JP2017119936A - サイジング剤塗布炭素繊維、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料 - Google Patents

サイジング剤塗布炭素繊維、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料 Download PDF

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大悟 小林
市川 智子
Tomoko Ichikawa
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一貴 吉弘
Kazutaka Yoshihiro
一貴 吉弘
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Abstract

【課題】炭素繊維強化複合材料とした際に力学特性に優れるサイジング剤塗布炭素繊維および該サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、そのサイジング剤塗布炭素繊維を用いたプリプレグおよび力学特性に優れた炭素繊維強化複合材料を提供する。
【解決手段】炭素繊維に数平均繊維径が1〜1000nmであるナノセルロースおよびエポキシ基を有する化合物を含むサイジング剤が塗布されてなるサイジング剤塗布炭素繊維であって、前記エポキシ基を有する化合物は、エポキシ基を2以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物および/またはポリオール型ポリエポキシ化合物であるサイジング剤塗布炭素繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、マトリックス樹脂との接着性に優れ、高度な機械強度を有する炭素繊維強化複合材料を構成するサイジング剤塗布炭素繊維、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料に関するものである。
軽量でありながら強度、剛性、寸法安定性等に優れることから、繊維強化複合材料が広く事務機器用途、コンピュータ用途(ICトレイ、ノートパソコン筐体等)、自動車用途等の一般産業分野に展開され、その需要は年々増加しつつある。これらの強化繊維には、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、アラミド繊維やPBO繊維などの有機繊維、およびシリコンカーバイド繊維などの無機繊維や炭素繊維などが使用されているが、比強度、比剛性および軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好適であり、その中でもポリアクリロニトリル系炭素繊維が好適に用いられている。
しかしながら、繊維強化複合材料は、強化繊維とマトリックス樹脂を必須の構成要素とする不均一材料であり、そのため強化繊維の配列方向の物性とそれ以外の方向の物性に大きな差が存在する。例えば、落錘衝撃に対する抵抗性で示される耐衝撃性は、層間剥離強度すなわちGIc(開口モード)やGIIc(面内せん断モード)などの層間靭性に支配されることが知られている。特に、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする炭素繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂の低い靭性を反映し、強化繊維である炭素繊維の配列方向以外からの応力に対し、破壊され易い性質を持っている。
そこで、このような問題を解決するために、すなわち強化繊維とマトリックス樹脂との親和性を高め、繊維方向の引張強度や圧縮強度の向上に加え、強化繊維の配列方向以外からの応力に対応することができる複合材料物性の改良が常に求められている。
このような炭素繊維に付与するサイジング剤としては、不飽和ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂などが好適に用いられている。一般に、マトリックス樹脂を用いた炭素繊維強化複合材料成形品では、繊維方向に高い引張強度や圧縮強度を発現させるために、炭素繊維とマトリックス樹脂との間に高い界面接着性が求められる。そこで該炭素繊維に付与するサイジング剤として、このような界面接着性を高め、高度の機械的強度を有する炭素繊維強化複合材料を与える目的で、エポキシ樹脂が特に好適に用いられている。例えば、サイジング剤としてビスフェノールAのジグリシジルエーテルを炭素繊維に塗布する方法が提案されている(特許文献1,2)。また、サイジング剤としてポリアルキレングリコールのエポキシ付加物を炭素繊維に塗布する方法が提案されている(特許文献3,4,5)。
さらに、前述の問題を解決するために、繊維方向の引張強度や圧縮強度の向上に加え、繊維の配列方向以外からの応力への強度を改善するためのサイジング剤の検討が行われている。例えば、可撓性エポキシ樹脂と該可撓性エポキシ樹脂とは相溶性のないエポキシ樹脂を必須成分として含有するサイジング剤を使用することで層間剪断強度に優れた炭素繊維強化複合材料方法を得る方法が提案されている(特許文献6)
一方、セルロースの微細繊維を用いた複合材料が盛んに研究されている。セルロースはその伸びきり鎖結晶構造のため、低線膨張係数と高強度・高弾性率を有する。また、微細化することにより、樹脂と複合化した際に均一に分散することができ、高い透明性を示す材料としても注目されている。例えば、天然セルロースを酸化させることによりセルロースを微細化する方法(特許文献7)や、酸化し微細化した天然セルロースをエポキシ樹脂に混合することで、高強度、高弾性のコンポジットを作成する方法(特許文献8)が提案されている。
米国特許第3,957,716号明細書 特開昭57−171767号公報 特開昭57−128266号公報 米国特許第4,555,446号明細書 特開昭62−33872号公報 国際公開07/060833号 国際公開2013/133436号 特開2010−59304号公報
しかしながら、今後一段と高まる、炭素繊維強化複合材料のさらなる軽量化と高い層間靱性への要求を考慮した場合、上記の方法は、必ずしも十分であるとはいえない。すなわち、マトリックス樹脂の高靭性化および高強度化とともに、炭素繊維強化複合材料の層間靭性を高められるサイジング剤の開発が望まれている。
そこで本発明の目的は、上記の従来技術における問題点に鑑み、炭素繊維とマトリックス樹脂との界面接着性に優れ、炭素繊維強化複合材料に高度の靭性を発現させるサイジング剤塗布炭素繊維、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、プリプレグ、ならびに該炭素繊維を使用した力学特性に優れた炭素繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明者らは、従来、複合材料の強化繊維としての役割しか果たすことがなかったナノセルロースをサイジング剤の構成要素として用い、当該ナノセルロースを含むサイジング剤を炭素繊維に塗布し、炭素繊維とマトリックス樹脂の界面に存在させるよう構成することにより、該炭素繊維を用いたプリプレグおよび炭素繊維強化複合材料の靭性を向上できることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明は、炭素繊維に、数平均繊維径が1〜1000nmであるナノセルロースおよびエポキシ基を有する化合物を含むサイジング剤が塗布されてなるサイジング剤塗布炭素繊維であって、前記エポキシ基を有する化合物は、エポキシ基を2以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物またはポリオール型ポリエポキシ化合物である、サイジング剤塗布炭素繊維である。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記エポキシ基を化合物が、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールから選択される1種と、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物であることが好ましい。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記サイジング剤が、ナノセルロースを5〜80質量%含むことが好ましい。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記ナノセルロースの数平均長さが100〜10000nmであることが好ましい。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記ナノセルロースの数平均長さと数平均繊維径の比である数平均アスペクト比が50〜10000であることが好ましい。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、上記発明において、前記ナノセルロースがセルロースI型結晶を有しその結晶化度が50%以上であることが好ましい。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法は、炭素繊維に、数平均繊維径が1〜1000nmであるナノセルロースおよび前記エポキシ基を有する化合物を含むサイジング剤を塗布した後、熱処理することを特徴とし、前記サイジング剤を塗布する工程において、サイジング剤の付着量がサイジング剤塗布炭素繊維100質量部に対して0.1〜10質量部となるようにし、かつ、前記熱処理する工程において、熱処理の条件を160〜260℃の温度範囲で30〜600秒間とするサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法を含む。
