も含まれる。
1〜6価の水酸基含有化合物としては、例えば、非重合ポリオールと重合ポリオールがある。非重合ポリオールとは重合を履歴しないポリオールであり、重合ポリオールはモノマーを重合して得られるポリオールである。
ここで、非重合ポリオールとしては、例えば、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等が挙げられる。
モノアルコール類としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i―ブタノール、s−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−ノナノール、2−エチルブタノール、2,2−ジメチルヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
また、ジオール類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、フロログルシン、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。
また、トリオール類としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
また、テトラオール類としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリトリトール、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
一方、重合ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸の単独又は混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール;多価アルコールを用いてε−カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類;等が挙げられる。
また、ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等の複合金属シアン化合物錯体等を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダムまたはブロック付加して得られるポリエーテルポリオール類;エチレンジアミン類等のポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;が挙げられる。これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等も挙げられる。上記多価ヒドロキシ化合物としては、1)例えばジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、2)例えばエリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物、3)例えばアラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、4)例えばトレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類、5)例えばラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類、6)例えばスタキオース等の四糖類、等がある。
また、アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル等、グリセリンのアクリル酸モノエステル若しくはメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル若しくはメタクリル酸モノエステル等、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル等の群から選ばれた単独又は混合物を必須成分とし、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド、及びメタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独又は混合物の存在下、又は非存在下において重合させて得られるアクリルポリオールが挙げられる。
また、ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。更に、炭素数50以下のモノアルコール化合物である、イソブタノール、n−ブタノール、2エチルヘキサノール等を併用することができる。アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜20のモノハイドロカルビルアミン[アルキルアミン(ブチルアミン等)、ベンジルアミン及びアニリン等]、炭素数2〜20の脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジエチレントリアミン等)、炭素数6〜20の脂環式ポリアミン(ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数2〜20の芳香族ポリアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン及びジフェニルメタンジアミン等)、炭素数2〜20の複素環式ポリアミン(ピペラジン及びN−アミノエチルピペラジン等)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)、ジカルボン酸と過剰のポリアミンとの縮合により得られるポリアミドポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ヒドラジン(ヒドラジン及びモノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド(コハク酸ジヒドラジッド及びテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン(ブチルグアニジン及び1−シアノグアニジン等)及びジシアンジアミド等が挙げられる。チオール基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜20の1価のチオール化合物(エチルチオール等のアルキルチオール、フェニルチオール及びベンジルチオール)及び多価のチオール化合物(エチレンジチオール及び1,6−ヘキサンジチオール等)等が挙げられる。カルボキシル基含有化合物としては、1価のカルボン酸化合物(酢酸等のアルキルカルボン酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸)及び多価のカルボン酸化合物(シュウ酸やマロン酸等のアルキルジカルボン酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等)等が挙げられる。
本発明においては、上記ポリイソシアネートとして、水分散型のポリイソシアネートを用いることが好ましい。
水分散型のポリイソシアネートとしては、上述したポリイソシアネート等(誘導体含む)に、例えば、親水性基等を導入し自己乳化させたもの、界面活性剤等を添加して強制乳化したもの等が挙げられる。
具体的には、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」、DIC製の「バーノックDNW−5000、DNW−6000、DNW−6500」、旭化成製の「デュラネートWB30」、「デュラネートWB40」、「デュラネートWT20」、「デュラネートWT20」、「デュラネートWT30」、「デュラネートWE50」、Baxenden Chemical社製の「Aqua BI200」、「Aqua BI220」、明成化学工業(株)の「メイカネートTP−10」、「メイカネートTP−10」、「メイカネートWEB」、「メイカネートCX」、「SU−268A」、第一工業製薬(株)のエラストロンシリーズ等が挙げられる。
また、水分散型のポリイソシアネートは、一般的に、エマルジョンにした際のエマルジョン表面にアニオン性、ノニオン性およびカチオン性のいずれかの親水基が露出している。
ここで、アニオン性の親水基を導入する方法としては、例えば、上述したポリイソシアネート等(誘導体含む)に、アニオン性基を有する活性水素基含有化合物を反応させる方法が挙げられる。
また、ノニオン性の親水基を導入する方法としては、例えば、上述したポリイソシアネート等(誘導体含む)に、ノニオン性基を有する活性水素基含有化合物を反応させる方法が挙げられる。
また、カチオン性の親水基を導入する方法としては、例えば、上述したポリイソシアネート等(誘導体含む)に、カチオン性基を有する活性水素基含有化合物を反応させる方法が挙げられる。
アニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、1つのアニオン性基を有し、かつ、2つ以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
より具体的には、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸等のジヒドロキシルカルボン酸、例えば、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸等のジアミノカルボン酸、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸及び/又は無水フタル酸とのハーフエステル化合物等を挙げることができる。
また、スルホン酸基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。
また、リン酸基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェート等を挙げることができる。また、ベタイン構造含有基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、N−メチルジエタノールアミン等の3級アミンと1,3−プロパンスルトンとの反応によって得られるスルホベタイン基含有化合物等を挙げることができる。
また、これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させることによってアルキレンオキサイド変性体としてもよい。また、これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
ノニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、ノニオン性基として通常のアルコキシ基を含有しているポリアルキレンエーテルポリオール等が使用される。通常のノニオン性基含有ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール等も使用される。高分子ポリオールとしては、数平均分子量500〜10,000、特に500〜5,000のものが好ましく使用される。
カチオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、ヒドロキシル基又は1級アミノ基のような活性水素含有基と3級アミノ基を有する脂肪族化合物、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン等が挙げられる。また、3級アミンを有するN,N,N−トリメチロールアミン、N,N,N−トリエタノールアミンを使用することもできる。なかでも、3級アミノ基を有し、かつイソシアネート基と反応性のある活性水素を2個以上含有するポリヒドロキシ化合物が好ましい。また、これらカチオン性基を有する活性水素基含有化合物は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させることによってアルキレンオキサイド変性体としてもよい。また、これらカチオン性基を有する活性水素基含有化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。カチオン性基はアニオン性基を有する化合物で中和することで、塩の形で水中に分散せやすくすることもできる。アニオン性基とは、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が、スルホン基を有する化合物としては、例えば、エタンスルホン酸等が、隣酸基を有する化合物としては、例えば隣酸、酸性隣酸エステル等が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物が好ましく、更に好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸である。中和する場合のポリイソシアネートに導入されたカチオン性基:アニオン性基の当量比率は1:0.5〜1:3であり、好ましくは1:1〜1:1.5である。また、導入された三級アミノ基は、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等で四級化することもできる。
上述したポリイソシアネートと、上述したアニオン性基などを有する活性水素基含有化合物とを反応させる比率は、親水性の観点およびセルロース繊維との架橋点の観点から、イソシアネート基/活性水素基の当量比で1.05〜1000である好ましく、2〜200であるのがより好ましく、4〜100であるのが更に好ましい。
なお、上述したポリイソシアネートと活性水素基含有化合物との反応方法としては、両者を混合させて、通常のウレタン化反応を行えばよい。
一方、界面活性剤等を添加して強制乳化したポリイソシアネートとしては、例えば、上述したポリイソシアネートを従来公知のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等により乳化分散させることにより得ることができる。
中でもアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤はコストも低く、良好な乳化が得られるので好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩系化合物、アルキルサルフェート系化合物、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、1級〜3級アミン塩、ピリジニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ハロゲン化アルキル4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
これらの界面活性剤を使用する場合の使用量は、特に制限を受けず任意の量を使用することができるが、分散性や耐水性等の観点から、0.01〜0.3が好ましく、0.05〜0.2がより好ましい。
なお、上述した水分散型ポリイソシアネートは、自己乳化型及び強制乳化型ともに水以外の溶剤を20重量%まで含むことができる。この場合の溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等を挙げることができる。これら溶剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、水への溶解度が5重量%以上のものが好ましく、具体的には、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
また、上述した水分散型ポリイソシアネートの平均分散粒子径は、1〜1000nmであるのが好ましく、10〜500nmであるのがより好ましく、10〜200nmであるのが更に好ましい。
本発明においては、このような水分散型のポリイソシアネートは、上述した通り、アニオン性、ノニオン性およびカチオン性のいずれであってもよいが、非カチオン性であるのが好ましい。
ここで、一般的なセルロース繊維表面は、アニオン性(蒸留水中ゼータ電位−30〜−20mV)であり(J.Brandrup(editor) and E.H.Immergut(editor)“Polymer Handbook 3rd edition”V−153〜V−155)、その電荷反発により微細セルロースとして水中に安定的に分散している。
そのため、水分散型のポリイソシアネートが非カチオン性であることにより、セルロース繊維の水溶液中での凝集を抑制し、製膜時にセルロース繊維がフィルムの面内方向に配向しやすくなる。
また、本発明においては、水分散型のブロックポリイソシアネートを用いることがより好ましい。
ここで、ブロックポリイソシアネートとは、(1)ポリイソシアネート及びポリイソシアネート誘導体等のポリイソシアネート化合物を基本骨格とする、(2)ブロック剤によってイソシアネート基がブロックされている、(3)常温では活性水素を有する官能基とは反応しない、(4)ブロック基が解離温度以上の熱処理により、ブロック基が脱離し活性なイソシアネート基が再生され、活性水素を有する官能基と反応し結合を形成することを特徴とする。
このようなブロックポリイソシアネートとしては、水環境中での水との反応を阻止する目的のブロック剤によりイソシアネート基がブロックされたポリイソシアネート、すなわちブロック多官能性イソシアネートまたはブロック型多官能性イソシアネートであるのが好ましい。
ブロック剤は、ポリイソシアネートのイソシアネート基に付加してブロックするものである。このブロック基は常温において安定であるが、熱処理温度(通常約100〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が脱離し遊離イソシアネート基を再生しうるものである。
このような要件を満たすブロック剤としては、(1)メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール類、(2)アルキルフェノール系:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類であって、例えばn−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類、(3)フェノール系:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等、(4)活性メチレン系:マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、(5)メルカプタン系:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、(6)酸アミド系:アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、(7)酸イミド系:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、(8)イミダゾール系:イミダゾール、2−メチルイミダゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール等、(9)尿素系:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、(10)オキシム系:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、(11)アミン系:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等が挙げられ、これらのブロック剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
通常のブロック基を有さないポリイソシアネートは、水と容易に反応するため、ポットライフが短く、反応を制御することが難しいため、再現性良く目的の生成物を得ることが難しい。
一方、ブロックポリイソシアネートは、水溶液中で水と反応しないため、ブロック剤の解離温度以下で塗布膜を乾燥することで、水溶液中の水との反応を防ぐことができる。
そして、最終的に乾燥したシートをブロック剤の解離温度以上で熱処理することで、ブロックポリイソシアネートは自身の硬化と共に、セルロース繊維と効果的に共有結合を形成する。その結果、セルロース繊維をフィルムの面内方向に配向しやすくなり、高湿度環境下においても面内弾性率を維持しやすくなったと考えられる。
なお、水分散型のブロックポリイソシアネートの例としてはBaxenden Chemical社製の「Aqua BI200」、「Aqua BI220」、明成化学工業(株)社製の「メイカネートTP−10」、「メイカネートTP−10」、「メイカネートWEB」、「メイカネートCX」、「SU−268A」などが挙げられる。
また、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類;コハク酸、シュウ酸、マレイン酸等の多価カルボン酸類;エピクロロヒドリン等のエピハロヒドリン化合物類;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の金属アルコキシド;などを挙げることができる。
本発明においては、上記で例示した架橋剤以外にも、国際公開第2011/065371号の[0046]段落、国際公開第2013/146847号の[0036]および[0037]段落、国際公開第2014/181560号の[0033]および[0072]段落に記載されたものも用いることができる。
このような架橋剤は、後述する延伸工程の前および後のいずれの段階に添加してもよいが、延伸工程の前に添加することが好ましい。
延伸工程の前に架橋剤を添加することにより、セルロース繊維同士を架橋させ、セルロース繊維をフィルムの厚み方向に平行に配向させることができ、その結果、厚み方向の湿度膨張係数を上述した範囲(500〜8000ppm/%RH)内に調整しやすくなる。
本発明においては、架橋剤の含有量が、セルロース繊維の質量の0.1倍以上20倍以下であるのが好ましく、0.1倍以上10倍以下であるのがより好ましく、0.5倍以上6倍以下であるのが更に好ましく、0.8倍以上4倍以下であるのが特に好ましい。
