JP2020105336A - 熱可塑性樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】流動性に優れ、機械強度、圧入強度に優れる成形品を得ることのできる熱可塑性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、水素結合ドナー(b)と水素結合アクセプター(b’)を含む深共晶溶媒(B)0.1〜20重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関するものである。
熱可塑性樹脂は、機械特性および成形加工性に優れることから、射出成形用途を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などの用途に使用されている。更に近年では、自動車大型部品のモジュール化・軽量化に伴う成形品の薄肉化、電気・電子部品の小型・精密化が進んでおり、成形品の設計への自由度が要求されている。これらの要求に対して、樹脂の流動性が不十分な場合には、薄肉や複雑形状の部品の未充填が起こり得ることや、成形時に高い充填圧力を要するために部品が残留応力を抱えてしまうことから、樹脂の流動性改良が求められている。さらに、各種電気・電子部品の中でも、コネクタ等の小型の電気・電子部品は、アセンブリーする際に端子を圧入することが多く、充分な圧入強度を有することが要求されている。
これに対し、流動性を改良する技術として、ポリアミド樹脂と融点が150℃〜280℃である多価アルコールからなる樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明は、DSI工法やDRI工法といった射出溶着工法に広く使用されるポリアミド樹脂組成物を提供することを主題としているため、かかる樹脂組成物をコネクターに成形した際の圧入強度については評価していない。また、前記技術では、多価アルコールの、熱可塑性樹脂への分散が不十分であるためか依然として流動性が十分ではない。
本発明は、これら従来技術の課題に鑑み、流動性に優れ、機械強度、圧入強度に優れる成形品を得ることのできる熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、主として以下の構成を有する。
[1]熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、水素結合ドナー(b)と水素結合アクセプター(b’)を含む深共晶溶媒(B)0.1〜20重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物。
[2]前記水素結合ドナー(b)がアンモニウム系化合物、リン系化合物、双性イオン、アミノ酸および多価カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド、ポリエステル、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイドおよびポリフェニレンエーテルからなる群より選らばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品。
[1]熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、水素結合ドナー(b)と水素結合アクセプター(b’)を含む深共晶溶媒(B)0.1〜20重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物。
[2]前記水素結合ドナー(b)がアンモニウム系化合物、リン系化合物、双性イオン、アミノ酸および多価カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド、ポリエステル、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイドおよびポリフェニレンエーテルからなる群より選らばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性に優れ、機械強度、圧入強度に優れた成形品を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、[1]熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、水素結合ドナー(b)と水素結合アクセプター(b’)を含む深共晶溶媒(B)0.1〜20重量部を含有する。以下、各成分について説明する。
<樹脂(A)>
本発明の熱可塑性樹脂(A)は、熱可塑性を示す樹脂であればよく、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン、塩化ビニル、オレフィン系樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリアクリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンサルファイド、セルロース誘導体、液晶性樹脂およびこれらの変性樹脂などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂(A)は、熱可塑性を示す樹脂であればよく、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン、塩化ビニル、オレフィン系樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリアクリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンサルファイド、セルロース誘導体、液晶性樹脂およびこれらの変性樹脂などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
ポリアミドの具体的な例としては、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
ポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体の残基を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステルが特に好ましく、ポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。これらを2種以上含有してもよい。これらのポリエステルにおいては、全ジカルボン酸残基に対するテレフタル酸残基の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
また、ポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体およびラクトンから選択された一種以上の残基を含有していてもよい。ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などが挙げられる。ラクトンとしては、例えば、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられる。これらの残基を構造単位とする重合体または共重合体としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリカーボネートは、二官能フェノール系化合物に苛性アルカリおよび溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法などにより得ることができる。ポリカーボネートとしては、芳香族ホモポリカーボネート、芳香族コポリカーボネート等が挙げられる。これらの芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は、1万〜10万の範囲が好適である。
二官能フェノール系化合物としては、例えば、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
