JP2020111809A - 方向性電磁鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた被膜密着性及び磁気特性を有する方向性電磁鋼板を提供する。【解決手段】方向性電磁鋼板1は、母材鋼板10と、張力絶縁被膜30と、母材鋼板10と張力絶縁被膜30との間に挟まれた中間被膜20と、を備える。母材鋼板10は、化学組成として、質量%で、C:0.100%以下、Si:0.80〜7.00%、Mn:1.00%以下、酸可溶性Al:0.010〜0.070%、S:0.080%以下、N:0.012%以下、B:0〜0.010%、Sn:0〜0.20%、Cr:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、を含有し、残部がFe及び不純物からなる。中間被膜20は、母材鋼板10と中間被膜20との界面40に断続的に接する第1領域21と、第1領域21を内包する第2領域22とを有する。第1領域21は、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含み、第2領域22は、酸化珪素を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、変圧器の鉄心材料として好適な方向性電磁鋼板に関し、とくに、張力絶縁被膜と母材鋼板との間にフォルステライト系被膜以外の中間被膜であって且つ張力絶縁被膜の密着性を高めることが可能な中間被膜を有する方向性電磁鋼板に関する。
変圧器の鉄心材料として好適な方向性電磁鋼板は、一般的に、7質量%以下のSiを含有し且つGoss方位と呼ばれる{110}<001>方位に各結晶粒の結晶方位が一致するように制御された集合組織を有する母材鋼板と、この母材鋼板に絶縁性を付与するための絶縁被膜とを有する。このような方向性電磁鋼板では、二次再結晶とよばれる粒成長現象を利用して、結晶方位がGoss方位に一致するように結晶粒の配向を制御することが一般的である。
方向性電磁鋼板の磁気特性として、圧延方向の磁束密度が高く、且つ鉄損が低いことが要求される。近年では、省エネルギーの観点から、電力損失の低減、即ち、鉄損の低減に対する要求が一層高まっている。一般的に、磁束密度を評価する指標としてB値が用いられ、鉄損を評価する指標としてW17/50値が用いられる。
従来から、母材鋼板に張力を付与することが鉄損の低減に有効であることが知られている。母材鋼板に張力を付与するための方法として、母材鋼板より熱膨張係数の小さい被膜を、母材鋼板と絶縁被膜との間に高温下で形成する方法が知られている。例えば、母材鋼板の仕上げ焼鈍工程において、母材鋼板の表面に存在する酸化物が焼鈍分離剤と反応することで生成されるフォルステライト系被膜は、母材鋼板に張力を与えることができる。このフォルステライト系被膜と母材鋼板との界面には凹凸が存在するため、この凹凸によるアンカー効果により、フォルステライト系被膜は、絶縁被膜と母材鋼板との密着性を高める中間被膜としても機能する。
特許文献20で開示された、コロイド状シリカとリン酸塩とを主体とするコーティング液を焼き付けることによって絶縁被膜を形成する方法は、母材鋼板に対する張力付与の効果が大きく、鉄損低減に有効である。したがって、仕上げ焼鈍工程で生じたフォルステライト系被膜を残した上で、リン酸塩を主体とする絶縁コーティングを施すことが、一般的な方向性電磁鋼板の製造方法となっている。なお、本願明細書では、母材鋼板に絶縁性のみならず、張力を与えることが可能な絶縁被膜を張力絶縁被膜と呼称する。
一方、近年、フォルステライト系被膜により磁壁の移動が阻害され、鉄損に悪影響を及ぼすことが明らかになってきた。方向性電磁鋼板において、磁区は、交流磁場の下では磁壁の移動を伴って変化する。この磁壁の移動がスムーズに行われることが、鉄損改善に効果的であるが、フォルステライト系被膜と母材鋼板との界面に凹凸が存在することに起因して磁壁の移動が妨げられ、その結果、張力付与による鉄損改善効果がキャンセルされて十分な鉄損改善効果が得られないことが判明した。
磁壁の移動が阻害されることを防止するために、フォルステライト系被膜と母材鋼板との界面に存在する凹凸によるアンカー効果を低減することが有効である。当然ながら、フォルステライト系被膜を形成しなければ、アンカー効果を完全に消失させることができる。
アンカー効果を低減する方法として、例えば、特許文献1〜19には、脱炭焼鈍雰囲気の露点を制御することにより、脱炭焼鈍時に母材鋼板の表面に生成される酸化層において、Fe系酸化物(Fe2SiO4、FeO等)を生成させないこと、及び、焼鈍分離剤としてシリカと反応しないアルミナ等の物質を用いて、仕上げ焼鈍後の母材鋼板の表面を平滑化することが開示されている。
張力絶縁被膜をフォルステライト系被膜の上に形成した場合、フォルステライト系被膜のアンカー効果により、張力絶縁被膜の密着性は向上する。フォルステライト系被膜を除去した場合、又は、仕上げ焼鈍工程で意図的にフォルステライト系被膜を形成しなかった場合などのように、母材鋼板の表面にフォルステライト系被膜が存在しない場合、磁壁の移動を阻害する凹凸が母材鋼板の表面から消失するため、鉄損を改善させることができる。しかしながら、この場合、張力絶縁被膜が母材鋼板の表面に直接形成されることから、張力絶縁被膜の密着性が低下するという問題がある。
フォルステライト系被膜は、それ自身でも、母材鋼板に張力を付与することができるが、フォルステライト系被膜が存在しない場合、張力絶縁被膜のみで、母材鋼板に付与する所要の張力を確保する必要がある。それ故、張力絶縁被膜を必然的に厚膜化しなければならないが、その結果、母材鋼板と張力絶縁被膜との界面に、より応力が集中することになるので、張力絶縁被膜の密着性を、より一層高める必要がある。
従来の絶縁被膜形成法では、母材鋼板の表面を鏡面化することの効果を十分に引き出し得る被膜張力を達成し、かつ、絶縁被膜の密着性を十分に確保することは困難であり、方向性電磁鋼板の鉄損を十分に低減することができていなかった。そこで、張力絶縁被膜の密着性を確保する技術として、張力絶縁被膜を母材鋼板の表面に形成する前に、仕上げ焼鈍後の母材鋼板の表面に、ごく薄い酸化膜を形成する方法が、例えば、特許文献20〜29にて提案された。
例えば、特許文献22には、母材鋼板の表面を鏡面化する、又は、鏡面に近い状態に調製する工程を経て得られた仕上げ焼鈍後の母材鋼板に、温度毎に特定の雰囲気で焼鈍を施して、母材鋼板の表面に外部酸化型の酸化膜を形成し、この酸化膜により、張力絶縁被膜と母材鋼板との密着性を確保する技術が提案されている。
特許文献23には、張力絶縁被膜が結晶質である場合において、無機鉱物質被膜(フォルステライト系被膜)の存在しない仕上げ焼鈍後の母材鋼板の表面に、非晶質酸化物の下地被膜を形成して、結晶質の張力絶縁被膜を形成する際に起きる母材鋼板の酸化、即ち、鏡面度の減退を防止する技術が提案されている。
特許文献25には、母材鋼板の表面に外部酸化型の酸化膜を形成し、その内部に粒状酸化物を形成して、張力絶縁被膜の密着性を改善する技術が提案されている。特許文献26には、母材鋼板の表面に、Fe、Al、Mn、Ti、及びCrの酸化物を50%以下の断面面積率で含むシリカ外部酸化膜を形成し、張力絶縁被膜の密着性を改善する技術が提案されている。