また、本発明のプリプレグは、上記のサイジング剤を塗布した炭素繊維と熱硬化性樹脂からなることを特徴とする。
また、本発明のプリプレグは、上記発明の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記のプリプレグを硬化させてなることを特徴とする。
また、本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記のサイジング剤塗布炭素繊維と熱硬化性樹脂からなることを特徴とする。
また、本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記発明の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることが好ましい。
本発明によれば、炭素繊維とマトリックス樹脂の層間に高強度、高靭性な界面を形成することにより、高い層間靭性を有する炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明は炭素繊維に数平均繊維径が1〜1000nmであるナノセルロースおよびエポキシ基を有する化合物を含むサイジング剤が塗布されてなるサイジング剤塗布炭素繊維である。
まず、本発明に用いられるサイジング剤について説明する。
本発明のサイジング剤は、少なくとも数平均繊維径が1〜1000nmであるナノセルロースを含有する。本発明に用いられるナノセルロースは、天然植物に存在するヘミセルロースやリグニンと結合した構造体であるセルロースを、グルコース分子が重合したセルロース分子間で規則的な水素結合をとったミクロフィブリル構造まで解繊させることにより調製したものであるとよく、その数平均繊維径が1〜1000nmのものを必須としている。本発明は、数平均繊維径が1〜1000nmであるナノセルロースを含むサイジング剤を炭素繊維に付与することにより、高強度、高靭性などの特性を繊維/マトリックス樹脂界面に保持させることができ、これによって炭素繊維強化複合材料の層間破壊の際に高強度な破壊靭性を有する炭素繊維強化複合材料を提供できる。以下で、本発明を構成するサイジング剤に含まれるナノセルロースの各構成について説明する。
本発明に用いられるナノセルロースは、上述のとおり数平均繊維径が1〜1000nmである。数平均繊維径が1nm以上である場合、セルロース分子間の水素結合が維持されており、ミクロフィブリル構造が維持されており十分な強度を負担することができる。また、数平均繊維径が1000nm以下の場合、炭素繊維に付着させた際の分散状態が均一になり、炭素繊維複合材料の一部に応力集中することなく均等に荷重負担させることができるため、高強度な破壊靱性を有する炭素繊維強化複合材料を提供できる。ナノセルロースの数平均繊維径の下限として好ましくは2nm以上であり、より好ましくは4nm以上である。また、ナノセルロースの数平均繊維径の上限として好ましくは500nm以下であり、より好ましくは150nm以下である。
本発明に用いられるナノセルロースは、数平均長さが100〜10000nmであることが好ましい。ナノセルロースの数平均長さが100nm以上であると、周辺のマトリックスからの応力を繊維方向に負担することができ十分に強度を発現することができる。ナノセルロースの数平均長さが10000nmよりも小さいと、ナノセルロース間で凝集が生じにくく、サイジング剤として用いた場合、炭素繊維表面に均一に付着させることができる。数平均長さはより好ましくは1000nm以上であり、さらに好ましくは2500nm以上である。
セルロースナノファイバーの数平均繊維径と数平均長さについてはSEM解析により評価を行う。詳細には、ナノセルロースを含むサイジング剤を塗布したサイジング剤塗布炭素繊維をSEM観察し、得られた1枚の画像当たり5本以上の繊維について繊維径と長さの値を読み取り、これを少なくとも3枚の重複しない領域の画像について行い、少なくとも50本の繊維径と長さの情報を得る。観察したセルロースナノファイバーに分岐構造がある場合は、先端部から分岐点までの長さをセルロースナノファイバーの長さとする。以上により得られた繊維径と長さのデータから、数平均繊維径、数平均長さ、最大繊維径を算出することができる。
本発明において、最大繊維径は1000nm以下であることが好ましい。最大繊維径が1000nm以下であると、セルロースナノファイバーの大きさが均一になり、応力集中による特定部位の破壊が生じにくくなる。
本発明に用いられるナノセルロースは、数平均長さと数平均繊維径の比である数平均アスペクト比が50〜10000であることが好ましい。ナノセルロースの数平均アスペクト比が上記範囲であると、サイジング剤として炭素繊維に塗布した際に、均一な網目状の皮膜を形成することができ、炭素繊維強化複合材料に十分な靭性を付与することができる。
本発明に用いられるナノセルロースは、セルロースI型結晶を有しその結晶化度が50%以上であることが好ましい。セルロースI型結晶を有しその結晶化度が50%以上であるナノセルロースは、天然セルロース由来のミクロフィブリル構造を維持することで、十分な機械強度を有しており、サイジング剤として用いた場合の面外強度が向上する。ナノセルロースの結晶化度はより好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。
セルロースI型結晶であることは、ナノセルロース分散液を乾燥させ、フィルム上にしたものについて粉末X線回折を測定することにより分析することができる。X線回折パターンが、14≦θ≦18に1つ又は2つのピークと、20≦θ≦24に1つのピークとを有する場合にI型結晶が存在するとみなすことができる。結晶化度は全セルロース由来のピーク面積中のセルロースI型結晶の由来のピーク面積比から求めることができる。
ナノセルロースは解繊状態によって呼称が異なり、繊維径4〜100nm、かつ長さ5μm以上の高アスペクト比のナノセルロースはセルロースナノファイバー(CNF、ミクロフィブリル化植物繊維)、繊維径10〜50nm、かつ長さ100〜500nmの低アスペクト比のナノセルロースはセルロースナノクリスタル(CNC)と呼称されている。いずれの解繊状態であっても、ミクロフィブリル構造を維持しており、高強度、高靭性を有する。複合材料の靭性を向上させるためには、炭素繊維表面に均一な皮膜を形成することが必要であり、高アスペクト比であるセルロースナノファイバーが好適である。
このような化合物を含むナノセルロース製品は、ナノセルロースファイバー(中越パルプ工業(株)製)、“BiNFi−s”(スギノマシン(株)製)、“レオクリスタ”第一工業製薬(株)などが挙げられる。
ナノセルロースの原料となる天然セルロースはセルロースミクロフィブリルの表面とヘミセルロースやリグニンが強固に結合しており、容易に分散させることができないが、ミクロフィブリル表面の化学的な処理、または機械的にせん断をかけて解繊することによって、ミクロフィブリル構造を維持した状態で表面の結合を乖離させ微細化する方法が提案されている。天然セルロースは、植物、動物、バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系から単離した精製セルロースである。具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプやバガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース、ホヤから単離されるセルロース、海草から単離されるセルロースなどが挙げられ、天然セルロースを単離することができれば原料は限定されない。
ナノセルロースの解繊方法としては、化学的な解繊方法と機械的な解繊方法がある。化学的な解繊方法としては、例えば、セルロース繊維含有材料の水懸濁液又はスラリーをN−オキシル化合物触媒下でナノフィブリル表面を酸化させる方法や、硫酸、塩酸、臭化水素酸等による酸加水分解等で解繊させる方法がある。機械的な解繊方法としては、例えば、セルロース繊維含有材料の水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸又は多軸混練機(好ましくは二軸混練機)、ビーズミル等による機械的な摩砕、ないし叩解することによりせん断をかけて解繊する方法が使用できる。必要に応じて、上記の解繊方法を組み合わせて処理してもよい。本明細書に記載の形態をとったナノセルロースであれば、ナノセルロースの解繊方法は上記に限定されない。
上記方法により解繊されたナノセルロースの表面には、セルロース分子由来の水酸基や、解繊時の酸化処理により精製されたアルデヒド基やカルボキシル基が存在する。ナノセルロース間の再凝集の抑制や、併用する材料との親和性を向上させる目的で、ナノセルロース表面の水酸基やカルボキシル基を変性することがある。変性官能基の種類としては、例えばエーテル基、エステル基、オレフィン基、アジド基、アミノ基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、エポキシ基、ビニル基や芳香環含む上記官能基等が挙げられる。また、水酸基やカルボキシル基の変性度によって、分散状態や、併用材料との親和性を制御することができる。本明細書に記載の形態をとったナノセルロースであれば、変性官能基の種類や表面官能基の変性度は限定されない。
