JP2020104253A - クーラント穴付き回転工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】クーラント穴からのクラックを防ぎ、クーラント吐出流量を確保する。【解決手段】軸線O回りに回転されるドリル本体1の先端逃げ面に軸線O方向先端側に向けて延びるクーラント穴8が開口し、クーラント穴8には、軸線Oに直交する断面において、ドリル本体1の内周側に位置して内周側に凹む凹曲線状の第1凹曲線状部8aと、ドリル本体1の外周側に位置して第1凹曲線状部8aより大きな曲率半径r2で外周側に凹む凹曲線状も第2凹曲線状部8bと、第2凹曲線状部8bの2つの端部に接し、第2凹曲線状部8bよりも小さな曲率半径r3で、当該曲率半径r3の中心はクーラント穴8の内側にあり、ドリル本体1の中心側に延びて周方向に凹む2つの第3凹曲線状部8cと、第1凹曲線状部8aの端部と第2凹曲線状部8bに接しない方の第3凹曲線状部8cの端部とを繋ぐ2つの直線状部8dとが形成される。【選択図】図7

Description

本発明は、ドリル、リーマ、エンドミル等の回転工具の回転工具本体の内部に、この回転工具本体の先端逃げ面と切屑排出溝の内壁面とのうちの少なくとも一方に開口するクーラント穴が形成されたクーラント穴付き回転工具に関するものである。
このようなクーラント穴付き回転工具として、例えば特許文献1には、クーラント穴付きドリルとして、軸線回りに回転させられるドリル本体の先端側に形成された切刃部に、この切刃部の先端逃げ面に開口するクーラント穴が穿設されたものが記載されている。この特許文献1に記載されたドリルのクーラント穴は、上記軸線に直交する断面において、ドリル回転方向前方側に位置する前穴壁面と、ドリル回転方向後方側に位置する後穴壁面と、ドリル本体の外周側に位置する外周穴壁面とを備えている。そして、これらの壁面のうちの前穴壁面と後穴壁面とは、外周側に向かうに従い互いの周方向の間隙が漸次増大しており、しかもこの間隙が増大する割合も外周側に向けて漸次大きくなるように形成されている。
また、特許文献2には、同じくクーラント穴付きドリルとして、軸方向の先端に切れ刃が設けられた工具本体と、切れ刃から発生した切り粉を排出する排出溝が工具本体の先端側に形成された溝部と、この溝部内を通して切れ刃側へ切削液を供給する切削液供給穴とを備えた切削液供給穴付ドリルが記載されている。この特許文献2に記載されたドリルの切削液供給穴は、ドリルの回転方向前方側に径方向に沿って位置する前方側内壁面と、ドリルの回転方向後方側に径方向に沿って位置して前方側内壁面と周方向に対向する後方側内壁面と、ドリルの中心線を中心とする部分円筒面から成る外周側内壁面と、ドリルの中心線を中心とし且つ外周側内壁面よりも小さい曲率半径の部分円筒面から成り、外周側内壁面と径方向に対向する内周側内壁面とにより囲まれた扇状断面を有している。
特許第5447129号公報 特許第5926877号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたクーラント穴付きドリルでは、前穴壁面と後穴壁面との周方向の間隙が増大する割合が外周側に向けて漸次大きくなるように形成されていて、これら前穴壁面と後穴壁面とがドリル本体の軸線に直交する断面においてクーラント穴の内側に凸となる凸曲線をなしている。このため、クーラント穴の断面積を大きく確保することができなくなってしまい、特に切刃の直径が小さいドリルにおいては、クーラントの圧力損失が大きくなって十分なクーラント吐出流量を得ることができなくなるおそれがある。
また、特許文献2に記載されたクーラント穴付きドリルにおいても、内周側内壁面はドリルの中心線を中心とする部分円筒面とされていて、ドリル本体の軸線に直交する断面において径方向に対向する外周側内壁面に向けてクーラント穴の内側に凸となる凸曲線とされている。このため、クーラント穴の断面積を大きく確保することができずにクーラント吐出流量が不十分となるおそれがある。しかも、内周側内壁面がクーラント穴の内側(ドリル本体の外周側)に凸となる凸曲線とされているので、ドリル本体の内周側に十分にクーラントを供給することができない。従って、これら特許文献1、2に記載されたクーラント穴付きドリルでは、切屑排出性が損なわれて切屑詰まりが発生したり、切刃の冷却、潤滑が不十分となって損傷を生じ易くなったりするおそれがある。