架橋剤の含有量が上述した範囲であると、厚み方向の湿度膨張係数を上述した範囲(特に、1500〜4000ppm/%RH)内に調整しやすくなる。
〔エマルジョン樹脂〕
本発明のセルロースフィルムは、上述したセルロース繊維とともにエマルション樹脂を含有しているのが好ましい。
エマルション樹脂とは、分散媒中で乳化した、粒子径が0.001〜10μmの天然樹脂または合成樹脂の粒子である。
エマルション樹脂を構成する樹脂の種類としては特に限定されないが、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の前駆体、およびこれらを構成するモノマーやオリゴマー等の樹脂エマルション;アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)等のエラストマー等であってもよい。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を表す表記であり、「(メタ)アクリロニトリル」とは、アクリロニトリルまたはメタアクリロニトリルを表す表記である。
これらのエマルション樹脂は2種類以上含有しても構わない。
上記以外の樹脂としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(例えば、2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(例えば、セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)などが挙げられる。
ここで、上記脂環式オレフィン系樹脂としては、特開平05−310845号公報及び米国特許第5179171号公報に記載されている環状オレフィンランダム共重合体、特開平05−97978号公報及び米国特許第5202388号公報に記載されている水素添加重合体、特開平11−124429号公報(EP1026189号)に記載されている熱可塑性ジシクロペンタジエン系開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。これらの文献は、全て参照することにより本明細書に取り込まれる。
〔親水性樹脂〕
本発明のセルロースフィルムは、上述したセルロース繊維とともに親水性樹脂を含有しているのが好ましい。
親水性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、水溶性ナイロン、ポリアクリルアミド、キチン類、キトサン類、デンプン、および、これらの共重合体を挙げることができる。
ポリアルキレングリコールとしては、具体的には、例えば、ポリメチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピルグリコール、ポリブテングリコール、ポリペンテングリコール等を用いることができる。
ポリアクリル酸としては、具体的には、例えば、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを重合させた重合体等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを表す表記である。
〔硬化型樹脂〕
本発明のセルロースフィルムは、上述したセルロース繊維とともに硬化型樹脂を含有しているのが好ましい。
硬化型樹脂としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等が使用できる。また、光硬化性のモノマーを用いた硬化型樹脂も使用することができる。
光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニルまたは安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらは、要求特性に合わせて、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のセルロースフィルムは、セルロース繊維をフィルムの全領域で面内方向に配向させやすくなり、厚み方向の湿度膨張係数を上述した範囲(特に、1000〜5500ppm/%RH)内に調整しやすくなり、靱性がより良好となる理由から、厚みが10〜150μmであるのが好ましく、20〜100μm以下であるのがより好ましく、25〜80μmであるのが更に好ましい。
ここで、セルロースフィルムの厚みは、セルロースフィルムの任意の10箇所について、セルロースフィルム上に設置したカバーガラス(18mm×18mm×0.15mm)の上から、接触型厚み計(例えば、ミツトヨ社製のABSデジマチックインジケータ 543−394など)で測長し、10点の平均値を算出した値をいう。
なお、カバーガラスは、セルロースフィルムの反りなどの影響をなくすために設置したものである。
本発明のセルロースフィルムは、電子機器の配線基板として用いるのが好ましい。
すなわち、電子機器の配線基板は、製造工程で水洗処理を含むため、高湿度環境下においても、面内弾性率を維持し、靱性に優れることは、極めて有用な効果となる。
その他、本発明のセルロースフィルムは、寸法精度が高く、例えば、パソコン、テレビ等のディスプレイ、電話(携帯電話)、時計等の電化製品等の表示部;カメラ、ビデオカメラ、映像再生機器等のレンズ;電子材料用基板(例えば、プリンティッドエレクトロニクス用基材);有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、有機EL照明や太陽電池の透明基板、タッチパネル、等の用途として有効に使用することができる。
[配線基板]
本発明の配線基板は、上述した本発明のセルロースフィルムを有する基板と、基板上に設けられる配線回路とを有する、配線基板である。
本発明の配線基板は、有機半導体を用いた配線回路を有することが好ましい。
ここで、有機半導体材料を用いたデバイスは、シリコンなどの無機半導体材料を用いた従来のデバイスと比較して、様々な優位性が見込まれているため、高い関心を集めている。
有機半導体材料を用いたデバイスとしては、例えば、有機半導体材料を光電変換材料として用いた有機薄膜太陽電池、固体撮像素子などの光電変換素子;非発光性の有機トランジスタ;発光性デバイス;などが挙げられる。
また、有機半導体材料を用いたデバイスは、無機半導体材料を用いたデバイスと比べて低温、低コストで大面積の素子を作製できる可能性がある。さらに分子構造を変化させることで容易に材料特性を変化させることが可能であるため、材料のバリエーションが豊富であり、無機半導体材料ではなし得なかったような機能や素子を実現することができる。
更に、基板をフィルムにすることで、軽量化、低コスト化、柔軟性があるため塗布等の連続法で有機半導体等の電子回路を形成できることから、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに用いられる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT);電波方式認識(Radio Frequency Identifier:RFID)やメモリなどの論理回路を用いる装置;などに有機半導体膜(有機半導体層)を用いた有機半導体素子が利用されている。
このようなデバイスの基板に本発明のセルロースフィルムを用いると、湿度寸法変化が小さくなるため、例えば、デバイスが真空プロセスで脱湿された後に大気中に出された際の吸湿膨張、および、その逆の工程における脱湿収縮などにおいても寸法変化が起き難くなり、回路を積層して構築する際の位置ずれが小さくなる利点が得られ、また、高温下でも力学強度が強くなるため、例えば、高温で有機半導体を塗設してもトラブル(例えば、基材の伸縮に因る有機半導体膜との破断等)が生じ難いなどの利点が得られる。
〔有機薄膜トランジスタ〕
本発明の配線基板の一例である有機薄膜トランジスタ(以下、「本発明の有機薄膜トランジスタ」ともいう。)は、有機電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)として用いられることが好ましく、ゲート−チャンネル間が絶縁されている絶縁ゲート型FETとして用いられることがより好ましい。
以下、本発明の有機薄膜トランジスタの好ましい構造の態様について、図面を用いて詳しく説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
<積層構造>
有機電界効果トランジスタの積層構造としては特に制限はなく、公知の様々な構造のものとすることができる。
本発明の有機薄膜トランジスタの構造の一例としては、最下層の基板の上面に、電極、絶縁体層、半導体活性層(有機半導体層)、2つの電極を順に配置した構造(ボトムゲート−トップコンタクト型)を挙げることができる。この構造では、最下層の基板の上面の電極は基板の一部に設けられ、絶縁体層は、電極以外の部分で基板と接するように配置される。また、半導体活性層の上面に設けられる2つの電極は、互いに隔離して配置される。ボトムゲート−トップコンタクト型素子の構成を図1に示す。
図1は、本発明の配線基板の一例である有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート−トップコンタクト型)の構造の断面を示す概略図である。
図1に示す有機薄膜トランジスタは、最下層に基板11を配置し、その上面の一部に電極12を設け、さらに電極12を覆い、かつ電極12以外の部分で基板11と接するように絶縁体層13を設けている。さらに絶縁体層13の上面に半導体活性層14を設け、その上面の一部に2つの電極15aと15bとを隔離して配置している。
また、図1に示す有機薄膜トランジスタは、電極12がゲートであり、電極15aと電極15bはそれぞれドレインまたはソースである。
また、図1に示す有機薄膜トランジスタは、ドレイン−ソース間の電流通路であるチャンネルと、ゲートとの間が絶縁されている絶縁ゲート型FETである。
本発明の有機薄膜トランジスタの構造の他の一例としては、ボトムゲート−ボトムコンタクト型素子を挙げることができる。
ボトムゲート−ボトムコンタクト型素子の構成を図2に示す。
図2は、本発明の配線基板の一例である有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート−ボトムコンタクト型)の構造の断面を示す概略図である。
図2に示す有機薄膜トランジスタは、最下層に基板31を配置し、その上面の一部に電極32を設け、さらに電極32を覆い、かつ電極32以外の部分で基板31と接するように絶縁体層33を設けている。さらに絶縁体層33の上面に半導体活性層35を設け、電極34aと34bが半導体活性層35の下部にある。
また、図2に示す有機薄膜トランジスタは、電極32がゲートであり、電極34aと電極34bはそれぞれドレインまたはソースである。
また、図2に示す有機薄膜トランジスタは、ドレイン−ソース間の電流通路であるチャンネルと、ゲートとの間が絶縁されている絶縁ゲート型FETである。
