以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1Aは、実施例に係る電圧制御システム300の構成の一例を示す。電圧制御システム300は、調整装置100と、電圧制御装置200と、負荷310と、電圧測定装置320と、分散型電源330とを備える。
電圧制御装置200は、電圧制御システム300の配線系統における制御目標点の電圧Vrを制御目標電圧Vrefに制御する。制御目標点は、電圧制御装置200が電圧の値を補償すべき位置を指す。例えば、電圧制御装置200は、配電系統に設けられた負荷時タップ切替装置(LRT:Load Ratio Control Transformer)や、自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)等の電圧制御機器である。電圧制御装置200は、測定部210と、制御部220と、通信部230とを備える。
測定部210は、電圧制御装置200において実測データを測定する。実測データには、電圧制御装置200で測定した電圧、電流および位相等が含まれる。測定部210は、電圧制御装置200の2次側電圧および電圧制御装置200の通過潮流(即ち、有効電力と無効電力)を測定してよい。制御部220は、後述する整定値に基づいて電圧制御装置200の動作を制御する。通信部230は、調整装置100との間で、実測データおよび整定値を送受信する。
調整装置100は、通信処理部10と、記憶部20と、実測処理部30と、差分計算部40と、整定値算出部50と、系統パラメータ推定部60と、仮想処理部70とを備える。調整装置100は、制御目標点の電圧Vrを制御目標電圧Vrefから一定範囲内に維持するように、線路電圧降下補償器(LDC:Line Drop Compensator)として機能する。調整装置100は、電圧制御装置200の整定値を設定し、配電系統の制御目標点における電圧Vrを制御目標電圧Vrefに調整する。
整定値とは、電圧制御装置200による電圧制御用の制御パラメータである。例えば、整定値は、整定値パラメータx、r、Vrefである。xおよびrは、有効電流と無効電流に関する各係数である。本例の調整装置100は、整定値を電圧制御装置200に設定した後に、第1の計算方法と第2の計算方法との比較に基づいて、整定値を更新する。
通信処理部10は、電圧制御装置200と通信する。本例の通信処理部10は、通信部230と通信する。一例において、通信処理部10は、電圧制御装置200から実測データを受信する。通信処理部10は、配電線上の電圧測定装置320から、実測データ(例えば、制御電圧)を取得してもよい。また、通信処理部10は、調整装置100で設定した整定値を電圧制御装置200に送信する。
記憶部20は、通信処理部10が受信した実測データを記憶する。記憶部20は、通信処理部10で取得したデータを予め定められた期間について時系列で記憶してよい。例えば、記憶部20は、電圧制御装置200の2次側電圧、制御電圧、電圧制御装置200の通過潮流を指定した時刻毎に記憶する。予め定められた期間は、1日であってよく、数週間であってよく、数か月であってもよい。記憶部20は、記憶した実測データを実測処理部30に送信する。
実測処理部30は、実測データに基づいて、実測分布の計算値を取得する。実測処理部30は、整定値を電圧制御装置200に設定した後に、制御電圧の実測分布の計算値を取得する。例えば、実測分布の計算値は、予め定められた期間の実測データに対する、制御電圧の上限逸脱量、下限逸脱量、上限逸脱までの余裕量、下限逸脱までの余裕量および電圧平均値の少なくとも1つを含む。
整定値算出部50は、実測処理部30が取得した実測分布の計算値に基づいて、整定値を算出する。一例において、整定値算出部50は、制御電圧の実測データに基づいて、第1の計算方法により整定値を算出する。例えば、整定値算出部50は、整定値を重回帰分析で計算する。整定値算出部50は、一定期間蓄積されたデータを用い、通過潮流に対し、電圧制御装置200の2次側電圧制御後の制御電圧が許容範囲内となるような整定値を算出する。また、整定値算出部50は、制御電圧が許容範囲内の中心電圧に近づくような整定値を算出してよい。例えば、整定値算出部50は、整定値としてr、x、Vrefをそれぞれ算出する。調整装置100は、整定値算出部50が算出した整定値を電圧制御装置200に設定する。
系統パラメータ推定部60は、記憶部20が記憶した実測データに基づいて、配電系統の系統パラメータを推定する。系統パラメータは、潮流、インピーダンス、負荷310の大きさ等を含む。例えば、系統パラメータ推定部60は、実測データに基づいて配電線上の負荷を推定し、事前に設定した電圧制御装置200の整定値を用いて、予め定められた期間の潮流計算により制御電圧のシミュレーションを実行する。なお、負荷310の大きさは、センサによる実測値であってもよい。
仮想処理部70は、整定値を電圧制御装置200に設定した後の系統パラメータを用いて、第2の計算方法で制御電圧の仮想分布の計算値を取得する。仮想処理部70は、第1の計算方法よりも高精度な第2の計算方法を用いて仮想分布の計算値を算出してよい。一例において、仮想処理部70は、潮流計算等のシミュレーションにより制御電圧の仮想分布を計算する。例えば、仮想分布の計算値は、予め定められた期間の実測データに対する、制御電圧の上限逸脱量、下限逸脱量、上限逸脱までの余裕量、下限逸脱までの余裕量および電圧平均値の少なくとも1つを含む。