本発明において、少なくともナノセルロースを含むサイジング剤を炭素繊維に塗布する際には溶媒で分散して用いることができる。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドが挙げられるが、なかでも、取扱いが容易であり、安全性の観点から有利であることから、水が好ましく用いられる。
本発明で用いられるサイジング剤は、ナノセルロースの他に、エポキシ基を有する化合物を含むことを特徴とする。エポキシ基があると、炭素繊維の表面官能基と相互作用し、炭素繊維表面と強固に接着するとともに、マトリックス樹脂、とりわけエポキシ樹脂との相互作用および反応性が高い。これにより、高い層間破壊靱性を有するとともに、マトリックス樹脂との接着性に優れた繊維強化複合材料を得ることができる。
エポキシ化合物としては、脂肪族エポキシ化合物でも、芳香族エポキシ化合物でもよく、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。エポキシ化合物の具体例としては、ポリオールから誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ化合物、複数活性水素を有するアミンから誘導されるグリシジルアミン型エポキシ化合物、ポリカルボン酸から誘導されるグリシジルエステル型エポキシ化合物、および分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるエポキシ化合物などが挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、およびテトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。また、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。また、このエポキシ化合物としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物、およびビフェニルアラルキル骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが挙げられる。さらに、例えば、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、および4−アミノ−3−メチルフェノールのアミノフェノール類の水酸基とアミノ基の両方を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるエポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、およびダイマー酸を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ化合物が挙げられる。
分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化させて得られるエポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシシクロヘキサン環を有するエポキシ化合物が挙げられる。さらに、このエポキシ化合物としては、エポキシ化大豆油が挙げられる。
これらのエポキシ化合物以外にも、トリグリシジルイソシアヌレートのようなエポキシ化合物が挙げられる。さらには、上に挙げたエポキシ化合物を原料として合成されるエポキシ化合物、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンジイソシアネートからオキサゾリドン環生成反応により合成されるエポキシ化合物などが挙げられる。
さらに、エポキシ化合物として、1個以上のエポキシ基と、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、およびスルホ基から選ばれる、少なくとも1個以上の官能基を有するエポキシ化合物を用いることもできる。
エポキシ基とアミド基を有する化合物としては、例えば、グリシジルベンズアミド、アミド変性エポキシ化合物等が挙げられる。アミド変性エポキシはジカルボン酸アミドのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基とイミド基を有する化合物としては、例えば、グリシジルフタルイミド等が挙げられる。具体的には“デナコール(商標登録)”EX−731(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ基とウレタン基を有する化合物としては、例えば、ウレタン変性エポキシ化合物が挙げられ、具体的には“アデカレジン(商標登録)”EPU−78−13S、EPU−6、EPU−11、EPU−15、EPU−16A、EPU−16N、EPU−17T−6、EPU−1348およびEPU−1395(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。または、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテルの末端水酸基に、その水酸基量に対する反応当量の多価イソシアネート化合物を反応させ、次いで得られた反応生成物のイソシアネート残基に多価エポキシ化合物内の水酸基と反応させることによって得ることができる。ここで、用いられる多価イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートおよびビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
エポキシ基とウレア基を有する化合物としては、例えば、ウレア変性エポキシ化合物等が挙げられる。ウレア変性エポキシはジカルボン酸ウレアのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基とスルホニル基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールS型エポキシ化合物等が挙げられる。
エポキシ基とスルホ基を有する化合物としては、例えば、p−トルエンスルホン酸グリシジル化合物および3−ニトロベンゼンスルホン酸グリシジル化合物等が挙げられる。
本発明において用いられるエポキシ化合物のエポキシ価は2.0meq/g以上であることが好ましい。エポキシ化合物のエポキシ価が、2.0meq/g以上であると、高密度で炭素繊維との相互作用が形成され、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性がさらに向上する。エポキシ価の上限は特にないが、8.0meq/gあれば、炭素繊維との相互作用が強化されるため、接着性の観点から十分である。エポキシ化合物のエポキシ価が3.0〜7.0meq/gであることがより好ましい。
本発明で用いられるエポキシ基を有する化合物は、上述した中でも、高い接着性の観点から、エポキシ基を2個以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物および/またはポリオール型ポリエポキシ化合物であることを特徴とする。エポキシ基の数が増えると、炭素繊維表面の官能基との相互作用が増えることにより接着性がさらに強化される。さらに、分子内に水酸基、エーテル結合を有することで炭素繊維表面の官能基との相互作用が強化されるため繊維強化複合材料の物性が向上する。エポキシ基の数に上限はないが、接着性の観点からは10個で十分である。
本発明で用いられるエポキシ基を有する化合物は、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールから選択される1種と、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物であることがさらに好ましい。これらの化合物は分子鎖が柔軟であるため、炭素繊維表面の官能基との相互作用がさらに大きくなり、繊維強化複合材料の物性がさらに向上する。
これらの化合物の製品の具体例として、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の“デナコール(登録商標)”EX−512、EX−521)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の“デナコール(登録商標)”EX−321)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の“デナコール(登録商標)”EX−313、EX−314)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の“デナコール(登録商標)”EX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製の“デナコール(登録商標)”EX−411)などを挙げることができる。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、本発明において、上記のグリシジルエーテル型エポキシ化合物を含むサイジング剤中におけるナノセルロースは、本発明で用いられるサイジング剤全量に対して、5質量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上含まれることがよい。ナノセルロースの比率が5質量%より高くなると、繊維強化複合材料とした際に、ナノセルロースの高強度・高靭性の物性がより有効に発現する。また、該ナノセルロースは、本発明で用いられるサイジング剤全量に対して、80質量%以下の比率で含まれることが好ましく、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下の比率で含まれることがよい。また、ナノセルロースの比率が80質量%より低くなるとナノセルロースによる網目構造がマトリックス樹脂に対し適度に作用して繊維強化複合材料の引張強度がより高くなる傾向にある。