変圧器の鉄心として、積鉄心及び巻鉄心があることは周知であるが、近年、特に、巻鉄心で製造した変圧器に、一層の高効率化が求められている。そのため、巻鉄心用の方向性電磁鋼板には、鉄損の低減に加え、巻鉄心製造時、方向性電磁鋼板を湾曲状に塑性加工する際の張力絶縁被膜の密着性の向上が強く求められており、フォルステライト系被膜を有しない方向性電磁鋼板においても、同様に、張力絶縁被膜の密着性の向上が強く求められている。
しかし、フォルステライト系被膜を有しない方向性電磁鋼板に従来技術を適用しても、巻鉄心製造時、張力絶縁被膜の密着性を十分に確保することができないことが解った。これは、巻鉄心の製造方法が変化し、方向性電磁鋼板の塑性加工(鉄心加工)において曲げ径が小さくなり、方向性電磁鋼板に厳しい塑性加工が要求されることが原因で、張力絶縁被膜の剥離が生じることによるものである。
また、巻鉄心は、方向性電磁鋼板に一定の曲率半径で曲げ加工を施し、方向性電磁鋼板を、曲げ加工部の外側に順次巻き付けて製造するが、単に、曲げ加工のみでは被膜剥離が生じない場合でも、方向性電磁鋼板を巻き付けていく過程で生じる鋼板間の摩擦力が重畳することが原因で、被膜剥離が生じることが解った。上記摩擦力の重畳による被膜剥離は、従来の張力絶縁被膜の密着性の評価では知見し得なかった剥離現象であり、上記被膜剥離を抑制する必要性が高まっている。本願明細書では、母材鋼板に対する張力絶縁被膜の密着性を被膜密着性と略称する。
特開昭64−062417号公報 特開平07−118750号公報 特開平07−278668号公報 特開平07−278669号公報 特開平07−278670号公報 特開平10−046252号公報 特開平11−106827号公報 特開平11−152517号公報 特開2002−060843号公報 特開2002−173715号公報 特開2002−348613号公報 特開2002−363646号公報 特開2003−055717号公報 特開2003−003213号公報 特開2003−041320号公報 特開2003−247021号公報 特開2003−247024号公報 特開2008−001980号公報 特表2011−518253号公報 特開昭48−039338号公報 特開昭60−131976号公報 特開平06−184762号公報 特開平07−278833号公報 特開平09−078252号公報 特開2002−322566号公報 特開2002−348643号公報 特開2002−363763号公報 特開2003−293149号公報 特開2003−313644号公報
鉄損低減のため、フォルステライト系被膜の生成を意図的に抑制したり、フォルステライト系被膜を研削や酸洗等の手段で除去したり、さらに、鏡面状態となるまで平滑化した母材鋼板の表面に張力絶縁被膜を形成した場合、張力絶縁被膜には、巻鉄心製造時に必要な、曲げ加工部における高度な被膜密着性、及び、曲げ加工後、摩擦力が重畳する環境における高度な被膜密着性が要求されるが、このように方向性電磁鋼板に要求される高度な被膜密着性を従来技術によって実現することは困難である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、張力絶縁被膜と母材鋼板との間にフォルステライト系被膜以外の中間被膜であって且つ被膜密着性を高めることが可能な中間被膜を有する方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、優れた被膜密着性及び磁気特性を有する方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、張力絶縁被膜と母材鋼板との間に挟まれる中間被膜として、フォルステライト系被膜以外の被膜であって且つ被膜密着性を高めることが可能な被膜という条件を満たす被膜の化学組成及び構造について鋭意研究した。
その結果、本発明者らは、先行技術文献(例えば、特許文献22、25等)に開示された酸化珪素主体の外部酸化膜が母材鋼板の表面に形成されたとき、その外部酸化膜がFe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含む領域を、特定の条件を満たすように内包している場合に限り、その外部酸化膜上に形成される張力絶縁被膜の密着性が顕著に向上することを見出した。具体的には、外部酸化膜内において、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含有する領域が、母材鋼板と外部酸化膜との界面に断続的に接するように存在し、それらの領域が酸化珪素を含有する領域に内包されるという条件下において、張力絶縁被膜の密着性が顕著に向上する。
本発明者らは、上記のような特定の条件を満たす外部酸化膜を、母材鋼板と張力絶縁被膜との間の中間被膜として使用することで張力絶縁被膜の密着性が向上する理由を以下のように考察した。
すなわち、上記のようなFe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含有する領域を有していない外部酸化膜(酸化珪素主体の酸化物被膜)を中間被膜として使った場合、その外部酸化膜と母材鋼板との間の格子整合性は良好であるので、張力絶縁被膜の密着性が良好であると考えられる。しかしながら、酸化珪素は弾性率が高いため、巻鉄心の製造過程または他の過度な塑性加工過程において、張力絶縁被膜に負荷された摩擦力は、母材鋼板と外部酸化膜との界面に集中すると考えられる。その結果、上記の格子整合性が阻害され、張力絶縁被膜の密着性が低下すると考えられる。
一方、外部酸化膜の内部に、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含有する領域が母材鋼板の表面(外部酸化膜と母材鋼板との界面)に断続的に接する形態で存在する場合、この領域、すなわちFe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含有する鉄系酸化物が、上記摩擦力を緩和する緩衝物として機能することにより、上記摩擦力に起因する張力絶縁被膜の剥離が抑制され、その結果、張力絶縁被膜の密着性が向上すると考えられる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)本発明の一態様に係る方向性電磁鋼板は、母材鋼板と、張力絶縁被膜と、前記母材鋼板と前記張力絶縁被膜との間に挟まれた中間被膜と、を備える。前記母材鋼板は、化学組成として、質量%で、C:0.100%以下、Si:0.80〜7.00%、Mn:1.00%以下、酸可溶性Al:0.010〜0.070%、S:0.080%以下、N:0.012%以下、B:0〜0.010%、Sn:0〜0.20%、Cr:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、を含有し、残部がFe及び不純物からなる。前記中間被膜は、前記母材鋼板と前記中間被膜との界面に断続的に接する第1領域と、前記第1領域を内包する第2領域とを有する。前記第1領域は、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含み、前記第2領域は、酸化珪素を含む。
