JP7234569B2 - 遮光性フィルム - Google Patents
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Description
しかし、遮光性フィルムの耐熱性を向上させるために、バインダー樹脂として耐熱性樹脂を用いることが考えられるが、耐熱性樹脂は塗膜を形成する過程で内部応力が大きく遮光層にカールが発生してしまう問題がある。さらに、耐熱性樹脂は硬くて脆いために、遮光層に張力を与えた際に破断する可能性や、遮光層を抜き加工する際にバリや割れが発生する可能性がある。また、遮光層のカールや硬さや脆さを低減させるために、バインダー樹脂に可塑性材料を添加する方法を用いることが考えられるが、耐熱性が低下してしまう問題があった。
即ち、本発明は、繊維素系樹脂、イソシアネート硬化剤および黒色顔料を含有してなる遮光層を有する遮光性フィルムであって、上記繊維素系樹脂100質量部に対して、上記イソシアネート硬化剤5~50質量部、上記黒色顔料2~40質量部含有し、JIS K7127(1999)に準拠した引張試験において、上記遮光層の引張強さが20MPa以上であることを特徴とする遮光性フィルムに関する。
本実施形態の遮光性フィルムは、繊維素系樹脂、イソシアネート硬化剤及び黒色顔料を含有してなる遮光層を有し、その遮光層の耐熱性を保持し、遮光層の強度を保持し、脆さを抑え、カールを低減することができる。それにより、耐久性に優れ、且つ加工性に優れた遮光性フィルムを提供できる。また、本実施形態の遮光性フィルムは、遮光層の引張強さが強く、引張伸びも低いため、基材を有しない、遮光層単層での構成により、遮光性フィルムとして用いることも可能である。遮光層における、繊維素系樹脂、イソシアネート硬化剤及び黒色顔料の合計の含有量は、遮光層100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは65質量部以上、特に好ましくは80質量部以上の範囲である。
繊維素系樹脂としては、セルロース、またはセルロース誘導体等が挙げられる。セルロース誘導体としては、例えば、セルロースエステル、セルロースカーバメート、セルロースエーテル等が挙げられる。これらの繊維素系樹脂は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
また、セルロースカーバメートとしては、例えば、セルロースフェニルカーバメートが挙げられる。
また、セルロースエーテルとしては、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、アルキル-カルボキシアルキルセルロース、これらの誘導体[例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど]などが例示できる。
イソシアネート硬化剤は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物である。イソシアネート硬化剤は、例えば、芳香族系イソシアネート、脂肪族系イソシアネート、脂環族系イソシアネートなどのイソシアネート化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック等の公知の黒色顔料を挙げることができる。これらの黒色顔料は、1種類または2種類以上を任意に併用して用いることができる。
黒色顔料としては、顔料の分散性、低コスト化等の観点からカーボンブラックを用いることが好ましく、遮光層に帯電防止効果を付与する場合は、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは、アグリゲート、アグロメレート等の凝集体であっても良い。
なお、ここでいう、平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真や光学顕微鏡写真の拡大画像(例えば、千倍~1万倍)から一次粒子の大きさを直接計測する一般的な方法で求めることができる。具体的には、50個~100個の粒子をサンプリングして、その短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とする。