スチレン系樹脂としては、例えば、PS(ポリスチレン)、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、AES(アクリロニトリル/エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム/スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体)などが挙げられる。ここで、「/」は共重合体を示し、以下同じである。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、特にABSが好ましい。
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/グルタル酸無水物共重合体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
ポリアリーレンサルファイドとしては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
ポリアリーレンサルファイドは、特公昭45−3368号公報に記載される、比較的分子量の小さな重合体を得る方法、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される、比較的分子量の大きな重合体を得る方法などの通常公知の方法によって製造することができる。得られたポリアリーレンサルファイドを、加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用することも、もちろん可能である。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エ−テル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エ−テル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エ−テル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エ−テル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エ−テル、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載の2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)なども挙げられる。中でも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エ−テルおよびその共重合体が好ましい。
セルロース誘導体としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロースなどを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリアミド、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、およびポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの熱可塑性樹脂(A)は深共晶溶媒(B)との親和性に優れることから、樹脂組成物の流動性がより向上するとともに、成形品の機械特性および圧入強度をより向上させることができる。
本発明の樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(A)の融点は150℃以上330℃未満が好ましい。融点が150℃以上であれば、耐熱性を向上させることができる。一方、融点が330℃未満であれば、樹脂組成物を溶融混練する際の加工温度、および樹脂組成物を成形して成形品を得る際の成形時の加工温度を適度に抑え、深共晶溶媒(B)熱分解を抑制することができる。
ここで、本発明における熱可塑性樹脂(A)の融点は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、熱可塑性樹脂(A)を、溶融状態から20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度と定義する。ただし、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、ピーク強度の最も大きい吸熱ピークの温度を融点とする。
<深共晶溶媒(B)>
本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、深共晶溶媒(B)を含有する。深共晶溶媒(B)とは、水素結合アクセプター(b)と水素結合ドナー(b’)の混合物である。水素結合アクセプター(b)と水素結合ドナー(b’)を混ぜることによって共晶融点降下が起こり、融点が大きく降下している混合物を意味する。
本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、深共晶溶媒(B)を含有する。深共晶溶媒(B)とは、水素結合アクセプター(b)と水素結合ドナー(b’)の混合物である。水素結合アクセプター(b)と水素結合ドナー(b’)を混ぜることによって共晶融点降下が起こり、融点が大きく降下している混合物を意味する。
深共晶溶媒(B)は、イオン液体とは異なる。イオン液体とは、「イオンのみからなる液体」、「100%イオンからなる液体の電解質」、「完全にイオンから成るもの」などと定義されている物質であるが、「深共晶溶媒」は水素結合ドナーを含む点において「イオンのみから成るものでない」ので、物質上の定義において、「イオン液体」ではない。深共晶溶媒は、イオン液体と比較して低コストおよび低環境負荷な原料で構成されているという特徴を有している。また、水素結合アクセプターと水素結合ドナーを含有する混合物である、すなわち水素結合形成能を有していることから、熱可塑性樹脂、中でも水素結合を形成しうる官能基を有しているポリアミド、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテルなどとの親和性に優れる。さらに、深共晶溶媒は低分子で構成されているにもかかわらず低揮発性であることから、溶融混練等の製造工程を経た後も樹脂組成物中に存在することにより、樹脂組成物の流動性がより向上する。そして、流動性が向上すると、成形品の成形時に高い充填圧力を要する必要がないため、残留応力が小さくなり、得られる成形品のクラックや反りを抑制するとともに、圧入強度をより向上させることができる。
深共晶溶媒(B)としては、水素結合アクセプター(b)と水素結合ドナー(b’)を含有する混合物であって共晶により融点が大きく降下している混合物であればよく、常温(25℃)で液体のものであっても常温(25℃)で固体のものであってもよいが、生産性、原料取り扱い性の観点から、常温(25℃)で固体の水素結合アクセプター(b)と常温(25℃)で固体の水素結合ドナー(b’)との混合物であることが好ましい。
深共晶溶媒(B)の共晶点が200℃以下であることが好ましく、150℃以下が更に好ましい。共晶点が200℃以下であれば、溶融混練時の熱可塑性樹脂(A)への分散性が向上し、流動性をより向上させることができる。
深共晶溶媒(B)の共晶点が200℃以下であることが好ましく、150℃以下が更に好ましい。共晶点が200℃以下であれば、溶融混練時の熱可塑性樹脂(A)への分散性が向上し、流動性をより向上させることができる。
深共晶溶媒(B)共晶点は、示差走査熱量計により測定することができる。例えば、試料を約5mg採取し、窒素雰囲気下で、示差走査熱量計(セイコーインスツル製ロボットDSC RDC220)を用いて、20℃/分の昇温速度で昇温したときに観測される、水素結合アクセプター(b)単体および水素結合ドナー(b’)単体由来の吸熱ピーク以外の吸熱ピークの温度を深共晶溶媒(B)の共晶点とする。
水素結合アクセプター(b)としては、水素結合ドナー(b’)と共晶を形成するものであればよく、例えば、アンモニウム系化合物、リン系化合物、金属塩、双性イオン、アミノ酸および多価カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。中でも、毒性が少なく、また電気電子用途等に適用した際の短絡を抑制できることから、非金属化合物である、アンモニウム系化合物、リン系化合物、双性イオン、アミノ酸、多価カルボン酸が好ましい。
