JP2018154881A - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】地鉄表面を鏡面化した鋼板表面上に、密着性に優れる張力付与被膜を、短時間かつ低コストで被成することができる方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。【解決手段】鏡面化処理を施した方向性電磁鋼板の素地上に、上記素地と組成が異なる金属中間層を有し、かつ、上記金属中間層の上に張力付与被膜を有する方向性電磁鋼板の製造方法であって、上記素地と張力付与被膜との間の金属中間層を、素地上に供給した平均粒径が0.1μm以上の金属粉末を溶融して形成することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、主に変圧器の鉄心に用いられる方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として広く用いられている軟磁性材料であり、特に方向性電磁鋼板は、その結晶方位がGoss方位と呼ばれる{110}<001>方位に高度に集積し、磁気特性に優れていることが特徴である。方向性電磁鋼板に要求される特性のうち、特に鉄損特性は、製品のエネルギーロスに直接つながるため、非常に重要視されている。
方向性電磁鋼板の鉄損を低減する手段としては、鋼の電気抵抗を高めたり、板厚を薄くしたり、さらには、結晶粒径を小さくしたりして渦電流損を低減する方法が従来から知られている。さらに、プラズマジェットやレーザ光、電子ビーム等を鋼板表面に照射し、鋼板表面に局所的に歪みを導入したり、鋼板表面に溝を形成したりすることによって、人工的に磁区幅を細分化し、渦電流損を低減する技術も開発されている。また、ヒステリシス損を低減する技術として、二次再結晶粒の結晶方位をより高度に揃えたり、鋼中の不純物を低減したりするなどの技術が提案されている。しかし、これらの技術は、今日まで様々な改善が加えられ、更なる改善の余地は少なくなってきており、新たな鉄損改善技術の開発が望まれている。
そこで、例えば、特許文献1および2には、電解研磨あるいは化学研磨によって鋼板表面を鏡面状態とし、鋼板表面の凹凸を低減することによってヒステリシス損を低減する技術が提案されている。この技術は、従来の方向性電磁鋼板の表面にはフォルステライト被膜が形成されており、鋼板素地とフォルステライト被膜の界面の凹凸が大きく、ヒステリシス損が大きくなる原因があることに着目したものである。しかし、この方法で鉄損を低減するためには、鋼板表面に対して強い張力を付与する被膜の存在が不可欠である。その理由は、鋼板表面が平滑なため、張力付与被膜が存在しない場合には、磁区幅の拡大が促進されて鉄損が大幅に増加してしまうからである。
しかし、鋼板表面に強力な張力付与被膜を形成すると、鋼板表面と張力付与被膜との界面に強い剪断応力が発生するが、鏡面化状態の鋼板では被膜の密着性に乏しいため、被膜が剥落し易い。そのため、目的とする張力付与効果が発揮されず、結果として鉄損値の低減が達成されないという問題がある。
この問題を解決する手段として、前述した特許文献1や、特許文献3には、鏡面化した鋼板表面上に金属めっきを施し、その上に張力付与被膜を塗布する方法が提案されている。また、特許文献4には、ゾル−ゲル法によって、セラミックス張力付与被膜を被成する方法が、また、特許文献5には、化学蒸着や真空蒸着によってセラミックス張力付与被膜を被成する方法が提案されている。
特公昭52−24499号公報 特開平05−87595号公報 特開平11−131251号公報 特公平2−243770号公報 特公昭56−04150号公報
しかしながら、上記特許文献1および3に開示の方法では、金属めっきを施した絶縁被膜は、焼付処理の際に剥落し易く、また、剥落が抑制される好適範囲が非常に狭い。また、仮に剥離を免れても、歪取焼鈍後の被膜密着性が大きく低下するなど、被膜の密着性に改善の余地が残されている。また、上記特許文献4および5に開示の方法では、セラミックス張力付与被膜の被成に時間がかかるため、製造コストが高く、いまだ実用化されていないのが実情である。
本発明は、従来技術が抱える上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、地鉄表面を鏡面化した鋼板表面上に、密着性に優れる張力付与被膜を、短時間かつ低コストで被成することができる方向性電磁鋼板の製造方法を提案することにある。