さらに、特許文献1に記載されたクーラント穴付きドリルでは、外周穴壁面と前穴壁面および後穴壁面とが交差する隅部が、ドリル本体の軸線に直交する断面において凹曲線状に形成されている。ところが、前穴壁面と後穴壁面が上述のように凸曲線状であるため、この隅部の凹曲線の曲率半径を大きくすることができず、応力が集中して素材成形の段階でクラックが発生し易い。これは、内周側内壁面が断面凸曲線状とされた特許文献2に記載されたクーラント穴付きドリルの内周側内壁面の両端の隅部でも同様である。
本発明は、このような背景の下になされたもので、クーラント穴の隅部における応力集中によるクラックの発生を防ぐことができるとともに、クーラント穴の断面積を大きくして十分なクーラント吐出流量を確保することができ、良好な切屑排出性を得るとともに回転工具本体の寿命の延長を図ることが可能なクーラント穴付きドリル等のクーラント穴付き回転工具を提供することを目的としている。
上記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに工具回転方向に回転される回転工具本体の先端部外周に、この回転工具本体の先端面に開口して後端側に延びる切屑排出溝が形成され、この切屑排出溝の内壁面のうち上記工具回転方向を向く壁面の先端側辺稜部に、上記壁面をすくい面とするとともに、このすくい面に連なる上記回転工具本体の先端面を先端逃げ面とする切刃が形成され、上記先端逃げ面および上記切屑排出溝の内壁面の少なくとも一方には、上記回転工具本体内を上記軸線方向先端側に向けて延びるクーラント穴が開口しており、このクーラント穴には、上記軸線に直交する断面において、上記回転工具本体の内周側に位置して内周側に凹む凹曲線状に形成された第1凹曲線状部と、この第1凹曲線状部に対向して上記回転工具本体の外周側に位置し、上記第1凹曲線状部よりも大きな曲率半径で外周側に凹む凹曲線状に形成された第2凹曲線状部と、上記第2凹曲線状部の2つの端部にそれぞれ接し、上記第2凹曲線状部よりも小さな曲率半径で、当該曲率半径の中心は上記クーラント穴の内側にあり、上記回転工具本体の中心側に延びて周方向に凹む2つの第3凹曲線状部と、上記第1凹曲線状部の端部と上記第2凹曲線状部に接しない方の上記第3凹曲線状部の端部とを繋ぐ2つの直線状部とが形成されていることを特徴とする。
このように構成されたクーラント穴付き回転工具においては、回転工具本体の軸線に直交する断面において、特許文献1に記載されたクーラント穴付きドリルの前穴壁面と後穴壁面や、特許文献2に記載されたクーラント穴付きドリルの内周側内壁面のように、クーラント穴の内側に凸となる凸曲線状部分が形成されない。このため、上記断面においてクーラント穴に内接する円の直径を大きくして断面積を確保することができる。
しかも、第1凹曲線状部を直線状部によって回転工具本体の内周側に位置させることができ、この内周側にもクーラントを十分に供給することができる。従って、たとえ切刃の直径が小さいクーラント穴付き回転工具でもクーラントの圧力損失を抑えることができ、十分な吐出流量でクーラントを吐出させることによって切屑の円滑な排出による切屑詰まりの防止や切刃の効果的な冷却、潤滑による回転工具本体の寿命の延長を図ることができる。
また、このようにクーラント穴の断面において内側に凸となる凸曲線状の部分が形成されないため、このような凸曲線状部分の隅部に凹曲線状部を形成する場合のように、この凹曲線状部の曲率半径が小さくなることもない。すなわち、上記第1凹曲線状部や第3凹曲線状部の曲率半径を大きく確保することができる。このため、第2凹曲線状部よりも曲率半径が小さいこれら第1、第3凹曲線状部でも応力集中が生じるのは防ぐことができ、素材成形の段階等で第1、第3凹曲線状部にクラックが発生するのを防止することができる。