また、サイジング剤中におけるエポキシ基を有する化合物は、サイジング剤全量に対して、20質量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。また、サイジング剤中におけるエポキシ基を有する化合物は、サイジング剤全量に対して、95質量%以下の比率で含まれることが好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
また、本発明に用いられるサイジング剤は、上記以外の成分を含んでも良い。例えば、サイジング剤成分と炭素繊維表面に含まれる酸素含有官能基および/またはマトリックス樹脂との接着性を高める接着性促進成分、サイジング剤成分の安定性を目的として分散剤および界面活性剤等の補助成分を添加することができる。
接着性促進成分としては、トリイソプロピルアミン、ジブチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−ベンジルイミダゾールや、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBA)等の3級アミン化合物およびその塩、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物およびその塩等の4級ホスホニウム塩などが挙げられる。これら化合物は、本発明で用いられるサイジング剤全量に対して好ましくは1〜25質量%、さらに好ましくは2〜8質量%配合するのがよい。
分散剤および界面活性剤としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系界面活性剤が挙げられるが、水エマルジョン溶液とした際の溶液安定性の面から、ノニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸ショ糖エステル、アルキロールアミド、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーなどを挙げることができる。さらに、本発明の効果に影響しない範囲で、適宜、ポリエステル化合物および不飽和ポリエステル化合物等を添加してもよい。
さらに、本発明の効果に影響しない範囲で、適宜、サイジング剤塗布炭素繊維に収束性あるいは柔軟性を付与する成分を添加してもよい。これによりサイジング剤塗布炭素繊維の取り扱い性、耐擦過性および耐毛羽性を高め、またマトリックス樹脂の含浸性を向上させることができる。
次に、ポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法について説明する。
炭素繊維の前駆体繊維を得るための紡糸方法としては、湿式、乾式および乾湿式等の紡糸方法を用いることができる。高強度の炭素繊維が得られやすいという観点から、湿式あるいは乾湿式紡糸方法を用いることが好ましい。
本発明に用いられる炭素繊維の総繊度は、400〜3000テックスであることが好ましい。また、炭素繊維のフィラメント数は好ましくは1000〜100000本であり、さらに好ましくは3000〜50000本である。炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性をさらに向上するために、表面粗さ(Ra)が6.0〜100nmの炭素繊維に上記のサイジング剤を塗布することが好ましく、表面粗さ(Ra)が6.0〜100nmの炭素繊維を得るためには、湿式紡糸方法により前駆体繊維を紡糸することが好ましい。
湿式紡糸方法において、紡糸原液には、ポリアクリロニトリルのホモポリマーあるいは共重合体を溶剤に溶解した溶液を用いることができる。溶剤としてはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの有機溶剤や、硝酸、ロダン酸ソーダ、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液を使用する。ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドが溶剤として好適である。
上記の紡糸原液を口金に通して紡糸し、紡糸浴中に吐出して凝固させる。紡糸浴としては、紡糸原液の溶剤として使用した溶剤の水溶液を用いることができる。紡糸原液の溶剤と同じ溶剤を含む紡糸液とすることが好ましく、ジメチルスルホキシド水溶液、ジメチルアセトアミド水溶液が好適である。紡糸浴中で凝固した繊維を、水洗、延伸して前駆体繊維とする。得られた前駆体繊維を耐炎化処理と炭化処理し、必要によってはさらに黒鉛化処理をすることにより炭素繊維を得る。炭化処理と黒鉛化処理の条件としては、最高熱処理温度が1100℃以上であることが好ましく、より好ましくは1300〜3000℃である。
さらに、強度と弾性率の高い炭素繊維を得られるという観点から、細繊度の炭素繊維が好ましく用いられる。具体的には、炭素繊維の単繊維径が、7.5μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましく、さらには5.5μm以下であることが好ましい。単繊維径の下限は特にないが、4.5μm以下では工程における単繊維切断が起きやすく生産性が低下する場合がある。
炭素繊維は、マトリックス樹脂との接着性を向上させるために、通常、酸化処理が施され、酸素含有官能基が表面に導入される。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。
本発明において、液相電解酸化で用いられる電解液としては、酸性電解液およびアルカリ性電解液が挙げられる。酸性電解液としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、ホウ酸、および炭酸等の無機酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、およびマレイン酸等の有機酸、または硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。なかでも、強酸性を示す硫酸と硝酸が好ましく用いられる。アルカリ性電解液としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。なかでも、マトリックス樹脂の硬化阻害を引き起こすアルカリ金属を含まないという観点から、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムの水溶液、あるいは、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましく用いられる。
本発明において、サイジング剤成分と炭素繊維表面の酸素含有官能基との共有結合形成が促進され、接着性がさらに向上するという観点から、炭素繊維をアルカリ性電解液で電解処理した後、または酸性水溶液中で電解処理し続いてアルカリ性水溶液で洗浄した後、サイジング剤を塗布することが好ましい。電解処理した場合、炭素繊維表面において過剰に酸化された部分が脆弱層となって界面に存在し、複合材料にした場合の破壊の起点となる場合があるため、過剰に酸化された部分をアルカリ性水溶液で溶解除去することにより共有結合形成が促進されるものと考えられる。
本発明において、洗浄に用いられるアルカリ性水溶液のpHは、7〜14の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜14の範囲内である。アルカリ性水溶液としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。なかでも、マトリックス樹脂の硬化阻害を引き起こすアルカリ金属を含まないという観点から、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムの水溶液、あるいは、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましく用いられる。炭素繊維をアルカリ性水溶液で洗浄する方法としては、例えば、ディップ法とスプレー法を用いることができる。なかでも、洗浄が容易であるという観点から、ディップ法を用いることが好ましく、さらには、炭素繊維を超音波で加振させながらディップ法を用いることが好ましい態様である。