(2)上記(1)に記載の方向性電磁鋼板において、前記母材鋼板の圧延方向に直交する方向に長さLsumを有する断面をみた場合に、前記断面内に現れる前記第1領域が前記界面に接する長さの合計値をΣLとしたとき、下記(1)式で定義される前記第1領域の存在比率Rが1%以上であってもよい。
R=(ΣL×100)/Lsum …(1)
(3)上記(1)または(2)に記載の方向性電磁鋼板において、前記中間被膜の平均膜厚は10〜100nmであってもよく、前記中間被膜の膜厚方向における前記第1領域の平均厚さは1〜20nmであってもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の方向性電磁鋼板において、前記Fe2SiO4及び前記FeSiO3の少なくとも1種が結晶質であってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の方向性電磁鋼板において、前記母材鋼板が、前記化学組成として、質量%で、B:0.001〜0.010%、Sn:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.50%、及び、Cu:0.01〜0.50%の1種または2種以上を含有していてもよい。
本発明の上記態様によれば、張力絶縁被膜と母材鋼板との間にフォルステライト系被膜以外の中間被膜であって且つ被膜密着性を高めることが可能な中間被膜を有する方向性電磁鋼板を提供することができる。すなわち、本発明の上記態様によれば、優れた被膜密着性及び磁気特性を有する方向性電磁鋼板を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板1の要部断面を模式的に示す図である。 摩擦力を負荷した張力絶縁被膜の密着性を評価する態様を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る方向性電磁鋼板1の要部断面を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る方向性電磁鋼板1は、母材鋼板10と、中間被膜20と、張力絶縁被膜30とを有する。なお、図1は、母材鋼板10の圧延方向に直交する方向に長さLsumを有する断面で方向性電磁鋼板1をみた図である。
〔母材鋼板10の説明〕
母材鋼板10は、方向性電磁鋼板1の母材となる鋼板であり、Goss方位と呼ばれる{110}<001>方位に各結晶粒の結晶方位が一致するように制御された集合組織を有する。母材鋼板10は、化学組成として、質量%で、C:0.100%以下、Si:0.80〜7.00%、Mn:1.00%以下、酸可溶性Al:0.010〜0.070%、S:0.080%以下、N:0.012%以下、B:0〜0.010%、Sn:0〜0.20%、Cr:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、を含有し、残部がFe及び不純物からなる。
以下、母材鋼板10の化学組成について詳細に説明する。以下の説明において、成分組成に係る%は、質量%を意味する。
<C:0.100%以下>
Cは、一次再結晶の制御に有効な元素であるが、磁気時効によって鉄損を増大させるので、仕上げ焼鈍前に脱炭焼鈍で除去される元素である。C含有量が0.100%を超えると、仕上げ焼鈍において鋼が相変態し、二次再結晶が十分に進行せず、良好な磁束密度と鉄損特性が得られないので、C含有量は0.100%以下とする。
C含有量は、少ないほど、鉄損低減の点で好ましいので、好ましくは0.045%以下、より好ましくは0.038%以下である。C含有量の下限は0%を含むが、C含有量の検出限界が0.0001%程度であり、また、C含有量が0.0001%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用上、0.0001%が実質的なC含有量の下限である。
<Si:0.80〜7.00%>
Siは、母材鋼板10の電気抵抗を高めて、鉄損の低減に寄与する元素である。Si含有量が0.80%未満であると、仕上げ焼鈍において鋼が相変態して、二次再結晶が十分に進行せず、良好な磁束密度と鉄損特性が得られないので、Si含有量は0.80%以上とする。Si含有量の好ましい値は2.50%以上であり、Si含有量のより好ましい値は3.00%以上である。
一方、Si含有量が7.00%を超えると、母材鋼板10が脆化し、製造工程での通板性が顕著に劣化するので、Si含有量は7.00%以下とする。Si含有量の好ましい値は4.50%以下であり、Si含有量のより好ましい値は4.00%以下である。
<酸可溶性Al:0.010〜0.070%>
酸可溶性Al(sol.Al)は、Nと結合して、インヒビターとして機能する(Al、Si)Nを生成し、仕上げ焼鈍での二次再結晶の進行に寄与する元素である。
酸可溶性Al含有量が0.010%未満であると、添加効果が十分に発現せず、二次再結晶が十分に進行せず、鉄損特性が向上しないので、酸可溶性Al含有量は0.010%以上とする。酸可溶性Al含有量の好ましい値は0.015%以上であり、酸可溶性Al含有量のより好ましい値は0.020%以上である。
一方、酸可溶性Al含有量が0.070%を超えると、母材鋼板10が脆化し、特に、Si含有量が多い方向性電磁鋼板1では、母材鋼板10の脆化が顕著となるので、酸可溶性Al含有量は0.070%以下とする。酸可溶性Al含有量の好ましい値は0.050%以下であり、酸可溶性Al含有量のより好ましい値は0.040%以下である。
<N:0.012%以下>
Nは、Alと結合して、インヒビターとしての機能するAlNを形成する元素であるが、一方で、冷間圧延時に、母材鋼板10の内部にブリスター(空孔)を形成する元素でもある。
N含有量が0.012%を超えると、冷延時に、母材鋼板10の内部にブリスター(空孔)が生じるうえに、母材鋼板10の強度が上昇し、製造時の通板性が悪化するので、N含有量は0.012%以下とする。N含有量の好ましい値は0.010%以下であり、N含有量のより好ましい値は0.009%以下である。
一方、NとAlとが結合して、インヒビターとして機能するAlNを形成するためには、N含有量は0.004%以上が好ましい。N含有量のより好ましい値は0.006%以上である。
<Mn:1.00%以下>
Mnは、オーステナイト形成元素であり、熱間圧延時の割れを防止するとともに、S及びSeの少なくとも一方と結合して、インヒビターとして機能するMnSを形成する元素である。
Mn含有量が1.00%を超えると、仕上げ焼鈍における二次再結晶において鋼が相変態し、二次再結晶が十分に進行せず、良好な磁束密度と鉄損特性が得られないので、Mn含有量は1.00%以下とする。Mn含有量の好ましい値は0.70%以下であり、Mn含有量のより好ましい値は0.40%以下である。
MnSを、二次再結晶時に、インヒビターとして活用することができるが、AlNをインヒビターとして活用する場合、MnSは必須でないので、Mn含有量の下限は0%を含む。MnSをインヒビターとして活用する場合、Mn含有量は0.02%以上とする。Mn含有量の好ましい値は0.05%以上であり、Mn含有量のより好ましい値は0.07%以上である。