ここで、これら第1凹曲線状部の曲率半径と2つの第3凹曲線状部の曲率半径とは極端に異なっていないことが望ましい。一定の断面積のクーラント穴において、これら第1凹曲線状部の曲率半径と2つの第3凹曲線状部の曲率半径のうち、いずれか1つまたは2つの凹曲線状部の曲率半径が他の凹曲線状部の曲率半径よりも極端に大きいと、この他の凹曲線状部の曲率半径を極端に小さくしなければならなくなる。このため、他の凹曲線状部のクラックの発生を確実に防止することができなくなるおそれが生じる。従って、第1凹曲線状部の曲率半径r1と2つの第3凹曲線状部の曲率半径r3は互いに等しいことが最も望ましい。ただし、r1/r3が0.5〜2.0の範囲内であれば、極端な大小を生じないので、望ましい。
また、上記第1凹曲線状部は、上記軸線に直交する断面において、該軸線を中心として上記切刃の直径Dに対して0.05×D以上の半径を有する円に接していることが望ましい。第1凹曲線状部が、この軸線を中心として切刃の直径Dに対して0.05×D以上の半径を有する円よりも回転工具本体の内周側にまで形成されていると、クーラント穴と回転工具本体の軸線との間隔が小さくなりすぎ、過大な負荷が作用した場合に回転工具本体に損傷が発生するおそれがある。なお、このような回転工具本体の損傷をさらに確実に防ぐには、第1凹曲線状部は、上記軸線に直交する断面において、該軸線を中心として上記切刃の直径Dに対して0.15×D以上の半径を有する円に接していることがより望ましい。
さらに、上記軸線に直交する断面において、上記第2凹曲線状部の曲率半径r2は、上記切刃の直径Dに対して0.42×D以下とされていることが望ましい。第2凹曲線状部の曲率半径r2が0.42×Dを上回ると、第2凹曲線状部の両端に接する2つの第3凹曲線状部の少なくとも一方が回転工具本体の外周側に位置しすぎてしまい、回転工具本体の外周面との間の肉厚が薄くなって損傷を生じるおそれがある。
なお、本発明における2つの直線状部は、第1凹曲線状部の端部と第2凹曲線状部に接しない方の第3凹曲線状部の端部とを繋ぐ直線であってもよい。また、特許文献1に記載されたクーラント穴付きドリルの前穴壁面と後穴壁面のようにドリル本体の軸線に直交する断面においてクーラント穴の内側に凸となる凸曲線でなければ、直線状部は、直線とされた2つの直線状部に対して膨らむ曲率半径の大きな凹曲線のような実質的に直線状とされた直線状部であってもよい。
ただし、このように凹曲線とされた実質的な直線状部が、直線とされた直線状部に対して膨らむ最大の突出量(膨らみ量)が大きいと、直線状部と切屑排出溝の内壁面のうち工具回転方向を向く壁面や工具回転方向とは反対側を向く壁面との間隔(肉厚)が小さくなって工具本体に損傷が生じるおそれがある。このため、この最大の突出量は、2つの直線状部が直線である場合のクーラント穴に内接する円(第2凹曲線状部と2つの直線とされた直線状部に接する円)の直径の5%以下の範囲とされる。
以上説明したように、本発明によれば、素材成形の段階等におけるクーラント穴からのクラックの発生を防ぐことができるとともに、十分なクーラントの吐出流量を確保することができ、切屑排出性の向上による切屑詰まりの防止や、切刃を効果的に冷却、潤滑することにより工具寿命の延長を図ることができる。
本発明のクーラント穴付き回転工具の一実施形態を示す回転工具本体としてのドリル本体の先端部の斜視図である。 図1に示すドリル本体の先端面の拡大正面図である。 図2における矢線X方向視の側面図である。 図2における矢線Y方向視の平面図である。 図3におけるYY断面図である。 図3におけるZZ断面図である。 図5における右側のクーラント穴の拡大断面図である。 図1〜図7に示した実施形態の変形例を示す、図7に示した拡大断面図に相当する断面図である。