本発明の有機薄膜トランジスタの構造としては、その他、絶縁体、ゲート電極が半導体活性層の上部にあるトップゲート−トップコンタクト型素子、および、トップゲート−ボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。
<厚さ>
本発明の有機薄膜トランジスタは、より薄いトランジスタとする必要がある場合には、例えばトランジスタ全体の厚さを0.1〜0.5μmとすることが好ましい。
<封止>
有機薄膜トランジスタ素子を大気や水分から遮断し、有機薄膜トランジスタ素子の保存性を高めるために、回路形成後に有機薄膜トランジスタ素子全体を金属の封止缶、ガラス、窒化ケイ素などの無機材料;パリレンなどの高分子材料;低分子材料;などで封止してもよい。
以下、本発明の有機薄膜トランジスタの各層の好ましい態様について説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
<基板>
本発明の有機薄膜トランジスタは、基板に上述した本発明のセルロースフィルムを用いるが、密着性や平滑性の観点から、セルロースフィルム上に保護層を積層することができる。
上記保護層の材料は特に限定されず、公知の材料を用いることができる。例えば、CYEPL(シアノエチルプルラン)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVC(ポリビニルクロライド)、PMMA(ポリメチルメタクリラート)、PI(ポリイミド)、PVP(ポリビニルフェノール)、パリレン、フッ素樹脂、ポリシロキサンなどポリマーを中心とした様々な有機物、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどの無機物、さらに無機と有機のハイブリッドなど、がある。
また、ハンドリングや平滑性を保つために、ガラスや金属などの固い基板を貼り合せて用いることもできる。最終的に、フレキシブルとするためには、固い基板を取り除くことができる。
<電極>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタは、電極を含むことが好ましい。
上記電極の構成材料としては、例えば、Cr、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、In、Ni、Ndなどの金属材料およびこれらの合金材料、ならびに、カーボン材料、導電性高分子などの既知の導電性材料であれば特に制限することなく使用できる。
(厚さ)
上記電極の厚さは特に制限はないが、10〜50nmとすることが好ましい。
ゲート幅(またはチャンネル幅)Wとゲート長(またはチャンネル長)Lに特に制限はないが、これらの比W/Lが10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。
<絶縁層>
(材料)
絶縁層を構成する材料は必要な絶縁効果が得られれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、フッ素ポリマー系絶縁材料、ポリエステル絶縁材料、ポリカーボネート絶縁材料、アクリルポリマー系絶縁材料、エポキシ樹脂系絶縁材料、ポリイミド絶縁材料、ポリビニルフェノール樹脂系絶縁材料、ポリパラキシリレン樹脂系絶縁材料などが挙げられる。
絶縁層の上面は表面処理がなされていてもよく、例えば、二酸化ケイ素表面をヘキサメチルジシラザン(HMDS)やオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の塗布により表面処理した絶縁層を好ましく用いることができる。
(厚さ)
絶縁層の厚さに特に制限はないが、薄膜化が求められる場合は厚さを10〜400nmとすることが好ましく、20〜200nmとすることがより好ましく、50〜200nmとすることが特に好ましい。
<半導体活性層(有機半導体層)>
(材料)
本発明の有機薄膜トランジスタを形成する有機半導体材料は、従来公知の有機半導体層に利用される公知の材料が、各種、利用可能である。
具体的には、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPSペンタセン)等のペンタセン誘導体、5,11‐ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン(TES‐ADT)等のアントラジチオフェン誘導体、ベンゾジチオフェン(BDT)誘導体、ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)誘導体、ジナフトチエノチオフェン(DNTT)誘導体、6,12‐ジオキサアンタントレン(ペリキサンテノキサンテン)誘導体、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(NTCDI)誘導体、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(PTCDI)誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(2,5‐ビス(チオフェン‐2‐イル)チエノ[3,2‐b]チオフェン)(PBTTT)誘導体、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)誘導体、オリゴチオフェン類、フタロシアニン類、フラーレン類等が例示される。
上記有機半導体層は、化合物単独や複数の化合物がブレンドされた層であってもよく、後述のポリマーバインダーがさらに含まれた層であってもよい。また、成膜時の残留溶媒が含まれていてもよい。
上記ポリマーバインダーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの絶縁性ポリマー、およびこれらの共重合体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレンなどの導電性ポリマー、半導体ポリマーを挙げることができる。
上記ポリマーバインダーは、単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
また、有機半導体材料と上記ポリマーバインダーとは均一に混合していてもよく、一部または全部が相分離していてもよいが、電荷移動度の観点では、膜中で膜厚方向に有機半導体とバインダーが相分離した構造が、バインダーが有機半導体の電荷移動を妨げず最も好ましい。
薄膜の機械的強度が必要な場合ガラス転移温度の高いポリマーバインダーが好ましく、電荷移動度を考慮すると極性基を含まない構造のポリマーバインダーや光伝導性ポリマー、導電性ポリマーが好ましい。
上記半導体活性層中における上記ポリマーバインダーの含有量は、特に制限はないが、好ましくは0〜95質量%の範囲内で用いられ、より好ましくは10〜90質量%の範囲内で用いられ、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲内で用いられ、特に好ましくは30〜70質量%の範囲内で用いられる。
(厚さ)
上記有機半導体層の厚さに特に制限はないが、薄膜化が求められる場合は厚さを10〜400nmとすることが好ましく、10〜200nmとすることがより好ましく、10〜100nmとすることが特に好ましい。
(成膜方法)
上記有機半導体層を基板上に成膜する方法はいかなる方法でもよい。
成膜の際、基板を加熱または冷却してもよく、基板の温度を変化させることで膜質や膜中での分子のパッキングを制御することが可能である。基板の温度としては特に制限はないが、0℃から200℃の間であることが好ましく、15℃〜160℃の間であることがより好ましく、20℃〜120℃の間であることが特に好ましい。
基板上に有機半導体層を成膜するとき、真空プロセスまたは溶液プロセスにより成膜することが可能であり、いずれも好ましい。
真空プロセスによる成膜の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子ビームエピタキシー(MBE)法などの物理気相成長法;プラズマ重合などの化学気相蒸着(CVD)法;等が挙げられ、真空蒸着法を用いることが特に好ましい。
溶液プロセスによる成膜としては、ここでは有機化合物を溶解させることができる溶媒中に溶解させ、その溶液を用いて成膜する方法をさす。具体的には、キャスト法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法などの塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などの各種印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法などの通常の方法を用いることができ、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法を用いることが特に好ましい。
また、移動度の高い有機半導体層を得るためには、有機半導体層の結晶性を向上することが重要である。そのため、湿式プロセスによる有機半導体層の形成においても、有機半導体層の結晶性を向上する方法を用いてもよい。例えば、溶媒蒸発速度の高いところから、結晶を析出させ、徐々に蒸発部を移動させることによって、大きな結晶を得るといった方法がある。
有機半導体層は、溶液塗布法により作製されたことが好ましい。また、有機半導体層がポリマーバインダーを含有する場合、層を形成する材料とポリマーバインダーとを適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により形成されることが好ましい。
以下、溶液プロセスによる成膜に用いることができる、本発明の有機半導体デバイスを形成する有機半導体層形成用塗布溶液について説明する。
<有機半導体デバイス用塗布溶液>
本発明は、有機半導体化合物を含有する有機半導体層形成用塗布溶液にも関する。
溶液プロセスを用いて基板上に成膜する場合、層を形成する材料を適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、デカリン、1−メチルナフタレンなどの炭化水素系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン、1−メチルー2−イミダゾリジノン等のアミドまたはイミド系溶媒、ジメチルスルフォキサイドなどのスルホキシド系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒)および/または水に、溶解または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。
溶媒は単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒またはエーテル系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジクロロベンゼンまたはアニソールがより好ましく、トルエン、キシレン、テトラリン、アニソールが特に好ましい。