発明者らは、鏡面化された鋼板表面における張力付与被膜の密着性が極めて悪いという問題点を解決するため、従来から検討されている鋼板表面と張力付与被膜の間に中間層を形成する方法について鋭意検討を重ねた結果、以下のことを知見した。
1)張力付与被膜の密着性を高めるためには、中間層の表面粗さを大きくすることが重要である。
2)張力付与被膜を被成する時の熱処理や歪取焼鈍などによる密着性の低下を抑制するためには、中間層は無機成分であることが望ましい。
3)めっきなどのウエットプロセスでは、大規模な塗布設備や乾燥設備等が必要となるため、製造コストの観点から、ドライプロセスの方が有利である。
そこで、上記の知見を前提として、高効率・低コストで中間層の形成が可能で、張力付与被膜の密着性も良好な張力付与被膜の被成技術についてさらに検討を重ねた。その結果、鏡面化した方向性電磁鋼板の表面上に平均粒径が0.1μm以上の金属粉末を供給し、該金属粉末に電子ビームやレーザビーム等の高エネルギービームを集中的に照射し、溶融して金属中間層を形成することで、上記課題を達成し得ることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、鏡面化処理を施した方向性電磁鋼板の素地上に、上記素地と組成が異なる金属中間層を有し、かつ、上記金属中間層の上に張力付与被膜を有する方向性電磁鋼板の製造方法であって、上記素地と張力付与被膜との間の金属中間層を、素地上に供給した平均粒径が0.1μm以上の金属粉末を溶融して形成することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
本発明の上記方向性電磁鋼板の製造方法における上記金属粉末の溶融手段が、電子ビーム照射あるいはレーザビーム照射であることを特徴とする。
また、本発明の上記方向性電磁鋼板の製造方法は、上記金属中間層の表面粗さを算術平均粗さRaで0.1〜10μmの範囲とすることを特徴とする。
本発明によれば、鏡面化した方向性電磁鋼板表面に、平均粒径が0.1μm以上の金属粉末を供給し、電子ビームやレーザビーム等を照射し、溶融して表面粗さの大きい金属中間層を形成するようにしたので、張力付与被膜との密着性の向上、製造コストの低減および処理時間の短縮のすべてを満たす金属中間層を実現することができ、ヒステリシス損に優れる方向性電磁鋼板を安価に製造することが可能となる。
まず、本発明を開発する基礎となった実験について説明する。
<実験1>
Siを3mass%含有する最終板厚0.23mmに圧延された冷延板の片側表面に、磁区細分化処理のため、幅100μm×深さ25μmのエッチング溝を圧延方向に5mm間隔で形成した後、脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、MgOを主成分とし、塩化アンチモンを1mass%含有する焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍を施すことで、フォルステライト被膜のない平滑な表面を有する方向性電磁鋼板を製造した。なお、上記鋼板表面の鏡面化は、焼鈍分離剤中に添加した塩化アンチモンにより達成される。
次いで、上記鋼板を長さ方向に4分割し、第1の鋼板は、鏡面化処理を行ったままの状態で60mass%のコロイダルシリカと40mass%の燐酸マグネシウムを主成分とする張力付与被膜を塗布・焼き付けし、鋼板1とした。
また、第2の鋼板は、vol%比でTiCl:10%+H:80%+CH:10%の混合ガスからなる雰囲気中において、CVD法を用いて厚さが1μmのTiC被膜を両面に形成した後、60mass%のコロイダルシリカと40mass%の燐酸マグネシウムを主成分とする張力付与被膜を塗布・焼き付けし、鋼板2とした。
また、第3の鋼板は、鏡面化した鋼板表面に平均粒径が1.0μmの純Ti粉末を供給してローラで均した後、上記Ti粉末に電子ビームを照射し、溶融して厚さが1μmのTiの中間層を形成し、その後、上記Ti中間層の上に、60mass%のコロイダルシリカと40mass%の燐酸マグネシウムを主成分とする張力付与被膜を塗布・焼き付けし、鋼板3とした。なお、上記平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒径分布測定装置を用いて測定した値である(以降、同様)。また、電子ビームの照射は、出力2kWで行い、適正な投入エネルギーになるよう、ビームの偏向速度(走査速度)を調整した。また、金属中間層の形成は、両面同時ではなく、片面ずつ2回に分けて行なった。