図1〜図7は、本発明のクーラント穴付き回転工具をクーラント穴付きドリルに適用した場合の一実施形態を示すものである。本実施形態において、ドリル本体(回転工具本体)1は、超硬合金等の硬質材料によって軸線Oを中心とした外形が多段の略円柱状に一体に形成されている。このドリル本体1のうち、外径が大径に形成された後端部(図3および図4において右側部分)は外形が円柱状のままのシャンク部2とされるとともに、このシャンク部2よりも外径が一段小径に形成された先端部(図3および図4において左側部分)が切刃部3とされている。
このようなクーラント穴付きドリルは、シャンク部2が工作機械の主軸に把持されて、軸線O回りにドリル回転方向(工具回転方向)Tに回転されながら、軸線O方向先端側に送り出されることにより、切刃部3に形成された切刃5によって被削材に穴明け加工を行う。なお、本実施形態では、ドリル本体1のシャンク部2と切刃部3との間の部分は、ドリル本体1の先端側に向かいに従い外径が一定の割合で漸次縮径する軸線Oを中心とした円錐台状のテーパーネック部4とされている。
ドリル本体1の先端部の切刃部3の外周には、ドリル本体1の先端面に開口して後端側に向かうに従いドリル回転方向Tとは反対側に捩れるように延びる切屑排出溝6が軸線Oに関して対称に2条形成されている。上記切刃5は、これらの切屑排出溝6の内壁面のうち、ドリル回転方向Tを向く壁面の先端側辺稜部に形成されている。従って、切屑排出溝6のドリル回転方向Tを向く上記壁面の先端部が切刃5のすくい面とされるとともに、このすくい面に連なるドリル本体1の先端面が切刃5の先端逃げ面7とされる。なお、ドリル本体1は、軸線Oに関して180°回転対称である。
この先端逃げ面7は、切刃5からドリル回転方向Tとは反対側に向けて逃げ角が段階的に大きくなる第1、第2先端逃げ面7a、7bを備えている。また、先端逃げ面7は、ドリル本体1の外周側に向かうに従い後端側に向かうように傾斜しており、これによって切刃5には先端角が与えられる。さらに、切刃部3の外周面には、切屑排出溝6のドリル回転方向T側と回転方向Tとは反対側とに連なる2つのマージン部3aが形成されるとともに、これら2つのマージン部3aの間には外周逃げ面(二番取り面)3bが形成されている。さらにまた、切屑排出溝6の先端内周部にはシンニング部6aが形成されている。
また、ドリル本体1内には、シャンク部2の後端面から先端側に向けて、切屑排出溝6と同数の2つのクーラント穴8が形成されている。これらのクーラント穴8は、切屑排出溝6と等しいリードでドリル本体1の後端側に向かうに従いドリル回転方向Tとは反対側に捩れていて、やはり切屑排出溝6と同じく軸線Oに関して対称に形成されている。これらのクーラント穴8は、切刃部3においてはそれぞれ2条の切屑排出溝6の間を通り、ドリル本体1の先端面において先端逃げ面7のうち第2先端逃げ面7bに開口している。
そして、これらのクーラント穴8には、軸線Oに直交する断面において、図7に示すように、ドリル本体1の内周側に位置して内周側に凹む凹曲線状に形成された第1凹曲線状部8aと、この第1凹曲線状部8aに対向してドリル本体1の外周側に位置し、第1凹曲線状部8aの曲率半径r1よりも大きな曲率半径r2で外周側に凹む凹曲線状に形成された第2凹曲線状部8bと、この第2凹曲線状部8bの2つの端部にそれぞれ接し、上記第2凹曲線状部8bよりも小さな曲率半径r3でドリル本体1の中心側(軸線O側)に延びて周方向に凹む2つの第3凹曲線状部8cと、第1凹曲線状部8aの端部と、第2凹曲線状部8bに接しない方の第3凹曲線状部8cの端部とを繋ぐ2つの直線状部8dとが形成されている。このうち、第3凹曲線状部8cの曲率半径r3の中心は、クーラント穴8の内側にある。
本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、クーラント穴8の第1〜第3凹曲線状部8a〜8cは、いずれも凹円弧状に形成されている。また、2つの第3凹曲線状部8cの曲率半径(半径)r3は互いに等しくされるとともに、第1凹曲線状部8aの曲率半径(半径)r1も、これら第3凹曲線状部8cの曲率半径r3と等しくされている。さらに、2つの直線状部8dは、本実施形態では軸線Oに直交する断面において図5〜図7に示すように直線であって、ドリル本体1の内周側への延長線が軸線Oにおいて交差するように延びている。