例えば、有機半導体材料がTIPSペンタセンやTES−ADT等である場合には、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(テトラリン)、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール等の芳香族化合物が好適に例示される。
溶液プロセスで成膜するためには、上記で挙げた溶媒などに材料が溶解することが必要であるが、単に溶解するだけでは不十分である。
通常、真空プロセスで成膜する材料でも、溶媒にある程度溶解させることができる。
しかし、溶液プロセスでは、材料を溶媒に溶解させて塗布した後で、溶媒が蒸発して薄膜が形成する過程があり、溶液プロセス成膜に適さない材料は結晶性が高いものが多いため、この過程で不適切に結晶化(凝集)してしまい良好な薄膜を形成させることが困難である。上記有機半導体化合物は、このような結晶化(凝集)が起こりにくい点でも優れている。
有機半導体層形成用塗布溶液は、有機半導体化合物を含み、ポリマーバインダーを含有しなくてもよい。
また、有機半導体層形成用塗布溶液は、有機半導体化合物とポリマーバインダーを含有してもよい。この場合、層を形成する材料とポリマーバインダーとを前述の適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。ポリマーバインダーとしては、上述の中から選択することができる。
[セルロースフィルムの製造方法]
〔第1態様〕
本発明のセルロースフィルムの第1の製造方法(以下、「本発明の第1製造方法」ともいう。)は、平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維を含有するフィルムを製膜する製膜工程と、製膜工程の後、フィルムに対して、セルロース繊維の質量に対して0.1倍以上20倍以下の水を含浸させた状態で、延伸処理を施し、セルロースフィルムを作製する延伸工程とを有する。
本発明の第1製造方法では、上記延伸工程においてセルロース繊維に水を含浸させた状態で延伸処理を施すことにより、上述した本発明のセルロースフィルムの特徴である厚み方向の湿度膨張係数を500〜8000ppm/%RHの範囲に調整することができる。
これは、上記延伸工程において、セルロース繊維をフィルムの全領域で面内方向に配向させることができたためと考えられる。すなわち、セルロース繊維が高吸水性であるため、セルロース繊維の表面に付いた水が潤滑油の働きをし、セルロース繊維間を滑らせ、スムースに配向できたと考えられる。
このことは、後述するように、水を含浸させずに延伸処理を施した比較例1、および、延伸せずにホットプレスで配向させた比較例6では、湿度膨潤係数が小さくなることからも推察することができる。
以下に、本発明の第1製造方法における製膜工程および延伸工程について詳述する。
<製膜工程>
本発明の第1製造方法が有する製膜工程は、平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維を含有するフィルムを製膜する工程である。
ここで、上記セルロース繊維は、本発明のセルロースフィルムが含有するセルロース繊維として記載したものと同様のものを用いることができる。
フィルムとして製膜する方法としては、例えば、セルロースナノファイバー(CNF)と分散媒体とを含有する溶液(以下、「CNFキャスト溶液」という。)を基材上に塗工し、塗膜を乾燥させた後、基材から剥離する方法等が挙げられる。
ここで、CNFキャスト溶液は、固形分としてCNFが0.3%〜10%混合されていることが好ましく、0.5%〜8%混合されていることがより好ましく、0.7%〜5%混合されていることが更に好ましい。
また、CNFキャスト溶液は、上述した架橋剤やエマルジョン樹脂等を添加してもよく、安定剤、UV吸収剤、滑剤、界面活性剤等を添加することも好ましい。
CNFキャスト溶液を塗工する基材としては、シート、板または円筒体を使用することができる。
基材の材質としては、樹脂または金属が使用され、より容易にフィルムを製膜できる点では、樹脂が好ましい。
また、基材の表面は疎水性であってもよいし、親水性であってもよい。
樹脂基材としては、具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル樹脂等が挙げられる。
金属基材としては、具体的には、例えば、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、鉄、真鍮等が挙げられる。
塗工する塗工機としては、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができ、厚みをより均一にできることから、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターが好ましく、ダイコーターがより好ましい。
塗工温度は、20〜45℃であることが好ましく、25〜40℃であることがより好ましく、27〜35℃であることがさらに好ましい。
塗工温度が20℃以上であれば、CNFキャスト溶液を容易に塗工でき、45℃以下であれば、塗工中の分散媒の揮発を抑制できる。
塗工の前には、塗工開始の10分前から塗工開始までの間、CNFキャスト溶液を撹拌する撹拌工程を有することが好ましい。
撹拌工程を有すると、塗工直前のCNFキャスト溶液を均一化できる。そのため、均一なフィルムがより得られやすくなる。
撹拌工程の具体例としては、CNFキャスト溶液を塗工する直前のCNFキャスト溶液を貯めておくタンクの内部を撹拌する方法が挙げられる。
CNFキャスト溶液を塗工した後の乾燥方法としては、例えば、室温乾燥、熱風または赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができ、加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよい。
これらのうち、通常は、加熱乾燥法が適用される。
加熱乾燥法における加熱温度は、20〜150℃とすることが好ましく、40〜120℃とすることがより好ましく、60〜105℃とすることが更に好ましい。加熱温度が40℃以上であれば、分散媒を速やかに揮発させることができ、120℃以下であれば、加熱に要するコストの抑制及びセルロースの熱による変色を抑制できる。
このとき、乾燥は面内均一に乾燥させてもよく(均一乾燥法)、不均一に乾燥させてもよい。不均一な乾燥とは、塗膜(キャスト膜)の面内中央部から乾燥させてもよく、端部から乾燥させてもよい。
特に好ましい乾燥法は、後述する第3の製造方法に示すように、塗膜の端部の乾燥時間を中央部の乾燥時間の0.5倍以上0.95倍以下とする乾燥法である。
乾燥後、CNFを含有するフィルムを基材から剥離すことにより、フィルムを作製することができるが、基材がシートの場合には、CNFを含有するフィルムと基材とを積層したまま巻き取って、フィルムの使用直前にフィルムを基材から剥離してもよい。
<延伸工程>
本発明の第1製造方法が有する延伸工程は、上記製膜工程の後、得られたフィルムに対して、セルロース繊維の質量に対して0.1倍以上20倍以下の水を含浸させた状態で、延伸処理を施し、上述した本発明のセルロースフィルムを得る工程をいう。
(水の含浸)
セルロース繊維に含浸させる水の量は、セルロース繊維の質量(乾燥重量)に対して0.1倍以上20倍以下であり、厚み方向の湿度膨張係数を上述した範囲(特に、1000〜5500ppm/%RH)内に調整しやすくなる理由から、0.3倍以上17倍以下であるのが好ましく、0.5倍以上12倍以下であるのがより好ましい。
(延伸処理)
上記延伸処理における延伸倍率は、セルロース繊維をフィルムの厚み方向に平行に配向させる観点から、面積延伸倍率(下記式参照)で1.5倍以上4倍以下が好ましく、1.8倍以上3.5倍以下がより好ましく、2倍以上3倍以下が更に好ましい。
面積延伸倍率=(縦方向の延伸後の長さ/縦方向の延伸前の長さ)×(横方向の延伸後の長さ/横方向の延伸前の長さ)
本発明においては、上記延伸処理の方法としては、例えば、下記(ア)〜(エ)に記載する方法が挙げられ、中でも、下記(ア)に記載する方法が好ましい。
(ア)セルロース繊維を含む組成物を水に含浸させた後、空気中で延伸する方法
(イ)セルロース繊維を含む組成物を高温高湿雰囲気中で延伸する方法
(ウ)セルロース繊維を水に含浸させ延伸した後、樹脂を含浸させる方法
(エ)セルロース繊維を高温高湿雰囲気中で延伸したあと、樹脂を含浸させる方法
ここで、上記(イ)および(エ)に示す「高温高湿」とは、温度については40℃以上100℃以下であるのが好ましく、50℃以上90℃以下であるのが好ましく、60℃以上80℃以下であるのが好ましい。また、相対湿度については50%以上100%以下であるのが好ましく、55%以上95%以下であるのがより好ましく、60%以上95%以下であるのが更に好ましい。
本発明の第1製造方法においては、延伸処理は、一軸延伸でも二軸延伸でも構わない。
一軸延伸の場合、縦延伸および横延伸のいずれか一方または両方の延伸であってもよく、これらは一段延伸であっても、多段延伸であってもよい。
二軸延伸の場合、同時延伸であっても、逐次延伸であってもよい。
逐次延伸では、縦延伸および横延伸の順または横延伸および縦延伸の順に行う2段延伸であってもよく、縦および横のいずれかを複数回に分けて行う多段延伸であってもよい。
縦延伸は、周速差の異なる複数対のニップロールを用いるのが一般的であり、横延伸はシートの両端をチャックで把持し拡幅する(テンター方式)を用いるのが一般的である。
同時二軸延伸ではチャックで両端を把持したのち、チャックを拡幅すると同時に、チャックの搬送速度をテンター出口方向に向かって上げてゆくことで実施するのが一般的である。
また、延伸の後に緩和処理を行ったり、熱固定処理を行ったりしても構わない。
さらに、フィルム中に水分が残っている場合は、加熱ゾーンを通し乾燥してから巻き取ることが好ましい。
〔第2態様〕
本発明のセルロースフィルムの第2の製造方法(以下、「本発明の第2製造方法」ともいう。)は、平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維および分散媒体を含有する溶液を基材上に塗工し、塗膜を形成する塗工工程と、塗工工程の後に、塗膜を乾燥させ、乾燥後の塗膜を基材から剥離する剥離工程と、剥離工程の後に、剥離後の塗膜を加熱して架橋し、セルロースフィルムを作製する熱架橋工程とを有する。
本発明の第2製造方法では、上記熱架橋工程において剥離後の塗膜を加熱により架橋させることにより、上述した本発明のセルロースフィルムの特徴である厚み方向の湿度膨張係数を500〜8000ppm/%RHの範囲に調整することができる。
これは、上記熱架橋工程での寸法変化に伴い発生する応力を、基材フィルムから剥離することにより抑制できるためである。この結果、応力に伴うセルロース繊維の配向の乱れが発生し難くなり、面内方向に配向が揃った状態で架橋できるため、厚み方向に吸湿膨張がし易くなったと考えられる。
以下に、本発明の第2製造方法における熱架橋工程について詳述する。
なお、塗工工程および剥離工程については、本発明の第1製造方法において説明したCNFキャスト溶液を基材上に塗工し、塗膜を乾燥させた後、基材から剥離する方法等が挙げられる。