本発明において用いられる電解液の濃度は、0.01〜5モル/リットルの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1モル/リットルの範囲内である。電解液の濃度が0.01モル/リットル以上であると、電解処理電圧が下げられ、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の濃度が5モル/リットル以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において用いられる電解液の温度は、10〜100℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40℃の範囲内である。電解液の温度が10℃以上であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の温度が100℃以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、液相電解酸化における電流密度は電解処理液中の炭素繊維の表面積1m当たり1.5〜1000アンペア/mの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜500アンペア/mの範囲内である。電流密度が1.5アンペア/m以上であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電流密度が1000アンペア/m以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、液相電解酸化における電気量は、炭素繊維の炭化度に合わせて最適化することが好ましく、高弾性率の炭素繊維に処理を施す場合、より大きな電気量が必要である。
本発明において、炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定されるその繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度(O/C)が、0.05〜0.50の範囲内であるものが好ましく、より好ましくは0.07〜0.30の範囲内のものであり、さらに好ましくは0.10〜0.30の範囲内ものである。表面酸素濃度(O/C)が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の酸素含有官能基を確保し、マトリックス樹脂との強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度(O/C)が0.5以下であることにより、酸化による炭素繊維自体の強度の低下を抑えることができる。
炭素繊維の表面酸素濃度は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めることができる。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着している汚れなどを除去した炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピーク(ピークトップ)の結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積は282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。O1sピーク面積は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。ここで、表面酸素濃度とは、上記のO1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出できる。
本発明において、炭素繊維を電解処理またはアルカリ性水溶液で洗浄した後、水洗および乾燥することが好ましい。この場合、乾燥温度が高すぎると炭素繊維の最表面に存在する官能基は熱分解により消失し易いため、できる限り低い温度で乾燥することが望ましく、具体的には乾燥温度が好ましくは250℃以下、さらに好ましくは210℃以下で乾燥することが好ましい。 一方、乾燥の効率を考慮すれば、乾燥温度は110℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましい。
以上に示したように、本発明で好ましく用いられる炭素繊維を得ることができる。
本発明で用いられる炭素繊維のストランド強度は、3.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは4GPa以上であり、さらに好ましくは5GPaである。また、本発明で用いられる炭素繊維のストランド弾性率は、220GPa以上であることが好ましく、より好ましくは240GPa以上であり、さらに好ましくは280GPa以上である。なお、炭素繊維束のストランド引張強度およびストランド弾性率は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法により求めることができる。
次に、本発明のサイジング塗布炭素繊維の製造方法について述べる。
本発明において、少なくともナノセルロースを含むサイジング剤を溶媒で希釈して用いることができる。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドが挙げられるが、なかでも、取扱いが容易であり、安全性の観点から有利であることから、水が好ましく用いられる。
次に、本発明に用いられるサイジング剤の炭素繊維への塗布(付与)手段について述べる。塗布方法としては、本発明に用いられるサイジング剤のナノセルロース成分、エポキシ基を有する化合物、およびその他のサイジング剤成分を同時に溶解または分散したサイジング剤含有液を用いて1回で塗布する方法や、各成分を任意に選択し個別に溶解または分散したサイジング剤含有液を用いて複数回にわたり塗布する方法が好ましく用いられる。この場合、ナノセルロース成分およびエポキシ基を有する化合物とその他の成分は任意の順序で付与することができる。以下で、上記のサイジング剤分散液がナノセルロース成分およびエポキシ基を有する化合物とその他の成分を同時に含む場合についての塗布手段を説明するが、さらに、ナノセルロースおよびエポキシ基を有する化合物を含むサイジング剤含有液とその他の成分を含むサイジング剤含有液の各々を別々に塗布する場合も同様におこなうことができる。
塗布手段としては、例えば、ローラを介してサイジング剤含有液に炭素繊維を浸漬する方法、サイジング剤含有液の付着したローラに炭素繊維を接する方法、サイジング剤含有液を霧状にして炭素繊維に吹き付ける方法などがある。また、サイジング剤の付与手段は、バッチ式と連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましく用いられる。この際、炭素繊維に対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング剤含有液濃度・温度および糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に、炭素繊維を超音波で加振させることも好ましい態様である。
本発明において、サイジング剤の付着量は、炭素繊維100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3質量部の範囲である。サイジング剤の付着量が0.1質量部以上であると、サイジング剤塗布炭素繊維をプリプレグ化および製織等する際に、通過する金属ガイド等による摩擦に耐えることができ、毛羽発生が抑えられ、該炭素繊維を使用したプリプレグなどの品位が優れる。一方、サイジング剤の付着量が10質量部以下であると、炭素繊維束周囲のサイジング剤膜に阻害されることなくマトリックス樹脂が炭素繊維束内部に含浸され、得られる複合材料においてボイド生成が抑えられ、複合材料の品位が優れ、同時に機械物性が優れる。
本発明において、炭素繊維に塗布され乾燥されたサイジング剤層の厚さは、2.0〜20nmの範囲内で、かつ、厚さの最大値が最小値の2倍を超えないことが好ましい。このような厚さの均一なサイジング剤層により、安定して大きな接着性向上効果が得られ、さらには、安定して優れた高次加工性が得られる。
本発明において、炭素繊維はサイジング剤含有液を塗布した後、熱処理し、サイジング剤含有液に含まれる溶媒を除去・乾燥させることにより製造する。該熱処理は、サイジング剤成分と炭素繊維表面の官能基との間の共有結合形成を促進し、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を高める効果もあると考えられる。熱処理条件としては、130℃〜260℃の温度範囲、より好ましくは160〜260℃の温度範囲で、30〜600秒間が好ましい。130℃以上または30秒以上の場合、サイジング剤成分を溶解・分散させていた水や有機溶媒を十分に除去することができる。260℃以下または600秒以下の場合、運転コストおよび/または安全性の観点に特に優れる。セルロースのガラス転移温度、熱分解温度が300℃であることから、上記、製造方法により炭素繊維に塗布されたナノセルロースと付着前のナノセルロースのSEM観察により得られる数平均繊維径、数平均長さは同等である。
また、前記熱処理は、マイクロ波照射および/または赤外線照射で行うことも可能である。マイクロ波照射および/または赤外線照射により炭素繊維を加熱処理した場合、短時間に被加熱物である炭素繊維を所望の温度に加熱できる。また、マイクロ波照射および/または赤外線照射により、炭素繊維内部の加熱も速やかに行うことができるため、炭素繊維束の内側と外側の温度差を小さくすることができ、サイジング剤の接着ムラを小さくすることが可能となる。
さらに本発明で用いられる炭素繊維への別の付与手段として、電解液の中にナノセルロース成分を添加しておき、電解処理と同時に炭素繊維表面へ付与する方法、電解処理後の洗浄工程でナノセルロース成分を添加しておき、水洗と同時に炭素繊維表面へ付与することもできる。エポキシ基を有する化合物は、ナノセルロース成分を炭素繊維に付与した後で塗布することが好ましい。これらの場合、サイジング剤成分の付着量は、電解処理液の濃度、温度および糸条張力などをコントロールすることでおこなうことができる。
本発明のサイジング塗布炭素繊維は、例えば、トウ、織物、編物、組み紐、ウェブ、マットおよびチョップド等の形態で用いられる。特に、比強度と比弾性率が高いことを要求される用途には、炭素繊維が一方向に引き揃えたトウが最も適しており、さらに、マトリックス樹脂を含浸したプリプレグが好ましく用いられる。