さらに、第2凹曲線状部8bはドリル本体1の軸線Oを中心とした凹円弧状とされている。さらにまた、軸線Oに直交する断面において、クーラント穴8は、ドリル本体1の軸線Oと第1凹曲線状部8aの中心Cとを結ぶ直線に介して対称な形状とされており、第1凹曲線状部8aから直線状部8dにかけてドリル本体1の外周側に向かうに従い周方向の幅が漸次増大し、直線状部8dと第3凹曲線状部8cとの接点からは外周側に向かうに従い周方向の幅が漸次小さくなるように形成されている。なお、本実施形態では、直線状部8dは、第1凹曲線状部8aと第3凹曲線状部8cに接している。
また、上記第1凹曲線状部8aは、軸線Oに直交する断面において、軸線Oを中心として、図3に示す切刃5の直径D、すなわち切刃5の外周端が軸線O回りになす円の直径Dに対して、0.05×D以上の半径Bを有する円Eに接している。なお、この第1凹曲線状部8aが接する軸線Oを中心とした円Eは、切刃5の直径Dに対して0.15×D以上の半径Bであることが望ましい。また、第2凹曲線状部8bの曲率半径r2は、上記切刃5の直径Dに対して0.42×D以下とされている。
このようなクーラント穴付きドリルでは、穴明け加工時に工作機械の主軸からクーラント穴8に切削油剤やミスト、圧縮空気等のクーラントが供給され、ドリル本体1の先端面(第2先端逃げ面7b)の開口部から吐出させられる。クーラント穴8から吐出したクーラントは、切刃5や被削材の切刃5による切削部位を冷却、潤滑するとともに、切屑排出溝6内をドリル本体1の後端側に流れて、切刃5によって生成された切屑を排出する。
そして、上記構成のクーラント穴付きドリルでは、ドリル本体1の軸線Oに直交する断面において、クーラント穴8が、クーラント穴の外側に凹む凹曲線状の第1〜第3凹曲線状部8a〜8cと、2つの直線状部8dとにより形成されていて、クーラント穴8の内側に凸となる凸曲線状部分が形成されていない。このため、図7に示すように上記断面においてクーラント穴8に内接する円Aの直径dを大きくしてクーラント穴8の断面積を確保することができる。しかも、第1凹曲線状部8aを、直線状部8dを介してドリル本体1の内周側に位置させることができるので、このドリル本体1の内周側にもクーラントを十分に供給することができる。
従って、上記構成のクーラント穴付きドリルによれば、たとえ切刃5の直径Dが小さいドリルであっても、クーラントの圧力損失を抑えることができる。このため、十分な吐出流量でクーラント穴8からクーラントを吐出させることができ、切屑の円滑な排出と切刃5の効果的な冷却、潤滑とを図って切屑詰まりを防ぐとともにドリル本体1の寿命を延長することができる。
また、このように軸線Oに直交する断面において、クーラント穴8の内側に凸となる凸曲線状部分がクーラント穴8に形成されていないため、このような凸曲線状部分の隅部に凹曲線状部が形成される場合のように、この凹曲線状部の曲率半径が小さくなることもない。すなわち、第1、第3凹曲線状部8a、8cの曲率半径r1、r3を大きく確保することができる。このため、これら第1、第3凹曲線状部8a、8cに応力が集中するのを防ぐことができ、素材成形の段階等において第1、第3凹曲線状部8a、8cからクラックが発生するような事態を防止することができる。
さらに、本実施形態では、これら第1凹曲線状部8aの曲率半径r1と2つの第3凹曲線状部8cの曲率半径r3とが互いに等しくされている。このため、一定の断面積のクーラント穴8において、これら第1凹曲線状部8aの曲率半径r1と2つの第3凹曲線状部8cの曲率半径r3のうち、いずれか1つまたは2つの凹曲線状部の曲率半径が他の凹曲線状部の曲率半径よりも極端に大きい場合のように、この他の凹曲線状部の曲率半径を極端に小さくする必要がなくなる。従って、この他の凹曲線状部からクラックが発生するのを確実に防止することができる。