<S:0.080%以下>
Sは、Mnと結合して、インヒビターとして機能するMnSを形成する元素である。S含有量が0.080%を超えると、熱間脆性の原因となり、熱延が著しく困難になるので、S含有量は0.080%以下とする。S含有量の好ましい値は0.050%以下であり、S含有量のより好ましい値は0.030%以下である。
AlNをインヒビターとして活用する場合、MnSは必須でないので、S含有量の下限は0%を含むが、MnSを、二次再結晶時のインヒビターとして活用する場合、S含有量は0.005%以上とする。S含有量の好ましい値は0.010%以上であり、S含有量のより好ましい値は0.020%以上である。
Sの一部を、Se又はSbで置き換えてもよく、その場合は、原子量比を考慮して規定した式、Seq=S+0.406・Se、又は、Seq=S+0.406・Sbで換算した値を用いる。
また、方向性電磁鋼板1の特性を向上させるために、母材鋼板10が、上記の元素に加えて、B:0.001〜0.010%、Sn:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.50%、及び、Cu:0.01〜0.50%の1種又は2種以上を含有してもよい。これらのB、Sn、Cr、及びCuは、必須の元素ではないので、それぞれの含有量の下限は0%である。
<B:0.001〜0.010%>
Bは、Sn、Cr、Cuとともに、被膜密着性の向上に寄与する元素である。B含有量が0.001%未満では、その向上効果が十分に得られないので、B含有量は0.001%以上とする。B含有量の好ましい値は0.002%以上、B含有量のより好ましい値は0.004%以上である。
一方、B含有量が0.010%を超えると、母材鋼板10の強度が増加し、冷延時の通板性が劣化するので、B含有量は0.010%以下とする。B含有量の好ましい値は0.008%以下であり、B含有量のより好ましい値は0.006%以下である。
<Sn:0.01〜0.20%>
Snは、B、Cr、Cuとともに、被膜密着性の向上に寄与する元素である。Snの被膜密着性の向上機構は明らかでないが、Snの添加により母材鋼板10の表面の平滑度の向上が認められたので、Snは、母材鋼板10の表面の平滑化に寄与すると考えられる。
Sn含有量が0.01%未満では、平滑化の効果が十分に得られないので、Sn含有量は0.01%以上とする。Sn含有量の好ましい値は0.02%以上であり、Sn含有量のより好ましい値は0.03%以上である。
一方、Sn含有量が0.20%を超えると、二次再結晶が不安定となり、磁気特性が劣化するので、Sn含有量は0.20%以下とする。Sn含有量の好ましい値は0.15%以下であり、Sn含有量のより好ましい値は0.10%以下である。
<Cr:0.01〜0.50%>
Crは、B、Sn、Cuとともに、被膜密着性の向上に寄与する元素である。Cr含有量が0.01%未満では、被膜密着性の向上効果が十分に得られないので、Cr含有量は0.01%以上とする。Cr含有量の好ましい値は0.05%以上であり、Cr含有量のより好ましい値は0.10%以上である。
一方、Cr含有量が0.50%を超えると、Crは易酸化性元素であるため、後述の鉄系酸化物(Fe−Si−O酸化物)及び酸化珪素を含有する中間被膜20の形成を阻害することがあるので、Cr含有量は0.50%以下とする。Cr含有量の好ましい値は0.30%以下であり、Cr含有量のより好ましい値は0.20%以下である。
<Cu:0.01〜0.50%>
Cuは、B、Sn、Crとともに、被膜密着性の向上に寄与する元素である。Cu含有量が0.01%未満では、被膜密着性の向上効果が十分に得られないので、Cu含有量は0.01%以上とする。Cu含有量の好ましい値は0.05%以上であり、Cu含有量のより好ましい値は0.10%以上である。
一方、Cu含有量が0.50%を超えると、熱間圧延中、母材鋼板10が脆化するので、Cu含有量は0.50%以下とする。Cu含有量の好ましい値は0.40%以下であり、Cu含有量のより好ましい値は0.30%以下である。
母材鋼板10において、上記元素を除く残部は、Fe及び不純物である。不純物は、鋼原料から不可避的に混入する元素及び製鋼過程で不可避的に混入する元素の少なくとも一方を含み、方向性電磁鋼板1の特性を阻害しない範囲で混入が許容される元素である。
さらに、磁気特性の向上、強度、耐食性、疲労特性などの構造部材に求められる特性の向上、鋳造性や通板性の向上、スクラップ等使用による生産性の向上を目的として、母材鋼板10が、Mo、W、In、Bi、Sb、Ag、Te、Ce、V、Co、Ni、Se、Ca、Re、Os、Nb、Zr、Hf、Ta、Y、及びLaの1種又は2種以上を、合計で5.00%以下、好ましくは3.00%以下、より好ましくは1.00%以下含有してもよい。
〔中間被膜20の説明〕
中間被膜20は、母材鋼板10の表面に設けられた酸化珪素(例えばSiO)主体の外部酸化膜である。この中間被膜20は、母材鋼板10と張力絶縁被膜30との間に挟まれている。中間被膜20は、フォルステライト系被膜以外の被膜であるので、母材鋼板10と中間被膜20との界面40に凹凸はほとんど存在しない。つまり、フォルステライト系被膜を中間被膜として使用する従来の方向性電磁鋼板と比較して、本実施形態の方向性電磁鋼板1では、上記界面40の平坦度が極めて高く、交流磁場下での磁壁の移動がスムーズに行われるため、鉄損低減に寄与する。また、以下で説明するように、中間被膜20は、特定の構造を有する外部酸化膜であるため、張力絶縁被膜30の密着性向上にも寄与する。
図1に示すように、中間被膜20は、母材鋼板10と中間被膜20との界面40に断続的に接する第1領域21と、第1領域21を内包する第2領域22とを有する。それぞれの第1領域21は、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含む。図1では、隣り合う第1領域21の間隔が一定であるように示されているが、隣り合う第1領域21の間隔が異なる場合もある。第2領域22は、中間被膜20の内部において第1領域21以外の領域であり、酸化珪素(例えばSiO)を主体の酸化物として含む。
図1に示すように、中間被膜20の膜厚T1は、母材鋼板10の表面(界面40)と張力絶縁被膜30との間の膜厚であり、特に特定の膜厚に限定されないが、中間被膜20の平均膜厚は10〜100nmが好ましい。
<中間被膜20の平均膜厚:10〜100nm>
中間被膜20の平均膜厚が10nm未満であると、母材鋼板10と中間被膜20との界面40における密着力が不十分となり、巻鉄心製造時又は他の過度な塑性加工時、及び、鋼板間に摩擦力が重畳する環境にて、張力絶縁被膜30が剥離し易くなるので、中間被膜20の平均膜厚は10nm以上が好ましい。中間被膜20のより好ましい平均膜厚は20nm以上である。