差分計算部40は、実測分布の計算値と仮想分布の計算値とを比較する。差分計算部40は、実測処理部30からの計算値と仮想処理部70からの計算値とを比較し、実際の制御データと計算データとの計算値の差分を計算する。即ち、差分計算部40は、仮想分布と実測分布とのずれを検出する。例えば、電圧の場合、予め定められた期間の電圧最大値と電圧最小値の中点のずれや、一日の電圧平均値のずれである。
整定値算出部50は、実測分布の計算値と仮想分布の計算値との差異に基づいて、整定値を更新する。整定値算出部50は、差分計算部40からの計算値を整定値計算の修正量として反映させ、整定値計算の補正を行う。その後、整定値算出部50は、通信処理部10を介して、電圧制御装置200に整定値を送信する。例えば、整定値算出部50は、計算に必要となる電圧管理上下限値にずれを反映させた値をシフトすることで、算出した整定値がそのずれを修正するように整定値を算出する。
なお、整定値算出部50は、差分計算部40による差分の計算結果に応じて、整定値を更新するか否かを決定してよい。例えば、整定値算出部50は、仮想分布の計算値が実測分布の計算値よりも好ましい場合に、整定値を更新する。即ち、整定値算出部50は、仮想分布の計算値が実測分布の計算値よりも好ましくない場合には、整定値を更新しなくてよい。仮想分布の計算値が実測分布の計算値よりも好ましい場合とは、整定値を更新することにより、調整装置100の電圧制御性能が向上する場合を指す。例えば、電圧制御性能が向上する場合とは、電圧逸脱が少ない場合や、電圧上下限値からの余裕が大きい場合がある。
なお、第1の計算方法は、第2の計算方法と同一の計算方法であってよい。例えば、第1の計算方法および第2の計算方法は、いずれも重回帰分析である。第1の計算方法および第2の計算方法は、いずれも潮流計算であってよい。一例において、重回帰分析では、実際データを用いて、線形で電圧降下を想定することにより、精度は低くなるものの処理が高速となる。
また、第1の計算方法は、第2の計算方法と異なる計算方法であってよい。一例において、整定値算出部50は、第2の計算方法よりも高速な第1の計算方法を用いて整定値を算出する。例えば、第1の計算方法は、重回帰分析であり、第2の計算方法は、潮流計算である。但し、第1の計算方法を潮流計算として、第2の計算方法を重回帰分析としてもよい。
以上の通り、調整装置100は、仮想計算値と実測計算値との差異を計算する。調整装置100は、仮想計算値と実測計算値との差異を補正するために、仮想計算値と実測計算値との差異に基づいて整定値を更新する。また、調整装置100は、仮想計算値と実測計算値との差異を補正するために、仮想計算値と実測計算値との差異に基づいて、次の整定値の計算に必要となる値(例えば、制御目標電圧Vref、電圧管理幅など)を更新してもよい。これにより、調整装置100は、以後の仮想計算値と実測計算値との差異を小さくすることができる。
調整装置100は、整定値を更新することにより、制御電圧の電圧逸脱を防止することができる。なお、整定値の更新のタイミングは、1日毎であってもよく、1月毎であってもよく、1年毎であってもよい。
図1Bは、実施例に係る電圧制御システム300の動作のフローチャートを示す。調整装置100は、ステップS100〜ステップS106を実行することにより、電圧制御装置200の整定値を設定し、配電系統の制御電圧を調整する。但し、調整装置100の動作は本例に限られない。
ステップS100において、制御電圧の実測データに基づいて、第1の計算方法により整定値を算出する。本例の第1の計算方法は重回帰分析である。ステップS102において、整定値を電圧制御装置200に設定した後に、制御電圧の実測データに基づいて、制御電圧の実測分布の計算値を取得する。ステップS104において、整定値を電圧制御装置200に設定した後の系統パラメータを用いて、第2の計算方法で制御電圧の仮想分布の計算値を取得する。本例の第2の計算方法は潮流計算である。ステップS106において、実測分布の計算値と仮想分布の計算値との差異に基づいて整定値を更新する。
なお、調整装置100は、整定値の更新を繰り返してよい。調整装置100は、予め定められたタイミングで電圧制御装置200の整定値を更新してもよい。例えば、通信処理部10は、制御電圧が許容範囲外になる時間が予め定められた期間より長い場合に、制御電圧の調整を開始する。即ち、調整装置100は、制御電圧が許容範囲内である場合に、電圧制御装置200の整定値を更新する必要がない。これにより、調整装置100を不必要に動作しないので消費電力を低減することができる。
図2は、比較例に係るSVR設置点と制御目標点との間の線路における電圧変化を示す。図2には、比較例1および比較例2について、線路における負荷が大きい場合(即ち、重負荷時)と小さい場合(即ち、低負荷時)における電圧の変化が示されている。