アンモニウム系化合物としては、例えば、塩化コリン、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、アセチルコリンクロリド、クロロコリンクロリド、臭化テトラエチルアンモニウム、N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、フルオロコリンブロミド、臭化テトラブチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、2−(ジエチルアミノ)エタノール塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、グアニジン塩酸塩等が挙げられる。
リン系化合物としては、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、アリルトリフェニルホスホニウムブロミド、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等が挙げられる。
金属塩としては、例えば塩化亜鉛(II)、臭化亜鉛(II)、塩化ジルコニウム(III)、塩化鉄(III)、塩化スズ(II)、塩化銅(II)、塩化マグネシウム(II)、硝酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。双性イオンとしては、例えば、トリメチルグリシン等が挙げられる。アミノ酸としては、例えば、セリン、プロリン、アラニン等が挙げられる。多価カルボン酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
水素結合ドナー(b’)としては、水素結合アクセプター(b)と共晶を形成するものであればよく、例えば、アルコール、カルボン酸、アミン化合物を用いることができる。
アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、グルコース、スクロース、キシロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、D−ソルビトール、フルクトース等の多価アルコール、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、ヒドロキノン、フロログルシノール等の芳香族アルコールが挙げられる。
カルボン酸としては、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、アジピン酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、レブリン酸、イタコン酸、D−イソソルビド、スベリン酸、蟻酸、酢酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テチラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸等の脂肪酸、安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、コーヒー酸、p−クマル酸、trans−ケイ皮酸、没食子酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。ただし、水素結合ドナー(b’)としてカルボン酸を用いる場合、水素結合アクセプター(b)としてアンモニウム系化合物、リン系化合物、双性イオンを用いることが好ましい。
アミン化合物としては、 尿素、チオ尿素、1−メチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,1−ジメチル尿素、アセトアミド、ベンズアミド、2,2,2−トリフルオロアセトアミド、トリフルオロメチルウレア、イミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。
深共晶溶媒(B)の製造方法としては、ドライブレンドした水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)を深共晶溶媒(B)の共晶点以上で攪拌・混練する方法や、水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)を溶媒に溶解させた後に溶媒を除去する方法などが用いることができる。ドライブレンドした水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)を深共晶溶媒(B)の共晶点以上で攪拌・混練する方法としては、メスフラスコ等の容器中にて攪拌する手法の他、バンバリーミキサーや単軸もしくは二軸押出機などを用いることもできる。
なお、水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)の混合物が、共晶点以上で透明液体となった場合、深共晶溶媒が形成されたと判断する。ここで、透明液体とは、可視光分光光度計を用いて共晶点以上で測定を行った際に、波長550nmの光の透過率が50%以上となっていることを指す。具体的には、深共晶溶媒(B)を約5g採取し、紫外可視分光光度計を用いて、厚み1.25mm、光路長10mmの石英セルを使用し、共晶点以上で、波長550nmの光の透過率を測定し、透過率が50%以上となっている場合、深共晶溶媒が形成されたと判断する。
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物中に深共晶溶媒(B)を含有する。つまり、熱可塑性樹脂組成物中において、水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)の混合物である深共晶溶媒(B)が、単一物質のように、熱可塑性樹脂組成物中に分散している。この点において、熱可塑性樹脂(A)に、水素結合アクセプター(b)を構成する化合物、および水素結合ドナー(b’)を構成する化合物をそれぞれ添加する場合とは異なる。
本発明の樹脂組成物1gに含まれる、溶媒(深共晶溶媒(B)とは異なる溶媒)を用いて抽出される深共晶溶媒を形成する水素結合アクセプター(b)のモル数(X1という)、および前記溶媒を用いて抽出される深共晶溶媒を形成する水素結合ドナー(b’)のモル数(X2という)の合計を[N]とする。つまり、X1とX2の合計が[N]である。
また、X1、X2、ならびに本発明の樹脂組成物1gに含まれる深共晶溶媒を形成しない水素結合アクセプター(b)のモル数(X3という)、および深共晶溶媒を形成しない水素結合ドナーの(b’)のモル数(X4という)の合計を[M]とする。つまり、X1、X2、X3およびX4の合計が[M]である。
このとき、本発明の[N]/[M]が0.1以上1.0以下が好ましい。[N]/[M]は0.2以上であることが更に好ましい。[N]/[M]を前述の範囲であれば、樹脂組成物中にて深共晶溶媒(B)が形成していることから、熱可塑性樹脂(A)に対する深共晶溶媒(B)の分散性が向上し、樹脂組成物の流動性が向上するとともに、成形品の強度、圧入強度がより向上する。
[N]は、以下の方法により求める。本発明の実施例の深共晶溶媒(B)を用いる場合は、まず、樹脂組成物のペレット500gを減圧乾燥する。そのペレットに5倍量の溶媒(深共晶溶媒(B)とは異なる溶媒)を加え、60℃で4時間環流抽出処理を行う。使用する溶媒は深共晶溶媒(B)を溶解し、水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)が溶解しないものである。前記溶媒としては、例えばエタノールが挙げられる。抽出後の溶液は冷却した後に回収し、エバポレーターにて溶媒を蒸発乾固させ抽出物を得、抽出物の重量を測定した。次いで通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により深共晶溶媒(B)を形成している水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)の構造式および組成比を特定し、下記式より、[N]を算出する。
x:深共晶溶媒(B)を形成している水素結合アクセプター(b)の組成比(xは整数)
y:深共晶溶媒(B)を形成している水素結合ドナー(b’)の組成比(yは整数)
なお、xとyは、水素結合アクセプター(b)と、水素結合ドナー(b’)とが如何なる比率で深共晶溶媒(B)を形成するかを表す数値である。
bM:水素結合アクセプター(b)の分子量
b’M:水素結合ドナー(b’)の分子量
w:抽出物の重量(g)
W:ペレット重量(g)。
y:深共晶溶媒(B)を形成している水素結合ドナー(b’)の組成比(yは整数)