また、第4の鋼板は、有機結合剤(アクリル系バインダー)をコーティングした平均粒径が1.0μmの純Ti粉末を鋼板表面に供給してローラで均した後、上記Ti粉末にレーザビームを照射し、焼結することで厚さが1μmのTiの中間層を形成した。なお、レーザ照射は、出力600Wで行い、適正投入エネルギーになるよう、ビームの偏向速度(走査速度)を調整した。また、金属中間層の形成は両面同時ではなく、片面ずつ行なった。その後、60mass%のコロイダルシリカと40mass%の燐酸マグネシウムを主成分とする張力付与被膜を塗布・焼き付けし、鋼板4とした。
なお、上記4種の鋼板の一部については、その後、窒素雰囲気下で800℃×3hrの歪取焼鈍を施した。
上記のようにして得た4種類の鋼板について、磁気特性(磁束密度B、鉄損W17/50)を測定するとともに、歪取焼鈍前後の試験片について、鋼板を円筒に巻き付けたときに被膜の剥離が認められない最小の円筒径(曲げ剥離径(mm))を測定し、張力付与被膜の密着性を評価した。
また、鋼板表面(素地上)に金属中間層を形成した鋼板2〜4について、金属中間層の厚みを実測し、金属中間層の形成に使用された金属粉末量を算出し、金属中間層の形成にために供給された金属粉末量に対する比率、すなわち、金属粉末の「歩留り(%)」を求めた。
上記の結果を表1に示した。また、表1中には、1m×1mの鋼板両面に厚さ1.0μmの金属中間層を形成するのに必要な処理時間についても示した。
Figure 2018154881
上記表1からわかるように、鋼板2および3においては、歪取焼鈍前後ともに、張力付与被膜の密着性が良好(曲げ剥離径が小さい)で、低鉄損が得られている。張力付与被膜が剥離する場合には、鋼板素地と金属中間層の界面で剥離する場合と、金属中間層と張力絶縁コーティング界面で剥離する場合があるが、張力付与被膜の密着性が良好というのは、両方の界面での密着性が良好であることを意味している。張力付与被膜と金属中間層の密着性が良好であった理由は、鏡面化された鋼板に対して金属中間層の表面粗さが大きくなっていたためと考えられる。両鋼板とも、鉄損特性および張力付与被膜の密着性が良好であるが、金属中間層の形成に要する処理時間および金属粉末の歩留りが大きく異なる。CVD法を採用した鋼板2では、素材となる金属を気化させた後、鋼板表面に蒸着させているが、炉壁などの鋼板以外の場所にも蒸着するため歩留りが低く、かつ、処理に長い時間を要しており、製造コストが高くなってしまう。一方、鋼板3は、鋼板上に供給された金属粉末に電子ビームを高速で偏向させながら直接エネルギーを集中的に投入し、溶融して金属中間層を形成することから、鋼板以外の部分に金属中間層が形成されることがないため、高い歩留りで、かつ、短時間で金属中間層の形成が可能であった。一方、鋼板4に関しては、金属粉末を溶融して金属中間層を形成するのではなく、金属粉末表面に粉末同士を結合させる有機バインダをコーティングし、焼結したものである。曲げ剥離性が悪く、低鉄損が得られなかった理由は、張力付与被膜形成時の熱処理および歪取焼鈍時に、バインダに含まれる有機物が分解されて、金属中間層と鋼板素地との間の密着性が低下したためと考えられる。
<実験2>
Siを3mass%含有する最終板厚0.20mmに圧延された冷延板の片側表面に、磁区細分化処理のため、幅50μm×深さ20μmのエッチング溝を圧延方向に5mm間隔で形成した後、脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍を施すことで、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板を製造した。その後、上記方向性電磁鋼板に、電解研磨でフォルステライト被膜を除去する鏡面化処理を施し、表面平滑性に優れた方向性電磁鋼板を得た。
上記のようにして得た、鏡面化した方向性電磁鋼板の表面(素地)上に、表2に示したように、平均粒径を0.01〜50μmの範囲で種々に変化させた純Feの粉末を供給し、ローラを用いて均した後、このFe粉末に直接レーザビームを照射し、溶融して純Feからなる金属中間層を形成した。この際、レーザ照射は、出力1kWの条件で行い、適正な投入エネルギーになるようにビームの偏向速度を調整した。また、実験1と同様、金属中間層の形成は両面同時ではなく、片面ずつ形成した。
