JP2020109187A - 化合物、組成物、表面処理剤、物品および化合物の製造方法 - Google Patents

化合物、組成物、表面処理剤、物品および化合物の製造方法 Download PDF

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健二 石関
伊藤 昌宏
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昌宏 伊藤
弘賢 山本
Hiromasa Yamamoto
弘賢 山本
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Abstract

【課題】指紋除去性および耐摩擦性に優れた表面層を形成できる化合物、組成物、表面処理剤、物品および化合物の製造方法の提供。【解決手段】R1−O−(XO)m−Y−C(R2)3で表されることを特徴とする化合物。R1は、アルキル基である。Xは、アルキレン基である。mは、2以上の整数である。Yは、単結合または2価の連結基である。R2は、−L1−Si(R)nL3−nである。Rは、1価の炭化水素基である。Lは、加水分解性基または水酸基である。nは、0〜2の整数である。L1は、−O−を有していてもよいアルキレン基である。【選択図】なし

Description

本発明は、化合物、組成物、表面処理剤、物品および化合物の製造方法に関する。
表面処理剤によって基材の表面に撥水撥油性を付与すると、基材の表面の汚れを拭き取りやすくなり、汚れの除去性が優れる。そのため、表面処理剤は、たとえば、タッチパネル等の指で触れる面を構成する部材に好適に使用される。
特許文献1には、ポリ(オキシアルキレン)鎖の両側に、環状シロキサンやイソシアヌレート環を有し、環状シロキサンのケイ素原子やイソシアヌレート環の窒素原子を起点として延びる基の各末端に、複数の加水分解性基を有するシラン化合物が具体的に開示されている。
国際公開第2016/199908号
近年、シラン化合物を用いて形成されてなる表面層に対する要求性能が高くなっている。たとえば、表面層が指で触れる面を構成する部材に適用される場合には、表面に付着した指紋を拭き取りによって容易に除去できる性能(指紋除去性)および繰り返し摩擦されても指紋除去性が低下しにくい性能(耐摩擦性)に優れる表面層が求められる。
本発明者らが特許文献1に記載の上記シラン化合物を用いて基材の表面に表面層を形成したところ、指紋除去性および耐摩擦性のいずれも改良の余地があることを知見した。
本発明は、上記課題に鑑みて、指紋除去性および耐摩擦性に優れた表面層を形成できる化合物、組成物、表面処理剤、物品および化合物の製造方法の提供を目的とする。
本発明は、下記[1]〜[3]の構成を有する化合物、組成物および物品を提供する。
[1] 式1で表されることを特徴とする化合物。
−O−(XO)−Y−C(R 式1
ただし、式中、
は、アルキル基である。
Xは、アルキレン基である。
mは、2以上の整数である。
Yは、単結合または2価の連結基である。
は、−L−Si(R)3−nである。Rは、1価の炭化水素基である。Lは、加水分解性基または水酸基である。nは、0〜2の整数である。Lは、−O−を有していてもよいアルキレン基である。
[2] 上記Xの炭素数が1〜6である、上記[1]に記載の化合物。
[3] 上記Rの炭素数が1〜10である、上記[1]または[2]に記載の化合物。
[4] 上記Lが炭素数1〜4のアルコキシ基である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物。
[5] 上記Lの炭素数が1〜10である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の化合物。
[6] 上記nが0である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の化合物。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の化合物と、液状媒体とを含むことを特徴とする組成物。
[8] 基材と、上記基材上に、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の化合物または上記[7]に記載の組成物から形成されてなる表面層と、を有することを特徴とする物品。
[9] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の化合物を含む表面処理剤。
[10] 式2で表されることを特徴とする化合物。
−O−(XO)−Y−C(L−CH=CH 式2
ただし、式中、
は、アルキル基である。
Xは、アルキレン基である。
mは、2以上の整数である。
Yは、単結合または2価の連結基である。
は、−O−を有していてもよいアルキレン基、単結合または−O−である。
[11] 式2で表される化合物をHSi(R)3−nとヒドロシリル化反応させる、式1で表される化合物の製造方法。
−O−(XO)−Y−C(R 式1
−O−(XO)−Y−C(L−CH=CH 式2
ただし、式中、
は、アルキル基である。
Xは、アルキレン基である。
mは、2以上の整数である。
Yは、単結合または2価の連結基である。
は、−L−Si(R)3−nである。Rは、1価の炭化水素基である。Lは、加水分解性基または水酸基である。nは、0〜2の整数である。Lは、−O−を有していてもよいアルキレン基である。
は、−O−を有していてもよいアルキレン基、単結合または−O−である。