なお、xとyは、水素結合アクセプター(b)と、水素結合ドナー(b’)とが如何なる比率で深共晶溶媒(B)を形成するかを表す数値である。
bM:水素結合アクセプター(b)の分子量
b’M:水素結合ドナー(b’)の分子量
w:抽出物の重量(g)
W:ペレット重量(g)。
[M]は、水素結合アクセプター(b)が金属塩ではない場合、1H−NMRにより算出する。1H−NMRを用いる場合は、まず、水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)の構造式を特定する。水素結合アクセプターに由来するピークには、深共晶溶媒を形成する水素結合アクセプター、および深共晶溶媒を形成しない水素結合アクセプターが含まれる。一方、水素結合ドナーに由来するピークには、深共晶溶媒を形成する水素結合ドナー、および深共晶溶媒を形成しない水素結合ドナーが含まれる。したがって、[M]は、1H−NMRを用いて、水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)に由来するピーク強度と熱可塑性樹脂由来のピーク強度の比より算出することができる。
[M]は、水素結合アクセプター(b)が金属塩を含有する場合、原子吸光分析(検量線法)を用いて算出することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、深共晶溶媒(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.1〜20重量部である。深共晶溶媒(B)の含有量が0.1重量部未満であると、熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の圧入強度が低下する。深共晶溶媒(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、2重量部以上がさらに好ましい。一方、深共晶溶媒(B)の配合量が20重量部を超えると、熱可塑性樹脂組成物中における深共晶溶媒(B)の分散性が低下するとともに、熱可塑性樹脂の分解が促進され、熱可塑性樹脂組成物の発生ガス量が増加するとともに、得られる成形品の機械強度、圧入強度が低下する。深共晶溶媒(B)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、6重量部以下がさらに好ましい。
<充填剤(C)>
本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、さらに充填材(C)を含有することができる。充填材(C)としては、有機充填材、無機充填材のいずれを用いてもよく、繊維状充填材、非繊維状充填材のいずれを用いてもよい。充填材(C)としては、繊維状充填材が好ましい。
本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、さらに充填材(C)を含有することができる。充填材(C)としては、有機充填材、無機充填材のいずれを用いてもよく、繊維状充填材、非繊維状充填材のいずれを用いてもよい。充填材(C)としては、繊維状充填材が好ましい。
繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系またはピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族熱可塑性繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化珪素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカー、窒化珪素ウィスカーなどの繊維状またはウィスカー状充填材が挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維や、炭素繊維が特に好ましい。
ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものであればよく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂により被膜あるいは集束されていてもよい。さらに、ガラス繊維の断面は、円形、扁平状のひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形またはこれらの類似品など限定されるものではない。ガラス繊維配合熱可塑性樹脂組成物において生じやすい成形品の特有の反りを低減する観点から、長径/短径の比が1.5以上の扁平状の繊維が好ましく、2.0以上のものがさらに好ましく、10以下のものが好ましく、6.0以下のものがさらに好ましい。長径/短径の比が1.5未満では断面を扁平状にした効果が少なく、10より大きいものはガラス繊維自体の製造が困難である。
非繊維状充填材としては、例えば、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、珪酸カルシウムなどの非膨潤性珪酸塩、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母の膨潤性雲母に代表される膨潤性層状珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、珪藻土、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化アンチモンなどの金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイトなどの各種粘土鉱物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。また、これら充填材を2種以上含有してもよい。
本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、充填材(C)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、1〜300重量部が好ましい。充填材の含有量が1重量部以上であれば、成形品の機械強度、圧入強度をより向上させることができる。充填材の含有量は、10重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましい。一方、充填材の含有量が300重量部以下であれば、熱可塑性樹脂の流動性に優れると共に、成形品の機械強度に優れる。充填材(C)の含有量は、200重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
<その他添加剤>
さらに、本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、目的に応じて各種添加剤を含有することが可能である。各種添加剤の具体例としては、酸化防止剤や熱安定剤、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物などの可塑剤、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、発泡剤などを挙げることができる。これら添加剤を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂の特徴を十分に活かすため、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して10重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
さらに、本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、目的に応じて各種添加剤を含有することが可能である。各種添加剤の具体例としては、酸化防止剤や熱安定剤、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物などの可塑剤、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、発泡剤などを挙げることができる。これら添加剤を含有する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂の特徴を十分に活かすため、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して10重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