その後、60mass%のコロイダルシリカと40mass%の燐酸マグネシウムを主成分とする張力付与被膜を塗布・焼き付けし、製品板とした。
斯くして得た各製品板からエプスタイン試験片を切り出し、鉄損W17/50および磁束密度Bを測定した。また、上記試験片の一部に対して、800℃×3hrの歪取焼鈍を施し、歪取焼鈍前後の曲げ剥離径を測定し、被膜密着性を評価した。その結果を表2に併記した。
Figure 2018154881
表2から、金属粉末の平均粒径が0.1μm未満では、絶縁被膜の密着性が悪く、期待通りの低鉄損が得られていないことがわかる。これらの鋼板表面を観察すると、張力付与被膜の厚み均一性が悪く、さらには部分的に張力被膜が剥離している部分も存在しており、鋼板への張力付与が不十分であったためと考えられる。張力付与被膜を塗布する前に、金属中間層の表面粗さを算術平均粗さRaで測定したところ、0.1μm未満と、非常に低く、これが密着不良の原因と考えられる。
一方、金属粉末の平均粒径が10μm超えでは、やや鉄損が悪くなる傾向が認められる。この原因は、平均粒径が10μm超えの場合、金属中間層の表面粗さが大きいため、張力付与被膜の厚みが金属中間層の凸部では薄く、凹部では厚くなり、ばらつきが大きくなってしまうため、付与される張力も不均一となり、鉄損が悪化したものと思われる。
上記の結果から、金属粉末の平均粒径と金属中間層の表面粗さとの間には相関があり、被膜の密着性を確保し、低鉄損を得るためには、金属中間層の形成に使用する金属粒子の平均粒径は0.1〜10μmの範囲のものを使用するのが好ましいことがわかった。
本発明は、上記の新規な知見に基き開発したものである。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明は、鏡面化処理した方向性電磁鋼板の表面(素地)上に、金属粉末を供給し、その金属粉末を溶融して表面粗さが適度に粗い金属中間層を形成することが特徴である。したがって、それ以外の製造条件については特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。
まず、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材(スラブ)の好ましい成分組成について説明するが、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を得るためには、基本成分としてC、SiおよびMnを下記の範囲で含有するスラブを用いることが好適である。なお、鋼の溶製方法、スラブの製造方法については、常法に従えばよく、特に制限はない。
C:0.01〜0.08mass%
Cは、一次再結晶時の集合組織の改善のために必要な元素であり、その効果を得るためには0.01mass%以上含有させるのが好ましい。一方、Cが0.08mass%を超えると、脱炭焼鈍で、磁気時効の起こらない0.0050mass%以下に低減することが難しくなる。よって、Cは0.01〜0.08mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.03〜0.07mass%の範囲である。
Si:2.0〜8.0mass%
Siは、鋼の電気抵抗を高め、鉄損を改善するのに有効な元素であるが、2.0mass%未満では、十分な鉄損低減効果が得られにくい。一方、8.0mass%を超えると、加工性が著しく低下し、圧延して製造することが難しくなり、また、磁束密度も低下する傾向にある。よって、Siは2.0〜8.0mass%の範囲とすることが好ましい。
より好ましくは2.5〜4.0mass%の範囲である。
Mn:0.005〜1.0mass%
Mnは、熱間加工性を改善するのに有効な元素であるが、0.005mass%未満では、上記効果は得られず、一方、1.0mass%を超えると、磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.005〜1.0mass%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは0.01〜0.2mass%の範囲である。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材の上記成分以外の基本成分は、二次再結晶を起こさせるためにインヒビタを利用する場合と、利用しない場合とで別れる。