比較例1は、線路電圧降下補償器(LDC:Line Drop Compensator)を有さない場合の電圧変化を示す。比較例2は、LDCを有する場合の電圧変化を示す。LDCは、制御目標点の電圧Vrを制御目標電圧Vrefに維持する。一例において、制御目標電圧Vrefは6600Vである。例えば、LDCは、誤差が制御目標電圧Vrefの2%から5%の範囲となるように、制御目標点の電圧を制御する。誤差には、シミュレーションの誤差、計測誤差、パラメータの誤差等が含まれる。
比較例1では、LDCを有さないので、SVRの設置点における電圧(例えば、SVR2次側電圧)が制御目標点に向けて低下してしまう。比較例1において、制御目標点における電圧には、軽負荷時において制御目標電圧VrefからVd1の偏差が生じ、重負荷時において制御目標電圧VrefからVd2の偏差が生じている。重負荷時の偏差は軽負荷時の偏差よりも大きいので、Vd1<Vd2となる。
一方、比較例2においては、LDCが、線路における負荷に応じ、設置点における電圧を昇降させる。これにより、軽負荷時においても重負荷時においても、制御目標点の電圧Vrは、制御目標電圧Vrefに対して予め定められた範囲内に制御することができる。
但し、比較例では、重回帰分析を用いた線形解析等により電圧変化を計算している。比較例では、重回帰分析により、一定期間蓄積された実測データを用い、通過潮流に対して、SVR2次側電圧を制御した後の制御電圧が許容範囲内となるような整定値を算出している。しかしながら、比較例に係る調整装置では、力率変化や逆潮流時の電圧上昇が生じた場合に対応することができない。
ここで、LDCによる電圧制御の一例を説明する。SVR2次側電圧をV、SVRの通過電流をI(I=I
re+jI
im)、制御目標点のインピーダンスをZ(Z=r+jx)とする。この場合、制御目標点の電圧V
rは、近似的に(数1)式から算出される。
ここで、Ireは通過電流の実部であり、有効電流を示す。Iimは通過電流の虚部であり、無効電流を示す。また、jは虚数の単位を表す。またrは抵抗を表し、jxはリアクタンスを表す。また、単位は、全て基準電圧[kV]と基準容量[kVA]によるpu値である。(数1)式により算出された制御目標点の電圧Vrが制御目標電圧Vrefとなるように、SVR2次側電圧が制御される。
SVRは、内蔵する変圧器の二次側の変圧比をタップ動作により制御することにより、負荷側の配電線の電圧の調整を行う。制御目標点の電圧Vrは、線路のインピーダンスや、負荷電流によって生じる電圧変動により、SVRから出力される電圧から変化する場合がある。この場合、SVR2次側電圧が一定値に維持されていても、制御目標点の電圧Vrが負荷変動により変動する。
SVRは、(数1)式により算出された制御目標点の電圧V
rが制御目標電圧V
refとなるように、SVR2次側電圧を制御する。そのために、LDCは、V
r=V
refとなるように、SVR2次側電圧Vが次の(数2)式を満たすように変圧比を制御する。
図3Aおよび図3Bは、比較例3における、SVR理想電圧VsとSVR通過潮流の電力の散布図と回帰式の関係を示す。図3Aは、比較例3における、SVR理想電圧VsとSVR通過潮流の有効電力Psvrの散布図と回帰式の関係を示す。回帰式1は、切片=Vref、傾き=rの直線である。図3Bは、比較例3における、SVR理想電圧VsとSVR通過潮流の無効電力Qsvrの散布図と回帰式の関係を示す。回帰式2は、切片=Vref、傾き=xの直線である。なお、SVR理想電圧Vsは、制御電圧の最大値と最小値の中点が電圧管理範囲の中点となるように理想的にSVRを制御した場合の電圧である。
本例では、潮流に対し電圧変化が線形的に変化することを前提として回帰式を設定している。しかしながら、比較例3では、対象となるデータにおいて、潮流に対し電圧変化が線形的に変化することを前提としているので、非線形性が強い場合、必ずしも電圧制御結果が電圧管理幅となるとは限らなくなる。したがって、比較例3では、制御余裕があるにもかかわらず、電圧逸脱を引き起こす場合がある。
図4Aおよび図4Bは、非線形性が強い場合のSVR理想電圧Vsの散布図の一例を示す。図4Aおよび図4Bは、SVR理想電圧Vsと有効電力Psvrの散布図と回帰式を示す。
図4Aの散布図は、力率変化および潮流変化が大きい場合を示す。例えば、配電線フィーダ上の一日のPV発電時と負荷受電時の力率変化と潮流変化が大きい場合である。
図4Bの散布図は、無効電力調整がある場合の一例である。例えば、SVRの制御範囲にスタティックコンデンサ等の電圧に応じて無効電力等を調整する機器が設けられている場合である。
図4Aおよび図4B中の点線枠で囲まれた範囲は線形回帰では誤差が発生しやすい領域であり、特に重潮流時に該当する。このように非線形性が強い場合には電圧制御が線形回帰の場合と異なるので、電圧制御誤差が発生し、電圧逸脱が発生しやすくなる。そのため、線形回帰で制御した結果に対し、電圧逸脱が発生した場合には、電圧逸脱を補正するための整定値計算が必要となる。
図5Aは、実施例における制御電圧の実測分布の一例を示す。縦軸は制御電圧を示し、横軸は時刻を示す。図5Aでは、制御電圧の実測データがプロットされている。電圧平均値は、プロットされた実測データの電圧の平均値を指す。電圧上限値および電圧下限値は、制御電圧の上限値および下限値を指す。図5Aより、制御電圧の上限逸脱量、下限逸脱量、上限逸脱までの余裕量、下限逸脱までの余裕量、電圧平均値等を算出することができる。