<製造法>
本発明においては、熱可塑性樹脂(A)に深共晶溶媒(B)を配合することが特徴である。より具体的には、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し深共晶溶媒(B)0.1〜20重量部を配合する。前記、深共晶溶媒(B)は、水素結合ドナー(b)と水素結合アクセプター(b’)を含む。したがって、熱可塑性樹脂に、水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)を個別に配合して溶融混練したとしても、本発明の効果は発現しない。
本発明においては、熱可塑性樹脂(A)に深共晶溶媒(B)を配合することが特徴である。より具体的には、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し深共晶溶媒(B)0.1〜20重量部を配合する。前記、深共晶溶媒(B)は、水素結合ドナー(b)と水素結合アクセプター(b’)を含む。したがって、熱可塑性樹脂に、水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)を個別に配合して溶融混練したとしても、本発明の効果は発現しない。
熱可塑性樹脂(A)に深共晶溶媒(B)を配合する方法としては、ドライブレンドや溶液配合法、熱可塑性樹脂(A)の重合時添加、溶融混練などが用いることができ、中でも溶融混練が好ましい。溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、熱可塑性樹脂(A)の融点またはガラス転移温度以上であって、融点またはガラス転移温度+50℃以下で溶融混練して樹脂組成物とすることができる。中でも生産性の観点から、二軸押出機が好ましい。
かくして得られる熱可塑性樹脂組成物は、公知の方法で各種成形品を得ることができる。成形方法としては、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、圧縮成形、中空成形、カレンダ成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形などが可能であり、糸状、ペレット状、板状、フィルム又はシート状、パイプ状、中空状、箱状等の形状に成形することができる。
<用途>
本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、とりわけ、流動性、機械強度、圧入強度が要求される自動車電装部品、電気・電子部品用途に特に好ましく用いられる。具体的には、本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、クーリングファン、ラジエータータンクのトップおよびベース、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、廃ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの自動車内装部品、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、リアスポイラー、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの自動車外装部品、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、ターボチャージャ、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどの吸排気系部品、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプなどのエンジン冷却水系部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチなどの自動車電装部品、電気・電子部品としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、抵抗器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、スイッチ、ナイフスイッチ、他極ロッド、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、ICやLED対応ハウジング、コンデンサー座板、ヒューズホルダー、各種ギヤー、各種ケース、キャビネットなどの電気部品、コネクター、SMT対応のコネクタ、カードコネクタ、ジャック、コイル、コイルボビン、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレー、リレーケース、リフレクター、小型スイッチ、電源部品、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、SiパワーモジュールやSiCパワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品などに好ましく用いられる。
本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、とりわけ、流動性、機械強度、圧入強度が要求される自動車電装部品、電気・電子部品用途に特に好ましく用いられる。具体的には、本発明の実施形態の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、クーリングファン、ラジエータータンクのトップおよびベース、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、廃ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの自動車内装部品、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、リアスポイラー、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの自動車外装部品、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、ターボチャージャ、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどの吸排気系部品、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプなどのエンジン冷却水系部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチなどの自動車電装部品、電気・電子部品としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、抵抗器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、スイッチ、ナイフスイッチ、他極ロッド、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、ICやLED対応ハウジング、コンデンサー座板、ヒューズホルダー、各種ギヤー、各種ケース、キャビネットなどの電気部品、コネクター、SMT対応のコネクタ、カードコネクタ、ジャック、コイル、コイルボビン、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレー、リレーケース、リフレクター、小型スイッチ、電源部品、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、SiパワーモジュールやSiCパワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品などに好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。特性評価は下記の方法に従って行った。
[熱可塑性樹脂の融点]