なお、これら第1凹曲線状部8aの曲率半径r1と2つの第3凹曲線状部8cの曲率半径r3との比r1/r3は、0.5〜2.0の範囲内であれば、極端な大小を生じることがないので望ましい。また、この比の範囲内であれば、2つの第3凹曲線状部8cの曲率半径r3も互いに異なっていてもよい。
さらにまた、本実施形態では、上記第1凹曲線状部8aが、軸線Oに直交する断面において、この軸線Oを中心として切刃5の直径Dに対して0.05×D以上の半径Bを有する円Eに接している。このため、クーラント穴8とドリル本体1の軸線Oとの間隔が小さくなりすぎて、切刃部3に過大な負荷が作用した場合にドリル本体1に損傷が発生するおそれがある。なお、このようなドリル本体1の損傷を確実に防ぐには、第1凹曲線状部は上述のように、軸線Oに直交する断面において、この軸線Oを中心として切刃5の直径Dに対して0.15×D以上の半径Bを有する円に接していることがより望ましい。
また、本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、第2凹曲線状部8bの曲率半径r2が、切刃5の直径Dに対して0.42×D以下とされている。このため、第2凹曲線状部8bの両端に直線状部8dを介して接する2つの第3凹曲線状部3cの少なくとも一方がドリル本体1の切刃部3の外周面に近づきすぎることがなくなり、この外周面とクーラント穴8との間隔(肉厚)が小さくなりすぎてドリル本体1の損傷が生じるのも防ぐことができる。
なお、本実施形態では上述のように、直線状部8dが軸線Oに直交する断面において直線とされているが、この直線状部は、特許文献1に記載されたクーラント穴付きドリルの前穴壁面と後穴壁面のようにドリル本体の軸線に直交する断面においてクーラント穴の内側に凸となる凸曲線状に形成されていなければ、例えば図8に示す上記実施形態の変形例のように、直線とされた2つの直線状部8dに対して膨らむ曲率半径の大きな凹曲線のような、実質的に直線状とされた直線状部8eとされていてもよい。
このような変形例のクーラント穴付き回転工具(ドリル)においても、クーラント穴8に、軸線Oに直交する断面においてクーラント穴8の内側に凸となる凸曲線状部分が形成されることがないため、クーラント穴8の断面積を確保することができる。従って、切刃5の直径Dが小さいドリルでも、クーラントの圧力損失を抑えることができ、切屑の円滑な排出と切刃5の効果的な冷却、潤滑とを図って、切屑詰まりを防ぐとともにドリル本体1の寿命を延長することができる。
ただし、この実質的に直線状とされた直線状部8eが、直線とされた直線状部8dに対して大きく膨らみすぎると、直線状部8eと、切屑排出溝6の内壁面のうちドリル回転方向Tを向く壁面や、ドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面との間の間隔(肉厚)が小さくなって、ドリル本体1に損傷が生じるおそれがある。このため、図8に示すように軸線Oに直交する断面において、この実質的に直線状とされた直線状部8eが、直線とされた直線状部8dに対して膨らむ最大の突出量(膨らみ量)eは、直線とされた2つの直線状部8dのクーラント穴8に内接する上記円(第2凹曲線状部8bと2つの直線とされた直線状部8dに接する円)Aの直径dの5%以下の範囲とされる。
また、本実施形態では、本発明をクーラント穴付きドリルに適用した場合について説明したが、同じ回転工具であるリーマやエンドミルに本発明を適用することも可能である。特に、本発明をエンドミルに適用した場合においては、クーラント穴は切屑排出溝の内壁面に開口していてもよい。
さらに、本実施形態では、切刃5、切屑排出溝6およびクーラント穴8が2つのクーラント穴付きドリル(クーラント穴付き回転工具)に本発明を適用した場合について説明したが、切刃、切屑排出溝、クーラント穴が1つのクーラント穴付き回転工具や、切刃、切屑排出溝、クーラント穴が3つ以上のクーラント穴付き回転工具に本発明を適用することも勿論可能である。また、クーラント穴の数が切刃や切屑排出溝の数とは異なっていてもよい。