一方、中間被膜20の平均膜厚が100nmを超えると、中間被膜20自体の凝集力が大きくなり、巻鉄心製造時又は他の過度な塑性加工時、及び、鋼板間に摩擦力が重畳する環境にて、SiOを主体の酸化物として含む第2領域22内を起点として、張力絶縁被膜30が剥離し易くなるし、また、被膜密着性が十分であれば、非磁性層は薄い方が好ましいので、中間被膜20の平均膜厚は100nm以下が好ましい。中間被膜20のより好ましい平均膜厚は80nm以下である。
中間被膜20の平均膜厚の特定方法は以下の通りである。
まず、方向性電磁鋼板1から、母材鋼板10の圧延方向に直交する断面が露出するようにサンプルを採取する。そのサンプル断面を研磨することにより、母材鋼板10と中間被膜20との界面40の長さが約10μm程度含まれる断面を現出させた後、図1に示すように、母材鋼板10の表面と張力絶縁被膜30との間の平均膜厚を次のように測定する。
母材鋼板10と中間被膜20との界面40に、フォルステライト系被膜を使った場合のような凹凸は存在しないが、界面40の形状が、長周期で山部と谷部が現れる波形状となっている場合が多い。同じく、張力絶縁被膜30と中間被膜20との界面50の形状も、長周期で山部と谷部が現れる波形状となっている場合が多い。
そこで、波形状を有する界面40及び界面50のそれぞれについて波中心線を引く。ここで、波曲線の平均線に平行な直線を引いたとき、この直線と波曲線で囲まれる面積が、この直線の両側で等しくなる直線を波中心線とする。これら2本の波中心線間の距離を膜厚と定義する。
そして、中間被膜20の内部において、第1領域21に重ならないように、界面40に垂直な線を、界面40に平行な方向に10本以上引き、その線上で、上記定義に従う膜厚を測定し、その平均を、中間被膜20の平均膜厚とする。
次に、中間被膜20を構成する第1領域21と第2領域22について詳細に説明する。
<第1領域21>
中間被膜20の内部に、母材鋼板10の表面(界面40)に断続的に接する形態で存在する第1領域21は、FeとSiを含む酸化物からなる領域であればよいが、該酸化物は、主に、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種である。
中間被膜20の内部における第1領域21の機能は明確でないが、巻鉄心製造過程又は他の過度な塑性加工過程で、張力絶縁被膜30に摩擦力が負荷されたとき、負荷された摩擦力を緩和する緩衝物として機能すると考えられる。
仮に、第1領域21が存在しない場合、母材鋼板10と酸化珪素主体の外部酸化膜との間の格子整合性は良好であるので、張力絶縁被膜30の密着性は良好であるが、酸化珪素は弾性率が高いので、張力絶縁被膜30に負荷された摩擦力、即ち、せん断応力(ずり応力)は、全て、母材鋼板10と第1領域21が存在しない外部酸化膜との界面に集中して、上記格子整合性が阻害され、張力絶縁被膜30の密着性が不安定になると考えられる。
即ち、本実施形態のように、中間被膜20の内部で、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含有する第1領域21が母材鋼板10の表面(界面40)に断続的に接する形態で存在する場合、この第1領域21、すなわちFe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含有する鉄系酸化物が、張力絶縁被膜30に摩擦力が負荷された際の応力を緩和する緩衝物として機能し、母材鋼板10と中間被膜20との間の良好な格子整合性が維持されて、張力絶縁被膜30の密着性が良好に維持されると考えられる。
第1領域21の存在及び中間被膜20の膜厚方向における第1領域21の厚さT2(図1参照)は、方向性電磁鋼板1の断面を物理的に研磨した後、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して確認することができる。方向性電磁鋼板1の断面を、例えば、Gaをイオン源とする集束イオンビームで研磨し、その後、TEMで、10000倍以上の倍率で撮影する。
第1領域21がFeとSiを含む酸化物からなる領域であることは、EDS分析等で元素分析を行うことで確認することができる。電子線回折法で確認することも可能である。電子線回折法は、主に、Fe2SiO4及びFeSiO3を確認する場合に用いられ、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種が結晶質であることも同時に確認することができる。
Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種が結晶質であることにより、巻鉄心製造時又は他の過度な塑性加工時、及び、鋼板間に摩擦力が重畳する環境にて必要な被膜密着性を高めることができる。これは、第1領域21と母材鋼板10との間の格子整合性が増大するか、又は、中間被膜20自体が緻密化することによるものと考えられる。
中間被膜20の膜厚方向における第1領域21の平均厚さは1〜20nmであることが好ましい。また、後述するように、第1領域21の存在比率Rは1%以上であることが好ましい。
<第1領域21の平均厚さ:1〜20nm>
第1領域21の平均厚さが1nm未満であると、第1領域21の応力緩和機能が十分に機能せず、巻鉄心製造時又は他の過度な塑性加工時、及び、鋼板間に摩擦力が重畳する環境にて必要な被膜密着性の確保が困難になるので、第1領域21の平均厚さは1nm以上が好ましい。第1領域21のより好ましい平均厚さは5nm以上である。
一方、第1領域21の平均厚さが20nmを超えると、第1領域21自体の凝集力が大きくなり、同様に、巻鉄心製造時又は他の過度な塑性加工時、及び、鋼板間に摩擦力が重畳する環境にて必要な被膜密着性の確保が困難になるので、第1領域21の平均厚さは20nm以下が好ましい。第1領域21のより好ましい平均厚さは15nm以下である。
第1領域21の平均厚さの特定方法は以下の通りである。
まず、方向性電磁鋼板1から、母材鋼板10の圧延方向に直交する断面が露出するようにサンプルを採取する。そのサンプル断面を研磨することにより、母材鋼板10と中間被膜20との界面40の長さが約10μm程度含まれる断面を現出させる。
母材鋼板10と第1領域21との界面の形状は、長周期で山部と谷部が現れる波形状となっている場合が多い。同じく、第1領域21と第2領域22との界面の形状も、長周期で山部と谷部が現れる波形状となっている場合が多い。
そこで、母材鋼板10と第1領域21との界面と、第1領域21と第2領域22との界面のそれぞれについて波中心線を引く。ここで、波曲線の平均線に平行な直線を引いたとき、この直線と波曲線で囲まれる面積が、この直線の両側で等しくなる直線を波中心線とする。これら2本の波中心線間の距離を厚さと定義する。
そして、中間被膜20の内部において、第1領域21に重なるように、界面40に垂直な線を、界面40に平行な方向に10本以上引き、その線上で、上記定義に従う厚さを測定し、その平均を、第1領域21の平均厚さとする。
<第1領域21の存在比率:界面の全長さ当たり1%以上>
図1に示すように、母材鋼板10の表面には、第1領域21が断続的な形態で形成されており、第1領域21が形成されていない母材鋼板10の表面には、第1領域21を覆い包む形態で第2領域22が形成されている。