熱可塑性樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツル製 ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用い、次の条件で熱可塑性樹脂(A)の融点を測定した。熱可塑性樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温し、30℃で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
熱可塑性樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツル製 ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用い、次の条件で熱可塑性樹脂(A)の融点を測定した。熱可塑性樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温し、30℃で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
[[N]/[M]]
(水素結合アクセプター(b)が金属塩を含有しない場合)
抽出される深共晶溶媒を形成する水素結合アクセプター(b)のモル数(X1)、および前記溶媒を用いて抽出される深共晶溶媒を形成する水素結合ドナー(b’)のモル数(X2)の合計を[N]は、下記の通り求めた。
(水素結合アクセプター(b)が金属塩を含有しない場合)
抽出される深共晶溶媒を形成する水素結合アクセプター(b)のモル数(X1)、および前記溶媒を用いて抽出される深共晶溶媒を形成する水素結合ドナー(b’)のモル数(X2)の合計を[N]は、下記の通り求めた。
樹脂組成物のペレット500gを減圧乾燥した。そのペレットに5倍量の溶媒(エタノール)を加え、60℃で4時間環流抽出処理を行った。抽出後の溶液は冷却した後に回収し、エバポレーターにて溶媒を蒸発乾固させ抽出物を得、抽出物の重量を測定した。次いで、次いで1H−NMRにより深共晶溶媒(B)を形成している水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)の構造式および組成比を特定し、下記式より、[N]を算出した。
x:深共晶溶媒(B)を形成している水素結合アクセプター(b)の組成比(xは整数)
y:深共晶溶媒(B)を形成している水素結合ドナー(b’)の組成比(yは整数)
なお、xとyは、水素結合アクセプター(b)と、水素結合ドナー(b’)とが如何なる比率で深共晶溶媒(B)を形成するかを表す数値である。
bM:水素結合アクセプター(b)の分子量
b’M:水素結合ドナー(b’)の分子量
w:抽出物の重量(g)
W:ペレット重量(g)。
y:深共晶溶媒(B)を形成している水素結合ドナー(b’)の組成比(yは整数)
なお、xとyは、水素結合アクセプター(b)と、水素結合ドナー(b’)とが如何なる比率で深共晶溶媒(B)を形成するかを表す数値である。
bM:水素結合アクセプター(b)の分子量
b’M:水素結合ドナー(b’)の分子量
w:抽出物の重量(g)
W:ペレット重量(g)。
[M]は、1H−NMRを用いて、下記の通り求めた。
樹脂組成物のペレット0.035gを溶媒(重ヘキサフルオロイソプロパノール)0.7mlに溶解し、1H−NMR測定をおこなった。得られた1H−NMRスペクトルより、熱可塑性樹脂、水素結合アクセプター(b)、および水素結合ドナー(b’)由来ピークの面積を求めた。なお、ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)に由来するピーク強度と熱可塑性樹脂由来のピーク強度の比より[M]を算出した。上述の手法により算出した[N]、[M]より、[N]/[M]を求めた。
(水素結合アクセプター(b)が金属塩を含有する場合)
[N]は、上記同様に求めた。[M]は、原子吸光分析を用いて、下記の通り求めた。
樹脂組成物のペレット30gを減圧乾燥した。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解し、分解液を希釈した。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、[M]を算出し、[N]/[M]を求めた。
[N]は、上記同様に求めた。[M]は、原子吸光分析を用いて、下記の通り求めた。
樹脂組成物のペレット30gを減圧乾燥した。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解し、分解液を希釈した。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、[M]を算出し、[N]/[M]を求めた。
[深共晶溶媒(B)の共晶点]
深共晶溶媒(B)を約5mg採取し、窒素雰囲気下で、示差走査熱量計(セイコーインスツル製ロボットDSC RDC220)を用いて、20℃/分の昇温速度で昇温したときに観測される、水素結合アクセプター(b)単体および水素結合ドナー(b’)単体由来の吸熱ピーク以外の吸熱ピークの温度を深共晶溶媒(B)の共晶点とした。
深共晶溶媒(B)を約5mg採取し、窒素雰囲気下で、示差走査熱量計(セイコーインスツル製ロボットDSC RDC220)を用いて、20℃/分の昇温速度で昇温したときに観測される、水素結合アクセプター(b)単体および水素結合ドナー(b’)単体由来の吸熱ピーク以外の吸熱ピークの温度を深共晶溶媒(B)の共晶点とした。
[波長550nmの光の透過率]
深共晶溶媒(B)を約5g採取し、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV−1600PC)を用いて、共晶点以上で測定を行った。厚み1.25mm、光路長10mmの石英セルを使用し、波長550nmの光の透過率を測定した。
深共晶溶媒(B)を約5g採取し、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV−1600PC)を用いて、共晶点以上で測定を行った。厚み1.25mm、光路長10mmの石英セルを使用し、波長550nmの光の透過率を測定した。
[引張破断強度]
各実施例、比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、厚さ3.2mmASTM1号ダンベル試験片を作製した。この試験片について、ASTM D638に従って引張試験機テンシロンUTA2.5T(オリエンテック社製)により、クロスヘッド速度10mm/分で引張試験を行った。3回測定を行い、その平均値を引張破断(降伏)強度として算出した。引張強度が大きいほど、機械特性に優れる。
各実施例、比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、厚さ3.2mmASTM1号ダンベル試験片を作製した。この試験片について、ASTM D638に従って引張試験機テンシロンUTA2.5T(オリエンテック社製)により、クロスヘッド速度10mm/分で引張試験を行った。3回測定を行い、その平均値を引張破断(降伏)強度として算出した。引張強度が大きいほど、機械特性に優れる。
[流動性]
各実施例、比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃で12時間真空乾燥し、射出成形機(ファナック社製(株)ROBOSHOTα−30C)を用いて、シリンダー温度:熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃、金型温度:80℃、射出圧力:98MPaの条件で、150mm長×13mm幅×0.5mm厚の金型を用いて射出成形し、13mm幅×0.5mm厚の棒流動試験片を作製した。各5サンプルについて保圧0における棒流動長を測定し、その平均値を求め、流動性を評価した。流動長が長いほど流動性に優れることを示している。
各実施例、比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃で12時間真空乾燥し、射出成形機(ファナック社製(株)ROBOSHOTα−30C)を用いて、シリンダー温度:熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃、金型温度:80℃、射出圧力:98MPaの条件で、150mm長×13mm幅×0.5mm厚の金型を用いて射出成形し、13mm幅×0.5mm厚の棒流動試験片を作製した。各5サンプルについて保圧0における棒流動長を測定し、その平均値を求め、流動性を評価した。流動長が長いほど流動性に優れることを示している。