二次再結晶を起こさせるためにインヒビタを用いる場合には、例えば、AlN系インヒビタを利用するときには、AlおよびNをそれぞれAl:0.01〜0.065mass%、N:0.005〜0.012mass%の範囲で含有させることが好ましく、また、MnS・MnSe系インヒビタを利用するときには、Seおよび/またはSを、それぞれS:0.005〜0.03mass%、Se:0.005〜0.03mass%の範囲で含有させることが好ましい。
一方、二次再結晶を起こさせるためにインヒビタを利用しない場合には、インヒビタ形成成分であるAl,N,SおよびSeは、それぞれAl:0.0100mass%以下、N:0.0050mass%以下、S:0.0050mass%以下、Se:0.0050mass%以下に低減するのが好ましい。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材は、上記した基本成分の他に、磁気特性の改善を目的として、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.03〜1.50mass%、Sn:0.01〜1.50mass%、Sb:0.005〜1.50mass%、Cu:0.03〜3.0mass%、P:0.03〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.10mass%およびCr:0.03〜1.50mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有させてもよい。
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるのに有用な元素である。しかし、0.03mass%未満では上記効果が小さく、一方、1.50mass%を超えると、二次再結晶が不安定となり、磁気特性が劣化する。また、Sn,Sb,Cu,P,MoおよびCrは、磁気特性の向上に有用な元素であるが、いずれも上記の下限値未満では磁気特性向上効果が小さく、一方、上記した各上限値を超えると、二次再結晶粒の発達が阻害されるようになるため、それぞれ上記範囲で含有させることが好ましい。
本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材において、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、Cは一次再結晶焼鈍で脱炭され、Al,N,SおよびSeは仕上焼鈍において純化されるため、仕上焼鈍後の鋼板では、これらの成分は不可避的不純物程度の含有量に低減される。
次に、上記成分組成を有する鋼素材(スラブ)を用いて、方向性電磁鋼板を製造する方法について説明する。
成分組成を上記適正範囲に調整したスラブは、その後、常法に従って所定の温度に再加熱し、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、その後、上記冷延板に、脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、焼鈍分離剤を塗布した後、二次再結晶と純化のための仕上げ焼鈍を施して方向性電磁鋼板とする。なお、脱炭は、上記一次再結晶焼鈍を湿潤雰囲気とすることで行うことができるが、別途行ってもよい。
なお、本発明の方向性電磁鋼板は、その表面が鏡面化(平滑化)したものであることが必要であるが、鏡面化を達成する手段としては、従来のフォルステライト被膜を形成させた後、機械研磨や化学研磨、電解研磨などを適用して行ってもよいし、フォルステライト被膜を形成させない焼鈍分離剤、例えば、主体のMgOにLi,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,Fe,Ni,Sn,SbおよびBi等の塩化物、酸化物または水酸化物を添加した焼鈍分離剤、または、MgOの比率を低減し、AlやCaSiO等の比率を高めた焼鈍分離剤などを使用してもよい。また、フォルステライト被膜を形成させない焼鈍分離剤を使用した場合でも、平滑性をより高めるため、さらに機械研磨や化学研磨、電解研磨などを施してもよい。