本発明によれば、指紋除去性および耐摩擦性に優れた表面層を形成できる化合物、組成物、表面処理剤、物品および化合物の製造方法を提供できる。
本明細書において、式1で表される化合物を化合物1と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
本明細書において、「アルキレン基がA基を有していてもよい」という場合、アルキレン基は、アルキレン基中の炭素−炭素原子間にA基を有していてもよいし、アルキレン基−A基−のように末端にA基を有していてもよい。
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「表面層」とは、基材上に形成される層を意味する。なお、表面層は、基材の直上に形成されてもよいし、基材の表面に形成された他の層を介して基材上に形成されてもよい。
化合物1を用いて形成される表面層は、指紋除去性および耐摩擦性に優れる。その理由としては、化合物1はポリ(オキシアルキレン)鎖の片末端側にのみに−L−Si(R)3−nで表される基を有し、かつ、炭素原子を分岐点として複数の−L−Si(R)3−nで表される基を有する点にあると推測される。
なお、特許文献1で具体的に開示されている上記シラン化合物は、ポリ(オキシアルキレン)鎖の両側に、環状シロキサンまたはイソシアヌレート環というかさ高い基を介して複数の加水分解性基が配置されているため、分子自体の専有面積が大きいため、所望の効果が得られないと推測される。
〔化合物〕
化合物1は、式1で表される。
−O−(XO)−Y−C(R 式1
は、アルキル基である。すなわちヘテロ原子を有さない炭化水素基である。
アルキル基中の炭素数は、表面層の指紋除去性がより優れる点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい。
アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、耐摩擦性がより優れる点から、直鎖状が好ましい。
Xは、アルキレン基である。すなわちヘテロ原子を有さない炭化水素基である。
アルキレン基の炭素数は、指紋除去性がより優れる点から、1〜6が好ましく、2〜4が特に好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、耐摩擦性がより優れる点から、直鎖状が好ましい。
mは、2以上の整数であり、耐摩擦性がより優れる点から、2〜150の整数が好ましく、10〜100の整数が特に好ましい。
なお、複数のXO(アルキレンオキシ基)は、同一であっても異なっていてもよい。つまり、(XO)は、異なる2種以上のXOから構成されていてもよい。2種以上のXOとしては、炭素数の異なる2種以上のXO、炭素数が同じであっても側鎖の有無や側鎖の種類が異なる2種以上のXOが挙げられる。
2種以上のXOの結合順序は限定されず、ランダム、交互、ブロックに配置されてもよい。
Yは、単結合または2価の連結基である。
2価の連結基としては、たとえば、2価の炭化水素基(2価の飽和炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基であってもよい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、たとえば、アルキレン基が挙げられる。炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6が特に好ましい。また、2価の芳香族炭化水素基は、炭素数5〜20が好ましく、たとえば、フェニレン基が挙げられる。それ以外にも、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基であってもよい。)、2価の複素環基、−O−、−S−、−SO−、−N(R)−、−C(O)−、−Si(R−および、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。Rは、水素原子またはアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)である。Rは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、または、フェニル基である。
なお、上記これらを2種以上組み合わせた基としては、たとえば、−C(O)N(R)−、−C(O)N(R)−アルキレン基−、−アルキレン基−C(O)N(R)−アルキレン基−、−O−アルキレン基−が挙げられる。
は、−L−Si(R)3−nである。式1中、3個あるRは、同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や化合物1の製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。
は、−O−を有していてもよいアルキレン基である。
アルキレン基が−O−を有する場合、C側の末端に−O−を有することが好ましい。
−O−を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましい。
Rは、1価の炭化水素基であり、1価の飽和炭化水素基が好ましい。炭素数は、1〜6が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
Lは、加水分解性基または水酸基である。
Lの加水分解性基は、加水分解反応により水酸基となる基である。すなわち、Si−Lで表される加水分解性シリル基は、加水分解反応によりSi−OHで表されるシラノール基となる。シラノール基は、さらにシラノール基間で反応してSi−O−Si結合を形成する。また、シラノール基は、基材の表面の水酸基(基材−OH)と脱水縮合反応して、化学結合(基材−O−Si)を形成できる。