<熱架橋工程>
熱架橋工程は、剥離工程の後に、得られたフィルムを加熱して架橋する工程である。
熱架橋工程における加熱温度は、架橋の進行とセルロース繊維の分解抑制の観点から、100℃以上が好ましく、200℃以下が好ましい。なお、ブロックポリイソシアネート等のブロック剤を有する架橋剤の場合は、ブロック剤の解離温度以上で加熱架橋することが好ましい。
また、熱架橋工程は、基材から剥離した後のフィルムを加熱することにより行うが、この理由は、基材に付着した状態のフィルムを加熱すると、ブロック剤や溶剤等の成分が揮発するのが妨げられることにより架橋が妨げられ、湿度寸法安定性の改良効果が小さくなってしまうためである。
〔第3態様〕
本発明のセルロースフィルムの第3の製造方法(以下、「本発明の第3製造方法」ともいう。)は、平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維および分散媒体を含有する溶液を基材上に塗工し、塗膜を形成する塗工工程と、塗工工程の後に、塗膜を乾燥させてセルロースフィルムを作製する乾燥工程とを有する。
また、本発明の第3製造方法は、上記乾燥工程が、塗膜の端部における乾燥時間Aを、塗膜の中央部における乾燥時間Bの0.5倍以上0.95倍以下とする工程である。
ここで、「塗膜の端部」とは、塗膜の端から塗膜の一辺(長方形である場合は長辺)の長さの5%以上30%以下の幅を有する周縁領域をいい、「塗膜の中央部」とは、塗膜の端部以外の領域をいう。
本発明の第3製造方法では、上記乾燥工程において塗膜の端部における乾燥時間Aを、塗膜の中央部における乾燥時間Bの0.5倍以上0.95倍以下とすることにより、上述した本発明のセルロースフィルムの特徴である厚み方向の湿度膨張係数を500〜8000ppm/%RHの範囲に調整することができる。
これは、以下の推定機構に示すように、上記熱架橋工程においてCNFの面配向が促されるためであると考えられる。
(1)両端が先に乾燥し基材に固定されると、乾燥により生じる収縮が幅方向に行うことができず、選択的に厚み方向収縮が進行する。
(2)厚み方向の収縮応力によりCNFの面配向が進行し層状に積層した構造を形成する。
(3)層状のCNF間は絡み合いが弱く、吸湿により容易に膨張できる。
以下に、本発明の第3製造方法における乾燥工程について詳述する。
なお、塗工工程は、本発明の第1製造方法において説明したCNFキャスト溶液を基材上に塗工する方法等が挙げられる。
<乾燥工程>
上記乾燥工程は、塗膜の端部における乾燥時間Aを、塗膜の中央部における乾燥時間Bの0.5倍以上0.95倍以下とする工程である。
このような乾燥工程における乾燥法(以下、「端部乾燥法」ともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、下記のような方法が挙げられる。
(ア)端部の乾燥温度を1〜20℃高くする。
(イ)端部の乾燥風速を平均風速より1%以上30%高くする。
また、端部乾燥法では、端部の乾燥時間/中央部の乾燥時間の比(以下、「端部乾燥時間/中央乾燥時間比」ともいう。)を0.5以上0.95以下とするのが好ましく、0.55以上0.9以下とするのがより好ましく、0.6以上0.85以下とするのが更に好ましい。
端部乾燥時間/中央乾燥時間比が0.5以上0.95以下であると、厚み方向の湿度膨張係数を上述した範囲(特に、1000〜5500ppm/%RH)内に調整しやすくなる。
また、このような端部乾燥法は、特に、多環芳香族炭化水素で化学修飾されたセルロース繊維を用いる場合に有効である。多環芳香族は、その高い平面性のため、乾燥収縮応力により容易に面配向すると考えられるためである。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
〔実施例1〜64および比較例1〜8〕
(1)セルロース繊維(セルロースナノファイバー(CNF))の調製
粉末セルロース(日本製紙ケミカル社製、粒径24μm)15質量部(絶乾)を、TEMPO(2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxy,Sigma Aldrich社)0.07878質量部および臭化ナトリウム0.755質量部を溶解した水溶液500質量部に加え、粉末セルロースが均一に分散するまで攪拌した。
次いで、反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)50質量部を添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。
反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。
下記表1に示す時間(反応時間X)反応した後、遠心操作(6000rpm、30分、20℃)で酸化した粉末セルロースを分離し、十分に水洗することで酸化処理した粉末セルロースを得た。
酸化処理した粉末セルロースの2%(w/v)スラリーをミキサーにより12,000rpm、15分処理し、さらに粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより140MPaの圧力で下記表1に示す回数(処理回数Y)処理することにより、下記表1に示す平均繊維長および平均繊維径を有するセルロースナノファイバー(CNF−1〜CNF−12)を含有する透明なゲル状分散液を得た。
実施例53〜63で用いるセルロースナノファイバー(CNF)は、上記表1に示す平均繊維長および平均繊維径を有するセルロースナノファイバーのうち、CNF−4またはCNF−10に対して、以下に示す化学修飾を施したCNFを用いた。
なお、化学修飾したセルロース繊維の修飾量は、CP(Cross Polarization)−MAS(Magic Angle Spinning)法を用いた固体NMR(nuclear magnetic resonance)で、以下のように求めた。
(ア)標品(セルロース繊維および修飾に用いた多環芳香族化合物)を測定し、各々のシグナルが重ならない中で、最も強いシグナル(特徴ピーク)を求める。
(イ)サンプルをCP−MAS法を用いた固体NMRで測定する。上記特徴ピークから、セルロース繊維および修飾に用いた多環芳香族化合物のモル比を算出し、これから修飾量を求める。
<実施例53、55および61〜63>
CNF−4の100質量部に対して、フルオレン−9,9−ジプロピレン酸ジメチルエステル125質量部、p−トルエンスルホン酸1質量部、および、アセトニトリル1000質量部を添加し、75℃で12時間還流しエステル交換反応を行った。
反応後、濾過して反応物を回収し、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った後、乾燥し、フルオレン変性CNF−4(修飾量:30%)を得た。
得られたフルオレン変性CNF−4(修飾量:30%)1質量部と、水/2−プロパノール混合溶剤(体積比=1/1)100質量部とを、自公転ミキサーを用いて1000回転で5分間撹拌混練し、透明なゲル状分散液を調製した。
<実施例54>
CNF−4(100部)、ビスフェノキシエタノールフルオレン170質量部、触媒としてジブチル錫オキサイド0.05質量部、および、酢酸亜鉛0.05質量部を、アセトニトリル1000質量部に溶解し、75℃で12時間還流し、フルオレン変性CNF−4(修飾量:50%)を得た。
得られたフルオレン変性CNF−4(修飾量:50%)1質量部と、水/2−プロパノール混合溶剤(体積比=1/1)100質量部とを、自公転ミキサーを用いて1000回転で5分間撹拌混練し、透明なゲル状分散液を調製した。
<実施例56>
CNF−10の100質量部に対して、フルオレン−ビスフェノキシジプロピレン酸ジメチルエステル40質量部、p−トルエンスルホン酸1質量部、および、アセトニトリル1000質量部を添加し、75℃で12時間還流しエステル交換反応を行った。
反応後、濾過して反応物を回収し、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った後、乾燥し、フルオレン変性CNF−10(修飾量:5%)を得た。
得られたフルオレン変性CNF−10(修飾量:5%)1質量部と、水/2−プロパノール混合溶剤(体積比=1/1)100質量部とを、自公転ミキサーを用いて1000回転で5分間撹拌混練し、透明なゲル状分散液を調製した。
<実施例57>
特許5581180号の合成例1に従って、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレンを得た。
合成した9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチルフルオレンを70質量部、CNF−10を100質量部、p−トルエンスルホン酸を1質量部、アセトニトリルを1000質量部添加し、75℃で12時間還流しエステル交換反応を行った。
反応後、濾過して反応物を回収し、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った後、乾燥し、フルオレン変性CNF−10(修飾量:15%)を得た。
得られたフルオレン変性CNF−10(修飾量:15%)1質量部と、水/2−プロパノール混合溶剤(体積比=1/1)100質量部とを、自公転ミキサーを用いて1000回転で5分間撹拌混練し、透明なゲル状分散液を調製した。
<実施例58>
CNF−4の100質量部に対して、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチルエステル55質量部、p−トルエンスルホン酸1質量部、および、アセトニトリル1000質量部を添加し、75℃で12時間還流しエステル交換反応を行った。
反応後、濾過して反応物を回収し、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った後、乾燥し、ナフタレン変性CNF−4(修飾量:30%)を得た。
得られたナフタレン変性CNF−4(修飾量:30%)1質量部と、水/2−プロパノール混合溶剤(体積比=1/1)100質量部とを、自公転ミキサーを用いて1000回転で5分間撹拌混練し、透明なゲル状分散液を調製した。
<実施例59>
CNF−10の100質量部に対して、フルオレン−ビスフェノキシジプロピレン酸ジメチルエステル30質量部、p−トルエンスルホン酸1質量部、および、アセトニトリル1000質量部を添加し、75℃で12時間還流しエステル交換反応を行った。
反応後、濾過して反応物を回収し、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った後、乾燥し、フルオレン変性CNF−10(修飾量:3%)を得た。
得られたフルオレン変性CNF−10(修飾量:3%)1質量部と、水/2−プロパノール混合溶剤(体積比=1/1)100質量部とを、自公転ミキサーを用いて1000回転で5分間撹拌混練し、透明なゲル状分散液を調製した。
<実施例60>
特許5581180号の合成例1に従って、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレンを得た。