上記仕上焼鈍における二次再結晶焼鈍後の純化焼鈍は、二次再結晶を起こさせるためにインヒビタを利用している場合には、最高到達温度を1100℃以上とする必要があり、均熱時間は3hr以上とするのが好ましい。1100℃未満の温度では、析出物が分解して鋼板表面まで拡散することができないため、十分な純化が得られないからである。
一方、二次再結晶にインヒビタを利用しない場合には、窒素などが十分に低減できれば、必ずしも純化焼鈍は必要ではないが、良好なフォルステライト被膜を形成させるためには、1100℃以上の高温焼鈍を施すことが好ましい。
次に、金属中間層の形成方法について説明する。
金属中間層の形成する材料には金属粉末を用いる。この金属粉末は、特に限定されず、Fe,Ti,Al,NiやCo等の純金属やそれらの合金など幅広い成分組成の粉末を使用することができる。これらの金属粉末は、単独で用いてもよいし、複数の種類の粉末を混合して用いてもよい。
金属粉末を溶融させるための熱エネルギーの投入手段としては、電子ビームやレーザビーム等の高エネルギービームを用いることが好ましい。これらの手段であれば、素材への熱エネルギー投入を抑制しつつ、金属粉末に熱エネルギーを集中的に投入することができるので、素材よりの融点の高い金属であっても中間層として形成することができるからである。投入する熱エネルギー量は、ビーム出力、走査速度を調整しながら適正条件を見極めればよい。
鋼板表面への金属粉末の供給および溶融は、鋼板表面に金属粉末をノズル等から供給し、ローラやブレード等を用いて粉末を均一に敷き詰めた後、上記した手段で溶融処理を行ってもよいし、高エネルギービームを照射しながら、鋼板上の該ビーム照射部に金属粉末を供給し、供給と溶融を同時に行う方法を採用してよい。溶かした金属粉末を吹き付けるいわゆる「溶射」と比較すると、溶射の場合は、溶射範囲内の粒子密度が均一でないため、均一な被膜形成に課題があり、均一に鋼板表面上に金属粉末を供給する本技術の方が均一な被膜を形成し易い。さらに、本技術では、材料を鋼板上に直接供給することから、歩留りの点でも有利である。
鋼板表面に形成する金属中間層の厚みは、粉末の供給量(敷き詰める場合は厚み、照射する場合は射出量)を調整することによって制御すればよいが、0.05〜5.0μmの範囲とするのが好ましい。
なお、金属粉末の平均粒径は、先述したように、密着性を確保する観点から0.1μm以上、磁気特性を確保する観点から10μm以下とするのが好ましい。
また、本発明の金属中間層の形成は、金属粉末の溶融させることで行うことがポイントである。金属粉末表面に有機結合剤を表面にコーティングし、焼結させて中間層を形成させた場合、有機物の存在が被膜密着性を劣化させるためである。
鋼板の表面(素地)上に、金属中間層を形成した方向性電磁鋼板は、その後、公知の方法で、公知の張力付与被膜(絶縁被膜)を被成すればよく、例えば、コロイダルシリカと、リン酸マグネシウムやリン酸アルミニウム等のリン酸塩からなる張力付与被膜を好適に用いることができる。なお、上記張力付与被膜の塗布・焼付は、仕上焼鈍後の平坦化焼鈍と同一の工程で行ってもよいし、別の工程で行ってもよい。
上記のようにして張力付与被膜を形成した鋼板に、さらに、さらなる鉄損低減を目的として、電子ビームやレーザ、プラズマ炎等を照射して、磁区細分化処理を施してもよい。また、製造工程の任意の段階で、鋼板表面にエッチングや歯形ロール等を用いて一定の間隔の溝を形成し、磁区細分化処理を施してもよい。
C:0.05mass%、Si:3.0mass%、Mn:0.02mass%、Al:0.02mass%、N:0.01mass%、S:0.005mass%およびSe:0.01mass%からなる成分組成を有し、インヒビタ形成成分を含む鋼スラブを常法に従って熱間圧延し、冷間圧延して最終板厚が0.23mmの冷延板とした後、常法に従って脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、MgOを主成分とした焼鈍分離剤を塗布した後、二次再結晶焼鈍と、均熱温度1200℃で10hr均熱保持する純化焼鈍からなる仕上焼鈍を施し、鋼板表面にフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板とした。次いで、上記方向性電磁鋼板の表面に、電解研磨してフォルステライト被膜を除去する鏡面化処理を施した。なお、上記方向性電磁鋼板の一部については、鏡面化処理を施さずに、フォルステライト被膜を有するままとし、比較材とした。