遮光層は、遮光層の表面を低光沢性にするために無機顔料を用いることができる。無機顔料としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、または酸化マグネシウムなどのいずれのものも用いることができる。尚、ここでいう無機顔料とは、上記黒色顔料を除いた無機顔料を指す。これらの無機顔料は、1種又は2種以上を混合して用いることもできる。これらの中でも、顔料の分散性、低コスト等の観点からシリカを用いることが好ましい。また、無機顔料は、一次粒子の凝集体からなり、一定の細孔を有する多孔質顔料がより好ましい。なかでも、多孔質体を形成しやすいゾル-ゲル法や沈降法等の湿式法で製造されるシリカがより好ましい。
また、黒色顔料等の添加量を抑えた場合にも、無機顔料自体の遮光性で遮光層に充分な遮光性と低光沢性を満たすことが可能となり、引張強さとの両立が可能となる。
次に、遮光層の製造方法の一例について説明する。但し、本発明の遮光層の製造方法は、以下の方法に限定されない。
遮光性フィルムは、遮光層単独での引張強さは、遮光層の厚みが20μmの条件で、20MPa以上であり、好ましくは30MPa以上であり、より好ましくは40MPa以上である。この範囲にあることで、加工時に発生する張力の影響で遮光層の破断を抑えることができる。また、引張強さの上限値は、好ましくは300MPa以下、より好ましくは250MPa以下である。この範囲にあることで、遮光層の硬さを抑え、加工性を向上させることができる。
遮光性フィルムは、遮光層単独での引張伸びは、遮光層の厚みが20μmの条件で、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。この範囲にあることで、加工時に発生する張力の影響で遮光層が伸びることを抑えることができ、伸びによる寸法変化を抑えることができる。 また、引張伸びの下限としては、0%以上である。遮光層の収縮による寸法変化も抑えることができる。
遮光性フィルムは、遮光層単独での耐屈曲性は、遮光層の厚みが20μmの条件で、JIS K5600-5-1(1999)に準拠した円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、遮光層に割れが生じる際のマンドレル直径が10mm以下であることが好ましい。より好ましくは2mmで割れないことである。この範囲にあることで、遮光性フィルムの抜き加工でバリや割れの発生を抑えることができる。さらに好ましくは、マンドレルを使用しない状態での耐屈曲試験(遮光層を180度に折り曲げた試験)において割れが生じないことである。
遮光性フィルムは、遮光層単独でのカールが、10cm×10cmの大きさの条件で±10mm以内であることが好ましい。この範囲にあることで、加工時にカールによる不具合を抑えることができ、光学部品への不具合も抑えることができる。
遮光層のガラス転移温度は、100℃以上が好ましい。より好ましくは110℃以上である。この範囲にあることで、耐熱性のある遮光性フィルムにすることができる。また、ガラス転移温度の上限としては、好ましくは450℃以下、より好ましくは300℃以下である。この範囲にあることで、遮光層の硬さを抑え、加工性を向上させることができる。また、遮光層の周波数1Hz、80℃における遮光層の損失正接(tanδ)は0.1以下であることが好ましい。この範囲にあることで、熱衝撃による遮光層の変形を抑えることができる。 また、下限としては0より大きい数値である。
但し、遮光層の厚みは、転写法で形成する場合、転写面の粗面化の算術平均粗さRa(算術平均粗さ)(JIS B0601:2001)よりも大きくすることが好ましい。
本実施形態の遮光性フィルムは、繊維素系樹脂、イソシアネート硬化剤および黒色顔料を含有してなる遮光層を有する。
遮光性フィルムの引張強さは、遮光性フィルムの厚みが20μmの条件で、20MPa以上であることが好ましい。より好ましくは30MPa以上であり、さらに好ましくは40MPa以上である。この範囲にあることで、加工時に発生する張力の影響で遮光層の破断を抑えることができる。
また、引張強さの上限値は、好ましくは300MPa以下、より好ましくは250MPa以下である。この範囲にあることで、遮光性フィルムの硬さを抑え、加工性を向上させることができる。
遮光性フィルムの引張伸びは、遮光性フィルムの厚みが20μmの条件で、150%以下であることが好ましく、より好ましくは100%以下である。この範囲にあることで、加工時に発生する張力の影響で遮光層が伸びることを抑えることができ、伸びによる寸法変化を抑えることができる。また、引張伸びの下限としては、0%以上である。遮光性フィルムの収縮による寸法変化も抑えることができる。