加水分解性基の具体例としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、イソシアナート基(−NCO)が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
Lとしては、化合物1の製造がより容易である点から、炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子が好ましい。Lとしては、塗布時のアウトガスが少なく、化合物1の保存安定性がより優れる点から、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、化合物1の長期の保存安定性が必要な場合にはエトキシ基が特に好ましく、塗布後の反応時間を短時間とする場合にはメトキシ基が特に好ましい。
nは、0〜2の整数である。
nは、0または1が好ましく、0が特に好ましい。Lが複数存在することによって、表面層の基材への密着性がより強固になる。
nが1以下である場合、1分子中に存在する複数のLは同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や化合物1の製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。nが2である場合、1分子中に存在する複数のRは同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や化合物1の製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。
化合物1の具体例としては、以下が挙げられる。
化合物1は、公知の製造方法によって製造できる。たとえば、化合物1は、化合物2をHSi(R)3−nとヒドロシリル化反応させることによって製造できる。
−O−(XO)−Y−C(L−CH=CH 式2
式中、R、X、Y、mの定義は上述の通りであり、Lは−O−を有していてもよいアルキレン基、単結合または−O−であり、L−CH=CHがヒドロシリル化されると化合物1のRになる。化合物2は、たとえばYが−アルキレン基−C(O)NH−アルキレン基−の場合、R−O−(XO)−アルキレン基−C(O)OR(Rは炭素数1〜6のアルキル基。)を、NH−アルキレン基−C(L−CH=CHと反応させて製造できる。
〔組成物〕
本発明の組成物(以下、「本組成物」ともいう。)は、化合物1と、液状媒体とを含む。
化合物1は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
化合物1の含有量は、本組成物の全質量に対して、0.001〜30質量%が好ましく、0.01〜20質量%が特に好ましい。
液状媒体の具体例としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、フッ素系有機溶媒および非フッ素系有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
フッ素系有機溶媒の具体例としては、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコールが挙げられる。
フッ素化芳香族化合物の具体例としては、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
フルオロアルキルエーテルは、炭素数4〜12の化合物が好ましく、たとえば、CFCHOCFCFH(AE−3000:製品名、旭硝子社製)、COCH(ノベック−7100:製品名、3M社製)、COC(ノベック−7200:製品名、3M社製)、CCF(OCH)C(ノベック−7300:製品名、3M社製)が挙げられる。
フッ素化アルキルアミンの具体例としては、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミンが挙げられる。
フルオロアルコールの具体例としては、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられる。
非フッ素系有機溶媒としては、水素原子および炭素原子のみからなる化合物、および、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物が好ましく、具体的には、アルコール系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒が挙げられる。
アルコール系有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。炭化水素系有機溶媒の具体例としては、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサンが挙げられる。
ケトン系有機溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
エーテル系有機溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
エステル系有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。
液状媒体の含有量は、本組成物の全質量に対して、70〜99.999質量%が好ましく、80〜99.99質量%が特に好ましい。