次に、本発明におけるプリプレグおよび繊維強化複合材料について説明する。
本発明におけるサイジング塗布炭素繊維はマトリックス樹脂と組み合わせてプリプレグおよび繊維強化複合材料として用いることができる。
本発明のプリプレグおよび繊維強化複合材料のマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂・熱可塑性樹脂の両方を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂およびビスマレイミド樹脂等の樹脂およびこれらの変性体、これらを2種類以上ブレンドした樹脂が挙げられる。なかでも、機械特性のバランスに優れ、硬化収縮が小さいという利点を有するため、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
エポキシ樹脂に用いるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではなく、ビスフェノール型エポキシ化合物、アミン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物、イソシアネート変性エポキシ化合物、テトラフェニルエタン型エポキシ化合物、トリフェニルメタン型エポキシ化合物等のなかから1種類以上を選択して用いることができる。
また、硬化剤としては特に限定はされないが、芳香族アミン硬化剤、ジシアンアミドもしくはその誘導体などが挙げられる。また、脂環式アミン等のアミン、フェノール化合物、酸無水物、ポリアミドアミノ、有機酸ヒドラジド、イソシアネートを芳香族アミン硬化剤に併用して用いることもできる。
なかでも多官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂と芳香族ジアミン硬化剤を含有したエポキシ樹脂を使用することが好ましい。一般に多官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂と芳香族ジアミン硬化剤を含有したマトリックス樹脂は、架橋密度が高く、繊維強化複合材料の耐熱性および圧縮強度を向上させることができる。
多官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノールおよびトリグリシジルアミノクレゾールなどを好ましく使用することができる。多官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂は耐熱性を高める効果があり、その割合は、全エポキシ樹脂100質量%中、30〜100質量%含まれていることが好ましい。グリシジルアミン型エポキシ樹脂の割合が30質量%以上の場合は、繊維強化複合材料の圧縮強度が向上し、耐熱性に優れる。
芳香族ジアミン硬化剤としては、エポキシ樹脂硬化剤として用いられる芳香族アミン類であれば特に限定されるものではないが、具体的には、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)、ビスアニリン、ベンジルジメチルアニリン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−10)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、DMP−30のトリ−2−エチルヘキシル酸塩等、およびそれらの異性体、誘導体を好ましく使用することができる。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上の混合物を用いてもよい。
上記の芳香族ジアミン硬化剤は、全エポキシ樹脂に対する化学量論量の50〜120質量%含まれていることが好ましく、60〜120質量%がより好ましく、さらに好ましくは70〜90質量%である。芳香族アミン硬化剤が、全エポキシ樹脂に対する化学量論量の50質量%以上で得られる樹脂硬化物の耐熱性が良好になる。また、芳香族アミン硬化剤が120質量%以下の場合は、得られる樹脂硬化物の靱性が向上する。
また、エポキシ樹脂の硬化を促進する目的に効果促進剤を配合することもできる。硬化促進剤としては、ウレア化合物、第三級アミンとその塩、イミダゾールとその塩、トリフェニルホスフィンまたはその誘導体、カルボン酸金属塩やルイス酸、ブレンステッド酸類とその塩類などが挙げられる。
本発明の繊維強化複合材料のマトリックス樹脂には、得られる樹脂硬化物の靭性等の物性を向上させるため、熱可塑性樹脂を配合することができる。かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、主鎖に炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合(ポリエーテルイミド等)、エステル結合、エーテル結合、シロキサン結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂を使用することができる。例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、フェノキシ樹脂およびビニル系ポリマー等の耐熱性と靭性とを兼備したものを好ましく使用することができる。
特に、耐熱性をほとんど損なわずにこれらの効果を発揮できることから、ポリエーテルスルホンやポリエーテルイミドが好適である。
また、上記の熱可塑性樹脂の配合量は、エポキシ樹脂組成物中に溶解せしめる場合には、エポキシ樹脂100質量部に対して1〜40質量部が好ましく、より好ましくは1〜25質量部である。一方、分散させて用いる場合には、エポキシ樹脂100質量部に対して10〜40質量部が好ましく、より好ましくは15〜30質量部である。熱可塑性樹脂がかかる配合量を満たすと、靭性向上効果がさらに向上する。また、熱可塑性樹脂が前記範囲を超えない場合は、含浸性、タック・ドレープおよび耐熱性が良好になる。
上記の熱可塑性樹脂は、特に含浸性を中心としたプリプレグ作製工程に支障をきたさないように、エポキシ樹脂組成物中に均一溶解しているか、粒子の形態で微分散していることが好ましい。
さらに、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維と組み合わせて用いるマトリックス樹脂を改質するために、マトリックス樹脂に用いられる熱硬化性樹脂以外の熱硬化性樹脂、エラストマー、フィラー、ゴム粒子、熱可塑性樹脂粒子、無機粒子およびその他の添加剤を配合することもできる。
上記の熱可塑性樹脂粒子としては、先に例示した各種の熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。なかでも、ポリアミド粒子やポリイミド粒子が好ましく用いられ、ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン11やナイロン6/12共重合体や特開平01−104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたナイロン(セミIPNナイロン)は、特に良好な熱硬化性樹脂との接着強度を与えることができることから、落錘衝撃時の炭素繊維強化複合材料の層間剥離強度が高く、耐衝撃性の向上効果が高いため好ましい。
この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。
上記のゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、および架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が、取り扱い性等の観点から好ましく用いられる。
また、本発明で用いられるマトリックス樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲において、マトリックス樹脂の増粘等の流動性調整のため、シリカ、アルミナ、スメクタイトおよび合成マイカ等の無機粒子を配合することもできる。
本発明のプリプレグは、上記のマトリックス樹脂をメチルエチルケトンやメタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、含浸させるウェット法と、加熱により低粘度化し、含浸させるホットメルト法(ドライ法)等により作製することができる。
ウェット法は、サイジング剤塗布炭素繊維をマトリックス樹脂の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法であり、また、ホットメルト法は、加熱により低粘度化したマトリックス樹脂を直接炭素繊維に含浸させる方法、またはマトリックス樹脂から作製したコーティングフィルムを一旦離型紙等の上に載置しておき、次いでサイジング剤塗布炭素繊維の両側又は片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより、サイジング剤塗布炭素繊維にマトリックス樹脂を含浸させる方法である。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上皆無となるため好ましい方法である。