遮光性フィルムの耐屈曲性は、遮光性フィルムの厚みが20μmの条件で、JIS K5600-5-1(1999)に準拠した円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、遮光性フィルムに割れが生じる際のマンドレル直径が10mm以下であることが好ましい。より好ましくは2mmで割れないことである。この範囲にあることで、遮光性フィルムの抜き加工でバリや割れの発生を抑えることができる。さらに好ましくは、マンドレル径がない状態での耐屈曲試験(遮光性フィルムを180度に折り曲げた試験)において割れが生じないことである。
遮光性フィルムのカールは、遮光性フィルムの厚みが20μmで、10cm×10cmの大きさの条件で±10mm以内であることが好ましい。この範囲にあることで、加工時にカールによる不具合を抑えることができ、カールによる寸法変化を抑えることができ、カールによる光学部品への不具合も抑えることができる。遮光性フィルムのカールは、遮光層のカール測定と同様の方法で測定することができる。
遮光性フィルムの製造方法としては、上述した遮光層の形成方法により、剥離可能な基材上に遮光層形成用樹脂組成物からなる遮光層を形成し、その後剥離可能な基材を遮光層から剥離して、遮光層単層構造を有する遮光性フィルムとすることができる。
下記組成の混合物をシェーカー(スキャンデックスSK450:Fast & Fluid Management社製)により均一に攪拌混合し、遮光層形成用樹脂組成物1を得た。続いて、剥離可能な基材の剥離処理面上に、得られた遮光層形成用樹脂組成物1を塗布、乾燥し、乾燥後の厚み20μmの遮光層を形成し、基材を剥離することで、遮光層の単層からなる遮光性フィルムを得た。ここで、剥離可能な基材とは、厚み100μmのポリエステルフィルムにサンドブラスト加工を行い、算術平均粗さRa(算術平均粗さ)(JIS B0601(2001))0.8に表面を粗面化し、その粗面化した面に離型剤(離型剤名 X:リンテック社製)で剥離処理したものである。
・樹脂-1:100部
・硬化剤-1:20部
・黒色顔料-1:25部
・希釈溶剤(メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1(質量比)からなる混合溶剤):820部
材料の種類および配合量を表5のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、それぞれ遮光層形成用樹脂組成物および遮光性フィルムを製造した。表中、特に断りのない限り、数値は部を表し、空欄は配合していないことを表す。
実施例、比較例で得られた遮光性フィルムについて、引張強さ、引張伸び、耐屈曲性、カール、ガラス転移温度、損失正接(tanδ)、熱衝撃性、光学濃度、光沢度を評価した。結果を表1に示す。
1.引張強さ
引張強さは、JIS K7127(1999)に準拠して求めた。幅10mm、長さ100mmの遮光性フィルムを引張試験機(テスター産業社製)で速度300mm/分で長さ方向に引張り、遮光層が破断したときの強さを測定した。40MPa以上で破断したときを「◎」、40MPa未満30MPa以上で破断したときを「○」、30MPa未満20MPa以上で破断したときを「△」、20MPa未満で破断したときを「×」とした。
引張伸びは、JIS K7127(1999)に準拠して求めた。幅10mm、長さ50mmの遮光性フィルムを引張試験機(テスター産業社製)で速度300mm/分で長さ方向に引張り、遮光層が破断したときの伸び率を測定した。
伸び率は下記数式で求めた。
引張伸び(%)=(破断時のフィルムの長さ-試験前のフィルムの長さ)÷試験前のフィルム長さ×100
引張伸びが30%以下で破断したものを「○」、30%を超えて破断したものを「×」とした。
得られた遮光性フィルムについて、JIS K5600-5-1(1999)に準拠した円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験を行った。マンドレルを使用して試験した際に、マンドレル径が2mmで遮光層が割れないものを「○」とし、2mmを超えて10mm以下で遮光層に割れが生じるものを「△」、10mmより大きい径で遮光層に割れが生じるものを「×」とした。さらに、マンドレルがない状態での耐屈曲試験(遮光性フィルムを180度に折り曲げた試験)において割れが生じないものを「◎」とした。