図1に示すように、母材鋼板10の圧延方向に直交する方向に長さLsumを有する断面をみた場合に、その断面内に現れる第1領域21が界面40に接する長さの合計値をΣLとしたとき、第1領域21の存在比率Rは下記(1)式で定義される。
R=(ΣL×100)/Lsum …(1)
上記(1)式において、ΣLは下記(2)式で定義される。(2)式において、Liは、長さLsumを有する断面内に現れるi番目の第1領域21が界面40に接する長さである(図1参照)。長さLsumは、少なくとも10μm程度必要である。
ΣL=L1+L2+L3+・・+Li+・・+Ln …(2)
第1領域21の存在比率Rは1%以上が好ましい。存在比率Rが1%未満であると、巻鉄心製造時又は他の過度な塑性加工時、及び、鋼板間に摩擦力が重畳する環境にて必要な被膜密着性を確保することが困難になるので、存在比率Rは1%以上が好ましい。存在比率Rのより好ましい値は5%以上である。
存在比率Rは膜形成条件によるので、その上限は、特に限定できないが、概ね50%を超えると、被膜密着性向上効果が飽和し、また、交流励磁下における磁壁移動が円滑に進行し難くなり、磁気特性が低下、特に、鉄損が増大するので、存在比率Rは50%以下が好ましい。安定した被膜密着性と優れた磁気特性を確保する点から、存在比率Rは、40%以下がより好ましい。
<第2領域22>
第2領域22は酸化珪素を主体の酸化物として含有する。酸化珪素の化学組成はSiOαである。化学的安定性の観点から、α=1.0〜2.0が好ましい。α=1.5〜2.0が、より好ましく、α≒2.0が、化学的安定性に加え、被膜密着性の観点から、さらに好ましい。
酸化珪素領域(第2領域22)の存在は、第1領域21と同様に、方向性電磁鋼板1の断面を物理的に研磨し、その後、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して確認することができる。酸化珪素であることの確認は、EDS分析等の元素分析で行うことができる。なお、酸化珪素が、例えば、βクリストバライト構造の酸化珪素である場合、その結晶化温度は1470℃程度と高温で、通常の製造工程では形成されないので、その同定は、EDS分析等の元素分析によるSiとOの原子比で行う。
〔張力絶縁被膜30の説明〕
次に、中間被膜20の上に形成される張力絶縁被膜30について説明する。
張力絶縁被膜30として、りん酸マグネシウム又はりん酸アルミニウムと、クロム酸及びコロイダルシリカからなる絶縁被膜(特許文献20、参照)や、該絶縁被膜より高張力が得られる、結晶質のほう酸とアルミナ酸化物からなる絶縁被膜(特許文献23、参照)等を用いることができる。
張力絶縁被膜30の膜厚T3は、磁気特性の改善に必要な張力、及び、鉄心における鋼板の占積率等を勘案して設定するが、0.5〜10μmが好ましい。張力絶縁被膜30の膜厚T3が0.5μm未満であると、張力付与による鉄損低減効果が乏しいので、上記膜厚T3は0.5μm以上が好ましい。より好ましくは0.8μm以上である。
一方、張力絶縁被膜30の膜厚T3が10μmを超えると、中間被膜20が適切に形成されていても、十分な被膜密着性が得られない場合があり、また、上記占積率が低下するので、上記膜厚T3は10μm以下が好ましい。より好ましくは8μm以下である。
〔方向性電磁鋼板1の製造方法〕
次に、方向性電磁鋼板1の製造方法について説明する。
<製造方法>
(i)(a)仕上げ焼鈍で、鋼板表面に生成したフォルステライト等の無機鉱物質の被膜を、酸洗、研削等の手段で除去した鋼板、(b)仕上げ焼鈍で上記無機鉱物質の被膜の生成を意図的に抑制した鋼板、又は、(c)鋼板表面を鏡面光沢を呈するまで平滑化した鋼板を基材(母材鋼板10)とする。
(ii)上記基材表面に、張力絶縁被膜30用の形成液を塗布して焼き付けて張力絶縁被膜30を形成する際、焼付け時の加熱及び雰囲気を適切に制御して、張力絶縁被膜30と基材との界面を酸化し、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも一種を含む第1領域21と、酸化珪素を主体の酸化物として含有する第2領域22とを有する中間被膜20を基材表面に形成するとともに、この中間被膜20上に張力絶縁被膜30を形成する。
フォルステライト等の無機鉱物質の被膜を酸洗、研削等の手段で除去した鋼板、及び、上記無機鉱物質の被膜の生成を抑制した鋼板は、例えば、次のように作製する。
Siを2.0〜4.0質量%程度含有する珪素鋼片を熱間圧延に供して熱延鋼板とし、必要に応じ、熱延鋼板に焼鈍を施し、その後、熱延鋼板又は焼鈍熱延鋼板に、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して、最終板厚の鋼板に仕上げ、次いで、該鋼板に脱炭焼鈍を施すとともに、一次再結晶を進行させる。脱炭焼鈍により鋼板表面には酸化層が形成される。
酸化層を有する鋼板の表面に、マグネシア(MgO)を主成分とする焼鈍分離剤を塗布して乾燥し、乾燥後、コイル状に巻き取って、仕上げ焼鈍(二次再結晶)に供する。仕上げ焼鈍により、鋼板表面には、フォルステライト(Mg2SiO4)を主体とする無機鉱物質の被膜が形成されるが、該被膜を、酸洗、研削等の手段で除去する。被膜除去後、好ましくは、化学研磨又は電界研磨で、鋼板表面を平滑に仕上げる。
マグネシア(MgO)を主成分とする焼鈍分離剤の代わりに、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して乾燥し、乾燥後、コイル状に巻き取って、仕上げ焼鈍(二次再結晶)に供する。仕上げ焼鈍により、フォルステライト等の無機鉱物質の被膜の生成を意図的に抑制した鋼板を得ることができる。仕上げ焼鈍後、好ましくは、化学研磨又は電界研磨で、鋼板表面を平滑に仕上げる。
(a)フォルステライト等の無機鉱物質の被膜を除去した鋼板、(b)フォルステライト等の無機鉱物質の被膜の生成を抑制した鋼板、又は、(c)鋼板表面を鏡面光沢を呈するまで平滑化した鋼板の表面に、張力絶縁被膜30用の形成液を塗布して焼き付ける。
例えば、張力絶縁被膜30用の形成液として代表的に用いられる、りん酸塩とコロイド状シリカを主体とする液の場合、該液を、乾燥被膜厚で0.5〜10μmとなる量を鋼板表面に塗布して焼き付けて、張力絶縁被膜30を形成する。
上記焼付けは、例えば、水素:窒素が75%:25%で、露点が5〜50℃の窒素−水素混合雰囲気で、650〜950℃に5〜300秒加熱して行う。上記焼付け時の加熱温度、加熱速度、及び、雰囲気(組成、露点)を適切に制御することにより、張力絶縁被膜30内に雰囲気中の酸素及び水分の少なくとも一方が拡散し、鋼板表面を酸化して、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含む第1領域21、及び酸化珪素を含む第2領域22を有する中間被膜20が形成されるとともに、中間被膜20の上に、張力絶縁被膜30が形成される。
上記形成方法における、焼付け時の加熱温度と加熱時間、及び、焼付け後の冷却について説明する。
加熱温度:650〜950℃
加熱時間:5〜300秒
加熱温度と加熱時間は、張力絶縁被膜30の焼付硬化を促進し、完了させ、張力付与効果を得るため、適宜設定するが、加熱温度は650℃以上、加熱時間は5秒以上が好ましい。