[圧入強度]
各実施例および比較例で得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(ファナック社製(株)ROBOSHOTα−30C)を用いて、シリンダー温度:熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃、金型温度を80℃の条件で射出成形することにより、2.8mmピッチ、1.5mm×1.5mmの角穴が20個付いた、厚さ3mmのピン圧入成形片を得た。得られた成形片の角穴に、1.6mm×1.6mmの黄銅製角棒を各々挿入し、10秒後、角棒を角穴から抜いた。上記操作を100個の成形片について実施し、挿抜後に圧入割れが発生した数を計数した。圧入割れが発生した数が少ないほど圧入強度が優れていることを示している。
各実施例および比較例で得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(ファナック社製(株)ROBOSHOTα−30C)を用いて、シリンダー温度:熱可塑性樹脂(A)の融点+15℃、金型温度を80℃の条件で射出成形することにより、2.8mmピッチ、1.5mm×1.5mmの角穴が20個付いた、厚さ3mmのピン圧入成形片を得た。得られた成形片の角穴に、1.6mm×1.6mmの黄銅製角棒を各々挿入し、10秒後、角棒を角穴から抜いた。上記操作を100個の成形片について実施し、挿抜後に圧入割れが発生した数を計数した。圧入割れが発生した数が少ないほど圧入強度が優れていることを示している。
参考例1(B−1)
塩化コリン(関東化学(株)製、融点303℃)100重量部に対して、ペンタエリスリトール(関東化学(株)製、融点260℃)48.8重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、130℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌し透明な液体としてB−1を得た。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は130℃未満であった。130℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ80%であった。
塩化コリン(関東化学(株)製、融点303℃)100重量部に対して、ペンタエリスリトール(関東化学(株)製、融点260℃)48.8重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、130℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌し透明な液体としてB−1を得た。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は130℃未満であった。130℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ80%であった。
参考例2(B−2)
塩化コリン(関東化学(株)製、融点303℃)100重量部に対して、D−ソルビトール(関東化学(株)製、融点95℃)43.5重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、130℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌した。B−2は、130℃において透明な液体であった。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は130℃未満であった。130℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ87%であった。
塩化コリン(関東化学(株)製、融点303℃)100重量部に対して、D−ソルビトール(関東化学(株)製、融点95℃)43.5重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、130℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌した。B−2は、130℃において透明な液体であった。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は130℃未満であった。130℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ87%であった。
参考例3(B−3)
塩化コリン(関東化学(株)製、融点303℃)100重量部に対して、アジピン酸(関東化学(株)製、融点152℃)104.6重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、130℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌した。B−3は130℃において透明な液体であった。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は130℃未満であった。130℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ90%であった。
塩化コリン(関東化学(株)製、融点303℃)100重量部に対して、アジピン酸(関東化学(株)製、融点152℃)104.6重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、130℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌した。B−3は130℃において透明な液体であった。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は130℃未満であった。130℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ90%であった。
参考例4(B−4)
塩化コリン(関東化学(株)製、融点303℃)100重量部に対して、没食子酸一水和物(東京化成工業(株)製)60.9重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、130℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌した。B−4は、130℃において透明な液体であった。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は130℃未満であった。130℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ86%であった。
塩化コリン(関東化学(株)製、融点303℃)100重量部に対して、没食子酸一水和物(東京化成工業(株)製)60.9重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、130℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌した。B−4は、130℃において透明な液体であった。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は130℃未満であった。130℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ86%であった。
参考例5(B−5)
ベタイン(東京化成工業(株)製、融点310℃)100重量部に対して、D−ソルビトール(関東化学(株)製、融点95℃)155重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、150℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌した。B−5は、150℃において透明な液体であった。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は150℃未満であった。150℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ90%であった。