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、化合物1と液状媒体以外の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、化合物1の製造工程で生成した副生物、未反応の原料等の製造上の不可避の化合物が挙げられる。
また、加水分解性シリル基の加水分解と縮合反応を促進する酸触媒や塩基性触媒等の添加剤が挙げられる。酸触媒の具体例としては、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、燐酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸が挙げられる。塩基性触媒の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられる。
他の成分の含有量は、化合物1に対して、0〜10質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%が特に好ましい。
〔物品〕
本発明の物品は、基材と、基材上に化合物1または本組成物から形成されてなる表面層と、を有する。
すなわち化合物1を含む表面処理剤は物品の表面処理のために用いられる。
表面層には、化合物1の加水分解反応および縮合反応を介して得られる化合物が含まれる。
表面層の膜厚は、1〜100nmが好ましく、1〜50nmが特に好ましい。表面層の膜厚は、薄膜解析用X線回折計(ATX−G:製品名、RIGAKU社製)を用いて、X線反射率法によって反射X線の干渉パターンを得て、この干渉パターンの振動周期から算出できる。
基材は、撥水撥油性の付与が求められている基材であれば特に限定されない。基材の材料の具体例としては、金属、樹脂、ガラス、サファイア、セラミック、石、および、これらの複合材料が挙げられる。ガラスは化学強化されていてもよい。基材は、国際公開第2011/016458号の段落0089〜0095に記載の化合物やSiO等で下地処理されていてもよい。
基材としては、タッチパネル用基材およびディスプレイ基材が好ましく、タッチパネル用基材が特に好ましい。タッチパネル用基材は、透光性を有するのが好ましい。「透光性を有する」とは、JIS R3106:1998(ISO 9050:1990)に準じた垂直入射型可視光透過率が25%以上であるのを意味する。タッチパネル用基材の材料としては、ガラスまたは透明樹脂が好ましい。
また、基材としては、携帯電話(たとえば、スマートフォン)、携帯情報端末、ゲーム機、リモコン等の機器における外装部分(表示部を除く)に使用する、ガラスまたは樹脂フィルムも好ましい。
上記物品は、たとえば、下記の方法で製造できる。
・化合物1または本組成物を用いたドライコーティング法によって基材の表面を処理して、上記物品を得る方法。
・ウェットコーティング法によって本組成物を基材の表面に塗布し、乾燥させて、上記物品を得る方法。
なお、ウェットコーティング法においては、化合物1を酸触媒や塩基性触媒等を用いて予め加水分解しておき、加水分解した化合物と液状媒体とを含む組成物を使用することもできる。
ドライコーティング法の具体例としては、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法が挙げられる。これらの中でも、化合物1の分解を抑える点、および、装置の簡便さの点から、真空蒸着法が好適である。真空蒸着時には、鉄や鋼等の金属多孔体に化合物1または本組成物を含浸させたペレット状物質を使用してもよい。
ウェットコーティング法の具体例としては、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法が挙げられる。
物品は、化合物1または本組成物から形成されてなる表面層を有する面とは別の面に、他の化合物または他の化合物を含む組成物から形成されてなる表面層を有していてもよい。
他の化合物としては、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖、ならびに、ケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基のいずれか一方または両方を有する含フッ素エーテル化合物が挙げられる。含フッ素エーテル化合物としては、化合物3が挙げられる。
[A−O−Z−(RO)−][−SiR3−n 式3
Aは、ペルフルオロアルキル基または−Q[−SiR3−nである。
Qは、(k+1)価の連結基である。
kは1〜10の整数である。
R、Lおよびnの定義はそれぞれ、式1のR、Lおよびnと同義である。
は、単結合、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜20のオキシフルオロアルキレン基または1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜20のポリ(オキシフルオロアルキレン)基である。
は、ペルフルオロアルキレン基である。
rは、2〜200の整数であり
は、(j+g)価の連結基である。
jおよびgはそれぞれ独立に、1以上の整数である。
含フッ素エーテル化合物は、市販品を使用することもできる。たとえば信越化学工業社製のKY−100シリーズ(KY−178、KY−185、KY−195等)、ダイキン工業社製のオプツール(登録商標)DSX、オプツール(登録商標)AES、オプツール(登録商標)UF503、オプツール(登録商標)UD509、旭硝子社製のAfluid(登録商標)S550が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、各成分の配合量は、質量基準を示す。例1〜5のうち、例1および2が実施例、例3〜5が比較例である。