本発明の繊維強化複合材料は、得られたプリプレグを積層後、積層物に圧力を付与しながらマトリックス樹脂を加熱硬化させる方法等により作製することができる。ここで熱および圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法および、内圧成形法および真空圧成形法等が採用される。繊維強化複合材料は、プリプレグを介さず、例えば、フィラメントワインディング法、ハンド・レイアップ法、レジン・インジェクション・モールディング法、“SCRIMP(登録商標)”、レジン・フィルム・インフュージョン法およびレジン・トランスファー・モールディング法等の成形法によっても作製することができる。
本発明の繊維強化複合材料は、例えば、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、パネルなどの建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェアリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、風車の羽根などが挙げられる。特に、航空機部材、風車の羽根、自動車外板および電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどに好ましく用いられる。
以下、本発明のサイジング剤塗布した炭素繊維について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
各実施例、および各比較例でサイジング剤成分として用いた材料と成分は以下の通りである。
・エポキシ基を有する化合物:(A−1〜A−5)
・エポキシ基を2以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物および/またはポリオール型ポリエポキシ化合物:(A−1〜A−3)
(A−1)“デナコール(登録商標)”EX―521(ナガセケムテックス(株)製:ポリグリセリンポリグリシジルエーテル)
(A−2)“デナコール(登録商標)”EX―411(ナガセケムテックス(株)製:ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル)
(A−3)“デナコール(登録商標)”EX−614B(ナガセケムテックス(株)製:ソルビトールポリグリシジルエーテル)。
・その他のエポキシ基を有する化合物:(A−4、A−5)
(A−4)“デナコール(登録商標)”EX−141(ナガセケムテックス(株)製:フェニルグリシジルエーテル)。
(A−5)“アデカサイザー(登録商標)”O−130P((株)ADEKA製:エポキシ化大豆油)。
・ナノセルロース:(B)
10質量%のセルロースナノファイバーを含む水分散体、解繊度:中 原料:広葉樹(中越パルプ工業(株)製)。セルロースナノファイバーの数平均繊維径:50nm、数平均長さ:2800nm、数平均アスペクト比:56、結晶化度:65%。
・セルロース誘導体:(C)
CMCダイセル(ダイセルファインケム(株)社製) 分子レベルまで分解し水溶化したセルロース粉末。セルロースの数平均繊維径:1nm未満。
(実施例1)
本実施例では、強化繊維として炭素繊維を用いた。本実施例は、次の第Iの工程、第IIの工程および第IIIの工程からなる。
第Iの工程:炭素繊維を製造する工程
アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数12,000本、比重1.8、ストランド引張強度6.8GPa、ストランド引張弾性率320GPaの炭素繊維を得た。次いで、その炭素繊維を、濃度0.1モル/リットルの炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維を得た。
第IIの工程:サイジング剤塗布炭素繊維を作製する工程および評価
分子内にエポキシ基を有する化合物として(A−1)を70質量部、ナノセルロースとして(B)のセルロースナノファイバーが30質量部となるよう水を溶媒としてサイジング剤溶液を調合した。このサイジング剤溶液を、浸漬法を用いて、上記により得られた表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維束を得た。サイジング剤の付着量は、以下に記す方法により測定し、サイジング剤塗布炭素繊維100質量部に対して0.5質量部となるように調整した。
<サイジング剤付着量の測定>
約2gのサイジング剤塗布炭素繊維束を秤量(W1)(小数第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm)に15分間放置し、サイジング剤を完全に熱分解させた。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)(少数第4位まで読み取り)して、次式よりサイジング剤付着量を求めた。
サイジング剤付着量(質量%)=[W1(g)−W2(g)]/[W1(g)]×100
サイジング剤塗布炭素繊維束100質量部に対するサイジング剤付着量を、付着したサイジング剤の質量部とした。本実施例では、測定は2回おこない、その平均値をサイジング剤の質量部とした。
続いて、サイジング剤塗布炭素繊維の界面剪断強度(IFSS)を以下に記す方法で測定した。この結果、該サイジング剤塗布炭素繊維の接着性が十分に高いことがわかった。
<界面剪断強度(IFSS)の測定>
界面剪断強度(IFSS)の測定は、次の(イ)〜(ニ)の手順でおこなった。
(イ)樹脂の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂化合物“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)100質量部とメタフェニレンジアミン(シグマアルドリッチジャパン(株)製)14.5質量部を、それぞれ容器に入れた。その後、上記のjER828の粘度低下とメタフェニレンジアミンの溶解のため、75℃の温度で15分間加熱をおこなった後、両者をよく混合し80℃の温度で約15分間真空脱泡をおこなった。
(ロ)炭素繊維単糸を専用モールドに固定
炭素繊維束から単繊維を抜き取り、ダンベル型モールドの長手方向に単繊維に一定張力を与えた状態で両端を接着剤で固定した。その後、炭素繊維およびモールドに付着した水分を除去するため、80℃の温度で30分間以上真空乾燥をおこなった。ダンベル型モールドはシリコーンゴム製で、注型部分の形状は、中央部分巾5mm、長さ25mm、両端部分巾10mm、全体長さ150mmである。
(ハ)樹脂注型・硬化
上記(ロ)の手順の真空乾燥後のモールド内に、上記(イ)の手順で調製した樹脂を流し込み、オーブンを用いて、昇温速度1.5℃/分で75℃の温度まで上昇し2時間保持後、昇温速度1.5分で125℃の温度まで上昇し2時間保持後、降温速度2.5℃/分で30℃の温度まで降温させた。その後、脱型して試験片を得た。
(ニ)界面剪断強度(IFSS)測定
上記(ハ)の手順で得られた試験片に繊維軸方向(長手方向)に引張力を与え、歪みを12%生じさせた後、偏光顕微鏡により試験片中心部22mmの範囲における繊維破断数N(個)を測定した。次に、平均破断繊維長laを、la(μm)=22×1000(μm)/N(個)の式により計算し、さらに平均破断繊維長laから臨界繊維長lcを、lc(μm)=(4/3)×la(μm)の式により計算した。ストランド引張強度σと炭素繊維単糸の直径dを測定し、炭素繊維と樹脂界面の接着強度の指標である界面剪断強度IFSSを、次式で算出した。実施例では、測定数n=5の平均を試験結果とした。
界面剪断強度IFSS(MPa)=σ(MPa)×d(μm)/(2×lc)(μm)
なお、ストランド引張強度は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めた。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/三フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、硬化時間は30分とした。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度とした。
界面剪断強度IFSSは、炭素繊維とマトリックス樹脂界面の接着強度の指標となる。本発明において、30MPa以上が好ましい範囲である。
第IIIの工程:プリプレグの作製、炭素繊維強化複合材料積層板の成形および評価
<プリプレグの作製>
まず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)60質量部、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ELM434(住友化学(株)製)40質量部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、“セイカキュア(登録商標)”S(和歌山精化(株)製)40質量部および、ポリエーテルスルホン“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(住友化学(株)製)10質量部を混練したエポキシ樹脂組成物を調製し、これをナイフコーターを用いて樹脂目付30g/mで離型紙上にコーティングし、1次樹脂フィルムを作製した。この1次樹脂フィルムを1方向に引き揃えたサイジング剤塗布炭素繊維(目付190g/m)の両側に重ね合わせてヒートロールを用い加熱加圧しながらエポキシ樹脂組成物をサイジング剤塗布炭素繊維に含浸させることにより、1次プリプレグを作製した。次に、上記のエポキシ樹脂組成物にさらに“トレパール(登録商標)”TN(東レ(株)製、平均粒子径:13.0μm)80質量部を混練した樹脂組成物を調製し、これをナイフコーターを用いて樹脂目付20g/mで離型紙上にコーティングし、2次樹脂フィルムを作製した。この2次樹脂フィルムを1次プリプレグの両側に重ね合せてエポキシ樹脂組成物を含浸させ、目的のプリプレグを作製した。