本発明によれば、素材成形の段階等におけるクーラント穴からのクラックの発生を防ぐことができるとともに、十分なクーラントの吐出流量を確保することができ、切屑排出性の向上による切屑詰まりの防止や、切刃を効果的に冷却、潤滑することにより工具寿命の延長を図ることができる。
1 ドリル本体(回転工具本体)
2 シャンク部
3 切刃部
4 テーパーネック部
5 切刃
6 切屑排出溝
7 先端逃げ面
8 クーラント穴
8a 第1凹曲線状部
8b 第2凹曲線状部
8c 第3凹曲線状部
8d、8e 直線状部
O ドリル本体1の軸線
T ドリル回転方向(工具回転方向)
r1 第1凹曲線状部8aの曲率半径
r2 第2凹曲線状部8bの曲率半径
r3 第3凹曲線状部8cの曲率半径
A クーラント穴8に内接する円
d 円Aの直径
C 第1凹曲線状部8aの中心
D 切刃5の直径
E 軸線Oに直交する断面における軸線Oを中心とした第1凹曲線状部8aに接する円
B 円Eの半径
e 凹曲線状とされた直線状部8eの直線とされた直線状部8dに対する最大の突出量(膨らみ量)
さらにまた、本実施形態では、上記第1凹曲線状部8aが、軸線Oに直交する断面において、この軸線Oを中心として切刃5の直径Dに対して0.05×D以上の半径Bを有する円Eに接している。このため、クーラント穴8とドリル本体1の軸線Oとの間隔が小さくなりすぎることによって切刃部3に過大な負荷が作用した場合にドリル本体1に損傷が発生するおそれがない。なお、このようなドリル本体1の損傷を確実に防ぐには、第1凹曲線状部は上述のように、軸線Oに直交する断面において、この軸線Oを中心として切刃5の直径Dに対して0.15×D以上の半径Bを有する円に接していることがより望ましい。

Claims (4)

  1. 軸線回りに工具回転方向に回転される回転工具本体の先端部外周に、この回転工具本体の先端面に開口して後端側に延びる切屑排出溝が形成され、
    この切屑排出溝の内壁面のうち上記工具回転方向を向く壁面の先端側辺稜部に、上記壁面をすくい面とするとともに、このすくい面に連なる上記回転工具本体の先端面を先端逃げ面とする切刃が形成され、
    上記先端逃げ面および上記切屑排出溝の内壁面の少なくとも一方には、上記回転工具本体内を上記軸線方向先端側に向けて延びるクーラント穴が開口しており、
    このクーラント穴には、上記軸線に直交する断面において、
    上記回転工具本体の内周側に位置して内周側に凹む凹曲線状に形成された第1凹曲線状部と、
    この第1凹曲線状部に対向して上記回転工具本体の外周側に位置し、上記第1凹曲線状部よりも大きな曲率半径で外周側に凹む凹曲線状に形成された第2凹曲線状部と、
    上記第2凹曲線状部の2つの端部にそれぞれ接し、上記第2凹曲線状部よりも小さな曲率半径で、当該曲率半径の中心は上記クーラント穴の内側にあり、上記回転工具本体の中心側に延びて周方向に凹む2つの第3凹曲線状部と、
    上記第1凹曲線状部の端部と上記第2凹曲線状部に接しない方の上記第3凹曲線状部の端部とを繋ぐ2つの直線状部とが形成されていることを特徴とするクーラント穴付き回転工具。
  2. 上記第1凹曲線状部の曲率半径r1と上記2つの第3凹曲線状部の曲率半径r3との比r1/r3が0.5〜2.0の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のクーラント穴付き回転工具。
  3. 上記第1凹曲線状部は、上記軸線に直交する断面において、該軸線を中心として上記切刃の直径Dに対して0.05×D以上の半径を有する円に接していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクーラント穴付き回転工具。
  4. 上記軸線に直交する断面において、上記第2凹曲線状部の曲率半径r2は、上記切刃の直径Dに対して0.42×D以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のクーラント穴付き回転工具。
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