〔評価方法〕
(指紋除去性)
評価サンプルの表面層に油性のフェルトペン(マッキー極太黒色:製品名、ゼブラ社製)で線を引いた後、表面層に蒸留水を3分間かけ続けた後に、油性インク(線)の付着状態を目視で観察し、指紋除去性(初期の指紋除去性)を以下の基準にしたがって評価した。
◎(優良):油性インクの除去率が90%以上である。
○(良好):油性インクの除去率が60%以上90%未満である。
△(可) :油性インクの除去率が30%以上60%未満である。
×(不良):油性インクの除去率が30%未満である。
(耐摩擦性)
耐摩擦性試験後の評価サンプルについて、上記指紋除去性の評価試験を実施して、同様の評価基準にて指紋除去性を評価した。耐摩擦試験後の指紋除去性に優れる程、摩擦による性能の低下が小さく、耐摩擦性に優れる。
<耐摩擦性試験>
表面層について、JIS L0849:2013(ISO 105−X12:2001)に準拠して往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、セルロース製不織布(ベンコットM−3:製品名、旭化成社製)を荷重:1kg、摩擦長:4cm、速度:30rpmで1万回往復させた。
〔例1〕
(例1−1)
公開特許公報第2008/101949号の段落[0036]〜[0037]の方法に従い、化合物X1(ユニオックス(登録商標)M−1000:製品名、日油社製)から化合物X2を合成した。
CHO(CHCHO)H 式X1
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物X1の数平均分子量:1,000。
CHO(CHCHO)n−1CHC(O)OCH 式X2
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物X2の数平均分子量:1,030。
化合物X2のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.4(3H)、3.5〜3.7(84H)、3.7(3H)、4.2(2H)。
(例1−2)
200mLのナスフラスコに、テトラヒドロフランの50.0gを入れ、0℃に冷却した。ナスフラスコ内に0.7mol/Lのアリルマグネシウムブロミドの30mLを滴下し、例1−1で得た化合物X2の10.0gを滴下し、さらに2時間撹拌した1mol/Lの塩酸水溶液の50mLを混合物に入れて反応を停止させた。ジエチルエーテルの50mLで5回抽出し、濃縮して集めた粗液をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:酢酸エチル、ヘキサン)で精製し、化合物X3の9.3g(収率89%)を得た。
CHO(CHCHO)n−1CHC(OH)(CHCH=CH 式X3
化合物X3のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.3〜2.4(4H)、3.4(3H)、3.5〜3.7(86H)、5.1〜5.2(4H)、5.8〜5.9(2H)。
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物X3の数平均分子量:1,080。
(例1−3)
50mLのナスフラスコに、例1−2で得た化合物X3の5.0g、臭化アリルの3.0g、テトラブチルアンモニウムヨージドの0.06gおよび水酸化カリウムの1.5gを入れ、80℃で5時間撹拌した。ナスフラスコ内の混合物を25℃まで冷却し、ジエチルエーテルの20gを入れ、2回水洗した。得られた粗液をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:酢酸エチル、ヘキサン)で精製し、化合物2−1の4.8g(収率93%)を得た。
CHO(CHCHO)n−1CHC(OCHCH=CH)(CHCH=CH 式2−1
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物2−1の数平均分子量:1,120。
化合物2−1のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.3〜2.4(4H)、3.4(3H)、3.5〜3.7(88H)、5.0〜5.2(6H)、5.7〜5.9(3H)。
(例1−4)
10mLのガラス製サンプル瓶に、例1−3で得た化合物2−1の2.0g、白金/1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量:2質量%)の0.1g、HSi(OCHの1.3g、アニリンの0.03g、トルエンの2.0gを入れ、40℃で8時間撹拌した。反応終了後、混合物中の溶媒等を減圧留去し、1.0μm孔径のメンブランフィルタでろ過し、化合物1−1の2.6g(収率98%)を得た。
CHO(CHCHO)n−1CHC{OCHCHCHSi(OCH}{CHCHCHSi(OCH 式1−1
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物1−1の数平均分子量:1,490。
化合物1−1のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.6〜0.8(6H)、1.6〜2.0(10H)、3.4(3H)、3.5〜3.7(115H)。
〔例2〕
(例2−1)