合成した9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチルフルオレンを280部、CNF−4を100質量部、p−トルエンスルホン酸を0.5質量部、アセトニトリルを1000質量部添加し、75℃で5時間還流しエステル交換反応を行った。
反応後、濾過して反応物を回収し、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った後、乾燥し、フルオレン変性CNF−4(修飾量:54%)を得た。
得られたフルオレン変性CNF−4(修飾量:54%)1質量部と、水/2−プロパノール混合溶剤(体積比=1/1)100質量部とを、自公転ミキサーを用いて1000回転で5分間撹拌混練し、透明なゲル状分散液を調製した。
(2)未延伸フィルム(原反)の製膜
調製した分散液に、下記表2〜表5に示す以下の架橋剤およびエマルジョンを下記表2〜表5に示す量で添加した。なお、比較例5および6については、架橋剤およびエマルジョンは添加せず、それぞれ、フェニルトリエトキシイランおよびエポキシ樹脂(ダイセル化学社製「セロサイド2021」)を下記表3に示す量で配合した。
次いで、ミキサーで撹拌した後に濾過し、ダイヘッドに送液し、基板上に押出した。なお、厚みの調整はダイヘッドのリップクリアランスを調整することで実施した。
基板上のCNF溶液を以下に示す条件で乾燥した後、基材から剥ぎ取り、これを未延伸フィルム(原反)とした。
(ア)実施例1〜52および比較例1〜7の乾燥条件A
実施例1〜52は、基板上のCNF溶液を80℃で乾燥させた。
(イ)実施例53〜60および実施例64の乾燥条件B
実施例53〜60および実施例64は、基板上に塗布したCNF溶液(幅:50cm、長さ:1m、厚み:4mm)を50℃の空気恒温槽に入れ、中央部の風速を5m/秒とし、両端部の風速を7m/秒にすることで、端部(両端部)乾燥時間/中央乾燥時間比を0.7とした。なお、本実施例における両端部とは各々端から全幅の20%の領域を指し、中央部と両端部の乾燥風速の差は、中央部、両端と3分割した吹き出しノズルを設置することで達成した。
(ウ)実施例61の乾燥条件C
実施例61は、基板上に塗布したCNF溶液(幅:50cm、長さ:1m、厚み:4mm)を50℃の空気恒温槽に入れ、中央部の風速を5m/秒とし、両端部の風速を5.5m/秒にすることで、端部(両端部)乾燥時間/中央乾燥時間比を0.95とした。
(エ)実施例62の乾燥条件D
実施例62は、基板上に塗布したCNF溶液(幅:50cm、長さ:1m、厚み:4mm)を50℃の空気恒温槽に入れ、中央部の風速を5m/秒とし、両端部の風速を9m/秒にすることで、端部(両端部)乾燥時間/中央乾燥時間比を0.5とした。
(オ)実施例63の乾燥条件E
実施例63は、基板上に塗布したCNF溶液(幅:50cm、長さ:1m、厚み:4mm)上に、3分割した赤外線ヒーターを設置した。分割幅は、両端から各々全幅の20%と、中央部は全幅の60%のヒーターとした。端部、中央部の赤外ヒーターの出力を調整し、端部が60℃、中央部が50℃になるように調整することで、端部(両端部)乾燥時間/中央乾燥時間比を0.7とした。
(カ)比較例8の乾燥条件F
比較例8は、基板上に塗布したCNF溶液(幅:50cm、長さ:1m、厚み:4mm)を50℃の空気恒温槽に入れ、全面均一な風速(6m/秒)で乾燥した。このため、端部(両端部)乾燥時間/中央乾燥時間比は1.0であった。
<架橋剤>
・CR−1:ブロックド多官能性イソシアネート(BI)のエマルジョン系水分散体(メイカネートWEB、明成化学社製)
・CR−2:下記式E−5で表される化合物
・CR−3:下記式A−5で表される化合物
・CR−4:グリオキサール
・BI200:アニオン性ブロックイソシアネート架橋剤(Aqua BI200、固形分40%水溶液、Baxenden Chemical社製)
・BI220:ノニオン性ブロックイソシアネート架橋剤(Aqua BI220、固形分40%水溶液、Baxenden Chemical社製)
・WE50:非カチオン性の水分散型ポリイソシアネート(旭化成社製)
・メイカネートTP10:ノニオン性ブロックドイソシアネート(明成化学工業社製)
・メイカネートCX:カチオン性ブロックポリイソシアネート(明成化学工業社製)
・SU−268A:アニオン性ブロックポリイソシアネート(明成化学工業社製)

<エマルション>
・EM−1:ポリエチレンエマルション(商品名MC−M1118、エチレン−メチルメタクリレート−無水マレイン酸共重合体、中央理化社製)
・EM−2:酸変性スチレン−ブタジエン(SBR)共重合体ラテックス(商品名:「ピラテックス J9049」、日本エイアンドエル社製、固形分49%、Tg:−40℃、粒子径220nm)
・EM−3:樹脂エマルジョンの製造は特開2007−326913号公報に記載された方法に準拠して実施した。原料は日本ポリエチレン株式会社製エチレン−メチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(商品名:レクスパールET、グレード:ET330H)、カチオン性高分子界面活性剤、および水である。
・EM−4:ポリウレタン樹脂エマルション(スーパーフレックス650、第一工業製薬株式会社)
・EM−5:アニオン性ポリプロピレン樹脂エマルション(商品名「ハイテックP−5800」、東邦化学社製)
(3−1)延伸処理
実施例1〜46および比較例1〜6で作製した未延伸フィルム(原反)を以下に示す条件で縦延伸処理および横延伸処理ならびに乾燥処理をこの順に施し、セルロースフィルムを作製した。
なお、延伸処理は、縦延伸および横延伸のいずれについても延伸処理の前に、フィルムを水浴中に25℃で3分間浸漬し、吸水させたものを25℃で延伸した。
また、各延伸処理前の含水量は、延伸直前のフィルムを約10cm角サンプリングし、直ちに質量(W1)を秤量し、また、サンプリングしたフィルムを120℃で1時間乾燥し、直ちに質量(W2)を秤量し、下記式から含水率を求めた。
含水率(%)=100×(W1−W2)/W2
<縦延伸処理:2対のニップロール間の周速差により延伸>
・延伸速度:20%/分
・延伸倍率:表に記載
<横延伸処理:テンターを用いチャックで把持した両端を拡幅することで延伸>
・延伸速度:10%/分
・延伸倍率:表に記載
<乾燥処理>
・横延伸処理の後、両端を把持したまま120℃で乾燥した。
(3−2)加熱処理
実施例47〜53で作製した未延伸フィルム(原反)および比較例7で作製した基材から剥離する前のフィルムを150℃で3時間加熱する熱架橋を実施した。
(4)評価
作製した各セルロースフィルムについて、以下に示す方法により、厚み方向の湿度膨張係数、面内方向の湿度寸法変化率、面内弾性率の低下率および靱性(破断伸度)を測定した。これらの結果を下記表2〜表5に示す。
<厚み方向の湿度膨張係数>
上述した方法により、厚み方向の湿度膨張係数(ppm/%RH)を測定した。
<面内方向の湿度寸法変化率>
イ)サンプル:幅(30mm)をMD方向とし、長さ(120mm)をTD方向とするサンプルと、幅(30mm)をTD方向とし、長さ(120mm)をMD方向とするサンプルとを、それぞれ3枚ずつ作製し、これらに10cm間隔のピン孔を開ける。なお、長さをMD方向とするサンプルをMDサンプルといい、長さをTD方向とするサンプルをTDサンプルという。
ロ)測長:各サンプルを25℃70%RHに12時間以上調湿した後、この環境下でピン間の距離(L70)をピンゲージを用いて測定する。次いで、各サンプルを25℃30%RHに12時間以上調湿した後、この環境下でピン間の距離(L30)をピンゲージを用いて測定する。その後、下記式から湿度寸法変化率を求める。
面内方向の湿度寸法変化率(ppm/%RH)=(1000000/40)×(L70−L30)/L30
なお、測定は、MDサンプルおよびTDサンプルの合計6枚で測定し、これらの平均値を湿度寸法変化率とする。
<面内弾性率の低下率および靱性(破断伸度)>
引張り試験機を用い、下記条件で測定、初期傾きから高湿下での弾性率を求める。
イ)サンプル:幅(10mm)をMD方向とし、チャック間(30mm)をTD方向とするサンプルと、幅(10mm)をTD方向とし、チャック間(30mm)をMD方向とするサンプルとを、それぞれ10枚ずつ作製する。なお、サンプルは、25℃80%RHでの測定用と25℃30%RHでの測定用とをそれぞれ作製した。また、チャック間をMD方向とするサンプルをMDサンプルといい、チャック間をTD方向とするサンプルをTDサンプルという。
ロ)温湿度:サンプルを25℃80%RHおよび25℃30%RHのそれぞれの環境下で12時間以上調湿後、この環境中で下記引張り試験を行った。
ハ)引張り試験:毎分10mmで引張り、初期弾性率および破断伸度を求める。なお、測定は、測定環境ごとにMDサンプルおよびTDサンプルの各5枚ずつで測定し、これらの平均値を初期弾性率および破断伸度として算出した。次いで、下記式から面内弾性率低下率および靱性(破断伸度)を求める。
・面内弾性率低下率(%)=100×〔1−{(25℃80%RH弾性率(MDサンプルの平均値)/25℃30%RH弾性率(MDサンプルの平均値))+(25℃80%RH弾性率(TDサンプルの平均値)/25℃30%RH弾性率(TDサンプルの平均値))}/2〕
・靱性(破断伸度:%)=(25℃80%RH破断伸度(MDサンプルの平均値)+25℃30%RH破断伸度(MDサンプルの平均値)+25℃80%RH破断伸度(TDサンプルの平均値)+25℃30%RH破断伸度(TDサンプルの平均値))/4
表2〜表5に示す結果から、原反に対して含水処理を施さずに延伸処理を施した場合は、厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHを満たさず、面内方向の湿度寸法変化率が大きくなり、靱性が劣ることが分かった(比較例1)。
また、原反のセルロース繊維の質量に対して20倍超の水を含浸させた状態で延伸処理を施した場合は、厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHを満たさず、高湿度環境下において面内弾性率を維持できないことが分かった(比較例2)。
また、セルロース繊維の平均繊維径が3〜50nmの範囲外であると、セルロースフィルムの厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHを満たさず、面内弾性率の低下率が大きく、靱性も劣ることが分かった(比較例3および4)。
また、延伸処理を施さなかった場合は、セルロースフィルムの厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHを満たさず、高湿度環境下において面内弾性率を維持できず、また、靱性も劣ることが分かった(比較例5)。
また、ホットプレスで延伸した場合には、厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHを満たさず、面内方向の湿度寸法変化率が大きくなり、高湿度環境下において面内弾性率を維持できないことが分かった(比較例6)。