図5Bは、実施例における制御電圧の仮想分布の一例を示す。縦軸は制御電圧を示し、横軸は時刻を示す。図5Bでは、制御電圧のシミュレーション結果である仮想分布がプロットされている。電圧平均値は、シミュレーション結果のプロットされた電圧の平均値を指す。電圧上限値および電圧下限値は、制御電圧の上限値および下限値を指す。図5Bより、制御電圧の上限逸脱量、下限逸脱量、上限逸脱までの余裕量、下限逸脱までの余裕量、電圧平均値等を算出することができる。
図5Aでは電圧逸脱が発生しているものの、図5Bでは電圧逸脱が発生していない。即ち、シミュレーションでは電圧逸脱していない場合であっても、実際のデータでは電圧逸脱する場合がある。ここで、調整装置100は、実動作時に電圧逸脱が生じないように、整定値を更新する。
差分計算部40は、図5Aで示した実測分布の計算値と図5Bで示した仮想分布の計算値との差異を算出する。そして、整定値算出部50は、差分計算部40が算出した差異に応じた整定値を算出することができる。このように、調整装置100は、予め定められた期間で得られたデータに基づいて整定値を更新する場合、差分計算部40が計算した差異を反映させるので、シミュレーション結果と実際のデータとのかい離を反映させ、電圧制御性能の向上を実現することができる。
例えば、調整装置100は、整定値のバイアス成分である制御目標電圧Vrefに差異を加えることで整定値計算時には制御目標電圧Vrefが重回帰分析上で最適ではないものの、実測データを考慮した場合に最適な電圧制御を実現できる。
また、整定値算出部50は、整定値に設定された電圧制御装置200の制御目標電圧Vrefに、差分の計算結果に応じた電圧を加算することにより、整定値を更新してよい。これにより、整定値算出部50は、制御電圧の全体をシフトさせて、制御電圧が許容範囲内に含まれるように調整する。整定値算出部50は、差分計算部40による差分の計算結果に応じて、計算方法毎に制御電圧の許容上下限値を調整してよい。
また、調整装置100は、重回帰分析上の電圧管理幅の上限電圧あるいは下限電圧に差分計算部40が計算した差異を加えることで、整定値計算中に想定される電圧分布を差異の分だけシフトさせてもよい。このように、調整装置100は、線形回帰で整定した整定値に対して、非線形性に基づく誤差が生じる場合であっても、非線形性に基づく誤差を考慮した整定値に更新することにより、整定値の精度を向上することができる。したがって、調整装置100は、実測データとのかい離を反映させることができ、電圧制御性能を向上することができる。
図6は、他の実施例に係る電圧制御システム300の構成の一例を示す。本例の電圧制御システム300は、複数の電圧制御装置200を備える。
複数の電圧制御装置200は、直列に設けられている。調整装置100は、複数の電圧制御装置200と通信し、複数の電圧制御装置200ごとに目標点を設定する。調整装置100は、それぞれの制御電圧分布に基づいて、上流側の電圧制御装置200の整定値を調整する。調整装置100は、下流側から順に複数の電圧制御装置200の整定値を調整してよい。例えば、調整装置100は、一段下流の電圧制御装置200bの整定値を算出した後に、電圧制御装置200bの整定値を更新した後の系統パラメータに基づいて、一段上流の電圧制御装置200aの整定値を調整する。
以上の通り、調整装置100は、仮想計算値と実測計算値との差異を算出し、仮想計算値と実測計算値との差異に基づいて整定値を更新する。これにより、調整装置100は、電圧制御性能の向上を実現することができる。したがって、調整装置100は、再生可能エネルギーの導入による力率変化や逆潮流時の電圧上昇が生じた場合にも対応することができる。なお、調整装置100は、電圧制御装置200のLDCパラメータを重回帰分析のような線形的な手法により計算する場合に限らず、非線形な計算手法である場合に対しても適用することができる。例えば、潮流計算をシミュレータとして用い、決定変数(LDCパラメータ)の更新をPSO(Particle Swarm Optimization)にて行うことが例として挙げられる。このような手法は特に電圧制御装置(SVC等)に非線形要素がある場合に有効である。この場合であっても、調整装置100は、仮想計算値と実測計算値との差異に基づいて整定値を更新して、電圧制御性能を向上できる。
図7は、調整装置100として機能するコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。また、複数のコンピュータが協働して調整装置100として機能してもよい。
実施例に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、および表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、およびDVDドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、および入出力チップ2070を有するレガシー入出力部と、を備える。