50mLのナスフラスコに、例1−1で得た化合物X2の5.0gおよび化合物X4の1.0gを入れ、12時間撹拌した。NMRから、化合物X2がすべて化合物2−2に変換していることを確認した。また、副生物であるメタノールが生成していた。得られた溶液をAC−2000の6.0gで希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:酢酸エチル、ヘキサン)で精製し、化合物2−2の5.1g(収率90%)を得た。
NCHC(CHCH=CH 式X4
CHO(CHCHO)n−1CHC(O)NHCHC(CHCH=CH 式2−2
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物2−2の数平均分子量:1,160。
化合物2−2のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):2.4(6H)、3.4(5H)、3.5〜3.7(84H)、3.9(2H)、5.2(6H)、5.9−6.2(3H)。
(例2−2)
化合物2−1を例2−1で得た化合物2−2の2.0gに変更した以外は例1−4と同様にして、化合物1−2の2.6g(収率99%)を得た。
CHO(CHCHO)n−1CHC(O)NHCHC{CHCHCHSi(OCH 式1−2
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物1−2の数平均分子量:1,530。
化合物1−2のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.7(6H)、1.3〜1.7(12H)、3.4(5H)、3.5〜3.7(111H)、3.9(2H)。
〔例3〕
(例3−1)
例1−2で得た化合物X3を化合物X1の5.0gに変更した以外は例1−3と同様にして、化合物X5の2.6g(収率98%)を得た。
CHO(CHCHO)CHCH=CH 式X5
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物X5の数平均分子量:1,040。
化合物X5のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):3.4(3H)、3.5〜3.7(90H)、5.0〜5.1(2H)、5,7〜5.8(1H)。
(例3−2)
例1−3で得た化合物2−1を例3−1で得た化合物X5の2.0gに変更した以外は例1−4と同様にして、混合物X6の2.2g(収率99%)を得た。混合物X6は下記化合物X6aと化合物X6bの混合物(化合物X6a:化合物X6b=96:4(質量比))であった。
CHO(CHCHO)CHCHCHSi(OCH 式X6a
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物X6aの数平均分子量:1,160。
CHO(CHCHO)CH=CHCH 式X6b
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物X6bの数平均分子量:1,040。
化合物X6aのNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.6〜0.7(2H)、1.7〜1.8(2H)、3.4(3H)、3.5〜3.7(99H)。
化合物X6bのNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):1.6(3H)、3.4(3H)、3.5〜3.7(88H)、4.4〜4.8(1H)、6.0〜6.2(1H)。
〔例4〕
国際公開第2016/019908号の段落[0155](実施例1)の方法に従い、化合物X7(PEG#1000:製品名、日油株式会社製)から化合物X8を合成した。
HO(CHCHO)H 式X7
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物X7の数平均分子量:990。
下式X8中、繰り返し単位数nの平均値:22、化合物X8の数平均分子量:2,430。
化合物X8のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.1(24H)、0.5−0.8(28H)、1.6−1.8(4H)、3.5〜3.7(146H)。
〔例5〕
10mLのガラス製サンプル瓶に、例1−2で得た化合物X3の2.0g、白金/1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量:2質量%)の0.1g、HSi(OCHの1.3g、アニリンの0.03g、トルエンの2.0gを入れ、40℃で8時間撹拌した。反応終了後、混合物中の溶媒等を減圧留去し、1.0μm孔径のメンブランフィルタでろ過し、化合物X9の2.4g(収率98%)を得た。
CHO(CHCHO)n−1CHC(OH){CHCHCHSi(OCH 式X9
繰り返し単位数nの平均値:22、化合物X9の数平均分子量:1,320。
得られた化合物X9のNMRスペクトル;
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS) δ(ppm):0.6〜0.7(4H)、1.6〜1.8(4H)、1.8〜1.9(4H)、3.4(3H)、3.5〜3.7(104H)。
〔評価サンプルの作製〕
各例によって得られた化合物または混合物を用いて、以下のウェットコーティング法にて基材の表面処理を行い、基材(化学強化ガラス)の表面に表面層が形成されてなる評価サンプルを得た。