ベタイン(東京化成工業(株)製、融点310℃)100重量部に対して、D−ソルビトール(関東化学(株)製、融点95℃)155重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、150℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌した。B−5は、150℃において透明な液体であった。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は150℃未満であった。150℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ90%であった。
参考例6(B−6)
塩化亜鉛(関東化学(株)製、融点275℃)100重量部に対して、1,6−ヘキサンジオール(東京化成工業(株)製、融点44℃)260重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、130℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌した。B−6は、130℃で透明な液体であった。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は130℃未満であった。130℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ82%であった。
塩化亜鉛(関東化学(株)製、融点275℃)100重量部に対して、1,6−ヘキサンジオール(東京化成工業(株)製、融点44℃)260重量部をナスフラスコに秤量した。次いで、130℃で加熱しながらナスフラスコの内容物をスターラーで30分程度撹拌した。B−6は、130℃で透明な液体であった。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、得られた液体の共晶点は130℃未満であった。130℃で波長550nmの光の透過率を測定したところ82%であった。
参考例7(B’−7)
塩化コリン(関東化学(株)製、融点303℃)100重量部に対して、ペンタエリスリトール(関東化学(株)製、融点260℃)48.8重量部を秤量し、室温にてドライブレンドして、B’−7を得た。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、水素結合アクセプター(b)単体および水素結合ドナー(b’)単体由来の吸熱ピーク以外の吸熱ピークの温度を確認できなかった。
塩化コリン(関東化学(株)製、融点303℃)100重量部に対して、ペンタエリスリトール(関東化学(株)製、融点260℃)48.8重量部を秤量し、室温にてドライブレンドして、B’−7を得た。前記する測定方法で共晶点を測定したところ、水素結合アクセプター(b)単体および水素結合ドナー(b’)単体由来の吸熱ピーク以外の吸熱ピークの温度を確認できなかった。
(A−1):融点260℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)
(A−2):融点225℃のナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010)
(b−1):塩化コリン(関東化学(株)製)
(b−2):1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムクロリド(東京化成工業(株)製)
(b’−1):ペンタエリスリトール(関東化学(株)製)
(C−1):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−717H)、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤およびノボラックエポキシ系樹脂、繊維長3mm。
(A−2):融点225℃のナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010)
(b−1):塩化コリン(関東化学(株)製)
(b−2):1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムクロリド(東京化成工業(株)製)
(b’−1):ペンタエリスリトール(関東化学(株)製)
(C−1):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−717H)、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤およびノボラックエポキシ系樹脂、繊維長3mm。
(実施例1〜9、比較例1〜7)
表1、2に示す熱可塑性樹脂(A)、深共晶溶媒(B)、水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)を、シリンダー設定温度を熱可塑性樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。
表1、2に示す熱可塑性樹脂(A)、深共晶溶媒(B)、水素結合アクセプター(b)および水素結合ドナー(b’)を、シリンダー設定温度を熱可塑性樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。
このメインフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、すなわちスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。続いて、表に示す充填材(C)を、サイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
なお、流動性や機械特性の差を明確にするため、熱可塑性樹脂組成物中の充填材(C)の含有量が等しくなるように各実施例および比較例の熱可塑性樹脂組成物を作製した。
各実施例および比較例の評価結果を表1および2に示す。
実施例1〜9は比較例1〜7と比較して、深共晶溶媒(B)を特定量含有することにより、熱可塑性樹脂(A)との相溶性がより向上し、その結果、流動性に優れ、機械強度、圧入強度に優れる成形品を得ることができた。
実施例2は、深共晶溶媒(B)を構成する水素結合ドナー(b)が好ましい化合物であったため、実施例8と比較して、熱可塑性樹脂(A)と深共晶溶媒(B)との相溶性がより向上させることができ、その結果、流動性に優れ、機械強度、圧入強度に優れる成形品を得ることができた。
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、水素結合ドナー(b)と水素結合アクセプター(b’)を含む深共晶溶媒(B)0.1〜20重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物。
- 前記水素結合ドナー(b)がアンモニウム系化合物、リン系化合物、双性イオン、アミノ酸、および多価カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド、ポリエステル、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、およびポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品。
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JP2018244723A JP2020105336A (ja) | 2018-12-27 | 2018-12-27 | 熱可塑性樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品 |
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WO2023054074A1 (ja) | 2021-09-30 | 2023-04-06 | 富士フイルム株式会社 | カバーフィルム |
WO2023054029A1 (ja) | 2021-09-30 | 2023-04-06 | 富士フイルム株式会社 | カバーフィルム |
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