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000およびグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010およびRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、DVDドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、ネットワークを介して他の装置と通信する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラムおよびデータを格納する。DVDドライブ2060は、DVD−ROM2095からプログラムまたはデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、および入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラム、および/または、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラムまたはデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続すると共に、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、DVD−ROM2095、またはICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。プログラムは、コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を、調整装置100の各構成として機能させる。
プログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である通信処理部10、記憶部20、実測処理部30、差分計算部40、整定値算出部50、系統パラメータ推定部60および仮想処理部70の少なくとも一部として機能する。そして、この具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算または加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の調整装置100が構築される。
一例として、コンピュータ1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、またはDVD−ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置または通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030または記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
また、CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、DVDドライブ2060(DVD−ROM2095)、フレキシブルディスク・ドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイルまたはデータベース等の中から、全部または必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020および外部記憶装置等をメモリ、記憶部、または記憶装置等と総称する。本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、および/または記憶装置に含まれるものとする。
また、CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数または定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすかどうかを判断し、条件が成立した場合(または不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、またはサブルーチンを呼び出す。
また、CPU2000は、記憶装置内のファイルまたはデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU2000は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
以上に示したプログラムまたはモジュールは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、DVD−ROM2095の他に、DVD、Blu−ray(登録商標)、またはCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスクまたはRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1900に提供してもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。