剥離可能な基材を有する遮光性フィルムを10cm×10cmの大きさに切断したサンプルを作製し、水平で平滑な台上に、遮光性フィルムの剥離可能な基材の面側を下にした状態で、1時間静置させた。次いで、台上からの遮光層のカールを測定して、カールが±5mm以内を「◎」とし、カールが±5mmを超えて±10mm以内を「○」とし、カールが±10mmを超えた場合を「×」とした。なお、このときの測定環境はJIS Z8703に準じた標準状態の温度23℃,相対湿度50%で行った。
得られた遮光性フィルムについて、ガラス転移温度と損失正接(tanδ)を測定した。ガラス転移温度が100℃以上を「○」とし、100℃未満を「×」とした。また、周波数1Hz、80℃における損失正接(tanδ)が0.1以下を「○」とし、0.1より大きい場合を「×」とした。尚、損失正接(tanδ)は、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製)を用いて、振動周波数1Hz、昇温速度5℃/分で-20℃から200℃まで測定し、得られたデータからtanδを算出して求めた。また、ガラス転移温度は、求めたtanδのピーク温度とした。
得られた遮光フィルムについて、熱衝撃試験(ヒートショック試験)を行った。85℃で30分間保持し、-40℃で30分間保持する操作を1サイクルとして、これを合計100サイクル繰り返すことにより行った。試験後の遮光性フィルムの状態を目視で観察して、変形が認められないものを「○」、変形が認められるものを「×」とした。
得られた遮光フィルムについて、光学濃度を測定した。光学濃度は、JIS K7651(1988)に準拠して光学濃度計(TD-904:グレタグマクベス社製)を用いて求めた。光学濃度が5以上を「◎」とし、4以上5未満を「○」とし、3以上4未満を「△」とし、3未満を「×」とした。
得られた遮光フィルムについて、光沢度を測定した。光沢度は、光沢計(VG-2000:日本電色工業社製)を用いて、測定角度(θ)60度で測定することで求めた。遮光性フィルムのどちらかの一方の面の光沢度が3以下を「◎◎」とし、3より大きく5以下を「◎」とし、5より大きく10以下を「○」とし、10より大きい場合を「×」とした。
Claims (10)
- 繊維素系樹脂、イソシアネート硬化剤および黒色顔料を含有してなる遮光層を有する遮光性フィルムであって、前記繊維素系樹脂が、水酸基を有し、前記繊維素系樹脂100質量部に対して、前記イソシアネート硬化剤5~50質量部、前記黒色顔料2~40質量部含有し、JIS K7127(1999)に準拠した引張試験において、前記遮光層の引張強さが20MPa以上であることを特徴とする遮光性フィルム。
- 前記繊維素系樹脂がセルロースアセテートプロピオネート又はセルロースアセテートである請求項1記載の遮光性フィルム。
- 前記イソシアネート硬化剤が、脂肪族系イソシアネートを含む、請求項1又は2記載の遮光性フィルム。
- JIS K7127(1999)に準拠した引張試験において、前記遮光層の引張伸びが30%以下であることを特徴とする請求項1~3記載の遮光性フィルム。
- JIS K5600-5-1(1999)に準拠した円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、前記遮光層に割れが生じる際のマンドレル直径が10mm以下であることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の遮光性フィルム。
- 前記遮光層のカールが、±10mm以内であることを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の遮光性フィルム。
- 前記遮光層のガラス転移温度が、100℃以上であることを特徴とする請求項1~6何れか1項記載の遮光性フィルム。
- 前記遮光層のガラス転移温度が100℃以上であり、前記遮光層の周波数1Hz、温度80℃における損失正接(tanδ)が0.1以下であることを特徴とする請求項1~7何れか1項記載の遮光性フィルム。
- 前記遮光層のみからなる、請求項1~8何れか1項記載の遮光性フィルム。
- 光学部材用である、請求項1~9何れか1項記載の遮光性フィルム。
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