また、基材から剥離せずに熱架橋工程に供した場合は、厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHを満たさず、面内方向の湿度寸法変化率が大きくなり、高湿度環境下において面内弾性率を維持できないことが分かった(比較例7)。
また、剥離後に延伸工程および熱架橋工程を供しない場合、剥離前の乾燥工程が均一の温度条件であると、厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHを満たさず、面内方向の湿度寸法変化率が大きくなり、高湿度環境下において面内弾性率を維持できないことが分かった(比較例8)。
これに対し、表2〜表5に示す実施例1〜64に示す結果から、平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維を含有し、厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHであるセルロースフィルムは、いずれも、面内方向の湿度寸法変化率が小さくなり、また、高湿度環境下においても、面内弾性率を維持し、靱性に優れることが分かった。
特に、実施例10〜16の対比から、セルロース繊維の平均繊維長が200〜1500nmであると、厚み方向の湿度膨張係数をその好適範囲である1000〜5500ppm/%RHに調整することができ、弾性率の低下率をより抑制し、靱性もより良好となることが分かった。
また、実施例17〜24および42〜46の結果から、セルロース繊維の含有量が5質量%以上であると、厚み方向の湿度膨張係数をその好適範囲である700〜5500ppm/%RHに調整することができ、弾性率の低下率をより抑制し、靱性もより良好となることが分かった。
また、実施例32〜36と他の実施例とを比較すると、架橋剤を含有することにより、厚み方向の湿度膨張係数が大きくなる傾向があることが分かった。
また、実施例25〜31の結果から、厚みが10〜150μmであると、厚み方向の湿度膨張係数をその好適範囲である1000〜5500ppm/%RHに調整することができ、靱性がより良好となることが分かった。
また、実施例47〜53の結果から、延伸処理に代えて、加熱処理(熱架橋)を施した場合でも、面内方向の湿度寸法変化率が小さくなり、また、高湿度環境下においても、面内弾性率を維持し、靱性に優れることが分かった。特に、実施例47〜52の対比から、架橋剤として、非カチオン性のポリイソシアネートを用いた場合は、面内方向の湿度寸法変化率がより小さくなることが分かった。また、多環芳香族炭化水素で化学修飾されたセルロース繊維を用いた実施例53が、面内方向の湿度寸法変化率がより小さくなり、また、高湿度環境下においても、面内弾性率をより維持できることが分かった。
また、実施例54〜64の結果から、延伸処理や加熱処理(熱架橋)を施さない場合であっても、塗膜の乾燥方法を調整すると、面内方向の湿度寸法変化率が小さくなり、また、高湿度環境下においても、面内弾性率を維持し、靱性に優れることが分かった。特に、実施例55および58の対比から、ナフタレン化合物よりもフルオレン化合物を用いた化学修飾した方が、面内方向の湿度寸法変化率が更に小さくなり、また、高湿度環境下においても、面内弾性率を更に維持できることが分かった。また、実施例55および64の対比から、多環芳香族炭化水素で化学修飾されたセルロース繊維を用いた実施例55が、面内方向の湿度寸法変化率がより小さくなり、また、高湿度環境下においても、面内弾性率をより維持できることが分かった。
〔実施例65〜68および比較例9〕
<有機半導体電子回路の形成>
下記表6に記載する基板S(セルロースフィルム)上に、以下に示すように基板保護層を積層し、図3に示す有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート−ボトムコンタクト型)を作製した。
(基板保護層の形成)
各基板S上に、ポリ(4−ビニルフェノール)(SIGMA-ALDRICH社製、436216)を20質量%含有するPGMEA(プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセタート)溶液と、ポリ(メラミン−co−ホルムアルデヒド)(SIGMA-ALDRICH社製、418560)を10質量%含有するPGMEA溶液とを、体積比1:2で混合した塗布液を調製した。
この塗布液を、スピンコートによって基板S上に塗布した。
次いで、乾燥窒素雰囲気のホットプレート上で150℃で1時間、加熱することにより、厚さ0.5μmの基板保護層16を形成した。
(ゲート電極の形成)
基板保護層16の上に、クロムを真空蒸着により、厚さ80nmのクロム層を、マスクを通して成膜して、ゲート電極12を作製した。
(ゲート絶縁層の形成)
ポリ(4−ビニルフェノール)(SIGMA-ALDRICH社製、436216)を20質量%含有するPGMEA溶液と、ポリ(メラミン−co−ホルムアルデヒド)(SIGMA-ALDRICH社製、418560)を10質量%含有するPGMEA溶液とを、体積比1:2で混合した塗布液を調製した。
この塗布液を、スピンコートによってゲート電極12の上に塗布した。次いで、乾燥窒素雰囲気のホットプレート上で150℃で1時間、加熱することにより、厚さ0.5μmのゲート絶縁層13を形成した。
これにより、セルロースフィルムからなる基材11(基板S)の上に、基板保護層16、ゲート電極12およびゲート絶縁層13を積層した積層体64を作製した。
(有機半導体層の形成)
有機半導体材料(TIPS−ペンタセン(Aldrich製))0.0531gをトルエン3mlに溶かし、2wt%溶液とし、溶液Lを調製した。これを積層体64上に、スピンコートで形成し、厚さ0.06μmの有機半導体層14を形成した。その後、ホットプレート80℃上で30分加熱し、溶媒を除去した。
(ソース−ドレイン電極の形成)
有機半導体層14の上に、金を真空蒸着により、厚さ50nmの金層を、マスクを通して成膜して、ソース−ドレイン電極15を作製した。
(評価結果)
有機薄膜トランジスタの各電極と、Agilent Technologies社製の4155Cに接続されたマニュアルプローバの各端子とを接続して、ドレイン電流−ゲート電圧(Id−Vg)特性を測定し、電界効果移動度(単位:cm2/(V・s))を算出した。なお、p型有機薄膜トランジスタはドレイン電圧(Vd)を−40Vに、n型有機薄膜トランジスタはドレイン電圧(Vd)を40Vに、それぞれ設定した。結果を下記表6に示す。許容される移動度は0.1cm2/V・s以上である。
表6に示す結果から、実施例で作製したセルロースフィルムを基板に用いた場合は、充分な移動度を示し、有機半導体回路として正常に動作することが確認できた。
一方、比較例1で作製したセルロースフィルムを基板に用いた場合は、移動度が大きく低下し、有機半導体回路として動作しないことが分かった。これは、真空工程からの出し入れによる湿度変化、有機半導体層形成中等の高温ハンドリングでの張力等による伸長等で、有機半導体にクラックが発生し移動度が低下したものと推定される。
11 基板
12 電極
13 絶縁体層
14 半導体活性層(有機半導体層)
15a、15b 電極
16 基板保護層
31 基板
32 電極
33 絶縁体層
34a、34b 電極
35 半導体活性層(有機半導体層)
64 積層体

Claims (13)

  1. 平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維を含有し、厚み方向の湿度膨張係数が500〜8000ppm/%RHである、セルロースフィルム。
  2. 前記セルロース繊維の平均繊維長が200〜1500nmである、請求項1に記載のセルロースフィルム。
  3. 前記セルロース繊維の含有量が5質量%以上である、請求項1または2に記載のセルロースフィルム。
  4. 前記セルロース繊維の少なくとも一部が、多環芳香族炭化水素で化学修飾されたセルロース繊維である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースフィルム。
  5. 更に、架橋剤を含有し、
    前記架橋剤の含有量が、前記セルロース繊維の質量の0.1倍以上20倍以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースフィルム。
  6. 前記架橋剤が、水分散型で非カチオン性のポリイソシアネートである、請求項5に記載のセルロースフィルム。
  7. 前記架橋剤が、水分散型で非カチオン性のブロックポリイソシアネートである、請求項5に記載のセルロースフィルム。
  8. 厚みが10〜150μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロースフィルム。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースフィルムを有する基板と、前記基板上に設けられる配線回路とを有する、配線基板。
  10. 前記配線回路が、有機半導体を用いた回路である、請求項9に記載の配線基板。
  11. 請求項1に記載のセルロースフィルムを作製するセルロースフィルムの製造方法であって、
    平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維を含有するフィルムを製膜する製膜工程と、
    前記製膜工程の後、前記フィルムに対して、前記セルロース繊維の質量に対して0.1倍以上20倍以下の水を含浸させた状態で、延伸処理を施し、セルロースフィルムを作製する延伸工程とを有する、セルロースフィルムの製造方法。
  12. 請求項1に記載のセルロースフィルムを作製するセルロースフィルムの製造方法であって、
    平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維および分散媒体を含有する溶液を基材上に塗工し、塗膜を形成する塗工工程と、
    前記塗工工程の後に、前記塗膜を乾燥させ、乾燥後の前記塗膜を前記基材から剥離する剥離工程と、
    前記剥離工程の後に、剥離後の前記塗膜を加熱して架橋し、セルロースフィルムを作製する熱架橋工程とを有する、セルロースフィルムの製造方法。
  13. 請求項1に記載のセルロースフィルムを作製するセルロースフィルムの製造方法であって、
    平均繊維径が3〜50nmであるセルロース繊維および分散媒体を含有する溶液を基材上に塗工し、塗膜を形成する塗工工程と、
    前記塗工工程の後に、前記塗膜を乾燥させてセルロースフィルムを作製する乾燥工程とを有し、
    前記乾燥工程が、前記塗膜の端部における乾燥時間Aを、前記塗膜の中央部における乾燥時間Bの0.5倍以上0.95倍以下とする工程である、セルロースフィルムの製造方法。
    ここで、塗膜の端部とは、塗膜の端から塗膜の一辺の長さの5%以上30%以下の幅を有する周縁領域をいい、塗膜の中央部とは、塗膜の前記端部以外の領域をいう。
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