得られた評価サンプルを用いて、上述の評価試験を実施し、結果を表1に示す。
各例によって得られた化合物または混合物と、イソプロピルアルコール(溶媒)とを混合して、化合物または混合物の濃度が1.5質量%であるウェットコーティング用の組成物を得た。
各組成物を基材にワイプコートし、塗膜を80℃で30分間乾燥させ、イソプロピルアルコールにて拭き上げることによって、基材の表面に表面層を有する評価サンプル(物品)を得た。
表1の通り、化合物1を用いて形成された表面層は、初期の指紋除去性および耐摩擦性に優れることを確認した(例1および2)。
本発明の化合物は、撥水撥油性の付与が求められている各種の用途に用いることができる。たとえば、タッチパネル等の表示入力装置のコート;透明なガラス製または透明なプラスチック製部材の表面保護コート、キッチン用防汚コート;電子機器、熱交換器、電池等の撥水防湿コートや防汚コート;トイレタリー用防汚コート;導通しながら撥液が必要な部材へのコート;熱交換機の撥水・防水・滑水コート;振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート等に用いることができる。より具体的な使用例としては、ディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、あるいはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの、携帯電話(たとえば、スマートフォン)、携帯情報端末、ゲーム機、リモコン等の機器のタッチパネルシートやタッチパネルディスプレイ等の人の指または手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器のコート(たとえば、表示部等に使用するガラスまたはフィルムに対するコート、ならびに、表示部以外の外装部分に使用するガラスまたはフィルムに対するコート)、トイレ、風呂、洗面所、キッチン等の水周りの装飾建材のコート、配線板用防水コーティング、熱交換機の撥水・防水・滑水コート、太陽電池の撥水コート、プリント配線板の防水・撥水コート、電子機器筐体や電子部品用の防水・撥水コート、送電線の絶縁性向上コート、各種フィルタの防水・撥水コート、電波吸収材や吸音材の防水性コート、風呂、厨房機器、トイレタリー用防汚コート、振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート、機械部品、真空機器部品、ベアリング部品、自動車等の輸送機器用部品、工具等の表面保護コート等が挙げられる。

Claims (11)

  1. 式1で表されることを特徴とする化合物。
    −O−(XO)−Y−C(R 式1
    ただし、式中、
    は、アルキル基である。
    Xは、アルキレン基である。
    mは、2以上の整数である。
    Yは、単結合または2価の連結基である。
    は、−L−Si(R)3−nである。Rは、1価の炭化水素基である。Lは、加水分解性基または水酸基である。nは、0〜2の整数である。Lは、−O−を有していてもよいアルキレン基である。
  2. 前記Xの炭素数が1〜6である、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記Rの炭素数が1〜10である、請求項1または2に記載の化合物。
  4. 前記Lが炭素数1〜4のアルコキシ基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
  5. 前記Lの炭素数が1〜10である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
  6. 前記nが0である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物と、液状媒体とを含むことを特徴とする組成物。
  8. 基材と、前記基材上に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物または請求項7に記載の組成物から形成されてなる表面層と、を有することを特徴とする物品。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を含む表面処理剤。
  10. 式2で表されることを特徴とする化合物。
    −O−(XO)−Y−C(L−CH=CH 式2
    ただし、式中、
    は、アルキル基である。
    Xは、アルキレン基である。
    mは、2以上の整数である。
    Yは、単結合または2価の連結基である。
    は、−O−を有していてもよいアルキレン基、単結合または−O−である。
  11. 式2で表される化合物をHSi(R)3−nとヒドロシリル化反応させる、式1で表される化合物の製造方法。
    −O−(XO)−Y−C(R 式1
    −O−(XO)−Y−C(L−CH=CH 式2
    ただし、式中、
    は、アルキル基である。
    Xは、アルキレン基である。
    mは、2以上の整数である。
    Yは、単結合または2価の連結基である。
    は、−L−Si(R)3−nである。Rは、1価の炭化水素基である。Lは、加水分解性基または水酸基である。nは、0〜2の整数である。Lは、−O−を有していてもよいアルキレン基である。
    は、−O−を有していてもよいアルキレン基、単結合または−O−である。
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