次いで、上記鏡面化処理した方向性電磁鋼板の表面に、種々の金属粉末を鋼板表面の全面に供給し、ローラで均した後、上記金属粉末に対して、適正な投入エネルギーになるようにビームの偏向速度を調整しながら、出力6kWで電子ビーム照射を行い、金属粉末を溶融させ、金属中間層を形成した。なお、表3には、この中間層の形成に使用した金属粉末の種類と、その平均粒径、および、1m×1mの面積に厚み1.0μmの金属中間層を形成するのに必要な処理時間(電子ビーム照射時間)を示した。
その後、上記金属中間層の上に、60%のコロイダルシリカと40%の燐酸マグネシウムを主成分とする張力付与被膜を塗布・焼き付けして製品板とした。
斯くして得た各製品板からエプスタイン試験片を切り出し、820℃×3Hrの歪取焼鈍を施した後、鉄損W17/50、磁束密度Bおよび被膜密着性評価のため曲げ剥離径の測定を行い、その結果を表3に示した。なお、フォルステライト被膜を有する比較材についても同様の測定を行い表3に示した。
Figure 2018154881
表3から、従来のフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板(No.1)に対して、鏡面化した表面に、本発明に適合する条件で様々な金属粉末を使用して金属中間層を形成した方向性電磁鋼板(No.2〜8)は、いずれも高歩留りかつ短時間で金属中間層の形成が可能であり、しかも、No.1と同等レベルの被膜密着性を有した上で、さらに、良好な鉄損特性を有していることがわかる。
実施例1と同じ鋼スラブを使用し、常法に従って熱間圧延し、冷間圧延して最終板厚が0.27mmの冷延板とした後、常法に従って脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍し、MgOを主成分とし塩化アンチモンを1mass%添加した焼鈍分離剤を塗布した後、二次再結晶焼鈍と、均熱温度1200℃で10hr均熱保持する純化焼鈍からなる仕上焼鈍を施し、フォルステライト被膜のない平滑な表面を有する方向性電磁鋼板とした。
次いで、上記鏡面化した方向性電磁鋼板の表面上にレーザビームを照射しながら、上記レーザビームの周辺に配設したノズルから金属粉末をレーザビーム照射エリアに連続的に噴射し、レーザビームの熱で金属粉末を溶融させて金属中間層を形成した。なお、表4には、上記中間層の形成に使用した金属粉末の種類、平均粒径を示した。
その後、上記金属中間層の上に、60mass%のコロイダルシリカと40mass%の燐酸マグネシウムを主成分とする張力付与被膜を塗布・焼き付けした後、圧延方向に4mmピッチの間隔で電子ビーム照射を行う磁区細分化処理を施して製品板とした。なお、比較材として、従来の方法でフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板を作製し、同様の測定を行い表4に示した。
Figure 2018154881
表4から、金属粉末の平均粒径が本発明の範囲内の場合には、比較材のNo.1に対して、同レベルの被膜密着性を有した上で、優れた鉄損特性を有していることがわかる。特に、本発明の範囲内でも、金属粉末の平均粒径が0.1〜10μmのものを使用したものは、最も良好な鉄損特性を有していることがわかる。

Claims (3)

  1. 鏡面化処理を施した方向性電磁鋼板の素地上に、上記素地と組成が異なる金属中間層を有し、かつ、上記金属中間層の上に張力付与被膜を有する方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    上記素地と張力付与被膜との間の金属中間層を、素地上に供給した平均粒径が0.1μm以上の金属粉末を溶融して形成することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 上記金属粉末の溶融手段が、電子ビーム照射あるいはレーザビーム照射であることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 上記金属中間層の表面粗さを算術平均粗さRaで0.1〜10μmの範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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