中間被膜20の効率的な形成をも考慮すると、加熱温度は700℃以上、加熱時間は10秒以上が好ましく、800℃以上、10秒以上がより好ましい。
加熱温度の上限は、特に限定されないが、950℃を超えると、張力絶縁被膜30の張力付与効果が飽和するとともに、張力絶縁被膜30中の化学結合の一部が破断し、張力が却って低下して磁気特性が低下するので、加熱温度は950℃以下が好ましい。より好ましくは920℃以下である。
加熱時間の上限は、特に限定されないが、300秒を超えると、張力絶縁被膜30の張力付与効果が飽和するとともに、張力絶縁被膜30中の化学結合の一部が破断し、張力が却って低下して磁気特性が低下するので、加熱時間は300秒以下が好ましい。より好ましくは280秒以下である。
雰囲気露点:−20〜40℃
冷却速度:5〜100℃/秒
張力絶縁被膜30の焼付硬化が完了した後は、鋼板の表面が酸化して、中間被膜20が変質しないように、冷却時の雰囲気の酸化度(露点)と冷却速度を適切に制御する必要がある。
例えば、鋼板の表面酸化に影響する500℃までの冷却は、水素:窒素が75%:25%、露点が−20〜40℃の雰囲気中で行うことが好ましい。通常、冷却速度は、鋼板の酸化を抑制する点で速い方が好ましいが、過度に速いと、鋼板の歪み量が増大し、磁気特性が低下するので、冷却速度は5〜100℃/秒が好ましい。より好ましくは10〜90℃/秒である。
鋼板の表面酸化を抑制する点や、鋼板の歪み量を抑制する点で、冷却雰囲気の酸化度は、張力絶縁被膜30用の形成液を焼き付ける焼付け雰囲気の酸化度より低い方が好ましい。
また、鋼板表面に張力絶縁被膜30用の形成液を塗布せず、焼鈍で中間被膜20を形成し、冷却後、張力絶縁被膜30用の形成液を塗布して焼き付けて、張力絶縁被膜30を形成してもよい。
加熱温度:600〜1150℃
雰囲気露点:−20〜20℃
中間被膜20を形成する焼鈍において、加熱温度は600〜1150℃が好ましく、雰囲気は、過度な酸化を防ぐ観点で、水素を混合した窒素雰囲気が好ましい。例えば、水素:窒素が75%:25%で、露点が−20〜20℃の雰囲気が好ましい。
第1領域21の源となる鉄系酸化物を鋼板表面に形成するため、焼鈍の初期段階では、雰囲気の露点を0〜40℃に制御し、その後、第1領域21と第2領域22を有する中間被膜20を形成するため、露点を−20〜20℃に制御し、雰囲気の酸化性を低くすることが好ましい。
このように、中間被膜20の形成時に、雰囲気の酸化度を、焼鈍の初期から後期にかけ、高い側から低い側に制御することで、第1領域21及び第2領域22を有する中間被膜20を効率よく、かつ、確実に形成することができる。
中間被膜20の形成後、鋼板表面に、りん酸塩とコロイド状シリカを主体とする張力絶縁被膜30用の形成液を塗布して焼き付けて張力絶縁被膜30を形成する。
加熱温度:650〜950℃
加熱時間:5〜300秒
雰囲気露点:−20〜20℃
中間被膜20の形成はほぼ終了しているので、張力絶縁被膜30用の形成液の焼付け時、鋼板がさらに酸化しないよう、雰囲気は、酸化度が低い雰囲気が好ましい。例えば、水素:窒素が75%:25%で、露点が−20〜20℃の雰囲気が好ましい。
露点が−20℃未満であると、Fe−Si−O酸化物を含有する第1領域21中のFeが還元されて、張力絶縁被膜30の絶縁性を阻害するので、露点は−20℃以上が好ましい。より好ましくは−10℃以上である。
一方、露点が20℃を超えると、鋼板表面の酸化が進行し、中間被膜20が厚くなりすぎて張力絶縁被膜30の密着性が低下するので、露点は20℃以下が好ましい。より好ましくは10℃以下である。加熱温度は650〜950℃が好ましく、加熱時間は5〜300秒が好ましい。
焼付け終了後の鋼板は、好ましくは、露点が−20〜20℃の雰囲気で、冷却速度5〜100℃/秒で冷却する。
雰囲気露点:−20〜20℃
冷却速度:5〜100℃/秒
焼付け終了後の鋼板の冷却についても同様で、鋼板の酸化に影響を与える500℃までの冷却は、水素:窒素が75%:25%、露点が−20〜20℃の雰囲気で行う。冷却速度は、鋼板の表面酸化を抑制する点で速い方が好ましいが、過度に速いと、鋼板の歪み量が増大し、磁気特性が低下するので、冷却速度は5〜100℃/秒が好ましい。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
<実施例1>
表1に示す成分組成の珪素鋼片を1200℃にて60分加熱して熱間圧延に供し、板厚2.30mmの熱延鋼板とし、該熱延鋼板に1080℃にて180秒の熱延板焼鈍を施し、その後、冷間圧延を施して、板厚0.23mmの冷延鋼板を得た。
上記冷延鋼板に、脱炭焼鈍と窒化焼鈍を施した後、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、水素雰囲気で1200℃の仕上げ焼鈍を施し、次いで、自然冷却して、平滑な表面の鋼板を得た。
上記鋼板を、25%N2+75%H2で、かつ、露点+10℃の雰囲気で、10℃/秒の昇温速度で1000℃まで昇温し、5秒保持した後、露点を−10℃に切り替て、同様に、1000℃で25秒保持し、その後、10℃/秒で冷却して、鋼板表面に中間被膜を形成した。
その後、鋼板表面に、りん酸アルミニウムとコロイダルシリカからなる張力絶縁被膜用の形成液を、乾燥膜厚が3μmとなるように塗布し、25%N2+75%H2で、かつ、露点+10℃の雰囲気で、10℃/秒の昇温速度で800℃まで昇温し、30秒保持し、その後、10℃/秒で冷却した。
(層組織)
中間被膜の化学組成を、次のように調査した。方向性電磁鋼板の圧延方向に直交する鋼板断面から、集束イオンビーム法で作製した微小試験片の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。観察は、界面方向(横幅)10μmにわたって行った。また、TEMに付属のエネルギー分散型分光分析装置(EDS)で、酸素(O)、シリコン(Si)、鉄(Fe)等の元素分析及び定量分析を行い、化合物を同定した。
観察した界面方向10μmにおいて、中間被膜の平均膜厚、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含有する第1領域の平均厚さ、及び、界面長さLsum当たりの第1領域の存在比率Rを測定した。また、中間被膜の第2領域に含まれる酸化珪素及び第1領域に含まれるFe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種について、電子線回折パターンにより、結晶性調査及び結晶同定を行った。なお、中間被膜の第2領域に含まれる酸化珪素の組成は、いずれの試料においてもSiO2であった。
表2に、中間被膜の同定及び測定結果を示す。
(被膜密着性 曲げ)
張力絶縁被膜の被膜密着性は、評価用試料を、直径20mmの円筒に巻き付け、180°曲げた時の被膜残存面積率で評価した。
評価基準は、以下のとおりである。
◎:被膜残存面積率が95%以上(非常に優れる)
○:被膜残存面積率が90%以上95%未満(優れる)
△:被膜残存面積率が80%以上90%未満(効果がある)
×:被膜残存面積率が80%未満(効果がない)