<炭素繊維強化複合材料の成形とモードI層間破壊靱性(GIc)の測定>
前記のようにして作製したプリプレグを裁断し、一方向積層した後、オートクレーブを用いて加熱硬化させ、一方向強化材(炭素繊維強化複合材料)を作製した。JIS K7086(1993)に記載の双方持ちはり試験に準じ亀裂進展初期のモードI層間破壊靱性(GIc)を求めた。結果を表1に示す。本発明において、モードI層間破壊靱性(GIc)は700J/m以上が好ましい範囲である。なお、表1においては、モードI層間破壊靱性(GIc)の値が、950J/m以上をA、700J/m以上950J/m未満をB、700J/m未満をCで記している。
以上の方法により、力学特性を評価した結果、モードI層間破壊靱性(GIc)は高い値を示した。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であるとともに層間破壊靱性が強化されたことを示している。
Figure 2017119936
(実施例2〜4)
第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
第IIの工程:サイジング剤塗布炭素繊維を作製する工程および評価
(A−1)、(A−2)、(A−3)の各成分と(B)の比が表1となるようにした以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて、界面剪断強度(IFSS)を測定したところ、接着性が十分に高いことがわかった。結果を表1に示す。
第IIIの工程:プリプレグの作製、炭素繊維強化複合材料積層板の成形および評価
実施例1と同様に、一方向強化材(炭素繊維強化複合材料)を作製し、力学特性を評価したところ、モードI層間破壊靱性(GIc)は十分に高い値を示した。結果を表1に示す。
(実施例5−7)
第Iの工程:炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
第IIの工程:サイジング剤塗布炭素繊維を作製する工程および評価
サイジング剤溶液における(A−1)と(B)の比が表1となるようにした以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて、界面剪断強度(IFSS)を測定したところ、接着性が十分に高いことがわかった。結果を表1に示す。
第IIIの工程:プリプレグの作製、炭素繊維強化複合材料積層板の成形および評価
実施例1と同様に、一方向強化材(炭素繊維強化複合材料)を作製し、力学特性を評価したところ、モードI層間破壊靱性(GIc)は高い値を示した。結果を表1に示す。
(実施例8)
第Iの工程:炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
第IIの工程:サイジング剤塗布炭素繊維を作製する工程および評価
サイジング剤の付着量を表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるようにサイジング剤溶液濃度を調整した以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて、界面剪断強度(IFSS)を測定したところ、接着性が十分に高いことがわかった。結果を表1に示す。
第IIIの工程:プリプレグの作製、炭素繊維強化複合材料積層板の成形および評価
実施例1と同様に、一方向強化材(炭素繊維強化複合材料)を作製し、力学特性を評価したところ、モードI層間破壊靱性(GIc)は十分に高い値を示した。結果を表1に示す。
(比較例1)
第Iの工程:炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
第IIの工程:サイジング剤塗布炭素繊維を作製する工程および評価
サイジング剤溶液を、(A−2)成分のみで調合した以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて、界面剪断強度(IFSS)を測定したところ、接着性が十分に高いことがわかった。結果を表1に示す。
第IIIの工程:プリプレグの作製、炭素繊維強化複合材料積層板の成形および評価
実施例1と同様に、一方向強化材(炭素繊維強化複合材料)を作製し、力学特性を評価したところ、モードI層間破壊靱性(GIc)は低い値を示した。結果を表1に示す。
(比較例2)
第Iの工程:炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
第IIの工程:サイジング剤塗布炭素繊維を作製する工程および評価
サイジング剤溶液を、(A−1)と(C)成分で調合した以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて、界面剪断強度(IFSS)を測定したところ、接着性が十分に高いことがわかった。結果を表1に示す。
第IIIの工程:プリプレグの作製、炭素繊維強化複合材料積層板の成形および評価
実施例1と同様に、一方向強化材(炭素繊維強化複合材料)を作製し、力学特性を評価したところ、モードI層間破壊靱性(GIc)は低い値を示した。結果を表1に示す。
(比較例3〜4)
第Iの工程:炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
第IIの工程:サイジング剤塗布炭素繊維を作製する工程および評価
サイジング剤溶液を、(A−4)または(A−5)と(B)成分で調合した以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて、界面剪断強度(IFSS)を測定したところ、IFSSが十分ではなかった。結果を表1に示す。
(比較例5)
第Iの工程:炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
第IIの工程:サイジング剤塗布炭素繊維を作製する工程および評価
サイジング剤溶液を、(B)成分単体で調合した以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。続いて、得られたサイジング剤塗布炭素繊維を用いて、界面剪断強度(IFSS)を測定したところ、IFSSが十分ではなかった。結果を表1に示す。

Claims (12)

  1. 炭素繊維に、数平均繊維径が1〜1000nmであるナノセルロースおよびエポキシ基を有する化合物を含むサイジング剤が塗布されてなるサイジング剤塗布炭素繊維であって、前記エポキシ基を有する化合物は、エポキシ基を2以上有するポリエーテル型ポリエポキシ化合物および/またはポリオール型ポリエポキシ化合物であるサイジング剤塗布炭素繊維。
  2. 前記エポキシ基を有する化合物が、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールから選択される1種以上の化合物と、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物である、請求項1に記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  3. 前記サイジング剤が、サイジング剤全量に対してナノセルロースを5〜80質量%含む、請求項1〜2のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  4. 前記ナノセルロースの数平均長さが100〜10000nmである、請求項1〜3のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  5. 前記ナノセルロースの数平均長さと数平均繊維径の比である数平均アスペクト比が50〜10000である、請求項4に記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  6. 前記ナノセルロースがセルロースI型結晶を有しその結晶化度が50%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  7. 炭素繊維に、数平均繊維径が1〜1000nmであるナノセルロースおよび前記エポキシ基を有する化合物を含むサイジング剤を塗布した後、熱処理することによってサイジング剤塗布炭素繊維を製造する方法であって、前記サイジング剤を塗布する工程において、サイジング剤の付着量がサイジング剤塗布炭素繊維100質量部に対して0.1〜10質量部となるようにし、かつ、前記熱処理する工程において、熱処理の条件を160〜260℃の温度範囲で30〜600秒間とする、請求項1〜6のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維と、熱硬化性樹脂とを含むプリプレグ。
  9. 前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項8に記載のプリプレグ。
  10. 請求項8または9に記載のプリプレグを硬化させてなる炭素繊維強化複合材料。
  11. 請求項1〜6のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維と熱硬化性樹脂の硬化物からなる炭素繊維強化複合材料。
  12. 前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項11に記載の炭素繊維強化複合材料。
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