表2に、評価結果を併せて示す。
(被膜密着性 摩擦)
摩擦力を付与した際の張力絶縁被膜の被膜密着性を評価するため、直径30mmの円筒に巻き付け、180°で、一旦、内側に曲げ、曲げの後、曲げ伸ばした試料を作製した。この試料を、図2に示すように、定盤上に固定して、試料表面に、直径10mmの鋼球を1kgfで押し付け、1mm/秒の速度で30秒スライド(30mm)させて、鋼板表面に摩擦痕を付与した(上図、参照)。この摩擦痕において剥離した被膜の最大剥離幅を評価した(下図、参照)。
評価基準は、以下のとおりである。
◎:最大剥離幅が1mm以下(非常に優れる)
○:最大剥離幅が2mm以下(優れる)
△:最大剥離幅が4mm以下(効果がある)
×:最大剥離幅は4mmを超える(効果がない)
表2に、評価結果を併せて示す。
(磁気特性)
磁気特性は、JIS C 2550に準じて評価した。磁束密度は、B8を用いて評価した。B8は、磁界の強さ800A/mにおける磁束密度で、二次再結晶の良否の判断基準となる。B8=1.80T以上を、二次再結晶したものと判断した。
表2に、評価結果を併せて示す。
Figure 2020111809
Figure 2020111809
表2において、試料No.B1〜B18の発明例は、いずれも良好な被膜密着性及び磁気特性を示している。試料No.B12、及び、B17の発明例は、B、Cr、Cu、及び、Snの添加効果が十分に発現し、特に良好な被膜密着性を示している。
一方、試料No.b3、b5、及び、b6の比較例は、それぞれ、Si、Al、及び、Nを多量に含有するため、室温での脆性が悪く、冷延そのものが不可能であった。また、試料No.b8の比較例は、S含有量が多く、熱間での脆性が悪く、熱延が不可能であった。このため、試料No.b3、b5、b6、及び、b8の比較例においては、いずれも、被膜密着性の評価に至らなかった。
試料No.b1、b2、b4、及び、b7の比較例は、添加元素の含有量が本発明範囲を外れたため、いずれも、二次再結晶せず、磁束密度が非常に小さくなった。なお、二次再結晶をしなかった試料は、いずれも被膜密着性が悪かった。二次再結晶しなかった場合、鋼板の結晶粒径が微細で、中間被膜の形成が好適になされなかったためと考えられる。
<実施例2>
表1に示す成分組成の珪素鋼片を1200℃にて60分間加熱して熱間圧延に供し、板厚2.30mmの熱延鋼板とし、該熱延鋼板に1080℃にて180秒の熱延板焼鈍を施し、その後、冷間圧延を施して、板厚0.23mmの冷延鋼板を得た。その冷延鋼板に、脱炭焼鈍と窒化焼鈍を施した後、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、水素雰囲気で1200℃の仕上げ焼鈍を施し、自然冷却して、平滑な表面の鋼板を得た。
上記鋼板を、25%N2+75%H2かで、かつ、露点15℃(前段露点)の雰囲気で、10℃/秒の昇温速度で1000℃(前段温度)まで昇温し、10秒保持した後、露点を−20〜10℃(後段露点)に、かつ、温度を1000〜1200℃(後段温度)に調整して40秒保持し、その後、10℃/秒で冷却して、鋼板表面に、中間被膜を形成した。なお、中間被膜の第2領域に含まれる酸化珪素の組成は、いずれの試料においてもSiO2であった。
鋼板表面に、りん酸アルミニウムとコロイダルシリカからなる張力絶縁被膜用の形成液を、乾燥膜厚が3μmとなるよう塗布し、25%N2+75%H2で、かつ、露点+10℃の雰囲気で、10℃/秒の昇温速度で800℃まで昇温して30秒間保持し、その後、10℃/秒で冷却した。中間被膜及び張力絶縁被膜の密着性に関する評価は、実施例1と同様の方法で行った。
結果を表3に示す。
Figure 2020111809
試料No.D1〜D9は発明例であり、いずれも、良好な被膜密着性を示している。特に、後段露点が高いと、第1領域の存在比率Rが高く、第1領域が適切に形成され、良好な被膜密着性が得られている。また、後段温度が1150℃以上であると、第1領域に含まれる鉄系酸化物が結晶化し、さらに良好な被膜密着性が得られている。
本発明によれば、張力絶縁被膜と母材鋼板との間にフォルステライト系被膜以外の中間被膜であって且つ被膜密着性を高めることが可能な中間被膜を有する方向性電磁鋼板、すなわち、優れた被膜密着性及び磁気特性を有する方向性電磁鋼板を提供することができる。よって、本発明は、電磁鋼板製造産業及び電磁鋼板利用産業において利用可能性が高いものである。
1…方向性電磁鋼板、10…母材鋼板、20…中間被膜、21…第1領域、22…第2領域、30…張力絶縁被膜、40…母材鋼板と中間被膜との界面、50…中間被膜と張力絶縁被膜との界面

Claims (5)

  1. 母材鋼板と、
    張力絶縁被膜と、
    前記母材鋼板と前記張力絶縁被膜との間に挟まれた中間被膜と、
    を備え、
    前記母材鋼板が、化学組成として、質量%で、
    C:0.100%以下、
    Si:0.80〜7.00%、
    Mn:1.00%以下、
    酸可溶性Al:0.010〜0.070%、
    S:0.080%以下、
    N:0.012%以下、
    B:0〜0.010%、
    Sn:0〜0.20%、
    Cr:0〜0.50%、
    Cu:0〜0.50%、
    を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
    前記中間被膜は、前記母材鋼板と前記中間被膜との界面に断続的に接する第1領域と、前記第1領域を内包する第2領域とを有し、
    前記第1領域は、Fe2SiO4及びFeSiO3の少なくとも1種を含み、
    前記第2領域は、酸化珪素を含む、
    ことを特徴とする方向性電磁鋼板。
  2. 前記母材鋼板の圧延方向に直交する方向に長さLsumを有する断面をみた場合に、前記断面内に現れる前記第1領域が前記界面に接する長さの合計値をΣLとしたとき、下記(1)式で定義される前記第1領域の存在比率Rが1%以上であることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
    R=(ΣL×100)/Lsum …(1)
  3. 前記中間被膜の平均膜厚は10〜100nmであり、
    前記中間被膜の膜厚方向における前記第1領域の平均厚さは1〜20nmである
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板。
  4. 前記Fe2SiO4及び前記FeSiO3の少なくとも1種が結晶質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板。
  5. 前記母材鋼板が、前記化学組成として、質量%で、B:0.001〜0.010%、Sn:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.50%、及び、Cu:0.01〜0.50%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
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